特許異議申立
2023-700086
ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置及び方法
- 審判番号
- 2023-700086
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-505966
- 登録番号
- 7108128
- 請求日
- 2023年01月27日
- 審決日
- 2024年06月20日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【権利者代理人】江崎 光史
- 【権利者代理人】鍛冶澤 實
- 【権利者代理人】中村 真介
- 【権利者代理人】石田 大成
- 【異議申立人】小宮 邦彦
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 善弘
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.113-YAA(B21B) / P1651.121-YAA(B21B) / P1651.537-YAA(B21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7108128号発明「ストリップ材料、特に熱間ストリップを搬送するための装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7108128号の特許請求の範囲を、令和6年4月5日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~11〕、12、〔13~19〕について訂正することを認める。
特許第7108128号の請求項1~19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7108128号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)1月16日を国際出願日とする特許出願(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年(平成31年)2月21日(DE)ドイツ連邦共和国(以下「優先権基礎出願1」という。)、及び同年(令和元年)11月18日 (DE)ドイツ連邦共和国(以下「優先権基礎出願2」という。))であって、2022年(令和4年)7月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和5年1月27日(受理日:同月30日)
特許異議申立人 小宮邦彦(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~19に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を、以下単に「申立書」という。)
(2)令和5年6月14日付け(発送日:同月19日)
取消理由の通知 (以下「取消理由通知」という。)
(3)令和5年9月12日
特許権者 エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング(以下単に「特許権者」という。)による、訂正の請求、及び意見書(以下「権者意見書1」という。)の提出
(4)令和5年10月25日付け(発送日:同月27日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(5)令和5年11月27日(受理日:同月28日)
申立人による、意見書の提出
(6)令和6年1月9日付け(発送日:同月12日)
取消理由(決定の予告)の通知 (以下「決定の予告」という。)
(7)令和6年1月25日~4月2日
特許権者との電話及び電子メールでの応対(同期間の応対記録を参照。)
(8)令和6年4月5日
特許権者による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求、及び意見書(以下「権者意見書2」という。)の提出
(9)令和6年4月15日付け(発送日:同月17日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(10)令和6年5月17日(受理日:同月20日)
申立人による、意見書(以下「申立人意見書2」という。)の提出
なお、令和6年4月5日に本件訂正の請求がされたため、令和5年9月12日にされた先の訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容について
特許権者は、本件訂正の請求により、本件特許の特許請求の範囲を、令和6年4月5日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「所定の搬送方向にストリップ材料を搬送する」
と記載されているのを、
「水平な搬送方向にストリップ材料を搬送する」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているもの」
と記載されているのを、
「各サイドガイド要素(5)における複数の回転式の摩耗体(6)であって、それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられているもの」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、」
と記載されているのを、
「少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され、」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)」
と記載されているのを、
「ストリップ材料に接触面が押し付けられる少なくとも1つの摩耗体(6)」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に
「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定されている」
と記載されているのを、
「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に
「ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。」
と記載されているのを、
「ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、
ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であること、を特徴とする装置。」
に訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項4~11についても同様である。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に
「回転数調整装置(7)は、巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されていること、を特徴とする請求項1に記載の装置。」
と記載されているのを、
「ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、
回転数調整装置(7)は、巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されていること、を特徴とする装置。」
に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4~11についても同様である。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項2~3のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5~11についても同様である。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6~11についても同様である。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項2~7のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~11についても同様である。)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項2~9のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項10を引用する請求項11についても同様である。)。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項2~10のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項12に
「ストリップ材料を搬送する」
と記載されているのを、
「ストリップ材料を水平に搬送する」
に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項12に
「回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させる」
と記載されているのを、
「回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸をそれぞれ中心として各サイドガイド要素(5)における複数の摩耗体(6)を回転させ、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」
に訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項12に
「回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、」
と記載されているのを、
「回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され、」
に訂正する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項12に
「ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)」
と記載されているのを、
「ストリップ材料に接触面が押し付けられる少なくとも1つの摩耗体(6)」
に訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項12に
「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと」
と記載されているのを、
「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さく、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じること」
に訂正する。
(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項13に
「回転数調整装置の基準値が、ストリップ材料の前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度であること、を特徴とする請求項12に記載の方法。」
と記載されているのを、
「ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと、
回転数調整装置の基準値が、ストリップ材料の前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度であること、を特徴とする方法。」
に訂正する(請求項13を直接的又は間接的に引用する請求項15~19についても同様である。)。
(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項14に
「巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されること、を特徴とする請求項12に記載の方法。」
と記載されているのを、
「ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと、
巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されること、を特徴とする方法。」
に訂正する(請求項14を直接的又は間接的に引用する請求項15~19についても同様である。)。
(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項12~14のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項13~14のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項16~19についても同様である。)。
(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項12~15のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項13~15のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する(請求項16を直接的又は間接的に引用する請求項17~19についても同様である。)。
(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項19に
「請求項12~18のいずれか1項に記載の装置。」
と記載されているのを、
「請求項13~18のいずれか1項に記載の装置。」
に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~11については、請求項2~11がそれぞれ本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1~5によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項12~19については、請求項13~19がそれぞれ本件訂正前の請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項13~17によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~11〕、〔12~19〕について請求されたものである。
3 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~22に関して、第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
<一群の請求項〔1~11〕について>
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1における「ストリップ材料を搬送する」「搬送方向」について、「水平な搬送方向」に具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0014】には、「搬送装置は、例えば移送プレート又はローラテーブルを有し、これらは、金属ストリップを所定の区間にわたって搬送するために使用される。」と記載される。また、段落【0028】には、「図1は、その上をストリップ材料4が搬送されるローラ2を備えたローラテーブル1を示す。ローラ2は、モータ3によって駆動されるので、ストリップ材料は、図で左から右に向かって移送される。本発明が搬送装置としてのローラテーブルに限定されているのではなく、ローラテーブルの代わりに例えば移送プレートも搬送装置として使用できることは、当業者には明らかである。しかしながら、以下では、一般性を限定することなく主にローラテーブルを参照する。」と記載される。さらに、図1、図3もあわせてみれば、「搬送方向」が「水平」であることは明らかである。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、「ストリップ材料を搬送する」「搬送方向」について、「水平な搬送方向」に具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1において、「各サイドガイド要素(5)」に「摩耗体(6)」が「複数」設けられており、それら「複数の回転式の摩耗体(6)」が、「それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」ことを、具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0029】には、「ローラテーブル1からのストリップ材料4の横への落下を防止するため、ローラテーブルは、サイドガイド要素5を備えており、これらサイドガイド要素は、好ましくはストリップ材料4の両側で、特にその複数のローラ2を備えたローラテーブル1の高さのところに配置されている。しかしながら、導入部で説明したように、これらサイドガイド要素5は、高い摩耗の支配下にある。ストリップ材料4による摩耗を大きい面積に分散させるため、ローラテーブル1の両側のサイドガイド要素5に、複数の回転式の摩耗体6が配置されている。摩耗体6のそれぞれは、ローラテーブルのローラに対して平行に位置するその対称軸を中心として回転可能に支承され、回転駆動装置13によってその対称軸を中心とした回転運動をさせられる。この場合、各摩耗体は、固有の回転駆動装置を備えることができる、又は、1つの回転駆動装置が、複数の又は全ての摩耗体を駆動する。」と記載され、図1、図3もあわせてみれば、「各サイドガイド要素(5)」に「摩耗体(6)」が「複数」設けられており、それら「複数の回転式の摩耗体(6)」が、「それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」ことは明らかである。したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、「各サイドガイド要素(5)」に「摩耗体(6)」が「複数」設けられており、それら「複数の回転式の摩耗体(6)」が、「それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」ことを具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項1における「回転数調整装置(7)」に関して、少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するに際して、「少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され」るように設定されることを、具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
なお、特許権者は訂正請求書において、訂正事項3の訂正の目的は「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると主張するものの、訂正前の請求項1に係る発明(及び、請求項1との引用関係を解消した訂正後の請求項2~11に係る発明)は、明瞭である。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0015】には、「摩耗体は、ストリップがコイラに案内される間、連続的に回転される。」と記載されることから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、「回転数調整装置(7)」による、少なくとも1つの摩耗体の回転数の調整に関して、「少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され」るように設定されることを具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項1における「ストリップ材料」と「摩耗体(6)」の「接触」が、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」ことを、具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0036】には、「摩耗体6をローラテーブル1上のストリップ材料4に押し付ける」と記載されていることから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、請求項1における「ストリップ材料」と「摩耗体(6)」の「接触」が、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」ことを、具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項1において、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」とき(訂正事項4)に、「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され」、それにより「ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる」ことを、具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0015】には、「摩耗体の回転により、接触面に、ストリップの搬送方向に対抗する摩擦力が生じる」と記載されている。ここで、明細書に記載された「対抗」と訂正事項5の「対向」とは、漢字の表記が異なるものの、いずれも、ストリップの搬送方向とは反対の方向に摩擦力が生じることを意味することは明らかである。したがって、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」ときに、「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され」ることで、「ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる」ことを具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6~7
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1の記載により請求項2を書き下すことにより、請求項2を独立請求項の形式に記載するものである。
また、訂正事項7は、訂正前の請求項3が引用する訂正前の請求項1の記載により請求項3を書き下すことにより、請求項3を独立請求項の形式に記載するものである。
したがって、訂正事項6~7は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6~7は、それぞれ、書き下し形式で請求項2~3を記載するものであり、何ら新規事項の追加や実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(7)訂正事項8~12
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項4において「請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。」と記載されていたのを、請求項1との引用関係を解消するために、引用する請求項1を削除して「請求項2~3のいずれか1項に記載の装置。」に訂正するものである。
同様に、訂正事項9~12は、それぞれ、訂正前の請求項5、8、10及び11において、「請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。」、「請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。」、「請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。」及び「請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。」と記載されていたのを、請求項1との引用関係を解消するために、引用する請求項1を削除して「請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。」、「請求項2~7のいずれか1項に記載の装置。」、「請求項2~9のいずれか1項に記載の装置。」及び「請求項2~10のいずれか1項に記載の装置。」に、それぞれ訂正するものである。
したがって、訂正事項8~12は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8~12は、それぞれ、訂正前の請求項4、5、8、10及び11が引用していた請求項1を削除するものであり、何ら新規事項の追加や実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
<一群の請求項〔12~19〕について>
