2023-700643
圧延設備及び鋼板の圧延方法
- 審判番号
- 2023-700643
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-192381外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7192378
- 請求日
- 2023年06月19日
- 審決日
- 2024年02月29日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製鉄株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ブライタス
- 【異議申立人】前田 洋志
- 分類
- P1651.113-YAA(B21B) / P1651.121-YAA(B21B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 20項目
第1 手続の経緯
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特許第7192378号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年10月11日に出願され、令和4年12月12日にその特許権の設定登録がされ、令和4年12月20日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、令和5年6月19日に特許異議申立人 前田 洋志(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年10月12日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和5年12月15日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その後、令和5年12月27日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
令和5年12月15日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は訂正事項について特許権者が付したものである。)
(1)一群の請求項〔1~7〕に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(2)一群の請求項〔8、9〕に係る訂正
ア 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
イ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記加熱装置により前記鋼板を加熱する温度は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲に設定され、前記テンションレベラーにより前記鋼板に与える伸び率は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記加熱温度範囲における前記鋼板の伸び率と前記酸洗装置により前記鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定される、請求項8に記載の鋼板の圧延方法。」と記載されているのを、本件訂正により、独立請求項形式に改め、
「第1の張力付与装置、曲げ伸ばし装置、及び、第2の張力付与装置を有するテンションレベラーと、加熱装置とを備え、圧延設備の上流側から順に、前記第1の張力付与装置、前記加熱装置、前記曲げ伸ばし装置、前記第2の張力付与装置が配置されている前処理装置により、熱間圧延された鋼板に対して張力を付与した状態で引張曲げ加工を施し、前記前処理装置により前記引張曲げ加工が施された前記鋼板を酸洗装置により酸洗し、前記酸洗装置により酸洗された前記鋼板を冷間圧延機により冷間圧延し、前記加熱装置により前記鋼板を加熱する温度は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲に設定され、前記テンションレベラーにより前記鋼板に与える伸び率は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記加熱温度範囲における前記鋼板の伸び率と前記酸洗装置により前記鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定される、鋼板の圧延方法。」と訂正する。
(3)明細書に係る訂正
ア 訂正事項10
明細書の【発明の名称】、及び段落【0001】、【0009】に「圧延設備及び鋼板の圧延方法」と記載されているのを、「鋼板の圧延方法」に訂正する。
イ 訂正事項11
明細書の段落【0010】~【0019】に、
