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特許異議申立

2023-700612

車両用内装材

審判番号
2023-700612
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-567344
登録番号
7187053
請求日
2023年06月09日
審決日
2024年06月18日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】寿屋フロンテ株式会社
  • 【権利者代理人】奥山 尚一
  • 【権利者代理人】中村 綾子
  • 【権利者代理人】森本 聡二
  • 【異議申立人】酒井 真衣子
  • 【異議申立人】工藤 知江
審判長/審判官
  • 審判長 一ノ瀬 覚
  • 審判官 横溝 顕範
  • 審判官 中村 則夫
分類
P1651.121-YAA(B60R) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(G10K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7187053号発明「車両用内装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7187053号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7187053号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7187053号の請求項1~3に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2019年(平成31年)1月25日を国際出願日とする出願であって、令和4年12月2日に特許権の設定登録がされ、同年12月12日に特許掲載公報が発行され、令和5年6月9日に特許異議申立人酒井真衣子(以下「申立人A」という。)による特許異議の申立て(以下「申立A」という。)がされ、同年6月10日に特許異議申立人工藤知江(以下「申立人B」という。)による特許異議の申立て(以下「申立B」という。)がされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年 6月 9日 特許異議の申立て(申立A) 同年 6月10日 特許異議の申立て(申立B) 同年10月31日付け 取消理由通知書 同年12月27日 特許権者による意見書、訂正請求書の提出 令和6年 4月23日 申立人Aによる意見書の提出 同年 4月24日 申立人Bによる意見書の提出 第2 本件訂正について 令和5年12月27日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。以下、この項において同様。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みhとの関係が、0<εa×h/(εa+εb)<5の式を満たす」 とあるのを、 「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす」 に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0010】に 「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みhとの関係は、0<εa×h/(εa+εb)<5の式を満たすことが好ましい。」 とあるのを、 「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係は、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすことが好ましい。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0032】に 「更に構造体60の第1のフィルム層側の面31のひずみεaと、第2のフィルム層側の面41のひずみεbと、構造体60の厚みhとの関係が、0<εa×h/(εa+εb)<5の式を満たすようにすることで、」 とあるのを、 「更に構造体60の第1のフィルム層側の面31のひずみεaと、第2のフィルム層側の面41のひずみεbと、構造体60の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすようにすることで、」 に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0042】に 「また、構造体60の第1のフィルム層側の面31のひずみεaと、第2のフィルム層側の面41のひずみεbと、構造体60の厚みhとの関係が、0<εa×h/(εa+εb)<5の式を満たすようにすることができる。」 とあるのを、 「また、構造体60の第1のフィルム層側の面31のひずみεaと、第2のフィルム層側の面41のひずみεbと、構造体60の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすようにすることができる。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0052】の【表1】に 「εa×h/(εa+εb)」 とあるのを、 「εa×h/(εa+εb)[mm]」 に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0053】に 「また、ひずみεaとひずみεbと構造体の厚みhとの関係εa×h/(εa+εb)が約8と高かった試験例7は、皺がより多く発生していることが観察された。」 