特許異議申立
2022-700419
組成物、ウェットワイパー、スプレー、表面処理基材の製造方法
- 審判番号
- 2022-700419
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-560551
- 登録番号
- 6967086
- 請求日
- 2022年05月16日
- 審決日
- 2023年01月30日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】伊東 秀明
- 【権利者代理人】三橋 史生
- 【異議申立人】松井 伸一
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(A01N) / P1651.121-YAA(A01N) / P1651.537-YAA(A01N) / P1651.536-YAA(A01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6967086号発明「組成物、ウェットワイパー、スプレー、表面処理基材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6967086号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第6967086号の請求項1、3、6~10に係る特許を維持する。
特許第6967086号の請求項2、4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6967086号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月20日(優先権主張 2017年(平成29年)12月22日(以下「優先日」という。))を国際出願日として出願され、令和3年10月26日に特許権の設定登録がされ、同年11月17日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和4年5月16日に、特許異議申立人 松井 伸一(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
そして、令和4年8月1日付けで当審合議体から特許権者に対し取消理由が通知され、同年10月3日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、同年10月24日付けで当審合議体から特許異議申立人に対し特許法第120条の5第5項に基づく通知書が通知されたが、特許異議申立人からは、指定した期間内に何ら応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
令和4年10月3日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
1 訂正の内容
本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下の訂正事項1~9のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、訂正事項1~9に係る訂正前の請求項1~10について、請求項2、3及び5~10は、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項5~10において引用されていた請求項4は、訂正事項4により削除されているから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~10についてされたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸塩であり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である、組成物。」
とあるのを、
「 銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であり、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである、組成物。」
に訂正する
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~10も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「 前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である、請求項2に記載の組成物。」
とあるのを、
「 銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であり、
前記抗菌剤が、無機物であり、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであり、
前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である、組成物。」
に訂正する。
請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~10も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1または3」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7」
とあるのを、
「請求項1、3、6および7」
に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~7」
とあるのを、
「請求項1、3、6および7」
に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~7」
とあるのを、
「請求項1、3、6および7」
に訂正する。
2 訂正事項についての訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1において「無機酸化物」を特定する「ケイ酸塩」を「ケイ酸アルミニウム」とする訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)と、請求項1における「抗菌剤」について、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)とからなるものである。
訂正事項1-1は、「ケイ酸塩」を、ケイ酸塩に包含される下位概念である「ケイ酸アルミニウム」に材料を具体化したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-2は、銀を含む「抗菌剤」の構成や材料について、「担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体」であること、及び、前記「担体」が「リン酸亜鉛カルシウム」であることを限定したものであり、「リン酸亜鉛カルシウム」等の「金属担持担体」は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0022】~【0023】に記載されるように、抗菌剤の通常想定される構成や材料の態様であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなるものである。
そして、訂正事項1-1の「ケイ酸塩」を「ケイ酸アルミニウム」と訂正する点については、訂正前の請求項5及び本件特許明細書の【0012】~【0014】において、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」である「ケイ酸塩」として「ケイ酸アルミニウム」が記載されており、同明細書の【0079】~【0080】には、当該無機酸化物として「ケイ酸アルミニウム」を使用した実施例も記載されている。
また、訂正事項1-2の銀を含む「抗菌剤」の限定については、本件特許明細書の【0020】~【0023】において、金属を含む抗菌剤の金属としては銀がより好ましいこと、金属を含む抗菌剤として、担体と、前記担体上に担持された金属を含む金属担持担体が好ましいこと、当該担体である無機酸化物として、リン酸亜鉛カルシウムが挙げられることが記載されている。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項1についてのまとめ
訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項2は、請求項2を削除するものにすぎないから、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえないことは明らかである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項2に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項2についてのまとめ
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3における「前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である、請求項2に記載の組成物。」を請求項2の記載を引用しない形式で記載するものとする訂正事項(以下「訂正事項3-1」という。)と、請求項3が請求項2を介して記載を引用する請求項1における「無機酸化物」を特定する「ケイ酸塩」を「ケイ酸アルミニウム」とする訂正事項(以下「訂正事項3-2」という。)と、請求項3が請求項2を介して記載を引用する請求項1における「抗菌剤」について、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項3-3」という。)とからなるものである。
訂正事項3-1は、請求項3の記載を、請求項2の記載を引用しない形式で記載するものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3-2及び訂正事項3-3は、前記(1)アで説示した訂正事項1-1及び訂正事項1-2と同じものであるから、同(1)アで検討したとおり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、請求項3の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項3に係る訂正は、上記アのとおり、訂正事項3-1~訂正事項3-3からなり、訂正事項3-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正にすぎず、訂正事項3-2及び訂正事項3-3は、前記(1)アで説示した訂正事項1-1及び訂正事項1-2と同じものであるから、上記(1)イで検討したとおり、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、請求項3の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項3に係る訂正は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、請求項3の上記訂正に連動する請求項6~10の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項3についてのまとめ
訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項4は、請求項4を削除するものにすぎないから、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえないことは明らかである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項4に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項4についてのまとめ
訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項5は、請求項5を削除するものにすぎないから、明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえないことは明らかである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項5に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項5についてのまとめ
訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6は、請求項6について、請求項2、4及び5が削除されるのに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。
イ 訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7は、請求項8について、請求項2、4及び5が削除されるのに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、請求項の削除に伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。
イ 訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、請求項9について、請求項2、4及び5が削除されるのに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。
イ 訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項9について
ア 訂正事項9は、請求項10について、請求項2、4及び5が削除されるのに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。
イ 訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(10)独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~10に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~10については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1、3、6~10に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明3」、「本件特許発明6」~「本件特許発明10」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3、6~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、下線は本件訂正による訂正箇所を示す。また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明を、「訂正前の本件特許発明1」~「訂正前の本件特許発明10」ということもある。)。