(8)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、請求項12における「ストリップ材料を搬送する」方向について、「ストリップ材料を水平に搬送する」ことを具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項13は、訂正事項1(上記(1)ア)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0014】、【0028】、図1、図3の記載から、上記(1)イと同様の理由により、訂正事項13は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項13は、上記(1)ウと同様の理由により、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(9)訂正事項14
ア 訂正の目的について
訂正事項14は、請求項12において、「各サイドガイド要素(5)」に「摩耗体(6)」が「複数」設けられており、それら「複数の摩耗体(6)を」「搬送方向に対して横に位置する軸をそれぞれ中心として」「回転させ、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」ことを具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項14は、訂正事項2(上記(2)ア)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0029】、図1、図3の記載から、上記(2)イと同様の理由により、訂正事項14は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項14は、上記(2)ウと同様の理由により、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(10)訂正事項15
ア 訂正の目的について
訂正事項15は、請求項12における「回転駆動装置(13)」において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するに際して、「少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され」ることを具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項15は、訂正事項3(上記(3)ア)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
なお、特許権者は訂正請求書において、訂正事項15の訂正の目的は「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると主張するものの、訂正前の請求項12に係る発明(及び、請求項12との引用関係を解消した訂正後の請求項13~19に係る発明)は、明瞭である。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0015】の記載から、上記(3)イと同様の理由により、訂正事項15は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項15は、上記(3)ウと同様の理由により、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(11)訂正事項16
ア 訂正の目的について
訂正事項16は、請求項12における「ストリップ材料」と「摩耗体(6)」の「接触」が、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」ことを、具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項16は、訂正事項4(上記(4)ア)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0036】の記載から、上記(4)イと同様の理由により、訂正事項16は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項16は、上記(4)ウと同様の理由により、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(12)訂正事項17
ア 訂正の目的について
訂正事項17は、請求項12において、持続的に「ストリップ材料」に「摩耗体(6)」の「接触面が押し付けられる」とき(訂正事項16)に、「摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さ」く、それにより「ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる」ことを具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項17は、訂正事項5(上記(5)ア)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0015】の記載から、上記(5)イと同様の理由により、訂正事項17は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項17は、上記(5)ウと同様の理由により、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(13)訂正事項18~19
ア 訂正の目的について
訂正事項18は、訂正前の請求項13が引用する訂正前の請求項12の記載により請求項13を書き下すことにより、請求項13を独立請求項の形式に記載するものである。
また、訂正事項19は、訂正前の請求項14が引用する訂正前の請求項12の記載により請求項14を書き下すことにより、請求項14を独立請求項の形式に記載するものである。
したがって、訂正事項18~19は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項18~19は、それぞれ、書き下し形式で請求項13~14を記載するものであり、何ら新規事項の追加や実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(14)訂正事項20~22
ア 訂正の目的について
訂正事項20は、訂正前の請求項15において「請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、請求項12との引用関係を解消するために、引用する請求項12を削除して「請求項13~14のいずれか1項に記載の方法。」に訂正するものである。
同様に、訂正事項21~22は、それぞれ、訂正前の請求項16及び19において、「請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。」及び「請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、請求項12との引用関係を解消するために、引用する請求項12を削除して「請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。」及び「請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。」に、それぞれ訂正するものである。
したがって、訂正事項20~22は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項20~22は、それぞれ、訂正前の請求項15、16及び19が引用していた請求項12を削除するものであり、何ら新規事項の追加や実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
5 別の訂正単位とする求め
特許権者は、引用関係の解消を目的とする訂正を行っている請求項2~11及び請求項13~19の訂正が認められる場合には、請求項2~11、13~19は、請求項1、12とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
6 小括
上記4(1)~(14)のとおり、訂正事項1~22に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、特許権者は、本件訂正が認められる場合、上記5の求めをしている。
よって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~11〕、12、〔13~19〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって水平な搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における複数の回転式の摩耗体(6)であって、それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され、ストリップ材料に接触面が押し付けられる少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じること、を特徴とする装置。
【請求項2】
ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、
ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であること、を特徴とする装置。
【請求項3】
ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置(1)と、
・搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)と、
・各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの回転式の摩耗体(6)であって、搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承されているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置(13)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置(7)が設けられており、回転数調整装置(7)は、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、
回転数調整装置(7)は、巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されていること、を特徴とする装置。
【請求項4】
回転数調整装置(7)は、摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダーであるように設定されていること、を特徴とする請求項2~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
・少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するための位置調整装置(9)と、
・少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるための位置決め駆動装置(14)と、
を有すること、を特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
位置調整装置(9)は、位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であるように設定されていること、を特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
ストリップ材料(10)の横方向の位置用のセンサを有し、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの摩耗体用の回転駆動装置が、電気モータであること、を特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
位置決め駆動装置が、油圧式の駆動装置であること、を特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
摩耗体の次の交換を予測するための整備予測装置が、前回の整備日及び現在の圧延プログラムのこれまでの経過等の前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
ストリップ材料(4)用の搬送装置が、ローラ(2)を備えたローラテーブル(1)を有すること、を特徴とする請求項2~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を水平に搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸をそれぞれ中心として各サイドガイド要素(5)における複数の摩耗体(6)を回転させ、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられているステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、少なくとも1つの摩耗体(6)が連続的に回転され、ストリップ材料に接触面が押し付けられる少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さく、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じること、を特徴とする方法。
【請求項13】
ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと、
回転数調整装置の基準値が、ストリップ材料の前進速度又はローラテーブルのローラ回転速度であること、を特徴とする方法。
【請求項14】
ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素(5)を備えた搬送装置(1)を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・回転駆動装置(13)によって搬送方向に対して横に位置する軸を中心として各サイドガイド要素(5)における少なくとも1つの摩耗体(6)を回転させるステップと、
・回転数調整装置(7)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップと、
・回転駆動装置(13)において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップと、
を有し、ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいこと、
巻き品質を改善するために、摩耗体(6)の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されること、を特徴とする方法。
【請求項15】
摩耗体(6)の角速度が、0.5~10rpmのオーダーであること、を特徴とする請求項13~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
・位置調整装置(9)によって少なくとも1つの摩耗体(6)の進出位置を所定の目標位置に調整するステップと、
・位置決め駆動装置(14)によって少なくとも1つの摩耗体を搬送方向に対して横に目標位置に進出させるステップと、
を有すること、を特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
位置調整装置の基準値が、少なくとも1つの摩耗体(6)を搬送装置(1)上のストリップ材料に押し付ける力であること、を特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ストリップ材料(10)の横方向の位置が、センサによって検出され、位置調整装置の基準値が、搬送装置上のストリップ材料用の目標位置であること、を特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
摩耗体の次の交換を予測するための整備予測装置が、前回の整備日及び現在の圧延プログラムのこれまでの経過等の前回の整備日以降の事象に依存して、予測される次の整備日を示すこと、を特徴とする請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。」
第4 申立人が主張する申立ての理由について
1 申立書における申立ての理由について
申立人による申立ての理由は、以下のとおり整理することができる。
(1)甲第1号証に記載された発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項1~19)
(2)甲第5号証に記載された発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項1~19)
(3)サポート要件違反(請求項1~19)
(4)明確性要件違反(請求項1~19)
2 証拠方法
申立人による証拠方法は、以下の、申立書に添付した甲第1~6号証と、申立人意見書2に添付した甲第7号証である。
(1)甲第1号証:韓国特許出願公開第2013-0040291号公報
(2)甲第2号証:実願昭52-156572号(実開昭54-082032号)のマイクロフィルム
(3)甲第3号証:特開昭53-50039号公報
(4)甲第4号証:国際公開第2019/197085号
(5)甲第5号証:国際公開第2018/219946号
(6)甲第6号証:本件特許の優先権主張の基礎とされた、平成31年2月21日を優先日とする優先権書類(優先権基礎出願1)
(7)甲第7号証:独国特許出願公開第102017202812号明細書
(「甲第1号証」~「甲第7号証」を、以下それぞれ「甲1」等という。)
3 甲7の取扱いについて
申立人意見書2による意見のうち、甲7を用いた意見(申立人意見書2第7ページ)は、実質的に新たな証拠に基づくものである。しかし、甲7は、本件訂正により追加された訂正事項1及び13により訂正された請求項1、12についての見解のために提示されたものであって、訂正の請求の内容に付随して生じる理由のためのものであると認められることから、甲7も証拠として採用し、以下判断する。
第5 当審より通知した決定の予告の概要
1 決定の予告における、本件特許の本件訂正前(すなわち、令和5年9月12日に提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲)の請求項1、12に係る特許に対する取消理由の要旨は、以下の(1)~(3)のとおりである。
(1)理由1 新規性について(主引用発明:甲5記載の発明)
本件特許の本件訂正前の請求項1、12に係る発明は、甲5に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2 進歩性について(主引用発明:甲5記載の発明)
本件特許の本件訂正前の請求項1、12に係る発明は、甲5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)理由2 進歩性について(主引用発明:甲1記載の発明)
本件特許の本件訂正前の請求項1、12に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 上記1(1)~(3)の判断に際し、優先権基礎出願1の出願書類(甲6)には、本件訂正前の請求項1~19に係る発明で特定されている「ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さい」との事項は記載されておらず、優先権基礎出願2の出願書類に記載される事項であるから、本件特許に係る出願の優先日は、優先権基礎出願2の出願日である2019年(令和元年)11月18日であるとして、当該優先日を基準日として上記判断を行った。
第6 決定の予告における理由1について
本件訂正後の本件発明1、12について、決定の予告における理由1(上記第5の1(1))を解消しているかについて、以下検討する。
<理由1 新規性について>
1 本件発明1、12の認定
本件発明1、12は、それぞれ、上記第3の請求項1、12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 甲5記載の発明の認定
(1)甲5には、以下の事項が記載されている。
なお、「aウムラウト」、「oウムラウト」、及び「uウムラウト」、並びに「エスツェット」は、それぞれ「ae」、「oe」、及び「ue」、並びに「ss」と表記する。また、甲5に記載された事項に併記した日本語訳は、申立人が提出した甲5の抄訳文、甲5に係る国際出願の出願人により提出された明細書等翻訳文に記載した事項を掲載した特表2020-521639号公報(以下「公表公報」という。)、権者意見書2、及び、当審による独自訳に基づいて、当審が甲5記載の発明を認定するために用いた日本語訳である。
ア 第3ページ(明細書第1ページ)第13~28行(ページ左側に付された行番号に基づき、空白行を含む。また、下線は当審が付した。以下同様。)
「Stand der Technik
Bei der Herstellung von Metallbaendern warden ・・・vom Produktionsprogramm regelmaessig erneuert und gereinigt werden.」
<当審日本語訳>
「背景技術
金属ストリップの製造において、金属ストリップは、仕上げ列内の反転台における圧延後、複数の圧延スタンド内で継続的に圧延され、層流冷却を備えた圧延テーブルにより巻線デバイスへ方向付けられ、そこで前記金属ストリップは螺旋状に巻かれる。仕上げ列において、金属ストリップは、圧延スタンドのロール間隙への中心送り込みが実施されるために、側面に沿った案内を受ける必要がある。側面に沿った案内のためのデバイスが案内定規と呼ばれる。側面に沿った案内のためのデバイスが接して動作する、進行する金属ストリップの縁部が、案内定規に固定されている磨耗ストリップ又は前記磨耗ストリップの磨耗面それぞれに磨耗を引き起こす。ある材料品質の場合には、ストリップ縁部は擦り減る。すり減った材料は案内定規に接着する可能性があり、いわゆる堆積群を生み出す。万一堆積群が金属ストリップ上へ落下したら、これは、金属ストリップ上の表面欠陥の原因になる可能性がある。従って、磨耗ストリップの磨耗面は、製造計画に応じて定期的に修理調整され、クリーニングされなければならない。」(甲5抄訳文の第1ページ、及び公表公報の段落【0002】に基づく。)
イ 第5ページ(明細書第3ページ)第3~9行
「Technische Aufgabe
Es ist die Aufgabe der vorliegenden Erfindung,・・・einer Reinigung von Schleissflaechen vermindert ist.」
<当審日本語訳>
「技術的タスク本発明の目的は、仕上げ列内でループリフタにより案内される金属ストリップの側面に沿った案内の場合に、磨耗部品の交換又は磨耗面のクリーニングそれぞれの複雑さ及び要求の頻度が各ストリップ送り込み角度又はストリップ送り出し角度それぞれの場合に最小限にされる、仕上げ列、デバイス、及びデバイスを動作させる方法を提案することである。」(甲5抄訳文の第2ページ、及び公表公報の段落【0007】に基づく。)
ウ 第6ページ(明細書第4ページ)第24行~第7ページ(明細書第5ページ)第11行
「Das Grundkoerpermodul mit Fuehrungsebene ist ・・・in den Schleisskoerper ein und verschleisst ihn somit.」
<当審日本語訳>
「案内面を有する主部材モジュールは、例えば、金属ストリップを案内するのに適した面を有するいわゆる案内定規であり、前記面は案内面である。前記案内面は、支持部材に固定されている1つ又は複数の磨耗板により形成されることが可能であり、支持部材及び磨耗板はこの例では主部材モジュールを結合形成している。側面に沿った案内のためのデバイスは1つの主部材モジュール又は複数の主部材モジュールを含み得る。例えば2つの主部材モジュールでは、各1つが金属ストリップの一方の側面を案内するためのものである。案内面は、金属ストリップの側面との接触により、金属ストリップを横方向に案内するのに役立つ。前記案内面は、金属ストリップが横方向に案内されるため、前記案内面の方向の、金属ストリップの移動の自由を制限する。案内面は略垂直であるために調整される。
主部材モジュールから離れて、側面に沿った案内のためのデバイスはまた、磨耗面を有する複数の磨耗部材をさらに含む。磨耗部材は、金属ストリップを案内することの結果として、具体的には磨耗面と呼ばれる領域に磨耗を被る部材である。磨耗部材は主部材モジュール以外の構成要素であるが、主部材モジュール内に挿入され得るか、又はそれに固定され得る。磨耗部材は、少なくとも1つの磨耗面を有し、金属ストリップの案内時、前記磨耗面は金属ストリップに面しており、横方向に案内する過程で、金属ストリップとの接触が原因で磨耗する。金属ストリップは磨耗部材に切り込み、従って磨耗部材上に磨耗を引き起こす。」(甲5抄訳文の第3~4ページ、及び公表公報の段落【0012】~【0013】に基づく。)
エ 第7ページ(明細書第5ページ)第27行~第8ページ(明細書第6ページ)第2行
「Der Schleisskoerper kann rund sein oder andere Konturen haben.
