特許異議申立
2024-700191
自動車用遮音材
- 審判番号
- 2024-700191
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-547628
- 登録番号
- 7343516
- 請求日
- 2024年02月29日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】寿屋フロンテ株式会社
- 【権利者代理人】奥山 尚一
- 【権利者代理人】中村 綾子
- 【権利者代理人】森本 聡二
- 【権利者代理人】田中 祐
- 【異議申立人】後藤 正樹
- 【異議申立人】早川 利子
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 高橋 宣博
- 分類
- P1651.121-Y (G10K) / P1651.536-Y (G10K) / P1651.537-Y (G10K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7343516号発明「自動車用遮音材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7343516号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7343516号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年9月25日に出願され、令和5年9月4日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和6年2月29日に特許異議申立人後藤正樹により、同年3月12日に特許異議申立人早川利子により、それぞれ特許異議の申立て(以下、前者を「申立1」、後者を「申立2」という。)がされた。
2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明5」という。また、本件発明1~5をまとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
〔本件発明1〕【請求項1】
筒状のセルが隣接して複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔であり、
前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である自動車用遮音材。
〔本件発明2〕【請求項2】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50~200μmである請求項1に記載の自動車用遮音材。
〔本件発明3〕【請求項3】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用遮音材。
〔本件発明4〕【請求項4】
前記コア層の前記セルが隣接して列をなす方向の前記セル間のピッチPcyが、10mm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
〔本件発明5〕【請求項5】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が、複数の異なる材料で積層された構造を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
3 特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
なお、以下、申立1において提出された甲第1~6号証を「甲1-1」~「甲1-6」、申立2において提出された甲第1~7号証を「甲2-1」~「甲2-7」という。
(理由1:進歩性(申立1、申立2))
本件発明1~5は、甲第1-1~1-6、甲第2-1~2-7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲1-1:特開平6-305062号公報
甲1-2:特開昭58-39545号公報
甲1-3:国際公開第2016/031479号
甲1-4:特開2017-65026号公報
甲1-5:特許第4231792号公報
甲1-6:特開2012-96778号公報
甲2-1:特開2018-54833号公報
甲2-2:国際公開第2016/031479号(甲1-3と同じ)
甲2-3:特表2008-520456号公報
甲2-4:ThermHex TECHNICAL DATA SHEET THPP80-FN、
https://thermhex.com/wp-content/uploads/2017/05/TH_Datbl_enl_THPP80_Ans.pdf
甲2-5:FRP Consultant 株式会社のウェブサイト「PP Honeycombのライセンス製造を行うThermHex 2018-07-04」、
https://www.frp-consultant.com/2018/07/04/pp-honeycomb-%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%A3%BD%E9%80%A0%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86-thermhex/
甲2-6: FRP Consultant 株式会社のウェブサイト「熱可塑性樹脂のHoneycombからみる企業戦略 2016-05-06」、
