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特許異議申立

2021-700655

紫外線硬化型コーティング剤

審判番号
2021-700655
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-050454
登録番号
6834044
請求日
2021年07月09日
審決日
2023年10月17日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社オリジン
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【異議申立人】佐藤 怜
  • 【異議申立人】山内 慶子
  • 【異議申立人】中川 賢治
  • 【異議申立人】松井 伸一
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D) / P1651.851-YAA(C09D) / P1651.853-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6834044号発明「紫外線硬化型コーティング剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6834044号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 特許第6834044号の請求項1~2、4~8及び10~12に係る特許を維持する。 特許第6834044号の請求項3及び9についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6834044号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、 令和2年3月23日を出願日とするものであって、令和3年2月5日に特許権の設定登録がされ、令和3年2月24日に特許掲載公報が発行されたものであって、 令和3年7月9日(差出日)に、その請求項1~12に係る発明の特許に対し、佐藤怜(以下「申立人A」という。)により、 令和3年8月13日に、その請求項1~12に係る発明の特許に対し、山内慶子(以下「申立人B」という。)により、 令和3年8月13日に、その請求項1~10及び12に係る発明の特許に対し、中川賢治(以下「申立人C」という。)により、 令和3年8月23日に、その請求項1~10及び12に係る発明の特許に対し、松井伸一(以下「申立人D」という。)により、 令和3年8月23日に、その請求項1~12に係る発明の特許に対し、渡辺陽子(以下「申立人E」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和3年10月20日付け 取消理由通知 同年11月 2日 上申書(特許権者) 同年11月10日付け 通知書(指定期間を延長) 令和4年 1月20日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 1月25日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 6月 9日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 7月 1日 上申書(特許権者) 同年 7月 7日付け 通知書 同年 9月13日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 9月29日付け 訂正請求があった旨の通知 令和5年 2月14日付け 訂正拒絶理由通知 同年 2月24日 上申書(特許権者) 同年 3月 2日付け 通知書 同年 4月21日 意見書(特許権者) 同年 6月 7日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 8月10日 意見書・訂正請求書(特許権者) なお、申立人A~Eは、令和4年1月25日付けの訂正請求があった旨の通知、及び令和4年9月29日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 また、令和4年1月20日付け、及び令和4年9月13日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年8月10日付けの訂正請求による訂正(以下「第3訂正」ともいう。)の「請求の趣旨」は『特許第6834044号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~11からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「成分(A)及び(B)を含むエマルションでない紫外線硬化型コーティング剤」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「成分(A)及び(B)を含む、モノマー成分を乳化重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリマーからなるエマルション粒子及び前記モノマー成分を乳化重合させる際に使用した水性媒体を含有するエマルションでない紫外線硬化型コーティング剤」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤であって、 フォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤をさらに含み、 紫外線硬化型コーティング剤中の成分(A)の含有量が、79~92質量%であり、 成分(A)の25℃粘度が、1~20000mPa・sであり、 紫外線コーティング剤中の成分(B)と溶解剤の合計含有量が、6~16質量%であり、光開始剤:溶解剤が質量比で1:1~1:10であり、 成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず、」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤・・・トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアクリルニトリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニール、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、及びポリメチルペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される基材に塗布し、モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するための紫外線硬化型コーティング剤」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項1の「成分(A):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「成分(A):窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー(ただし、アミド構造を有するものを除く)」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項3を削除する。