・・・in den 12 Stunden wird eine Vielzahl von Drehpositionen nacheinander eingenommen.」
<当審日本語訳>
「磨耗部材は円形である可能性があるか、又他の輪郭を有し得る。
磨耗部材は複数の回転位置へ回転可能である。従って、前記磨耗部材は少なくとも2つの回転位置を取ることができ、操作者は前記回転位置の中から所望の回転位置を選択することができ、回転を適宜制御及び/又は調節することができる。本明細書においては、前記磨耗部材が回転することで、磨耗部材が複数の回転位置を順々に取ることを含む。磨耗部材は、前記磨耗部材が回転により到達した所望の回転位置に固定され得るが、さらなる回転によりその先の回転位置へ回転させてもよい。本明細書においては、また、磨耗部材の回転を非常にゆっくり、例えば12時間で1回転するように行うことが可能であり、複数の回転位置は12時間かけて順々に取られる。」(甲5抄訳文の第4ページ、公表公報の段落【0016】~【0017】、権者意見書2、及び、当審訳に基づく。)
オ 第8ページ(明細書第6ページ)第34行~第9ページ(明細書第7ページ)第18行
「Vorteilhafte Wirkungen der Erfindung
・・・vom Metallband auch wieder abgeschliffen werden.」
<当審日本語訳>
「発明の効果
磨耗部材が回転軸を中心として回転可能である。回転軸は磨耗面に対して垂直であることが好ましい。磨耗部材は、ディスクの底部領域により形成されている平面磨耗面を有する円形ディスクであることが特に好ましい。
磨耗部材の磨耗面の領域の磨耗が許容可能なレベルを超過することを防止するために、磨耗部材は、別の領域が金属ストリップの縁部に対向させられるために、回転軸を中心として回転することができ、案内の結果として、金属ストリップは前記縁部のところですり減る。他の領域が金属ストリップの縁部に継続的に対向させられ且つ従って磨耗は磨耗面全体に亘って均等に分配されるので、磨耗面又は磨耗部材それぞれを交換する要求は複数の回転により遅延され得る。交換要求の頻度が低くなるので、従って、磨耗部品の交換の複雑さは低減される。さらに、また、いわゆる堆積群が一か所に蓄積しないことが確実にされ得る。従って、金属ストリップ上へ落下する前記堆積のリスクは最小限にされる。さらに、また、既存の堆積群は、任意選択で、磨耗部材の別の回転位置において金属ストリップからやはり研削され得る。」(甲5抄訳文の第5~6ページ、及び公表公報の段落【0021】~【0022】に基づく。)
カ 第10ページ(明細書第8ページ)第30~35行
「In WO2015043926A1 - deren Offenbarung von der Offenbarung der vorliegenden Anmeldung mit umfasst ist ・・・mit einer im Wesentlichen vertikalen Fuehrungsebene anwendbar sind.」
<日本語訳>
「略垂直な案内面を有する少なくとも1つの主部材モジュールを含む、仕上げ列内の金属ストリップ運搬デバイスの全体に亘って進行している金属ストリップの側面に沿った案内のための、本発明によるデバイスにおいて随意にやはり使用され得る、磨耗部材の実施形態に属する変形形態が、国際公開第2015/043926号(WO 2015/043926 A1)に由来するものであり、文献の開示は本願の開示に援用されている。」(公表公報の【0027】に基づく。)
キ 第13ページ(明細書第11ページ)第1~14行
「Ein weiterer Gegenstand der vorliegenden Anmeldung ist ・・・dass zu einem bestimmten Zeitpunkt eine bestimmte Drehposition eingenommen werden soll.」
<当審日本語訳>
「本発明のさらなる主題は、本発明による仕上げ列又は本発明による側面に沿った案内のためのデバイスを動作させる方法であり、少なくとも1つの磨耗部材が回転しながら、金属ストリップが進行することを特徴とする。
前記少なくとも1つの磨耗部材は、回転しながら複数の回転位置を取る。本明細書における磨耗部材の回転は、非常にゆっくり、例えば12時間で1回転するように行うことも可能である。また、回転は休止時間によって中断され得る。回転することにより、磨耗部材の磨耗は、磨耗面全体に亘って均一に分散されるので、交換する間隔を延ばすのに役立つ。国際公開第2015/043926号(WO 2015/043926 A1)に記載されるように、特定の回転位置まで回転を行うことが可能である;また、特定の時間に特定の回転位置を取ることが操作者により予め設定されないで、回転軸を基準として不特定の回転位置まで回転させることもできる。」(甲5抄訳文の第6ページ、公表公報の段落【0037】~【0038】、権者意見書2、及び当審訳に基づく。)
ク 第14ページ(明細書第12ページ)第7行~第15ページ(明細書第13ページ)第17行
「Beispiele
・・・es kann sich beispielsweise um eine zur dargestellten Anordnung spiegelbildliche Anordnung handeln.」
<当審日本語訳>
「例
側面図の図1は、金属ストリップ1が、矢印で指示されている方向に、従来のデバイス内の、仕上げ列の2つの圧延スタンド2、3間にあるループリフタ4を越えてどのように進行するかを断片的に示す。板状磨耗ストリップ5a、5bが、進行する金属ストリップ1が横方向に案内されるように、ループリフタ4の右側及び左側に存在している。ループリフタ4は様々な位置に調節可能であり、これは両方向矢印で示されている。位置に応じて、金属ストリップ1は、ストリップの進行方向に第1の圧延スタンド2のロール間隙6から、ストリップの進行方向に第2の圧延スタンド3のロール間隙7内へ、異なる経路を辿る。ループリフタ4の図示の位置に関連する経路のみが示されている。
図2は、本発明による仕上げ列内に設置された場合の動作中などの、側面に沿った案内のために本発明によるデバイスの実施形態を有する、本発明による仕上げ列の断片を示す。異なる経路10、11を通って、仕上げ列の2つの圧延スタンド8、9間の様々な位置に調節可能なループリフタ12を越えて進行している金属ストリップ13が、側面図に示されている。金属ストリップの進行方向は矢印で示されている。略垂直な案内面15を有する主部材モジュール14が示されており、前記主部材モジュール14は、ストリップの進行方向に見た場合に最後の圧延スタンド8とループリフタ12との間に配設されている。金属ストリップ13が越えて進行するループリフタ12は様々な位置に設置されることが可能であり、このことは、実線輪郭線16及び破線輪郭線17により、ループリフタローラの2つの位置に関して示されている。ループリフタの最上位位置を越えて金属ストリップ13により辿られる経路10は実線で示されており、ループリフタの下方位置を越えて辿られる経路11は破線で示されている。また、デバイスは、複数の回転位置へ回転可能な3つの磨耗部材18、19、20を含み、磨耗部材18、19、20の磨耗面21、22、23は略平面であり、すべての回転位置において、主部材モジュール14の案内面15に平行である。3つの磨耗部材18、19、20は、ストリップの進行方向に見た場合に最後の圧延スタンド8とループリフタ12との間に配設されている。ロール間隙24からループリフタ12の方向に見た場合、隣接する磨耗部材18、19、20の磨耗面21、22、23の面積は、3つの円形磨耗部材18、19、20の直径が増大するので増大する。図示の実施形態では、各経路は各磨耗面21、22、23を横断して通じている。全磨耗部材18、19、20は、ループリフタローラとパスライン25との間に示されている間隔とは無関係に、側面に沿った案内に関与しており、前記パスラインは破線で示されている。磨耗部材18、19、20は図示の設備の動作において回転し、これは湾曲矢印で示されており、金属ストリップ13が進行しており且つ前記磨耗部材18、19、20により案内されている間に、様々な回転方向が可能である。ループリフタ12と圧延スタンド9との間に任意選択で存在する側面に沿った案内のための部品の図が、明確にするために省略されており、これは、例えば、図示の組立体に対して鏡対称である組立体とすることができる。」(甲5抄訳文の第8~9ページ、及び公表公報の段落【0043】~【0044】に基づく。)
ケ 図1
「
[図:0001414146000001.jpg]
」
コ 図2
「
[図:0001414146000002.jpg]
」
(2)上記(1)から、甲5には以下の事項が記載されているといえる。
ア 上記(1)カ及びコ(図2)から、甲5には、金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するための運搬デバイス(装置)が記載されているといえる。
イ 上記(1)ク及びコ(図2)から、甲5に記載の運搬デバイス(装置)は、圧延スタンド9からループリフタ12を経て圧延スタンド8までの区間(所定の区間)にわたって図2の右から左への矢印の進行方向(所定の搬送方向)に金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するための圧延スタンド8、9(搬送装置(1))を有するものであるといえる。
ウ 上記(1)ウ及びコ(図2)から、甲5に記載の運搬デバイス(装置)は、ループリフタ12から圧延スタンド8までの間の少なくとも一方の側に配置された主部材モジュール14(サイドガイド要素(5))を有するといえる。
エ 上記(1)ウ~オ、ク及びコ(図2)から、甲5に記載の運搬デバイス(装置)は、各主部材モジュール14(サイドガイド要素(5))における複数の回転式の磨耗部材18、19、20(摩耗体)を有し、当該磨耗部材18、19、20(摩耗体)は、それぞれ進行方向(搬送方向)に対して横に位置する回転軸(軸)を中心として回転可能に支承され、回転軸(軸)は、進行方向(搬送方向)に沿って並べられているといえる。また、上記(1)ウから、甲5に記載の磨耗部材18、19、20(摩耗体)は、金属ストリップ13(ストリップ材料)の側面との接触により、金属ストリップ13(ストリップ材料)を横方向に案内する磨耗面21、22、23(接触面)を有するといえる。そして、当該磨耗面21、22、23(接触面)は、金属ストリップ(ストリップ材料)との接触が原因で磨耗することから、接触時には金属ストリップ13の搬送方向に対向する摩擦力が磨耗面21、22、23(接触面)に生じるといえる。
オ 上記(1)エから、甲5に記載の運搬デバイス(装置)は、操作者が磨耗部材18、19、20(摩耗体)の回転を制御することができて、磨耗部材18、19、20(摩耗体)は12時間で1回転されることが可能であるといえる。また、上記(1)エの「磨耗部材は、前記磨耗部材が回転により到達した所望の回転位置に固定され得るが、さらなる回転によりその先の回転位置へ回転させてもよい。本明細書においては、また、回転は非常にゆっくり、例えば12時間で1回転するように行うことが可能であり、複数の回転位置は12時間かけて順々に取られる。」との記載、及び、上記(1)キの「本明細書における磨耗部材の回転は、非常にゆっくり、例えば12時間に1回転するように行うことも可能である。また、回転は休止時間によって中断され得る。」との記載から、甲5に記載の磨耗部材18、19、20は、所望の回転位置に向けて順々に回転させ、複数の回転位置を経て12時間で1回転させることが可能であるといえる。
(3)上記(1)~(2)から、甲5に記載された事項を本件発明1、12に合わせて整理すると、甲5には、下記アに示す装置に関する発明(以下「甲5発明A」という。)と、下記イに示す方法に関する発明(以下「甲5発明B」という。)と、がそれぞれ記載されている、といえる。(なお、括弧内には、甲5発明A及びBの用語に対応する本件発明1、12の用語を付した。)
ア 甲5発明A
「金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するための運搬デバイス(装置)であって、
・圧延スタンド9からループリフタ12を経て圧延スタンド8までの区間(所定の区間)にわたって、所定の進行方向(搬送方向)に金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するための圧延スタンド8、9(搬送装置)と、
・圧延スタンド8、9(搬送装置)の少なくとも一方の側に配置された主部材モジュール14(サイドガイド要素)と、
・各主部材モジュール14(サイドガイド要素)における複数の回転式の磨耗部材18、19、20(摩耗体)であって、それぞれ進行方向(搬送方向)に対して横に位置する回転軸(軸)を中心として回転可能に支承され、当該回転軸(軸)は、進行方向(搬送方向)に沿って並べられているものと、
を有するものにおいて、
