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特許異議申立

2023-700731

シルセスキオキサン複合高分子およびその製造方法

審判番号
2023-700731
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-553894
登録番号
7207845
請求日
2023年07月14日
審決日
2024年12月26日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】塚中 哲雄
  • 【異議申立人】松井 伸一
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 小出 直也
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
分類
P1651.536-ZAA(C08G) / P1651.537-ZAA(C08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7207845号発明「シルセスキオキサン複合高分子およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7207845号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7207845号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7207845号(以下、「本件特許」という。)は、平成27年2月27日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年(平成26年)2月28日 (KR)大韓民国, 2015年(平成27年)2月26日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする特許出願(特願2016-553894号)に係るものであって、令和5年1月10日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月14日に特許異議申立人 松井 伸一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和5年 8月18日 上申書の提出(申立人) 令和5年10月23日付け 取消理由通知 令和6年 1月25日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 3月28日 訂正請求書を補正する手続補正書及び意見書 を補正する手続補正書の提出 同年 4月 4日付け 訂正請求があった旨の通知書(申立人宛) 同年 5月 7日 意見書の提出(申立人) 同年 6月27日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 9月30日 意見書の提出(特許権者) 第2 訂正請求書の補正の適否 1 補正の内容 令和6年3月28日提出の訂正請求書を補正する手続補正は、以下の2つの補正事項を含むものである。 補正事項1:訂正請求書の「7 請求の理由 (2)訂正事項 ア 訂正事項1」の記載を、以下の<補正前>から<補正後>に補正する。 <補正前> 「特許請求の範囲の請求項1に、 [図:0001425702000001.jpg] [図:0001425702000002.jpg] [図:0001425702000003.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000004.jpg] 」と記載されているのを、 [化学式1] [図:0001425702000005.jpg] [化学式2] [図:0001425702000006.jpg] [図:0001425702000007.jpg] [図:0001425702000008.jpg] [図:0001425702000009.jpg] 」と訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2ないし10も同様に訂正する)」 <補正後> 「特許請求の範囲の請求項1に、 「 [図:0001425702000010.jpg] [図:0001425702000011.jpg] [図:0001425702000012.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000013.jpg] であり、」と記載されているのを、 「 [図:0001425702000014.jpg] [図:0001425702000015.jpg] [図:0001425702000016.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000017.jpg] であり、」 と訂正する。」 補正事項2 添付の「特許請求の範囲」の記載を、以下の<補正前>から<補正後>に補正する。 <補正前> 「【請求項1】 化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子。 [図:0001425702000018.jpg] [図:0001425702000019.jpg] [図:0001425702000020.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000021.jpg] であり、 Yは、それぞれ独立して、O、NR11または[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、 Xは、それぞれ独立して、R12または[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-を含む)であり、 R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10,R11,R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;アミン基;エポキシ基;シクロヘキシルエポキシ基;(メタ)アクリル基;チオール基;イソシアネート基;ニトリル基;ニトロ基;置換若しくは非置換のC1~C40のアルキル基;C2~C40のアルケニル基;C1~C40のアルコキシ基;C3~C40のシクロアルキル基;C3~C40のヘテロシク ロアルキル基;C6~C40のアリール基;C3~C40のヘテロアリール基;C7~C 40のアラルキル基;C6~C40のアリールオキシ基;またはC6~C40のアリールチ オール基であり、 前記置換に使用される置換基は重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アク リル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、またはニトロ基であり, aおよびdは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、 bは、1乃至500の整数であり、 eは、1または2であり、 nは、それぞれ独立して、1乃至20の整数である。 【請求項2】 aは3乃至1000であり、bは1乃至500の整数であり、 dは1乃至500であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項3】 dは2乃至100であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項4】 n値の平均が4乃至5であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項5】 前記化学式1の線状シルセスキオキサン複合高分子の重量平均分子量が1,000乃至1,000,000であることを特徴とする請求項1に記載の線状シルセスキオキサン複合高分子。 【請求項6】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子を含むことを特徴とするコーティング組成物。 【請求項7】 前記コーティング組成物は、無溶剤型であることを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項8】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子、 開始剤、および 有機溶媒 を含むことを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項9】 前記シルセスキオキサン複合高分子がコーティング組成物100重量部に対して5乃至90重量部であることを特徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。 【請求項10】 前記コーティング組成物は、硬化剤、可塑剤、または日焼け止めをさらに含むことを特 徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。」 <補正後> 「【請求項1】 化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子。 [図:0001425702000022.jpg] [図:0001425702000023.jpg] [図:0001425702000024.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000025.jpg] であり、 Yは、それぞれ独立して、O、NR11または[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、 Xは、それぞれ独立して、R12または[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-O-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-O-を含む)であり、 R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10,R11,R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;アミン基;エポキシ基;シクロヘキシルエポキシ基;(メタ)アクリル基;チオール基;イソシアネート基;ニトリル基;ニトロ基;置換若しくは非置換のC1~C40のアルキル基;C2~C40のアルケニル基;C1~C40のアルコキシ基;C3~C40のシクロアルキル基;C3~C40のヘテロシクロアルキル基;C6~C40のアリール基;C3~C40のヘテロアリール基;C3~C40のアラルキル基;C3~C40のアリールオキシ基;またはC3~C40のアリールチオール基であり、 前記置換に使用される置換基は重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、またはニトロ基であり, aおよびdは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、 bは、1乃至500の整数であり、 eは、1または2であり、 nは、それぞれ独立して、1乃至20の整数である。 【請求項2】 aは3乃至1000であり、bは1乃至500の整数であり、 dは1乃至500であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項3】 dは2乃至100であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項4】 n値の平均が4乃至5であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項5】 前記化学式1のシルセスキオキサン複合高分子の重量平均分子量が1,000乃至1,000,000であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項6】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子を含むことを特徴とするコーティング組成物。 【請求項7】 前記コーティング組成物は、無溶剤型であることを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項8】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子、 開始剤、および 有機溶媒 を含むことを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項9】 前記シルセスキオキサン複合高分子がコーティング組成物100重量部に対して5乃至90重量部であることを特徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。 【請求項10】 前記コーティング組成物は、硬化剤、可塑剤、または紫外線遮断剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。」 に補正する。(補正事項2について、下線は補正箇所であり、当審が付した。) 2 要旨変更の有無について (1)補正事項1について 補正事項1は、訂正請求書の訂正事項1の[化学式1]の前に、引用箇所を抜き出す「「 」が抜けていたのを補充した上で、訂正後の事項のうち訂正特許請求の範囲と整合しない記載(「上記化学式1乃至3において、」、「【化1】」、「【化2】」が欠落し、末尾に不要な化学構造式が存在していた。)