とあるのを、 「また、ひずみεaとひずみεbと構造体の厚みh(mm)との関係εa×h/(εa+εb)が約8mmと高かった試験例7は、皺がより多く発生していることが観察された。」 に訂正する。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項2及び3は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているので、本件訂正前の請求項1~3は、一群の請求項であり、訂正事項1の訂正は、当該一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものである。 また、明細書に係る訂正事項2~6は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正前の請求項1における「ひずみεa」と「ひずみεb」は、その単位が無次元であることが技術常識から明らかであるが、「h」は「前記構造体の厚み」であるから長さの単位を有していることは明らかであったところ、その単位が記載されておらず不明瞭であった。 同様に、「h」を含む式である「0<εa×h/(εa+εb)<5」についても長さの単位を有していることは明らかであったところ、その単位が記載されておらず不明瞭であった。 訂正事項1は、当該「h」及び「0<εa×h/(εa+εb)<5」の単位を明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0033】に「構造体の厚みhは、上述したコア層10の厚みと詳細は後述する第1及び第2のフィルム層30、40の厚みの合計であり、例えば、その下限は、3mm以上が好ましく、4mm以上が好ましく、5mm以上が更に好ましい。」との記載があるから、訂正事項1のうち「前記構造体の厚みh(mm)」は、本件特許明細書等に記載された事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 そして、式「0<εa×h/(εa+εb)<5」のうち、「εa」と「εb」はその単位が無次元であり、残る「h」の単位が上記のとおり「mm」であるのだから、式「εa×h/(εa+εb」の単位が「mm」であることは自明である。 したがって、訂正事項1のうち「0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)」は、本件特許明細書等の記載より自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を行うものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2~6 訂正事項2~6は、訂正事項1による訂正に伴い、明細書の段落【0010】、【0032】、【0042】、【0052】の【表1】、【0053】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 申立人の意見書の主張について (1)申立人Aの令和6年4月23日付け意見書の主張について 申立人Aは、訂正事項1~6の「mm」に係る事項について、上記意見書において、「h」及び「0<εa×h/(εa+εb)<5」の単位が「mm」であると解釈する合理的な理由がなく、新規事項の追加となる旨主張する。 しかしながら、上記3(1)イで説示したとおり、本件特許明細書等には「h」の単位が「mm」であることが記載されており、そうすると式「0<εa×h/(εa+εb)<5」の単位もまた「mm」であることは本件特許明細書等の記載より自明の事項である。 そして、本件特許明細書等に第1及び第2のフィルム層の厚みとして「μm」が記載されているとしても、「mm」に換算して「h」の厚みを求められることは自明の事項であるし、本件特許明細書等に単位「m」が目付の単位「g/m2」として記載されていることは、「前記構造体の厚みh」の単位とは関係がない。 さらに申立人Aは、甲第5号証に「cm」、甲第6号証に「inch」が記載されていることを挙げているけれども、甲第5号証及び甲第6号証は、本件特許とは別の出願であり本件特許の「前記構造体の厚みh」の単位が「mm」ではないことを示すものではない。 したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。 (2)申立人Bの令和6年4月24日付け意見書の主張について 申立人Bは、訂正事項1~6の「mm」に係る事項について、上記意見書において、段落【0048】や段落【0052】の【表1】では「μm」の記載があるから、「mm」であることが自明とはいえない旨主張する。 しかしながら、上記(1)で説示したとおり、「h」及び式「0<εa×h/(εa+εb)<5」の単位が「mm」であることは本件特許明細書等の記載より自明の事項である。 そして、申立人Bが指摘する段落【0048】や【0052】の【表1】における「μm」の記載は、第1及び第2のフィルム層の厚みであり、「mm」に換算して「h」の厚みを求められることは自明の事項であって、「h」の単位が「mm」ではないことを示すものではない。 したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について、訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 以上のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。