操作者が磨耗部材18、19、20(摩耗体)の回転を制御することができて、磨耗部材18、19、20(摩耗体)が所望の回転位置に向けて順々に回転され、金属ストリップ13(ストリップ材料)に磨耗面21、22、23(接触面)が接触する磨耗部材18、19、20(摩耗体)が12時間で1回転させることが可能であり(少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、)、金属ストリップ13(ストリップ材料)の進行方向(搬送方向)に対向する摩擦力が磨耗面21、22、23(接触面)に生じる、運搬デバイス(装置)。」
イ 甲5発明B
「金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するための方法であって、
・圧延スタンド8、9(搬送装置)の少なくとも一方の側に主部材モジュール14(サイドガイド要素)を備えた圧延スタンド8、9(搬送装置)を介して圧延スタンド9からループリフタ12を経て圧延スタンド8までの区間(所定の区間)にわたって、金属ストリップ13(ストリップ材料)を運搬(搬送)するステップと、
・進行方向(搬送方向)に対して横に位置する回転軸(軸)をそれぞれ中心として各主部材モジュール14(サイドガイド要素)における複数の磨耗部材18、19、20(摩耗体)を回転させ、当該回転軸(軸)は、進行方向(搬送方向)に沿って並べられているステップと、
・操作者が磨耗部材18、19、20(摩耗体)の回転を制御するステップと、
を有し、磨耗部材18、19、20(摩耗体)が所望の回転位置に向けて順々に回転され、金属ストリップ13(ストリップ材料)に磨耗面21、22、23(接触面)が接触する磨耗部材18、19、20(摩耗体)が12時間で1回転させることが可能であり(少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さく、)、金属ストリップ13(ストリップ材料)の進行方向(搬送方向)に対向する摩擦力が磨耗面21、22、23(接触面)に生じる、方法。」
3 本件発明1の新規性(特許法第29条第1項第3号)
(1)本件発明1と甲5発明Aとの対比
ア 相当関係
本件発明1と甲5発明Aとを対比すると、甲5発明Aにおける「金属ストリップ13」は、本件発明1における「ストリップ材料」に相当し、以下同様に、「運搬する」は「搬送する」に、「運搬デバイス」は「装置」に、「圧延スタンド9からループリフタ12を経て圧延スタンド8までの区間」は「所定の区間」に、「進行方向」は「搬送方向」に、「圧延スタンド8、9」は金属ストリップ13の搬送にも寄与するものであるから「搬送装置(1)」に、「主部材モジュール14」は「サイドガイド要素(5)」に、「磨耗部材18、19、20」は「摩耗体(6)」に、「回転軸」は「軸」に、「磨耗面21、22、23」は「接触面」に、それぞれ相当する。また、甲5発明Aにおける「磨耗面21、22、23が12時間で1回転させることが可能であり」との点は、回転時の周速度は非常にゆっくりであり、また、所望の回転位置で回転を中断した時の周速度はゼロであるから、本件発明1における「少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され」る点に、相当する。
また、甲5発明Aにおける「所定の進行方向」は、「所定の搬送方向」である限りにおいて、本件発明1における「水平な搬送方向」に相当し、
同様に、「回転軸は、進行方向に沿って並べられている」点は、「軸は、搬送方向に沿って並べられている」限りにおいて、「軸は、搬送方向に沿って水平に並べられている」点に相当する。
さらに、甲5発明Aにおける「磨耗部材18、19、20が所望の回転位置に向けて順々に回転され」る点は、「少なくとも1つの摩耗体が回転され」る限りにおいて、本件発明1における「少なくとも1つの摩耗体が連続的に回転され」る点に相当し、
同様に、「金属ストリップ13に磨耗面21、22、23が接触する」点は、「ストリップ材料に接触面が接触する」限りにおいて、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」点に相当する。
イ 一致点
上記アを踏まえると、本件発明1と甲5発明Aとは、以下の点で一致する。
「ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって所定の搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置と、
・搬送装置の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素と、
・各サイドガイド要素における複数の回転式の摩耗体であって、それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って並べられているものと、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体が回転され、ストリップ材料に接触面が接触する少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定され、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる、装置。」
ウ 相違点
一方、本件発明1と甲5発明Aとは、以下の相違点1~4で相違する。
(ア)相違点1
ストリップ材料の所定の搬送方向、及び摩耗体を回転可能に支承する軸の並びに関し、
本件発明1は、「水平な」搬送方向であり、軸が搬送方向に沿って「水平」に並べられているのに対して、
甲5発明Aは、進行方向が「水平」でなく、回転軸が進行方向に沿うものの「水平」に並べられていない点。
(イ)相違点2
本件発明1は、「摩耗体の回転軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置」を有するのに対して、
甲5発明Aは、回転駆動装置に相当する装置を有しているか、不明である点。
(ウ)相違点3
本件発明1は、「少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための回転数調整装置が設けられており」、「回転数調整装置」が、摩耗体の周速度を設定しているのに対して、
甲5発明Aは、磨耗部材が所望の回転位置に順々に回転するものであり、回転と停止を繰り返すものであるため、回転時の目標回転数に相当する回転数が設定されるのか不明であり、そのため回転数を調整し、周速度を設定するための回転数調整装置に相当する装置が設けられているか、不明である点。
(エ)相違点4
ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じることに関し、
本件発明1は、「摩耗体」が、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」ものであって、「摩耗体が連続的に回転する」ときの周速度が、常に、ストリップ材料の前進速度よりも小さいことで、接触面に摩擦力が生じるのに対して、
甲5発明Aでは、「磨耗部材」が、「金属ストリップ材料に磨耗面が接触する」ものであって、「磨耗部材が所望の回転位置に順々に回転する」ときの周速度が、12時間で1回転されることで、磨耗面に摩擦力が生じる点。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点1、相違点3、及び相違点4について検討する。
ア 相違点1について
甲5発明Aは、金属ストリップ13を、圧延スタンド9からループリフタ12を経て圧延スタンド8まで運搬するものであるところ、甲5の図2からみても、ループリフタ12を経て運搬することにより、水平な進行方向に運搬するものであるとはいえない。
また、図2からみて、磨耗部材18、19、20を回転可能に支承する回転軸も、進行方向に沿ってみた場合にその高さ位置は異なっており(図2において、右から左に進むにつれて下がっており)、水平に並べられているものとはいえない。
イ 相違点3について
甲5発明Aは、磨耗部材が所望の回転位置に順々に回転するものであり、回転と停止を繰り返すものと解されるため、回転時の目標回転数に相当する回転数が設定されるのか不明であり(12時間で1回転するものの、回転時と停止時の時間割合が不明であるため、回転時の回転速度も不明である。)、そのため回転数を調整し、周速度を設定するための回転数調整装置に相当する装置が設けられているとはいえない。
ウ 相違点4について
甲5発明Aにおいては、上記2(1)ウのとおり、「磨耗部材は、少なくとも1つの磨耗面を有し、金属ストリップの案内時、前記磨耗面は金属ストリップに面しており、横方向に案内する過程で、金属ストリップとの接触が原因で磨耗する。」ものであって、金属ストリップが横方向に案内されるものであることから、磨耗面と金属ストリップの側面との間には、横方向に案内できる程度の隙間が形成されていることは明らかである。そして、金属ストリップとの接触により磨耗面は磨耗することからその際に摩擦力が生じるとはいえるものの、その接触による磨耗は、金属ストリップの運搬が横方向にずれたときに接触し、元の位置に案内されるときに生じるものであって、磨耗部材の磨耗面が金属ストリップに押し付けられることによるものであるとはいえない。
一方、本件発明1における「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」とは、発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0036】に、摩耗体の進出位置を調整するための位置調整装置9により位置決め駆動装置14を駆動して摩耗体を進出させてストリップ材料に押し付けることが記載されるように、接触面側の位置が進出して調整されることで、接触面をストリップ材料に押し付けることを意味する、といえる。
してみると、甲5発明Aにおける「磨耗部材(摩耗体)」は、「金属ストリップ(ストリップ材料)に磨耗面(接触面)が押し付けられる」構造を有しているとはいえず、相違点4は、明らかな相違点である。
(3)本件発明1についての小括
したがって、本件発明1と甲5発明Aとは、少なくとも相違点1、相違点3、及び相違点4で相違することから、本件発明1は甲5発明Aであるとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
4 本件発明12の新規性(特許法第29条第1項第3号)
(1)本件発明12と甲5発明Bとの対比
ア 相当関係
本件発明12と甲5発明Bとの相当関係は、上記3(1)アと同様である。
イ 一致点
本件発明12と甲5発明Bとは、以下の点で一致する。
「ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素を備えた搬送装置を介して所定の区間にわたってストリップ材料を搬送するステップと、
・搬送方向に対して横に位置する軸をそれぞれ中心として各サイドガイド要素における複数の摩耗体を回転させ、当該軸は、搬送方向に沿って並べられているステップと、
を有し、少なくとも1つの摩耗体が回転され、ストリップ材料に接触面が接触される少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さく、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる、方法。」
ウ 相違点
一方、本件発明12と甲5発明Bとは、以下の相違点5~8で相違する。
(ア)相違点5
ストリップ材料を搬送するステップ、及び摩耗体を回転させる軸の並びに関し、
本件発明12は、ストリップ材料を「水平に」搬送し、軸が搬送方向に沿って「水平に」並べられているのに対して、
甲5発明Bは、金属ストリップを運搬する方向が「水平」でなく、回転軸が進行方向に沿うものの「水平」に並べられていない点。
(イ)相違点6
複数の摩耗体を回転させるステップに関し、
本件発明12は、摩耗体が回転駆動装置によって回転させられるのに対して、
甲5発明Bは、磨耗部材18、19、20が何によって回転させられているか、不明である点。
(ウ)相違点7
本件発明12は、回転数調整装置によって少なくとも1つの摩耗体の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップ、及び、回転駆動装置において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップをそれぞれ有しているのに対して、
甲5発明Bは、磨耗部材が所望の回転位置に順々に回転するものであり、回転と停止を繰り返すものであるため、回転時の目標回転数に相当する回転数が計算され、設定/変更されるのか不明であるため、本件発明12の上記各ステップに対応するステップを有しているか、不明である点。
(エ)相違点8
ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じるメカニズムに関し、
本件発明12は、「摩耗体」が、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」ものであって、「摩耗体が連続的に回転する」ときの周速度が、常に、ストリップ材料の前進速度よりも小さいことで、接触面に摩擦力が生じるのに対して、
甲5発明Bでは、「磨耗部材」が、「金属ストリップ材料に磨耗面が接触する」ものであって、「磨耗部材が所望の回転位置に順々に回転する」ときの周速度が、12時間で1回転されることで、磨耗面に摩擦力が生じる点。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点5、相違点7及び相違点8について検討する。