を訂正特許請求の範囲のとおり正しく書き直すものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。(なお、補正後の訂正事項1には、「(請求項1の記載を引用する請求項2ないし10も同様に訂正する)」の表現が抜けているが、訂正特許請求の範囲の記載からみて、請求項1の記載を引用する請求項2ないし10も同様に訂正されることは明らかであるから、この点においても訂正請求書の要旨を変更するものではない。) (2)補正事項2について 補正事項2は、訂正特許請求の範囲に訂正請求書の「(2)訂正事項」にない訂正(「Si-O-」を「Si-」にする、炭素原子数の下限をC3からC6にする、不要なスペースを追加する、「紫外線遮断剤」を「日焼け止め」にする等)がされていたところ、これらを削除して訂正前(下線部)に戻すものであり、形式的には訂正事項の一部削除に該当するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 3 まとめ したがって、補正事項1及び2はいずれも訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するので、令和6年3月28日提出の手続補正書による訂正請求書の補正を認める。 第3 訂正の適否 1 訂正の内容 第2のとおり、令和6年3月28日提出の手続補正書による訂正請求書の補正は認められたので、令和6年1月25日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 [図:0001425702000026.jpg] [図:0001425702000027.jpg] [図:0001425702000028.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000029.jpg] であり、」と記載されているのを、 「 [図:0001425702000030.jpg] [図:0001425702000031.jpg] [図:0001425702000032.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000033.jpg] であり、」 と訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落[0065]に「実施例7-aで製造された」と記載されているのを、「実施例1-aで製造された」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項2~10は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 訂正事項2は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件訂正前明細書」という。)の請求項1~10に係る発明の実施例に関する【0065】の記載を訂正するものであるから、訂正事項2は、明細書の訂正に係る請求項を含む上記一群の請求項のすべてについて行うものである。 よって、訂正事項1及び2は、一群の請求項〔1~10〕に対してなされたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された化学式1~3が不鮮明であったところ、これを鮮明なものとする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 本件訂正前明細書の【0065】に「実施例7-aで製造された」との記載があったところ、【0065】は実施例1の一部である「実施例1-f」についての記載であり、それ以前に「実施例7-a」という記載がなく、「実施例7-a」が「実施例1-a」の誤記であることは明らかである。 したがって、訂正事項2は明らかな誤記の訂正を目的とするものである。そして、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正すること、及び、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の明細書について訂正することを認める。 第4 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~10に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子。 [図:0001425702000034.jpg] [図:0001425702000035.jpg] [図:0001425702000036.jpg] 上記化学式1乃至3において、 [図:0001425702000037.jpg] であり、 Yは、それぞれ独立して、O、NR11または[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nO](ただし2個のSi-O-を含む)であり、 Xは、それぞれ独立して、R12または[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-O-を含む)であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nR](ただし1個のSi-O-を含む)であり、 R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10,R11,R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;アミン基;エポキシ基;シクロヘキシルエポキシ基;(メタ)アクリル基;チオール基;イソシアネート基;ニトリル基;ニトロ基;置換若しくは非置換のC1~C40のアルキル基;C2~C40のアルケニル基;C1~C40のアルコキシ基;C3~C40のシクロアルキル基;C3~C40のヘテロシクロアルキル基;C6~C40のアリール基;C3~C40のヘテロアリール基;C3~C40のアラルキル基;C3~C40のアリールオキシ基;またはC3~C40のアリールチオール基であり、 前記置換に使用される置換基は重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、またはニトロ基であり, aおよびdは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、 bは、1乃至500の整数であり、 eは、1または2であり、 nは、それぞれ独立して、1乃至20の整数である。 【請求項2】 aは3乃至1000であり、bは1乃至500の整数であり、 dは1乃至500であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項3】 dは2乃至100であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項4】 n値の平均が4乃至5であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項5】 前記化学式1のシルセスキオキサン複合高分子の重量平均分子量が1,000乃至1,000,000であることを特徴とする請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子。 【請求項6】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子を含むことを特徴とするコーティング組成物。 【請求項7】 前記コーティング組成物は、無溶剤型であることを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項8】 請求項1に記載のシルセスキオキサン複合高分子、 開始剤、および 有機溶媒 を含むことを特徴とする請求項6に記載のコーティング組成物。 【請求項9】 前記シルセスキオキサン複合高分子がコーティング組成物100重量部に対して5乃至90重量部であることを特徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。 【請求項10】 前記コーティング組成物は、硬化剤、可塑剤、または紫外線遮断剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のコーティング組成物。」 (以下、本件特許の請求項1~10に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」のようにいう。また、訂正後の本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。) 第5 特許異議申立理由の概要、取消理由の概要及び証拠方法 1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(新規性) 本件発明1~10は、下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明1~10についての特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由2(進歩性) 本件発明1~10は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願の技術の分野に属する通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~10についての特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由3(実施可能要件) 本件発明1~10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・具体的な理由の概要 本件明細書には、実施例で得られたシルセスキオキサン複合高分子が本件発明1の化学式1~3の構造を備えるかどうかを確認するデータが何ら開示されていないので、当業者は本件発明1のシルセスキオキサン複合高分子が得られたかどうかを確認することができず、本件発明1~10を実施することができない。 申立理由4(サポート要件) 本件発明1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・具体的な理由の概要 (1)本件明細書には、実施例で得られた生成物の精密構造の解析手法及び結果が示されておらず、一般的には様々な構造を有するシルセスキオキサンの混合物であると考えられるから、本件発明1~10は本件明細書に記載されていない構造を備えたブロック共重合体を特許請求するものである。 (2)実施例で製造されて効果が確認されているのは原料のトリアルコキシシランとして、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いた場合のみであり、シルセスキオキサンを製造する場合、原料の加水分解基、有機官能基、反応性基、触媒の種類によって影響を受けるのが当業者の技術常識であるから、実施例1~5の結果を有機官能性基として2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基以外のものを用い、加水分解基としてメトキシ基以外のものを用いた範囲まで一般化及び拡張することはできない。 2 当審が通知した取消理由の概要 当審が令和6年6月27日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は以下のおりである。 取消理由1(実施可能要件) 本件特許の請求項1~10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的な理由の概要は、申立理由3と同様である。 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的な理由の概要は、申立理由4の(1)と同様である。 