また本件訂正発明1~3をまとめて「本件訂正発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、下のとおりのものである。 「【請求項1】 内部に中空部を有する硬質なコア層と、前記コア層の一方の面側に設けられた意匠層と、前記コア層と前記意匠層との間に設けられた第1のフィルム層と、前記コア層の前記第1のフィルム層とは反対側の面に設けられた第2のフィルム層とを備える複層構造の車両用内装材であって、 前記コア層が、筒状のセルが複数の列をなして配置された構造を有し、前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、 前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaが、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbよりも小さく、 前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす車両用内装材。 【請求項2】 前記構造体の厚みhが20mm未満である請求項1に記載の車両用内装材。 【請求項3 】 前記第1のフィルム層または前記第2のフィルム層が、層を貫通する複数の開孔を有する請求項1又は2に記載の車両用内装材。」 第4 取消理由の概要 当審が令和5年10月31日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 請求項1の「0<εa×h/(εa+εb)<5」という発明特定事項における不等式の各項の単位が不明確である。 理由2(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 引用文献1:特開2013-233796号公報(申立人Bが提出した甲第1号証) 引用文献2:国際公開第2016/031479号(申立人Bが提出した甲第2号証) 引用文献3:特開2013-237242号公報(申立人Aが提出した甲第2号証) 引用文献4:特表2008-520456号公報(申立人Bが提出した甲第3号証) 取消理由の対象となる請求項と引用文献との関係 ・請求項1~2 ・引用文献1~4 第5 当審の判断 1 取消理由1(明確性)について 本件訂正により、「0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)」であることが特定され、単位が明確となったため、取消理由1は解消された。 2 取消理由2(進歩性)について (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1には、特に、段落【0009】~【0012】、【0016】、【0018】~【0019】、【0024】、【0033】~【0036】及び図1~2等から、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ハニカムコア材を成形した厚み8mmの剛体の中空板状体1の一方の主面に接着フィルムを介在させて熱可塑性樹脂フィルム8を積層し、さらに接着フィルムを介在させて意匠性を向上した繊維シート7を積層し、中空板状体1の他方の主面に接着フィルムを介在させて繊維シート7を積層した積層構造体であって、 一方の主面及び他方の主面に介在させた接着フィルムは共に厚み0.03mmのポリエチレンフィルムである、積層構造体。」 (2)対比 本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、後者の、「中空板状体1」と、中空板状体1の一方の主面に介在する「接着フィルム」と、中空板状体1の他方の主面に介在する「接着フィルム」とからなる構造(以下、便宜的に「コア構造」という。)と、前者の「前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体」に関し、両者は少なくとも以下の点で相違する。 〔相違点ア〕 本件訂正発明1は、「構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaが、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbよりも小さく」、「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす」ものであるのに対して、引用発明はそのような特定がなされていない点。 (3)判断 コア構造について引用文献1には、一方の主面に介在する接着フィルム側の面のひずみεaが、他方の主面に介在する接着フィルム側の面のひずみεbよりも小さいことは記載も示唆もされていない。 むしろ引用文献1には、繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムの組み合わせによって突出シワが発生しにくくなることが記載(段落【0011】)されているのであって、コア構造のひずみεa及びεbとは関係がないから、コア構造の一方の主面側が熱可塑性樹脂フィルム8によって突出シワが発生しにくくなっていることは、εaがεbよりも小さいことを意味するものではない。 さらに引用文献1には、コア構造における一方の主面に介在する接着フィルム側の面のひずみεaと、他方の主面に介在する接着フィルム側の面のひずみεbと、コア構造の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすことについての記載も示唆もない。 さらにいえば、熱ラミネート前の接着フィルムは中空板状体1と接合していないからコア構造を形成していないし、熱ラミネート後に接着フィルムが他層と溶融一体化したコア構造について、コア構造のみを取り出して接着フィルムの面のひずみεa及びεbの値を知得することはできないし、コア構造体の高さhを知得することもできない。 