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特許異議申立

2023-701401

中間金属製品のグループからの最終金属製品のグループの製造を制御するための方法および電子デバイス、関連するコンピュータプログラム、製造方法および設備

審判番号
2023-701401
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-535030
登録番号
7301968
請求日
2023年12月28日
審決日
2024年12月05日
公報発行日
2025年03月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アルセロールミタル
  • 【権利者代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
  • 【異議申立人】国分 信宏
審判長/審判官
  • 審判長 本庄 亮太郎
  • 審判官 鈴木 貴雄
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.113-YAA(B21B) / P1651.121-YAA(B21B) / P1651.536-YAA(B21B) / P1651.537-YAA(B21B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7301968号発明「中間金属製品のグループからの最終金属製品のグループの製造を制御するための方法および電子デバイス、関連するコンピュータプログラム、製造方法および設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7301968号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~18〕について訂正することを認める。 特許第7301968号の請求項1、5~10、12~18に係る特許を維持する。 特許第7301968号の請求項2~4、11に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許掲載公報の発行までの経緯 特許第7301968号(以下「本件特許」という。)の請求項1~18に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月18日を国際出願日とする国際特許出願であって、令和5年6月23日にその特許権の設定登録がされ、同年7月3日に特許掲載公報が発行された。 2 特許異議の申立て以降の経緯 本件特許に対する特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。 (1)令和5年12月28日(受理日:令和6年1月4日) 特許異議申立人 国分 信宏(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を以下単に「申立書」という。) (2)令和6年4月23日付け(発送日:同年5月8日) 取消理由の通知 (以下「取消理由通知」という。) (3)令和6年8月5日 特許権者 アルセロールミタル(以下「特許権者」という。)による、訂正の請求(請求された訂正を以下「本件訂正」といい、本件訂正のために提出された訂正請求書を以下単に「訂正請求書」という。)、及び意見書(以下「権者意見書」という。)の提出 (4)令和6年10月3日(受理日:同月4日) 申立人による、意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容について 特許権者は、本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~18について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。 <請求項1~16について> (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「 計算するステップ(150)が、 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップ(170)と を含み、」 という記載を追記する。 (請求項1の記載を引用する請求項5~10、12~16も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「 最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、」 という記載を追記する。 (請求項1の記載を引用する請求項5~10、12~16も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、 「 計算するステップ(150)が、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算される、」 という記載を追記する。 (請求項1の記載を引用する請求項5~10、12~16も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5における 「請求項1、3および4のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1に記載」 と訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項6~10、12~16も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9における 「請求項1から8のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1および5から8のいずれか一項に記載」 と訂正する。 (請求項9の記載を引用する請求項10、12~16も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10における 「請求項1から9のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1および5から9のいずれか一項に記載」 と訂正する。 (請求項10の記載を引用する請求項12~16も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12における 「請求項1から11のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1および5から10のいずれか一項に記載」 と訂正する。 (請求項12の記載を引用する請求項13~16も同様に訂正する。) (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13における 「請求項1から12のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1、5から10および12のいずれか一項に記載」 と訂正する。 (請求項13の記載を引用する請求項14~16も同様に訂正する。) (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項15における 「請求項1から14のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1、5から10および12から14のいずれか一項に記載」 と訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項16における 「請求項1から14のいずれか一項に記載」 との記載を、 「請求項1、5から10および12から14のいずれか一項に記載」 と訂正する。 <請求項17~18について> (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項17に、 「 最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、」 という記載を追記する。 (請求項17の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。) (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項17における 「計算モジュール(38)と」 との記載を、 「計算モジュール(38)であって、 計算モジュール(38)における計算するステップ(150)が、 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップ(170)と、」 と訂正する。 (請求項17の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。) (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項17に、 「 中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算する、計算モジュール(38)と、」 という記載を追記する。 (請求項17の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。) 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~16については、請求項2~16がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、本件訂正前の請求項17~18については、請求項18が請求項17の記載を引用する関係にあって、訂正事項15~17によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~16〕、〔17~18〕ごとに請求をするものである。 3 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~17に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件(すなわち、訂正後の請求項1~18に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件)は課されない。 