「【請求項1】
銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であり、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである、組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であり、
前記抗菌剤が、無機物であり、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであり、
前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である、組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
基布と、前記基布に含浸させた請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と、を含む、ウェットワイパー。
【請求項9】
スプレー容器と、前記スプレー容器に収納された請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と、を含むスプレー。
【請求項10】
請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、下記の甲第1~3号証を提出し、以下の異議申立理由を主張している。
(1)新規性
異議申立理由1-1:訂正前の本件の請求項1~3及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取消されるべきものである。
異議申立理由1-2:訂正前の本件の請求項1~3及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取消されるべきものである。
異議申立理由1-3:訂正前の本件の請求項4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取消されるべきものである。
(2)進歩性
異議申立理由2:訂正前の本件の請求項1~3、5~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証並びに甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取消されるべきものである。
(3)サポート要件
異議申立理由3:請求項4~10に係る発明に関して、実施例では、無機酸化物と抗菌剤を含む請求項1~3に係る発明の態様の組成物は記載されているものの、複合体を含む組成物に相当する態様について記載されておらず、実施例に記載された組成物と同等であることも記載されていないので、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号に該当し、取消されるべきものである。
(4)実施可能要件
異議申立理由4:請求項4~10に係る発明に関して、実施例では、無機酸化物と抗菌剤を含む請求項1~3に係る発明の態様の組成物は記載されているものの、複合体を含む組成物に相当する態様について記載されておらず、実施例に記載された組成物と同等であることも記載されていないので、明細書に当業者が実施可能な程度に記載されているとはいえない。
したがって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し、取消されるべきものである。
記
甲第1号証:実用新案登録第3087610号公報
甲第2号証:特開平9-12836号公報
甲第3号証:特開2017-109983号公報
2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審合議体が令和4年8月1日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
なお、取消理由の下記表記中の「本件特許発明1」~「本件特許発明10」及び「本件特許発明」との表記は、すべて「訂正前の本件特許発明1」~「訂正前の本件特許発明10」及び「訂正前の本件特許発明」との意味である。
記
理由1-1:(新規性)
請求項1~3、5~7、10に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、5~7、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由1-2:(新規性)
請求項1~3、5~7に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由1-3:(新規性)
請求項4~8、10に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に閲覧可能となった引用文献3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4~8、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由1-4:(新規性)
請求項4、5に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国で頒布された引用文献4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2-1:(進歩性)
請求項1~3、5~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1記載の発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由2-2:(進歩性)
請求項1~3、5~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2記載の発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由2-3:(進歩性)
請求項4~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3記載の発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由2-4:(進歩性)
請求項4、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4記載の発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由3:(サポート要件)
請求項1~10の記載に関して、本件特許は、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と前記無機酸化物上に担持された抗菌性を有する成分とを含む複合物を含む、組成物であって、前記無機酸化物が、ケイ酸塩である、組成物が、発明の詳細な説明に実質的に記載されておらず、請求項1~10において、リン原子を含まない無機酸化物と抗菌剤の成分が特定されておらず、または、リン原子を含まない無機酸化物と前記無機酸化物上に担持された抗菌性を有する成分以外に複合物に含まれる成分が特定されていないから、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由4:(実施可能要件)
請求項1~10係る発明に関して、本件特許は、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と前記無機酸化物上に担持された抗菌性を有する成分とを含む複合物を含む、組成物であって、前記無機酸化物が、ケイ酸塩である、組成物が、発明の詳細な説明に実質的に記載されておらず、請求項1~10において、リン原子を含まない無機酸化物と抗菌剤の成分が特定されておらず、または、リン原子を含まない無機酸化物と前記無機酸化物上に担持された抗菌性を有する成分以外に複合物に含まれる成分が特定されていないから、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由5:(明確性要件)
請求項4~10の記載に関して、本件特許は、複合物の範囲が何と何とのどのような複合状態までを特定しているのかが明確でない結果、複合物の技術的意味が明確でないから、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
引用文献1:実用新案登録第3087610号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
引用文献2:特開平9-12836号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証)
引用文献3:特開2017-109983号公報(特許異議申立人の提出した甲第3号証)
引用文献4:山本 則幸、「解説 特集 無機系抗菌剤 無機系抗菌剤の分類と抗菌機構」、無機マテリアル、1999年、Vol.6、Nov.、p.468~473
理由1-1について
請求項1~3、5、6、7、10について
理由2-1について
請求項1~3、5~10について
理由1-2について
請求項1~3、5~7について
理由2-2について
請求項1~3、5~7について
理由1-3について
請求項4~8、10について
理由2-3について
請求項4~10について
理由1-4について
請求項4、5について
理由2-4について
請求項4、5について
・・・」
なお、特許権者は、令和4年10月3日提出の意見書において、サポート要件及び実施可能要件の取消理由解消のため、バクテライトがリン酸亜鉛カルシウムを担体として含む抗菌剤である旨を主張して、同意見書に添付して下記の乙第1~3号証を提出している。
記
乙第1号証:特開2022-77137号公報
乙第2号証:国際公開第2018/016207号
乙第3号証:特開2021-105038号公報
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した理由及び特許異議申立人の申し立てた理由によって、本件特許の請求項1~10に係る特許は取り消されるべきではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
I 取消理由についての判断
1 引用文献の記載及び引用文献記載の発明
(1)引用文献の記載
ア 引用文献1の記載
(1a)「【0011】本考案の消臭抗菌シート1に使用される無機系抗菌剤3としては、銀や銅や亜鉛などの単体金属、酸化銅や酸化亜鉛などの金属酸化物、硫化銅や硫化亜鉛などの金属硫化物、塩化銅や塩化亜鉛などの金属塩化物、銅や亜鉛などの金属を担持したゼオライト(MO・Al2O3・mSiO2・nH2O:MはLi,Na,K,Pb,Cs,Frなどのアルカリ金属またはMg,Ca,Sr,Ba,Raなどのアルカリ土類金属、mは1~60の整数、nは0~
10の整数)など公知のもので平均粒子径が0.5μm~20μmのものが挙げられる。無機系抗菌剤3は対象となる廃棄物の種類に応じて単一の抗菌剤を使用してもよいし複数の抗菌剤を組み合わせて使用してもよい。」
(1b)「【0016】
実施例1(消臭抗菌シートの製造):
無機系消臭剤として酸化亜鉛と塩基性炭酸亜鉛との混合物(商品名「ケスモンNS-10S」:東亞合成社製:平均粒子径0.9μm)および合成ケイ酸アルミニウム(商品名「ケスモンNS-20」:東亞合成社製:平均粒子径8μm)、無機系抗菌剤として銀系無機抗菌剤(商品名「ノバロンVZF200」:東亞合成社製:平均粒子径3μm)、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル系共重合体(商品名「ビニブラン2750」:日信化学工業社製)、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し、これらを表1に示す比率で配合して塗工液を調製した。調製された塗工液を厚み100μmのクラフト紙の片面にロールコーター塗工した後に乾燥させて無機系消臭剤と無機系抗菌剤を含有したコート層(厚み20μm)を形成した。コート層中における各成分の含有量は表1の通りである。
【0017】
【表1】
[図:0001397190000001.jpg]
」(下線は、当審合議体にて追加。以下同様。)
(1c)「【0021】
試験例2(抗菌作用の評価):
実施例1で製造された消臭抗菌シートの抗菌作用をフィルム密着法(1998年度版)に基づき次のようにして評価した。
菌種としてE.coli(大腸菌:IFO3972)とS.aureus(黄色ブドウ球菌:IFO12732)を使用し、それぞれの菌液を2.6×105CFU/mlとした(CFU:colony forming unit:集落形成単位)。この菌液0.4mlを滅菌シャーレに入れた5cm×5cmの試験片(消臭抗菌シートのコート層面)に載せ、4cm×4cmの滅菌ポリエチレンフィルムを密着させて、温度35℃、湿度90%以上で24時間培養した。試験後
、試験片およびフィルムの菌液を滅菌シャーレに洗い出し、この洗い出し液の生菌数を測定することで抗菌作用を評価した。また、コントロールとしてクラフト紙についても同様の方法で測定を行い、抗菌作用を評価した。結果を表3に示す。
【0022】
【表3】
[図:0001397190000002.jpg]
【0023】
表3から明らかなように、実施例1で製造された消臭抗菌シートは大腸菌と黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌作用を発揮したので、このシートは抗菌作用の点で廃棄物の回収袋などとして好適に使用されるものであることがわかった。」
イ 引用文献2の記載
(2a)「【請求項1】ABS系樹脂、下式〔1〕で表されるリン酸塩系抗菌剤、界面活性剤、滑剤及び無機イオン交換体を含有することを特徴とする抗菌性ABS系樹脂組成物。
AgaAb M2(PO4)3・nH2O 〔1〕
(Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンまたは水素イオンから選ばれる少なくとも1種のイオンであり、Mは4価金属であり、nは0≦n≦6を満たす数であり、a及びbはいずれもa+mb=1を満たす正数である。但し、mはAの価数である。)
【請求項2】酸化亜鉛及び二酸化チタンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の抗菌性ABS系樹脂組成物。