そうすると、上記のとおりコア構造におけるεaとεbの大小関係はおろか、その値自体が不明な引用発明は、コア構造の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすか否か不明と言わざるを得ない。 そして、他の証拠をみても相違点アに係る構成は記載も示唆もされていないから、本件訂正発明1は、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものということができない。 したがって、取消理由2により本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由及び訂正により生じたとする取消理由について 以下、申立人Aが提出した甲第1号証等を甲A1等と略記する。申立人Bが提出した甲第1号証等についても同様に甲B1等と略記する。 1 申立人Aの主張する理由 (1)特許法第29条第2項 ア 申立人Aの主張する理由 本件発明1及び2は、甲A1発明、甲A2記載事項および甲A3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 本件発明3は、甲A1発明、甲A2記載事項、甲A3記載事項および甲A4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 甲A1:特開2006-315443号公報 甲A2:特開2013-237242号公報(取消理由通知の引用文献3) 甲A3:特開2013-233796号公報(取消理由通知の引用文献1) 甲A4:特開2017-65026号公報 イ 申立人Aの主張する甲A1発明 「内部に中空部を有する硬質な衝撃吸収材(4)と、前記衝撃吸収材(4)の一方の面側に設けられた表面材(2)と、前記衝撃吸収材(4)の前記表面材(2)との間に設けられた吸音材(3)と、前記衝撃吸収材(4)の前記吸音材(3)とは反対側の面に設けられた裏面材(5)と、を備える複層構造の衝撃吸収吸音材(1)であって、 前記衝撃吸収材(4)が、筒状のセルが複数の列をなして配置された構造を有し、 前記吸音材(3)、前記衝撃吸収材(4)、および前記裏面材(5)の構造体における前記吸収材(3)(当審注:「前記吸音材(3)」の誤記)側の面のひずみεaが、前記構造体の前記裏面材(5)側の面のひずみεbより小さく、衝撃吸収吸音材(1)。」 ウ 対比 本件訂正発明1と、申立人Aの主張する甲A1発明を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する(申立人Aが主張する相違点2と同様。)。 〔相違点A〕 本件訂正発明1は、「構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaが、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbよりも小さく」、「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす」のに対して、甲A1にはそのような特定がなされていない点。 エ 判断 申立人Aは、相違点Aに係る構成は、甲A3に示される周知技術であると主張する。 甲A3は、取消理由通知における引用文献1であるところ、引用文献1について上記第5の2(3)で説示したとおり、甲A3は、「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす」か否か不明なものであり、相違点Aに係る構成を周知技術ということはできない。 そうすると、甲A1発明に甲A3記載事項を適用しても、相違点Aに係る構成に到達することはない。 したがって、本件訂正発明1は、甲A1発明、甲A2記載事項および甲A3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。 オ 以上のとおり、申立人Aが主張する特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (2)特許法第36条第4項第1号 ア 申立人Aの主張する理由 本件発明1~3は、「εa」「εb」を測定する具体的な方法及びタイミングが発明の詳細な説明に記載されていないから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 判断 本件明細書には、段落【0048】「先ず、図2及び図3に示す構造を有するコア層・・・の一方の面に、第1のフィルム層・・・を貼り、他方の面に、・・・第2のフィルム層・・・を貼って、構造体を作製した。そして、この構造体について、万能材料試験機・・・を用いて3点曲げを行い、ひずみの測定を行った。」、段落【0049】「次に、この構造体の第1のフィルム層側に意匠層・・・を貼って車両用内装材を作製した。」のように、 「εa」「εb」を測定する具体的な方法及びタイミングが記載されているから、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。 また申立人Aは、「試験片を得るために一度折り曲げた車両用内装材を引き延ばす必要がある。」「この方法で測定されたひずみは、意匠層を備えた第1のフィルム層側の面のひずみであり」などと主張するが、段落【0048】【0049】と異なる測定方法及びタイミングに関する主張であり採用することができない。 