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特許異議申立

2023-700658

高いオイル含有量を有するエマルジョン組成物

審判番号
2023-700658
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-565210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7195049
請求日
2023年06月22日
審決日
2024年02月09日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-Z (A61K) / P1651.113-Z (A61K) / P1651.121-Z (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7195049号発明「高いオイル含有量を有するエマルジョン組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7195049号の請求項1ないし14に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7195049号の請求項1~14に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)6月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年6月18日 中国(CN))を国際出願日とする特許出願であって、令和4年12月15日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の請求項1~14(全請求項)について、令和5年6月22日に特許異議申立人 延本 愼郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 その後、当審合議体により令和5年9月22日付けで取消理由が通知された。 (取消理由通知に対して、特許権者からの応答はなかった。) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~14(以下「本件請求項1」等という。)に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、請求項の番号順に「本件発明1」等ということがある。)である。 「 【請求項1】 (a)65重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~30重量%のポリオール; (c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤 を含むエマルジョン組成物であって、重量パーセントが組成物の総重量を基準とし、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、エマルジョン組成物。 【請求項2】 (a)70重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~25重量%のポリオール; (c)0.01~2重量%の両性界面活性剤 を含み、重量パーセントが組成物の総重量を基準とする、請求項1に記載のエマルジョン組成物。 【請求項3】 (a)70重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~25重量%のポリオール; (c)0.01~2重量%の両性界面活性剤 を含み、重量パーセントが組成物の総重量を基準とする、請求項1または2に記載のエマルジョン組成物。 【請求項4】 組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%の水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項5】 両性界面活性剤が、ベタイン、アミンオキシド、アンホグリシネートおよびアンホプロピオネートからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項6】 両性界面活性剤が、 R1R2R3N+(CH2)yC(O)O- (I) または (R1)(R2C(O)NH(CH2)x)(R3)N+(CH2)yC(O)O- (II) (式中、R1は、C1~C5アルキルまたはアルケニル基であり、ヒドロキル化されていてもよく; R2は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基であり; R3は、独立して、C1~C5アルキルまたはアルケニル基、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基から選択され; xは、2~4の整数であり、yは、1~4の整数である) の一般式を有する化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項7】 両性界面活性剤が、 R7-N+(CH3)2-CH2-COO- (IX) (式中、R7は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基である) の一般式を有する化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項8】 R7が、C16~C22アルキルまたはC16~C22アルケニル基である、請求項7に記載のエマルジョン組成物。 