3 証拠方法 (1)特許異議申立書に添付した証拠方法 甲第1号証 Macromolecules, 2000年, 第33巻, 1940-1947頁及びその抄訳文 甲第2号証 Macromolecules, 2002年, 第35巻, 1160-1174頁及びその抄訳文 甲第3号証 シルセスキオキサンによる高機能化技術, 技術情報協会セミナーテキスト, 技術情報協会,2011年2月25日,1~28頁 甲第4号証 日本ゾル-ゲル学会第6回セミナーテキスト,日本ゾル-ゲル学会,2009年5月28日,7~32頁 甲第5号証 Macromolecules, 2007年, 第40巻, 2079-2085頁及びその抄訳文 甲第6号証 Journal of the American Chemical Society, 1964年, 第86巻第6号,1120-1125頁及びその抄訳文 甲第7号証 特開2008-266585号公報 甲第8号証 特開2006-63147号公報 甲第9号証 特開2009-280768号公報 甲第10号証 再公表特許 WO2009/069465号 甲第11号証 特開平7-166124号公報 甲第12号証 再公表特許 WO2011/105401号 甲第13号証 特願2016-553894号拒絶査定不服審判事件の審判請求書 (2)令和6年3月28日の手続補正書によって補正された令和6年1月25日提出の意見書に添付した証拠方法 乙第1号証 Macromolecules, 2015年,第48巻第17号,6063-6070頁 及びその抄訳文 乙第2号証 High Performance Polymers, 2023年, Vol.0(0), 1~12頁 及びその抄訳文 乙第3号証 実施例1-b(A前駆体)のFT-IR分析 乙第4号証 実施例1-c(A-B前駆体)の残存するアルコキシ基についての1H-NMR分析 乙第5号証 実施例1-c(A-B前駆体)のXRD分析 乙第6号証 実施例1-b(A前駆体)及び実施例1-d(A-B-A前駆体)のFT-IR分析 乙第7号証 実施例1-eのGPC及び29Si-NMR 乙第8号証 実施例1-eのFT-IR分析 乙第9号証 実施例1のGPC及び29Si-NMR 乙第10号証 実施例1のFT-IR 乙第11号証 実施例1のXRD分析 参照文献1 Polymers, 2018年,第10巻第4号,449頁及びその抄訳文 参照文献2 韓国特許第10-2592159号公報 及びその抄訳文 参照文献3 Chemistry of Materials, 2012年,第24巻第10号,1968-1973頁 及びその抄訳文 参照文献4 Dalton transactions, 2012年,第41巻第35号,10585-10588頁及びその抄訳文 (3)申立人が令和6年5月7日に提出した意見書に添付した証拠方法 参照文献5 Hybrid Plastics社ウェブサイトの資料 (https://www.hybridplastics.com/wp-content/uploads/2015/04/EP0408pbt.pdf) (4)特許権者が令和6年9月30日に提出した意見書に添付した証拠方法 乙第12号証:実施例1-cの洗浄前/後の生成物のFT-IR分析結果 乙第13号証:A前駆体(実施例1-b)、洗浄前の実施例1-cの中間生成物及び化学式1-c(A-B前駆体)の1HーNMR分析結果 乙第14号証:精製後の実施例1-eの生成物及び精製前の実施例1-eの中間生成物のFT-IR分析結果 乙第15号証:実施例1-fによる方法における精製前の中間生成物、及び精製後の実施例1による最終生成物のFT-IR分析(乙第10号証)の比較 乙第16号証:実施例1-gの副産物(自己縮合型ケージ構造のシルセスキオキサン)のFT-IR分析 参考資料5:特許第5484355号公報 参考資料6:Xiujuan Jia et al., Microchemical journal, Vol.75, 2003年, 103-107頁及びその抄訳文 参考資料7:Aurelie Hourlier-Fargette et al., Langmuir, 34(41), 2018年, 12244-12250頁及びその抄訳文 参考資料8:特許第7472904号公報 参考資料9:Sahar Foorglnezhard and Mohammad Mahdl Zerafat, Nanochemistry Research, 5(1), 2020年, 14-24頁及びその抄訳文 (以下、甲第1~13号証、乙第1~16号証、参照文献1~5、参考資料5~9をそれぞれ、「甲1」~「甲13」、「乙1」~「乙16」、「参照1」~「参照5」、「参考5」~「参考9」のようにいう。) 第6 当審の判断 当審は、以下に述べるように、取消理由1(実施可能要件)及び取消理由2(サポート要件)は依然として解消しておらず、本件発明1~10についての特許は取り消すべきものと判断する。 1 取消理由1(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 本件発明1~10は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、この観点から検討する。 (2)本件明細書の記載 本件明細書には、本件発明1~10に関して、次の記載がある。 「【0002】 シルセスキオキサンは、様々な分野で様々な用途に使用されている。特に、加工性を向上させ、機械的物理的特性を極大化させるためにいくつかの試みがありおり、現在までに研究開発が続いている。しかし、これまでに開発されたシルセスキオキサン高分子は、加工性、機械的物理的特性を同時に満足させるにはまだ不足している。 【0003】 たとえば、cage形シルセスキオキサンは、シロキサン結合が発現することができる物理的特性を示すので、様々な方面に応用されているが、それ自体が結晶構造で、溶液加工時溶解性に限界があり、cage形構造を応用した結果自体から再結晶現象等の分子単位の再編成が発生して、性能の再現性が保証されないという問題が発生する。他の大表的構造で、線状(ladder)シルセスキオキサンは、溶液加工性が優れていて、cage形構造の短所を補完して与えることができる構造であるが、物理的特性が結晶構造であるcage形構造には及ばない欠点がある。また、ランダム(random)型のシルセスキオキサンは、自由な形で重合が行われるため、高分子内に不安定に存在するSi-OH、Si-alkoxyなどを利用して、ゲル(gel)化させて応用する必要がある限界と再現性を担保することが困難な問題がある。 【0004】 これらのシルセスキオキサンの構造体は、産業界のニーズに合わせて、特定の構造に制御しようとする試みが続いてきた。一例として、米国特許公開第US2011-0201827では、前駆体としてシランカップリング剤を使用して多面体シルセスキオキサンを制御して、ユニークな利点を引き出そうと試みたが、これはまた、単一の線状にcage形を接続して、置換基のみ使用例として、実際の物理的特性の向上を大きく導くことはできなかった。 【0005】 したがって、本発明者らは、上記のようなシルセスキオキサンの短所を補完して、利益を最大化させようと研究した結果、特定の構造の高分子構造を設計し、側鎖に導入された有機官能基を利用して簡単に硬化工程を導入するように誘導した結果、優れた物理的特性が長い時間持続することができ、メイン素材、添加素材、コーティング材料など、さまざまな産業向けに使用されることが可能であることを確認して、本発明を完成した。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 前記のような問題点を解決するために、本発明は、一つの高分子内に特定の構造の線状シルセスキオキサン鎖およびcage形シルセスキオキサンを含めて加工性および物理的特性を極大化したシルセスキオキサン複合高分子を提供することを目的とする。 【0007】 また、本発明は、前記シルセスキオキサン複合高分子の製造方法を提供することを目的とする。 【0008】 また、本発明は、前記前記シルセスキオキサン複合高分子を含むシルセスキオキサンコーティング組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 前記目的を達成するために、本発明は、化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子を提供する。 [化学式1] 【化1】 [図:0001425702000038.jpg] [化学式2] 【化2】 [図:0001425702000039.jpg] [化学式3] 【化3】 [図:0001425702000040.jpg] 【0010】 上記化学式1乃至3において、 Aは 【化4】 [図:0001425702000041.jpg] であり、Bは 【化5】 [図:0001425702000042.jpg] であり、 Dは 【化6】 [図:0001425702000043.jpg] であり、Eは 【化7】 [図:0001425702000044.jpg] であり、 Yは、それぞれ独立して、O、NR11または[(SiO3/2R)4+2nO]であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nO]であり、 Xは、それぞれ独立して、R12または[(SiO3/2R)4+2nR]であり、少なくとも一つは[(SiO3/2R)4+2nR]であり、 R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10,R11,R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;アミン基;エポキシ基;シクロヘキシルエポキシ基;(メタ)アクリル基;チオール基;イソシアネート基;ニトリル基;ニトロ基;フェニル基;重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、フェニル基に置換若しくは非置換のC1~C40のアルキル基;C2~C40のアルケニル基;C1~C40のアルコキシ基;C3~C40のシクロアルキル基;C3~C40のヘテロシクロアルキル基;C6~C40のアリール基;C3~C40のヘテロアリール基;C3~C40のアラルキル基;C3~C40のアリールオキシ基;またはC3~C40のアリールチオール基であり、好ましくは、重水素、ハロゲン、アミン基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、フェニル基、シクロヘキシルエポキシ基に置換若しくは非置換のC1~C40のアルキル基、C2~C40のアルケニル基、アミン基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、フェニル基またはイソシアネート基を含み、 aおよびdは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、好ましくは、aは3乃至1000であり、dは1乃至500であり、さらに好ましくは、aは5乃至300であり、dは2乃至100であり、 bは、1乃至500の整数であり、 eは、1または2であり、好ましくは、1であり、 nは、それぞれ独立して、1乃至20の整数であり、好ましくは、3乃至10である。 【0011】 また、本発明は、反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造および[D]d(OR2)2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;および前記3段階を通じて得られた2種類以上の物質を塩基性条件で縮合して連結する4段階を含んで製造することを特徴とする化学式1で示されるシルセスキオキサン複合高分子を提供する。 [化学式4] 【化8】 [図:0001425702000045.jpg] 上記式において、R1,R2,R6,B,D,a,b,dは、化学式1乃至3で定義した通りである。 【0012】 また、本発明は、反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造、[D]d(OR4)2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;前記3段階を通じて得られた2種類以上の物質を塩基性条件で縮合して連結する4段階;前記4段階以後、[D]d(OR3)2を導入するための反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第5段階;および前記5段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第6段階を含んで製造することを特徴とする化学式2で示されるシルセスキオキサン複合高分子を提供する。 【0013】 また、本発明は、反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;前記3段階を通じて得られた2種類以上の化合物を塩基性条件で縮合して連結する4段階;前記第4段階以後、[D]d(OR5)2を導入するための反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第5段階;前記5段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第6段階;前記第6段階以後に、複合高分子の末端に[E]eX2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を投入して反応液を酸性雰囲気に変換し有機シラン化合物を混合して攪拌する第7段階を含んで製造することを特徴とする化学式3で示されるシルセスキオキサン複合高分子を提供する。 【0014】 また、本発明は、前記前記シルセスキオキサン複合高分子を含むシルセスキオキサンコーティング組成物を提供する。 【発明の効果】 【0015】 本発明に係るシルセスキオキサン複合高分子は、線状シルセスキオキサンと複合型の鎖の加工容易性とcage形シルセスキオキサンの優れた物理的特性を同時に有することにより、コーティング溶液に製造時に簡単な硬化工程によって、優れた物理的特性、光学特性、耐熱特性等を様々な素材に付与することができる。」 【発明を実施するための形態】 【0016】 以下、本発明を詳しく説明する。 本発明は、下記の化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子を提供する。 ・・・(中略)・・・ 【0018】 前記化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子はR,R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11,R12で示された有機官能基を有し,繰り返し単位がaとbとdとして構成なり,末端単位でeを選択的に導入することができる複合シルセスキオキサン高分子である。 【0019】 前記化学式1または2の繰り返し単位dに導入された[(SiO3/2R)4+2nO]構造のnは1乃至20の整数に置換することができ、好ましくは3乃至10であり、さらに好ましくは平均n値が4乃至5であり、前記nが4である時、置換された構造を表現すれば下記化学式5の通りである。 [化学式5] 【化16】 [図:0001425702000046.jpg] 上記の式において、Rは前記で定義した通りである。 