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項4の「請求項3」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「請求項1」との記載に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項5の「請求項3又は4」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「請求項1又は4」との記載に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項6の「請求項1~5」との記載部分を、 訂正後の請求項6の「請求項1、2、4及び5」との記載に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項8の「請求項1~7」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「請求項1、2及び4~7」との記載に訂正する。 (10)訂正事項10 訂正前の請求項9を削除する。 (11)訂正事項11 訂正前の請求項10の「請求項1~9」との記載部分を、 訂正後の請求項10の「請求項1、2及び4~8」との記載に訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「エマルションでない紫外線硬化型コーティング剤」という「除くクレーム」によって除かれるものが、原審の引用文献1(特開2016-180082号公報)に記載のとおりのものであることを「明瞭」にするための訂正であって、訂正前の「除くクレーム」によって除かれるものが、明確には「モノマー成分を乳化重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリマーからなるエマルション粒子及び前記モノマー成分を乳化重合させる際に使用した水性媒体を含有するエマルション」のみを本来の意味内容としていたことは明らかであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項1は、訂正前の記載について、その記載本来の意味内容を明らかにするための「明瞭でない記載の釈明」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件特許明細書の段落0007の「紫外線硬化型コーティング剤中の成分(A)の含有量は、…特に好ましくは50~95質量%である。また、成分(A)の25℃粘度は、好ましくは1~20000mPa・sであ…る。」との記載、並びに同段落0015の「成分(質量%)…実施例6…79」及び同段落0016の「成分(質量%)…実施例9…92」との記載を根拠に、 訂正後の請求項1に「紫外線硬化型コーティング剤中の成分(A)の含有量が、79~92質量%であり、成分(A)の25℃粘度が、1~20000mPa・sであり、」という発明特定事項を追加して減縮し、 同段落0008の「また、光開始剤は、予め溶解剤に溶解して用いてもよい。…前記溶解剤の使用量は、…好ましくは光開始剤:溶解剤が質量比で1:1~1:10…の範囲内となるように用いられる。…光開始剤と溶解剤の合計含有量は…特に好ましくは6~16質量%である。」との記載や、訂正前の請求項3の「さらにフォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤を含む、請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。」との記載を根拠に、 訂正後の請求項1に「フォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤をさらに含み、…紫外線硬化型コーティング剤中の成分(B)と溶解剤の合計含有量が、6~16質量%であり、光開始剤:溶解剤が質量比で1:1~1:10であり、」という発明特定事項を追加して減縮し、 訂正前の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤」の範囲から「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー」を含む場合のものを「除くクレーム」によって除外して減縮するものであるから、 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」のみを目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件特許明細書の段落0012の「塗布する基材としては、…トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアクリルニトリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニール、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、及びポリメチルペンテンなどが挙げられる。…モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成する場合」との記載や、訂正前の請求項11の「モスアイ構造を有する請求項10に記載のコーティングフィルム。」との記載を根拠に、 訂正後の請求項1に「トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアクリルニトリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニール、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、及びポリメチルペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される基材に塗布し、モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するための紫外線硬化型コーティング剤」という発明特定事項を追加して減縮するものであるから、 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」のみを目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、本件特許明細書の段落0007の「本発明の成分(A)として用いるものとしては、(メタ)アクリロイル基の数が1分子中に1~6個有するものが好ましく、1~3個有するものがより好ましい。」