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特許異議申立

2021-700653

紫外線硬化型コーティング剤

審判番号
2021-700653
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-050453
登録番号
6811348
請求日
2021年07月08日
審決日
2023年10月03日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社オリジン
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【異議申立人】中川 賢治
  • 【異議申立人】佐藤 怜
  • 【異議申立人】松井 伸一
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.55 -YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D) / P1651.851-YAA(C09D) / P1651.853-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第6811348号発明「紫外線硬化型コーティング剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6811348号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第6811348号の請求項1~9及び11に係る特許を維持する。 特許第6811348号の請求項10についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6811348号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、 令和2年3月23日に出願され、令和2年12月16日に特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行され、 令和3年7月8日に、その請求項1~9及び11に係る発明の特許に対し、中川賢治(以下「申立人A」という。)により、 令和3年7月9日(差出日)に、その請求項1~11に係る発明の特許に対し、佐藤怜(以下「申立人B」という。)により、 令和3年7月12日に、その請求項1~9及び11に係る発明の特許に対し、松井伸一(以下「申立人C」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和3年10月 6日付け 取消理由通知 同年10月20日 上申書(特許権者) 同年10月27日付け 通知書(指定期間を延長) 同年12月27日 意見書・訂正請求書(特許権者) 令和4年 1月18日付け 手続補正指令(方式) 同年 2月18日 手続補正書(特許権者) 同年 2月24日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 3月24日 意見書(申立人B) 同年 6月 7日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 6月22日 上申書(特許権者) 同年 6月28日付け 通知書 同年 8月25日 面接 同年 9月 7日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 9月29日付け 訂正請求があった旨の通知 令和5年 2月14日付け 訂正拒絶理由通知 同年 2月24日 上申書(特許権者) 同年 3月 2日付け 通知書 同年 4月17日 意見書(特許権者) 同年 6月 6日 取消理由通知(決定の予告) 同年 8月 7日 意見書・訂正請求書(特許権者) なお、申立人A及びCは、令和4年2月24日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしておらず、申立人A~Cは、令和4年9月29日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 また、令和3年12月27日付けの訂正請求による訂正、及び令和4年9月7日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年8月7日付けの訂正請求による訂正(以下「第3訂正」ともいう。)の「請求の趣旨」は『特許第6811348号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~9からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「成分(A)/成分(B)が1~50であり」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「成分(A)/成分(B)が2~30であり」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1の「成分(A)の含有量が50~90質量%である」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「成分(A)の含有量が60~85質量%である」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤。」との記載部分を、 訂正後の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤であって、・・・紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)。」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項1の紫外線硬化型コーティング剤について「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」み、かつ「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(B)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有するフッ素を含まない窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーのみを含」むものに特定するように訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項1の紫外線硬化型コーティング剤について「モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するため」のものに特定するように訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項9の「コーティングフィルム」との記載部分を、 訂正後の請求項9の「モスアイ構造を有するコーティングフィルム」との記載に訂正する(請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項10~11も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項10を削除する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項11の「請求項9又は10」との記載部分を、 訂正後の請求項11の「請求項9」との記載に訂正する。 (5)訂正事項9 訂正前の明細書の段落【0007】の「成分(A)は、25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーであれば特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のマイケル付加物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(2-(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、及びN-(2-(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミドなどの単官能モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーなどが挙げられる。」との記載部分を、 訂正後の明細書の段落【0007】の「成分(A)は、25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーであれば特に限定されるものではないが、例えばω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能モノマー、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びグリセリントリ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーなどが挙げられる。」との記載に訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1~2及び4について 訂正事項1は、本件特許明細書の段落0008の「成分(A)/成分(B)は、…好ましくは2~30であり」との記載を根拠に、訂正前の請求項1の「1~50」との記載部分を、訂正後の請求項1の「2~30」との記載に限定して減縮するものであり、 訂正事項2は、同段落0007の「成分(A)の含有量は、…より好ましくは60~85質量%である」との記載を根拠に、訂正前の請求項1の「50~90」との記載部分を、訂正後の請求項1の「60~85」と記載に限定するものであり、 訂正事項4は、訂正前の請求項1の「成分(A)」及び「成分(B)」の大枠の定義を変更することなく、同段落0007の「成分(A)は、25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーで…(メタ)アクリロイル基の数が1分子中に…2~3個有するものがより好ましい」との記載を根拠に、訂正後の請求項1の記載に「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという発明特定事項を追加して減縮するとともに、含フッ素硬化性化合物を含む紫外線硬化型コーティング剤(引用例1として引用した申立人Bの甲第1号証との重なり)を除くために、訂正後の請求項1の記載に「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(B)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有するフッ素を含まない窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーのみを含」むという発明特定事項を追加して減縮するものである。 そして、訂正事項1~5の請求項1の記載を改める訂正において、訂正事項1及び2の数値範囲の基礎となる訂正前の請求項1の「成分(A)」及び「成分(B)」の大枠の定義を変更する訂正は含まれていない。 してみると、訂正事項1~2及び4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1~2及び4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項3について 訂正事項3は、(メタ)アクリルモルホリンを含む紫外線硬化型コーティング剤(刊行物1として引用した申立人Aの甲第1号証、及び刊行物2として引用した申立人Bの甲第2号証との重なり)、及び4官能ウレタン系アクリレートを含む紫外線硬化型コーティング剤(刊行物3として引用した申立人Bの甲第4号証との重なり)を除くために、訂正前の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤」について、訂正後の請求項1の「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」という「除くクレーム」での減縮をするものである。 してみると、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項5及び6について 訂正事項5及び6は、訂正前の請求項10の「モスアイ構造を有する請求項9に記載のコーティングフィルム。」との記載、及び本件特許明細書の段落0012の「モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成する場合」との記載を根拠に、 訂正前の請求項1の紫外線硬化型コーティング剤について「モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するため」のものに限定して減縮し、 訂正前の請求項9の「コーティングフィルム」との記載部分を、訂正後の請求項9の「モスアイ構造を有するコーティングフィルム」との記載に限定して減縮するものである。 してみると、訂正事項5及び6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5及び6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項7及び8について 訂正事項7は、訂正前の請求項10を削除する訂正であり、 訂正事項8は、訂正前の請求項11の「請求項9又は10に記載の」という択一的な引用記載のうち、請求項10を引用するものを削除するものである。 してみると、訂正事項7及び8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項7及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の明細書の段落0007の「25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」を例示する択一的な記載のうち、25℃粘度が10~200mPa・sの範囲にあることが確認できない(メタ)アクリレートモノマーを削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項9は、明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲に記載された用語の定義や発明特定事項の技術的範囲を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項1~11について、その請求項2~11は直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~9による第3訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正を認める。 