【0020】 本発明において、前記化学式3の繰り返し単位bとeに導入された[(SiO3/2R)4+2nR]構造のnは1乃至20の整数に置換することができ、好ましくは3乃至10であり、さらに好ましくは平均n値が4乃至5であり、例えば、前記nが4である時の置換された構造を表現すれば下記化学式6の通りである。 [化学式6] 【化17】 [図:0001425702000047.jpg] 上記の式において、Rは前記で定義した通りである。 【0021】 具体的な例として上記化学式1のシルセスキオキサン複合高分子は、下記表1乃至2に記載された高分子であり得る。下記表1乃至6において、ECHEは(Epoxycyclohexyl)ethyl、GlyPはGlycidoxypropyl、POMMAは(methacryloyloxy)propylを意味し、二つ以上が記載された場合は混合使用を意味する。nは、それぞれ独立して、1乃至8である。 ・・・(表1,表2は省略)・・・ 【0024】 具体的な例として前記化学式2のシルセスキオキサン複合高分子は下記表3および4に記載された高分子であり得る。 ・・・(表3、表4は省略)・・・ 【0026】 具体的な例として前記化学式3のシルセスキオキサン複合高分子は下記表5および6に記載された高分子であり得る。 ・・・(表5、表6は省略)・・・ 【0028】 本発明の前記シルセスキオキサン複合高分子は、優れた保管安定性を確保して幅広い応用性を得るために、縮合度が1乃至99.9%以上に調節することができる。即ち、末端および中央のSi-ORまたはSi-OR1のに結合されたアルコキシグループの含量が全体高分子の結合基に対して50%から0.01%までに調節することができる。 【0029】 また、本発明によるシルセスキオキサン複合高分子の重量平均分子量は1,000乃至1,000,000、好ましくは5,000乃至100,000であり、さらに好ましくは7、000乃至50,000であり得る。この場合、シルセスキオキサンの加工性および物理的特性を同時に向上させることができる。 【0030】 本発明のシルセスキオキサン複合高分子は、単一の反応器で塩基性触媒と酸触媒を用いて塩基とpHを連続的に調節することによって製造することができ、以下のような製造工法のいずれかを利用することができる。 【0031】 化学式1で示されるシルセスキオキサン複合高分子の製造方法 反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造および[D]d(OR2)2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;および前記3段階を通じて得られた2種類以上の物質を塩基性条件で縮合して連結する4段階を含んで製造することができる。製造されたシルセスキオキサン複合高分子は、下記化学式1-1のような構造を有する。 [化学式4] 【化18】 [図:0001425702000048.jpg] [化学式1-1] 【化19】 [図:0001425702000049.jpg] 上記式において、R,R1,R2,R6,R7,R8,R9,X,Y,a,b,およびdは化学式1乃至3で定義した通りである。 【0032】 化学式2で示されるシルセスキオキサン複合高分子の製造方法 反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造、[D]d(OR4)2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;前記3段階を通じて得られた2種類以上の物質を塩基性条件で縮合して連結する4段階;前記4段階以後、[D]d(OR3)2を導入するための反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第5段階;および前記5段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第6段階を含んで製造することができる。製造された複合高分子下記化学式2-1のような構造を有する。 [化学式2-1] 【化20】 [図:0001425702000050.jpg] 上記式において、R,R1,R2,R3,R4,R6,R7,R8,R9,B,D,X,Y,a,bおよびdは、化学式1乃至3で定義した通りである。 【0033】 化学式3で示されるシルセスキオキサン複合高分子の製造方法 反応器に塩基性触媒と有機溶媒を混合した後、有機シラン化合物を添加し縮合度が調節された2種類形態の前記化学式4を製造する1段階;前記1段階で得られた化学式4に[B]b構造を導入するために、反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第2段階;前記それぞれの2段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第3段階;前記3段階を通じて得られた2種類以上の化合物を塩基性条件で縮合して連結する4段階;前記第4段階以後、[D]d(OR5)2を導入するための反応器に酸性触媒を添加して反応液を酸性に調節した後、有機シラン化合物を添加し攪拌する第5段階;前記5段階反応以後に、反応器に塩基性触媒を添加して反応液を塩基性に変換し縮合反応を実施する第6段階;前記第6段階以後に、複合高分子の末端に[E]eX2構造を導入するために、反応器に酸性触媒を投入して反応液を酸性雰囲気に変換し有機シラン化合物を混合して攪拌する第7段階を含んで製造することができる。製造されたシルセスキオキサン複合高分子は、下記化学式3-1のような構造を有する。 [化学式3-1] 【化21】 [図:0001425702000051.jpg] 上記式において、R,R1,R2,R5,R6,R7,R8,R9,B,D,E,X,Y,a,b,dおよびeは、化学式1乃至3で定義した通りである。 【0034】 前記シルセスキオキサン複合高分子の製造方法では、塩基性触媒として、好ましくは2種以上の塩基性触媒の混合触媒を使用し、これを酸性触媒で中和および酸性化して再加水分解を誘導し、再び2種以上の塩基性触媒の混合触媒を用いて塩基性で縮合を行うことによって、一つの反応器内で酸度と塩基度を連続的に調節することができる。 【0035】 この時、前記塩基性触媒は、Li、Na、K、CaおよびBaからなる群より選択された金属系塩基性触媒およびアミン系塩基性触媒から選択される2種以上の物質を適切に組み合わせて製造することができる。好ましくは、前記アミン系塩基性触媒がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)であり、金属系塩基性触媒がカリウムヒドロキシド(KOH)または重炭酸ナトリウム(NaHCO3)であり得る。前記混合触媒において各成分の含量は、好ましくは、アミン系塩基性触媒と金属系塩基性触媒の比率が10乃至90:10乃至90重量部の比率で任意に調節することができる。前記範囲内である場合、加水分解時に官能基と触媒との反応性を最小化させることができ、これによって、Si-OHまたはSi-アルコキシなどの有機官能基の欠陥が顕著に減少し縮合度を自由に調節することができる長所がある。また、前記酸性触媒としては、当分野で通常使用する酸性物質であれば制限なく使用することができ、例えば、HCl、H2SO4、HNO3、CH3COOHなどの一般酸性物質を使用することができ、また、乳酸(lactic acid、酒石酸(tartaric acid)、マレイン酸(maleic acid)、クエン酸(citric acid)などの有機系酸性物質も適用することができる。 【0036】 本発明のシルセスキオキサン複合高分子の製造方法において、前記有機溶媒は、当分野で通常使用する有機溶媒であれば制限なく使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、セロソルブ系などのアルコール類、乳酸系、アセトン、メチル(イソブチル)エチルケトンなどのケトン類、エチレングリコールなどのグリコール類、テトラヒドロフランなどのフラン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒だけでなく、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル(acrylonitrile)、メチレンクロライド、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコールなど多様な溶媒を使用することができる。 【0037】 また、前記有機シラン系化合物としては、本発明のシルセスキオキサン複合高分子の化学式1乃至3のR、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12を含む有機シランを使用することができ、好ましくは、シルセスキオキサン複合高分子の耐化学性を増加させて非膨潤性を向上させる効果があるフェニル基またはアミノ基を含む有機シラン化合物、または複合高分子の硬化密度を増加させて硬化層の機械的強度および硬度を向上させる効果があるエポキシ基または(メタ)アクリル基を含む有機シラン化合物を使用することができる。 【0038】 前記有機シラン系化合物の具体的な例としては、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3-(メタアクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルテトラメトキシシロキサン、ジフェニルテトラメトキシシロキサンなどが挙げられ、これらの中の1種単独でまたは2種以上を併用して使用することもできる。最終製造される組成物の物性のために2種以上を混合して使用することがより好ましい。 【0039】 好ましくは、前記化学式7乃至9の高分子を製造する方法において、第1段階の反応液のpHは9乃至11.5であるのが好ましく、第2段階の反応液のpHは2乃至4であるのが好ましく、第3段階の反応液のpHは8乃至11.5であるのが好ましく、第4段階の反応液のpHは9乃至11.5であるのが好ましく、第5段階の反応液のpHは2乃至4であるのが好ましく、第6段階の反応液のpHは8乃至11.5であるのが好ましく、[E]eを導入する第7段階の反応液のpHは1.5乃至4であるのが好ましい。前記範囲内である場合、製造されるシルセスキオキサン複合高分子の収率が高いだけでなく、製造されたシルセスキオキサン複合高分子の機械的物性を向上させることができる。」 「【0060】 実施例1:シルセスキオキサンA-B-A-D構造の複合高分子の合成 合成段階は下記のように、連続加水分解および縮合を段階的に行した。 [実施例1-a]触媒の製造 塩基度調節のために、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Tetramethylammonium hydroxide;TMAH)25重量%水溶液に10重量%カリウムヒドロキシド(Potassium hydroxide;KOH)水溶液を混合して触媒1aを準備した。 【0061】 [実施例1-b]線状シルセスキオキサンの合成(A前駆体) 冷却管と攪拌機を備えた乾燥されたフラスコに、蒸溜水5重量部、テトラヒドロフラン15重量部、前記実施例1-aで製造された触媒1重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20重量部を滴加し、再びテトラヒドロフランを15重量部滴加して5時間追加攪拌した。攪拌中の混合溶液を滴取り、二回洗浄することで触媒と不純物を除去しフィルターした後、IR分析を通じて末端基に生成されたSI-OH官能基を確認することができ(3200cm-1)、分子量を測定した結果、線状構造のシルセスキオキサンが6,000スチレン換算分子量を有するのを確認することができた。 【0062】 [実施例1-c]線状シルセスキオキサン構造の合成(A-B前駆体の合成) 冷却管と攪拌機を備えた乾燥されたフラスコに、蒸溜水5重量部、テトラヒドロフラン40重量部、前記実施例1-aで製造された触媒0.5重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン10重量部を滴加し、再びテトラヒドロフランを20重量部滴加して2時間追加攪拌した。攪拌中の混合溶液を滴取り、二回洗浄することで触媒と不純物を除去しフィルターした後、1H-NMR分析を通じて残存するアルコキシ基(alkoxy group)が0.1mmol/g以下に残存している線状シルセスキオキサンを得た。これは、以後にかご(cage)を連続反応で導入するのに用いられる部分である。線状構造の形態分析はXRD分析を通じて全体的な構造が線状構造体であることを確認した。分子量を測定した結果、線状構造のシルセスキオキサンが8,000スチレン換算分子量を有するのを確認することができた。 【0063】 [実施例1-d]線状シルセスキオキサン構造の合成(A-B-A前駆体の合成) 冷却管と攪拌機を備えた乾燥されたフラスコに、蒸溜水5重量部、テトラヒドロフラン5重量部、製造された実施例1-a触媒を10重量部を滴加し、1時間常温で攪拌した後、実施例1-b前駆体と1-c前駆体を20重量部ずつそれぞれ滴加し、再びテトラヒドロフランを10重量部滴加して24時間追加攪拌した。攪拌中の混合溶液を滴取り、二回洗浄することで触媒と不純物を除去しフィルターした後、IR分析を通じて末端基に生成されたSI-OH官能基を確認することができ(3200cm-1)、分子量を測定した結果、線状構造のシルセスキオキサンが15,000スチレン換算分子量を有するのを確認することができた。 1H-NMR(CDCl3)δ3.7、3.4、3.3(broad)、3.1,2.8、2.6、1.5(broad)、0.6。 