「【0010】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、熱間圧延された鋼板を加熱する加熱装置と、前記加熱装置により加熱された前記鋼板に対して曲げ伸ばしを行うテンションレベラーと、前記テンションレベラーにより曲げ伸ばしされた前記鋼板を酸洗する酸洗装置と、前記酸洗装置により酸洗された前記鋼板を冷間圧延する冷間圧延機と、を有する圧延設備が提供される。【0011】前記加熱装置と、前記テンションレベラーと、前記酸洗装置と、は前記鋼板を連続して処理してもよい。続きを表示(全22行)【0012】前記加熱装置と、前記テンションレベラーと、前記酸洗装置と、前記冷間圧延機と、は前記鋼板を連続して処理してもよい。【0013】前記冷間圧延機の圧延方向下流には、前記鋼板を連続焼鈍する連続焼鈍装置を有し、前記加熱装置と、前記テンションレベラーと、前記酸洗装置と、前記冷間圧延機と、前記連続焼鈍装置と、は前記鋼板を連続して処理してもよい。【0014】前記鋼板は、普通鋼、ハイテン鋼、電磁鋼板、またはステンレス鋼であってもよい。【0015】前記加熱装置の上流には、前記鋼板に対して熱処理を行う熱処理装置を有してもよい。【0016】前記加熱装置の代わりに、前記鋼板に対して熱処理を行う熱処理装置を有し、前記熱処理装置と、前記テンションレベラーとは、前記鋼板を連続して処理してもよい。【0017】前記加熱装置の代わりに、前記鋼板に対して熱処理を行う熱処理装置を有し、前記熱処理装置と、前記テンションレベラーと、前記酸洗装置とは、前記鋼板を連続して処理してもよい。【0018】前記加熱装置の代わりに、前記鋼板に対して熱処理を行う熱処理装置を有し、前記熱処理装置と、前記テンションレベラーと、前記酸洗装置と、前記冷間圧延機とは、前記鋼板を連続して処理してもよい。【0019】前記鋼板は、無方向性電磁鋼板または方向性電磁鋼板であってもよい。」
と記載されているのを、削除する。
(4)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~7について、訂正前の請求項2~7は、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正後の請求項〔1~7〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項8~9について、訂正前の請求項9は、訂正前の請求項8を直接的に引用しているものであって、訂正事項8によって訂正される請求項8に連動して訂正されるものであるから、本件訂正後の請求項〔8~9〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項〔1~7〕に係る訂正(訂正事項1~7)
ア 訂正の目的について
訂正事項1~7は、本件訂正前の請求項1~7の記載を削除するものである。したがって、訂正事項1~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1~7は、本件訂正前の請求項1~7の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項1~7は、本件訂正前の請求項1~7の記載を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(2)一群の請求項〔8、9〕に係る訂正(訂正事項8~9)
・訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項8の記載を削除するものである。したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項8は、本件訂正前の請求項8を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項8は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
・訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正事項8により本件訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、本件訂正前の請求項8を引用する請求項9について、請求項8との引用関係を解消して、独立請求項形式とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものと認められる。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項9は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項9は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
(3)明細書に係る訂正
・訂正事項10、11について
ア 訂正の目的について
訂正事項10、11は、一群の請求項〔1~7〕、〔8、9〕に関係する訂正であるところ、上記訂正事項1~9に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項10、11は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項10、11は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
ウ 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項10、11は、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であり、一群の請求項〔1~7〕、〔8、9〕に関係する訂正である。
したがって、訂正事項10、11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