第3 本件発明 第3訂正により訂正された本件特許の請求項1~11に係る発明(以下「本1発明」~「本11発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 成分(A)~(C)を含み、成分(A)/成分(B)が2~30であり、成分(A)の含有量が60~85質量%である、紫外線硬化型コーティング剤であって、 成分(A):25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー 成分(B):(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー 成分(C):フォスフィンオキサイド系光開始剤 前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含み、 前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(B)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有するフッ素を含まない窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーのみを含む、 モスアイ構造を有するコーティングフィルムを形成するための紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)。 【請求項2】 成分(B)がイミド構造を有する(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項3】 さらにフォスフィンオキサイド系光開始剤用の溶解剤を含む、請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項4】 フォスフィンオキサイド系光開始剤をその溶解剤に予め溶解させた混合物として含む請求項3に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項5】 前記溶解剤が液状の光開始剤である、請求項3又は4に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項6】 さらに、紫外線硬化型コーティング剤を用いて形成されたコーティングフィルムの表面を撥水性にするための添加剤を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項7】 前記添加剤がフッ素系添加剤である、請求項6に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項8】 紫外線硬化型コーティング剤に含まれる溶剤の量が10質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤。 【請求項9】 請求項1~8のいずれか1項に記載の紫外線硬化型コーティング剤を用いて形成されたモスアイ構造を有するコーティングフィルム。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項9に記載のコーティングフィルムを有する物品。」 第4 取消理由通知の概要 1.先に通知した取消理由 令和5年6月6日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由は、次の理由8からなるものである。 〔理由8〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 『本件特許の請求項1の記載において、成分(A)は「成分(A):25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」と定義されているのに対して、本件特許明細書には、成分(A)の例として、成分(A)で規定する粘度の下限10mPa・sに満たない例が多数記載されているので、記載が不明確である。 そして、明細書が訂正明細書(案)のとおりに訂正されておらず、特許請求の範囲が訂正特許請求の範囲(案)のとおりに訂正されていない本件特許の請求項1~11の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。』 よって、本件特許の請求項1~11に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.取消理由通知で指摘した取消理由について 上記〔理由8〕の記載不備として指摘した点は、第3訂正により、訂正後の特許請求の範囲の記載及び明細書の記載が、訂正特許請求の範囲(案)及び訂正明細書(案)のとおりに訂正された、すなわち、前記第2 1(5)の訂正事項9によって、本件訂正前の明細書の段落【0007】から25℃粘度が10~250mPa・sの範囲にあることが確認できない(メタ)アクリレートモノマーが削除されたので、当該〔理由8〕の記載不備について理由はない。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立人Aの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~8号証について 申立人Aが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1、2、8、9、11は、甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号証参照)であり、新規性を欠如している(特許法第29条第1項第3号)というものであり、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明3~5は甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号参照)及び甲第5号証に記載された事項(甲第6号証参照)に基づき、当業者が容易に為し得た発明であり進歩性を欠如しており、本件特許発明6、7は甲第1号証に記載された発明(甲第2号証~甲第4号証参照)と、甲第7号証及び甲第8号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に為し得た発明であり進歩性を欠如している(特許法第29条第2項)というものであって、上記各請求項に係る本件特許は取り消すべきものである(特許法第113条第2号)というものである(申立書の第25頁)。そして、証拠として、次の甲第1~8号証を提示している。 甲第1号証:特開2019-143057号公報 甲第2号証:安全データシート「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学株式会社、2017年9月13日 甲第3号証:安全データシート「ACMO」、KJケミカルズ株式会社、2014年4月7日 甲第4号証:特開2018-180531号公報 甲第5号証:特開2019-6922号公報 甲第6号証:「光重合開始剤総合カタログ」、BASFジャパン株式会社、2012年11月 甲第7号証:Data Sheet「BYK-307」、ビックケミ-・ジャパン株式会社、2012年11月 甲第8号証:Data Sheet「BYK-UV3575」、BYK-Chemie GmbH、2013年1月 イ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 甲第1号証(令和3年10月6日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物例1に同じ。)