【0064】 [実施例1-e]連続的かご(cage)構造の生成(D構造の導入) 前記実施例1-d混合溶液に0.36重量%HCl水溶液を非常に徐々に5重量部滴加し、pHが酸性を有するように調節し、4℃の温度で30分間攪拌した。その後、ジフェニルテトラメトキシジシロキサン(DiPhenyltetramethoxydisiloxane)5重量部を一度に滴加して、安定した加水分解を図り、1時間攪拌後、実施例1-aで製造された触媒を7重量部再び添加して塩基性状態に混合溶液のpHを調節した。この時、線状高分子とは別途にアルコキシ(alkoxy)が開いているD構造の前駆体が形成される。少量のサンプルを滴取り、H-NMRとIRで分析してメトキシ(methoxy)の残存率を確認した後、残存率が10%である時、0.36重量%HCl水溶液を10重量部徐々に滴加して、pHを酸性に調節した。その後、フェニルトリメトキシシラン(Phenyltrimethoxysilane)1重量部を一度に滴加して15分間攪拌後、1-aで製造された触媒20重量部を添加した。4時間の混合攪拌以後、確認結果、高分子内にかご(cage)形態の高分子が生成されるのを確認することができた。その後、常温に温度を変化させ、混合溶液内のテトラヒドロフランを真空で除去して、全体的な反応物が水溶液混合物に変換されるようにした。4時間の混合攪拌以後、一部を滴取り、29Si-NMRを通じて分析した結果、フェニル(phenyl)基を用いて導入された構造の分析ピークが鋭い形態の2つで示され、別途に残存する副産物なく化学式1のような高分子が製造されたのを確認することができた。また、スチレン換算分子量は18,000と測定された。 29Si-NMR(CDCl3)δ-68.2、-72.3(broad)、-81.1(sharp)、-80.8(sharp)、-82.5(broad) 【0065】 [実施例1-f]B構造内X導入(A-B-A-D構造の完成) 前記実施例1-eで得られた結果物の有機層を別途の精製なく準備した後、3官能単量体を用いて末端をかご(cage)構造に変換した。実施例1-eで得られた物質100重量部を50重量部のテトラヒドロフランに溶かした後、5重量部の蒸溜水を入れて混合溶液を製造した。その後、製造された混合溶液に0.36wt%HCl10重量部を添加し、10分間攪拌後、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)3重量部を一度に滴加して、安定した加水分解を図った。24時間攪拌後、実施例1-aで製造された触媒を3重量部再び添加して塩基性状態に混合溶液のpHを調節した。この時、B構造のX部分にかご(cage)形態の高分子が導入され、反応器内で連続的に反応が行われ化学式7のような高分子が形成される。しかし、他の副産物と共に得られるので、別途の精製が必要であった。その後、常温に温度を変化させ、混合溶液内のテトラヒドロフランを真空で除去して精製を準備した。 【0066】 [実施例1-g]沈殿および再結晶を通した副産物除去、結果物の収得 前記実施例1-fで反応が完了した混合物にメチレンクロリド200重量部を入れ、蒸溜水と共に分別洗浄し、蒸溜水層のpHが中性である時、真空減圧で溶媒を完全に除去した。その後、メタノールに2回沈殿して、未反応単量体を除去し、テトラヒドロフランと水溶液が9.5:0.5重量比率で混合された溶媒に30重量部で溶かして-20℃の温度で2日間保管した。これは、高分子に導入されず、かご(cage)構造で閉じられた物質の再結晶を図って、精製が容易に行われるようにするためである。 【0067】 再結晶過程を終えて得られた固体物質をフィルター後、真空減圧を通じて化学式1の高分子が様々な副産物なく得られることを確認した。また、GPC結果をNMR結果と比較する時、各段階の高分子成長で単独で得られる低分子がなく鋭い(Sharp)形態のかご(cage)形態が結果として導出されることから推せば、複合高分子が問題なく得られるのを確認することができた。この時、分子量はスチレン換算値で24,000の値であった。 【0068】 また、下記表7に記述した単量体を適用してシルセスキオキサン複合高分子を製造した。この時、製造方法は前記実施例1で用いた方法を対等に適用した。 ・・・(中略)・・・ 【0070】 実施例2:D-A-B-A-D構造の複合シルセスキオキサン高分子の合成 D-A-B-A-D構造の複合高分子を製造するために、以下の実施例を用いた。触媒と線形構造の製造は、実施例1-a、b、c、およびdの方法を同様に使用し、その後,連続D-A-B-A-D構造を生成するために、以下の方法で製造を実施した。 [実施例2-a]D構造の過量生成のためのpH変換反応 反応が進行中である実施例1-d混合溶液に0.36wt%HCl水溶液を非常に徐々に15重量部滴加し、pHが酸性を有するように調節し、4℃の温度で30分間攪拌した。その後、ジフェニルテトラメトキシジシロキサン(DiPhenyltetramethoxydisiloxane)の量を実施例1-eの5倍である25重量部で準備して一度に滴加し、1時間攪拌後、実施例1-aで製造された触媒を20重量部再び添加して塩基性状態に混合溶液のpHを調節した。反応完了後、常温に温度を変化させ、混合溶液内のテトラヒドロフランを真空で除去して、全体的な反応物が水溶液混合物に変換されるようにした。4時間の混合攪拌以後、一部を滴取り、29Si-NMRおよび1H-NMRを通じて分析した結果、B構造内に存在するアルコキシ基(alkoxy group)の量が0.006mmol/gに変化し、BとDの繰り返し単位が約5:5比率で導入されたのを確認することができた。また、スチレン換算分子量は32,000と測定された。また、かご(cage)型構造が導入されたが、高分子のGPC形態で単独かご(cage)型物質の分子量分布が見られないので、かご(cage)構造が連続反応を通じて高分子鎖によく導入されたのを確認することができた。 1H-NMR(CDCl3)δ7.5,7.2、3.7、3.4、3.3(broad)、3.1,2.8、2.6、1.5(broad)、0.6。29Si-NMR(CDCl3)δ-72.5(broad)、-81.1(sharp)、-80.8(sharp)、-79.9(sharp)、-82.5(broad) 【0071】 [実施例2-b]B構造内X導入 前記実施例2-aで得られた結果物の有機層を別途の精製なく準備した後、3官能単量体を用いて末端をかご(cage)構造に変換した。実施例2-aで得られた物質100重量部を50重量部のテトラヒドロフランに溶かした後、5重量部の蒸溜水を入れて混合溶液を製造した。その後、製造された混合溶液に0.36wt%HCl10重量部を添加し、10分間攪拌後、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)3重量部を一度に滴加して、安定した加水分解を図った。24時間攪拌後、実施例1-aで製造された触媒を3重量部再び添加して塩基性状態に混合溶液のpHを調節した。この時、B構造のX部分にかご(cage)形態の高分子が導入され、反応器内で連続的に反応が行われ化学式2のような高分子が形成される。しかし、他の副産物と共に得られるので、別途の精製が必要であった。その後、常温に温度を変化させ、混合溶液内のテトラヒドロフランを真空で除去して精製を準備した。 【0072】 [実施例2-c]沈殿および再結晶を通じた副産物除去、結果物の収得 前記実施例2-bで反応が完了した混合物にメチレンクロリド200重量部を入れて、蒸溜水と共に分別洗浄し、蒸溜水層のpHが中性である時、真空減圧で溶媒を完全に除去した。その後、メタノールに2回沈殿して、未反応単量体を除去し、テトラヒドロフランと水溶液が9.5:0.5重量比率で混合された溶媒に30重量部で溶かし、-20℃の温度で2日間保管した。これは、高分子に導入されず、かご(cage)構造で閉じられた物質の再結晶を図り、精製が容易に行われるようにするためである。 【0073】 再結晶過程を終えて得られた固体物質をフィルター後、真空減圧を通じて化学式2の高分子が様々な副産物なく得られることを確認した。また、GPC結果をNMR結果と比較する時、各段階の高分子成長で単独で得られる低分子がなく鋭い(Sharp)形態のかご(cage)形態が結果として導出されることから推せば、複合高分子が問題なく得られるのを確認することができた。この時、分子量はスチレン換算値で36,000の値を得ることができ、特に化学式2の結果は次の通りである。 29Si-NMR(CDCl3)δ-72.5(broad)、-81.1(sharp)、-80.8(sharp)、-79.9(sharp)、-81.5(sharp)、-82.5(broad) 【0074】 また、下記表8に記述した単量体を適用してシルセスキオキサン複合高分子およびコーティング組成物を製造した。この時、製造方法は前記実施例2で用いた方法を対等に適用した。 ・・・(中略)・・・ 【0076】 実施例3:シルセスキオキサンE-A-B-A-D構造の複合高分子の合成 E-A-B-A-D構造の複合高分子を製造するために、以下の実施例を用いた。触媒と線形構造の製造は、実施例1の方法を同様に使用してA-B-A-D構造体を準備し、その後,E-A-B-A-D構造を生成するために、以下の方法で製造を実施した。 [実施例3-a]鎖末端E構造の生成 実施例1-gで得られた混合物に別途の精製なくメチレンクロリド20重量部を滴加し、0.36重量%HCl水溶液を5重量部滴加し、pHが酸性を有するように調節し、4℃の温度で30分間攪拌した。その後、ジメチルテトラメトキシシラン(dimethyltetramethoxysilane)1重量部を一度に滴加した。この時、まだ分子構造内で加水分解されずに存在した部分が溶媒と分離された酸性水溶液層で加水分解物に容易に変換され、生成された別途の反応物と有機溶媒層で縮合され、末端単位にEが導入された。5時間の攪拌後、反応の攪拌を停止し、常温に反応器の温度を調節した。 【0077】 [実施例3-b]B構造および末端E構造のXにかご(cage)導入 前記実施例3-aで得られた結果物の有機層を別途の精製なく準備した後、3官能単量体を用いて末端をかご(cage)構造に変換した。反応が進行中である実施例3-a混合溶液にメチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)3重量部を一度に滴加して、安定した加水分解を図り、24時間攪拌後、実施例1-aで製造された触媒を3重量部再び添加して塩基性状態に混合溶液のpHを調節した。この時、E構造末端にかご(cage)形態の高分子が導入され、反応器内で連続的に反応が行われ化学式3のような高分子が形成される。しかし、他の副産物と共に得られるので、別途の精製が必要であった。その後、常温に温度を変化させ、混合溶液内のテトラヒドロフランを真空で除去して精製を準備した。 【0078】 [実施例3-c]沈殿および再結晶を通じた副産物除去、結果物の収得 前記実施例3-bで反応が完了した混合物を得た後、蒸溜水を用いて洗浄し、蒸溜水層のpHが中性である時、真空減圧で溶媒を完全に除去した。その後、メタノールに2回沈殿して、未反応単量体を除去し、テトラヒドロフランと水溶液が9.5:0.5重量比率で混合された溶媒に30重量部で溶かし、-20℃の温度で2日間保管した。これは、高分子に導入されず、かご(cage)構造で閉じられた物質の再結晶を図り、精製が容易に行われるようにするためである。 【0079】 再結晶過程を終えて得られた固体物質をフィルター後、真空減圧を通じて化学式3の高分子が様々な副産物と共に得られることを確認した。また、GPC結果をNMR結果と比較する時、各段階の高分子成長で単独で得られる低分子がなく鋭い(Sharp)形態のかご(cage)形態が結果として導出されることから推せば、複合高分子が問題なく得られるのを確認することができた。この時、分子量はスチレン換算値で28,000の値を得ることができた。 【0080】 また、下記表9に記述した単量体を適用してシルセスキオキサン複合高分子を製造した。この時、製造方法は前記実施例3で用いた方法を対等に適用した。 ・・・(以下、表9及び記号の説明は省略)・・・」 (3)実施可能要件の判断 本件発明1は、「化学式1乃至3のうちのいずれか一つで示されるシルセスキオキサン複合高分子」についての発明であるから、本件発明1について実施可能要件を満たすためには、そのような高分子を製造するための具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、検討する。 ア 化学式1で示されるシルセスキオキサン複合高分子及びその製造方法について (ア)本件発明1のうち、化学式1で示されるシルセスキオキサン複合高分子(以下「化学式1の高分子」という。)は、「A」がa個連結したブロック[A]a、「B」がb個連結したブロック[B]b、「A」がa個連結したブロック[A]a、「D」がd個連結したブロック[D]dがこの順につながったブロック共重合体([A]a-[B]b-[A]a-[D]d(当審注:両端の官能基は省略し、ブロック同士の結合は「-」で示した。以下も同様である。))であるから、本件特許が実施可能要件を満たすというためには、本件明細書に、このような高分子を、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく作ることができる程度に記載されていなければならない。 (イ)そこで、本件明細書の記載について検討すると、【0016】~【0020】には、化学式1の構造についての説明があり、【0021】~【0023】には、置換基の具体的な例についての記載があるが、これらの記載によっては具体的な製造条件は示されていないから、当業者は化学式1の高分子を製造することはできない。 