【請求項9】 両性界面活性剤が、 R1R2R3N+R4-SO3- (III) または (R1)(R2C(O)NH(CH2)x)(R3)N+R4-SO3- (IV) (式中、R1は、C1~C5アルキルまたはアルケニル基であり、ヒドロキル化されていてもよく; R2は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基であり; R3は、独立して、C1~C5アルキルまたはアルケニル基、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基から選択され; R4は、線状または分岐の、ヒドロキシル化されていてもよいC1~C4アルキル基であり; xは、2~4の整数である) の一般式を有する化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項10】 両性界面活性剤が、 R1R2R3N+-O- (V) または (R1)(R2C(O)NH(CH2)x)(R3)N+-O- (VI) (式中、R1は、C1~C5アルキルまたはアルケニル基であり、ヒドロキル化されていてもよく; R2は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基であり; R3は、独立して、C1~C5アルキルまたはアルケニル基、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基から選択され; xは、2~4の整数である) の一般式を有する化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項11】 両性界面活性剤が、 R2N(R5)(CH2)zC(O)O-Y+ (VII) または R2C(O)N(R5)(CH2)xN(R6)(CH2)zC(O)O-Y+ (VIII) (式中、R2は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基であり; R5は、水素またはC1~C5基であり、C1~C5基は、ヒドロキル化されていてもよく; R6は、ヒドロキシル化されていてもよいC1~C5基、または(CH2)zC(O)O-基であり; zは、1~4の整数であり; xは、2~4の整数であり; Y+は、カチオンである) の一般式を有する化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項12】 ポリオールが、式: R8-C(-R9)(-OH)-[A-C(-OH)(R10)]n-R11 (X) (式中、 R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、C1~C6ヒドロカルビル、C1~C6シクロアルキルおよびC1~C6複素環部分からなる群から選択され;前記ヒドロカルビル部分は、飽和または不飽和、分岐または線状であり;前記ヒドロカルビル、シクロアルキルおよび複素環部分のそれぞれは、1つまたはいくつかの置換基で置換されていてもよく; Aは、共有結合または連結部分であり; nは、1~10の整数である) を有する化合物である、請求項1~11のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項13】 ポリオールが、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、グルコース、マルチトール、サッカロース、トレハロース、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。 【請求項14】 香料をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。」 第3 当審において通知した取消理由の概要 当審において、令和5年9月22日付けで通知した取消理由の理由1~3(以下「取消理由1」~「取消理由3」という。)の概要は、次のとおりである。 [取消理由1](明確性) 本件請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。 よって、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 [取消理由2](新規性) 本件請求項1~4、12及び13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記文献1~3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~4、12及び13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 [取消理由3](進歩性) 本件請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記文献1~7に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 記 文献1:特開昭60-146812号公報(申立人が提示した甲第1号証) 文献2:特開平1-176443号公報(同甲第2号証) 文献3:特開2011-213601号公報(同甲第3号証) 文献4:特表平9-502968号公報(同甲第4号証) 文献5:特開2009-209103号公報(同甲第6号証) 文献6:特開2007-126374号公報(当審合議体が提示する文献) 文献7:特開平4-235730号公報(当審合議体が提示する文献) 第4 当審の判断 1 取消理由1(明確性)について (1)請求項1に記載の「(c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤」について、本件明細書の実施例には、相当する成分として「セチルベタイン(30% 活性)」、「エルカミドプロピルヒドロキシスルテイン(45% 活性)」及び「ステアロアンホ酢酸ナトリウム(20% 活性)」との記載がある(表1又は表3)ところ(下線は当審合議体が付した。以下同様。)、当該記載における「% 活性」と各成分の物質量の関係が明確でないため、各成分の含有量が請求項1に記載の「0.01重量%~2重量%」に該当するのか否かを明確に把握することができず、当該数値範囲の条件を満たす態様が明確でない。 よって、本件発明1は明確でない。 本件発明2~14についても同様である。 (2)請求項1に記載の「(b)5重量%~30重量%のポリオール」について、その用語自体から、「ポリオール」とは2以上のヒドロキシ基を有する化合物であると理解され、本件明細書に「【0044】ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキル基を含むアルコール化合物である。」