4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について <一群の請求項1~16について> (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において特定される「計算するステップ(150)」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載に基づくものであって、「少なくとも1つ」との記載(3箇所)を「複数」と特定することで、「1つ」を含まないようにさらに限定するものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項1において特定される「最終金属製品(6)のグループ」及び「中間金属製品(8)のグループ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載に基づくものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項1において特定される「計算するステップ(150)」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載に基づくものであって、「少なくとも1つ」との記載(1箇所)を「複数」と特定することで、「1つ」を含まないようにさらに限定するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項3は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4~6及び10 ア 訂正の目的について 訂正事項4~6及び10は、それぞれ、訂正前の請求項2~4及び11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項4~6及び10は、上記アのとおり、訂正前の請求項2~4及び11を削除するものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5)訂正事項7~9及び11~14 ア 訂正の目的について 訂正事項7~9は、訂正事項4~6により訂正前の請求項2~4を削除することに伴い、請求項5、9及び10における引用請求項から請求項2~4を除いて記載を整合させるものであり、訂正事項11~14は、訂正事項4~6及び10により訂正前の請求項2~4及び11を削除することに伴い、請求項12~13及び15~16における引用請求項から請求項2~4及び11を除いて記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項4~9及び11~14は、上記アのとおり、訂正事項4~6及び10による請求項2~4及び11の削除に伴い、請求項5、9、10、12~13、15~16における引用請求項から請求項2~4及び11を単に除くものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 <一群の請求項17~18について> (6)訂正事項15~17 ア 訂正の目的について 訂正事項15における、「中間金属製品のグループからの最終金属製品のグループの製造を制御するための電子制御デバイス(10)」の発明に係る請求項17についての訂正は、訂正事項2における「中間金属製品のグループからの最終金属製品のグループの製造を制御するための方法」の発明に係る請求項1についての訂正と、実質的に同様の事項で限定して訂正するものであり、以下同様に、訂正事項16は訂正事項1と、訂正事項17は訂正事項3と、それぞれ実質的に同様の事項で訂正するものであるから、訂正事項15~17は、上記(1)~(3)の各アと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項15~17は、上記アのとおり、それぞれ訂正事項2、1、3と実質的に同様の事項にて訂正するものであるから、訂正事項15~17は、上記(1)~(3)の各イ及び各ウと同様の理由により、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 5 小括 上記4(1)~(6)のとおり、訂正事項1~17に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~18〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明18」という。なお、請求項2~4及び11は削除された。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 中間金属製品(8)のグループからの最終金属製品(6)のグループの製造を制御するための方法であって、制御方法は、電子制御デバイス(10)によって実施され、各中間金属製品(8)について、以下のステップ、 - 前記中間金属製品(8)に関する中間特性(CIP)のセットを得るステップ(110)、 - 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からのそれぞれの現行製造ルートに従って、現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットを決定するステップ(120)、 - それぞれの現行の最終金属製品(6)について、現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットを現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットと比較するステップ(130)を含み、 現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットと現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットの間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合には、方法は、以下のステップ、 - それぞれの新規の最終金属製品(6)について、少なくとも1つの新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットを取得するステップ(140)と、 - 中間特性(CIP)のセットに従って、および少なくとも1つの新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットに従って、前記中間金属製品(8)からの新規製造ルートを計算するステップ(150)と をさらに含み、 各製造ルートが、1つまたはいくつかの変換動作を含み、各変換動作は、熱間圧延、冷間圧延、酸洗い、焼鈍、スキンパス、電気亜鉛めっき、およびコーティングから成るグループの中から選ばれるものであり、 計算された新規製造ルートの一連の変換動作は、異なるタイプの変換動作および/または異なる製造パラメータを用いる変換動作による対応する現行製造ルートの一連の変換動作とは異なり、 計算するステップ(150)が、 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップ(170)と を含み、 最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、 計算するステップ(150)が、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算される、 方法。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 計算するステップ(150)が、 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの少なくとも1つの可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、少なくとも1つの新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、少なくとも1つの可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを新規製造ルートとして選択するステップ(170)とを含み、 選択するステップ(170)が、中間金属製品(8)のグループについて、新規に推定された最終特性のセットを新規目標の最終特性のセットと比較するステップを含み、選択される新規製造ルートは、新規に推定された最終特性のセットと新規目標の最終特性のセットの間の最小の差に対応するものである、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 計算するステップ(150)が、各それぞれの新規製造ルートについて、新規に推定された最終特性のセットを、前記新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットと比較することによって、一元的なコストを評価するステップを含む、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 計算するステップ(150)が、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の少なくとも1つの対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算され、 計算するステップ(150)が、評価された一元的なコストからの、および算出された対のそれぞれのコレクションに関する、全体的なコストを評価するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 計算するステップ(150)が、 + 算出された対の別個のコレクションを精巧に作るステップであって、それぞれの全体的なコストが、算出された対の各精巧に作られたコレクションについて評価される、ステップと、 + 最小の全体的なコストを有する算出された対の精巧に作られたコレクションを選択し、次いで、算出された対の選択されたコレクションについて新規製造ルートのリストが計算されるステップと をさらに含む、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 各特性が、製品の寸法に関する特性、製品の化学組成に関する特性、製品の鋼種、製品の機械的性質に関する特性、製品の表面形態に関する特性、製品のコーティングに関する特性、製品の化学的表面処理に関する特性、製品の粗度に関する特性、および製品の欠陥学に関する特性から成るグループの中から選ばれる、請求項1および5から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 特性の各セットが、金属製品の降伏強度(YS)および/または金属製品の最高引張り強度(UTS)を含む、請求項1および5から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 各中間金属製品(8)が、スラブ(SB)、熱間圧延製品(HR)、および冷間圧延製品(CR)から成るグループの中から選ばれる、請求項1および5から10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項13】 各最終金属製品(6)が、対応する中間金属製品(8)からの少なくとも1つの変換動作から生じる金属製品である、請求項1、5から10および12のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 各最終金属製品(6)が、熱間圧延製品(HR)、冷間圧延製品(CR)、電解コーティング製品(EG)、溶融めっきコーティング製品(HD)、有機コーティング製品(OC)、重量板(HP)、および厚板(TP)から成るグループの中から選ばれる、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 プロセッサによって実行されたときに、請求項1、5から10および12から14のいずれか一項に記載の方法を実施するソフトウェア命令を含む、コンピュータプログラム。 【請求項16】 中間金属製品(8)のグループから最終金属製品(6)のグループを製造するための方法であって、以下のステップ、 - 少なくとも1つの中間金属製品(8)からの少なくとも1つの新規製造ルートを計算するステップ、 - 対応する中間金属製品(8)に対して各計算された新規製造ルートを適用するステップ を含み、 計算するステップが、請求項1、5から10および12から14のいずれか一項に記載の方法を用いて実施される、方法。 