https://www.frp-consultant.com/2016/05/06/%E7%86%B1%E5%8F%AF%E5%A1%91%E6%80%A7%E6%A8%B9%E8%84%82%E3%81%AE-honeycomb-%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%BF%E3%82%8B-%E4%BC%81%E6%A5%AD%E6%88%A6%E7%95%A5/
甲2-7:特開2012-96778号公報(甲1-6と同じ)
(理由2:実施可能要件(申立1))
本件明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があるから、請求項1~5に係る特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。
(理由3:サポート要件(申立1、申立2))
本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1~5に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。
4 甲号証について
(1)甲1-1について
ア 記載事項
甲1-1には、次の記載がある。なお、以降の下線は当審において付されたものである。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両用や建築用の内装板、家庭用具の外装板、靴中敷き、人工芝生などに使用される、ハニカム化粧板の端末処理方法に関する。」
「【0010】端末を処理するハニカム化粧板1は、図2に断面で示したように、厚さ0.5~1.5mmの熱可塑性合成樹脂シートから、熱成形で多数の小凹部7を形成したエンボスシート3の凹部底面側に、厚さ0.3~1.5mmの熱可塑性合成樹脂製の平シート4を一体的に貼着してハニカムボード6を作製し、その平シート4の外面に装飾用の不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布2を貼着したものである。小凹部7は、例えば円柱または円錐台形の凹みであり、その径は3~7mm、深さは2~10mm程度であるから、ハニカムボード6の総厚さは3~10mm程度である。小凹部7は千鳥状や格子状に配置されている。
【0011】またエンボスシート3の凹部底面側ではなく、その凹部開口面側に平シート4を貼着し、その平シート4の外面に繊維布2を貼着したハニカム化粧板も同様に利用し得る。この場合多数の密封中空室が形成される。」
イ 甲1-1発明
上記アから、甲1-1には、次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1-1発明〕
車両用の内装板などに使用される、ハニカム化粧板であって、(【0001】)
厚さ0.5~1.5mmの熱可塑性合成樹脂シートから、熱成形で多数の小凹部を形成したエンボスシートの凹部底面側又は凹部開口面側に、厚さ0.3~1.5mmの熱可塑性合成樹脂製の平シートを一体的に貼着してハニカムボードを作製し、その平シートの外面に装飾用の不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布を貼着したものであり、小凹部は、例えば円柱または円錐台形の凹みであり、その径は3~7mm、深さは2~10mm程度であり、ハニカムボードの総厚さは3~10mm程度であり、小凹部は千鳥状や格子状に配置されている(【0010】、【0011】)
ハニカム化粧板。
(2)甲1-2について
ア 記載事項
甲1-2には、次の記載がある。
「 本発明は車両用内装材に関するものである。
従来プラスチック製段ボールは軽量で緩衝性がよく機械的に強いためそのまま、または露出面に表皮材を設けて車両の内装材として使用されるようになった。このような内装材は車室内の騒音を減ずると共に感触を良くするため第1図および第2図に示すように段ボールの裏面にフェルト、ウレタンフォーム等の緩衝材を被着したものが使用されるようになってきた。即ち第1図に示す内装材は、熱可塑性樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のシートから成る上部ライナー1と中芯2から構成されたプラスチック製片段ボールの上部ライナー1の外面に不織布またはニードルカーペット等の表皮材5を貼り、更に裏側に厚さ5~10mmのフェルト、ウレタンフォーム等の緩衝材層4を部分的にホットメルト又は粘着剤で貼ったものであり、平物又は成形品として車両のトランクルーム・フィニッシュ、リアパーセル等に使用されており、第2図に示す内装材は前記熱可塑性樹脂シートから成る上部ライナー1、中芯2および下部ライナー3から構成されたプラスチック製両段ボールの上部ライナー1の外面に、ウレタンフォームまたはPPフォーム7を接着フィルム6で接着するかまたは熱ラミネートし、更に外面にポリ塩化ビニル(PVC)シート又はクロス8を貼って表皮材層とし、一方裏側即ち下部ライナーの外面に厚さ5~10mmの緩衝材層4を全面又は部分的にホットメルト又は粘着剤で貼ったものであり、平物又は成形品として成形天井、ドアフィニッシュ等に使用されている。
しかしながらこのような従来の内装材にあってはプラスチック製段ボールの裏側の緩衝材層は、遮音、ビビリ音防止対策として使用していたため裏側の緩衝材層の厚さ分多くの場合5~10mmものスペースが必要であり、このスペースを設計時に考慮しなくてはならず、従って緩衝材層の分の車室内スペースが損われていた。」