との記載、及び同段落0018の(A-1)がアクリロイル基を1個有し、(A-2)がアクリロイル基を2個有していることの記載を根拠に、訂正前の請求項1の「成分(A):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」を、訂正後の請求項1の「成分(A):窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー」に限定して減縮し、 訂正前の請求項1の「成分(A)」の範囲から「アミド構造を有するもの」を「除くクレーム」によって除外して減縮するものであるから、 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」のみを目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5~11について 訂正事項5は、訂正前の請求項3を削除する訂正である。 訂正事項6~7は、訂正事項1により、訂正前の請求項1を引用する請求項3に記載の発明特定事項が、訂正後の請求項1の記載に盛り込まれるとともに、訂正事項5により、訂正前の請求項3が削除されたことにともなって、訂正前の請求項3を引用することで請求項1を間接的に引用する請求項4及び5の記載を、訂正後の請求項1を直接的に引用するものに改めるものである。 訂正事項8~9は、訂正前の請求項6及び8の他の請求項を択一的に引用する記載のうち、請求項3を引用するものを削除するものである。 訂正事項10は、訂正前の請求項9を削除する訂正である。 訂正事項11は、訂正前の請求項11の他の請求項を択一的に引用する記載のうち、請求項3及び9を引用するものを削除するものである。 してみると、訂正事項5~11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」のみを目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5~11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項1~12について、その請求項2~12は直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~11による第3訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕に係る訂正を認める。 第3 本件発明 第3訂正により訂正された本件特許の請求項1~12に係る発明(以下「本1発明」~「本12発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。 「【請求項1】 成分(A)及び(B)を含む、モノマー成分を乳化重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリマーからなるエマルション粒子及び前記モノマー成分を乳化重合させる際に使用した水性媒体を含有するエマルションでない紫外線硬化型コーティング剤であって、 フォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤をさらに含み、 紫外線硬化型コーティング剤中の成分(A)の含有量が、79~92質量%であり、 成分(A)の25℃粘度が、1~20000mPa・sであり、 紫外線硬化型コーティング剤中の成分(B)と溶解剤の合計含有量が、6~16質量%であり、光開始剤:溶解剤が質量比で1:1~1:10であり、 成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず、 トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアクリルニトリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニール、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、及びポリメチルペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される基材に塗布し、モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するための紫外線硬化型コーティング剤。 成分(A):窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー(ただし、アミド構造を有するものを除く) 成分(B):フォスフィンオキサイド系光開始剤 【請求項2】 成分(A)がイミド構造を有する(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 フォスフィンオキサイド系光開始剤をその溶解剤に予め溶解させた混合物として含む請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項5】 前記溶解剤が液状の光開始剤である、請求項1又は4に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項6】 さらに、紫外線硬化型コーティング剤を用いて形成されたコーティングフィルムの表面を撥水性にするための添加剤を含む請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項7】 前記添加剤がフッ素系添加剤である、請求項6に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項8】 紫外線硬化型コーティング剤に含まれる溶剤の量が10質量%以下である、請求項1、2及び4~7のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 請求項1、2及び4~8のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤を用いて形成されたコーティングフィルム。 【請求項11】 モスアイ構造を有する請求項10に記載のコーティングフィルム。 【請求項12】 請求項10又は11に記載のコーティングフィルムを有する物品。」 第4 取消理由通知の概要 1.先に通知した取消理由 令和5年6月7日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由は、次の理由9からなるものである。 〔理由9〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 『本件特許の請求項1の記載において、成分(A)は「成分(A):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」と定義されているのに対して、請求項9の「(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む」との記載は、成分(A)を概念として含み、区別がつかないため、記載が不明確である。 そして、特許請求の範囲が訂正特許請求の範囲(案)のとおりに訂正されていない本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。』 