【請求項17】 中間金属製品(8)のグループからの最終金属製品(6)のグループの製造を制御するための電子制御デバイス(10)であって、 最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、 - 各中間金属製品(8)に関する中間特性(CIP)のセットを得るように構成された獲得モジュール(30)と、 - 各中間金属製品(8)について、少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からのそれぞれの現行製造ルートに従って、現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットを決定するように構成された決定モジュール(32)と、 - 各中間金属製品(8)について、現行の推定された最終特性のセットを、それぞれの現行の最終金属製品(6)に関する現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットと比較するように構成された比較モジュール(34)と、 - 各中間金属製品(8)について、現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットと現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットの間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合には、それぞれの新規の最終金属製品(6)に関する少なくとも1つの新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットを取得するように構成された取得モジュール(36)と、 - 中間特性(CIP)のセットに従って、および少なくとも1つの新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットに従って、前記中間金属製品(8)からの新規製造ルートを計算するように構成された計算モジュール(38)であって、 計算モジュール(38)における計算するステップ(150)が、 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップ(170)と、 中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算する、計算モジュール(38)と を備え、 各製造ルートが、1つまたはいくつかの変換動作を含み、各変換動作が、熱間圧延、冷間圧延、酸洗い、焼鈍、スキンパス、電気亜鉛めっき、およびコーティングから成るグループの中から選ばれるものであり、 計算された新規製造ルートの一連の変換動作は、異なるタイプの変換動作および/または異なる製造パラメータを用いる変換動作による対応する現行製造ルートの一連の変換動作とは異なる、 電子制御デバイス(10)。 【請求項18】 最終金属製品(6)のグループを送達するための設備(2)であって、 - 中間金属製品(8)のグループから最終金属製品(6)のグループを製造するための製造ライン(4)と、 - 中間金属製品(8)のグループからの最終金属製品(6)のグループの製造を制御するための電子制御デバイス(10)と を備え、 電子制御デバイス(10)が、請求項17に記載の電子制御デバイス(10)である、設備(2)。」 第4 申立人が主張する申立ての理由の概要 1 申立書における申立ての理由について 申立人による申立ての理由は、次のとおり整理することができる。 (1)申立ての理由1:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号) 請求項1~10、12~18(申立書第1~12、20~71、74~76ページ) (2)申立ての理由2:特許法第29条第2項(同法第113条第2号) 請求項1~18(申立書第1~12、20~71、74~76ページ) (3)申立ての理由3:特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号) 請求項11(申立書第12、72~73、76ページ) (4)申立ての理由4:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号) 請求項11(申立書第12、73~74、76ページ) (5)申立ての理由5:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号) 請求項6~8、11(申立書第12、71~72、74、76ページ) 2 証拠方法 申立人による証拠方法は、書証として申立書に添付した、次の甲第1号証~甲第5号証である。 (1)甲第1号証:特表2007-504355号公報 (2)甲第2号証:特開2002-161316号公報 (3)甲第3号証:特開2005-59070号公報 (4)甲第4号証:特開2005-182769号公報 (5)甲第5号証:意見書(本件特許に係る出願において、令和4年11月29日に提出されたもの。) (「甲第1号証」~「甲第5号証」を、以下それぞれ「甲1」等という。) 第5 当審より通知した取消理由の概要 取消理由通知における、本件訂正前の請求項1~18に係る特許に対する取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1 (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記第6の1(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由2 (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記第6の2(1)ア~エの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由3 (新規性)本件特許の請求項1、3~4、9~10、12~18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲1に記載された発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1、3~4、9~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 4 取消理由4 (進歩性)本件特許の請求項1~10、12~18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項)に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~10、12~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 本件訂正後の取消理由の有無について 本件訂正後の本件特許について、取消理由通知にて示した取消理由1~4(上記第5)を有するか、以下検討する。 1 取消理由1(実施可能要件)について (1)本件訂正前の請求項11の記載に対して通知した取消理由 請求項11に記載された「以下のサブステップ、すなわち、新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットは、まず最初の、暫定的な最終特性(Cest_prov)のセットをもたらす大まかな推定と、次いで、補足的な変換動作を考慮に入れることにより、それより新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットをもたらす推定の改良とを伴う、2段階の処理によって決定されることを含み、補足的な変換動作のクラスタおよび事前定義された中間製造ルートがそれぞれの可能な製造ルートを定義する」とのサブステップが、具体的にどのようなステップであるのか、当業者が発明を実施することができる程度に発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていない。 (2)本件訂正後の本件明細書等に基づく判断 本件訂正により請求項11は削除されたことから、取消理由1により本件特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(明確性)について (1)本件訂正前の請求項6~8、11の記載に対して通知した取消理由 ア 請求項6に記載された「計算するステップ(150)が、各それぞれの新規製造ルートについて、新規に推定された最終特性のセットを、前記新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットと比較することによって、一元的なコストを評価するステップを含む」との事項に関して、本件明細書等を参酌しても、具体的にどのようなステップであるのか明確に把握できない。 すなわち、段落【0085】に、請求項の記載と同様の文言の記載があるのみで、「一元的なコスト」が何を意味するのか具体的な説明がなく、その「一元的なコスト」を、「新規に推定された最終特性のセットを、前記新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットと比較することによって」評価するとのステップは、どのような処理を意味するのか不明である。 イ 請求項7に記載された「計算するステップ(150)が、評価された一元的なコストからの、および算出された対のそれぞれのコレクションに関する、全体的なコストを評価するステップをさらに含む」との事項に関して、上記アのとおり「一元的なコスト」が何を意味するのかが不明確であることに加えて、「全体的なコスト」についても何を意味するのか不明であり、「一元的なコスト」と「全体的なコスト」がどのような関係にあるのかについても、本件明細書等を参酌しても、明確に把握できない。 ウ 請求項8に記載された「+ 算出された対の別個のコレクションを精巧に作るステップであって、それぞれの全体的なコストが、算出された対の各精巧に作られたコレクションについて評価される、ステップと、+ 最小の全体的なコストを有する算出された対の精巧に作られたコレクションを選択し、次いで、算出された対の選択されたコレクションについて新規製造ルートのリストが計算されるステップ」との事項は、本件明細書等、及び、本件特許の審査段階において提出された意見書(甲5)を参酌しても、具体的にどのような処理であるのか明確に把握できない。 すなわち、当該発明特定事項については、段落【0088】、【0130】に、請求項の記載と同様の文言の記載があるのみである。また、甲5には、「算出された対の別個のコレクション」との記載について、「コレクション」との用語は「セット」との用語と等価である旨が主張されている。しかしながら、当該主張を参酌しても、「算出された対」に対する「別個のコレクション(セット)」とは、具体的に何を意味するのかが把握できないし、当該別個のコレクション(セット)を、「精巧に作る」とは、どのような処理を意味しているのか把握できない。また、「最小の全体的なコストを有する算出された対の精巧に作られたコレクションを選択し、次いで、算出された対の選択されたコレクションについて新規製造ルートのリストが計算されるステップ」との処理も、具体的にどのような処理であるか把握できない。 エ 請求項11に記載された「以下のサブステップ、すなわち、新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットは、まず最初の、暫定的な最終特性(Cest_prov)のセットをもたらす大まかな推定と、次いで、補足的な変換動作を考慮に入れることにより、それより新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットをもたらす推定の改良とを伴う、2段階の処理によって決定されることを含み、補足的な変換動作のクラスタおよび事前定義された中間製造ルートがそれぞれの可能な製造ルートを定義する」とのサブステップにはついて、上記1(1)のとおり、「1つの新規目標の最終特性Ctarget_newのセットに従って、暫定的な最終特性Cest_provのセットをフィルタリングする」こと、及び「補足的変換措置のクラスタに従って、それぞれの新規に推定された最終特性Cest_newのセットを確立する」ことが具体的にどのような処理であるのか、本件明細書等を参酌しても、明確に把握することができない。 (2)本件訂正後の特許請求の範囲に基づく判断 ア 上記(1)アについてみると、権者意見書によれば、「コスト」の概念は、最適化問題において当業者によく知られているものであり、請求項6に記載の「一元的なコスト」とは、各それぞれの新規製造ルートに関連するコストであって、新規に推定された最終特性のセットを、新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットと比較することによって評価されるものであり、すなわち、新規に推定された最終特性のセットと、新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットとの差異によるものと説明される。 本件特許の技術分野において、「コスト」の概念が最適化問題として当業者によく知られていることは、申立人が証拠方法として提出した甲1(下記3(1)イ(ア)を参照)からも理解でき、また、権者が本件特許においてもその概念から他意がないことを説明していると理解される。 また、本件訂正後の請求項6が間接的に記載を引用する請求項1の記載を踏まえれば、「各それぞれの新規製造ルートに関連するコスト」とは、「中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対」として各算出された対に関して計算される「それぞれの新規製造ルート」について、新規に推定された最終特性のセットと、新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットとの差異を用いた統一的な方式で一元的に算出されるものと理解され、本件発明6は、その差異による一元的なコストを評価するステップを含むものであると理解できる。 すなわち、例えば、「中間金属製品(8)」がP=2個の中間金属製品A・中間金属製品Bを、「最終金属製品(6)」がN=2個の最終金属製品a・最終金属製品bをそれぞれ含むとした場合には、複数の対として、 中間金属製品Aと最終金属製品aとの対、及び、 中間金属製品Bと最終金属製品bとの対 又は、 中間金属製品Aと最終金属製品bとの対、及び、 中間金属製品Bと最終金属製品aとの対 が挙げられる。 この場合、それぞれの対について、新規製造ルートが計算され、それぞれの新規に推定された最終特性のセットと、新規製造ルートに関する新規目標の最終特性のセットとの差異により、次のように、各一元的なコストα~δが評価されると理解される。 中間金属製品Aと最終金属製品aとの対・・・一元的なコストα 中間金属製品Bと最終金属製品bとの対・・・一元的なコストβ 中間金属製品Aと最終金属製品bとの対・・・一元的なコストγ 中間金属製品Bと最終金属製品aとの対・・・一元的なコストδ イ 上記(1)イについてみると、権者意見書によれば、請求項7に記載の「全体的なコスト」とは、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の対のそれぞれのコレクションに関連するコストであり、この全体的なコストは、対のコレクションの一元的なコストから評価され、すなわち、コレクションの各対について得られた一元的なコストから評価されるものと説明される。 すなわち、全体的なコストとは、上記アの各対の一元的なコストに基づいて、対のコレクション(セット)での全体的なコストが評価されるものであって、上記アの例の場合、次の全体的なコストε又はコストζが評価されると理解される。 全体的なコストε・・・一元的なコストαと一元的なコストβ、又は、 全体的なコストζ・・・一元的なコストγと一元的なコストδ ウ 上記(1)ウについてみると、権者意見書によれば、請求項8に記載の「算出された対の別個のコレクション」とは、中間金属製品と新規の最終金属製品の対の別のセットのことであり、「別個のコレクションを精巧に作る」とは、中間金属製品と新規の最終金属製品の対のセットの生成が、例えば、中間製品と最終製品の対の全ての可能な組み合わせの中から擬似ランダムに選択すること、または、中間製品と最終製品の対の全ての可能な組み合わせを網羅的に有することと説明される。 すなわち、上記アの例の場合、次の全体的なコストεに対しては、全体的なコストζが別個のコレクションであると理解される。さらに、「中間金属製品(8)」の個数P、及び、「最終金属製品(6)」の個数Nが、それぞれ2を大きく超える場合には、組合せの中には対にするには適さない(ある中間金属製品からある最終金製品を製造するには適さない)組合せが存在し得ることも当業者であれば当然に推察されるところ、それらの組合せを除いた合理的な組合せを作ること等も、「精巧に」が原語明細書における「elaborate」の訳語であって入念であることを含意するとしても日本語として不自然でないから、「別個のコレクションを精巧に作る」ことの一例に含まれることが当審合議体において理解される。 エ してみると、上記(1)ア~ウの点は、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書等の記載を考慮し、また、本件特許の出願当時における当業者の技術常識を基礎として判断すれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまでいうことはできない。 オ また、上記(1)エについてみると、本件訂正により請求項11は削除された。 カ したがって、取消理由2(上記(1)ア~エ)により、本件特許を取り消すことはできない。 3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について (1)本件発明1について ア 本件発明1の認定 本件発明1は、上記第3に示した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 イ 甲1に記載された発明の認定 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、次の事項が図面とともに記載される(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 a 発明の詳細な説明 「【0001】 本発明は、組織最適化の計算プログラムにより決定される設備の運転パラメータによって影響され組織に依存する定められた材料特性を有する鋼の製造設備の制御方法に関する。 【0002】 鋼は顧客によって望まれた材料特性を有するように製造されなければならない。鋼の重要な材料特性は例えば引張強さ、弾性限界および伸び率である。これらの材料特性は、鋼が例えば車体板金または飲料缶の製造時に深絞り用として用いられる場合には重要である。 ・・・ 【0005】 設定に相応する鋼を生産するためには、更に、定められた運転パラメータを守ることが必要である。これらの運転パラメータには、溶解、鋳造、加熱、圧延および冷却の各段階の目標値が含まれる。これらは例えば温度、圧力、速度またはそれらの時間的変化である。 【0006】 1つの成分の定められた量割合の目標値または運転パラメータの目標値は、ターゲット値と下限値および上限値とからなり、下限値と上限値との間に許容範囲が存在する。 ・・・ 【0008】 しかしながら、実際上、生産からの実際値は製造プロセスの目標値から常にはずれている。連続ステップにおいては、要求された材料特性、例えば引張強さの最小値が達成されるように、生産ステップの実際値の偏差に対して反対動作が行なわれなければならない。この最小値がもはや達成できない場合には、当該鋼材料(溶湯、スラブまたはコイル)の予定された注文にはもはや使用できない。この場合、注文のこの部分の加工は再び最初の生産ステップから開始しなければならず、これは金銭的な損害をもたらし、場合によっては納入遅れももたらす。 ・・・ 【0010】 鋼のために個々の成分の量割合が決定される。この量割合は化学的な実験室分析によってチェックすることができる。この目標値セットは鋼種(steelbrand;鋼ブランドとも言われている)とも呼ばれる。同様に個々の生産ステップの目標値が決定される。製鋼所においては溶湯およびそれから鋳造されたスラブの製造が行なわれる。炉においてスラブが圧延プロセスのために加熱される。熱間圧延設備においてスラブが圧延されてコイルに形成され、場合によっては冷間圧延設備において更なる圧延もしくはコイルの焼き戻しによる鋼質の調整および場合によっては小さなサイズへの分割が行なわれる。 ・・・ 【0018】 基本的には個々の生産単位の調節システムはその出力量の目標値を、たとえ入力値すなわち先のステップの実際値がずれていても守ろうとする。スラグ(当審注:「スラブ」の誤記と認める。段落【0031】も同様。)が冷えすぎて炉から圧延路に到着すると、圧延路の調節システムは、それにもかかわらず圧延されたストリップの出口温度の目標値を調節システムの操作量の適切な変化によって達成しようとする。これは、なおも影響を及ぼし得る目標値、例えばある程度まで変化させられる誤った温度または規模についてのみ働く。しかしながら、誤った化学分析、すなわち合金成分の誤った量割合を有する鋼を後続の圧延装置において更に変化させることはできない。 【0019】 例えば、化学分析における個々の成分が限界値を侵害したので、偏差を許容することができない場合、現在の中間生産物はこの注文に対しては放棄される。生産計画を通して高い優先順位で材料が再生産されなければならないが、しかしこれは時間遅れを招く。現在の中間材料は、他の適切な注文へ結びつけ変更され、つまり、非常の場合には顧客の結びつけなしに在庫へ回され、あるいは生産から取出されて中間倉庫へ収容される。後者の可能性は材料をスクラップと称して再び資源循環に戻すことである。 【0020】 本発明の課題は、注文をフレキシブルに計画に組入れることができかつ目標値からの偏差にフレキシブルに反応することができる鋼の製造設備の制御方法を提供することにある。 【0021】 この課題の解決のために、冒頭に述べた方法において、同時に、鋼の化学組成の目標値が組織最適化の計算プログラムにより決定されることが提案される。 【0022】 公知の方法と違って、材料特性への影響を持つ運転パラメータが組織最適化の計算プログラムにより決定されると共に、同時に鋼の化学組成の目標値も決定される。用語「同時に」は、例えば第1の計算過程において化学組成の目標値が求められ、続いて第2の計算過程において運転パラメータが求められるか、またはその逆である方法も含む。個々の計算過程は相前後して経過することができ、常に化学組成の目標値および運転パラメータが考慮される。それにより解決のために著しく多い自由度がもたらされる。なぜならば、注文ごと、予め決定された唯一の目標値セットだけでなく、複数の目標値セットが利用可能であるからである。従来は目標値セットを修正することはできなかった。なぜならば、操作者は生産ユニットにおいて後続の生産ステップへのその後に必要な作用を求めること又は予め与えることができなかったからである。しかしながら、組織最適化の計算プログラムにより、後続の組織最適化ステップに必要な目標値適合化を、従来の生産結果から、要求された材料特性の考慮のもとにオンラインで計算することができる。 ・・・ 【0026】 化学組成の目標値と特定の鋼用途のために場合によってはその目標値に合わせて算出された運転パラメータとがその都度1つのデータセットに統合されると望ましい。