には、次の「刊1発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第16頁)。 『テトラヒドロフルフリルアクリレート(THF-A)を56質量部、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(DCP-A)を10質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)を24質量部、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(M-140)を10質量部、光重合開始剤としてアシルホスフィン系化合物(ルリシンTPO)を5質量部、レベリング剤としてBYK-307(BYK社製)0.1質量部、重合禁止剤としてポリストップ7300Pを0.05質量部、混合してなる光硬化性組成物。』 そして、本1発明は、(メタ)アクリルモルホリンを含む紫外線硬化型コーティング剤(刊行物1として引用した申立人Aの甲第1号証との重なり)を除くために、訂正後の請求項1の記載を「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」としているから、本1発明と刊1発明は同一ではない。 また、刊1発明は「(メタ)アクリロイルモルホリン」を含むことを必須としているから、甲第1号証(刊行物1)を主引用例とした場合に、本1発明の「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本8、本9及び本11発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本3~本7発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第1~8号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第1号証を主引用例とする申立人Aの申立理由1及び2に理由はない。 (2)申立人Bの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~9号証について 申立人Bが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1-11は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものであり、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1-11は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をくることができたものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものであって(特許異議申立書の第68~69頁)、証拠として、次の甲第1~9号証を提示している。 甲第1号証:特開2016-069649号公報 甲第2号証:特開2013-018842号公報 甲第3号証:特開2011-132322号公報 甲第4号証:国際公開第2011/115162号 甲第5号証:特開2011-187824号公報 甲第6号証:国際公開第2006/099375号 甲第7号証:特開2012-036245号公報 甲第8号証:国際公開第2017/179678号 甲第9号証:特開2005-319459号公報 そして、訂正後の本1~本9及び本11発明は、訂正前の請求項10に記載された「モスアイ構造を有する…コーティングフィルム」の構成が発明特定事項として盛り込まれているところ、特許異議申立書の3(4)ウの「(コ)本件特許発明10についての小括」の項において『本件特許発明10と、甲4発明ないし甲5発明とは、発明特定事項に差異が認められないため、両者は同一である。また、仮に、両者が同一ではなかったとしても、本件特許発明10は、甲1発明、甲4発明ないし甲6発明から当業者が容易に想到し得たものである。』との主張がなされている。 イ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 甲第1号証(令和4年6月7日付けの取消理由通知書の理由6及び7で引用した引用例1に同じ。)には、次の「引1発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第20頁)。 『含フッ素硬化性化合物“ [図:0001405766000001.jpg] ”22重量部、及びフッ素不含硬化性化合物“NKエステル A-400”78重量部を混合し、これら硬化性化合物の合計37部に、光重合開始剤として“イルガキュア 184”2部及び“ルシリン TPO”1部、並びに溶剤として酢酸エチル40部及び酢酸ブチル20部を添加して混合した基材の表面に塗工し、乾燥して溶剤を除去し、得られる塗工層に、鏡面又は凹凸面を有する型を押し当てて硬化させる方式で用いられる紫外線硬化性塗工組成物。』 そして、本1発明は、含フッ素硬化性化合物を含む紫外線硬化型コーティング剤(引用例1として引用した申立人Bの甲第1号証との重なり)を除くために、訂正後の請求項1の記載に「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(B)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有するフッ素を含まない窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーのみを含」むという発明特定事項を追加して減縮されているから、本1発明と引1発明は同一ではない。 また、引1発明は「含フッ素硬化性化合物」を用いることを必須としているから、甲第1号証(引用例1)を主引用例とした場合に、本1発明の「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(B)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有するフッ素を含まない窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマーのみを含」むという構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載の発明並びに甲第2~9号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第1号証を主引用例とする申立人Bの申立理由1及び2に理由はない。 ウ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 甲第2号証(令和3年10月6日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物2に同じ。)