3 独立特許要件
本件訂正前の全ての請求項(請求項1~9)について特許異議申立がされているので、訂正事項1~11について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項9については、本件訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされている。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項8と本件訂正後の請求項9を別の訂正単位とし、本件訂正後の請求項〔1~7〕、8、9について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、請求項9に係る発明を「本件発明9」という。なお、請求項1~8は本件訂正により削除されている。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)【請求項2】(削除)続きを表示(全22行)【請求項3】(削除)【請求項4】(削除)【請求項5】(削除)【請求項6】(削除)【請求項7】(削除)【請求項8】(削除)【請求項9】第1の張力付与装置、曲げ伸ばし装置、及び、第2の張力付与装置を有するテンションレベラーと、加熱装置とを備え、圧延設備の上流側から順に、前記第1の張力付与装置、前記加熱装置、前記曲げ伸ばし装置、前記第2の張力付与装置が配置されている前処理装置により、熱間圧延された鋼板に対して張力を付与した状態で引張曲げ加工を施し、前記前処理装置により前記引張曲げ加工が施された前記鋼板を酸洗装置により酸洗し、前記酸洗装置により酸洗された前記鋼板を冷間圧延機により冷間圧延し、前記加熱装置により前記鋼板を加熱する温度は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲に設定され、前記テンションレベラーにより前記鋼板に与える伸び率は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記加熱温度範囲における前記鋼板の伸び率と前記酸洗装置により前記鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定される、鋼板の圧延方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和5年10月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性欠如):本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物(下記甲第1号証、甲第2号証、甲第9号証及び甲第10号証)に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠
3 取消理由1(進歩性欠如)についての判断
本件訂正により、請求項1~8は削除されたから、上記取消理由1の対象は存在しない。
第5 取消理由通知において採用しなかった申立人の申立理由の概要
1 申立理由の概要
本件訂正前の請求項9(本件発明9)に係る特許に対して、取消理由通知において採用しなかった申立人の申立理由の要旨は、以下のとおりである。
なお、当審は、令和5年12月27日付けで、申立人に対して、本件訂正に係る訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
申立理由1(進歩性欠如):本件訂正前の請求項9に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証(下記2を参照。)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、本件訂正前の請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。(特許異議申立書28~30ページ等)
2 証拠
申立人は、申立理由に関連して、甲第1号証~甲第10号証を提出した。
甲第1号証(上記第4の2を参照。)
甲第2号証(上記第4の2を参照。)
甲第9号証(上記第4の2を参照。)
甲第10号証(上記第4の2を参照。)
(以下「甲1」などという。)
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由1について
1 本件発明9についての対比、判断
(1)甲1
ア 甲1の記載(下線部は、当審で付した。以下同様。)
(ア)「熱間圧延された鋼帯の表面には黒皮スケールと呼称される薄い酸化皮膜(以下、スケールと言う)が付着している。この鋼帯を、冷間圧延する場合や、そのままで加工して製品にする場合には、次工程に移行する前の事前処理として脱スケールが行われる。この脱スケールには、塩酸や硫酸の化学反応によりスケールを溶解、除去する連続酸洗処理のみが採用されていた時代があったが、近年前記連続ラインのラインスピードの上昇、他ラインとの連続化、酸の消費量の節減、塩酸回収装置の経費節減、鋼帯の歪矯正能力のレベルアップ等の諸要請に対応して、前記酸洗処理の前に、機械的な脱スケール処理を付加するようになってきている。前記機械的な脱スケール処理には、湿式ショットブラスト、圧延機、メカニカルデスケーラ、テンションレベラ等の装置が使用されている。」(1ページ左下欄下から2行~右下欄14行)