と記載されている(なお、「ヒドロキル基」は「ヒドロキシル基」の誤記であると認める。当該記載について、以下同じ。)から、アルコール化合物であるといえ、請求項12に「ポリオールが、式:R8-C(-R9)(-OH)-[A-C(-OH)(R10)]n-R11(X)(式中、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、C1~C6ヒドロカルビル、C1~C6シクロアルキルおよびC1~C6複素環部分からなる群から選択され;前記ヒドロカルビル部分は、飽和または不飽和、分岐または線状であり;前記ヒドロカルビル、シクロアルキルおよび複素環部分のそれぞれは、1つまたはいくつかの置換基で置換されていてもよく;Aは、共有結合または連結部分であり;nは、1~10の整数である)を有する化合物である」と記載されているから、「ポリオール」を構成するC1~C6ヒドロカルビル、C1~C6シクロアルキルおよびC1~C6複素環部分が置換基で置換されているものを含むものである。 一方、請求項1に記載の「(c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤」について、例えば、請求項9に「両性界面活性剤が、R1R2R3N+R4-SO3-(III)または(R1)(R2C(O)NH(CH2)x)(R3)N+R4-SO3-(IV)(式中、R1は、C1~C5アルキルまたはアルケニル基であり、ヒドロキル化されていてもよく;R2は、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基であり;R3は、独立して、C1~C5アルキルまたはアルケニル基、C10~C22アルキルまたはC10~C22アルケニル基から選択され;R4は、線状または分岐の、ヒドロキシル化されていてもよいC1~C4アルキル基であり;xは、2~4の整数である)の一般式を有する化合物である」と記載されているところ、その化学構造からみて、「両性界面活性剤」には、少なくとも2個のヒドロキル基を含み、ヒドロカルビル基が置換されているアルコール化合物、すなわち請求項1に記載の「ポリオール」といえる化合物を包含するものである。 そして、「ポリオール」と「両性界面活性剤」の両方に該当する化合物を、「ポリオール」と「両性界面活性剤」のどちらの成分であると認識すればよいのかは不明であるところ、どちらの成分とするかによって、それらを含有量が特定される必須成分として含む本件発明1の「エマルジョン組成物」に該当するか否かの判断が異なることとなる。 したがって、本件発明1は明確でない。 本件発明2~14についても同様である。 (3)請求項14に「香料をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物」と記載されており、この記載からは、「香料」は請求項1に記載の「オイル相」とは別の成分として「エマルジョン組成物」が含有すると解することができる。 一方、本件明細書には、「【0053】 香料 ・・・ 【0054】 他の好適な香料は、Peru(ペルー)バルサム、オリバナム樹脂状物質、エゴノキ、ラブダナム樹脂、ナツメグ、カッシアオイル、ベンゾイン樹脂、コリアンダー、クラリーセージ、ユーカリ、ゼラニウム、ラベンダー、メース抽出物、ネロリ、ナツメグ、スペアミント、ニオイスミレ葉、バレリアンおよびラバンジンなど、多数の源からのエッセンシャルオイル、樹脂状物質および樹脂である。 ・・・ 【0057】 エッセンシャルオイル 本発明に好適なエッセンシャルオイルとしては、ハーブ、花、木、および他の植物に由来するオイルが挙げられる。エッセンシャルオイルの非限定的な例としては、ごま油、マカダミア堅果油、ティーツリーオイル、マツヨイグサ油、スパニッシュセージ油、スパニッシュローズマリー油、コリアンダー油、タイム油、ピメントベリー油、バラ油、アニス油、バルサム油、ベルガモット油、シタン油、シダー油、カモミール油、サージ油、クラリーセージ油、クローブ油、サイプレス油、ユーカリ油、フェンネル油、シーフェンネル油、フランキンセンス油、ゼラニウム油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ジャスミン油、ジュニパー油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、マンダリン油、マジョラム油、ミルラ油、橙花油、オレンジ油、パチョリ油、コショウ油、黒コショウ油、プチグレン油、パイン油、ローズオットー油、ローズマリー油、ビャクダン油、スペアミント油、スパイクナード油、ベチバー油、ウィンターグリーン油、またはイランイランが挙げられる。当業者に知られている他のエッセンシャルオイルも本発明二関連して有用であると考えられる。」と記載されていることから、「香料」には、各種油(オイル)が含まれることは明らかである。 してみると、請求項1において「(a)65重量%~90重量%のオイル相」とオイル相の含有量を特定しているにもかかわらず、本件発明1の「エマルジョン組成物」には、オイル相とは別の成分として他のオイルを含有する場合があるといえるが、エマルジョン組成物中では他のオイルもオイル相を形成するから、請求項1に記載の「65重量%~90重量%」がどのような成分の含有量を特定しているのかが明確でない。 同様に、請求項1に記載の「(a)65重量%~90重量%のオイル相」、「(b)5重量%~30重量%のポリオール」、「(c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤」、「非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない」との記載について、本件明細書には、これら成分又はその具体的な物質と重複する成分又はその具体的な物質が、構造化剤、保湿剤等の添加してもよい成分として記載されており(【0052】~【0077】に記載の「ソルビトール」(「ポリオール」であるといえる。)