イ 甲1-2発明
上記アから、甲1-2には、次の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されている。
〔甲1-2発明〕
熱可塑性樹脂シートから成る上部ライナー、中芯および下部ライナーから構成されたプラスチック製両段ボールの上部ライナー1の外面に、ウレタンフォームまたはPPフォームを接着フィルムで接着するかまたは熱ラミネートし、更に外面にポリ塩化ビニル(PVC)シート又はクロスを貼って表皮材層とし、一方裏側即ち下部ライナーの外面に遮音のために使用される厚さ5~10mmのフェルト、ウレタンフォーム等の緩衝材層を全面又は部分的にホットメルト又は粘着剤で貼ったものである
車両用内装材。
(3)甲1-3について
ア 記載事項
甲1-3には、次の記載がある。
「[0002] ハニカム構造体は、軽量で、強度に優れているため、従来から自動車、航空機、船舶などの乗物や土木建築などの各種産業分野における構造物の内装材や外装材などとして幅広く利用されている。また、合成樹脂製のハニカム構造体は、自動車などの衝撃吸収部品としても利用されている。
例えば、特開2013-237242号公報(特許文献1)では、ナイロン6などのポリアミド樹脂にグリシジルメタクリレート変性ポリエチレン共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体を配合してなる熱可塑性樹脂組成物を用いて、特定のセル形状を有するハニカム構造体を製造することにより、剛性及び衝撃吸収性を両立させることができ、連続成形性にも優れたハニカム構造体を得ることができることが記載されている。
しかし、従来のハニカム構造体は、耐水性が十分ではなく、ハニカム構造体内に水が浸入すると強度及び剛性が低下してしまい、用途が限られるといった問題があった。また、さらなる高強度及び高弾性率化による用途拡大が要望されている。」
「[0007] 本発明によれば、軽量で、強度及び剛性が高く、耐水性及び成形性にも優れたハニカム用基材、ならびに、それを用いてなるハニカム構造体及び該ハニカム構造体の上下面に平板を配してなるサンドイッチ構造体を得ることができる。」
「[0010]1.ハニカム用基材
まず、本発明のハニカム用基材について説明する。
本発明のハニカム用基材は、ポリアミド(A)及び変性ポリオレフィン(B)を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、
ポリアミド(A)が、キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4~20のα、ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有し、
変性ポリオレフィン(B)が、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、シアネート基、カルボキシル基及びこれらの組み合わせから選ばれる反応性官能基を有するポリオレフィンであり、
ポリアミド(A)/変性ポリオレフィン(B)の配合比が、質量基準で、100/15~70の範囲であることを特徴としている。
[0011] 上記のとおり、本発明では、特定のポリアミド(A)及び変性ポリオレフィン(B)を所定の配合比で含む熱可塑性樹脂組成物を用いる。上記熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、軽量でありながら、強度及び剛性が高く、耐水性にも優れたハニカム用基材を得ることができる。」
「[0058] 図1は本発明の好ましい一実施形態であるハニカム構造体の部分構造を示した概略斜視図である。図1において、ハニカム構造体100は複数のセル1a及び1bで構成され、セル1a及び1bはそれぞれセル側壁2と表層面により構成される。表層面は上面部材3aまたは下面部材3bからなる。ハニカム構造体100を構成するセルのうち、セル1aはセル側壁2と下面部材3bとで構成され、セル1bはセル側壁2と上面部材3aとで構成される。図1では、セル1a及び1bをそれぞれ一つずつ抜きだして図示した。
[0059] 本発明の好ましい一実施形態において、ハニカム構造体100は、複数の6角柱状のセル(セル1a、セル1b)をそれぞれ直線状に配列して形成される。各セルは、上面、下面の何れか一方に6角形状の表層面、すなわち上面部材3aまたは下面部材3bを有し、他方は開放されている。また、表層面の6辺を一つの辺として環状に隣接するセル側壁2を有し、表層面とセル側壁2は互いに垂直である。セル側壁2は長方形の平板からなり、6枚のセル側壁2の各長辺がそれぞれ隣接するセル側壁2の長辺と接続して6角柱状体を形成することにより、6枚のセル側壁2の短辺により6角形をした端部が形成される。この6角柱状体の上側端部または下側端部は、6角形状の表層面(上面部材3aまたは下面部材3b)によって塞がれている。また上面部材3aおよび下面部材3bの反対側の端部は開放されている。
[0060] 図中の矢印Xuの方向に、上面部材3aを有するセル1bを直線的に配置し、上面では上面部材3aが連続的に連結している。また、図中の矢印Xbの方向に、下面部材3bを有するセル1aを直線的に配置し、下面では下面部材3bが連続的に連結している。セル1aを連続的に連結した列とセル1bを連続的に連結した列を交互に配置することによりハニカム構造体100を構成する。すなわち、上面に上面部材3aを有するセル1bの群は、矢印Xu方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yu方向には間欠的にセル側壁2を介して連結される。また、下面に下面部材3bを有するセル1aの群は、矢印Xb方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yb方向には間欠的にセル側壁2を介して連結される。」