(イ)「第1図に示す従来の鋼帯の表面に生成付着したスケールを機械的に脱スケール処理した後、酸洗処理を施す銅帯の脱スケールラインの系統図において、コイル状の鋼帯は、アンコイラ1により捲戻され、ピンチロールレベラ2により平にされ、ウエルダー3により先行の鋼帯と接続されて連続した熱延鋼帯Aとなり、この鋼帯Aは入側ルーパー4を通ってメカニカルデスケーラ5に送込まれ、前記鋼帯の表面に生成付着しているスケールの大部分は機械的に除去され、ブラッシロール6を経て酸洗槽7において残りのスケールは化学的に溶解除去され、水洗スプレー8、出側ルーパー9、サイドトリマー10、オイラー11を順次通過して、テンションリール12によりコイル状に巻取られる。」(2ページ右上欄13行~左下欄6行)
(ウ)「第2図は、本発明の鋼帯の脱スケールラインの系統図であり、第3図は第2図のメカニカルデスケーラ5の拡大図である。第2図は第1図の系統図に、入側ルーパー4とメカニカルデスケーラ5との間に加熱装置13が設けられており、メカニカルデスケーラ5の脱スケール処理工程の前期、中間期、後期の何れか少なくとも1つの時期において、スケールを吸引、除去する真空吸引設備16が付加されており、又、ブラッシロール6の代りにスケールを吹き飛ばすブローオフ設備14が設けられている。加熱装置13は、脱スケールされる鋼帯Aをラインの途中で加熱して鋼帯Aに付着している水分を蒸発除去することにより、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にするものである。真空吸引設備16は、メカニカルデスケーラ5のロールのロール群15A、15B(第3図参照)によってスケールに亀裂が入り剥離したものをヘッダー16A、16B、16Cによって吸引、除去する。」(3ページ左上欄2行~下から1行)
(エ)「第3図の本発明の鋼帯の脱スケールライン中に設けられた真空吸引設備16を装着しているロール群15A、15Bよりなるメカニカルデスケーラ5において、前記デスケーラ5の前、中、後に、真空吸引ヘッダー15A、15B、15Cが設けられている。」(当審注:「真空吸引ヘッダー15A、15B、15C」は「真空吸引ヘッダー16A、16B、16C」の誤記と認める。)(3ページ右上欄5~9行)
(オ)「第4図において、鋼帯Aが加熱装置13内を矢印の方向に進行すると、ジェットバーナT1~T7;B1~B7より噴出する1500~2000℃の高温燃焼ガスが鋼帯Aの上下全面に吹き付けられ、鋼帯Aは急速に加熱され、この時の鋼帯Aは、第5図に示す昇温割合で表面温度が上昇し、炉入口より2~3m附近で表面に付着した水分は蒸発し尽くし、その後は炉の出口に近づくに従って昇温し、出口附近において500℃以上に加熱された。」(3ページ右下欄6~14行)
(カ)第2図
[図:0001411311000001.jpg]
(なお、第2図において、後述する「ロール群A」及び「ロール群B」の配置を示す丸囲みについては、当審で付した。)
(キ)第3図
[図:0001411311000002.jpg]
(ク)第5図
[図:0001411311000003.jpg]
イ 甲1の記載から理解できる事項
(ア)上記ア(ア)~(エ)の記載及び第2、3図から、メカニカルデスケーラ5は、ロール群15A、15B(第3図参照)を用いて、熱間圧延された鋼帯Aに対して引張曲げ加工を施して、スケールに亀裂を入れる曲げ伸ばし装置であることが理解できる。
(イ)第2図には、メカニカルデスケーラ5及び加熱装置13を挟んで、入側ルーパー4と加熱装置13との間のロール群(以下「ロール群A」という。)と、ブローオフ設備14と酸洗槽7との間のロール群(以下「ロール群B」という。)とが、図示されている。
さらに、第2図には、鋼帯Aの脱スケールラインにおいて、上流側から順に、ロール群A、加熱装置13、メカニカルデスケーラ5、ロール群Bが配置されていることが図示されている。
(ウ)上記ア(ア)の「この鋼帯を、冷間圧延する場合や、そのままで加工して製品にする場合には、次工程に移行する前の事前処理として脱スケールが行われる。この脱スケールには、塩酸や硫酸の化学反応によりスケールを溶解、除去する連続酸洗処理のみが採用されていた時代があったが、・・・前記酸洗処理の前に、機械的な脱スケール処理を付加するようになってきている。」との記載から、甲1には、鋼帯Aの脱スケールラインが、酸洗槽7により酸洗された鋼帯Aを冷間圧延する冷間圧延機を備えることが記載されているといえる。
(エ)上記ア(オ)の「第4図において、鋼帯Aが加熱装置13内を矢印の方向に進行すると、ジェットバーナT1~T7;B1~B7より噴出する1500~2000℃の高温燃焼ガスが鋼帯Aの上下全面に吹き付けられ、鋼帯Aは急速に加熱され、この時の鋼帯Aは、第5図に示す昇温割合で表面温度が上昇し、炉入口より2~3m附近で表面に付着した水分は蒸発し尽くし、その後は炉の出口に近づくに従って昇温し、出口附近において500℃以上に加熱された。」との記載及び上記ア(ウ)の「加熱装置13は、脱スケールされる鋼帯Aをラインの途中で加熱して鋼帯Aに付着している水分を蒸発除去することにより、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にするものである。」との記載から、加熱装置13により鋼帯Aを加熱する温度は、鋼帯Aの表面に付着した水分を蒸発除去し、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にする加熱温度範囲に設定されていることが理解できる。