には、次の「刊2発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第17頁)。 『4-アクリロイルモルホリン(A-1)10重量部、数平均分子量が550のポリエチレングリコールジアクリレート(B-1)80重量部、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(C-1)10重量部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)1.4部、酸化防止剤(イルガノックス1010)1部及び酸化防止剤(チヌビン400)0.6部を一括で配合した活性エネルギー線硬化型感光性組成物。』 そして、本1発明は、(メタ)アクリルモルホリンを含む紫外線硬化型コーティング剤(刊行物2として引用した申立人Bの甲第2号証との重なり)を除くために、訂正後の請求項1の記載を「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」としているから、本1発明と刊2発明は同一ではない。 また、刊2発明は「(メタ)アクリロイルモルホリン」を含むことを必須としているから、甲第2号証(刊行物2)を主引用例とした場合に、本1発明の「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載の発明並びに甲第1号証及び甲第3~9号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第2号証を主引用例とする申立人Bの申立理由1及び2に理由はない。 エ 甲第4号証を主引用例とした場合の検討 甲第4号証(令和3年10月6日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物3に同じ。)には、次の「刊3発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第18頁)。 『4官能ウレタン系ハードアクリレート(U-4HA)30質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(A-600)70質量部、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCURE 1173)0.5質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(DAROCURE TPO)0.5質量部からなる、活性エネルギー線(紫外線)硬化性樹脂組成物。』 そして、本1発明は、4官能ウレタン系アクリレートを含む紫外線硬化型コーティング剤(刊行物3として引用した申立人Bの甲第4号証との重なり)を除くために、訂正後の請求項1の記載を「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」としているから、本1発明と刊3発明は同一ではない。 また、刊3発明は「4官能ウレタン系アクリレート」を含むことを必須としているから、甲第4号証(刊行物3)を主引用例とした場合に、本1発明の「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」という構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第4号証に記載された発明ではなく、甲第4号証に記載の発明並びに甲第1~3号証及び甲第5~9号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第4号証を主引用例とする申立人Bの申立理由1及び2に理由はない。 オ 甲第3号証、甲第5号証、又は甲第6号証を主引用例とした場合の検討 甲第3号証の段落0053に記載の「実施例21」のものは、重合性化合物(A)及び(B)として、HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)と、M-140(N-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド)を、(A):(B)=50:50の割合で用いるものであるところ、HEAは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有するモノマーであることから、本1発明の「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという発明特定事項を満たさない。 甲第5号証の段落0098に記載の「混合物A」は「N-アクリロイルモルフォリン(ACMO:興人製)」を用いるものであるから、本1発明の「紫外線硬化型コーティング剤(ただし、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むもの、及び4官能ウレタン系アクリレートを含むものを除く)」という発明特定事項を満たさない。 甲第6号証(対応する日本語公報の「特表2008-535949号公報」の段落0110)に記載の「実施例16」のものは、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)67.5質量%と、オリゴマーウレタンジメタクリレート(実施例1)22.5質量%と、シリカナノ粒子分散体(実施例2)10質量%からなる組成物に関するものであるところ、甲第9号証の段落0102の「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(粘度5mPa・s~6mPa・s)」との記載からみて、本1発明の「成分(A):25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」を含むという発明特定事項を満たさない。 そして、甲第1~9号証の記載を精査しても、本1発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第3号証、甲第5号証、又は甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第1~9号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第3号証、甲第5号証、又は甲第6号証を主引用例とする申立人Bの申立理由1及び2に理由はない。 (3)申立人Cの特許異議申立理由について ア 申立理由1及び2並びに甲第1~13号証について 申立人Cが主張する申立理由1(新規性)は、本件特許発明1、2、6~9及び11は、甲第1号証、甲第2号証、又は甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当するというものであり、申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1~9及び11は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は/及び甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当するというものであって(申立書の第58頁)、証拠として、次の甲第1~13号証を提示している。 