【請求項3】無機イオン交換体がハイドロタルサイト類化合物又はケイ酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の抗菌性ABS系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明の組成物は、容易に成形体に加工することができ、本発明の組成物及びこれから得られる樹脂成形体は加工時、保存時及び使用時における劣化や変色が極めて少なく、優れた抗菌効果を発揮することができる。本発明の組成物を成形して得た抗菌性ABS系樹脂成形体は防かび、防藻及び抗菌性を発揮する各種プラスチック製品として有用である。」
(2b)「【0038】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例】
<参考例1>(抗菌剤の調製)
硫酸ジルコニウムの水溶液及びリン酸二水素アンモニウムの水溶液をジルコニウムとリンの比が2:3になるように混合することにより沈澱物を生じさせ、水酸化ナトリウムの水溶液を用いてpHを2に調整したのち、水熱状態下で150℃、24時間加熱することにより結晶性リン酸ジルコニウムを得た。上記で得たリン酸塩系化合物を硝酸銀の水溶液に添加し、室温で4時間撹拌したのち、充分水洗し、乾燥、粉砕することにより、下記の組成式で表され、Agの含有量が3重量%の抗菌剤〔イ〕を得た。得られた抗菌剤は平均粒径が0. 45ミクロンである白色粉末である。
Ag0.2Na0.6H0.2M2(PO4 )3
【0039】<参考例2>(抗菌剤の調製)
参考例1と同様にして結晶性リン酸ジルコニウムを得て、これを硝酸銀の水溶液に添加し、室温で4時間撹拌したのち、充分水洗し、乾燥、粉砕することにより、下記の組成式で表され、Agの含有量が11重量%の抗菌剤〔イ’〕を得た。得られた抗菌剤は平均粒径が0. 47ミクロンである白色粉末である。
Ag0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4 )3 〔イ’〕
この抗菌剤〔イ’〕30重量%と酸化亜鉛70重量%を小型粉砕機に入れて混合し、抗菌剤〔ロ〕を得た。
【0040】<参考例3>(抗菌剤の調製)
参考例2における酸化亜鉛に代えて、二酸化チタン70重量%を用いた以外は参考例2と同様にして、抗菌剤〔ハ〕を得た。
【0041】実施例1(抗菌性ABS系樹脂成形体の調製)
ABS樹脂(東レ株式会社製、180×18/メルトインデックスMI=18、以下ABS樹脂と略称する)95.5部に対して抗菌剤〔イ〕を1.0部、界面活性剤であるグリセリンモノステアレート(以下界面活性剤〔イ〕と略称する)2.0部、滑剤であるステアリン酸カルシウム(以下滑剤〔イ〕と略称する。)1.0部、無機イオン交換体として合成ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製KW-2100、以下無機イオン交換体〔イ〕と略称する。)を0.5部配合し、これらを均一に混合し、東芝機械製IS-55EPNを用いて220℃で射出成形し、10cm×10cm×2mmの抗菌性プレートを作製した。なお、以下の実施例及び比較例で作製したプレートの大きさは何れも10cm×10cm×2mmである。
【0042】実施例2(抗菌性ABS系樹脂成形体の調製)
実施例1における抗菌剤〔イ〕に代えて抗菌剤〔ロ〕を用いた以外は実施例1と同様にして、抗菌性プレートを作製した。
【0043】実施例3~9及び比較例1~比較例7
以下、実施例3~実施例9及び比較例1~比較例7においては配合成分の種類又は量を代えて、実施例2と同様にして抗菌性プレート又は抗菌剤を含有させないプレートを作製した。この時の各成分の配合割合を下記表1と表2に示した。尚、実施例4,5,8,9において用いた無機イオン交換体〔ロ〕はケイ酸アルミニウム(協和化学工業株式会社製商品名KW-700)である。
【0044】但し、表1に明記しなかったが、実施例2~9においては何れも実施例1と同じ滑剤を全重量100部当たり1.0部含有させた。比較例1~7において、無機イオン交換体を含有させず、また比較例4と7を除いて比較例1~6においては何れも滑剤を含有させなかった。
【0045】
【表1】
[図:0001397190000003.jpg]
【0046】
【表2】
[図:0001397190000004.jpg]
・・・
【0050】上記表1と表2の結果から、以下のことがわかる。
(1)界面活性剤と滑剤を配合することにより抗菌プレートの抗菌効果を向上させることができるが(比較例2,3と4、比較例5,6と7)、熱安定性と耐侯性に関しては改善効果がない。
(2)これに対して、界面活性剤と滑剤に加えて無機イオン交換体を配合することにより、抗菌性と共に熱安定性と耐侯性に優れた抗菌プレートを得ることができる(実施例2~5と比較例4、実施例6~9と比較例7)。」(当審注:「(1)」等は、○内に数字を示す。)
ウ 引用文献3の記載
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、
前記抗菌剤微粒子が、銀担持無機酸化物を含み、
前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μm以下であり、
前記バインダが、少なくとも1種のシラン化合物を含み、
前記溶媒が、アルコールおよび水を含み、
前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液。
【請求項2】
前記抗菌剤微粒子の平均粒径が0.7μm以下である、請求項1に記載の抗菌液。
【請求項3】
前記銀担持無機酸化物が銀担持ガラスである、請求項1または2に記載の抗菌液。
・・・
【請求項10】
更に、アニオン系分散剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌液。
【請求項11】
前記アニオン系分散剤の含有量が、前記抗菌剤微粒子の含有量に対して、50質量%以上である、請求項10に記載の抗菌液。
・・・
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗菌液を用いて形成される抗菌膜。
【請求項17】
水接触角が60°以下である、請求項16に記載の抗菌膜。
【請求項18】
前記抗菌剤微粒子が凸状に配置されている、請求項16または17に記載の抗菌膜。
【請求項19】
膜厚Aに対する前記抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aが、1以上である、請求項16~18のいずれか1項に記載の抗菌膜。
【請求項20】
膜厚が1.0μm以下である、請求項16~19のいずれか1項に記載の抗菌膜。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌液、抗菌膜およびウェットワイパーに関する。」
(3b)「【0012】
〔抗菌剤微粒子〕
抗菌剤微粒子は、少なくとも、銀担持無機酸化物を含む。また、抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下である。
【0013】
〈銀担持無機酸化物〉
銀担持無機酸化物は、銀と、この銀を担持する担体である無機酸化物とを有する。」
(3c)「【0015】
一方、担体である無機酸化物としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ガラス(酸化ケイ素、酸化リン、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ホウ素、および、酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物)、ゼオライト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
【0016】
このような銀担持無機酸化物としては、例えば、銀担持ゼオライト、銀担持アパタイト、銀担持ガラス、銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持ケイ酸カルシウムなどが好適に挙げられ、なかでも、銀担持アパタイト、銀担持ガラスが好ましく、抗菌性の観点から、銀担持ガラスがより好ましい。
【0017】
なお、抗菌剤微粒子は、銀担持無機酸化物以外の抗菌剤を含んでいてもよく、例えば、有機系抗菌剤、銀を含まない無機系抗菌剤などが挙げられる。
有機系抗菌剤としては、例えば、フェノールエーテル誘導体、イミダゾール誘導体、スルホン誘導体、N-ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール誘導体、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、又はイソチアゾリン系化合物などが挙げられる。
銀を含まない無機系抗菌剤としては、例えば、銅、亜鉛などの金属を上述した担体に担持させた抗菌剤が挙げられる。
抗菌剤微粒子は、銀担持無機酸化物以外の抗菌剤を含む態様であっても、実質的に銀担持無機酸化物のみからなる態様であってもよい。
抗菌剤微粒子中における銀担持無機酸化物の含有量は、固形分で、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0018】
〈抗菌剤微粒子の平均粒径〉
抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、耐沈降性がより優れるという理由から、0.9μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
なお、本発明において、平均粒径は、堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて50%体積累積径(D50)を3回測定して、3回測定した値の平均値を用いる。」
(3d)「【0024】
〔バインダ〕
バインダは、少なくとも1種のシラン化合物を含む。なお、バインダは、親水性を示すことが好ましい。
【0025】
〈シラン化合物〉
シラン化合物としては、例えば、下記一般式(1′)で表されるシロキサン化合物(シロキサンオリゴマー)が挙げられる。
【0026】
【化1】
[図:0001397190000005.jpg]
【0027】
ここで、一般式(1’)中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。また、mは1~100の整数を表す。なお、Ra~Rdの各々は同じであっても、異なっていてもよく、Ra~Rdはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
Ra~Rdが表す有機基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数4~16の複素環基などが挙げられる。
Ra~Rdは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、または、炭素数6~14のアリール基が好ましく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。なお、Ra~Rdが表すアルキル基は、分岐状であってもよい。また、Ra~Rdが表す有機基は置換基を有していてもよく、この置換基が更に置換基を有していてもよい。
Ra~Rdの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
mは、2~20が好ましく、3~15がより好ましく、5~10が更に好ましい。」
(3e)「【0057】
[抗菌膜]
本発明の抗菌膜は、本発明の抗菌液を用いて形成される塗膜であり、例えば、本発明の抗菌液を基材上に塗布し、乾燥させることによって形成できる。
【0058】
本発明の抗菌液が塗布される基材は特に限定されず、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、布などが適宜使用される。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、ラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、メラミン樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)等が挙げられる。基材の形状は特に限定されず、板状、フィルム状、シート状などが挙げられる。また、基材表面は、平坦面でも、凹面でも、凸面でもよい。更に、基材の表面には、従来公知の易接着層が形成されていてもよい。
【0059】
本発明の抗菌液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗装法、バーコート法、ロールコート法、フローコート法、ダイコート法、不織布塗り法、インクジェット法、キャスト法、回転塗布法、LB(Langmuir-Blodgett)法などが挙げられる。
塗布後の乾燥は、室温での乾燥でもよく、40~120℃での加熱でもよい。
乾燥時間は、例えば、1~30分間程度である。」
(3f)「【0066】
[ウェットワイパー]
本発明のウェットワイパーは、本発明の抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパーである。基布としては、例えば、不織布などが好適に挙げられる。基布の目付(単位面積当たりの質量)は、100g/m2以下が好ましい。本発明の抗菌液を基布に含浸させる際の含浸量は、基布の質量に対して1倍以上の量が好ましい。
本発明のウェットワイパーは、それ自体を、抗菌性を有するウェットワイパーとして使用できる。また、本発明のウェットワイパーを用いて、基材表面に本発明の抗菌液を塗布することもできる。」
(3g)「【0068】
〈実施例1〉
容器中でエタノール260gを攪拌しながら、純水200g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」 )4.7g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)2.2gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A-1を得た。
なお、抗菌剤微粒子の平均粒径は、ビーズミルを用いてジルコニアビーズを混合し振動させることで湿式粉砕により事前に調節した(以下、同様)。
更に、片面に易接着処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A-1を塗布し、20分間室温で乾燥し、塗膜である抗菌膜B-1を得た。」
エ 引用文献4の記載
(4a)「2・1 金属(イオン)担持抗菌剤
金属イオンのなかには,細菌を死滅させるはたらきがあるものが古くから知られており,オリゴダイナミック効果(・・・)と呼ばれている.表12)に各種金属イオンのチフス菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を示したが,このうち銀イオンがもっとも殺菌活性が高く,安全性も高い.銀イオンの各種微生物に対するMICを見ると,かびに対してやや効果が劣るものの,グラム陽性菌(・・・),グラム陰性菌(・・・)にかかわらず幅広い抗菌スペクトルをもってい
る(表2)3).