ウ 甲1発明
上記ア~イから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。
<甲1発明>
「 ロール群A、メカニカルデスケーラ5、及び、ロール群Bを有する装置と、加熱装置13とを備え、鋼帯Aの脱スケールラインの上流側から順に、前記ロール群A、前記加熱装置13、前記メカニカルデスケーラ5、前記ロール群Bが配置されている機械的な脱スケール処理を行う装置により、熱間圧延された鋼帯Aに対して引張曲げ加工を施し、前記機械的な脱スケール処理を行う装置により前記引張曲げ加工が施された前記鋼帯Aを酸洗槽7により酸洗し、前記酸洗槽7により酸洗された前記鋼帯Aを冷間圧延機により冷間圧延し、前記加熱装置により前記鋼帯Aを加熱する温度は、鋼帯Aの表面に付着した水分を蒸発除去し、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にする加熱温度範囲に設定される、鋼帯Aの脱スケール方法。」
(2)甲2
ア 甲2の記載
(ア)「本発明は、熱延コイルのスケールをスケール除去装置によって除去した後に、酸洗を行うようにした熱延コイルのスケール除去装置の制御方法において、」(2ページ右上欄6~9行)
(イ)「第1図は、本発明の一実施例である制御方法が実施されるスケール除去装置1の構成ブロック図である。熱間圧延工程により形成された熱延コイル2はブライドルロール3aによって熱延コイル2に加えられる張力が調整された後、熱延コイル2表面に生成しているスケールに裂け目を形成させる伸び率変化手段であるスケールブレーカ4を通過する。・・・スケールブレーカ4、ブライドルロール3a、3b、3cにより熱延コイル2に張力を付加し、熱延コイル2の進行方向に2つのロール41、42の間を設け、熱延コイル2にロール41、42によって進行方向と直角方向に圧力を加えることにより素材に伸びを与えスケールに裂け目を形成させる装置である。」(2ページ右下欄8行~3ページ左上欄8行)
(ウ)「第5図は、熱間圧延時の温度によって決められるスケールブレーカ4の伸び率εを説明するためのグラフである。熱間圧延を行うときの巻き取り温度が上昇するにつれ、スケールは厚くなるので、熱間圧延時の巻き取り温度によって熱延コイル2の伸び率εを大きくする必要がある。したがって、熱延コイル2の熱間圧延時の巻き取り温度が決定されると、スケールブレーカ4は第5図中のラインl3に示す伸び率を得るため、伸び率駆動装置5によって制御され、熱延コイル2のスケールに裂け目を与える。上述のように、熱間圧延時の巻き取り温度によって熱延コイル2に与える伸び率εを変えることにより、研削装置6における研削を容易に行うことができる。以上のように、本実施例に従えば、スケール除去装置の運転条件を制御することにより、スケール除去装置と酸洗設備とによるスケール除去を常時効率的に稼動させることができる。」(4ページ左下欄3~20行)
(エ)第1図
[図:0001411311000004.jpg]
イ 甲2に記載の技術的事項
上記アから、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2に記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「スケール除去装置1において、上流側から順に、ブライドルロール3a、スケールブレーカ4、ブライドルロール3bが配置され、ブライドルロール3a、スケールブレーカ4、ブライドルロール3bによって熱延コイル2に張力を付加してスケールに裂け目を形成すること。」
(3)甲3
ア 甲3の記載
(ア)「たとえば、ステンレスストリップの酸洗いのさいに、鋼帯の尾端縁に他の鋼帯の先端縁を次々に溶接して(中継ぎして)スケールブレーカーに連続的に通板する処理が行なわれるが、このスケールブレーカーにおけるベンデングロールの通板時の繰返し曲げによるスケール除去のさいに、破断を生じて、デスケール操業に著しい障害を与えることがある。」(1ページ右下欄1~8行)
(イ)「ところが、中継ぎ溶接部の遷移温度以上の温度に保持した状態で鋼帯をスケールブレーカーに通板するという簡易な処法で鋼帯の破断(溶接部および母材ともの破断)を実質上完全に防止し得ることが今回判明し、その生産性を著しく向上せしめることができた。」(2ページ左上欄15~20行)
(ウ)「以上の試験結果をふまえて、実機スケールブレーカーにおいてこのSUS430鋼ホットコイルの温度を変えながら通板した。そのさい、SUS430鋼のベル焼鈍炉で焼鈍したホットコイル2本を、尾端縁と先端縁で前記試験と全く同じ条件で溶接して中継ぎし、800℃×30秒の後熱処理を行なってスケールブレーカーに通板した。この通板のさい、バーナー加熱機によりこの中継ぎ鋼帯を加熱し、スケールブレーカーでの曲げ作用中の鋼帯温度を接触式表面温度計によって計測した。この実機による実施例における操業成績(破断率)を第2表に示した。第2表[図:0001411311000005.jpg]第2表の結果より、溶接部の遷移温度以上に加熱して処理すると、従来の常温の場合に比して破断率は極めて少なくなり、簡単な処法であるにもかかわらずその結果は極めて高いことがわかる。」(2ページ右下欄8行~3ページ左上欄9行)
イ 甲3に記載の技術的事項