「[0072]3.サンドイッチ構造体
次に、本発明のサンドイッチ構造体について説明する。本発明のサンドイッチ構造体は、前述したハニカム構造体の上下面に、目的に応じた平板を配することにより構成される。
[0073] 平板の材質は、接着性、強度、剛性、耐水性等の観点から、本発明のハニカム構造体と同一の素材(すなわち本発明のハニカム用基材)であることが好ましい。あるいは、サンドイッチ構造体の目的及び用途に応じて、ハニカム構造体とは異なる素材の平板を上下面に配してもよい。ハニカム構造体と平板は、例えば接着剤などを用いて、あるいは熱溶着などによって接合することができる。
[0074] ハニカム構造体とは異なる素材の平板の素材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、木材、繊維及びガラスなどが挙げられる。」
「[図1]
[図:0001411365000001.jpg]
」
イ 甲1-3技術
上記アから、甲1-3には、次の技術(以下、「甲1-3技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1-3技術〕
ハニカム構造体の上下面に、目的に応じた平板を配することにより構成されるサンドイッチ構造体であって、([0072])
ハニカム構造体を形成する複数の6角柱状のセルは、6角柱状体の上側端部または下側端部が、6角形状の上面部材または下面部材によって塞がれており、また上面部材および下面部材の反対側の端部は開放されており、ハニカム構造体は、下面部材を有するセルを連続的に連結した列と上面部材を有するセルを連続的に連結した列を交互に配置することにより構成され、([0059]、[0060])
ハニカム用基材はポリアミド及び変性ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物からなり、軽量でありながら、強度及び剛性が高く、耐水性にも優れたものであり、([0010]、[0011])
平板の材質は、接着性、強度、剛性、耐水性等の観点から、本発明のハニカム構造体と同一の素材であることが好ましく、あるいは、サンドイッチ構造体の目的及び用途に応じて、ハニカム構造体とは異なる素材の平板を上下面に配してもよく、ハニカム構造体とは異なる素材の平板の素材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる([0073]、[0074])
サンドイッチ構造体。
(4)甲1-4について
ア 記載事項
甲1-4には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来、内部に多角柱形状又は円柱形状をなす複数のセルが並設された中空板状の樹脂構造体が知られている。例えば、特許文献1に記載の樹脂構造体は、所定形状の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳むことにより、複数の六角柱形状のセルが区画されたコア層が形成されている。コア層の上下両面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層が接合されている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の樹脂構造体は、比較的に軽量で且つ十分な強度を有していることから、様々な用途で使用されることが想定される。とはいえ、特許文献1には、樹脂構造体を吸音材として使用することについて言及がない。そのため、特許文献1に記載の樹脂構造体は、吸音率を向上させるための適切な処置が採用されているとは言い難く、吸音率の向上という点でさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体であって、前記セルは、当該セルを柱形状に区画する合成樹脂製の側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する閉塞壁とを備え、前記閉塞壁には、前記セルの内外を連通させる連通孔が設けられ、当該連通孔の開口縁は、前記セルの内部空間に位置していることを特徴とする。
【0006】
上記の発明によれば、連通孔を介して各セルの内部空間に音圧が入り、その内部空間において音圧を効果的に低減できる。すなわち、本発明の樹脂構造体は、各セルをヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。また、連通孔の開口縁をセルの内部空間に位置させることにより、ヘルムホルツ共鳴器の「管部の長さ」に相当する長さを長くすることができ、比較的に低い周波数帯において吸音率が向上する。」
イ 甲1-4技術
上記アから、甲1-4には、次の技術(以下、「甲1-4技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1-4技術〕
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体であって、前記セルは、当該セルを柱形状に区画する合成樹脂製の側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する閉塞壁とを備え、前記閉塞壁には、前記セルの内外を連通させる連通孔が設けられ、当該連通孔の開口縁は、前記セルの内部空間に位置しており、(【0005】)