相違点5は、実質的に相違点1(上記3(2)ア)と同様の理由により、相違点7は、実質的に相違点3(上記3(2)イ)と同様の理由により、また、相違点8は、実質的に相違点4(上記3(2)ウ)と同様の理由により、それぞれ明らかな相違点であるといえる。
(3)本件発明12についての小括
したがって、本件発明12と甲5発明Bとは、少なくとも相違点5、相違点7、相違点8で相違することから、本件発明12は甲5発明Bであるとはいえない。
よって、本件発明12は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないから、本件特許の請求項12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
第7 決定の予告における理由2(主引用発明:甲5記載の発明)について
本件訂正後の本件発明1、12について、決定の予告における理由2のうち、上記第5の1(2)を解消しているかについて、以下検討する。
<理由2 進歩性について(主引用発明:甲5記載の発明)>
1 本件発明1、12の認定
本件発明1、12は、それぞれ、上記第3の請求項1、12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 甲5記載の発明の認定
甲5には、上記第6の2(3)に示した、甲5発明A及び甲5発明Bが記載されている。
3 本件発明1の進歩性(特許法第29条第2項)
(1)本件発明1と甲5発明Aとの対比
本件発明1と甲5発明Aとを対比すると、上記第6の3(1)イに示した一致点で一致し、同ウに示した相違点1~4で相違する。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点4(及び相違点3)について検討する。
ア 甲3記載の技術的事項
甲3の、例えば第2ページ右上欄第18行~第3ページ左上欄第16行、第2~5図から、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる(なお、下線は、申立書に記載された甲3記載事項(27/79ページ)から追加して認定した事項である。)。
「圧延機列の仕上ミルに搬送される圧延材料6をガイドする案内ディスク付サイドガイド装置において、
圧延材料6との損耗を少くしながら、圧延材料6の蛇行を防止し、材料曲りを減少させるために、
摩耗ディスク27が設けられた一対のサイドガイド21を、圧延材料6の幅方向に移動するように駆動するガイド開閉モータ25により、摩耗ディスク27による圧延材料6への当接位置を変更し、摩耗ディスク27が圧延材料6の搬送速度と同期させた周速で回転しながら搬送される圧延材料6の両側部を挾持してガイドすること。」
イ 甲4記載の技術的事項
甲4の、例えば明細書第4ページ第5行~第5ページ第34行、第7ページ第20行~第8ページ第16行、第9ページ第21行~第12ページ第13行、請求項4~5、図3~4から、甲4には、以下の事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる(なお、下線は、申立書に記載された甲4記載事項(36~37/79ページ)から追加して認定した事項である。)。
「ローラーコンベヤー上を搬送される金属ストリップ2をガイドする本体モジュール3を備える装置1において、
回転可能なディスク状の摩耗体6が本体モジュール3に設けられ、
摩耗面がすでに摩耗している摩耗体は、摩耗部分の長さだけ前進されることで、摩耗体6の交換の必要性を低減するために、
摩耗体6に結合された可動支持要素7の本体モジュール3に対する相対位置を油圧調整装置11などの調整装置によって調整し、シリンダ移動を測定および/または制御する装置13によって可動支持要素7を移動させることにより、本体モジュール3のガイド面に対して摩耗体6をストリップ搬送方向に対して直交する方向に移動させ、摩擦体6によって金属ストリップ2に加えられる力を測定し、制御すること。」
ウ 甲5発明Aと甲3記載の技術的事項に基づく容易想到性について
甲5発明Aと甲3記載の技術的事項とは、いずれもストリップ材料を搬送するための技術である点で、両者が属する技術分野が関連し、ストリップ材料の側方に接触することでストリップ材料の搬送を案内する摩耗体を有する点で作用・機能が共通し、さらに、摩耗体の接触面の摩耗を抑制しながらストリップ材料の横方向移動・蛇行を修正する点で課題も共通することから、甲5発明Aに甲3記載の技術的事項を適用することの動機は存在する。
しかしながら、甲3記載の技術的事項は、摩耗ディスク27が設けられた一対のサイドガイド21を圧延材料6の幅方向に移動させて、搬送される圧延材料6の両側部を挾持する(本件発明1における「押し付ける」に相当。)ことで、圧延材料6の蛇行を防止し、材料曲りを減少させるものであるものの、その際に、圧延材料6との損耗を少くするために、併せて摩耗ディスク27を圧延材料6の搬送速度と同期させた周速で回転しながら挾持するものである。
そのため、甲5発明Aに甲3記載の技術的事項を適用する場合には、運搬される金属ストリップ13の両側部を挾持することにより生じる磨耗面21、22、23の磨耗を抑えるために、金属ストリップ13の搬送速度と同期させた周速で磨耗面21、22、23を回転させるような変更が余儀なくされるため、結果として、上記相違点4に係る本件発明1における「少なくとも1つの摩耗体の周速度が、常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定」することが容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項により、ストリップ材料と接触面との間に発生する摩擦力によってストリップ材料にバックテンションを発生させることで、ストリップ材料の巻き品質を向上させることができる(段落【0015】、【0020】、【0024】)との効果を奏するものであり、他方、甲5発明A及び甲3記載の技術的事項には、ストリップ材料と接触面との接触による摩耗を課題として捉え、摩耗による影響を低減させる技術思想は開示されるものの、摩擦力を利用して巻き品質を向上させるといった摩擦力の積極的な活用についての技術思想は垣間みえない。
したがって、本件発明1は、甲5発明A及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲5発明Aと甲4記載の技術的事項に基づく容易想到性について
甲5発明Aと甲4記載の技術的事項とは、いずれもストリップ材料を搬送するための技術である点で、両者が属する技術分野が関連し、ストリップ材料の側方に接触することでストリップ材料の搬送を案内する摩耗体を有する点で作用・機能が共通し、さらに、摩耗体の交換の頻度を低くしながらストリップ材料の横方向移動・蛇行を修正する点で課題も共通することから、甲5発明Aに甲4記載の技術的事項を適用することの動機は存在する。
しかしながら、甲4記載の技術的事項は、金属ストリップ2を横方向にガイドするための装置であって、摩耗体6を金属ストリップ2の搬送方向に対して直交する方向に移動し、摩耗体6によって金属ストリップ2に力が加えられる(本件発明1における「押し付ける」に相当。)ものであるものの、摩耗体6によって金属ストリップ2に加えられた力を測定して制御するのは、ガイドを目的とするものであって、摩耗体の摩耗の長さ分だけ前進させて、ガイド面に対する摩耗体6の位置を調整するものであるといえる。
そのため、甲5発明Aに甲4記載の技術的事項を適用したとしても、甲5発明Aにおける磨耗部材18、19、20の磨耗面21、22、23が磨耗した際に、金属ストリップ13の横方向位置をガイドするために適切な位置となるよう摩擦面21、22、23の位置が調整されることを想到するのみであって、上記相違点4に係る本件発明1のように、接触面のストリップ材料への「押し付け力」と、ストリップ材料の前進速度よりも「小さい周速度」での「連続的な回転」とにより生じる接触面の摩擦力により、ストリップ材料にバックテンションを発生させることで、ストリップ材料の巻き品質を向上させることまで、想到することが容易であったとはいうことができない。
さらに、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を実現するために、本件発明1には、上記相違点3に係る回転調整装置が設けられ、少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するものであるところ、甲5発明A及び甲4記載の技術的事項には、目標回転数を設定し、摩耗体の回転数を当該目標回転数に調整することについて記載も示唆もないことから、上記相違点3に係る本件発明1を想到することも容易であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲5発明A及び甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明1についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明A及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、申立人が証拠方法(第4の2)として提出した他の証拠(甲1~甲2及び甲7)を踏まえても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 本件発明12の進歩性(特許法第29条第2項)
(1)本件発明12と甲5発明Bとの対比
本件発明12と甲5発明Bとを対比すると、上記第6の4(1)イに示した一致点で一致し、同ウに示した相違点5~8で相違する。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点8(及び相違点7)について検討する。
相違点8は、実質的に相違点4(上記3(1)、上記第6の3(1)ウ(エ))と同様であって、上記3(2)と同様の理由により、甲5発明B及び甲3~4記載の技術的事項に基づいて、相違点8に係る本件発明12の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、甲5発明Bに甲4記載の技術的事項を適用したとしても、実質的に相違点3と同様である相違点7に係る本件発明12の発明特定事項を想定することにも困難性がある(上記3(2)エ)。
(3)本件発明12についての小括
したがって、本件発明12は、甲5発明B及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、申立人が証拠方法(第4の2)として提出した他の証拠(甲1~甲2及び甲7)を踏まえても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第8 決定の予告における理由2(主引用発明:甲1記載の発明)について
本件発明1、12について、決定の予告における理由2のうち、上記第5の1(3)を解消しているかについて、以下検討する。
<理由2 進歩性について(主引用発明:甲1記載の発明)>
1 甲1記載の発明の認定
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。
なお、甲1に記載された事項に併記した日本語訳は、申立人が提出した甲1の抄訳文に基づいて、当審が甲1記載の発明を認定するために用いた日本語訳である。
ア 請求項1、4、5
「
[図:0001414146000003.jpg]
・・・
[図:0001414146000004.jpg]
」
<当審日本語訳>
「請求項1
複数の搬送ローラ(2)が所定間隔で設けられている圧延鋼板生産ラインの先端両側に、下端内側にガイドパネル(7)が形成されたバックプレート(6)が立設されている圧延鋼板生産ライン用ガイド装置であって、
ガイドパネル(7)の下端には、軸孔(9)が設けられた複数の結合溝(8)が形成され、
軸孔(9)に嵌合する回転軸(11)を備えたディスクタイプのガイド部材(10)を結合溝(8)に回転可能に設け、搬送ローラ(2)上で搬送される圧延鋼板(1)の側面部にガイド部材(10)の前面が接触しながらガイドするように構成したことを特徴とする、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置。
・・・
請求項4
第1項において、
ガイド部材(10)を一方向に低速回転させる駆動手段をさらに備えたことを特徴とする、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置。
請求項5
第4項において、
駆動手段は前記回転軸(11)の先端に油圧モータ(17)を結合してガイド部材(10)を一方向に低速回転動作させることを特徴とする、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置。」(甲1抄訳文の第1~2ページに基づく。)
イ 技術分野(段落[0001])
「[0001]