上記アから、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3に記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「鋼帯の尾端縁に他の鋼帯の先端縁を溶接した中継ぎ溶接部を、遷移温度以上の温度に保持した状態でスケールブレーカーに通板することで、鋼帯の破断が防止できること。」
(4)対比
甲1発明を、本件発明9と対比する。
甲1発明の「メカニカルデスケーラ5」は、その機能に照らせば、本件発明9の「曲げ伸ばし装置」に相当し、以下同様に、「加熱装置13」は「加熱装置」に、「酸洗槽7」は「酸洗装置」に、「冷間圧延機」は「冷間圧延機」に、「鋼帯A」は「鋼板」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「ロール群A」と本件発明9の「第1の張力付与装置」とは、どちらもロール群で構成されていることから「ロール群A」である限りで共通し、同様に、甲1発明の「ロール群B」と本件発明9の「第2の張力付与装置」とは、「ロール群B」である限りで共通し、甲1発明の「ロール群A、メカニカルデスケーラ5、及び、ロール群Bを有する装置」と本件発明9の「第1の張力付与装置、曲げ伸ばし装置、及び、第2の張力付与装置を有するテンションレベラー」とは、「ロール群A、曲げ伸ばし装置、及び、ロール群Bを有する装置」である限りで共通する。
また、甲1発明の「鋼帯Aの脱スケールライン」は、鋼帯Aを熱間圧延する設備でもあるから、本件発明9の「圧延設備」に相当し、同様に、甲1発明の「鋼帯Aの脱スケール方法」は、本件発明9の「鋼板の圧延方法」に相当する。さらに、甲1発明の「機械的な脱スケール処理を行う装置」は、甲1の上記ア(ア)、(イ)の記載を参酌すれば、本件発明9の「前処理装置」に相当するといえる。
また、甲1発明の「機械的な脱スケール処理を行う装置により、熱間圧延された鋼帯Aに対して引張曲げ加工を施」すことと、本件発明9の「前処理装置により、熱間圧延された鋼板に対して張力を付与した状態で引張曲げ加工を施」すこととは、「前処理装置により、熱間圧延された鋼板に対して引張曲げ加工を施」す限りで共通する。
以上から、本件発明9と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「 ロール群A、曲げ伸ばし装置、及び、ロール群Bを有する装置と、加熱装置とを備え、圧延設備の上流側から順に、前記ロール群A、前記加熱装置、前記曲げ伸ばし装置、前記ロール群Bが配置されている前処理装置により、熱間圧延された鋼板に対して引張曲げ加工を施し、前記前処理装置により前記引張曲げ加工が施された前記鋼板を酸洗装置により酸洗し、前記酸洗装置により酸洗された前記鋼板を冷間圧延機により冷間圧延する、鋼板の圧延方法。」
<相違点1>
本件発明9では、前処理装置が、鋼板に対して「張力を付与した状態で」引張曲げ加工を施すものであり、「第1の張力付与装置」及び「第2の張力付与装置」を有する「テンションレベラー」を備えると特定されているのに対し、甲1発明では、機械的な脱スケール処理を行う装置が、ロール群A、メカニカルデスケーラ5及びロール群Bを備え、鋼帯Aに対して引張曲げ加工を施すものであるものの、当該ロール群A及び当該ロール群Bで張力を付与して、張力を付与した状態で、鋼帯Aに対して引張曲げ加工を施しているか不明である点。
<相違点2>
本件発明9は、「前記加熱装置により前記鋼板を加熱する温度は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲に設定され、前記テンションレベラーにより前記鋼板に与える伸び率は、前記鋼板の材質毎に予め取得された、前記加熱温度範囲における前記鋼板の伸び率と前記酸洗装置により前記鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定される」のに対し、甲1発明では、加熱温度範囲が、鋼帯Aの表面に付着した水分を蒸発除去し、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にする温度範囲に設定するものであり、さらに、機械的な脱スケール処理を行う装置において、鋼帯Aに与える伸び率を、特定の加熱温度範囲(「鋼板の材質毎に予め取得された、前記テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲」)における鋼板の伸び率と酸洗速度との関係に基づいて設定しているか不明な点。
(5)判断
事案に鑑みて、相違点2から検討する。
まず、甲1発明では、加熱装置13は、鋼帯Aの表面に付着した水分を蒸発除去し、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にする加熱温度範囲に設定されるといえるから、鋼帯Aを加熱する温度が、鋼板の材質毎に予め取得された、テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲に設定されているとはいえない。また、鋼帯Aの表面に付着した水分を蒸発除去し、鋼帯Aの表面に付着しているスケールを剥離浮上し易い状態にする加熱温度範囲と、鋼板の材質毎に予め取得された、テンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲とが、略同一の温度範囲であると見做せるような技術常識も見当たらない。