甲第1号証:特開2016-020489号公報 甲第2号証:国際公開第2010/053078号パンフレット 甲第3号証:国際公開第2007/094446号パンフレット 甲第4号証:平成29年度佐賀県工業技術センター研究報告書「紫外線硬化型水性塗料のUV-LED硬化に対する適用検討」 甲第5号証:巴工業(株)カタログ、インターネット 甲第6号証:新中村化学工業(株)NKエステル製品紹介、インターネット 甲第7号証:共栄社化学(株)ライトアクリレート製品情報、インターネット 甲第8号証:昭和電工マテリアルズ(株)機能性アクリレートファンクリル製品情報、インターネット 甲第9号証:東洋ケミカルズ(株)MIWON社モノマー商品情報、インターネット 甲第10号証:共栄社化学(株)ライトエステル製品情報、インターネット 甲第11号証:大阪有機化学工業(株)エチルカルビトールアクリレート事業・製品情報、インターネット 甲第12号証:大阪有機化学工業(株)ヒドロキシプロピルアクリレート事業・製品情報、インターネット 甲第13号証:大阪有機化学工業(株)4-HBA事業・製品情報、インターネット イ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 甲第1号証(令和3年10月6日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物例7に同じ。)には、次の「刊7発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第18~19頁)。 『そのホモポリマーのガラス転移温度が80℃以上であってウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(A-2)として、イソボルニルメタクリレート[商品名「ライトエステルIB-X」、共栄社化学(株)製、平均官能基数=1]を75重量部と、 そのホモポリマーのガラス転移温度が200℃以上であってウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B-1)として、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート[商品名「ライトエステルDCP-M」、共栄社化学(株)製、平均官能基数=2]を10重量部と、 ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(C-1)として、2-ヒドロキシエチルアクリレート[商品名「ライトエステルHOA」、共栄社化学(株)製]232部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222部を反応させて得られた、ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体を15重量部と 光重合開始剤(D-1)として、1,3,5-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]を5重量部とを含有する、ハードコート用である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。』 そして、上記「イソボルニルメタクリレート」は、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有するモノマー(25℃粘度11mPa・s)であることから(甲第5号証参照)、本1発明の「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという発明特定事項を満たさないから、本1発明と刊7発明は同一ではない。 また、刊7発明は「イソボルニルメタクリレート」を含むことを必須としているから、甲第1号証(刊行物7)を主引用例とした場合に、本1発明の前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本6~本9及び本11発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第1~4号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第1号証を主引用例とする申立人Cの申立理由1及び2に理由はない。 ウ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 甲第2号証(令和3年10月6日付けの取消理由通知書の理由1及び2で引用した刊行物例8に同じ。)には、次の「刊8発明」が記載されているといえる(当該取消理由通知書の第19~20頁)。 『EM-2〔ポリエチレングリコール(分子量300)ジアクリレート、第一工業製薬社製〕27.5重量部、 UA-1〔ポリテトラメチレングリコール(分子量850)1モルとイソホロンジイソシアネート2モル反応後、2-ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応して得られたウレタンアクリレート〕20重量部、 UA-2〔ポリプロピレングリコール(分子量1000)1モルとトリレンジイソシアネート2モルとを反応させた後、2-ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応して得られたウレタンアクリレート〕17.5重量部、 EPA-1〔ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:185g/当量)をエポキシ基1モル当量とアクリル酸1モルを酸価0.5mg・KOH/gまで反応して得られたエポキシアクリレート〕5重量部、 エサキュアONE〔オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ランバルティ社製 光重合開始剤〕5重量部、 ルシリンTPO〔2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製 光重合開始剤〕0.5重量部、 AM-1〔ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業社製〕30重量部、 LA-82〔1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタアクリレート、旭電化社製〕0.5重量部、 PM-2〔エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート、日本化薬社製〕0.1重量部、 L-7002〔シリコンレベリング剤、東レ・ダウコーニング社製〕0.5重量部、 からなる光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。』 そして、上記「ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート」は、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有するモノマー(25℃粘度15~25mPa・s)であることから(甲第8号証参照)、本1発明の「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという発明特定事項を満たさないから、本1発明と刊8発明は同一ではない。 