、「カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド」(「オイル相」を形成するといえる。)、「ポリソルベート-20」(「非イオン界面活性剤」であるといえる。)等)、請求項1に記載の「エマルジョン組成物」が当該重複する成分又はその具体的な物質を含有する場合に、請求項1に記載の各成分の含有量又は「実質的に含まないかまたは完全に含まない」をどのように理解すればよいのかが明確でない。 したがって、本件発明1は明確でない。 本件発明2~14についても同様である。 2 取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性)について (1)引用文献 上記第3に記載した文献1~7である。 (2)引用文献の記載事項 ア 文献1 文献1には、以下の記載がある。 1a)「(1) リン脂質及び多価アルコールから成ることを特徴とする油剤の増粘-ゲル化剤組成物。」(1頁、特許請求の範囲、請求項1) 1b)「本発明はリン脂質及び多価アルコールから成ることを特徴とする油剤の増粘-ゲル化剤組成物に関するものである。 一般に医薬品や化粧品に使用される油剤は、液状のものがほとんどであり、これらを粘度調整することにより、使用形態を変えることは非常に興味あることである。」(1頁右下欄5~11行) 1c)「本発明に用いられるリン脂質は、大豆リン脂質および卵黄リン脂質であり、これらを水添した水添大豆リン脂質および水添卵黄リン脂質も同様に用いることが可能である。」(2頁左上欄4~7行) 1d)「リン脂質が0.05重量%未満あるいは50重量%以上の場合においては、リン脂質-多価アルコールの均一系の中に油剤を均一に加えることができない為に増粘、ゲル化がおこらず、本発明においては不適である。」(2頁左上欄最下行~右上欄4行) 1e)「尚、本発明において、製品の均質安定化、粘度調整等の目的で更に水を添加してもよい。 次に本発明の実施例を例示して、本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の%は重量%である。」(2頁右下欄1~5行) 1f)「実施例1 親水性ゲルクレンジングクリーム 本発明増粘-ゲル化剤組成物 20% [図:0001412292000001.jpg] 流動パラフィン 60% セチルイソオクタノエート 20% まずグリセリンに大豆リン脂質を加え、室温にて均一に混合溶解し増粘-ゲル化剤組成物を調製した。次いでこの増粘-ゲル化剤組成物を約70℃に加熱し、攪拌しながら油剤を滴下すると半透明のゲル状のクレンジングクリームを得た。得られたクレンジングクリームは、ファンデーションの落ちが良く、また水洗性に優れている。」(2頁右下欄6行~最終行) イ 文献2 文献2には、以下の記載がある。 2a)「(1)水添レシチン、ステビア及び多価アルコールをレシチンの融点以上で加熱溶解した後、攪はんしながら油を徐々に添加することにより得られる多価アルコール中油型乳化組成物」(1頁、特許請求の範囲、請求項1) 2b)「本発明は水添レシチン、ステビア及び多価アコールを水添レシチンの融点以上で加熱溶解した後、攪はんしながら油を徐々に添加することにより得られる多価アルコール中油型乳化組成物及びこれに更に水を添加して得られる水中油型乳化組成物であって、化粧品、食品及び医薬品に関するものである。」(2頁左上欄3~9行) 2c)「またさらに、これに水を加えて攪はんすると3μm以下の微細で均一な乳化粒子を有し、経時的に分散安定な水中油型乳化組成物が得られることを見い出した。」(2頁右上欄11~14行) 2d)「本発明の乳化組成物には、目的に応じて非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、香料等を添加することができる。また安定化や粘度調節の目的で水溶性高分子を添加することもできる。」(3頁右上欄下から2行~左下欄5行) 2e)「この時、多価アルコールにあらかじめ水を添加しておくこともできる。」(3頁左下欄12~13行) 2f)「(実施例) 以下、本発明を実施例及び比較例によって、さらに詳細に説明する。本発明は、これにより限定されるものではない。 表1,2(実施例1~8)及び表4,5(比較例1~8)に示す配合組成で、水添レシチン、ステビア、多価アルコールを70℃で加熱溶解した後、攪はんしながらあらかじめ70℃に加熱した油を徐々に添加することで多価アルコール中油型乳化組成物を作製した。各成分の数値は重量%で示す。さらにこの多価アルコール中油型乳化組成物に、その10倍量の水を常温で攪はんしながら加えて、水中油型乳化組成物を作製した。多価アルコール中油型乳化組成物、水中油型乳化組成物の状態は、視覚及び顕微鏡で観察した。その結果を表3(実施例1~8)及び表6(比較例1~8)に示した。 本発明に係る実施例1~8は、何れも均一で透明あるいは半透明の粘ちょう液体またはゲルが得られ、更に水を加えて得られた水中油型乳化組成物は、非常に微細で安定なエマルジョンであった。 しかし比較例1~4で明らかであるように、水添レシチンとステビアの重量比が1:9~9:1以外では全く油を均一に添加することができず、多価アルコール中油型乳化組成物は得られなかった。また比較例5~8で明らかであるように、水添レシチンとステビアの重量比が1:9~9:1であっても、多価アルコール溶液中の水添レシチン及びステビアの総計が1~75重量%以外では全く油を均一に添加することができず、多価アルコール中油型乳化組成物は得られなかった。 [図:0001412292000002.jpg] [図:0001412292000003.jpg] [図:0001412292000004.jpg] ・・・ [図:0001412292000005.jpg] 」(3頁右下欄12行~7頁右上欄) ウ 文献3 文献3には、以下の記載がある。 3a)「【0001】 本発明は、油剤を多量に配合した水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくは、グリセリン及び1,3-ブチレングリコールを特定の質量比で配合することにより、多量の油剤をリン脂質で乳化したものであり、均一な乳化滴が得られ、非常に経時安定性に優れ、肌のエモリエント効果にも優れる水中油型乳化化粧料に関するものである。」 