最適化計算の結果として、生産計画において計画すべき注文のそれぞれの鋼用途のためのデータセットの最適な組み合わせが選択されることによって、特定の鋼用途のためのデータセットが計算プログラムにより選択されて出力される。 【0027】 本発明による方法においては、鋼の化学組成の実際値および運転パラメータの実際値が目標値と比較され、組織最適化の計算プログラムが偏差存在時に新たに実行される。この計算の結果、実際値により良好に適合する他の目標値セットが選択される。それによって、可能な組み合わせの個数が遥かに高められ、実際値と目標値との間に偏差がある場合、他の生産ステップが変更された目標値セットで実施されることによって、鋼生産が大きな確率をもってなおも意図された目的のために使用可能である。 【0028】 本発明による方法の一構成によれば、目標値に下限および上限の間にある許容範囲が割り付けられ、許容範囲を外れた際に、組織最適化の計算プログラムが鋼の化学組成および/または運転パラメータの目標値を決定するために新たに実行される。 ・・・ 【0030】 本発明による方法においては、生産ステップ期間中および/または生産ステップ後に組織最適化の計算プログラムにより目標値と実際値との比較による品質管理が実行されると特に有利である。それによって、比較的緩慢で費用のかかる実験室テストを省略することができ、いずれにせよその訴える力には多くのケースにおいて限界がある。組織最適化の計算プログラムによって、溶湯、スラブまたはコイルのような鋼生産品全体が連続的に材料特性および目標値維持に関して検査されるので、例えば引張テストの形での真の材料検査は時々の管理試験に低減可能である。 【0031】 熱間圧延設備において品質管理が生産経過中の種々の点で行なわれるのがよい。このために、スラグ倉庫での生産指令へのスラグ結びつけ、加熱炉の出口、粗圧延機の出口、生産ライン終端の巻取機の出口が特に適している。各監視点において、組織最適化の計算プログラムが、そのときまでの既知の生産実際値ならびに割り当てられた目標値を有する後続のプロセスから、予想される材料特性を計算する。要求された材料特性が後続のステップにおいて現在の目標値では達成できない場合、組織最適化手段が自動的に目標値適合化を試みる。計算が肯定的結果をもたらす場合、品質管理手段が目標値適合化を作動させる。計算が結果をもたらさない場合、品質管理手段は、組織最適化の計算プログラムにより、注文ストックの目標値リスト内で、低コストの適切な目標値セットを探索し、中間材料をこの注文へ結び付け変更する。それによって後続の生産ステップの新たな目標値も決定される。 ・・・ 【0033】 本発明は上述の鋼の製造設備の制御方法を実施するための装置にも関する。本発明によれば、組織最適化の計算プログラムが、同時に鋼の化学組成の目標値とその目標値に適した運転パラメータとを決定するように構成されている。 ・・・ 【0035】 図1は合金コストを最適化する際の組織最適化手段の動作態様の概略図である。以下において組織最適化手段1と呼ばれる組織最適化の計算プログラムは化学組成の目標値2および目標プロセスの運転パラメータの目標値3を含んでいる。目標値2,3は一緒にいわゆる鋼種をもたらす。鋼種は経験に基づいており、かつその都度の注文の生産に必要である全ての情報を含んでいる。製造された鋼の材料特性は設備の運転パラメータによって影響を及ぼされる。運転パラメータには処理温度および圧力が含まれ、場合によってはそれらの時間的導関数も含まれる。組織最適化手段1において、材料特性を模擬し各生産ステップのために鋼の組織構造の変化を求める数学モデルが実現されている。組織最適化手段1はニューロンネットの手法でも動作する。結果として組織最適化手段1は最適化計算の実行後に鋼の化学組成の変更された目標値4を供給し、この目標値4は目標値2に比べて低コストの生産を可能にする。例えば、材料特性の劣化の発生なしにニオブ、マンガンまたはチタンの如き比較的高価な合金材料を低減することを達成するよう努められるとよい。化学組成の変更された目標値に、生産プロセスの変更された目標値5が結合されている。目標値4,5は生産の基礎である共通な1つの目標値セットを形成している。 ・・・ 【0038】 図3は、組織最適化手段1と生産制御システムとの協働を示す。製造実施システム(MES)とも呼ばれる生産制御システム9はとりわけ生産計画および品質管理を含む。組織モニタは入力されたデータに基づいて強度または弾性限界などの材料特性を計算する計算モデルである。それによって、時間的に無駄のある実験室試料が大幅に置き換えられる。組織モニタの計算実行後に機械的性質を守ることができないことが確実である場合、組織最適化手段1により、その都度の鋼生産が目標値の変更によって許容範囲内にあるように処理され得るかどうかが分析される。組織モニタもしくは組織最適化手段1への入力量である実際値10は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度などを含む。目標値11として、爾後の生産ステップの基礎である運転パラメータおよびプロセスパラメータが出力される。 【0039】 組織最適化手段1と生産制御システム9の平面との結合によってコスト低下が得られる。なぜならば、生産のために最適化された鋼種が使用されるからである。コイルの品質検査の際に時間が節約される。なぜならば、組織モニタが実験室試料の代わりをするからである。それにもかかわらず、各コイルの材料特性が算出されるので、誤りの確率が減少する。他の利点は、生産計画時により多くの自由度が得られることにある。従来では、各注文のために、圧延および冷却の予め設定された目標値を有する唯一の規格化された鋼種が存在する。それに対して、本発明による方法の場合には、注文ごとに、その都度要求される材料特性を満たす多数の設定が使用可能である。各設定は、圧延および冷却の目標値を含めて鋼種を指定する工場規格からなる。多数の設定から、組織最適化手段1によって最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択される。 ・・・ 【0041】 図4は熱間圧延設備の例における個々の方法ステップを有するフローチャートを示す。 【0042】 生産開始前にコストが化学的分析に関してオフラインで最適化される。この最適化の結果は、ステップ12において、生産制御システムの基本データを変更するために使用される。注文の計画組入れ13は、溶解計画の指令ごとに、計画のために鋼種の幅広い選択を提供される。溶解計画14は生産計画においてコストを材料特性に関して最適化する。注文へのスラブの結びつけを維持するか又はスラブをオンラインで結びつけを変更するオンライン品質管理15が行なわれる。他のオンライン品質管理16が炉での加熱後もしくは粗圧延機での圧延後に行なわれる。巻取機の後における他のオンライン品質管理17に基づいて、コイルをただちに解放させることができ、それによって方法が終了する。 【0043】 図5は生産中の品質管理の実施を示す。 【0044】 炉もしくは粗圧延機18から生産制御システム(MES)9へ現在のプロセスデータが到来する。ステップ19において、要求された材料特性が達成可能であるかどうかがチェックされる。結果が「はい」の場合には現在の目標値による生産が継続される。結果が「いいえ」である場合には、ステップ20において指令の目標値の適合化が行なわれなければならない。このために生産制御システム9は、組織モニタおよび組織最適化手段1と協働し、変更された目標値を獲得する。変更された目標値に基づいて、ステップ21では、変更された目標値を有する強度が達成可能であるかどうかがチェックされる。強度が達成可能である場合には、変更された目標値で生産が実行される。強度が達成可能でない場合には、スラブを他の注文に結びつけ変更するために結びつけ変更要求が出力される。結びつけ変更要求の回数が低減され、目標値変更によって、スラブは多くの場合に本注文のために維持される。本注文に適していないスラブまたはコイルは、爾後の製造ステップが実行されることなく直ちに結びつけ変更に回される。 【0045】 図6は全生産工程の最適な目標値の算出をダイアグラムにて示す。 【0046】 この方法によって全生産工程の最適な目標値が求められ、製造経過の個々の動作および処理ステップがコンピュータによりモデル化され、シミュレーションされる。最適化計算の基礎は化学分析22であり、この結果が連続鋳造23の入力量である。これに熱間圧延24および冷間圧延25が続く。組織の改善のために冷間圧延後に焼き戻しプロセス26が行なわれる。個々の処理ステップ全体は組織最適化手段1の数学的モデルに流れ込むので、組織最適化手段1は生産経過全体を考慮して最適な目標値を求めることができる。組織最適化手段1はここでも生産制御システム(MES)9に結合され、従って生産は組織最適化手段1の結果に依存して制御可能である。全体として、本方法によって著しいエネルギーコストおよび材料コストが節約される。付加的にプロセス全体に関する専門知識が構築される。」 b 図面 「【図1】 [図:0001420309000001.jpg] 【図3】 [図:0001420309000002.jpg] 【図4】 [図:0001420309000003.jpg] 【図5】 [図:0001420309000004.jpg] 【図6】 [図:0001420309000005.jpg] 」 (イ)甲1の記載から理解できる事項 a 段落【0010】、【0031】の記載から、品質管理が鋼の生産経過中の種々の点(例えば、スラブ倉庫、加熱炉の出口、粗圧延機の出口、生産ライン終端の巻取機の出口)において行われ、それぞれの点での中間材料から鋼への製造処理が制御されていることが理解できる。 また、例えば、段落【0022】の「注文ごと、予め決定された唯一の目標値セットだけでなく、複数の目標値セットが利用可能である」との記載、段落【0026】の「生産計画において計画すべき注文のそれぞれの鋼用途のためのデータセットの最適な組み合わせが選択される」との記載、段落【0031】の「計算が結果をもたらさない場合、品質管理手段は、組織最適化の計算プログラムにより、注文ストックの目標値リスト内で、低コストの適切な目標値セットを探索し、中間材料をこの注文へ結び付け変更する。」との記載、段落【0039】の「従来では、各注文のために、圧延および冷却の予め設定された目標値を有する唯一の規格化された鋼種が存在する。それに対して、本発明による方法の場合には、注文ごとに、その都度要求される材料特性を満たす多数の設定が使用可能である。」との記載からみて、中間材料、及び、甲1記載の製造設備により製造される鋼が、それぞれ複数存することが理解できる。 b 段落【0033】には、鋼の製造設備の制御方法を実施する装置を有することが記載されている。 c 段落【0031】における「各監視点において、組織最適化の計算プログラムが、そのときまでの既知の生産実際値ならびに割り当てられた目標値を有する後続のプロセスから、予想される材料特性を計算する」との記載から、中間材料に関する生産実際値を取得することが理解できる。 d 段落【0035】における「組織最適化手段1において、材料特性を模擬し各生産ステップのために鋼の組織構造の変化を求める数学モデルが実現されている。組織最適化手段1はニューロンネットの手法でも動作する。」との記載、段落【0038】における「組織モニタは入力されたデータに基づいて強度または弾性限界などの材料特性を計算する計算モデルである」との記載を参酌すれば、段落【0031】における「予想される材料特性を計算する」との処理は、計算モデルを用いて行われているものと理解できる。 e 段落【0006】における「1つの成分の定められた量割合の目標値または運転パラメータの目標値は、ターゲット値と下限値および上限値とからなり、下限値と上限値との間に許容範囲が存在する。」