また、刊8発明は「ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート」を含むことを必須としているから、甲第2号証(刊行物8)を主引用例とした場合に、本1発明の前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという構成を導き出し得るとはいえず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本6~本9及び本11発明は、甲第2号証に記載された発明ではなく、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第1~4号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第2号証を主引用例とする申立人Cの申立理由1及び2に理由はない。 エ 甲第3号証を主引用例とした場合の検討 甲第3号証の段落0046に記載の「実施例1」のものは、2-フェノキシエチルアクリレート71.2部、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド1.0部、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート3.7部、及びルシリンTPO5.0部を含むインクジェットインキに関するものであるところ、上記「2-フェノキシエチルアクリレート」は、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有するモノマー(25℃粘度10~15mPa・s)であることから(甲第7号証参照)、本1発明の「前記紫外線硬化型コーティング剤が、成分(A)として、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2~3個有する、成分(B)に該当しない25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマーのみを含」むという発明特定事項を満たさない。 そして、甲第1~4号証の記載を精査しても、本1発明の構成を導き出す動機付けは見当たらず、当該構成を具備することによって得られる本1発明の効果を容易に予測できるともいえない。 したがって、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2、本6~本9及び本11発明は、甲第3号証に記載された発明ではなく、本1発明並びに本1発明を直接又は間接的に引用する本2~本9及び本11発明は、甲第1~4号証に記載の発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、甲第3号証を主引用例とする申立人Cの申立理由1及び2に理由はない。 オ 申立理由3について 申立人Cが主張する申立理由3(記載不明確)は、(ア)請求項1の「成分(A):25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」について、粘度の下限10mPa・s付近に粘度を有する化合物や粘度の上限200mPa・sに粘度を有する化合物の場合、成分(A)に該当するか否かが不明確であり、(イ)本件特許明細書には、成分(A)の例として、粘度の下限10mPa・sに満たない例が多数記載されているから不明確であり、(ウ)本件特許明細書には、成分(A)の例として、成分(B)にも該当するものが記載されているので不明確であり、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(申立書の第55~56行)。 しかしながら、上記(ア)の点について、例えば、25℃粘度のカタログ値が9~11mPa・sの幅を有するモノマーは、請求項1の「成分(A):25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」の粘度条件に重複するものとして把握できるので、上記(ア)の点が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、上記(イ)の点について、第3訂正の訂正事項9により、本件特許明細書の段落0007の不備は解消している。 また、上記(ウ)の点について、第3訂正の訂正事項4により、成分(A)の範囲から成分(B)に該当するものが除かれており、不備は解消している。 したがって、上記(ア)~(ウ)の点について、不明確な点があるとはいえないから、申立理由3に理由はない。 カ 申立理由4について 申立人Cが主張する申立理由4(サポート要件)は、本件特許明細書には粘度の下限10mPa・sを満たさない例が多数記載されており、又、本件特許明細書には成分(A)及び成分(B)のいずれにも該当する化合物が記載されているから、本件特許の請求項1並びにその従属項である請求項2~9及び11は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(申立書の第55~56行)。 しかしながら、第3訂正の訂正事項4及び9により、成分(A)及び成分(B)のいずれにも該当する化合物の記載についての不備、並びに特許明細書の粘度の下限を満たさない例が多数記載されている不備を解消する訂正がなされているので、申立理由4に理由はない。 キ 申立理由5について 申立人Cが主張する申立理由5(実施可能性)は、本件特許明細書の実施例では、成分(A)として2種類の化合物を使用した例しか記載されておらず、成分(B)として3種類の化合物を使用した例しか記載されていないので、上記した化合物以外の化合物を使用した場合、本件特許発明の効果を奏するのか否かが全く不明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に適合しないというものである(申立書の第57~58頁)。 しかしながら、成分(A)として実施例で使用されたもの以外の「25℃粘度が10~200mPa・sである(メタ)アクリレートモノマー」を使用し、成分(B)として実施例で使用されたもの以外の「(メタ)アクリロイル基を1分子中に1~6個有する窒素含有(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこれらのオリゴマー」を使用した場合に、本件特許明細書の実施例で使用された化合物と同程度の効果が得られないといえる合理的な根拠は、特許異議申立人によって示されていないし、そもそも本件特許発明の効果を奏するか否かは、本件特許発明を実施できるか否かに関係がない。 したがって、特許異議申立人の主張及び証拠方法によっては、本件特許明細書の記載に不備があるとはいえないので、申立理由5に理由はない。 第6 まとめ 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由、並びに申立人A~Cが申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本9及び本11発明に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本1~本9及び本11発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項10は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700653

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