担体に何を選ぶか,銀をどのように担持させるかによって,製造メーカーごとに特徴をもたせているが,担持のさせかたはつぎの四つに大別できる.
1) イオン交換により銀イオンを担持
陽イオン交換能をもつ無機イオン交換体に,イオン交換反応で銀を担持させた材料で,ゼオライト,・・・などが該当する.無機イオン交換体は,結晶構造や金属との親和性によって特異的なイオン交換挙動を示すため,担体の性質が銀イオンの化学的性質に及ぼす影響は大きい.
2) 金属銀あるいは酸化銀として担持 水酸アパタイト,ケイ酸カルシウムなど・・・
3) 銀錯体を担持
4) ガラス成分として担持
この方法は上記三つとやや考え方が異なる.水への溶解性を調製したガラスに,ガラス成分の一つとして銀を含有させたものである.溶解性ガラスの代表例として,SiO2-B2O3-Na2O系ガラスがある.ガラス組成を変更することにより銀の溶解速度をはじめとする各種性質を連続的に変えられることがこの材料の大きな特徴である.
これら銀(イオン)を用いた抗菌剤には,添加した樹脂を着色,変色させるという共通した問題がある.抗菌活性をそこなうことなく,いかに着色,変色性を抑えるかが銀系抗菌剤開発の最大のポイントといっても過言ではない.」(468頁右欄10行~469頁右欄20行)
(2)引用文献記載の発明
ア 引用文献1記載の発明
引用文献1は、消臭抗菌シート等に関する文献であって(摘記(1a))、摘記(1b)の実施例1の消臭抗菌シートの製造に関して、無機系消臭剤として酸化亜鉛と塩基性炭酸亜鉛との混合物および合成ケイ酸アルミニウム、無機系抗菌剤として銀系無機抗菌剤(平均粒子径3μm)、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル系共重合体、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し、特定の比率で配合して塗工液を調製したことが記載されている。
したがって、引用文献1から、消臭抗菌シート製造用の塗工液として、以下の発明が認定できるといえる。
「無機系消臭剤として酸化亜鉛と塩基性炭酸亜鉛との混合物および合成ケイ酸アルミニウム、無機系抗菌剤として銀系無機抗菌剤(平均粒子径3μm)、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル系共重合体、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し配合して調製した消臭抗菌シート製造用の塗工液」(以下「引用文献1発明」という。)
また、引用文献1には、上記調製された塗工液をクラフト紙の片面にロールコーター塗工した後に乾燥させて無機系消臭剤と無機系抗菌剤を含有したコート層を形成し消臭抗菌シートを製造したことも記載されているので(摘記(1b))、以下の発明も記載されているといえる。
「無機系消臭剤として酸化亜鉛と塩基性炭酸亜鉛との混合物および合成ケイ酸アルミニウム、無機系抗菌剤として銀系無機抗菌剤(平均粒子径3μm)、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル系共重合体、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し配合して調製した塗工液をクラフト紙の片面にロールコーター塗工した後に乾燥させて無機系消臭剤と無機系抗菌剤を含有したコート層を形成した消臭抗菌シートの製造方法」(以下「引用文献1製造方法発明」という。)
イ 引用文献2記載の発明
引用文献2は、加工時、保存時、使用時に劣化か変色が極めて少なく、優れた抗菌効果を発揮できる抗菌性ABS系樹脂組成物に関する文献であって(摘記(2a))、請求項2を引用する請求項3に係る発明に対応した具体例として、参考例2の殺菌剤の調製によって得た平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3の抗菌剤(抗菌剤[イ’])30重量%と酸化亜鉛または酸化チタンの70重量%との粉砕混合物(抗菌剤[ロ]または[ハ])とケイ酸アルミニウム(無機イオン交換体[ロ])を用いた実施例4、5、8、9の抗菌性プレートが具体例として表1で示されている。
したがって、引用文献2から、請求項3に係る抗菌性ABS系樹脂組成物として、以下の発明が認定できるといえる。
「ABS系樹脂、平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3のリン酸塩系抗菌剤と、金属酸化物としての酸化亜鉛または酸化チタン、界面活性剤、滑剤及び無機イオン交換体としてのケイ酸アルミニウムを含有する抗菌性ABS系樹脂組成物」(以下「引用文献2発明」という。)
ウ 引用文献3記載の発明
引用文献3は、抗菌液、抗菌膜、ウェットワイパーに関する文献であって(摘記(3a))、請求項1を引用する請求項3に係る発明に対応する具体例として、実施例1には、容器中でエタノール攪拌しながら、純水、シロキサン化合物であるバインダ、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)、ノニオン性界面活性剤、および、アニオン性界面活性剤を順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス)を加えて、攪拌し、抗菌液を得たことが記載され、バインダーとしては、親水性を示すことが好ましいとされ、シロキサン化合物が挙げられるとの記載もある(摘記(3d))ので、請求項3に係る発明として以下の発明が記載されているといえる。
「抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、
前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、
前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され、
前記バインダが、少なくとも1種の親水性を有するシロキサン化合物を含み、
前記溶媒が、アルコールおよび水を含み、
前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液」
(以下「引用文献3発明」という。)
また、引用文献3には、請求項1を引用する請求項3をさらに引用する請求項16に係る抗菌膜の発明に対応する具体例として、実施例1に、容器中でエタノール攪拌しながら、純水、シロキサン化合物であるバインダ、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)、ノニオン性界面活性剤、および、アニオン性界面活性剤を順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス)を加えて、攪拌し、抗菌液を得た後、片面に易接着処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて上記抗菌液を塗布し、室温で乾燥し、塗膜である抗菌膜を得たことが記載され、請求項16に対応した記載である摘記(3e)には、抗菌膜は、抗菌液を用いて形成される塗膜であり、例えば、抗菌液を基材上に塗布し、乾燥させることによって形成できること、抗菌液が塗布される基材は特に限定されず、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、布などが適宜使用されること、更に、基材の表面には、従来公知の易接着層が形成されていてもよいことも記載されているので、請求項16の抗菌膜に係る発明として以下の発明も記載されているといえる。
「抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、
前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、
前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され、
前記バインダが、少なくとも1種の親水性を有するシロキサン化合物を含み、
前記溶媒が、アルコールおよび水を含み、
前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液を基材上に塗布し乾燥させることによって形成する抗菌膜の製造方法」
(以下「引用文献3製造方法発明」という。)
さらに、引用文献3には、請求項21に係るウェットワイパーの発明として、請求項21に対応する記載である摘記(3f)には、ウェットワイパーは、抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパーであることも記載されているので、以下の発明も記載されているといえる。
「抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、
前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、
前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され、
前記バインダが、少なくとも1種の親水性を有するシロキサン化合物を含み、
前記溶媒が、アルコールおよび水を含み、
前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液
が基布に含浸されたウェットワイパー」
(以下「引用文献3ウェットワイパー発明」という。)
エ 引用文献4記載の発明
引用文献4は、無機系抗菌剤の分類と抗菌機構に関する総説であり、金属(イオン)担持抗菌剤の項目に、金属イオンのなかには、細菌を死滅させるはたらきがあるものが古くから知られており、このうち銀イオンがもっとも殺菌活性が高く、幅広い抗菌スペクトルをもっていて、担体に何を選ぶか,銀をどのように担持させるかによって、四つに大別できとした上で、「1)イオン交換により銀イオンを担持」するものとして、陽イオン交換能をもつ無機イオン交換体に、イオン交換反応で銀を担持させた材料が記載され、無機イオン交換体の例としてアルミノケイ酸塩であるゼオライトが記載されているので(摘記(4a))、以下の発明が記載されているといえる。
「陽イオン交換能を持つ無機イオン交換体であるゼオライト(アルミノケイ酸塩)に銀イオンを担持させた金属担持抗菌剤を含む材料」(以下「引用文献4-1発明」という。)
また、引用文献4には、同様に、「4)ガラス成分として担持」するものとして、水への溶解性を調製したガラスに、ガラス成分の一つとして銀を含有させた溶解性ガラスの代表例として、SiO2-B2O3-Na2O系ガラスがあることが記載されているので(摘記(4a))、以下の発明も記載されているといえる。
「溶解性ガラスであるSiO2-B2O3-Na2O系ガラス銀をガラス成分として担持した金属担持抗菌剤を含む材料」(以下「引用文献4-2発明」という。)
2 取消理由の引用文献1に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-1、2-1)について
(1)本件特許発明と引用文献1(甲第1号証)記載の発明との対比・判断
ア 本件特許発明1と引用文献1発明との対比・判断
(ア)対比
引用文献1発明の「無機系消臭剤として」の「合成ケイ酸アルミニウム」は、本件特許発明1の「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」であって、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであ」り、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物」であることに相当し、引用文献1発明の「無機系抗菌剤として」の「銀系無機抗菌剤(平均粒子径3μm)」は、本件特許発明1の「抗菌剤」で「前記抗菌剤が、銀を含」むものに相当し、引用文献1発明の「消臭抗菌シート製造用の塗工液」は、本件特許発明1の「組成物」に該当する。
そうすると、本件特許発明1と引用文献1発明とは、
「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である、組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1:
本件特許発明1においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献1発明においては、銀を含む抗菌剤に関して、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
(イ)判断
a 上記相違点1-1に係る抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは、引用文献1発明において、記載されているに等しい事項であるともいえないし、本件の優先日時点の技術常識でもないので、相違点1-1は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献1発明において、抗菌剤は、銀系無機抗菌剤(平均粒子径3μm)と特定されるだけで、引用文献1(甲第1号証)全体の記載をみても、【0011】に、銅や亜鉛などの金属を担持したゼオライトが多数の選択肢の一例として挙げられるだけで、銀が担体に担持される形態であることも、その担体の材質についても特定されておらず、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは記載も示唆もない。
さらに、引用文献2~4に記載された技術的事項を参酌しても、銀を含む抗菌剤やケイ酸アルミニウを成分として含有する組成物が記載されるだけで、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは記載も示唆もなく、引用文献1発明において、抗菌剤の態様や担体の材質をリン酸亜鉛カルシウムとする動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用文献1発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明1の相違点1-1に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
c そして、本件特許明細書【0008】【0010】【0012】~【0023】や実施例の【0079】~【0085】に示されたような、本件特許発明1の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、本件特許発明1は、引用文献1発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明3、6、7と引用文献1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明3は、本件特許発明1において、抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上であることが特定されているものの、引用文献1発明は、「銀系無機抗菌剤」の「(平均粒子径3μm)」であることが特定されており、新たな相違点とならない。