次に、【0031】には、化学式1の高分子の製造方法について、第1~第4段階の各段階を順番に経て製造されることが記載され、【0034】、【0035】には塩基性触媒及び酸性触媒、【0036】には有機溶媒、【0037】、【0038】には有機シラン化合物、【0039】には各段階のpHについてそれぞれ記載されるものの、上記触媒や化合物の使用量やpH以外の反応条件が記載されていないし、【0031】の各工程の記載をみても、第1~第4段階においてどのような反応が起こり、なぜ化学式1のような最終生成物が得られるのかについて具体的な説明がなく、また上記触媒等の使用量や反応条件が本件特許の出願時における技術常識から当業者に自明であるともいえない。 そうすると、【0031】~【0039】の記載によっても、当業者は化学式1の高分子を製造することはできない。 (ウ)そこで、化学式1の高分子の具体的な合成例とされる実施例1(本件明細書の【0060】~【0067】)の記載について検討する。 実施例1では、実施例1-aで触媒を製造し、実施例1-bでA前駆体([A]a)を製造し、実施例1-cでA-B前駆体([A]a-[B]bの[B]に「X」が導入される前のもの)を製造し、実施例1-dでA前駆体とA-B前駆体を反応させてA-B-A前駆体([A]a-[B]b-[A]aの[B]に「X」が導入される前のもの)を製造し、実施例1-eでA-B-A前駆体にD構造を導入してA-B-A-D前駆体([A]a-[B]b-[A]a-[D]dの[B]に「X」が導入される前のもの)を製造し、実施例1-fでA-B-A-D前駆体の[B]にXを導入してA-B-A-D構造を完成させ、実施例1-gで沈殿及び再結晶を通して副産物を除去してA-B-A-D構造の結果物を得たことが一応記載されている。 そこで、以下、実施例1-c、1-e、1-f及び1-gについて検討する。 (エ)実施例1-cについて a.実施例1-cで起きる反応についての検討 【0062】に記載された実施例1-cは、A-B前駆体を製造する工程であり、フラスコに蒸留水5重量部、テトラヒドロフラン40重量部、実施例1-aで製造された触媒0.5重量部を滴下した後、(原料となる)シラン化合物を10重量部滴下し、再びテトラヒドロフランを20重量部滴下して2時間追加攪拌したことが記載されている。 しかし、実施例1-cは、使用する触媒とシラン化合物が(A前駆体を製造する)実施例1-bと同じであるから、上記のような反応によって、A-B前駆体、すなわち「A」がa個、「B」がb個がこの順に結合したブロック共重合体の前駆体([B]にXを導入する前のもの)が生成するものとは認められない。 すなわち、実施例1-cは、実施例1-bよりも、溶媒であるテトラヒドロフランの使用量が多く、触媒の使用量が少なくなっており、触媒の濃度が低くなっているから、実施例1-bよりも加水分解縮合反応がおきにくくなると理解され、実施例1-bで得られる「A」前駆体ではなく、「A」のうち、一部のSi-O-Si結合が切れたもの(原料に含まれるSi-OR基の一部が、加水分解縮合せずに残ったもので、例えば「B」のようなもの)が部分的に生成されるにすぎない。 そうすると、実施例1-cで得られるのは、「A」がa個、「B」がb個、この順に結合したブロック構造ではなく、「A」と「B」がランダムに結合したようなものと考えるのが自然である。 また、実施例1-cにおいて、原料であるシラン化合物を添加した後、しばらく重合が行われ、その後にテトラヒドロフランが20部添加されたと仮定しても、溶媒を追加添加する前では触媒の濃度が比較的高い状態で重合が行われてブロック[A]aが製造され、その後に触媒の濃度が低くなり[A]の一部の結合が切れた構造が生成することが予想されるものの、その場合に生成する構造([A]aの隣に生成する構造)は、構成単位[A]のうち一部のSi-O-Si結合が切れたものにすぎず、上下左右に4つあるSi-O-Si構造のうち、上部水平方向のSi-O-Si結合だけが選択的に生成しない構成単位[B]が生成することは当業者にとって認識できることではない。 ましてや、bが2以上である構造、すなわち上部水平方向のSi-O-Si構造だけが選択的に生成しない構造単位[B]が繰り返されたブロック[B]bが得られることは、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が到底認識できることではない。 そして、実施例1-cでA-B前駆体が得られなければ、実施例1の工程を経てもA-B-A-D構造のシルセスキオキサン複合高分子が得られないことは当業者にとって明らかである。 b.甲13における特許権者の説明について 甲13は、本件特許の審査において提出された審判請求書であり、特許権者は、実施例1-c(本件明細書の【0062】)で起きる反応について、次の説明をしている。 「ここで実施例1-cは、実施例1-bよりも溶媒(テトラヒドロフラン)は、より多く滴加し、触媒の量は減らして、加水分解および軸・重合発生エネルギーを低レベルに調整します。 そして、実施例1-cの反応初期には、実施例1-aの強塩基触媒によりA構造が生成されるが、溶媒を追加で滴加した後、(再びテトラヒドロフランを20重量部滴加し)には、加水分解が少なく行われるためAの構造にBの構造前駆体が結合された下記化学式1-cの形の構造(AB前駆体)が生成されます。 [図:0001425702000052.jpg] 前記化学式1-cから"-O-R"の部分は、アルコキシ基で以来、実施例1-fでcage構造が導入される部分です。」(項目3(2)(2-2)2)) しかし、実施例1-cでは、溶媒、触媒及び原料シラン化合物を加えた後、続いて溶媒であるテトラヒドロフランを20部追加しているにすぎず、シラン化合物を加えた後、(触媒濃度が高い条件で)シランを重合した旨の記載はなく、単に実施例1-bよりも溶媒を多くして重合を行っただけと認められるから、実施例1-cの反応初期にはA構造が生成し、溶媒を追加で滴下した後にB構造が生成するとはいえない。 仮に、実施例1-cにおいて、原料シラン化合物を加えた後、しばらく時間をおいてから追加のテトラヒドロフランが加えられたとしても、上記aで述べたように、その場合に生成する構造は、「A」のうち、一部のSi-O-Si結合が切れたものにすぎず、上記化学式1-cの右側のブロックような、上下左右に4つあるSi-O-Si構造のうち、上部水平方向のSi-O-Si結合だけが選択的に生成しない構造が生成することや、そのような構造が繰り返されることは当業者が認識できることではない。 したがって、甲13の記載を考慮しても、実施例1-cにおいて、A-B前駆体が生成することを理解することはできない。 c.特許権者の主張についての検討 特許権者は、令和6年9月30日提出の意見書において、実施例1-cに関して以下の点((a)~(e))を主張するので、検討する。 主張(a) 「実施例1-cの反応条件は、実施例1-bの反応条件に比べ、常温で触媒の含有量を下げ、溶媒の含有量を上げることにより、加水分解反応があまり進行しないように調節した条件です。このような反応条件に応じて、A-B前駆体が自然に合成できます。」(意見書3頁下から8~5行) 主張(a)について検討すると、上記aで述べたように、単に実施例1-bの反応条件よりも加水分解があまり進行しないように調節するだけでは、[A]と[B]がランダムに結合したようなものが得られることが予想されるにすぎず、A-B前駆体、すなわち[A]がa個、「X」導入前の[B]がb個がこの順に結合したブロック構造が自然に合成されるなどということは、理解できることではない。 また、仮に実施例1-cの反応において、[A]aが先に生成するとしても、上記aで述べたように、その後に生成する構造は[A]構造のうち一部のSi-O-Si結合が切れた構造にすぎず、[B]bになるとは限らないから、やはり実施例1-cの反応でA-B前駆体が生成することを当業者が認識できるとはいえない。 主張(b) 「仮に、加水分解反応があまり進行しない条件下で、触媒と副反応により生成された不純物が生成されると仮定しても、通常の当業者は、攪拌中の混合溶液を滴取り、二回洗浄することで、水への溶解度が高い触媒、及び加水分解のみが進んだSi-OH基含有化合物(縮合反応まで進行しない)などの不純物を容易に除去することができます。」(意見書3頁下から4~1行) 主張(b)について検討すると、除去される不純物は「水への溶解度が高い触媒」や「加水分解のみが進んだSi-OH基含有化合物」などにすぎず、実施例1-cにおいて生成する[A]と[B]がランダムに結合した重合体や、ブロック「A」の隣に、「B」とは異なるもの(上下左右のSi-O-Si結合のうち、上部水平方向ではなく、縦方向又は下部水平方向のSi-O-Si結合が切れた構造)が結合したものを除去できることは何ら説明されていない。そして、除去しようとするものはA-B前駆体とほぼ同様の構造を有し、その性質も極めて類似するから、そのようなものを洗浄等の簡単な操作で選択的に除去できるとは直ちには理解できない。 主張(c) 「乙第12号証を参照すると、洗浄前は、不純物を示すブロードなピークが約900~1400cm-1で観察されるのに対し、洗浄後は、前記化学式1-cで表される前駆体を示す水平Si-O-Si及び垂直Si-O-Siに区分される2つのSi-O-Siの鋭い(Sharp)ピークが約900~1200cm-1で分析され、約2900~3200cm-1付近で末端基(Si-OH)に対するピークが分析されることを確認することができます。 これにより、通常の当業者は、洗浄段階を介して、触媒、副反応で生成される可能性のある不純物を効果的に除去し、化学式1-cで表されるA-B前駆体を合成することができます。」(意見書5頁下から8~2行) 主張(c)について検討すると、上記のとおり、実施例1-cでは[A]と[B]がランダムに結合した重合体や、ブロック[A]の隣に、[B]だけでなく、上部水平方向以外のSi-O-Si結合が切れたものが生成することが予想されるところ、そのような生成物であっても、多数の水平Si-O-Si及び垂直Si-O-Si構造を有することに変わりはないから、A-B前駆体と同様に水平Si-O-Si及び垂直Si-O-Siに区分される2つのSi-O-Siの鋭いピークが観察されることになるといえる。 したがって、乙12の結果を考慮しても、実施例1-cにおいて、A-B前駆体(上記bの化学式1-c)が選択的に得られたことを確認することはできない。 主張(d) 「また、下記乙第13号証の(a)を参照すると、A前駆体(実施例1-b)は、アルコキシ基に対応するピークを示しておりません。 洗浄前の不純物が含まれた中間生成物を分析した乙第13号証の(b)を参照すると、実施例1-cによる方法において、洗浄(精製)前に得られる不純物を分析した結果、前記不純物は、約3.5ppm付近でアルコキシ基に対応するブロード(broad)なピーク、約2.5~3.0ppmでアルコキシ間の結合で形成されたアルコキシ結合残存物に対応するピーク、及び約1.5~2.0ppmでランダム構造に成長した不純物に対応するブロードなピークを示しました。 一方、洗浄後に不純物が除去された生成物を分析した乙第13号証の(c)を参照すると、実施例1-cによる方法で洗浄(精製)後に得られた生成物は、約3.5ppm付近でアルコキシ基に対応する鋭い(Sharp)ピークを示しているのに対し、約1.5~2.0ppmでランダム構造に成長した不純物と約2.5~3.0ppmでアルコキシ結合残存物に対応するピークを示しておりません。 これにより、通常の当業者は、洗浄段階を介して、触媒と副反応で生成されうる不純物を効果的に除去して、化学式1-cで表されるA-B前駆体を合成することができます。」(意見書6頁1~13行) 主張(d)について検討すると、特許権者は、実施例1-cによる方法で洗浄後に得られた生成物は、アルコキシ基に対応する鋭いピークを示すと述べるが、実施例1-cで生成する[A]と[B]がランダムに結合した重合体や、ブロック[A]の隣に、[B]だけでなく、上部水平方向以外のSi-O-Si結合が切れた構造が結合したものであっても、切れた部分に由来するアルコキシ基(Si-OR結合)が含まれるから、乙13の結果を根拠に、実施例1-cにおいて、A-B前駆体が選択的に得られたことを確認することはできない。 主張(e) 「審判部は、さらに、上部の水平方向のSi-O-Si構造のみが選択的に生成されていない構造単位(B構造)が何個も連結されたブロック構造であるかを確認することができないことを指摘しました。 しかし、通常の当業者であれば、(i)容易に算出可能なA繰り返し単位の分子量とA前駆体のスチレン換算分子量が6,000g/molであること、(ii)A-B前駆体の分子量が8,000g/molであること、(iii)1H-NMRの積分量分析によって、約3.5ppmで示される-ORピークの積分値と約0.5ppmで確認される-R7ピークの積分値とを比較することができること等を総合的に考慮して、B構造の繰り返し単位の数を容易に類推することができます。」(意見書7頁1~8行) 主張(e)について検討すると、分子量が「8,000g/mol」というのは、実施例1-cの生成物の測定値のことであり、上記のとおり、実施例1-cの生成物には、B構造だけでなく、A構造の上部水平方向以外のSi-O-Si結合が切れた構造も含まれ、その構造にも-OR基や-R7基が含まれるから、主張(e)の方法によって予想できるのは、実施例1-cの生成物に含まれる、A構造以外の構造単位の数にすぎない。 したがって、実施例1-cにおいて、A構造以外の構造単位の数が算出できたとしても、実施例1-cにおいてA-B前駆体が選択的に得られたことにはならず、特許権者の主張(e)を採用することはできない。 したがって、特許権者の上記主張を考慮しても、実施例1-cの生成物が、A-B前駆体であることを確認することはできない。 