ウ 以上のとおり、申立人Aが主張する特許法第36条第4項第1号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (3)特許法第36条第6項第1号 ア 申立人Aの主張する理由 構造体を構成するコア層、第1のフィルム層及び第2のフィルム層の厚みや、第1のフィルム層及び第2のフィルム層自体のひずみの特定のない本件発明の範囲まで一般化することはできないから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 判断 本件明細書には、段落【0030】「第1のフィルム層側の面31のひずみεaが、第2のフィルム層側の面41のひずみεbよりも小さいものである。車両用内装材がこのようなひずみεaとひずみεbの関係を有することで、・・・図6(a)に示すように、車両用内装材を所定の凹凸形状に成形する際、車両用内装材が曲げられた場合、構造体60の曲げ中心軸NAが、構造体60の厚みの中心位置よりも、第1のフィルム層側の面31の方向に移動し、よって、意匠層50側の第1のフィルム層側の面31の変形量よりも、意匠層50とは反対側の第2のフィルム層側の面41の変形量が大きくなる。したがって、車両用内装材が曲げられて意匠層50が縮む際、この縮む変形量を減少させることができるので、従来は、意匠層50が縮みきれずに皺が発生していたが、このような皺の発生を抑制することができる。」という、「εa」と「εb」の大小関係による効果と、段落【0032】「コア層10の厚みが厚い程、車両用内装材の意匠層50の表面の縮む量が増えることから、車両用内装材の成形時などの曲げによって意匠層50の表面に皺が発生しやすくなる。そこで、図6(b)に示すように、更に構造体60の第1のフィルム層側の面31のひずみεaと、第2のフィルム層側の面41のひずみεbと、構造体60の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすようにすることで、コア層10の厚みが厚い場合であっても(特に、h≧5mm)、意匠層50に皺が発生することを抑制することができる。」という、コア層の厚みによる影響を抑制するために構造体の厚さ「h」と「εa」「εb」に求められる値の範囲が記載されている。 すなわち、「εa」と「εb」の大小関係によって、構造体の曲げ中心軸が、構造体の厚みの中心位置よりも、第1のフィルム層側の面の方向に移動することで、意匠層側の変形量よりも意匠層とは反対側の変形量が大きくなるために意匠層の皺発生を防止すると共に、構造体の厚さ「h」と「εa」「εb」の関係を規定することでコア層の厚さによる影響を抑制して課題を解決していることが理解できる。 そうすると、上記の記載に接した当業者であれば、本件訂正発明は、構造体の曲げ中心軸を移動するために、構造体としての「h」「εa」「εb」が規定されているのであり、コア層、第1のフィルム層、第2のフィルム層それぞれ単体としての厚さや「εa」「εb」を規定することは要しない発明であることが理解できるから、サポート要件に違反するという申立人Aの主張を採用することができない。 ウ 以上のとおり、申立人Aが主張する特許法第36条第6項第1号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (4)特許法第36条第6項第2号 ア 申立人Aの主張する理由1 請求項1の「εa」「εb」は、その測定条件が不明確であるため、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 理由1の判断 本件訂正発明1には、「前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεa」であること、及び「前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体」における「前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεb」であることが明確に規定されている。 そして上記(2)で説示したとおり、本件明細書の記載を参酌すれば「εa」「εb」を測定する具体的な方法及びタイミングが記載されているから、「εa」「εb」の測定条件が不明確ということはできない。 ウ 申立人Aの主張する理由2 請求項1に記載された0[mm]<εa×h/(εa+εb)<5[mm]の意図する技術的意義が不明確であるため、本件請求項1~3に係る特許は、は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 エ 理由2の判断 「εa」と「εb」はその単位が無次元であり、残る「h」の単位がmmであるのだから、式「εa×h/(εa+εb」の単位がmmであることは自明である。 そして、上記(3)で説示したとおり、本件訂正発明1は、「εa」と「εb」の大小関係によって、構造体の曲げ中心軸が、構造体の厚みの中心位置よりも、第1のフィルム層側の面の方向に移動することで、意匠層側の変形量よりも意匠層とは反対側の変形量が大きくなるために意匠層の皺発生を防止すると共に、構造体の厚さ「h」と「εa」「εb」の関係を式「εa×h/(εa+εb)」と規定することでコア層の厚さによる影響を抑制するという技術的意義が理解できる。 