との記載、段落【0027】における、「鋼の化学組成の実際値および運転パラメータの実際値が目標値と比較され、組織最適化の計算プログラムが偏差存在時に新たに実行される」との記載、段落【0028】における「目標値に下限および上限の間にある許容範囲が割り付けられ、許容範囲を外れた際に、組織最適化の計算プログラムが鋼の化学組成および/または運転パラメータの目標値を決定するために新たに実行される」との記載を参酌すれば、段落【0031】に記載された「要求された材料特性が後続のステップにおいて現在の目標値では達成できない場合、組織最適化手段が自動的に目標値適合化を試みる」との処理や、段落【0044】に記載された「ステップ19において、要求された材料特性が達成可能であるかどうかがチェックされる。・・・結果が「いいえ」である場合には、ステップ20において指令の目標値の適合化が行なわれ」るとの処理は、予想される材料特性と要求された材料特性とを比較して偏差が存在するか否かを判断し、許容範囲を外れた偏差が存在する場合に目標値の適合化処理を行うものと理解できる。 f 段落【0033】における「組織最適化の計算プログラムが、同時に鋼の化学組成の目標値とその目標値に適した運転パラメータとを決定する」との記載を参酌すれば、段落【0031】に記載された、目標値適合化により新たな目標値を得る処理、又は、注文の結び付け変更により新たな目標値を得る処理、及び、段落【0035】に記載された、鋼の化学組成の変更された目標値4を得る処理は、現在の製造方法により得られる鋼の化学組成とは異なる化学組成を、新たな目標値として決定する処理と理解できる。 g 段落【0005】における「設定に相応する鋼を生産するためには、更に、定められた運転パラメータを守ることが必要である。これらの運転パラメータには、溶解、鋳造、加熱、圧延および冷却の各段階の目標値が含まれる。これらは例えば温度、圧力、速度またはそれらの時間的変化である。」との記載、段落【0026】における「化学組成の目標値と特定の鋼用途のために場合によってはその目標値に合わせて算出された運転パラメータとがその都度1つのデータセットに統合されると望ましい」との記載、段落【0033】における「本発明によれば、組織最適化の計算プログラムが、同時に鋼の化学組成の目標値とその目標値に適した運転パラメータとを決定するように構成されている」との記載、段落【0022】における「材料特性への影響を持つ運転パラメータが組織最適化の計算プログラムにより決定されると共に、同時に鋼の化学組成の目標値も決定される。用語「同時に」は、例えば第1の計算過程において化学組成の目標値が求められ、続いて第2の計算過程において運転パラメータが求められるか、またはその逆である方法も含む。」との記載から、化学組成の目標値に応じて運転パラメータを算出することが記載されているといえる。 したがって、段落【0031】における「それによって後続の生産ステップの新たな目標値も決定される」との処理や、段落【0035】における「結果として組織最適化手段1は最適化計算の実行後に鋼の化学組成の変更された目標値4を供給し、・・・化学組成の変更された目標値に、生産プロセスの変更された目標値5が結合されている」との処理は、化学組成についての新たな目標値に基づいて、その新たな目標値に適した新たな運転パラメータを算出する処理と理解できる。 また、段落【0044】における「変更された目標値に基づいて、ステップ21では、変更された目標値を有する強度が達成可能であるかどうかがチェックされる。強度が達成可能である場合には、変更された目標値で生産が実行される」との記載から、算出された新たな運転パラメータにより製造が実行されると理解できる。 h 段落【0038】における「組織モニタもしくは組織最適化手段1への入力量である実際値10は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度などを含む」の記載を参酌すれば、上記cで述べた「生産実際値」は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度等を含む実際値10と同様のものと理解できる。そして、上記gで述べた、「新たな目標値に適した新たな運転パラメータ」は、中間材料から、新たな目標値となる化学組成の鋼を製造するための運転パラメータであるから、中間材料の現在の化学組成等の実際値に依存することは自明である。したがって、中間材料の生産実際値に応じて新たな運転パラメータを定めるものと、当業者であれば当然に理解する。 i 段落【0046】及び図6から、製造工程が、熱間圧延、冷間圧延を含むものと理解できる。 j 段落【0039】の「組織最適化手段1と生産制御システム9の平面との結合によってコスト低下が得られる。・・・生産計画時により多くの自由度が得られることにある。・・・本発明による方法の場合には、注文ごとに、その都度要求される材料特性を満たす多数の設定が使用可能である。・・・多数の設定から、組織最適化手段1によって最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択される。」との記載から、上記d及びgの組織最適化手段1による新たな目標値に適した新たな運転パラメータを算出する処理は、計算モデルを用い、要求される材料特性を満たす多数の設定を使用可能とし、多数の設定から、組織最適化手段1によって最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択されることが理解できる。 k 段落【0031】の「計算が結果をもたらさない場合、品質管理手段は、組織最適化の計算プログラムにより、注文ストックの目標値リスト内で、低コストの適切な目標値セットを探索し、中間材料をこの注文へ結び付け変更する。それによって後続の生産ステップの新たな目標値も決定される」との記載、図5に関する段落【0044】の「ステップ19において、要求された材料特性が達成可能であるかどうかがチェックされる。・・・結果が「いいえ」である場合には、ステップ20において指令の目標値の適合化が行なわれなければならない。このために生産制御システム9は、組織モニタおよび組織最適化手段1と協働し、変更された目標値を獲得する。変更された目標値に基づいて、ステップ21では、変更された目標値を有する強度が達成可能であるかどうかがチェックされる。・・・強度が達成可能でない場合には、スラブを他の注文に結びつけ変更するために結びつけ変更要求が出力される。」との記載から、甲1には、ある中間材料から、注文にて要求された強度等の材料特性を達成可能かチェックし、上記eのとおり許容範囲を外れた偏差が存在する場合には、まず、目標値の適合化処理を行い、変更された目標値でも強度が達成可能でない場合には、さらに、その中間材料と、注文ストックの目標値リスト内から、低コストの適切な目標値セットを組織最適化の計算プログラムにより探索し、中間材料であるスラブをこの最適な注文に結びつけ変更することが記載されるといえる。ここで、当該中間材料と注文ストックの目標リストとの組合せから最適な目標値セットを探索することは、1つの中間材料と複数の注文に対応する鋼との対を算出し、算出された対に関して新規製造ルートを計算する処理といえる。 (ウ)甲1発明 上記(ア)、(イ)から、甲1に記載された事項を本件発明1に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「複数の中間材料からの複数の鋼の製造を制御するための方法(上記(イ)a)であって、制御方法は、装置によって実施され、各中間材料について、以下のステップ、 - 前記中間材料に関する生産実際値を得るステップ(上記(イ)c)、 - 計算モデルを用いて、中間材料に関する生産実際値に従って、および割り当てられた目標値を有する後続のプロセスに従って、予想される材料特性を決定するステップ(段落【0031】、上記(イ)c、d)、 - それぞれの現行の鋼について、予想される材料特性と要求された材料特性とを比較するステップを含み、 予想される材料特性と要求された材料特性とを比較した結果、許容範囲を外れた偏差が存在する場合(上記(イ)e)には、方法は、以下のステップ、 - 現在目標とする鋼の化学組成とは異なる化学組成を、新たな目標値として決定するステップ(上記(イ)f)と、 - 中間材料の生産実際値に従って(上記(イ)h)、および化学組成についての新たな目標値に従って、新たな運転パラメータを算出するステップ(上記(イ)g)と、 をさらに含み、 製造工程が、熱間圧延、冷間圧延を含むものであり(上記(イ)i)、 新たな運転パラメータにより製造が実行され(上記(イ)h)、 新たな運転パラメータを算出するステップ(上記(イ)g)が、 + 計算モデルを用い、材料特性を満たす多数の設定を使用可能とするステップと、 + 多数の設定から、組織最適化手段における最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択されるステップと を含み(上記(イ)j)、 複数の鋼は複数の金属製品を含み、複数の中間材料は複数の金属製品を含み(上記(イ)a)、 新たな運転パラメータを算出するステップ(上記(イ)g)により変更された目標値でも強度が達成可能でない場合には、さらに、その中間材料と、注文ストックの目標値リスト内から、低コストの適切な目標値セットを組織最適化の計算プログラムにより探索し、その中間材料であるスラブをこの最適な注文に結びつけ変更する(上記(イ)k)、 方法。」 ウ 対比 (ア)甲1に記載された方法は、鋼の製造設備の制御方法であり、「スラブ」が中間材料に含まれる(段落【0010】)から、甲1発明における「複数の中間材料」も、鋼(すなわち金属)の中間製品であるといえ、本件発明1における「中間金属製品のグループ」に相当する。また、甲1発明における「複数の鋼」は、本件発明1における「最終金属製品のグループ」に相当する。 (イ)甲1発明における「装置」は、本件発明1における「電子制御デバイス」に相当する。 (ウ)甲1の段落【0038】における「組織モニタもしくは組織最適化手段1への入力量である実際値10は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度などを含む」の記載を参酌すれば、甲1発明における「生産実際値」は、個々の化学成分の量割合、プロセス温度等を含む実際値10と同様のものであって、単一の値ではなく複数の値であること、すなわちセットをなす値であると、当業者であれば当然に理解する。したがって、甲1発明における「生産実際値」は、本件発明1における「中間特性のセット」に相当する。 (エ)甲1発明における「計算モデル」は、本件発明1における「予測モデル」に相当する。また、甲1発明における、「割り当てられた目標値を有する後続のプロセスに従って」は、中間材料に対して現在の運転パラメータを用いて後続プロセスを行った場合であるから、本件発明1における「中間金属製品からのそれぞれの現行製造ルートに従って」に相当する。 (オ)甲1の段落【0002】における「鋼の重要な材料特性は例えば引張強さ、弾性限界および伸び率である」との記載を参酌すれば、甲1発明における「予想される材料特性」、及び、「要求された材料特性」のそれぞれは、単一の値ではなく複数の値であること、すなわちセットをなす値であると当業者であれば当然に理解するから、本件発明1における「現行の推定された最終特性のセット」、及び、「現行の目標の最終特性のセット」にそれぞれ相当する。 (カ)甲1発明における「許容範囲を外れた偏差が存在する場合」について、許容範囲を外れた偏差が存在することは、偏差が事前定義された閾値を超えることと同じことである。