これに対して、甲3には、鋼帯の尾端縁に他の鋼帯の先端縁を溶接した中継ぎ溶接部を、遷移温度以上の温度に保持した状態でスケールブレーカーに通板することで、鋼帯の破断が防止できる、との技術的事項(上記(3)イを参照。)が記載されているといえる。
しかし、甲3には、加熱温度範囲における鋼板の伸び率と酸洗速度との関係が示されていないから、仮に、甲1発明に甲3に記載の技術的事項を適用したとしても、少なくとも甲1発明における、機械的な脱スケール処理を行う装置において、鋼帯Aに与える伸び率を、破断が生じない加熱温度範囲(鋼帯Aの遷移温度以上)における、鋼帯Aの伸び率と酸洗速度との関係に基づいて設定することは、上記甲3に記載の技術的事項によっては、当業者にとって容易になし得たということはできない。
そして、加熱温度範囲における鋼板の伸び率と酸洗速度との関係は、甲2に記載の技術的事項(上記(2)イを参照。)、並びに、その他の証拠方法(甲4~10)に開示も示唆もないから、結局、甲1発明、及び甲2~10に記載の技術的事項によっては、相違点2に係る本件発明9とすることが、当業者にとって容易になし得たということはできない。
そして、相違点2に係る本件発明9の作用効果について、本件明細書等の段落【0070】に、「以上より、鋼種によって違いはあるが、板破断発生回数比は、板温度がある温度以上になると急激に減少して、さらにある温度以上になると飽和する傾向があることがわかった。これらの結果より、曲げ伸ばし装置の入側の板温度が、ハイテン鋼は120℃以上、無方向性電磁鋼板は150℃以上、方向性電磁鋼板は140℃以上あれば、板破断を防止できることがわかった。・・・よって、このように鋼板の材質毎に鋼板の板温度と板破断との関係を予め取得して、材質毎に板破断が発生しない板温度に加熱装置を制御することができる。」、段落【0071】に、「・・・次に、図5を参照して、鋼板の伸び率と酸洗速度との関係を説明する。・・・なお、本研究では、曲げ伸ばし装置の入側で、ハイテン鋼は120℃、無方向性電磁鋼板は150℃、方向性電磁鋼板は140℃を示す鋼板を使用した。」、段落【0072】に、「図5に示すように、伸び率と酸洗速度比との関係についてはハイテン鋼、無方向性電磁鋼板、方向性電磁鋼板に大きな差異はみられず、伸び率1.0%付近から1.8%付近まで酸洗速度比が急激に上昇し、伸び率2.0%付近で酸洗速度比の上昇は収束した。これらの結果より、酸洗速度比は鋼種にあまり依存せず、ある伸び率以上になると急激に上昇し、さらにある伸び率以上になると飽和する傾向があることがわかる。また、図5の結果より、テンションレベラーで鋼板に与える伸び率を1.0%以上とすることで、酸洗速度を高めることができることがわかった。」、及び段落【0073】に、「以上より、鋼板の板温度と板破断との間、および鋼板の伸び率と酸洗速度との間には一定の関係があることがわかる。これらの関係に基づき、上記実施形態に係る圧延設備では、酸洗処理前の前処理装置による前処理にて、加熱装置により板温度を制御し、テンションレベラーにより伸び率を制御することで、硬質脆性材料であっても板破断することなく鋼板に生じたスケールにクラックを発生させ、酸洗装置にてスケールを除去することができる。」と記載されており、このように、相違点2に係る本件発明9の構成により、顕著な作用効果を奏するものである。
よって、本件発明9は、甲1~10に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
2 本件発明9についての申立人の主張
(1)主張の概要
申立人は、甲2には、「熱間圧延を行うときの巻き取り温度が上昇するにつれ、スケールは厚くなるので、熱間圧延時の巻き取り温度によって熱延コイル2の伸び率εを大きくする必要がある」こと、及び「本実施例に従えば、スケール除去装置の運転条件を制御することにより、スケール除去装置と酸洗設備とによるスケール除去を常時効率的に稼動させることができる」ことが記載されており、甲2において、「伸び率」は、酸洗設備によるスケール除去が効率的に実施されるように設定されていることが分かるから、甲2において、「伸び率」は、「鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定」されている旨を主張する。(特許異議申立書29ページ「(ク-2)構成[Q]について」)
(2)主張に対する検討
しかしながら、上記甲2について摘記した事項(特に、上記1(2)ア(ウ)を参照。)などから、甲2には、熱間圧延時の巻き取り温度に基づいて伸び率駆動装置を制御して、熱延コイルの伸び率を制御することが記載されているとはいえるものの、テンションレベラーにより鋼板に与える伸び率を、鋼板の材質毎に予め取得されたテンションレベラーによる板破断が生じない加熱温度範囲における、鋼板の伸び率と酸洗装置により鋼板のスケールが除去される酸洗速度との関係に基づいて設定することが記載されていない。
以上から、申立人の主張は採用できない。
3 小括
以上により、本件発明9は、申立人の主張する申立理由1によっては取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1~8に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、本件特許異議の申立てについて、請求項1~8に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700643