オ 以上のとおり、申立人Aが主張する特許法第36条第6項第2号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 2 申立人Bの主張する理由 (1)特許法第29条第2項 ア 甲B1を主引例とする場合について (ア)申立人Bの主張する理由 本件請求項1~3に係る発明は、甲B1と、甲B2~甲B5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 甲B1:特開2013-233796号公報(取消理由通知の引用文献1) 甲B2:国際公開第2016/031479号(取消理由通知の引用文献2) 甲B3:特表2008-520456号公報(取消理由通知の引用文献4) 甲B4:特開昭58-101042号公報 甲B5:特開2017-65026号公報 甲B6:Technical ThermHex Presentation(webページ) (イ)申立人Bの主張する甲B1発明 「内部に中空部を有する硬質なコア層と、前記コア層の一方の面側に設けられた意匠層と、前記コア層と前記意匠層との間に設けられた第1のフィルム層と、前記コア層と前記第1のフィルム層とは反対側の面に設けられた第2のフィルム層とを備える複層構造の車両用内装材であって、 前記コア層が、筒状のセルが複数の列をなして配置された構造を有し、 前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体における、前記構造体の前記第1のフィルム層側のひずみεaと、前記構造体の第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みとの関係が、0<εa×h/(εa+εb)<5の式を満たす、車両用内装材。」 ここで、甲B1は、取消理由通知における引用文献1である。 そして、甲B1には「ひずみεa」「ひずみεb」の記載がないのだから、引用文献1に記載された発明について上記第5の2(1)で説示したとおり、甲B1発明は、以下のようにすべきである。 「ハニカムコア材を成形した厚み8mmの剛体の中空板状体1の一方の主面に接着フィルムを介在させて熱可塑性樹脂フィルム8を積層し、さらに接着フィルムを介在させて意匠性を向上した繊維シート7を積層し、中空板状体1の他方の主面に接着フィルムを介在させて繊維シート7を積層した積層構造体であって、 一方の主面及び他方の主面に介在させた接着フィルムは共に厚み0.03mmのポリエチレンフィルムである、積層構造体。」 (ウ)対比 上記第5の2(2)で説示したとおり、本件訂正発明1と甲B1に記載された発明(引用発明)を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 〔相違点ア〕 本件訂正発明1は、「構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaが、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbよりも小さく」、「前記構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaと、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbと、前記構造体の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たす」ものであるのに対して、甲B1に記載された発明(引用発明)はそのような特定がなされていない点。 (エ)判断 上記第5の2(3)で説示したとおり、甲B1は、コア構造におけるεaとεbの大小関係はおろか、その値自体が不明であり、コア構造の厚みh(mm)との関係が、0(mm)<εa×h/(εa+εb)<5(mm)の式を満たすか否か不明と言わざるを得ない。 そして、他の証拠をみても相違点アに係る構成は記載も示唆もされていないから、本件訂正発明1は、甲B1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものということができない。 イ 甲B6を主引例とする場合について (ア)申立人Bの主張する理由 本件請求項1~3に係る発明は、甲B6と、甲B1及び甲B4~甲B5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 (イ)申立人Bの主張する甲B6発明 申立人Bは、甲B6に記載された発明を明示していない。 (ウ)対比 本件訂正発明1と甲B6に記載された発明を対比すると、両者は、少なくとも申立人Bが主張する相違点4で相違する。 〔申立人B主張相違点4〕 本件訂正発明1は、「構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεaが、前記構造体の前記第2のフィルム層側の面のひずみεbよりも小さ」いのに対して、甲B6発明は、そのような特定がなされていない点。 (エ)判断 申立人Bは、相違点4について、甲B1にはシワの発生を抑えたい側においてひずみを小さくしようとする示唆があり、甲B4には構造体の両面のひずみを調整するためにフィルム層の厚みを調整することが記載されているから、甲B6発明においてεaをεbよりも小さくすることは容易に想到し得ると主張する。 しかしながら、上記ア(エ)で説示したとおり、ひずみεaとひずみεに関し、甲B1には何ら示唆がないから甲B6発明に甲B4を適用する動機付けにならないし、εaをεbよりも小さくすることを示す証拠がないから、適用しても相違点4に係る構成に到達しない。 なお、甲B6を補足するとしている甲B8を主引例としても同様に、甲B4に開示されている技術を適用する動機付けがないし、適用してもεaをεbよりも小さくすることを示す証拠がないから、相違点4に係る構成に到達しない。 