よって、本件特許の請求項1~12に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.取消理由通知で指摘した取消理由について 上記〔理由9〕の記載不備として指摘した点は、第3訂正により、請求項9が削除されたことにより解消した。なお、訂正後の特許請求の範囲の記載が、訂正特許請求の範囲(案)の「79~95質量%」という数値範囲が「79~92質量%」に変更されているが、それ以外は、訂正特許請求の範囲(案)のとおりに訂正されており、なおかつ、前記数値範囲の上限値を「95質量%」から「92質量%」に変更することによって、特許請求の範囲の記載が不明確になるとはいえないので、当審は、第3訂正を受け入れることにした。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立人Aの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~9号証について 申立人Aが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1-12は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものである。 また、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1-12は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をくることができたものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものである(特許異議申立書の第71頁)。 そして、証拠として、次の甲第1~9号証を提示している。 甲第1号証:特開2016-069649号公報 甲第2号証:特開2013-018842号公報 甲第3号証:特開2011-132322号公報 甲第4号証:国際公開第2011/115162号 甲第5号証:特開2011-187824号公報 甲第6号証:国際公開第2006/099375号 甲第7号証:特開2012-036245号公報 甲第8号証:国際公開第2017/179678号 甲第9号証:特開2005-319459号公報 イ 甲第1~6号証のそれぞれを主引用例とした場合の検討 (ア)甲第1号証の段落0103及び0109に記載の「実施例9」のものは『含フッ素硬化性化合物(合成例3)22重量部と、フッ素不含硬化性化合物(A400:ポリエチレングリコールジアクリレート)78重量部を混合し、これら硬化性化合物の合計37部に、光重合開始剤として“イルガキュア 184”2部及び“ルシリン TPO”1部、並びに溶剤として酢酸エチル40部及び酢酸ブチル20部を添加して混合した基材の表面に塗工し、乾燥して溶剤を除去し、得られる塗工層に、鏡面又は凹凸面を有する型を押し当てて硬化させる方式で用いられる紫外線硬化性塗工組成物。』に関するものである。 そして、上記「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (イ)甲第2号証(令和3年10月20日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物2に同じ。)の段落0108に記載の「実施例1」のものは『4-アクリロイルモルホリン(A-1)40重量部、数平均分子量が550のポリエチレングリコールジアクリレート(B-1)40重量部、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(C-1)20重量部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)1.4部、酸化防止剤(イルガノックス1010)1部及び酸化防止剤(チヌビン400)0.6部を一括で配合した活性エネルギー線硬化型感光性組成物。』に関するものである。 そして、上記「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (ウ)甲第3号証の段落0046及び0053に記載の「実施例21」のものは『HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)とM-140(N-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド)の50:50のモル比からなる重合性化合物100質量部に対して、光重合開始剤として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド3質量部と、2,4-ジエチルチオキサントン3質量部を配合した観光組成物。』に関するものである。 そして、上記「2-ヒドロキシエチルアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に1個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (エ)甲第4号証(令和3年10月20日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物1に同じ。)の段落0113に記載の「実施例1」のものは『4官能ウレタン系ハードアクリレート(U-4HA)70質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(A-600)30質量部、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCURE 1173)0.5質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(DAROCURE TPO)0.5質量部からなる、活性エネルギー線(紫外線)硬化性樹脂組成物。』に関するものである。 そして、上記「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (オ)甲第5号証の段落0096に記載の「実施例1」のものは『N-アクリロイルモルフォリン、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートの4種類の単量体の25:25:30:20混合物(質量比)である混合物A66.0質量部と、フッ素モノマー(トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール)30.0質量部と、重合開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイル-エトキシフェニル-ホスフィンオキシド)4.0質量部からなるインプリント用硬化性組成物CS08。』に関するものである。 