よって、特許権者の主張を採用することはできない。 (オ)実施例1-eについて a.実施例1-eで起きる反応についての検討 次に、実施例1-eについて検討する。【0064】に記載された実施例1-eは、実施例1-dで得られたA-B-A前駆体にD構造を導入するものとされており、実施例1-dの生成物をpHが酸性となるように調節し、ジフェニルテトラメトキシジシロキサンを加えて加水分解を行い、実施例1-aで製造された触媒を加えて塩基性状態にしてD構造の前駆体を形成し、pHを酸性にした後、フェニルトリメトキシシラン及び実施例1-aで製造された触媒を添加し、混合攪拌することにより、高分子内にかご形態の高分子が生成されるのが確認できたとされている。 【0064】の記載のみでは、実施例1-eにおいてどのような反応が起き、どのような生成物が生成するのかを明確に理解することはできない。仮に、A-B-A前駆体に含まれるSi-OR構造に、途中で形成したD構造前駆体が結合する反応が起きるとしても、D構造前駆体がA-B-A前駆体と反応する部分は、A-B-A前駆体の右側のA構造に存在するSi-OR基だけでなく、左側に存在するSi-OR基や、B構造の上部に含まれるSi-OR基等も考えられるから、実施例1-eの反応によって、A-B-A前駆体の右側だけに選択的にD構造が導入され、かつ、そのD構造がd個連続するような反応が、選択的に起こるものとは認められない。 b.甲13における特許権者の説明について 特許権者は、甲13において、実施例1-e(本件明細書の【0064】)で起きる反応に関して、次の説明をしている。 「ここで、実施例1-eの反応の初期には、下記化学式1-dのように、実施例1-dの結果(線形高分子)にアルコキシ基、開いているD構造の前駆体が形成される。 [図:0001425702000053.jpg] そして、実施例1-eの反応中盤にはHClを滴下してpHを酸性に調整してくれて、実施例1-aで製造された触媒を添加します。触媒を添加する瞬間、溶液が酸性で強塩基に変化されて軸・重合速度が非常に速く上昇し、D前駆体として形成されていないジシロキサン(disiloxane)モノマーの一部が、下記化学式1-eのようCage構造に変換されます。 [図:0001425702000054.jpg] そして、実施例1-eの反応後半では、下記反応式eのように化合物の軸・重合が行われてD構造が形成されます。 [反応式e] [図:0001425702000055.jpg] 前記実施例1-eに形成されたD構造を29Si-NMRで分析した結果、 29Si-NMR(CDCl3)δ-68.2、-72.3(broad)、-81.1(sharp)、-80.8(sharp)、-82.5(broad)([0064])を獲得しました。 そして、上記29Si-NMR分析の結果、個別分離されたsharpなピークが2つ現れるということから、実施例1-eの結果にcage構造が導入されたことを確認することができます(引用文献1の参照)」(項目3(2)(2-2)4)) 上記説明によると、溶液が酸性から強塩基に変化することで、ジシロキサンモノマー(実施例1-eで用いられている「ジフェニルテトラメトキシジシロキサン」)の一部が化学式1-eで表されるかご(cage)構造に変換され、それが実施例1-dの前駆体と反応すると解される。 しかし、たとえ実施例1-eの反応条件で化学式1-eで表されるかご構造のものが得られるとしても、上記aで述べたように、それが実施例1-dで得られたA-B-A前駆体と反応する部分は、前駆体の右側に存在するSi-OR基に限られるわけではない。 また、上記[反応式e]において、化学式1-eで表されるかご構造の化合物には、2つのSi-OR基が含まれているところ、そのうちの一方のみが反応式eのように実施例1-dの前駆体の右側部分と反応し、他方がジシロキサンモノマー(反応式eの中央の化合物)と選択的に反応するとは考えられず、化学式1-eで表されるかご構造の化合物に含まれるSi-OR基は、実施例1-dの前駆体及びジシロキサンモノマーに含まれる任意のSi-OH(R)基とランダムに反応を起こすと考えるのが自然である。 そして、得られた生成物を29Si-NMRで分析した結果、sharpなピークが2つ現れ、実施例1-eの結果にかご構造が導入されたと分析している点については、実施例1-eの最終的な生成物の中にsharpなピークに対応するかご構造(sharpなピークがかご構造に対応することについては、本件明細書の【0067】、甲13の項目(2)(2-1)を参照のこと。)が含まれていることが理解できるにすぎず、これは実施例1-dの前駆体と、かご構造を有する化学式1-eの化合物がどこかで結合していることを示唆しているに過ぎないから、それだけでは両者が反応式eで表されるような特定の部位で特定の反応が起きた生成物が得られていることの証拠にはならない。 よって、甲13を考慮しても、実施例1-eの反応によって、A-B-A前駆体の右側だけに選択的にD構造が導入され、かつ、そのD構造がd個連続するような反応が、選択的に起こるものとは認められない。 c.特許権者の主張について 特許権者は、令和6年9月30日提出の意見書において、実施例1-eに関して以下の点((a)~(c))を主張するので、検討する。 主張(a) 「まず、審判部は、反応可能な官能基の一例として、左側のAブロックに存在するSi-OH基を提示しました。しかし、このような審判部の解釈は、立体化学的に進行する縮/重合反応を平面的に誤って解釈した結果であって、不当です。例えば、A-B-A前駆体において、左側のAブロックにDブロックが結合する場合には、D-A-B-A構造が合成され、右側のAブロックにDブロックが結合する場合には、A-B-A-D構造が合成されます。前記合成されたD-A-B-A構造と前記合成されたA-B-A-D構造とは、立体化学的に同一の構造です。」(意見書8頁下から9~4行) 主張(a)について検討すると、D構造が1つしか結合しない場合は、A-B-A構造の左右どちらにD構造が結合しても立体化学的に同じ構造になるが、複数のD構造が結合する場合はA-B-A構造の左右のどちらにも結合することが考えられるから、反応式eのように、d個のD構造が右側だけに選択して結合して成長するものとは認められない。なお、左側にも結合して成長した場合は化学式2の構造の前駆体になるが、実施例1は化学式1の構造の化合物の製造例である。 主張(b) 「次に、審判部は、反応可能な官能基の他の例として、Bブロックの上部に含まれるSi-OR基を提示しました。しかし、Bブロックの上部に含まれるSi-OR基は、反応可能な官能基であるが、Bブロックの両末端にあるAブロックによる立体障害(Steric hindrance)により、側鎖にある-Si-OR基が相対的に優勢な反応性官能基となる可能性があります。・・・(中略)・・・前記参考資料8の内容を本件に類推適用すると、Bブロックの上部に含まれるSi-OR基は、両末端にあるAブロックの大きな体積によって立体障害を受けるのに対し、相対的に立体障害を少なく受ける、側鎖にある-Si-OR基が優勢な反応性官能基となる可能性があります。」(意見書8頁下から3行~9頁7行) 主張(b)について検討すると、立体障害があっても反応が優勢でなくなるだけであり、その反応自体は起こると解されるから、反応式eで示されるような、実施例1-dの前駆体の右側部分に、選択的にDブロックが結合するような反応が起きるものとは認められない。 主張(c) 「たとえ、審判部の主張のように、Bブロックの上部に含まれるSi-OR基で付随的な副反応が進行しても、常温に温度を変化させ、混合溶液中のテトラヒドロフランを真空で除去することにより、全体的な反応物を水溶液混合物に変換する精製作業において前記副反応で生成された不純物は、水に対する溶解度が著しく低下して沈殿物として容易に分離できます。 ・・・(中略)・・・ 乙第14号証の(b)を参照すると、精製前の実施例1-eの中間生成物は、様々な反応可能な官能基の存在により副反応が進行した生成物であり、水に対する溶解度が低いため沈殿物として容易に分離されたものです。・・・(中略)・・・一方、乙第14号証の(a)を参照すると、反応物を水溶液混合物に変換する過程で、水への溶解度が高い実施例1-eの生成物は精製されることにより、線形構造の成長を強く裏付ける垂直方向のSi-O-Si stretching vibration peakが約1000cm-1付近で鋭い(Sharp)ピークを示しました。 これにより、通常の当業者は、本件特許発明の明細書の段落[0064]に記載された製造方法で、副反応により進行した不純物を含む中間生成物を容易に除去することにより、実施例1-eの生成物を合成することができます。」(意見書9頁15行~10頁18行) 主張(c)について検討すると、実施例1-eの生成物が水に対する溶解度が高いのであれば、D構造の結合位置だけが異なる生成物も同様であると考えられるから、そのようなものが沈殿物として容易に分離できるものとは認められない。 また、乙14によれば、精製後の実施例1-eの生成物は線形構造の成長を強く裏付ける垂直方向の鋭いSi-O-Si stretching vibration peakを示しているが、A-B-A前駆体の左右どちらにD構造が成長しても線形構造は成長するし、一部がBブロック上部と反応し、残りが右側に成長する場合も同様であるから、乙14の結果から、実施例1-dの前駆体の右側部分に、選択的にDブロックが結合するような反応が起きたとはいえない。 したがって、特許権者の上記主張を考慮しても、実施例1-eの生成物が、A-B-A-D前駆体(B構造に「X」を導入する前のもの)であることを確認することはできない。 よって、特許権者の主張を採用することはできない。 (カ)実施例1-fについて a.実施例1-fで起きる反応についての検討 次に、実施例1-fについて検討する。【0065】に記載された実施例1-fは、実施例1-eの生成物であるA-B-A-D前駆体のB構造にXを導入してA-B-A-D構造を完成させる工程とされている。 そして、実施例1-fでは、実施例1-eの生成物をテトラヒドロフランと蒸留水を加えて混合溶液とし、その後塩酸を添加し、メチルトリメトキシシランを加えて加水分解を行い、実施例1-aで製造された触媒を加えて塩基性状態にして、B構造のX部分にかご形態の高分子が導入されて、化学式1のような高分子が形成されるとされている。 【0065】の記載のみでは、実施例1-fにおいてどのような反応が起き、なぜ化学式1のような高分子が形成されるのかを明確に理解することはできないが、仮に、メチルメトキシシランが実施例1-aで製造された触媒により重合してかご構造の高分子(X)が生成し、それがA-B-A-D前駆体に含まれるB構造のSi-OR基と反応してB構造にXが導入される反応が起きているとしても、かご型構造の高分子(X)がA-B-A-D前駆体と反応する場所としては、前駆体中の左右及び上部に複数のSi-OR基が存在するところ、なぜ構造Bに含まれる特定のSi-O-R基と選択的に反応が起きるのか、一般的な化学反応の技術常識を考慮しても明らかでない。 そうすると、実施例1-fでは、A-B-A-D前駆体中に含まれる任意のSi-OR基が、かご形構造の高分子(X)と反応すると考えられるから、その反応によって化学式1で表されるような、特定の箇所(A-B-A-D構造のB構造上部に含まれる2つのSi-OR基のうち、右側のSi-OR基)のみにかご形構造の高分子(X)が結合したポリマーが選択的に得られるものとは認められない。 b.甲13における説明について 特許権者は、甲13において、実施例1-f(本件明細書の【0065】)で起きる反応について、次の説明をしている。 「実施例1-fでも実施例1-eのようにHClを添加してpHを酸性に調整し、実施例1-aで製造された触媒を添加して、下記化学式1-eのようなCage構造を形成します。 [図:0001425702000056.jpg] 前記化学式1-eのように形成されたCage構造を下記反応式1-fのように、実施例1-eの結果と軸・重合させて、最終的に下記化学式1のA-B-A-D構造のSSQが得られます。 [図:0001425702000057.jpg] 」(項目3(2)(2-2)5)) 上記説明によると、実施例1-fでも実施例1-eと同様に、実施例1-aで用いられた触媒を用いて塩基性条件で重縮合を行うと、かご型構造のポリマーが得られ、それが実施例1-eの前駆体の特定部位と反応して本件発明1の「X」部分が導入されるとされている。 しかし、上記aで述べたように、かご型構造のポリマーが実施例1-eの前駆体と反応する場所としては、前駆体中の左右及び上部に複数のSi-OR基が存在するから、その反応によって上記の化学式fで表されるような、特定の箇所のみに化学式1-eの化合物が結合したポリマーが得られるものとは認められない。 c.特許権者の主張について 特許権者は、令和6年9月30日提出の意見書において、実施例1-fに関して以下の点((a)~(c))を主張するので、検討する。 主張(a) 「実施例1-fの場合、塩酸を添加してpHを酸性に調整し、実施例1-aで製造された触媒を添加してケージ構造を形成しました。塩酸を添加して反応溶液のpHを酸性に調整する場合、B構造内にX構造が導入される場合に作用する立体障害による影響が最小限に抑えられることができます。・・・(中略)・・・ 仮に、左右に反応可能な複数のSi-OH基と、一部がオープンしたケージ構造の化合物とが互いに縮合反応する副反応が進行するか、或いは完全に閉じたケージ構造の不純物が生成されたと仮定しても、前記副反応の生成物は、塊状構造となることで自然に沈殿物として得られ、完全に閉じたケージ構造は結晶性に性質が変更され、溶媒への溶解度が著しく低下して沈殿物として得られることにより、容易に除去できます。」