また、本件特許発明6は、本件特許発明1において、「更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む」こと、本件特許発明7は、本件特許発明6において、「前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」ことを特定したものであるが、引用文献1発明は、親水性基を有する成分として、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル系共重合体、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し配合して調製したことが特定されているので、新たな相違点とならない。
したがって、上記ア(ア)で検討したのと同様に、本件特許発明3、6又は7と引用文献1発明とは、以下の点で相違する。
相違点1-3、6、7:
本件特許発明3、6又は7においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献1発明においては、銀を含む抗菌剤に関して、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)で検討したのと同様に、相違点1-3、6、7は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明3、6又は7は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献1発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明3、6又は7の相違点1-3、6、7に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明3、6又は7は、本件特許発明3、6又は7の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献1発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明8又は9と引用文献1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明8は、基布と、前記基布に含浸させた本件特許発明1、3、6又は7の組成物とを含む、ウエットワイパーの発明である。
したがって、本件特許発明8と引用文献1発明との対比において、上記ア(ア)及び上記イ(ア)で検討したのと同様に、以下の相違点1-8を有するとともに、追加の相違点2-8を有する。
相違点1-8:
本件特許発明8においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、銀を含む抗菌剤に関して、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
相違点2-8:
本件特許発明8は、「基布と、前記基布に含浸させた」「組成物とを含む、ウエットワイパー」であるのに対して、引用文献1発明は、「消臭抗菌シート製造用の塗工液」である点。
本件特許発明9は、スプレー容器と、前記スプレー容器に収納された本件特許発明1、3、6又は7の組成物とを含む、スプレーの発明である。
したがって、本件特許発明9と引用文献1発明との対比において、上記ア(ア)及び上記イ(ア)で検討したのと同様に、以下の相違点1-9を有するとともに、追加の相違点2-9を有する。
相違点1-9:
本件特許発明9においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献1発明においては、銀を含む抗菌剤に関して、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
相違点2-9:本件特許発明9は、「スプレー容器と、前記スプレー容器に収納された」「組成物とを含む、スプレー」であるのに対して、引用文献1発明は、「消臭抗菌シート製造用の塗工液」である点。
(イ)判断
上記ア(イ)及び上記イ(イ)で検討したのと同様に、相違点1-8又は相違点1-9の判断に関して、引用文献1発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明8又は9の相違点1-8又は1-9に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明8又は9は、本件特許発明8又は9の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、相違点2-8又は相違点2-9を検討するまでもなく、引用文献1発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明10と引用文献1製造方法発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明10は、本件特許発明1、3、6及び7の組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法の発明であるところ、引用文献1製造方法発明は、引用文献1発明の塗工液をクラフト紙の片面にロールコーター塗工した後に乾燥させて無機系消臭剤と無機系抗菌剤を含有したコート層を形成した消臭抗菌シートの製造方法であるから、「塗工液をクラフト紙の片面にロールコーター塗工した後に乾燥させて無機系消臭剤と無機系抗菌剤を含有したコート層を形成した消臭抗菌シートの製造方法」が、「組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法」に該当するので、上記ア(ア)及び上記イ(ア)で検討したのと同様に、以下の相違点を有する。
相違点1-10:
本件特許発明10においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献1製造方法発明においては、銀を含む抗菌剤に関して、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)及び上記イ(イ)で検討したのと同様に、相違点1-10は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明10は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献1製造方法発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明10の相違点1-10に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明10は、本件特許発明10の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献1発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)引用文献1(甲第1号証)に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-1、2-1)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、3、6、7及び10は、引用文献1に記載された発明とはいえないし、本件特許発明1、3、6~10は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正により、引用文献1に基づく新規性及び進歩性に関する取消理由1-1、2-1は、解消しており、取消理由1-1、2-1には、理由がない。
3 取消理由の引用文献2に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-2、2-2)について
(1)本件特許発明と引用文献2(甲第2号証)記載の発明との対比・判断
ア 本件特許発明1と引用文献2発明との対比・判断
(ア)対比
引用文献2発明の「無機イオン交換体としてのケイ酸アルミニウム」は、本件特許発明1の「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」であって、「前記無機酸化物が、ケイアルミニウムであ」り、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物」であることに相当し、引用文献2発明の「平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3のリン酸塩系抗菌剤」は、本件特許発明1の「抗菌剤」で「前記抗菌剤が、銀を含み」に相当し、引用文献2発明の「抗菌性ABS系樹脂組成物」は、本件特許発明1の「組成物」に該当する。
そうすると、本件特許発明1と引用文献2発明とは、
「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物であって、
前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である、組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1-2:
本件特許発明1においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献2発明においては、「平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3のリン酸塩系抗菌剤」と特定され、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
(イ)判断
a 上記相違点1-1-2に係る抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは、引用文献2発明において、記載されているに等しい事項であるともいえないし、本件の優先日時点の技術常識でもないので、相違点1-1-2は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、引用文献2に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献2発明において、抗菌剤は、平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3のリン酸塩系抗菌剤と特定されるだけで、引用文献2(甲第2号証)全体の記載をみても、【請求項1】に記載されるように、特定の式で表されるリン酸塩系抗菌剤として、ABS系樹脂、界面活性剤、滑剤及び無機イオン交換体と共に抗菌性ABS系樹脂組成物の一成分としてを含有することを前提とした記載があるだけで、銀が担体に担持される形態であることも、その担体の材質についても特定されておらず、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは記載も示唆もない。
さらに、引用文献2~4に記載された技術的事項を参酌しても、銀を含む抗菌剤やケイ酸アルミニウを成分として含有する組成物が記載されるだけで、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであることは記載も示唆もなく、引用文献2発明において、抗菌剤の態様や担体の材質をリン酸亜鉛カルシウムとする動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用文献2発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明1の相違点1-1-2に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
c そして、本件特許明細書【0008】【0010】【0012】~【0023】や実施例の【0079】~【0085】に示されたような、本件特許発明1の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、本件特許発明1は、引用文献2発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明3、6、7と引用文献2発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明3は、本件特許発明1において、抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上であることが特定されているものの、新たな相違点とならない。
また、本件特許発明6は、本件特許発明1において、「更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む」こと、本件特許発明7は、本件特許発明6において、「前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」ことを特定したものであるが、引用文献2発明には、ABS系樹脂として、【0008】の定義からみて、親水性ポリマーであるポリスチレンを含み、(メタ)アクリル酸アルキルを主成分とするアクリル系ゴム等がエラストマー成分として含有する場合を含んでおり新たな相違点とならない。
したがって、上記ア(ア)で検討したのと同様に、本件特許発明3、6又は7と引用文献2発明とは、以下の点で相違する。
相違点1-3、6、7-2:
本件特許発明3、6、7においては、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献2発明においては、「平均粒径0.47ミクロンのAg0.5Na0.1H0.3Zr2(PO4)3のリン酸塩系抗菌剤」と特定され、銀が担体に担持されることも、その担体の材質についても特定のない点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)で検討したのと同様に、相違点1-1-2は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明3、6又は7は、引用文献2に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献2発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムであるとの本件特許発明3、6又は7の相違点1-3、6、7-2に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明3、6又は7は、本件特許発明3、6又は7の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献2発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)引用文献2(甲第2号証)に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-2、2-2)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、3、6及び7は、引用文献2に記載された発明とはいえないし、本件特許発明1、3、6及び7は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正により、引用文献2に基づく新規性及び進歩性に関する取消理由1-2、2-2は、解消しており、取消理由1-2、2-2には、理由がない。