そして、上記「トリプロピレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (カ)甲第6号証の第28頁の表1に記載の「実施例17」のものは『ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)45質量%、オリゴマーウレタン(メタ)アクリレート(実施例1)45質量%、シリカナノ粒子分散体(実施例2)10質量%、及び光開始剤(ダロカー4265)0.5%から調製された重合性組成物。』に関するものである。 そして、上記「ヘキサンジオールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (キ)してみると、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本4~本8及び本11~本12発明は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明ではない。 そして、甲第1~9号証の記載を精査しても、本1発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえないので、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本4~本8及び本11~本12発明は、甲第1~9号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 したがって、甲第1号証~甲第6号証を主引用例とする申立人Aの申立理由1及び2に理由はない。 (2)申立人Bの特許異議申立理由について ア 申立理由1について 申立人Bが主張する申立理由1(新規事項の追加)は、令和2年9月3日付の手続補正書による、「紫外線硬化型コーティング剤」について「エマルションでない」ことを規定する請求項1の補正は、新規事項の追加に該当し、特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)に違反するというものである(特許異議申立書の第1頁)。 しかしながら、いわゆる「除くクレーム」とする補正〔請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正〕は、新たな技術的事項を導入するものではないので、補正は許される。 そして、第3訂正による訂正後の請求項1の記載は、上記『第2 2.(1)』の項に示したように、原審の引用文献1(特開2016-180082号公報)に記載された「モノマー成分を乳化重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリマーからなるエマルション粒子及び前記モノマー成分を乳化重合させる際に使用した水性媒体を含有するエマルション」のみを「除くクレーム」によって除外するものである。 したがって、訂正後の請求項1の記載に、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されているとはいえないから、申立人Bの申立理由1に理由があるとはいえない。 イ 申立理由2~8並びに甲第1~8号証について 申立人Bが主張する申立理由2(新規性欠如)は、本件発明1は、甲第1号証に記載されたものであり、新規性を欠如するから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものである(特許異議申立書の第66頁)。 また、申立理由3~8(進歩性欠如)のうち、申立理由3は、本件発明1,6~10及び12は、甲第1号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如し、 申立理由4は、本件発明1,6~10及び12は、甲第2号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如し、 申立理由5は、本件発明1及び6は、甲第3号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如し、 申立理由6は、本件発明1は、甲第4号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如し、 申立理由7は、本件発明1,6~10及び12は、甲第5号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如し、 申立理由8は、本件発明1,6及び7は、甲第6号証の記載を参酌して、当業者が容易に想到し得る発明であって、進歩性を欠如するから、 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものである(特許異議申立書の第66~67頁)。 そして、証拠として、次の甲第1~8号証を提示している。 甲第1号証:特開2019-70718号公報 甲第2号証:特開2007-262281号公報 甲第3号証:特開2016-180082号公報 甲第4号証:特開2013-62087号公報 甲第5号証:国際公開第2014/013922号 甲第6号証:特開2013-1007号公報 甲第7号証:ダイキン工業株式会社、オプツールに関するウェブサイトの写し 甲第8号証:東亜合成株式会社、アロニックスの種類と題するウェブサイトの写し すなわち、申立人Bは、申立理由3~8において、訂正前の請求項2~5及び11に対して、新規性及び進歩性の欠如に関する申立ての理由及び証拠を示していない。 そして、上記『第2 2.(2)及び(3)』の項に示したように、第3訂正の訂正事項2及び3により、訂正前の請求項3の「さらにフォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤を含む」との記載に対応する事項や、訂正前の請求項11の「モスアイ構造を有する」との記載に対応する事項などが、訂正後の請求項1の記載に必須の発明特定事項として盛り込まれている。 してみると、申立人Bの申立ての理由及び証拠方法によっては、申立理由2~8に理由があるとはいえない。 ウ 申立理由9について 申立人Bが主張する申立理由9(サポート要件非充足)は、本件特許の請求項1は、所定の「成分(A):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」及び「成分(B):フォスフィンオキサイド系光開始剤」を含む「紫外線硬化型コーティング剤」に関するものであるが、請求項1に係る特許発明の技術的範囲の全てにおいてまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(特許異議申立書の第2頁)。 しかしながら、本件特許の請求項1の記載は、上記『第2 2.(4)』の項に示したように、第3訂正の訂正事項4により、本件特許明細書の段落0018の実施例〔アクリロイル基を1個有する(A-1)と、アクリロイル基を2個有する(A-2)の具体例〕の記載を根拠に、訂正前の請求項1の「成分(A):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」が、訂正後の請求項1の「成分(A):窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー」に限定されている。 してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例の記載に基づき、訂正後の請求項1に係る発明の範囲にまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できると当業者は認識できるといえるから、申立理由9に理由があるとはいえない。 エ 申立理由10について 申立人Bが主張する申立理由10(明確性要件非充足)は、本件特許の請求項6に記載のコーティングフィルムの表面を撥水性にするための添加剤」について、どの程度、「コーティングフィルムの表面を撥水性にする」添加剤が該当するのか明確ではないから、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(特許異議申立書の第2頁)。 しかしながら、当該「添加剤」は「コーティングフィルムの表面を撥水性にする」という性質を満たせばよい「添加剤」として明確に把握でき、その程度を具体的に規定しなければ、第三者にとって不測の不利益を及ぼすほどに不明確になるとすべき合理的な根拠は見当たらない。 してみると、本件特許の請求項6の記載に不明確な点はないから、申立理由10に理由があるとはいえない。 オ 申立理由11について 申立人Bが主張する申立理由11(明確性要件非充足)は、本件特許の請求項9に記載の「(メタ)アクリレートモノマー」が、請求項9の従属する請求項1に記載の「(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー」に対してどのように区別されるべきものであるか、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(特許異議申立書の第2頁)。 しかしながら、上記『第2 2.(5)』の項に示したように、第3訂正の訂正事項10により、訂正前の請求項9は削除されているから、申立理由11に理由があるとはいえない。 (3)申立人Cの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~8号証について 申立人Cが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1、2、8~10、12は、甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号証参照)であり、新規性を欠如している(特許法第29条第1項第3号)というものであり、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明3~5は甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号参照)及び甲第5号証に記載された事項(甲第6号証参照)に基づき、当業者が容易に為し得た発明であり進歩性を欠如しており、本件特許発明6、7は甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号証参照)と、甲第7号証及び甲第8号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に為し得た発明であり進歩性を欠如している(特許法第29条第2項)というものであって、上記各請求項に係る本件特許は取り消すべきものである(特許法第113条第2号)というものである(申立書の第25頁)。そして、証拠として、次の甲第1~8号証を提示している。 甲第1号証:特開2019-143057号公報 甲第2号証:安全データシート(ライトアクリレートDCP-A) 甲第3号証:安全データシート(ACMO) 甲第4号証:特開2018-180531号公報 甲第5号証:特開2019-6922号公報 甲第6号証:光重合開始剤総合カタログ(BASFジャパン) 甲第7号証:Data Sheet(BYK-307) 甲第8号証:Data Sheet(BYK-UV3575) イ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 甲第1号証(令和3年10月20日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物4に同じ。)の段落0130の「実施例31」のものは『テトラヒドロフルフリルアクリレート(THF-A)を56質量部、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(DCP-A)を10質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)を24質量部、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(M-140)を10質量部、光重合開始剤としてアシルホスフィン系化合物(ルリシンTPO)を5質量部、レベリング剤としてBYK-307(BYK社製)0.1質量部、重合禁止剤としてポリストップ7300Pを0.05質量部、混合してなる光硬化性組成物。』に関するものである(当該取消理由通知書の第17~18頁)。 そして、上記「テトラヒドロフルフリルアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に1個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであって、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさないから、本1発明は甲第1号証に記載された発明ではない。 また、甲第1号証に記載の発明は「テトラヒドロフルフリルアクリレート」のような環状エーテルモノマーを含むことを必須としているから、甲第1号証を主引用例とした場合に、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本8~本10及び本12発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本3~本7発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第1~8号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第1号証を主引用例とする申立人Cの申立理由1及び2に理由はない。 (4)申立人Dの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~13号証について 申立人Dが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1、2、6~10及び12は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものであり、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1~10及び12は、甲第1号証、甲第2号証、又は/及び甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものであって(申立書の第46頁)、証拠として、次の甲第1~3号証を提示している。 