ウ 以上のとおり、申立人Bが主張する特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (2)特許法第36条第6項第1号 ア 申立人Bの主張する理由 発明の詳細な説明には、試験例1~5の組み合わせ以外の場合においてまで所望の効果が得られると当業者が認識できる程度に具体例を記載しているとはいえないから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 判断 具体的な値の組み合わせが試験例1~5しかないとしても、上記1(3)で説示したとおり、本件明細書の記載に接した当業者であれば、本件訂正発明は、構造体の曲げ中心軸を移動するために、構造体としての「h」「εa」「εb」が規定されているのであり、コア層、第1のフィルム層、第2のフィルム層それぞれ単体としての厚さや「εa」「εb」を規定することは要しない発明であることが理解できるのであり、サポート要件に違反するという申立人Bの主張を採用することができない。 ウ 以上のとおり、申立人Bが主張する特許法第36条第6項第1号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (3)特許法第36条第6項第2号 ア 申立人Bの主張する理由 請求項1の「ひずみεa」と「ひずみεb」は、測定時の各条件が不明確であるから「ひずみεa」と「ひずみεb」も不明確であるため、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 判断 上記1(4)で説示したとおり、本件訂正発明の「ひずみεa」「ひずみεb」は明確である。 測定条件についても上記1(2)で説示したとおり、本件明細書の記載を参酌すれば「εa」「εb」を測定する具体的な方法及びタイミングが記載されているから、「εa」「εb」の測定条件が不明確ということはできない。 なお申立人Bは、「ひずみεa」は、「第1のフィルム層の上に意匠層が設けられた構造体における第1のフィルム層側の面のひずみεa」である旨主張しているが、本件訂正発明1は「前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体における前記第1のフィルム層側の面のひずみεa」と規定しているから、申立人Bの上記主張は、請求項の記載に基づかないものである。 ウ 以上のとおり、申立人Bが主張する特許法第36条第6項第2号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (4)特許法第36条第4項第1号 ア 申立人Bの主張する理由 発明の詳細な説明の記載では、試験例1~5の組み合わせ以外にパラメータを満たす組み合わせを見つけるためには過度の試行錯誤が必要であり、測定条件も不明確であるから、本件請求項1~3に係る発明は、当業者がその実施をできる程度に発明の詳細な説明に記載されていないため、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 イ 判断 上記(2)で説示したとおり、具体的な値の組み合わせが試験例1~5しかないとしても、本件訂正発明は、コア層、第1のフィルム層、第2のフィルム層それぞれ単体としての厚さや「εa」「εb」を規定することを要しない発明であることを、当業者は過度の試行錯誤をすることなく理解することができる。 また、上記(3)で説示したとおり、「εa」「εb」の測定条件が不明確ということもできない。 ウ 以上のとおり、申立人Bが主張する特許法第36条第4項第1号に係る特許異議申立理由を採用することはできない。 (5)訂正により生じたとする取消理由(特許法第36条第6項第2号)について 申立人Bは、令和6年4月24日付け意見書において、フィルム厚みμmをmmに換算して段落【0052】の【表1】を再計算すると、以下の参考表に示すとおり、試験例3~7における「εa×h/(εa+εb)」は両フィルムを除くコア層の厚みを「構造体の厚みh」」として計算した結果であり、試験例1及び2はどのように「εa×h/(εa+εb)」を計算したのか不明であるから、請求項1における「構造体の厚みh」が、「両フィルムとコア層を含む構造体の厚み」であるか、「両フィルムを除くコア層の厚み」のいずれであるのか不明であるため、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるという取消理由が本件訂正により生じた旨主張する。 [図:0001415272000001.jpg] しかしながら、「構造体の厚みh」について、請求項1には「前記第1のフィルム層、前記コア層、および前記第2のフィルム層の構造体」の「厚みh」と規定されているのだから、「前記構造体の厚みh」が「第1のフィルム層」と「コア層」と「第2のフィルム層」を合わせた「構造体」の厚みであることは明確である。 一方、段落【0052】の【表1】をみると、申立人B主張のとおり「εa×h/(εa+εb)」の値は誤りであるけれども、【表1】に記載された第1フィルム、コア層、第2フィルムそれぞれの厚みとεa及びεbの値を用いれば、申立人Bによる再計算のごとく、第三者でも「εa×h/(εa+εb)」の正しい値を算出可能である。 すなわち、【表1】における「εa×h/(εa+εb)」が誤りであることは第三者でも容易に理解できるものであって、正しい値が上記参考表に「構造体の厚みがh」として記載された数値であることもまた容易に理解できる。 そして、「εa×h/(εa+εb)」を正しい値として【表1】をみても、「εa×h/(εa+εb)<5」(試験例1~4)であれば皺の発生が無いのだから、本件発明の効果が確認できることに変わりがない。 そうすると、段落【0052】の【表1】において、「εa×h/(εa+εb)」の値に誤りがあることは、第三者が容易に理解できる明らかな誤記にすぎず、本件発明の理解に何ら影響を及ぼすものではない。 したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700612

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