3b)「【0006】 すなわち本発明は、次の成分(a)~(e); (a)リン脂質 (b)油剤 (c)グリセリン (d)1,3-ブチレングリコール (e)水 を配合し、成分(b)の配合量が40~80質量%であり、かつ、成分(c)と成分(d)の配合量の合計が8質量%以上であり、かつ、成分(d)に対する成分(c)の配合質量比(c)/(d)が0.5~8であることを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供するものである。」 3c)「【0017】 ・・・より経時安定性に優れる。 またこの場合、成分(c)の配合量は4%以上、成分(d)の配合量は2%以上であることが好ましい。この範囲であれば長期にわたり経時安定性の良好な水中油型乳化化粧料が得られる。 さらに、成分(b)の配合量と、成分(c)と成分(d)の配合量の合計が質量比で(b)/((c)+(d))=2~10であると、均一な乳化滴が得られ、経時安定性に優れるために好ましい。 【0018】 成分(e)の水は瑞々しい使用感を付与するものであり、その配合量は、10%~50%が好ましく、15%~40%がより好ましい。この範囲であれば、長期にわたり経時安定性の良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。」 3d)「【0022】 本発明の水中油型乳化化粧料には、上記成分の他に通常化粧料や医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、アルコール類、保湿剤、乳化剤、乳化安定剤、増粘剤、防腐剤、粉体、顔料、色素、紫外線吸収剤、pH調整剤、香料、薬効成分、金属封鎖剤等が挙げられる。」 3e)「【実施例】 【0025】 次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。 【0026】 実施例1~16及び比較例1~7:マッサージ料 表1~表3に示す組成のマッサージ料を以下に示す製造方法により製造した。(1)肌のエモリエント効果、(2)製造直後の乳化滴の状態、(3)経時安定性の評価項目について下記の方法により評価し、結果を併せて表1~表3に示した。 【0027】 【表1】 [図:0001412292000006.jpg] 」 エ 文献4 文献4には、以下の記載がある。 4a)「【特許請求の範囲】 1. i)アルキル-N-ベタイン、アルキルアミドエチルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アルキルヒドロキシプロピルスルタイン、アルキル-N-スルホベタイン、アシル-N-ベタインまたはこれらの2種以上の混合物から選択されたベタインと、およびアルキル-N,N-ジメチルアミンオキシド、アルキル-N,N-ジヒドロキシエチルアミンオキシド、アシルアミドt-アミンオキシドまたはこれらの2種以上の混合物から選択されたアミンオキシドとの混合物、 ii)薬学的または皮膚科学的に許容される実質的に非極性の疎水材料、および iii)水溶性で、薬学的または皮膚科学的に許容される少なくとも1種の非イオン、カチオンまたは両性エマルジョン助剤;を含む両性界面活性剤溶液を含んで成る油中水型または水中油型エマルジョン。」 オ 文献5 文献5には、以下の記載がある。 5a)「【請求項1】 (A)植物由来及び/又は植物油脂の半固形油分:0.1~20.0質量% (B)キャンデリラロウ:1.0~30.0質量% (C)常温で液状の油分:1.0~30.0質量% (D)両性界面活性剤および/又は半極性界面活性剤(D1)と、高級脂肪酸(D2)とを混合することにより得られた複合体を含み、 高級脂肪酸(D2)が、2-パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸のうち任意の一種又は二種以上が選ばれて用いられ、両性界面活性剤および/又は半極性界面活性剤(D1)が下記の一般式(1)~(6)で表されるもののうちから任意の一種又は二種以上が選ばれて用いられ、かつ(D1)の含有量は0.3~4.0質量%で、かつ(D1)+(D2)の合計量が0.5~12.0質量%であり、成分(D2)と成分(D1)の質量比が、(D2)/(D1)=0.05~2.0であることを特徴とする乳化型毛髪化粧料。 【化1】 [図:0001412292000007.jpg] (ただし、一般式(1)~(6)でR1は平均炭素原子数9~21のアルキル基またはアルケニル基、R2は平均炭素原子数10~18のアルキル基またはアルケニル基を表す。pは2~4の整数、qは0~3の整数、zは1または2の整数を表す。)」 カ 文献6 文献6には、以下の記載がある。 6a)「【0053】 乳化剤としては、例えば、・・・リン脂質、レシチン、水添レシチン等の両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤が挙げられる。」 キ 文献7 文献7には、以下の記載がある。 7a)「【0002】 【従来の技術】化粧料、医薬、食品などの用途に適する界面活性剤として、動植物由来の両性界面活性剤であるレシチンが知られている。代表的な天然由来のレシチンは大豆レシチンや卵黄レシチンであり、その主たる用途は、パン・マーガリン・アイスクリームの乳化分散剤、油脂に対するめん類のなじみ性向上剤、チョコレートの粘度調節剤、化粧品の乳化分散剤、顔料の表面処理剤、油溶性医薬やビタミン類の乳化分散剤などである。 【0003】レシチンはリン脂質であって、天然由来のものは次の化1で示されるL-α-形のみである。・・・、レシチンの親油基と親水基とのバランスを見ると、1分子中に親油基2個、親水基であるリン酸基1個、親水基である四級窒素1個を含んでいることがわかる。 ・・・ 【0005】レシチンは、これを水素添加して水添レシチンとすることもできる。」 (2)引用発明 ア 文献1発明 文献1には、リン脂質及び多価アルコールから成ることを特徴とする油剤の増粘-ゲル化剤組成物についての記載があり(摘記1a~1f)、「実施例中の%は重量%である」と記載されている(摘示1e)。また、実施例1として親水性ゲルクレンジングクリームの具体的な記載がある(摘記1f)。 したがって、文献1には、実施例1に基づく、以下の発明(以下「文献1発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の組成の親水性ゲルクレンジングクリーム。 増粘-ゲル化剤組成物 20% [図:0001412292000008.jpg] 流動パラフィン 60% セチルイソオクタノエート 20% 「%」は「重量%」である。」 イ 文献2発明 文献2には、多価アルコール中油型乳化組成物についての記載がある(摘記2a~2f)。また、実施例2、6及び8として、水中油型乳化組成物の具体的な記載がある(摘記2f)。 したがって、文献2には、実施例2、6及び8に基づく、以下の発明(以下「文献2発明」という。)が記載されていると認める。 (なお、文献2の表1中に数値の単位の記載はないが、摘記2fに「多価アルコール溶液中の水添レシチン及びステビアの総計が1~75重量%以外」との記載があるから、表1中の数値の単位も重量%であると認める。) 「以下の組成の水中油型乳化組成物2、6及び8。 水中油型乳化組成物2: 水添レシチンB 0.5重量% ステビアA 0.5重量% ソルビトール70%水溶液 9.0重量% グリセリルトリ2-エチルヘキサノエート 90.0重量% 水中油型乳化組成物6: 水添レシチンA 0.7重量% ステビアA 0.3重量% ソルビトール70%水溶液 10.0重量% ジプロピレングリコール 10.0重量% グリセリルトリ2-エチルヘキサノエート 79.0重量% 水中油型乳化組成物8: 水添レシチンB 1.0重量% ステビアA 1.5重量% グリセリン 10.0重量% ジメチルポリシロキサン 30 CS 87.5重量% 上記水添レシチンA及びB並びにステビアAは次のとおりのものである。 [図:0001412292000009.jpg] [図:0001412292000010.jpg] 」 ウ 文献3発明 文献3には、水中油型乳化化粧料についての記載がある(摘記3a~3e)。また、実施例6として、マッサージ料の具体的な記載がある(摘記3e)。 したがって、文献3には、実施例6に基づく、以下の発明(以下「文献3発明」という。)が記載されていると認める。 (なお、文献3の表1には「%」の記載があるが、摘記3bの記載からみて、「質量%」であると認める。) 「以下の組成のマッサージ料である水中油型乳化化粧料。 水素添加大豆レシチン(*1) 1質量% グリセリン 6質量% 1,3-ブチレングリコール 2質量% セトステアリルアルコール 2質量% 流動パラフィン 40質量% トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 40質量% メチルパラベン 0.01質量% エタノール 3質量% 精製水 残量 (*1)レシノールS-10 (ホスファチジルコリン含有量30% 日光ケミカルズ社製)」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)文献1発明について 文献1発明の「流動パラフィン」及び「セチルイソオクタノエート」は、本件発明1の「(a)」「オイル相」を形成するものに相当し、文献1発明におけるこれらの成分の含有量「80重量%」(60重量%+20重量%)は、本件発明1のオイル相の含有量「65重量%~90重量%」の範囲内である。 文献1発明の「グリセリン」は、本件発明1の「(b)」「ポリオール」に相当し、文献1発明におけるグリセリンの含有量「19重量%」(増粘-ゲル化剤組成物20重量%のうちの95重量%)は、本件発明1のポリオールの含有量「5重量%~30重量%」の範囲内である。 文献1発明の「大豆リン脂質」は、文献6及び7に記載のとおり(摘記6a及び7a)、周知の両性界面活性剤であるから、本件発明1の「(c)」「両性界面活性剤」に相当し、文献1発明における大豆リン脂質の含有量「1重量%」(増粘-ゲル化剤組成物20重量%のうちの重量5%)は、本件発明1の両性界面活性剤の含有量「0.01重量%~2重量%」の範囲内である。 文献1発明は、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない。 してみると、本件発明1と文献1発明とは、 「 (a)65重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~30重量%のポリオール; (c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤 を含む組成物であって、重量パーセントが組成物の総重量を基準とし、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、組成物。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1> 「組成物」について、本件発明1が「エマルジョン」と特定しているのに対し、文献1発明は「親水性ゲルクレンジングクリーム」であって、エマルジョン組成物とはされていない点。 上記相違点1について検討するに、文献1発明が含有するグリセリンは、水性の物質であって流動パラフィンに溶解しないから、文献1発明の「親水性ゲルクレンジングクリーム」はエマルジョンを形成しているといえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 よって、本件発明1は文献1に記載された発明である。 また、各成分の含有量を若干変更する程度のことは当業者が容易になし得た事項であり、本件発明1は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえないから、本件発明1は文献1、6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)文献2発明について 文献2発明の「水中油型乳化組成物」は、本件発明1の「エマルジョン組成物」に相当する。 