[図:0001414146000005.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0001]本発明は、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置に関するものであり、より詳細には、既存のガイド装置では、固定されたプレート圧延鋼板を案内するため非常に早く摩耗し、発熱が激しく、如何なる高い強度を有する材質を使用しても1日~2日しか耐えられないという問題点が発生するところ、本発明では、ディスク型のガイド部材の前面が全体的に均一に圧延鋼板と接触しながら案内するので、ガイド部材の全体的な摩耗率が減少して材質軟化が少なくなり、ガイド部材の表面が凹まずに均等に摩耗し、全体的なガイド装置の寿命を大幅に延長させることができるのはもちろん、ガイド部材が摩耗した場合に速やかに交換することができ、圧延鋼板の生産性を向上させることができ、ディスク型ガイド部材の前面にガイドローラを回転可能に放射状に挿入設置してガイド部材の寿命をさらに延長できるようにした、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置に関するものである。」(甲1抄訳文の第3ページに基づく。)
ウ 背景技術(段落[0002]~[0010])
「[0002]
[図:0001414146000006.jpg]
・・・
[0010]
[図:0001414146000007.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0002]図1ないし図3は、従来技術を図示しており、圧延鋼板生産ラインの先端部には、生産された圧延鋼板(1)が高速に移送される移送ローラ(2)が、図示しないベース上に設置され、先端には、圧延鋼板(1)がコイル形態に巻き取られるようにこれを下降させる巻取ローラ(3)が、先端の移送ローラ(2)と対応するように移送ローラ(2)の上部に設置されている。
[0003]巻取ローラ(3)によって下降された圧延鋼板(1)がコイル形態に巻取されることが圧延コイル(4)である。
[0004]上記のような圧延鋼板生産ラインにおいて、圧延鋼板(1)が捩じれず均一に圧延コイル(4)に巻き取れるように、移送ローラ(2)を通過する圧延鋼板(1)を案内するのがガイダ(5)であり、ガイダ(5)は、図示するように圧延鋼板生産ラインの先端部に設けられている。
[0005]ガイダ(5)は、移送ローラ(2)の両側に垂直に立設されるバックプレート(6)からなり、バックプレート(6)の内側下端には耐摩耗性が優れた特殊鋼材質からなるガイドパネル(7)が結合されている。
[0006]図2に示すように、移送ローラ(2)に案内されて高速に移送される圧延鋼板(1)がガイドパネル(7)の間を通過し、圧延鋼板(1)は、ガイドパネル(7)に案内されて、左右に揺動せず直ちに移送されるので、最終的に巻き取られて生産される圧延コイル(4)が捻じれず均一に巻き取られることが可能になる。
[0007]しかしながら、従来技術では、移送ローラ(2)によって高速に移送される圧延鋼板(1)のスイング動作(圧延鋼板が左右で揺れる現象)によって圧延鋼板の両側端が連続的にガイドパネル(7)に接触し、さらに、生産移送される圧延鋼板(1)の両側端には微細に傾斜した突出部位が存在することになるので、この突出部位がガイドパネル(7)に接触すると、ガイドパネル(7)の摩耗がさらに進むことになり、ガイドパネル(7)の寿命は短ければ1日、長くとも2日に過ぎなくなることにより、ガイドパネル(7)を頻繁に交換しなければならないという問題点が発生していた。
[0008]また、従来のガイド装置では、ガイドパネル(7)を交換する際にガイドパネル(7)が結合されているバックプレート(6)全体を生産ラインのベースから交換しなければならないので、長時間かけてガイド装置を交換するほかなく、これによりガイド装置を交換する間は圧延鋼板の生産を中断しなければならないので、製品の生産性に悪影響を及ぼすという問題点が発生していた。
[0009]このような問題点を解決するために、ガイドを大型ローラの形態で設置することもあったが、大型ローラをガイダとして使用する場合、大型ローラの自重によって移送される圧延鋼板と大型ローラとが接触しても大型ローラが回転することができなくなり、圧延鋼板の接触部分が急速に摩耗して、その寿命を使い切ることができないという問題点があった。
[0010]また、ガイダの圧延鋼板接触部位を高強度セラミックで製造することもあったが、この場合にも、圧延鋼板が接触する部位が急速に磨耗してガイダの寿命を大きく延ばすことができないという問題点があった。」(甲1抄訳文の第4~7ページ、及び当審訳に基づく。)
エ 発明が解決しようとする課題(段落[0011])
「[0011]
[図:0001414146000008.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0011]そこで、上記問題点を解決するために、本発明は、ディスク型のガイド部材の前面が全体的に均一に圧延鋼板と接触しながら案内するので、ガイド部材の全体的な摩耗率が減少して材質軟化が少なくなり、ガイド部材の表面が凹まずに均等に摩耗し、全体的なガイド装置の寿命を大幅に延長させることができるのはもちろん、ガイド部材が摩耗した場合に速やかに交換することができ、圧延鋼板の生産性を向上させることができ、ディスク型ガイド部材の前面にガイドローラを回転可能に放射状に挿入設置してガイド部材の寿命をさらに延長できるようにした、圧延鋼板生産ライン用ディスク型ガイド装置を提供することを目的とする。」(甲1抄訳文の第8ページに基づく。)
オ 実施例(段落[0025])
「[0025]
[図:0001414146000009.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0025]前記ガイド部材(10)は、軸孔(9)に挿入される回転軸(11)に連結された本体部(12)と、本体部(12)の前面に取り付けまたは結合される硬質の金属からなるディスク型ガイド板(13)とで構成される。」(甲1抄訳文の第8ページに基づく。)
カ 同(段落[0029]~[0030])
「[0029]
[図:0001414146000010.jpg]
[0030]
[図:0001414146000011.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0029]圧延鋼板(1)がガイド板(13)の中央部分に接触せずガイド板(13)の前面外郭に接触するように、ガイド板(13)の設置高さを設定して、圧延鋼板(1)が高速で通過しながら圧延鋼板(1)の側面部がガイド板(13)の前面に接触する際に、その接触摩擦によってガイド板(13)がゆっくり回転することができるようにする。
[0030]圧延鋼板(1)が接触する際に、ガイド板(13)が圧延鋼板(1)との接触摩擦力によって一方向に回転することにより、ガイド板(13)の一部が偏摩耗するのではなく、ガイド板(13)の前面が全体的に均等に摩耗し、ガイド板(13)の寿命を延ばすことができるようになる。」(甲1抄訳文の第9ページに基づく。)
キ 同(段落[0033])
「[0033]
[図:0001414146000012.jpg]
」
<当審日本語訳>
「[0033]そして、本発明では、図7に図示されるように、回転軸(11)の先端に駆動手段である油圧モータ(17)をさらに結合し、油圧モータ(17)の動力を利用してガイド部材(10)をある一方向(圧延鋼板の進行方向または反対方向)に回転させることができ、油圧モータ(17)を利用してガイド部材(10)を強制的に回転させる場合には、ガイド板(13)の前面がより均等に摩耗するようにできるという効果が期待できる。」(甲1抄訳文の第10ページに基づく。)
ク 図1
「
[図:0001414146000013.jpg]
」
ケ 図5
「
[図:0001414146000014.jpg]
」(なお、申立書によれば、図中の原文の日本語訳は「進行方向」である。)
コ 図7
「
[図:0001414146000015.jpg]
」
(2)上記(1)から、甲1に記載された事項(特に、段落[0033]、図7に記載の、油圧モータ(17)の動力を利用してガイド部材(10)を回転させる実施形態)を、本件発明1、12に合わせて整理すると、甲1には、下記アに示す装置に関する発明(以下「甲1発明A」という。)と、下記イに示す方法に関する発明(以下「甲1発明B」という。)と、がそれぞれ記載されている、といえる。(なお、括弧内には、甲1発明A及びBの用語に対応する本件発明1、12の発明特定事項、又は、甲1の参照箇所(甲1発明Aのみ)を示す。)。
ア 甲1発明A
「圧延鋼板(1)(ストリップ材料)を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって水平な搬送方向に圧延鋼板(1)(ストリップ材料)を搬送するための移送ローラ(2)(搬送装置、段落[0002]、[0005]、図1、図7)と、
・移送ローラ(2)(搬送装置)の少なくとも一方の側に配置されたガイダ(5)(サイドガイド要素、段落[0025]、図4、図7)と、
・各ガイダ(5)(サイドガイド要素)における複数の回転式のガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)であって、それぞれ搬送方向に対して横に位置する回転軸(11)(軸)を中心として回転可能に支承され、当該回転軸(11)(軸)は、搬送方向に沿って水平に並べられているもの(段落[0025]、[0029]~[0030]、[0033]、図5、図7)と、
・前記回転軸(11)(軸)を中心として少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)を回転させるための油圧モータ(17)(回転駆動装置、請求項4~5、段落[0033]、図7)と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)が油圧モータ(17)により回転され(段落[0033]、図7)、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)にガイド板(13)の前面(接触面)が接触される少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)の周速度が、低速回転動作され(請求項5)、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)の搬送方向に対向する摩擦力がガイド部材(10)の前面(接触面)に生じる(段落[0030])、装置。」
イ 甲1発明B
「圧延鋼板(1)(ストリップ材料)を搬送するための方法であって、
・移送ローラ(2)(搬送装置)の少なくとも一方の側にガイダ(5)(サイドガイド要素)を備えた移送ローラ(2)(搬送装置)を介して所定の区間にわたって、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)を水平に搬送するステップと、
・油圧モータ(17)(回転駆動装置)によって搬送方向に対して横に位置する回転軸(11)(軸)をそれぞれ中心として各ガイダ(5)(サイドガイド要素)における複数のガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)を回転させ、当該回転軸(11)(軸)は、搬送方向に沿って水平に並べられているステップと、
を有し、少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)が油圧モータ(17)により回転され、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)にガイド板(13)の前面(接触面)が接触される少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)の周速度が、低速回転動作され(請求項5)、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)の搬送方向に対向する摩擦力がガイド部材(10)の前面(接触面)に生じる、方法。」
2 本件発明1の進歩性(特許法第29条第2項)
(1)本件発明1と甲1発明Aとの対比
ア 一致点
本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、本件発明1と甲1発明Aとは以下の点で一致する。
「ストリップ材料を搬送するための装置であって、
・所定の区間にわたって水平な搬送方向にストリップ材料を搬送するための搬送装置と、
・搬送装置の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素と、
・サイドガイド要素における複数の回転式の摩耗体であって、それぞれ搬送方向に対して横に位置する軸を中心として回転可能に支承され、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられているものと、
・前記軸を中心として少なくとも1つの摩耗体を回転させるための回転駆動装置と、
を有するものにおいて、
少なくとも1つの摩耗体が回転され、ストリップ材料に接触面が接触される少なくとも1つの摩耗体の周速度が、低速に設定され、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる、装置。」
イ 相違点
一方、本件発明1と甲1発明Aとは、以下の相違点Aで相違する。
<相違点A>
ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じることに関して、