連通孔を介して各セルの内部空間に音圧が入り、その内部空間において音圧を効果的に低減できる(【0006】)
樹脂構造体。
(5)甲1-5について
ア 記載事項
甲1-5には、次の記載がある。
「【0034】
図2(a)~(d)は、上記中空構造板を吸音構造板として用いた好適な実施の形態を示している。同図に示される吸音構造板は、二枚の熱可塑性樹脂シート110,110Aに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部(ピンないしはエンボスピンと称することもある)112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材120の表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シート110,110Aにおける中空凸部112,112の間の部分)114,114に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シート130,130Aを貼り合わせることにより構成される中空構造板140と、中空構造板140の表裏両面のうち少なくともいずれかの面に貼り合わされた多孔質材料からなる吸音材150とを備え、中空構造板140内の閉空間142,142に開口する小孔114a,130aを、吸音材150が貼り合わされた側に位置する熱可塑性樹脂シート110のライナー部114及び非通気性シート130の該ライナー部114と整合する位置のみに形成してなっている。」
「
[図:0001411365000002.jpg]
」
イ 甲1-5技術
上記アから、甲1-5には、次の技術(以下、「甲1-5技術」という。)が記載されている。
〔甲1-5技術〕
二枚の熱可塑性樹脂シートに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シートにおける中空凸部の間の部分)に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シートを貼り合わせることにより構成される中空構造板と、中空構造板の表裏両面のうち少なくともいずれかの面に貼り合わされた多孔質材料からなる吸音材とを備え、中空構造板内の閉空間に開口する小孔を、吸音材が貼り合わされた側に位置する熱可塑性樹脂シートのライナー部及び非通気性シートの該ライナー部と整合する位置のみに形成してなる、吸音構造板。
(6)甲1-6について
ア 記載事項
甲1-6には、次の記載がある。
「【0067】
図1は、セダン型自動車に適用してなる本発明の第1実施形態を示している。当該自動車は、エンジンルーム10及び車室20を備えており、車室20は、当該自動車において、エンジンルーム10に後続して設けられている。なお、エンジンルーム10内には、エンジンEが配設されている。また、車室20内には、前側座席Sが配設されている。
【0068】
また、当該自動車は、ダッシュボード30(ダッシュパネル30ともいう)を備えており、このダッシュボード30は、図1の縦断面形状にて示すごとく、その中央部から上下両側部を後方へ上下に傾斜状に屈曲するように延出させて形成されている。このように構成したダッシュボード30は、エンジンルーム10と車室20との境界に設けられて、これらエンジンルーム10及び車室20を相互に区画している。なお、ダッシュボード30は、その延出上端部にて、車室20のフロントウインドシールドの下縁部に連結されており、このダッシュボード30の延出下端部は、車室20の床壁の前縁部に連結されている。
【0069】
また、当該自動車は、ダッシュサイレンサーDSを備えている。このダッシュサイレンサーDSは、図1にて示すごとく、ダッシュボード30に沿い車室20側から組み付けられており、当該ダッシュサイレンサーDSは、図2にて示すごとく、その上下方向中央部にて、当該自動車の後方側からみて凹な湾曲板形状となるように、かつ、その上縁部から下縁部にかけて、図3にて例示するような縦断面凹凸板形状を有するように構成されている。
【0070】
当該ダッシュサイレンサーDSは、図3或いは図4にて示すごとく、前側層40、フィルム積層体50及び後側層60を備えており、これら前側層40、フィルム積層体50及び後側層60は、順次、当該自動車の前側から後側にかけて積層して形成されている。
【0071】
前側層40は、図3の縦断面形状にて例示するごとく、その中央部から上下両側部を後方へ上下に傾斜状に屈曲して延出させるように、所定の前側層用多孔質材料により形成されており、この前側層40は、その前面にて、ダッシュボード30にその後面に沿い組み付けられている。
【0072】
本第1実施形態において、上述した前側層40の厚さは、8(mm)を基準に設定されている。また、上述した所定の前側層用多孔質材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)からなるフェルトであって、所定の目付量(単位面積当たりの重量)を有するフェルト(以下、前側層用フェルトという)が採用されている。ここで、当該前側層用フェルトの上記所定の目付量は、300(g/m2)である。
【0073】
フィルム積層体50は、図2或いは図3から分かるごとく、前側層40及び後側層60の各中央右側中間部位41、61の間に挟持されている。本第1実施形態では、前側層40及び後側層60の各中央右側中間部位41、61は、それぞれ、ダッシュサイレンサーDSの厚さ増大部位(図2にて符号R参照)に対応する。