4 取消理由の引用文献3に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-3、2-3)について
(1)本件特許発明と引用文献3(甲第3号証)記載の発明との対比・判断
ア 本件特許発明6と引用文献3発明との対比・判断
(ア)対比
引用文献3発明の「抗菌剤微粒子」を含有し、「前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、」「前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され」ることは、本件特許発明6の「前記抗菌剤が、銀を含み、」「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であ」ることに相当し、引用文献3発明の「抗菌液」は、本件特許発明6の「組成物」に該当する。
また、引用文献3発明の「前記バインダが、少なくとも1種の親水性を有するシロキサン化合物を含」むことは、本件特許発明6の「更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む」ことに相当する。
したがって、本件特許発明6と引用文献3発明とは、
「抗菌剤を含む組成物であって、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違点している。
相違点1-6-3:
本件特許発明6では「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」「含」み、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、」「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であ」ると特定されているのに対して、引用文献3発明においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない」、「抗菌性を示す成分が担持されていない」「無機酸化物」として「ケイ酸アルミニウム」が含まれることが特定されていない点。
相違点2-6-3:
本件特許発明6においては、「前記抗菌剤」の「担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献3発明においては、銀が担持される担体がガラスである点。
(イ)判断
a 相違点1-6-3に関して、引用文献3発明においては、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムは、記載されているに等しい事項であるともいえないし、本件の優先日時点の技術常識でもないので、相違点1-6-3は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明6は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献3発明において、抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御されると特定されているものの、引用文献3(甲第3号証)全体の記載をみても、【請求項1】【請求項3】に記載されるように、銀担持ガラスを含めた銀担持無機酸化物、バインダー及び溶媒を含有する抗菌液であることを前提とした記載があるだけで、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムが含有されることについては、記載も示唆もない。
さらに、引用文献2~4に記載された技術的事項を参酌しても、銀を含む抗菌剤やケイ酸アルミニウを成分として含有する組成物が記載されるだけで、引用文献3発明において、あえて銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムを含有させる構成とする動機付けとなる記載も示唆もない。
したがって、引用文献3発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、本件特許発明6の相違点1-6-3に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
c そして、本件特許明細書【0008】【0010】【0012】~【0023】や実施例の【0079】~【0085】に示されたような、本件特許発明6の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、相違点2-6-3について検討するまでもなく、本件特許発明6は、引用文献3発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明7と引用文献3発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明7は、本件特許発明6において、「前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」ことを特定したものであるが、引用文献3発明には、親水性を有するシロキサン化合物を含んでおり新たな相違点とならない。
したがって、上記ア(ア)で検討したのと同様に、本件特許発明7と引用文献3発明とは、以下の点で相違する。
相違点1-7-3:
本件特許発明7では「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」「含」み、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、」「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であ」ると特定されているのに対して、引用文献3発明においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない」、「抗菌性を示す成分が担持されていない」「無機酸化物」として「ケイ酸アルミニウム」が含まれることが特定されていない点。
相違点2-7-3:
本件特許発明7においては、「前記抗菌剤」の「担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献3発明においては、銀が担持される担体がガラスである点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)で検討したのと同様に、相違点1-7-3は、実質的相違点である。
したがって、本件特許発明7は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献3発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、本件特許発明7の銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムを含有するという相違点1-7-3に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明7は、本件特許発明7の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献3発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明9と引用文献3発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明9は、本件特許発明1、3、6及び7の組成物をスプレー容器に収納したスプレーの発明であって、本件特許発明6と引用文献3発明との対比で検討したのと同様に、少なくとも以下の相違点1-7-3、相違点2-7-3を有し、さらに相違点3-9-3を有する。
相違点1-7-3:
本件特許発明9では「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」「含」み、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、」「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であ」ると特定されているのに対して、引用文献3発明においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない」、「抗菌性を示す成分が担持されていない」「無機酸化物」として「ケイ酸アルミニウム」が含まれることが特定されていない点。
相違点2-7-3:
本件特許発明9においては、「前記抗菌剤」の「担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献3発明においては、銀が担持される担体がガラスである点。
相違点3-9-3:本件特許発明9においては、「スプレー容器と、前記スプレー容器に収納された」「組成物と、を含むスプレー」と特定されているのに対して、引用文献3発明においては、そのような特定のない点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)で検討したのと同様に、相違点1-7-3は、実質的相違点である。
したがって、本件特許発明9は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献3発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、本件特許発明9の銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムを含有するという相違点1-7-3に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明9は、本件特許発明9の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献3発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明8と引用文献3ウェットワイパー発明との対比・判断
(ア)対比
引用文献3ウェットワイパー発明の「抗菌剤微粒子」「を含有」し、「前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、」「前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され」ることは、本件特許発明8の「前記抗菌剤が、銀を含み、」「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であ」ることに相当し、引用文献3ウェットワイパー発明の「抗菌液」は、本件特許発明8の「組成物」に該当する。
また、引用文献3ウェットワイパー発明の「抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパー」は、本件特許発明8の「基布と、前記基布に含浸させた」「組成物と、を含む、ウェットワイパー」に相当する。
また、引用文献3ウェットワイパー発明の「前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され」ることは、本件特許発明3の「前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である」ことに、引用文献3ウェットワイパー発明の「前記バインダが、少なくとも1種の親水性を有するシロキサン化合物を含」むことは、本件特許発明6の「更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む」こと及び本件特許発明7の「前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」ことに、それぞれ相当する。
したがって、本件特許発明8において、本件特許発明3、6及び7を引用する場合については、上記で指摘した本件特許発明の構成についても一致点となるが、本件特許発明1を引用する場合で代表して以下論じる。
したがって、本件特許発明8と引用文献3ウェットワイパー発明とは、
「抗菌剤を含む組成物であって、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
基布と、前記基布に含浸させた組成物と、を含む、ウェットワイパー」
である点で一致し、以下の点で相違点している。
相違点1-8-3:
本件特許発明8では「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」「含」み、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、」「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であ」ると特定されているのに対して、引用文献3ウェットワイパー発明においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない」、「抗菌性を示す成分が担持されていない」「無機酸化物」として「ケイ酸アルミニウム」が含まれることが特定されていない点。
相違点2-8-3:
本件特許発明8においては、「前記抗菌剤」の「担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献3ウェットワイパー発明においては、銀が担持される担体がガラスである点。
(イ)判断
a 相違点1-8-3に関して、引用文献3ウェットワイパー発明においては、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムは、記載されているに等しい事項であるともいえないし、本件の優先日時点の技術常識でもないので、相違点1-8-3は、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明8は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献3ウェットワイパー発明において、抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御されると特定されているものの、引用文献3(甲第3号証)全体の記載をみても、【請求項1】【請求項3】に記載されるように、銀担持ガラスを含めた銀担持無機酸化物、バインダー及び溶媒を含有する抗菌液であることを前提とした記載があるだけで、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムが含有されることについては、記載も示唆もない。