本件発明1においては、少なくとも1つの摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整するための「回転数調整装置」が設けられており、「回転数調整装置」は、少なくとも1つの摩耗体が「連続的に」回転され、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」少なくとも1つの摩耗体の周速度が、「常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さい」ように設定されることで、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じるのに対して、
甲1発明Aにおいては、少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)が油圧モータ(17)により低速回転動作されるにあたり、目標回転数が設定されるのか、回転数を目標回転数に調整するための回転数調整装置が設けられているのか、連続的に回転されるのか、ガイド板(13)の前面(接触面)が圧延鋼板(1)に押し付けられるのか、ガイド部材(10)のガイド板(13)の周速度が、常に移送ローラ(2)上の圧延鋼板(1)の前進速度よりも小さいのか、不明である点。
(2)相違点に対する判断
上記相違点Aについて検討する。
甲5には、磨耗部材18、19、20を所望の回転位置に向けて順々に回転させ、複数の回転位置を経て12時間で1回転させる甲5発明Aが記載されている(上記第6の2(2)オ及び同(3)ア)。また、甲3及び甲4には、それぞれ、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」ことに相当する甲3~甲4記載の技術的事項が記載されている(上記第7の3(2)ア及びイ)。
そして、甲1発明Aと甲5発明A及び甲3~甲4記載の技術的事項とは、いずれも、属する技術分野が関連し、解決しようとする課題及び作用・機能が共通するともいえる。
しかしながら、甲1発明Aにおいて、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」ことを想到するために甲3記載の技術的事項を適用した場合には、上記第7の3(2)ウで述べたとおり、摩耗を抑えるために、ガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)の周速度を、移送ローラ(2)(搬送装置)上の圧延鋼板(1)(ストリップ材料)の前進速度と同期させることが併せて必要となる。そのため、本件発明1のように、少なくとも1つの摩耗体を、ストリップ材料の前進速度よりも小さい周速度とすることを想到するためには、さらなる改変(いわゆる、多段階の改変)が必要となるため、容易であったとはいえない。
また甲1発明Aに、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」ことを想到するために甲4記載の技術的事項を適用したとしても、上記第7の3(2)エで述べたとおり、連続的に、かつ、前進速度よりも小さい周速度にて回転するような目標回転数を設定したうえで、当該目標回転数となるように回転数を制御することを想到することは容易であるとはいえない。
そして、本件発明1は、上記第7の3(2)ウ~エで述べたとおり、接触面のストリップ材料への「押し付け力」と、ストリップ材料の前進速度よりも「小さい周速度」での「連続的な回転」とにより生じる接触面の摩擦力により、ストリップ材料にバックテンションを発生させることで、ストリップ材料の巻き品質を向上させるものであるところ、甲1発明A、並びに甲5発明A及び甲3~甲4記載の技術的事項には、そのような技術思想が記載も示唆もされていない。
(3)本件発明1についての小括
したがって、本件発明1は、甲1発明A、甲5発明A及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、申立人が証拠方法(第4の2)として提出した他の証拠(甲2及び甲7)を踏まえても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明12の進歩性(特許法第29条第2項)
(1)本件発明12と甲1発明Bとの対比
ア 一致点
本件発明12と甲1発明Bとを対比すると、本件発明12と甲1発明Bとは以下の点で一致する。
「ストリップ材料を搬送するための方法であって、
・搬送装置の少なくとも一方の側にサイドガイド要素を備えた搬送装置を介して所定の区間にわたってストリップ材料を水平に搬送するステップと、
・回転駆動装置によって搬送方向に対して横に位置する軸をそれぞれ中心として各サイドガイド要素における複数の摩耗体を回転させ、当該軸は、搬送方向に沿って水平に並べられているステップと、
を有し、少なくとも1つの摩耗体が回転され、ストリップ材料に接触面が接触される少なくとも1つの摩耗体の周速度が、低速に設定され、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる、方法。」
イ 相違点
一方、本件発明12と甲1発明Bとは、以下の相違点Bで相違する。
<相違点B>
ストリップ材料(圧延鋼板)の搬送方向に対向する摩擦力が接触面(ガイド板の前面)に生じることに関して、
本件発明12においては、回転数調整装置によって少なくとも1つの摩耗体の目標回転数又は所定の目標回転数への回転数変化を計算するステップ、及び、回転駆動装置において計算した目標回転数を設定する又は目標回転数を変更するステップを、それぞれ有し、少なくとも1つの摩耗体が「連続的に」回転され、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」少なくとも1つの摩耗体の周速度が、「常に、搬送装置上のストリップ材料の前進速度よりも小さい」ように設定されることで、ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じるのに対して、
甲1発明Bにおいては、少なくとも1つのガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)が油圧モータ(17)により低速回転動作されるにあたり、目標回転数が設定されるのか、回転数を目標回転数に調整するための回転数調整装置が設けられているのか、連続的に回転されるのか、ガイド板(13)の前面(接触面)が圧延鋼板(1)(ストリップ材料)に押し付けられるのか、ガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)の周速度が、常に移送ローラ(2)(搬送装置)上の圧延鋼板(1)(ストリップ材料)の前進速度よりも小さいのか、不明である点。
(2)相違点に対する判断
上記相違点Bについて検討する。
相違点Bは、実質的に相違点A(上記2(1)イ)と同様であって、上記2(2)と同様の理由により、甲1発明B、甲5発明B及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、相違点Bに係る本件発明12の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(3)本件発明12についての小括
したがって、本件発明12は、甲1発明B、甲5発明B及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、申立人が証拠方法(第4の2)として提出した他の証拠(甲2及び甲7)を踏まえても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第9 申立人が主張するその他の申立ての理由について
申立人による申立ての理由(上記第4の1)のうち、上記第6~第8にて検討した以外の、その他の申立ての理由について、以下検討する。
1 上記第6~第8にて検討した以外の申立ての理由
(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項2~11、13~19)
(2)甲5に記載された発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項2~11、13~19)
(3)サポート要件違反(請求項1~19)
(4)明確性要件違反(請求項1~19)
2 上記1の申立て理由に対する検討
(1)甲1発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項2~11、13~19)
ア 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明Aとを対比すると、両者は、少なくとも、次の相違点Cで相違する。
<相違点C>
本件発明2においては、ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であるのに対し、
甲1発明Aにおいては、当該センサを有するか不明であり、ガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)を低速回転動作される際に、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)の前進速度や移送ローラ(2)のローラ回転速度を基準値として定めるものではない点。
(イ)相違点に対する判断
当該相違点Cに係る本件発明2の発明特定事項は、甲1発明Aから導き出すことのできる事項とはいえず、また、甲2~甲5、甲7に記載された事項であるともいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明2は、甲1発明A及び甲2~甲5、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
イ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲1発明Aとを対比すると、両者は、少なくとも、次の相違点Dで相違する。
<相違点D>
本件発明3においては、回転数調整装置は、巻き品質を改善するために、摩耗体の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されているのに対し、
甲1発明Aにおいては、ガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)の交換の頻度を低減させるために、ガイド部材(10)のガイド板(13)(摩耗体)を低速回転動作させるものであって、圧延鋼板(1)(ストリップ材料)のストリップ張力に依存して変更するものではない点。
(イ)相違点に対する判断
当該相違点Dに係る本件発明3の発明特定事項は、甲1発明Aから導き出すことのできる事項とはいえず、また、甲2~甲5、甲7に記載された事項であるともいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明3は、甲1発明A及び甲2~甲5、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
ウ 本件発明13、14について
本件発明13、14についても、上記ア、イと同様の理由により、甲1発明B及び甲2~甲5、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項13、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
エ 本件発明4~11、15~19について
請求項2又は3の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明4~11、及び、請求項13又は14の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明15~19についても、上記ア~ウと同様の理由により、甲1発明A又はB、及び甲2~甲5、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項4~11、15~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)甲5発明を主引用発明とする新規性・進歩性の欠如(請求項2~11、13~19)
ア 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲5発明Aとを対比すると、両者は、少なくとも、次の相違点9で相違する。
<相違点9>
本件発明2においては、ローラテーブル上のストリップ材料の前進速度用あるいはこれに比例したローラ回転速度用のセンサを有し、回転数調整装置の基準値が、前進速度又はローラ回転速度であるのに対し、
甲5発明Aにおいては、当該センサを有するか不明であり、磨耗部材18、19、20(摩耗体)の回転が12時間で1回転されるものであって、金属ストリップ13(ストリップ材料)の前進速度や圧延スタンド8、9のローラ回転速度を基準値として定めるものではない点。
(イ)相違点に対する判断