(意見書11頁8~19行) 主張(a)について検討すると、特許権者は、塩酸を添加して反応溶液のpHを酸性に調整する場合、B構造内にX構造が導入される場合に作用する立体障害による影響が最小限に抑えられることができると述べるが、上記(オ)cにおける主張(b)によれば、A-B-A-D構造のBブロックの上部に含まれるSi-OR基は、立体障害により他のSi-OR基よりも反応が起きにくいと考えられる。そして、意見書ではpHを酸性にするとそのような立体障害の影響が最小限となる理由が何ら説明されていないし、仮に立体障害による影響が最小限に抑えられるとしても、その場合はA-B-A-D構造の左右とB構造上部に存在するSi-OR基に対して、同じように反応が進むだけであるから、B構造上部のみに選択的に反応が起きるとは認められない。 また、特許権者は、左右に反応可能な複数のSi-OH基と、一部がオープンしたケージ構造の化合物とが互いに縮合反応する副反応が進行しても、副反応の生成物は塊状構造となることで自然に沈殿物として得られると主張する。しかし、かご形構造のポリマーが、左右のSi-OH基と反応した場合は塊状構造となり、B構造上部右側のSi-OR基と反応した場合は、そうならない理由が何ら明らかでないし、沈殿物を分析して、それが「左右に反応可能な複数のSi-OH基と、一部がオープンしたケージ構造の化合物とが互いに縮合反応する副反応」の生成物であったことを示す証拠もない。 さらに、特許権者は、不純物のうち「完全に閉じたケージ構造」も容易に除去できると主張するが、そのようなものが除去できたとしても、(完全に閉じたケージ構造ではない)A-B-A-D前駆体のB構造上部の右側のSi-OR基以外の位置で、かご形構造のポリマーが反応したものを選択的に除去できる根拠にはならない。 主張(b) 「また、審判部は、B単位構造の上部に含まれる2つのSi-OR基のうち、左側に存在する官能基に対する反応可能性を指摘しましたが、このような審判部の解釈は、本意見書1.2で上述したように、立体化学的に進行する縮/重合反応を平面的に誤って解釈した結果であり、不当です。例えば、B単位構造の上部に含まれる2つのSi-OR基のうち、左側に存在する官能基と反応して生成された生成物は、右側に存在する他の官能基と反応して生成された生成物と立体化学的に同じ構造を持ちます。」(意見書11頁下から2行~12頁4行) 主張(b)について検討すると、A-B-A-Dブロック共重合体は左右非対称であるから、B構造上部に含まれる2つのSi-OR基のどちらと反応しても立体化学的に同じ構造を持つとはいえないし、B構造は繰り返し単位であって、同じものがb個連続しているところ、その全てのB構造において、右側にあるSi-OR基だけがかご形構造のポリマー(X)と反応し、左側のものは反応しないなどということは、技術常識からも想定できることではない。 主張(c) 「一方、精製前の分析結果である乙15を参照すると、実施例1-fによる方法で生成された中間生成物(ターゲット生成物及び不純物を含む)は、完全に閉じたケージ構造及び両末端の側鎖のSi-OH基とランダムに形成された不純物を含むことにより、約1000~1800cm-1でブロード(Broad)な不規則ピークを示しました。 これに対し、精製後の分析結果である乙第10号証を参照すると、実施例1-fによる方法において、精製後の生成物は、約1000~1800cm-1の前記不純物が示すブロード(Broad)な不規則ピークを示さず、約800~1200cm-1で分離されたSi-O-Siピークを示しました。このような分離されたSi-O-Siピークは、線形構造の分子量の増加に伴って現れるものです。 続いて、乙第10号証を参照すると、垂直方向のSi-O-Siピーク(黄色)の高さ及び面積が水平方向のSi-O-Siピーク(赤色)の高さ及び面積に近接していることを確認することができます。このような実施例1のピークは、Si-O-Si結合角がほとんど同様に構成されてstreching peakが一つだけ現れる(未分離)単独ケージ構造のシルセスキオキサンとは区別されることを類推することができます。」(意見書12頁下から6行~13頁7行) 主張(c)について検討すると、実施例1-fの精製後の分析結果である乙10によれば、水平方向のSi-O-Siピークと垂直方向のSi-O-Siピークに分離されたSi-O-Siピークがみられるが、実施例1-fにおいて、かご形構造のポリマーが左右及び上部のどの部分と結合しても、生成物には多数の水平方向のSi-O-Si結合と、垂直方向のSi-O-Si構造が存在することになるから、乙10の結果を考慮しても、上記bの反応式1-fのような、A-B-A-D前駆体の特定の位置(B構造上部の右側のSi-OR基)で、かご形構造のポリマー(X)との反応が起きたことを確認することはできない。 したがって、特許権者の上記主張を考慮しても、実施例1-fの生成物がA-B-A-D構造であることを確認することはできない。 よって、特許権者の上記主張を採用することはできない。 (キ)実施例1-gについて a.実施例1-gで得られる最終生成物の分析結果についての検討 【0066】、【0067】に記載された実施例1-gは、実施例1-fで得られた生成物から、再結晶によって副産物を除去し、シスセスキオキサンA-B-A-D構造の複合高分子を得る工程とされている。 そこで検討すると、実施例1-gでは、「GPC結果をNMR結果と比較する時、各段階の高分子成長で単独で得られる低分子がなく鋭い(sharp)形態のかご(cage)形態が結果として導出されることから推せば、複合高分子が問題なく得られるのを確認することができた。」(【0067】)と記載されている。 しかし、「GPC結果」及び「NMR結果」が具体的にどのようなものであったのかが示されておらず、また、「低分子がなく鋭い(sharp)形態のかご(cage)形態が結果として導出される」というだけでは、生成物中に低分子成分がないことと、生成物中にかご形態が含まれていることしか確認することができないから、上記結果からは、得られた生成物が化学式1で表される構造を有するものであるのか、それとも、上記(カ)aで述べたような、A-B-A-D前駆体中に含まれる任意のSi-OR基と、かご形構造の高分子(X)とが反応した生成物であるのかを、判別することはできない。 したがって、当業者であっても、実施例1-gの最終生成物が、本件発明1の化学式1で表される構造を有するものであることを理解することはできない。 b.甲13における説明について 特許権者は、甲13において、実施例1-gの最終生成物の分析結果(本件明細書の【0067】)について、次の説明をしている。 「上記の分析結果をより詳しく説明すれば、上述の実施例1の29Si-NMR分析において示したように、図1の(b)の29Si-NMR分析結果ではbroadした形のpeakとSharpなpeakが一緒に分析される」ことから、実施例1のSSQ複合高分子はLadderとCage構造の両方が存在することを確認することができます。(当審注:図1は省略)」(項目3(2)(2-2)6)) しかし、上記(オ)bで述べたのと同様の理由により、生成物の29Si-NMR分析結果にbroadした形のpeakとsharpなpeakが一緒に分析されるというだけでは、生成物の中にsharpなピークに対応するかご構造と、broadなピークに対応するはしご(Ladder)構造が含まれていることが理解できるにすぎないから、それだけでは、本件発明1の化学式1で表されるような特定の構造を有する生成物が得られたことの証拠にはならない。 c.特許権者の主張について 特許権者による、実施例1-gで得られる最終生成物の分析結果に関する主張については、上記(カ)c.の主張(c)で述べたとおりであり、特許権者の主張を採用することができない。 (ク)化学式1で示されるシルセスキオキサン複合高分子及びその製造方法についてのまとめ 上記(エ)~(キ)で述べたとおり、実施例1-c、1-eの各工程において得られるものは、A-B、A-B-Aのそれぞれ以外に複数存在すると理解するのが合理的であるから、実施例1-fで得られるシルセスキオキサン複合高分子の構造単位は、A-B-A-D以外に相当数存在するところ、なぜ、化学式1の高分子が得られたことが確認できるのかが、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても理解することはできない。 よって、本件明細書の実施例1(【0060】~【0067】)の記載及び本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、実施例1で得られた最終生成物が化学式1で示される構造であることを当業者が理解できるとはいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1の化学式1で表されるものについて、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~10についても同様である。 イ 化学式2及び3で示されるシルセスキオキサン複合高分子及びその製造方法について 本件明細書において、実施例2は本件発明1の化学式2のシルセスキオキサン複合高分子の、実施例3は本件発明1の化学式3のシルセスキオキサン複合高分子の製造例に対応するとされており、化学式2については【0024】の表3-1~表4-3に具体的な構造、【0032】にその製造方法が記載され、化学式3については【0026】の表5-1~表6-4に具体的な構造、【0033】にその製造方法が記載されている。 そして、【0070】~【0073】の実施例2は、化学式2の高分子の製造方法の具体的な合成例とされ、まず反応進行中の実施例1-dの混合溶液のpHを酸性にしてジフェニルテトラメトキシジシロキサンを実施例1-eの5倍滴下してD構造を過量生成させ(実施例2-a)、その後B構造内にXを導入し(実施例2-b)、沈殿及び再結晶を通じて副産物を除去した(実施例2-c)ことが一応記載されている。 また、【0076】~【0079】の実施例3は、化学式3の高分子の具体的な合成例とされ、まず実施例1-gの混合物(A-B-A-D構造体)に、酸性条件下でジメチルテトラメトキシジシロキサンを加えて末端部位にE構造を生成させ(実施例3-a)、次にB及びE構造のXにかご(cage)を導入し(実施例3-b)、沈殿及び再結晶を通じて副産物を除去した(実施例3-c)ことが一応記載されている。 しかし、上記アで化学式1について述べたように、本件明細書の記載から、本件特許出願時の技術常識を参酌しても、実施例1-dの原料となる実施例1-cの生成物がA-Bであること、及び実施例1-gの生成物がA-B-A-Dであることは、当業者といえども理解できないから、実施例2,3で得られた最終生成物の化学構造が化学式2又は3のものであることを当業者が理解できるとはいえず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1のシルセスキオキサン複合高分子うち、化学式2又は3で表されるものについて、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (4)取消理由1のまとめ よって、本件特許の請求項1~10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0006】の記載からみて、「一つの高分子内に特定の構造の線状シルセスキオキサン鎖およびcage形シルセスキオキサンを含めて加工性及び物理的特性を極大化したシルセスキオキサン複合高分子を提供すること」であると認められる。 (3)サポート要件の検討 本件明細書には、実施例4として、実施例1~3で得られたシルセスキオキサン複合高分子を利用してコーティング組成物を製造し、それらが熱安定性、柔軟性、優れた表面硬度、光学的特性を示し、スクラッチテストに合格することが示されており(実施例4の実験例3~5)、それらは本件発明の課題を解決できるものと認められる。 しかし、上記1で指摘したように、本件明細書の記載をみても、実施例1~3で製造された高分子が、本件発明1の化学式1~3で表される構造を有するものであることは確認できないから、本件発明1の化学式1~3で表される特定の構造を有するシルセスキオキサン複合高分子が本件発明の課題を解決できるものとはいえない。 したがって、本件発明1及びそれを直接又は間接的に引用する本件発明2~10が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 (4)特許権者の主張について 特許権者は、令和6年9月30日に提出した意見書において、本件発明1で定義された化学式1~3のいずれかで表される高分子を、明細書に記載された内容又は公知の分析方法で容易に確認することができるため、サポート要件に関する取消理由は克服された旨主張する(上記意見書の15頁の項目2)。 しかし、上記1で述べたように、実施例1~3で製造された高分子が本件発明1で定義された化学式1~3のいずれかを満たすことは、本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識を考慮しても理解できることではないから、特許権者の上記主張を採用することはできない。 (5)取消理由2のまとめ よって、本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 第7 むすび 特許第7207845号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 本件特許の請求項1~10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700731

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