【0074】
当該フィルム積層体50は、図4にて例示するごとく、前側フィルム層50a及び後側フィルム層50bからなるもので、後側フィルム層50bは、後述のごとく、前側フィルム層50aにその後面側から積層されている。
【0075】
前側フィルム層50aは、図5にて例示するごとく、前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53を積層して平膜状に形成されている。前側融着フィルム51は、所定の前側融着フィルム用熱可塑性材料により、所定の厚さでもって平膜状に形成されており、この前側融着フィルム51は、その前面にて、前側層40の中央右側中間部位41にその後面に沿い融着されている。
【0076】
本第1実施形態において、上述した前側融着フィルム51の所定の厚さは、20(μm)に設定されている。また、上述した所定の前側融着フィルム用熱可塑性材料としては、ポリエチレンが採用されている。
【0077】
バリアフィルム52は、所定のバリアフィルム用熱可塑性材料により、所定の厚さでもって平膜状に形成されており、このバリアフィルム52は、前側融着フィルム51にその後面側から融着されている。
【0078】
本第1実施形態において、上述したバリアフィルム52の所定の厚さは、15(μm)に設定されている。また、上述した所定のバリアフィルム用熱可塑性材料としては、ナイロンが採用されている。なお、本第1実施形態において、上述のごとく、所定のバリアフィルム用熱可塑性材料としてナイロンを採用したのは、ナイロンが、上述した前側融着フィルム51の形成材料であるポリエチレンよりも高い融点を有するためである。
【0079】
後側融着フィルム53は、所定の後側融着フィルム用熱可塑性材料により、平膜状に形成されており、この後側融着フィルム53は、バリアフィルム52にその後面側から融着されている。本第1実施形態において、上述した所定の後側融着フィルム用熱可塑性材料としては、前側融着フィルム51と同様に、ポリエチレンが採用されている。なお、上述したバリアフィルム52の前側融着フィルム51及び後側フィルム53との融着は、ナイロンの融点よりも低い温度にてなされている。
【0080】
後側フィルム層50bは、図5にて例示するごとく、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56を積層して形成されている。本第1実施形態では、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の各形成材料は、それぞれ、前側フィルム層50aの前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53の各形成材料と同様である。
【0081】
当該後側フィルム層50bは、図4或いは図5にて例示するごとく、平膜部50cと、多数の円筒部50dとにより構成されており、当該後側融着フィルム層50bは、平膜部50cにて、前側フィルム層50aにその後面側から融着されて、多数の円筒部50dを前側フィルム層50aとは逆方向に突出している。」
「【図3】
[図:0001411365000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001411365000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001411365000005.jpg]
」
イ 甲1-6技術
上記アから、甲1-6には、次の技術(以下、「甲1-6技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1-6技術〕
前側層、フィルム積層体及び後側層を備えた、自動車のダッシュサイレンサーであって、(【0069】、【0070】)
当該フィルム積層体が、前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53を積層して平膜状に形成されている前側フィルム層、及び、平膜部50cと、多数の円筒部50dとにより構成されている後側フィルム層からなる(【0074】、【0075】、【0081】)
ダッシュサイレンサー。
(7)甲2-1について
ア 記載事項
甲2-1には、次の記載がある。
「【0015】
本発明に係る吸音性に優れた床材の一実施形態を説明する。図1に示すように、本実施形態の吸音性に優れた床材1は、通気性の表皮材層2の下面側に連続気泡を有する多孔質材料3と、該多孔質材料3の下面側に繊維層4と、第内部(当審注:「第内部」は「内部」の誤記と認めた。)に空気室を有すると共に筒状の壁体を有するセルが該壁体を介して隣接するように複数配列されて構成されたコア層5とを、備え、前記通気性の表皮層2と前記多孔質材料3と前記繊維層4と前記コア層5の合計の厚みが、30mm~100mmであることを特徴とする。」
「【0021】
前記多孔質材料3の下面側に前記繊維層4と前記コア層5とを積層する順序としては、特に限定されるものではなく、どの順番に積層してもよく、複数層を積層しても構わない。この場合、160Hz~500Hzの低周波帯域での吸音性をより向上させることができる。」
「【0030】