文献2発明の「グリセリルトリ2-エチルヘキサノエート」(水中油型乳化組成物2及び6)、「ジメチルポリシロキサン 30 CS」(水中油型乳化組成物8)は、本件発明1の「(a)」「オイル相」を形成するものに相当し、文献2発明におけるこれらの成分の含有量「90.0重量%」(水中油型乳化組成物2)、「79.0重量%」(水中油型乳化組成物6)及び「87.5重量%」(水中油型乳化組成物8)は、本件発明1のオイル相の含有量「65重量%~90重量%」の範囲内である。 文献2発明の「ステビアA」(水中油型乳化組成物2、6及び8)に含まれる「ステビオサイド」(特開2021-518369号、図6a参照。)及び「レバウディオサイドA」(特開2021-518369号、図5a参照。)、「ソルビトール」(水中油型乳化組成物2及び6)、「ジプロピレングリコール」(水中油型乳化組成物6)並びに「グリセリン」(水中油型乳化組成物8)は、本件発明1の「(b)」「ポリオール」に相当する。そして、文献2発明の水中油型乳化組成物2における当該成分の含有量「約6.6重量%」(ステビオサイド及びレバウディオサイドAが約0.29重量%(ステビアA0.5重量%中にステビオサイド23.4重量%、レバウディオサイドA35.2重量%存在することに基づく。)であり、ソルビトールが6.3重量%(ソルビトール70%水溶液が9.0重量%であることに基づく。)である。)、文献2発明の水中油型乳化組成物6における当該成分の含有量「約17.2重量%」(ステビオサイド及びレバウディオサイドAが約0.18重量%(ステビアA0.3重量%中にステビオサイド23.4重量%、レバウディオサイドA35.2重量%存在することに基づく。)であり、ソルビトールが7.0重量%(ソルビトール70%水溶液が10.0重量%であることに基づく。)であり、ジプロピレングリコールが10.0重量%である。)、文献2発明の水中油型乳化組成物8における当該成分の含有量「約10.9重量%」(ステビオサイド及びレバウディオサイドAが約0.88重量%(ステビアA1.5重量%中にステビオサイド23.4重量%、レバウディオサイドA35.2重量%存在することに基づく。)であり、グリセリンが10.0重量%である。)は、本件発明1のポリオールの含有量「5重量%~30重量%」の範囲内である。 なお、仮に、ステビオサイド及びレバウディオサイドAが本件発明1の「(b)」「ポリオール」に相当しないとされる場合であっても、水中油型乳化組成物2、6及び8は、「ソルビトール」(水中油型乳化組成物2及び6)、「ジプロピレングリコール」(水中油型乳化組成物6)並びに「グリセリン」(水中油型乳化組成物8)を所定量含有することで、本件発明1の「(b)」「ポリオール」を「5重量%~30重量%」含むといえる。 文献2発明の「水添レシチンB」及び「水添レシチンA」は、文献6及び7に記載のとおり(摘記6a及び7a)、周知の両性界面活性剤であるから、本件発明1の「(c)」「両性界面活性剤」に相当し、文献2発明の水中油型乳化組成物2における水添レシチンBの含有量「0.5重量%」、文献2発明の水中油型乳化組成物6における水添レシチンAの含有量「0.7重量%」及び文献2発明の水中油型乳化組成物8における水添レシチンBの含有量「1.0重量%」は、本件発明1の両性界面活性剤の含有量「0.01重量%~2重量%」の範囲内である。 文献2発明は、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない。 してみると、本件発明1と文献2発明とは、 「 (a)65重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~30重量%のポリオール; (c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤 を含むエマルジョン組成物であって、重量パーセントが組成物の総重量を基準とし、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、エマルジョン組成物。」である点で一致し、相違点はない。 よって、本件発明1は文献2に記載された発明である。 また、各成分の含有量を若干変更する程度のことは当業者が容易になし得た事項であり、本件発明1は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえないから、本件発明1は文献2、6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)文献3発明について 文献3発明の「水中油型乳化化粧料」は、本件発明1の「エマルジョン組成物」に相当する。 文献3発明の「流動パラフィン」及び「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」は、本件発明1の「(a)」「オイル相」を形成するものに相当し、文献3発明における流動パラフィンの含有量「40質量%」及びトリ2-エチルヘキサン酸グリセリルの含有量「40質量%」の合計含有量「80質量%」は、本件発明1のオイル相の含有量「65重量%~90重量%」の範囲内である。 文献3発明の「グリセリン」及び「1,3-ブチレングリコール」は、本件発明1の「(b)」「ポリオール」に相当し、文献3発明におけるグリセリンの含有量「6質量%」及び1,3-ブチレングリコールの含有量「2質量%」の合計含有量「8質量%」は、本件発明1の「5重量%~30重量%」の範囲内である。 文献3発明の「水素添加大豆レシチン」は、文献6及び7に記載のとおり(摘記6a及び7a)、周知の両性界面活性剤であるから、本件発明1の「(c)」「両性界面活性剤」に相当し、文献3発明における水素添加大豆レシチンの含有量「1質量%」は、本件発明1の両性界面活性剤の含有量「0.01重量%~2重量%」の範囲内である。 文献3発明は、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない。 