当該相違点9に係る本件発明2の発明特定事項は、甲5発明Aから導き出すことのできる事項とはいえず、また、甲1~甲4、甲7に記載された事項であるともいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明2は、甲5発明A及び甲1~甲4、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
イ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲5発明Aとを対比すると、両者は、少なくとも、次の相違点10で相違する。
<相違点10>
本件発明3においては、回転数調整装置は、巻き品質を改善するために、摩耗体の目標回転数が、ストリップ張力に依存して変更されるように設定されているのに対し、
甲5発明Aにおいては、磨耗部材18、19、20(摩耗体)の交換の頻度を低減させるために、磨耗部材18、19、20(摩耗体)の回転が12時間で1回転されるものであって、金属ストリップ13のストリップ張力に依存して変更するものではない点。
(イ)相違点に対する判断
当該相違点10に係る本件発明3の発明特定事項は、甲5発明Aから導き出すことのできる事項とはいえず、また、甲1~甲4、甲7に記載された事項であるともいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明3は、甲5発明A及び甲1~甲4、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
ウ 本件発明13、14について
本件発明13、14についても、上記ア、イと同様の理由により、甲5発明B及び甲1~甲4、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項13、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
エ 本件発明4~11、15~19について
請求項2又は3の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明4~11、及び、請求項13又は14の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明15~19についても、上記ア~ウと同様の理由により、甲5発明A又はB、及び甲1~甲4、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項4~11、15~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(3)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)違反について
申立人は、申立書において、以下のア~イの点について、発明の詳細な説明に記載された事項の範囲を超えて特許を請求するものである旨主張するが、決定の予告でも説示したように、以下のとおり、理由がない。
ア「サイドガイド要素(5)」(請求項1、12)について(申立書74/79~75/79ページ)
請求項1において、「搬送装置(1)の少なくとも一方の側に配置されたサイドガイド要素(5)」と発明を特定するものの、本件の明細書の発明の詳細な説明においては、サイドガイド要素(5)が搬送装置(1)の両側に配置された実施形態のみが記載されており、一側のみに配置されている実施形態は記載されていない旨、主張する。
しかしながら、「サイドガイド要素(5)」は、金属ストリップの横方向の位置ズレをできるだけ僅かに保ち、横方向の位置合わせをするためのものであり(段落【0002】)、金属ストリップの両側に配置される方がより位置合わせの性能が向上することは自明であるものの、一側のみであっても「サイドガイド要素(5)」がないよりは横方向の位置合わせの性能が向上するといえ、また本件訂正の訂正事項4~5、16~17により特定される「ストリップ材料に接触面が押し付けられる少なくとも1つの摩耗体(6)」によって「ストリップ材料の搬送方向に対向する摩擦力が接触面に生じる」ようにし、ストリップ材料と接触面との間に発生する摩擦力によってストリップ材料にバックテンションを発生させることで、ストリップ材料の巻き品質を向上させることができる(段落【0015】、【0020】、【0024】)から、「少なくとも一方の側」と特定したことをもって直ちに発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求するものである、とまではいえない。
イ「摩耗体(6)の周速度」(請求項1、12)について(申立書75/79~76/79ページ)
請求項1において、「回転数調整装置(7)は、・・・ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定されている」と発明を特定するところ、形式的には周速度がゼロである場合も含み、本件の明細書の発明の詳細な説明には当該実施形態は記載されておらず、その場合、解決しようとする課題を解決できるものとはいえない旨、主張する。
しかしながら、請求項1には「回転駆動装置(13)」が摩耗体を回転させ、「回転数調整装置(7)」が「摩耗体の回転数を所定の目標回転数に調整する」ことが特定されており、当該「回転駆動装置(13)」及び「回転数調整装置(7)」を有する以上、周速度が常にゼロであることを特定する発明でないことは明らかであるから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求するものである、とまではいえない。
ウ サポート要件についての小括
したがって、本件発明1~19は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、とはいえない。
(4)明確性要件(特許法第36条第6項第2号)違反について
申立人は、申立書において、以下のア~ウの点が明確でない旨主張するが、決定の予告でも説示したように、以下のとおり、理由がない。
ア 「回転数調整装置(7)」(請求項1、12)について(申立書76/79~77/79ページ)
請求項1において、「回転数調整装置(7)は、・・・ストリップ材料と接触中の少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、搬送装置(1)上のストリップ材料の前進速度よりも小さいように設定されている」と発明を特定するところ、どのようにしてストリップ材料の前進速度の情報を取得するのかが不明確である旨、主張する。
しかしながら、請求項1には、単に少なくとも1つの摩耗体(6)の周速度が、常に、ストリップ材料の前進速度よりも小さいことが特定されるのみであって、ストリップ材料の前進速度の情報を取得することを特定する発明ではないことは明らかである(当該情報を取得するのは、請求項2に係る発明である。)。
イ 「巻き品質を改善する」(請求項3、14)について(申立書77/79ページ)
取消理由通知に対して、権者意見書1の(6)ア(第15~17ページ)にて説明されるように、本件明細書の段落【0002】、【0010】、【0016】、【0034】等の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとの特段の事情も見受けられない。
ウ 「整備予測装置」(請求項10、19)について(申立書77/79~78/79ページ)
取消理由通知に対する権者意見書1の(6)イ(第17ページ)の説明によれば、「整備予測装置」が「ストリップ材料を搬送するための装置」に含まれるものであって、当該解釈以外に他意はないことが明らかになった。
エ 明確性要件についての小括
したがって、本件発明1、3、10、12、14、19(及びこれらの請求項の記載を引用する各本件発明)は、明確であるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、とはいえない。
(5)その他の申立ての理由についての小括
よって、上記第6~第8以外の、申立書におけるその他の申立の理由によっても、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
第10 申立人意見書2における申立人の主張について
1 申立人の主張
申立人は、申立人意見書2にて、次の点を主張する。
(1)訂正事項5、17の訂正要件違反について
本件明細書等の段落【0015】では、「ストリップの搬送方向に対抗する摩擦力」と記載されているのに対し、訂正後の請求項1、12では「ストリップの搬送方向に対向する摩擦力」と記載される。「対抗」と「対向」とは意味が異なり、そのため、文言どおりに解釈すると、接触面に加わる摩擦力の方向が反対となるから、本件発明1、12の上記事項は、本件明細書等には記載されておらず、また自明な事項であるともいえない(3(1)ア~イ(1~3ページ))。
(2)甲5発明の認定について
甲5において、「12時間かけて一周する磨耗部材のゆっくりとした逐次の回動が、その12時間の間に多数の回動位置が順番に占められていく」にあたって、決定の予告での認定における「休みを入れることなく次の回動位置へとさらに回動され」る態様は、磨耗部材が、各回動位置で回動を中断することなく、連続的に回動する態様であるから、甲5発明A及びBの認定に誤りはない(3(2)ア(3~4ページ)、3(2)イ(イ)a~b(5ページ)、3(2)ウ(イ)b(14ページ))。
(3)本件発明1、12における、「水平」に搬送、及び「水平」に並べられているについて
甲5発明A及びBにおいて、ループリフタ4が、ストリップが水平になる位置まで下降可能であることは、甲7に示されるように技術常識である(3(2)イ(イ)c(5~8ページ))。
また、甲5発明A及びBにおいて、磨耗部材の回転軸が「搬送方向に沿って水平に並べられている」とは、
ア 各々の軸が、それぞれ水平に配置
イ 全ての軸が、共通の水平面上に配置
の解釈が可能であり、アであれば、甲5発明A及びBに記載される。また、イであっても、甲1や甲4に記載される周知技術から容易に想到し得たことである(3(2)イ(イ)d(8~9ページ))。
(4)本件発明1、12における「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」について
本件明細書等の段落【0036】、【0047】では、ストリップの横方向の位置を調整する基準値として「摩擦体6をローラテーブル1上のストリップ材料4に押し付ける力」を使うとの文脈のみで記載されることから、甲5発明A及びBと実質的な相違があるとはいえない(3(2)イ(イ)e(10~11ページ))。
また、甲1発明Aについて、圧延鋼板(1)が側方に逸れたときだけ接触するものであるとの特許権者の認定は誤りであり、実質的な相違があるとはいえない(3(2)ウ(イ)a(13~14ページ)、3(2)ウ(イ)c(14~15ページ))。
2 申立人の主張の検討
(1)上記1(1)の点についてみると、上記第2の4(5)イで検討したように、特許請求の範囲における「対向」との記載は、発明の詳細な説明における「対抗」とは漢字の表記が異なるものの、当該発明特定事項は、ストリップに対してストリップの搬送方向とは反対の方向に摩擦力が生じることを意味することは明らかであり、技術常識に照らしても、それ以外の意味に解釈することはできない。
(2)上記1(2)の点についてみると、上記第6の2(2)オで検討したように、決定の予告から修正した同2(1)エ及びキの日本語訳のとおり、甲5には、「磨耗部材が回転により到達した所望の回転位置に固定され得るが、さらなる回転によりその先の回転位置へ回転させてもよい。」、「複数の回転位置は12時間かけて順々に取られる。」点が記載されるものの、所望の回転位置を通過してまで連続的に回転することが、開示されているとはいえない。
(3)上記1(3)に点についてみると、当該事項は、相違点1(上記第6の3(1)ウ(ア))、相違点5(上記第6の4(1)ウ(ア))に関連するところ(なお、「搬送方向に沿って水平に並べられている」は、上記1(3)イと認定することが妥当である。)、上記第7の3(3)、同4(3)のとおり、当該相違点の検討をするまでもなく、本件発明1、12は、甲5発明A及びB、甲1~甲4、甲7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)上記1(4)の点についてみると、「ストリップ材料に接触面が押し付けられる」構造は、発明の詳細な説明を参酌すれば、段落【0036】に記載されるように、摩耗体の進出位置を調整するための位置調整装置9により位置決め駆動装置14を駆動して摩耗体を進出させてストリップ材料に押し付けるものであるといえる。一方、甲1及び甲5には、そのような摩耗体の進出位置を調整ないし駆動する装置については、記載も示唆もない。
なお、甲3~甲4には、摩耗体の進出位置を調整ないし駆動することで摩耗体をストリップ材料に押し付けることに相当する技術が開示されているといえるものの、容易想到性の判断については、上記第7~8にて検討したとおりである。
3 小括
したがって、申立人が申立人意見書2で主張する点を検討したものの、上記第6~9の判断のとおりであり、当該主張は採用することができない。
第11 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~19に係る特許は、決定の予告に示した理由及び申立書における申立ての理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700086