さらに、引用文献2~4に記載された技術的事項を参酌しても、銀を含む抗菌剤やケイ酸アルミニウを成分として含有する組成物が記載されるだけで、ウェットワイパーに関する用途が記載されているわけでもない。
したがって、引用文献3ウェットワイパー発明において、あえて銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムを含有させる構成とする動機付けとなる記載も示唆もない。
以上のとおり、引用文献3発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、本件特許発明8の相違点1-8-3に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
c そして、本件特許明細書【0008】【0010】【0012】~【0023】や実施例の【0079】~【0085】に示されたような、本件特許発明8の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、相違点2-8-3について検討するまでもなく、本件特許発明8は、引用文献3発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明10と引用文献3製造方法発明との対比・判断
(ア)対比
引用文献3製造方法発明の「抗菌剤微粒子」「を含有」し、「前記抗菌剤微粒子が、銀担持ガラスを含み、」「前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μmに制御され」ることは、本件特許発明10の「前記抗菌剤が、銀を含み、」「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であ」ることに相当し、引用文献3製造方法発明の「抗菌液」は、本件特許発明10の「組成物」に該当する。
本件特許発明10は、本件特許発明1、3、6及び7の組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法の発明であるところ、引用文献3製造方法発明は、引用文献3発明の抗菌液を基材上に塗布し乾燥させることによって形成する抗菌膜の製造方法であるから、「抗菌液を基材上に塗布し乾燥させることによって形成する抗菌膜の製造方法」が、「組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法」に相当する。
したがって、本件特許発明10と引用文献3製造方法発明とは、
「抗菌剤を含む組成物であって、
前記抗菌剤が、銀を含み、
前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、
基布と、前記基布に含浸させた組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違点している。
相違点1-10-3:
本件特許発明10では「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物」「含」み、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであり、」「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物であ」ると特定されているのに対して、引用文献3製造方法発明においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない」、「抗菌性を示す成分が担持されていない」「無機酸化物」として「ケイ酸アルミニウム」が含まれることが特定されていない点。
相違点2-10-3:
本件特許発明10においては、「前記抗菌剤」の「担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」と特定されているのに対して、引用文献3製造方法発明においては、銀が担持される担体がガラスである点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)で検討したのと同様に、相違点1-10-3は、実質的相違点である。
したがって、本件特許発明10は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
b また、引用文献3発明において、引用文献1~4に記載された技術的事項を参酌しても、本件特許発明10の銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物として、抗菌性を示す成分が担持されていないケイ酸アルミニウムを含有するという相違点1-10-3に係る構成を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明10は、本件特許発明10の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、引用文献3発明並びに引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)引用文献3(甲第3号証)に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-3、2-3)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明6、7、8及び10は、引用文献3に記載された発明とはいえないし、本件特許発明6~10は、引用文献3記載された発明及び引用文献1~4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正により、引用文献3に基づく新規性及び進歩性に関する取消理由1-3、2-3は、解消しており、取消理由1-3、2-3には、理由がない。
5 取消理由の引用文献4に基づく新規性及び進歩性に関する点(取消理由1-4、2-4)について
本件訂正によって取消理由の対象となった訂正前の本件特許発明4及び5は削除されたので、引用文献4に基づく新規性及び進歩性に関する取消理由1-4、2-4は、解消しており、取消理由1-4、2-4には、理由がない。
6 取消理由のサポート要件に関する点(取消理由3)について
(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
請求項1には、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物」において、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであ」ること、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である」こと、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」ことを特定した物の発明が記載されている。
請求項3には、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物」において、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであ」ること、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である」こと、「前記抗菌剤が、無機物である」こと、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」こと、「前記抗菌剤の平均粒径が0.3μm以上である」ことが特定された物の発明が記載されている。
請求項6には、それぞれ、請求項1又は3において、「更に、親水性バインダー前駆体及び親水性バインダーからなる群より選ばれる親水性成分を含む」ことが、請求項7には、請求項6において、「前記親水性成分が、シリケート系化合物、親水性基を有するモノマー、及び、親水性基を有するポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」ことが特定された物の発明が記載されている。
また、請求項8、9には、それぞれ、「基布と、前記基布に含浸させた請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と、を含む、ウェットワイパー」、「スプレー容器と、前記スプレー容器に収納された請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と、を含むスプレー」であることが特定された物の発明が記載されている。
さらに、請求項10には、「請求項1、3、6および7のいずれか1項に記載の組成物と基材とを接触させて表面処理基材を製造する、表面処理基材の製造方法」の発明が記載されている。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件の発明の詳細な説明には、請求項1、3、6~10に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて以下の記載がある。
ア 本件特許発明の技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、効果について
【0001】~【0005】、【0008】には、本件特許発明の技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、効果に関する記載がなされている。
イ 本件特許発明の形態について
【0010】【0011】には、発明特定事項の用語の意味、優れた抗菌性、着色の発生の抑制と発明特定事項の関係が記載され、【0010】には、「本発明の組成物(以後、「本組成物」ともいう)は、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物(以後、「特定無機酸化物」ともいう)と抗菌剤とを含む」こと、「本組成物が優れた抗菌性を示す理由としては、特定無機酸化物と抗菌剤」「を併用している点が挙げられる。また、本発明の組成物において用いられる特定無機酸化物は銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まないため、着色の発生が抑制される。」と記載されている。
ウ 第1態様について
【0012】~【0018】には、第1態様について、特定無機酸化物の種類、粒子形状、含有量に関する記載があり、【0012】には、「<第1態様>
(銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物)
本組成物の第1態様は、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物を含む。
特定無機酸化物には、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子が含まれない。言い換えれば、特定無機酸化物には、銅原子が担持された無機酸化物、リン酸塩ガラス、及び、銅原子が担持されたリン酸塩ガラス等は含まれない。なお、銅原子は、金属状態であっても、イオン状態であってもよい。
上述したように、特定無機酸化物を用いれば、本組成物を適用した被処理物の着色が抑制される。」と記載されている。
エ 第1態様の抗菌剤について
【0020】~【0031】には、第1態様の抗菌剤について、抗菌剤の種類、担体の種類、抗菌剤の形状、含有量に関する記載があり、「【0020】
(抗菌剤)
本組成物の第1態様は、抗菌剤を含む。
・・・なかでも、優れた抗菌性を長期間にわたって維持できる点で、無機物(無機系抗菌剤)が好ましい。
【0021】
無機系抗菌剤としては、例えば、金属を含む抗菌剤が挙げられる。
・・・なかでも、本組成物の抗菌性がより優れる点で、金属としては、銀、銅、及び、亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、銀がより好ましい。
【0022】
金属を含む抗菌剤としては、担体と、担体上に担持された上記金属を含む金属担持担体が好ましい。・・・なかでも、本組成物の抗菌性がより優れる点で、担体としては、無機酸化物、又は、ポリマー粒子が好ましく、ガラス、又は、ポリマー粒子がより好ましい。
【0023】
担体である無機酸化物としては、より具体的には、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルゼオライト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、及び、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
なお、担体としては、結晶性であっても、非晶性(アモルファス)であってもよいが、非晶性であることが好ましく、ガラスがより好ましい。ガラスを構成し得る材料としては、例えば、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及び、リン酸塩等が挙げられる。
【0024】
金属を含む抗菌剤としては、本組成物の抗菌性がより優れる点で、銀系抗菌剤、又は、銅系抗菌剤が好ましい。
上記銀系抗菌剤は、銀を含む抗菌剤を意図する。」との記載および「【0028】
抗菌剤は粒子状であることが好ましい。特に、抗菌剤が無機物である場合、抗菌剤は粒子状であることが好ましい。
抗菌剤が粒子状である場合、その平均粒径は特に制限されないが、0.01μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。なお、その上限は、3.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。」との記載がされている。
オ 他の成分、親水性成分、シリケート系化合物、親水性モノマー、親水性ポリマー、溶媒、重合開始剤、触媒、界面活性剤、香料、造膜剤について
【0034】~【0063】には、他の成分である親水性成分、シリケート系化合物、親水性モノマー、親水性ポリマー、溶媒、重合開始剤、触媒、界面活性剤、香料、造膜剤等の例示及び組成物中の適切な含有量に関する記載がされている。
カ 組成物のpH、粘度、ゼータ電位、製造方法、ウエットワイパー、スプレー、表面処理基材の製造方法について