甲第1号証:特開2019-137776号公報 甲第2号証:特開2013-53280号公報 甲第3号証:平成29年度佐賀県工業技術センター研究報告書、69~74頁 イ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 甲第1号証(令和3年10月20日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物5に同じ。)の段落0099の「実施例1」のものは『N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(M-140、イミド基含有モノマー、東亜合成社製)54質量部、ジメチルアクリルアミド(DMAA、単官能モノマー、KJケミカルズ社製)36質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート(Miramer M222、2官能モノマー、Miwon社製)10質量部、ルリシンTPO(アシルホスフィン系光重合開始剤、BASFジャパン社製)5質量部、ポリフローNo.75(表面調整剤、共栄社化学社製)4質量部、ポリストップ7300P(重合禁止剤、伯東社製)0.05質量部を混合して得られた、フィルム上に塗工し、紫外線を照射して硬化する光硬化性組成物。』に関するものである(当該取消理由通知書の第18頁)。 そして、上記「ジプロピレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであって、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさないから、本1発明は甲第1号証に記載された発明ではない。 また、甲第1号証に記載の発明は「ジプロピレングリコールジアクリレート」のような多官能ラジカル重合性化合物を含むことを必須としているから、甲第1号証を主引用例とした場合に、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本6~本10及び本12発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本10及び本12発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第1~3号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第1号証を主引用例とする申立人Dの申立理由1及び2に理由はない。 ウ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 甲第2号証の段落0119の「#E2」の組成物No.のものは『製造例1の反応生成物〔イソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物:HDI3-HBA〕60質量部、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート〔東亜合成(株)製アロニックスM-315〕30質量部、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド〔BASF(株)製光ラジカル重合開始剤:Irg-819〕2質量部を含有する硬化型コーティング剤組成物。』に関するものである。 そして、上記「トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート」は、アクリロイル基を1分子中に3個有する窒素含有アクリレートモノマーであって、本1発明の「成分(A):窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー(ただし、アミド構造を有するものを除く)」に該当せず、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさないから、本1発明は甲第2号証に記載された発明ではない。 また、甲第2号証に記載の発明は「トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート」のような「ウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物」という(B)成分を含むことを必須としているから、甲第2号証を主引用例とした場合に、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本6~本10及び本12発明は、甲第2号証に記載された発明ではなく、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本10及び本12発明は、甲第2号証に記載の発明及び甲第1~3号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第2号証を主引用例とする申立人Dの申立理由1及び2に理由はない。 エ 申立理由3について 申立人Dが主張する申立理由3(記載不明確)は、本件特許の請求項9の「(メタ)アクリレートモノマー」は、成分(A)を概念として含み、区別が付かないため不明確であり、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(申立書の第45行)。 しかしながら、第3訂正の訂正事項10により、訂正前の請求項9は削除されているから、申立理由3に理由はない。 カ 申立理由4について 申立人Dが主張する申立理由4(実施可能性)は、本件特許明細書の実施例では、成分(A)として2種類の化合物を使用した例しか記載されていないので、上記した化合物以外の化合物を使用した場合、本件特許発明の効果を奏するのか否かが全く不明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(申立書の第45~46頁)。 しかしながら、成分(A)として実施例で使用されたもの以外の「窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーであって、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1又は2個有する前記モノマー及び/又はオリゴマー(ただし、アミド構造を有するものを除く)」を使用した場合に、本件特許明細書の実施例で使用された化合物と同程度の効果が得られないといえる合理的な根拠は、特許異議申立人によって示されていないし、そもそも本件特許発明の効果を奏するか否かは、本件特許発明を実施できるか否かに関係がない。 したがって、特許異議申立人の主張及び証拠方法によっては、本件特許明細書の記載に不備があるとはいえないので、申立理由4に理由はない。 (5)申立人Eの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~9号証について 申立人Eが主張する申立理由1(新規性)は、請求項1、3、5、8および9は、甲第1号証記載の発明と具体的構成が同一であり、請求項1、8、9、10及び12は、甲第6号証記載の発明と具体的構成が同一であり、請求項1、8、9、10、11および12は、甲第7号証記載の発明と具体的構成が同一であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものである。 また、申立理由2(進歩性)は、請求項1~12は、甲第1号証及び甲第2~7号証に記載の発明から容易に想到できる発明であり、甲第6号証並びに甲第3~5及び7~8号証に記載の発明から容易に想到できる発明であり、甲第7号証並びに甲第3~6及び9号証に記載の発明から容易に想到できる発明であるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものである(特許異議申立書の第3頁)。 そして、証拠として、次の甲第1~9号証を提示している。 甲第1号証:特開2017-180018号公報 甲第2号証:特開2018-141101号公報 甲第3号証:Ciba社、Photoinitiators for UV Curingと題する文書(2003) 甲第4号証:特開2008-163183号公報 甲第5号証:特開2017-203908号公報 甲第6号証:特開2013-1007号公報 甲第7号証:国際公開2017/110697号の再公表公報 甲第8号証:国際公開2016/098636号の再公表公報 甲第9号証:特開2014-229496号公報 イ 甲第1、6及び7号証を主引用例とした場合の検討 (ア)甲第1号証の段落0047に記載の「製造例2」のものは『ウレタンアクリレートオリゴマー15部、アクリロイルモルホリン15部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート23.5部、硫化亜鉛20部、炭酸カルシウム10部、顔料分散剤1部、レオロジーコントロール剤0.4部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン4部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド1部、及び消泡剤0.1部を攪拌混合してなる活性エネルギー線硬化型塗料。』に関するものである。 そして、上記「2-ヒドロキシエチルアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に1個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (イ)甲第6号証(令和3年10月20日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物6に同じ。)の段落0077に記載の「実施例3」のものは『ウレタンアクリレート(UV3000B、日本合成化学工業社製)150g、ポリエチレングリコールジアクリレート(KAYARAD、PEG400DA、日本化薬社製)150g、1,9-ノナンジオールジアクリレート(ライトアクリレート1.9ND-A、共栄社化学社製)150g、N-ビニルピロリドン23.2g、シリコーンジアクリレート(EBECRYL350、ダイセル・サイテック社製)を800mg、開始剤のDAROCUR TPO(Ciba社製)を9.1g添加し溶解させた、TACフィルムのロールに塗布し、メタルハライドランプで光硬化させる光硬化性樹脂。』に関するものである。 そして、上記「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (ウ)甲第7号証の段落0077に記載の「実施例1」のものは『NKエステル A-TMPT 1g、NKエステル A-200 7.1g、NKエステル A-GLY-9E 1g、及びN,N’-ジメチルアクリルアミド 0.9gを混合し、その混合物にIRGACURE(登録商標)TPO 0.1gを加えてなるインプリント材料PNI-a1。』に関するものである。 そして、上記「NKエステル A-200」という製品名の化学物質(一般に「ポリエチレングリコールジアクリレート」として認識されるもの)は、アクリロイル基を1分子中に2個有する窒素を含有しないアクリレートモノマーであるから、本1発明の「成分(A)以外の(メタ)アクリレートモノマーを含まず」という発明特定事項を満たさない。 (エ)してみると、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本4~本8及び本11~本12発明は、甲第1、6及び7号証に記載された発明ではない。 そして、甲第1~9号証の記載を精査しても、本1発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえないので、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本4~本8及び本11~本12発明は、甲第1~9号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 したがって、甲第1号証、甲第6号証又は甲第7号証を主引用例とする申立人Eの申立理由1及び2に理由はない。 ウ 申立理由3について 申立人Eが主張する申立理由3(明確性要件)は、本件特許の請求項4は、製造方法によって物を特定しようとするものであるから、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(特許異議申立書の第2頁)。 しかしながら、本件特許の請求項4の「フォスフィンオキサイド系光開始剤をその溶解剤に予め溶解させた混合物として含む請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。」との記載にある「予め溶解させた」という発明特定事項は、当該「光開始剤」が「溶解剤」に予め「溶解」させられている「状態」にあることを特定したものであって、製造方法によって物を特定するものとはいえない。 してみると、本件特許の請求項4の記載に不明確な点はないから、申立理由3に理由があるとはいえない。 第6 まとめ 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由、並びに申立人A~Eが申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本2、本4~本8及び本10~本12発明に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本1~本2、本4~本8及び本10~本12発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項3及び9は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項3及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700655

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