前記繊維層4としては、不織布、立体編物からなる群より選ばれる1種又は複数の繊維層が用いられていることが好ましい。中でも、層の内部に多くの空気層有しており、吸音率のピーク周波数を低周波帯域に持たせることができることから、中でも、不織布であることがより好ましい。例えば、不織布を第1層、立体編物を第2層、不織布を第3層に分けて合計3層として積層しても良いし、前記繊維層4と前記繊維層4の間に、前記コア層5を挟んでも良い。
【0031】
前記繊維層4に用いられる不織布としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニードルパンチ不織布、ウォーターニードル不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等が挙げられる。これらの中でも、メルトブロー不織布を用いることが吸音性をより高めることができる点で好ましい。
【0032】
前記繊維層4に用いられる立体編物としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面編物と連結糸で構成されるダブルラッセル構造が挙げられる。これらの中でも、表面編物に通気性の良い編組織を用いることが吸音性をより高めることができる点で好ましい。
【0033】
前記繊維層4の目付としては、150g/m2~2000g/m2であることが好ましい。150g/m2以上であることで床材としての耐久性を付与させることができ、2000g/m2以下であることで通気性が保持できるため、吸音性を向上させることができる。中でも230g/m2~1100g/m2であることがより好ましい。
【0034】
前記繊維層4のかさ密度としては、特に限定されるものではないが、0.01g/cm3~0.3g/cm3であることが好ましい。0.01g/cm3以上であることで床材としての耐久性を付与させることができ、0.3g/cm3以下であることで通気性を保持し、吸音性を向上させることができる。中でも0.02g/cm3~0.3g/cm3であることがより好ましい。
【0035】
前記繊維層4の空隙率としては、特に限定されるものではないが、60%~95%であることが好ましい。60%以上であることで内部空隙を利用して吸音性を向上させることができ、95%以下であることで床材の形状及び耐久性を保持することができる。中でも70%~90%であることがより好ましい。
【0036】
前記繊維層4の繊維径としては、特に限定されるものではないが、3デシテックス~20デシテックスであることが好ましい。3デシテックス以上であることで繊維層の形成を容易に行うことができ、20デシテックス以下であることで空気層を均一に含んだ層を形成することができる。中でも5デシテックス~15デシテックスであることがより好ましい。
【0037】
前記繊維層4に用いられている繊維の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられ、中でもコスト面及び繊維層の耐久性という点から、ポリエステルであることがより好ましい。
【0038】
前記繊維層4の厚みとしては、特に限定されるものではないが、2mm~20mmであることが好ましい。2mm以上であることで吸音性を向上させることができ、20mm以下であることで床材としての取り回しを容易にすることができる。中でも3mm~15mmであることがより好ましい。」
「【0039】
前記コア層5としては、 内部に空気室を有すると共に筒状の壁体を有するセルが該壁体を介して隣接するように複数配列されて構成されたコア層である必要がある。例えば、前記コア層の両面側には何も積層していないコア層であっても良いし、表面に貫通孔がある樹脂シートが前記コア層の片面または両面に積層しているコア層であっても良い。中でも、前記コア層の内部にある空気室の空気が音の振動によって共振することで、音のエネルギーを熱エネルギーに変換して、吸音性を向上させることができるため、目的とする音の周波数に応じてセルサイズを変更可能な構造であることがより好ましい。
【0040】
前記コア層5の筒状の壁体としては、壁体に孔が開いておらず独立していても良いし、前記空気室と該空気室とを連通する連通孔を設けていても構わない。
【0041】
前記コア層5の厚みとしては、3mm~30mmであることが好ましい。3mm以上であることで吸音性を向上させることができ、30mm以下であることで部材の取り回しを容易にすることができる。中でも5mm~28mmであることがより好ましい。
【0042】
前記コア層5の筒状の大きさとしては、特に限定されるものではないが、20mm2~400mm2であることが好ましい。20mm2以上であることでコア層内部の空気を利用して吸音性を高めることができ、400mm2以下であることでコア層としての強度を維持することができる。
【0043】
前記コア層5の筒状の形状としては、特に限定されるものではないが、正六角柱状、正八角柱状等の多角形状や円柱状であってもよい。また、異なる形状のセルが混在していてもよい。
【0044】
前記コア層5を構成する材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、紙、熱可塑性樹脂、等が挙げられる。」
「【実施例】
【0049】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0050】
<使用材料>
(通気性の表皮材層2及び多孔質材層3)