【0064】~【0077】には、組成物のpH、粘度、ゼータ電位、製造方法、ウエットワイパー、スプレー、表面処理基材の製造方法に関する適切な数値範囲や原材料や製造方法の例示等に関する記載がある。
キ 具体例の記載について
【0079】~【0085】には、
「【0079】
<実施例1>
容器中でエタノール278gを攪拌しながら、純水152g、シロキサン化合物であるバインダー(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケートMS51」)9.5g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)40g、アニオン性界面活性剤(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10g、を順次加えた後、イソプロパノール15g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)-180」)1g、平均粒径を0.5μmに制御した銀担持ガラス(富士ケミカル社製「バクテライト」、固形分含有量25質量%、銀担持ガラスは、ガラス上に銀を担持した抗菌剤に該当)0.16gを加え、ケイ酸アルミニウム(東亞合成製「NS-20」、平均粒径11μm)1.30gを加え、20分間攪拌し、組成物1を得た。
【0080】
抗菌剤及び無機酸化物の種類及び使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例及び各比較例に係る組成物を得た。
なお、表1中における各略号は、以下の内容を表す。
・抗菌剤1:平均粒径を0.5μmに制御した銀担持ガラス(富士ケミカル社製「バクテライト」)
・抗菌剤2:平均粒径を1.0μmに制御した銀担持リン酸ジルコニウム(東亞合成社製「ノバロン」)
・特定無機酸化物1:ケイ酸アルミニウム(東亞合成社製「NS-20」、平均粒径11μm)
・無機化合物1:リン酸ジルコニウム(東亞合成社製「NS-10」、平均粒径1μm)
・無機化合物2:銅担持ケイ酸アルミニウム(東亞合成社製「NS-20C」、平均粒径3.3μm)
抗菌剤1~2、特定無機酸化物1、及び、無機化合物1~2の平均粒径については、電子顕微鏡を用いた観察により測定した。具体的な測定方法は、抗菌剤の平均粒径の測定方法で説明したとおりである。
・「-」:その化合物を用いなかったことを表す。
【0081】
<抗菌性評価>
不織布を準備し、不織布100cm2当たり、各実施例及び比較例の組成物が1g付着するように、不織布に対して組成物を噴射した。次に、得られた組成物付き不織布を25℃にて2日間乾燥し、膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材について、JIS Z 2801:2012記載の評価方法に準拠し、特定細菌(Klebsiella pneumoniae [K.pneumoniae])を培養して得た菌液への接触時間を3時間に変更して試験を実施した。試験後の抗菌活性値を測定し、結果を表1の「抗菌性」欄に示した。
なお、表1中「≧3.5」は、「3.5以上」であることを意図する。
【0082】
<着色性評価>
上記<抗菌性評価>で得られた膜付き基材(不織布に組成物を噴霧したもの)について、色味が付いているかどうかを目視にて評価した。色味がない場合は、表1の着色性の評価は「無し」、色味がある場合は、表1の着色性の評価は「有り」とした。
【0083】
表中の「濃度(質量%)」は、組成物全質量に対する含有量(質量%)を表す。
【0084】
【表1】
[図:0001397190000006.jpg]
【0085】
表1の結果より、本組成物を用いると所望の効果が得られることが確認された。」(下線は、当審合議体にて追加。以下同様。)
(4)判断
ア 本件特許発明の課題について
本件特許明細書の前記(3)アの記載、特許請求の範囲の記載、前記(2)の発明特定事項及び本件特許明細書全体の記載を参酌して、本件特許発明の課題は、抗菌性に優れ、かつ、被処理物の着色を抑制できる組成物を提供すること、該組成物を含むウェットワイパー、スプレー、及び、表面処理基材の製造方法を提供することにあると認める。
イ サポート要件の判断
(ア)上記(2)に記載のように、請求項1においては、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物」において、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウムであ」ること、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である」こと、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」ことを特定した物の発明が記載されている。
上記(3)に記載のとおり、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物であって、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物として、ケイ酸アルミニウムが好ましい例として挙げられるとともに実施例においても使用されている。
また、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」ことであ」ること、についても、実施例として銀を含む金属担持担体である抗菌剤として、ガラスを構成する材料は不明であるが、ガラスに担持された銀の抗菌剤が示され、【0022】及び【0023】には、金属を含む抗菌剤として金属担持担体が好ましいこと、担体である無機酸化物として、より具体的な例として最初にリン酸亜鉛カルシウムが挙げられている。
そして、【0010】に示された、特定無機酸化物と抗菌剤との併用が優れた抗菌性を示す理由である旨の作用記載及び【0012】に示された、銅原子が担持されておらず、かつリン原子が含まれない特定無機酸化物を用いれば、適用した被処理物の着色が抑制される旨の作用記載をも考慮すれば、本件特許発明1の組成物について、本件特許発明1に該当する担体としてリン酸亜鉛カルシウムであることが明示された実施例が存在していなくても、特定無機酸化物であるケイ酸アルミニウムと銀を含み金属担持担体からなる抗菌剤とを含む組成物に関して、効果を奏した具体的検証結果の記載も存在するのであるから、本件特許発明1の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
(イ)本件特許発明3、6~10に関して
本件特許発明3、6~10に関しても、【0005】及び【0006】の発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段の記載、【0008】の発明の効果の記載、【0028】の抗菌剤の平均粒径に関する記載、【0035】~【0049】の親水性成分、シリケート系化合物、親水性を有するモノマー及び親水性を有するポリマーに関する記載、並びに【0068】~【0077】のウエットワイパー、スプレー及び表面処理基材の製造方法に関する記載についても併せて考慮すれば、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3、6~10の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、異議申立書30頁において、訂正前の本件特許発明4~10に該当する複合体を含む組成物に該当する態様は、実施例に記載していないし、実施例に記載した無機酸化物と抗菌剤を含む組成物の態様と同等であると認められないので、訂正前の本件特許発明4~10は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない旨主張している。
しかしながら、上記訂正前の本件特許発明4~10に該当する複合体を含む組成物に該当する態様は、本件訂正によって、対象となる請求項や引用する請求項の範囲が限定されたことで、上述のとおり、本件特許発明は、当業者であれば上記本件特許発明の課題を解決できることを認識できる範囲のものとなり、発明の詳細な説明に記載された発明となった。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(5)サポート要件に関する取消理由(取消理由3)についてのまとめ
以上のとおり、請求項1、3、6~10に係る特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものではない。
したがって、本件訂正により、サポート要件に関する取消理由3は、解消しており、取消理由3には、理由がない。
7 取消理由の実施可能要件に関する点(取消理由4)について
(1)本件特許発明1に関して
前記6の取消理由3で述べたのと同様に、前記6(2)に記載のように、請求項1に係る発明は、「銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物と、抗菌剤とを含む組成物」において、「前記無機酸化物が、ケイ酸アルミニウム.であ」ること、「前記無機酸化物は、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物である」こと、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」ことを特定した物の発明である。
前記5(3)に記載のとおり、発明の詳細な説明には、銅原子が担持されておらず、かつ、リン原子を含まない無機酸化物であって、抗菌性を示す成分が担持されていない無機酸化物として、ケイ酸アルミニウムが好ましい例として挙げられるとともに実施例においても使用されている。
また、「前記抗菌剤が、銀を含」むこと、「前記抗菌剤が、担体と、前記担体上に担持された銀を含む金属担持担体であり、前記担体が、リン酸亜鉛カルシウムである」ことであ」ること、についても、実施例として銀を含む金属担持担体である抗菌剤として、ガラスを構成する材料は不明であるが、ガラスに担持された銀の抗菌剤が示され、【0022】及び【0023】には、金属を含む抗菌剤として金属担持担体が好ましいこと、担体である無機酸化物として、より具体的な例として最初にリン酸亜鉛カルシウムが挙げられている。
そして、発明の詳細な説明には、【0010】に、特定無機酸化物と抗菌剤との併用が優れた抗菌性を示す理由である旨の作用記載及び【0012】に、銅原子が担持されておらず、かつリン原子が含まれない特定無機酸化物を用いれば、適用した被処理物の着色が抑制される旨の作用記載があり、【0067】には、本件特許発明の組成物の製造方法の記載があることをも考慮すれば、本件特許発明1の組成物について、本件特許発明1に該当する担体としてリン酸亜鉛カルシウムであることが明示された実施例が存在していなくても(前記乙第1~3号証のみからでは担体の具体的材料は不明である。)、特定無機酸化物であるケイ酸アルミニウムと銀を含み金属担持担体からなる抗菌剤とを含む組成物に関して、効果を奏した具体的検証結果の記載も存在するのであるから、本件出願の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(2)本件特許発明3、6~10に関して
本件特許発明3、6~10に関しても、【0005】及び【0006】の発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段の記載、【0008】の発明の効果の記載、【0028】の抗菌剤の平均粒径に関する記載、【0035】~【0049】の親水性成分、シリケート系化合物、親水性を有するモノマー及び親水性を有するポリマーに関する記載、並びに【0068】~【0077】のウエットワイパー、スプレー及び表面処理基材の製造方法に関する記載についても併せて考慮すれば、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3、6~10についても、本件出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、異議申立書30頁において、訂正前の本件特許発明4~10に該当する複合体を含む組成物に該当する態様は、実施例に記載していないし、実施例に記載した無機酸化物と抗菌剤を含む組成物の態様と同等であると認められないので、訂正前の本件特許発明4~10に関しては、明細書に当業者が実施可能なように記載されているとはいえない旨主張している。
しかしながら、上記訂正前の本件特許発明4~10に該当する複合体を含む組成物に該当する態様は、本件訂正によって、対象となる請求項や引用する請求項の範囲が限定されたことで、上述のとおり、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明3、6~10に関して、当業者であれば容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとなった。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(4)実施可能要件に関する取消理由(取消理由4)についてのまとめ
以上のとおり、本件の発明の詳細な説明の記載は、請求項1、3、6~10に係る特許を受けようとする発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものではない。
したがって、本件訂正により、実施可能要件に関する取消理由4は、解消しており、取消理由4には、理由がない。
8 取消理由の明確性要件に関する点(取消理由5)について
本件訂正によって取消理由の対象となった訂正前の本件特許発明4~10に関し、請求項4及び5は削除され、請求項4及び5を引用する請求項の引用請求項の対象からも削除されたので、「複合物」という特定事項についての明確性要件に関する取消理由5は、解消しており、取消理由5には、理由がない。
9 取消理由の判断のまとめ
以上のとおり、当審合議体から通知した取消理由通知に示した取消理由は解消しており、上記取消理由には理由がない。
II 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての検討
前記Iで検討した取消理由には、前記第4の1に記載した特許異議申し立て理由が全て含まれており、取消理由で採用しなかった特許異議申立理由はない。
第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1、3、6~10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件の請求項1、3、6~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2、4及び5は、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり
決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700419