したがって、甲1発明における「予想される材料特性と要求された材料特性とを比較した結果、許容範囲を外れた偏差が存在する場合」は、本件発明1における「現行の推定された最終特性のセットと現行の目標の最終特性のセットの間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合」に相当する。 (キ)甲1の段落【0010】において「鋼のために個々の成分の量割合が決定される」と記載されているとおり、鋼の化学組成は1つの成分に関する量ではなく、複数の成分に関する量であるから、新たな目標値としての化学組成も、セットをなす値であると理解できる。したがって、甲1発明における「現在目標とする鋼の化学組成とは異なる化学組成を、新たな目標値として決定するステップ」は、本件発明1における「それぞれの新規の最終金属製品について、少なくとも1つの新規目標の最終特性のセットを取得するステップ」に相当する。また、甲1発明における「化学組成についての新たな目標値」は、本件発明1における「新規目標の最終特性のセット」に相当する。 (ク)本件明細書の段落【0089】には、製造パラメータが現行製造ルートと異なるものも新規製造ルートである旨が記載されているから、甲1発明における「新たな運転パラメータを算出するステップ」は、本件発明1における「中間金属製品からの新規製造ルートを計算するステップ」に相当する。 (ケ)甲1発明における「製造工程が、熱間圧延、冷間圧延を含むものであり」との事項は、本件発明1における「各製造ルートが、1つまたはいくつかの変換動作を含み、各変換動作は、熱間圧延、冷間圧延、酸洗い、焼鈍、スキンパス、電気亜鉛めっき、およびコーティングから成るグループの中から選ばれるものであり」と選択的に記載された事項のうち、「熱間圧延、冷間圧延」に相当する。 (コ)本件発明1における「計算された新規製造ルートの一連の変換動作は、異なるタイプの変換動作および/または異なる製造パラメータを用いる変換動作による対応する現行製造ルートの一連の変換動作とは異なる」と発明特定事項に関して、「または」が用いられる場合には択一的な記載となる。 そして、甲1発明における「新たな運転パラメータにより製造が実行される」ことは、現行製造ルートとは異なるパラメータで製造することであるから、本件発明1において択一的に記載された、「計算された新規製造ルートの一連の変換動作は」「異なる製造パラメータを用いる変換動作による対応する現行製造ルートの一連の変換動作とは異なる」ことに相当する。 (サ)甲1発明における「複数の中間材料」は、上記(ア)のとおり、本件発明1の「中間金属製品のグループ」に相当することから、「2個以上の金属製品を含む」といえ、同様に、甲1発明における「複数の鋼」は、本件発明1の「最終金属製品のグループ」に相当し、「2個以上の金属製品を含む」といえることから、甲1発明は、本件発明1の「最終金属製品のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、」の点で一致する。 エ 一致点 上記ウ(ア)~(サ)をふまえると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致する(本件発明1の発明特定事項に相当する甲1発明の事項を、括弧内に付記する)。 <一致点> 「中間金属製品のグループ(複数の中間材料)からの最終金属製品のグループ(複数の鋼)の製造を制御するための方法であって、制御方法は、電子制御デバイス(装置)によって実施され、各中間金属製品(各中間材料)について、以下のステップ、 - 前記中間金属製品(中間材料)に関する中間特性のセット(生産実際値)を得るステップ、 - 少なくとも1つの対応する予測モデル(計算モデル)を用い、中間特性のセット(生産実際値)に従って、および前記中間金属製品(中間材料)からのそれぞれの現行製造ルートに従って(割り当てられた目標値を有する後続のプロセスに従って)、現行の推定された最終特性のセット(予想される材料特性)を決定するステップ、 - それぞれの現行の最終金属製品(鋼)について、現行の推定された最終特性のセット(予想される材料特性)を現行の目標の最終特性のセット(要求された材料特性)と比較するステップを含み、 現行の推定された最終特性のセット(予想される材料特性)と現行の目標の最終特性のセット(要求された材料特性)の間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合(許容範囲を外れた偏差が存在する場合)には、方法は、以下のステップ、 - それぞれの新規の最終金属製品(鋼)について、少なくとも1つの新規目標の最終特性のセットを取得するステップ(現在目標とする鋼の化学組成とは異なる化学組成を、新たな目標値として決定するステップ)と、 - 中間特性のセット(生産実際値)に従って、および少なくとも1つの新規目標の最終特性のセット(化学組成についての新たな目標値)に従って、前記中間金属製品(中間材料)からの新規製造ルートを計算するステップ(新たな運転パラメータを算出するステップ)と をさらに含み、 各製造ルートが、1つまたはいくつかの変換動作を含み、各変換動作は、熱間圧延、冷間圧延であり、 計算された新規製造ルートの一連の変換動作は、異なる製造パラメータを用いる変換動作による対応する現行製造ルートの一連の変換動作とは異なり(新たな運転パラメータにより製造が実行され)、 最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数である、 方法。」 オ 相違点 他方、本件発明1と甲1発明とは、次の相違点1~2で相違する。 (ア)相違点1 「中間金属製品からの新規製造ルートを計算するステップ」に関し、 本件発明1においては、 「 + 少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性(CIP)のセットに従って、および前記中間金属製品(8)からの複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートに従って、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、 + 各新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットの、対応する新規目標の最終特性(Ctarget_new)のセットとの比較に従って、複数の可能な前記現行製造ルートとは異なる製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップ(170)と を含」むのに対して、 甲1発明においては、 「 + 計算モデルを用い、材料特性を満たす多数の設定を使用可能とするステップと、 + 多数の設定から、組織最適化手段における最も少ない生産コストを生じさせる設定が算出されて選択されるステップと を含」む点。 (イ)相違点2 「中間金属製品からの新規製造ルートを計算するステップ」に関し、 本件発明1においては、 「計算するステップ(150)が、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)の複数の対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算される」のに対して、 甲1発明においては、 「新たな運転パラメータを算出するステップにより変更された目標値でも強度が達成可能でない場合には、さらに、その中間材料と、注文ストックの目標値リスト内から、低コストの適切な目標値セットを組織最適化の計算プログラムにより探索し、その中間材料であるスラブをこの最適な注文に結びつけ変更する」点。 カ 取消理由3(新規性)についての判断 本件発明1と甲1発明とは、上記オの相違点1~2で相違し、当該相違点1~2に係る本件発明1の事項は、甲1に記載されているに等しい事項ともいうことはできない(特に相違点2については、下記キを参照のこと。)。 したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、取消理由3により本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 キ 取消理由4(進歩性)についての判断 事案に鑑み、相違点2について、相違点1を含めて検討する。 (ア)相違点2に係る本件発明1の計算するステップ(150)は、請求項1に記載された事項から特定されるように、 a 現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットと現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットの間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合に行われるステップであり、 b 2以上の金属製品を含む中間金属製品(8)と、2以上の金属製品を含む新規の最終金属製品(6)とから、複数の対を算出し、 c その算出された複数の対の各々に関して、それぞれの新規製造ルートが計算されるものであって、その計算は、上記相違点1に係る本件発明1として特定される、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、新規製造ルートとして選択するステップ(170)とを含むものである。 (イ)一方、相違点2に係る甲1発明の新たな運転パラメータを算出するステップは、 a 予想される材料特性と要求された材料特性とを比較した結果、許容範囲を外れた偏差が存在する場合に行われるステップである(上記イ(ウ))ものの、 b’ 上記aの条件を満たすとただちに、中間材料と、金属製品と注文ストックの目標値リスト内から、低コストの適切な目標値セットを組織最適化の計算プログラムにより探索し、その中間材料であるスラブをこの最適な注文に結びつけ変更する(甲1の段落【0031】、【0044】、図6)ものではなく、 b1 上記aの条件を満たす(許容範囲を外れた偏差が存在する)場合には、まず、注文にて要求された強度等の材料特性を達成可能となるように、目標値の適合化処理を行い(上記イ(イ)k)、 b2 変更された目標値でも強度が達成可能でない場合に、さらに、上記b’のステップを行うものである(上記イ(イ)k)。 b3 また、上記b2(すなわち上記b’)の処理も、ある1つの中間材料から、注文にて要求された強度等の材料特性を達成可能でない場合に、その中間材料を、注文ストックの目標値リスト内から最適な注文に結びつけ変更するものであるから、1つの中間材料と、複数の鋼とから、複数の対を算出するものであって、本件発明1のように、複数の中間金属製品と、複数の最終金属製品とから、複数の対を算出するものであるとはいえない。 c’ さらに、甲1発明における上記b3の計算は、甲1の段落【0031】の記載から、「組織最適化の計算プログラムにより、注文ストックの目標値リスト内で、低コストの適切な目標値セットを探索し、中間材料をこの注文へ結び付け変更する」ものであるといえるものの、相違点1として挙げたように、新たな運転パラメータを算出するための各ステップは、本件発明1と完全に一致するものではない。そのため、仮に相違点1に係る本件発明1の事項を、甲1発明から当業者が容易に想到し得たとしても、さらに相違点2に係る本件発明1の事項を想到する(又は、相違点2に係る本件発明1の事項を想到し、さらに相違点1に係る本件発明1の事項を想到する)には、多段階の改変が必要となり、甲1発明を出発点とした場合にこのような改変を行う動機が存在しない。 (ウ)そして、甲1のほか、甲2~甲4に記載された事項を参照しても、甲1発明において、上記(イ)のb1~b2、b3、c’のすべての点で、相違点2に係る本件発明1の構成を想到することが、当業者にとって容易であったということはできない。 (エ)したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、取消理由4により本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明5~10、12~16について 本件発明5~10、12~16は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明1が上記(1)のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、本件発明5~10、12~16についても同様に、甲1発明、及び、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、取消理由4により本件特許の請求項5~10、12~16に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明17について 本件発明17は、電子制御デバイスに係る発明であって、方法に係る本件発明1と実質的に発明のカテゴリーのみが異なるものである。 そして、甲1には、方法の発明である甲1発明とともに、対応する装置の発明(以下「甲1装置発明」という。)も記載される(上記(1)イ(イ)b参照)ものの、本件発明17と甲1装置発明とを対比すると、上記相違点1~2と同様の相違点を有するといえるから、本件発明17は、本件発明1と同様の理由により、甲1装置発明、及び、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、取消理由4により本件特許の請求項17に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明18について 本件発明18は、請求項17の記載を引用するものであるところ、本件発明17が上記(3)のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、本件発明18についても同様に、甲1装置発明、及び、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、取消理由4により本件特許の請求項18に係る特許を取り消すことはできない。 第7 申立人が主張するその他の申立ての理由について 申立人による申立ての理由(上記第4の1)のうち、上記第6にて検討した以外の、その他の申立ての理由(上記第4の1(4))について、以下検討する。 <サポート要件:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)> 1 申立書における申立ての理由 本件訂正前の請求項11に関し、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、フィルタリングについての記載がない請求項11に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない(申立書第73~74ページ)。 2 当審の判断 本件訂正により請求項11は削除されたことから、上記1の申立ての理由により、本件特許を取り消すことはできない。 第8 申立人意見書における申立人の主張について 1 申立人の主張 申立人は、申立人意見書において、進歩性と明確性に関して、以下の旨の主張をしている。 (1)進歩性について(申立人意見書第3~12ページ) ア 特許権者の「計算するステップは、少なくとも1つの対応する予測モデルを用い、中間特性のセットに従って、および中間金属製品からの可能な製造ルートに従って、新規に推定された最終特性のセットの、対応する新規目標の最終特性のセットとの比較に従って、可能な製造ルートのうちの1つを、新規製造ルートとして選択するステップとを含む、という特徴は、甲1および甲3の何れにおいても、開示も示唆もされていない」との主張に関して、取消理由通知でも認定されるように、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、又は、甲1発明、甲1の記載及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 特許権者の「訂正前の請求項3および4の一体的な特徴である、「最終金属製品(6)のグループが、N個の金属製品を含み、中間金属製品(8)のグループがP個の金属製品を含み、NおよびPは、各々2以上の整数であり、計算するステップ(150)が、中間金属製品(8)と新規の最終金属製品(6)のいくつかの対を算出するステップをさらに含み、各算出された対に関してそれぞれの新規製造ルートが計算される」という特徴は、甲1および甲3の何れにおいても開示も示唆もされていない」との主張に関して、甲1には、複数の中間金属製品と複数の最終金属製品について、中間金属製品と最終金属製品の複数の対を算出し、各算出された対に関して新規製造ルートを計算することが開示されている。 上記の記載から特定される本件発明1では、例えば、1つの中間金属製品(8)と1つの最終金属製品(6)との対を、複数の中間金属製品のそれぞれについて1つずつ算出して複数の対とすることや、1つの中間金属製品(8)と複数の新規の最終金属製品(6)との対を、中間金属製品ごとに算出して複数の対とすることも排除されていない。 また、特許権者の主張が、複数の中間金属製品と複数の最終金属製品との組み合わせの全てについて、中間金属製品と最終金属製品との対を算出し、算出した複数の対の全てについて、各新規に推定された最終特性のセットの、対応する新規目標の最終特性のセットとの比較を行うことに限定される主張であったとしても、本件発明1にはそのようなことが特定される記載はなく、本件特許の明細書の発明の詳細な説明及び図面に記載も示唆もなく、当業者であってもかかる主張を本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面から理解することはできない。 (2)明確性について(申立人意見書第12~15ページ) 取消理由通知で指摘された「(1)一元的なコスト」、「(2)全体的なコスト」、「(3)別個のコレクションを精巧に作るステップ」のいずれについても、明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面はもちろんのこと、意見書の説明を参酌しても依然として明確に把握することができない。 2 当審の判断 (1)進歩性について 上記1(1)イについて検討すると、上記第6の3(1)キにおいて検討したように、本件発明1の「計算するステップ(150)」は、 a 現行の推定された最終特性(Cest_cur)のセットと現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットの間の偏差が、事前定義された閾値を超える場合に行われるステップであり、 b 2以上の金属製品を含む中間金属製品(8)と、2以上の金属製品を含む新規の最終金属製品(6)とから、複数の対を算出し、 c その算出された複数の対の各々に関して、それぞれの新規製造ルートが計算されるものであって、その計算は、上記相違点1に係る本件発明1として特定される、複数の新規に推定された最終特性(Cest_new)のセットを決定するステップ(160)と、新規製造ルートとして選択するステップ(170)とを含むものである。 すなわち、本件発明1は、ある1つの中間金属製品から、ある1つの最終金属製品を製造すると仮定して、予測モデルにて推定された最終特性(Cest_cur)のセットと、現行の目標の最終特性(Ctarget_cur)のセットとの間の偏差が、事前定義された閾値を超える(上記a)ことを条件として、2以上の金属製品を含む中間金属製品(8)と、2以上の金属製品を含む新規の最終金属製品(6)とから、複数の対を算出し(上記b)、その算出された複数の対の各々に関して、それぞれの新規製造ルートが計算される(上記c)ものである。その特定される技術的内容からみて、「複数の対」とは、申立人が主張する、「1つの中間金属製品(8)と1つの最終金属製品(6)との対を、複数の中間金属製品のそれぞれについて1つずつ算出して複数の対とすること」や、「1つの中間金属製品(8)と複数の新規の最終金属製品(6)との対を、中間金属製品ごとに算出して複数の対とすること」を意図したものと解釈することはできず、ある1つの中間金属製品から、ある1つの最終金属製品を製造したとすると上記偏差が閾値を超えると予測される場合には、その中間金属製品に基づく組合せのみならず、複数の中間金属製品と複数の最終金属製品との間で最適な組合せを探求するために、複数の対を算出して、それぞれの新規製造ルートを1から計算しなおす発明であると解釈することが相当である。 他方、甲1発明においては、1つの中間材料から、注文にて要求された強度等の材料特性を達成可能でない場合に、その中間材料を、注文ストックの目標値リスト内から最適な注文に結びつけ変更するものであるから、1つの中間材料と、複数の鋼とから、複数の対を算出する点で、上述のように解釈される本件発明1とは相違し、また、その相違する点(相違点2)に係る本件発明1を想到することが容易であることを裏付ける証拠もない。 また、本件明細書等には、段落【0052】~【0053】に、「最終金属製品6のグループは1つまたはいくつかの最終金属製品6を含む。最終金属製品6のグループは好ましくはN個の最終金属製品6を含み、Nは2以上の整数である。中間金属製品8のグループは1つまたはいくつかの中間金属製品8を含む。中間金属製品8のグループは好ましくはP個の中間金属製品8を含み、Pは2以上の整数である。」と記載され、また、段落【0086】に「別の任意選択の追加では、計算モジュール38は、中間金属製品8と新規の最終金属製品6の少なくとも1つの対を算出するように構成され、各算出された対についてそれぞれの新規製造ルートが計算される。」と記載されるところ、「複数の対を算出する」ことが記載されていなかった、とまではいうことができない。 したがって、上記1(1)アについて検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張を、採用することができない。 (2)明確性について 上記1(2)について検討すると、上記第6の2(2)で検討したように、本件発明6~8は、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書等の記載を考慮し、また、本件特許の出願当時における当業者の技術常識を基礎として判断すれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまでいうことはできない。 第9 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1、5~10、12~18に係る特許は、取消理由通知に示した取消理由(上記第6を参照。)、又は、申立書に記載された申立ての理由(上記第7を参照。)によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1、5~10、12~18に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。 そして、本件特許の請求項2~4、11は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項2~4、11に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701401

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