してみると、本件発明1と文献3発明とは、 「 (a)65重量%~90重量%のオイル相; (b)5重量%~30重量%のポリオール; (c)0.01重量%~2重量%の両性界面活性剤 を含むエマルジョン組成物であって、重量パーセントが組成物の総重量を基準とし、非イオン界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、エマルジョン組成物。」である点で一致し、相違点はない。 よって、本件発明1は文献3に記載された発明である。 また、各成分の含有量を若干変更する程度のことは当業者が容易になし得た事項であり、本件発明1は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえないから、本件発明1は文献3、6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、成分(a)の含有量の下限が70重量%であり、成分(b)の含有量の上限が25重量%である点で本件発明1と異なるが、文献1~3発明における成分(a)及び成分(b)に相当する成分の含有量は、本件発明2及び3で特定される含有量の範囲内である。 したがって、本件発明2及び3は、文献1~3に記載された発明であり、また、文献1~3、6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明4について 本件発明4は、「組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%の水を含む」ことを特定するものであるところ、文献2発明は、「ソルビトール70%水溶液」の水として、2.7重量%(水中油型乳化組成物2:9.0×0.7)及び3.0重量%(水中油型乳化組成物6:10.0×0.7)含有し、当該含有量は、本件発明4で特定される水の含有量の範囲内である。 したがって、本件発明4は文献2に記載された発明である。 また、文献1には「製品の均質安定化、粘度調整等の目的で更に水を添加してもよい」ことが(摘記1e)、文献2には「多価アルコールにあらかじめ水を添加しておくこともできる」ことが(摘記2e)、それぞれ記載されているから、文献1及び2に記載された発明において、本件発明4で特定される程度の含有量で水を配合することは当業者が容易になし得た事項である。 そして、本件発明4は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。 したがって、本件発明4は、文献1、2、6及び7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明5~11について 本件発明5~11は、両性界面活性剤についてベタイン等の具体的な物質に特定するものである。 文献2には、両性界面活性剤を添加することができること(摘記2d)、文献3には、乳化剤を適宜配合することができること(摘記3d)が記載されているところ、文献4、文献5に記載のとおり(摘記4a及び5a)、本件発明5~11で特定されるベタイン、アミンオキシド、アンホグリシネート又はアンホプロピオネートは両性界面活性剤として周知であるから、文献2及び3に記載された発明において、それらの両性界面活性剤を、0.01~2重量%程度の量で添加することは当業者が容易になし得た事項である。 (なお、文献5には、アミンオキサイドについて、半極性界面活性剤であることが記載されているが、文献4に記載のとおり、両性界面活性剤としても周知である。) そして、本件発明5~11は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。 したがって、本件発明5~11は、文献2~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明12及び13について 本件発明12は、ポリオールが所定の化学構造を有する化合物であることを、本件発明13は、ポリオールが所定の化合物であることを、それぞれ特定するものであるところ、ポリオールに相当する、文献1発明の「グリセリン」、文献2発明の少なくとも「ソルビトール」、「ジプロピレングリコール」及び「グリセリン」並びに文献3発明の「グリセリン」及び「1,3-ブチレングリコール」は、本件発明12で特定される化学構造を有する化合物であり、本件発明13で特定される化合物である。 したがって、本件発明12及び13は、文献1~3に記載された発明であり、また、文献1~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 本件発明14について 本件発明14は、「香料をさらに含む」ことを特定するものであるところ、文献2には、香料を添加することができること(摘記2d)、文献3には、香料を適宜配合することができること(摘記3d)が記載されており、化粧料に香料を配合することは周知の技術的事項であるから、文献1~3発明において、香料をさらに含むものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 そして、本件発明14は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。 したがって、本件発明14は、文献1~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本件請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件請求項1~4、12及び13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である文献1~3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件請求項1~4、12及び13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である文献1~7に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700658

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