A:通気性の表皮材層2としては、目付90g/m2のポリエステル繊維製不織布からなる基布に、ナイロン糸からなる目付520g/m2のループパイルがタフトされたカーペットの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2のプレコート層を形成せしめて、表皮材層を得た。次に、表皮材層の上に、接着樹脂(ポリエチレンパウダー、平均粒径355μm、メルトフローレイト値200、融点107℃)を散布量300g/m2で散布し、次いで加熱装置により、150℃で接着樹脂を加熱溶融せしめた後、この上にポリウレタンフォーム(厚み6mm、目付660g/m2)を重ね合わせつつ、水冷式の冷却加圧ロールで加圧して、冷却した後、50cm角に裁断した。(厚みは9.0mmであった。)
B:通気性の表皮材層2としては、目付90g/m2のポリエステル繊維製不織布からなる基布に、ナイロン糸からなる目付520g/m2のループパイルがタフトされたカーペットの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2のプレコート層を形成せしめて、表皮材層を得た。次に、表皮材の上に、接着樹脂(ポリエチレンパウダー、平均粒径355μm、メルトフローレイト値200、融点107℃)を散布量300g/m2で散布し、次いで加熱装置により、150℃で接着樹脂を加熱溶融せしめた後、この上にポリエステルニードルパンチ不織布(厚み5mm、目付560g/m2)からなる2次基布を重ね合わせつつ、水冷式の冷却加圧ロールで加圧して、冷却した後、50cm角に裁断した。(厚みは8.0mmであった。)
(繊維層4)
C:不織布(厚み15mm、目付375g/m2、繊維材質ポリエステル、かさ密度0.025g/cm3、空隙率90%、繊維の太さ10dtex)
D:不織布(厚み5mm、目付600g/m2、繊維材質ポリエステル、かさ密度0.03g/cm3、空隙率90%、繊維の太さ15dtex)
E:立体編物(ユニチカテクノス株式会社製、品番UTK003(SZ003)、厚み3mm、ポリエステル100%、230g/m2)
F:立体編物(ユニチカテクノス株式会社製、品番UTK294(SZ294)、厚み5mm、ポリエステル100%、340g/m2)
G:立体編物(ユニチカテクノス株式会社製、品番R14006-2、厚み10mm、ポリエステル100%、790g/m2)
(コア層5)
H:樹脂シートが両面に積層されているハニカムコア層(岐阜プラスチック工業株式会社製、商品名テクセル(TECCELL)、厚み28mm、コアサイズ65mm2、材質ポリプロピレン)において、樹脂シート(厚み1mm)の片方の面に貫通孔(直径1mm、個数120個/10cm×10cm)を開けたもの。なお、貫通孔がある面を上側にした。
I:コア層の両面側に何も積層していないペーパーハニカムコア層(構造:ハニカム、材質:紙、コアサイズ100mm2)
なお、ペーパーハニカムコア層は各厚みになるようにカットして使用した。」
「【0052】
<実施例2>
通気性の表皮材層2及び多孔質材層3としてAを、多孔質材層3の下面側に繊維層4としてCを1枚及びGを1枚、繊維層4の下面側にコア層5としてHを、さらにコア層5の下面側に繊維層4としてCを1枚積層して、図1に示すように、床材1を得た。
【0053】
<実施例3>
通気性の表皮材層2及び多孔質材層3としてAを、多孔質材層3の下面側に繊維層4としてGを1枚、繊維層4の下面側にコア層5としてHを、さらにコア層5の下面側に繊維層4としてCを2枚積層して、図1に示すように、床材1を得た。」
「【0072】
表3から明らかなように、本発明の実施例1~10の床材は、160~500Hzの低周波帯域で吸音性に優れていた。」
「【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る床材は、例えば、自動車、航空機、船舶等の床材として好適である。」
イ 甲2-1発明
上記アから、甲2-1には、次の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲2-1発明〕
通気性の表皮材層の下面側に連続気泡を有する多孔質材料と、該多孔質材料の下面側に繊維層と、内部に空気室を有すると共に筒状の壁体を有するセルが該壁体を介して隣接するように複数配列されて構成されたコア層とを、備えた吸音性に優れた床材であって、(【0015】)
前記多孔質材料の下面側に前記繊維層と前記コア層とを積層する順序としては、特に限定されるものではなく、どの順番に積層してもよく、(【0021】)
前記繊維層としては、不織布、立体編物からなる群より選ばれる1種又は複数の繊維層が用いられていることが好ましく、中でも、層の内部に多くの空気層有しており、吸音率のピーク周波数を低周波帯域に持たせることができることから、不織布であることがより好ましく、(【0030】)
前記繊維層に用いられる不織布としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニードルパンチ不織布、ウォーターニードル不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等が挙げられ、これらの中でも、メルトブロー不織布を用いることが吸音性をより高めることができる点で好ましく、(【0031】)
前記繊維層に用いられる立体編物としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面編物と連結糸で構成されるダブルラッセル構造が挙げられ、これらの中でも、表面編物に通気性の良い編組織を用いることが吸音性をより高めることができる点で好ましく、(【0032】)
前記繊維層の目付としては、150g/m2~2000g/m2であることが好ましく、150g/m2以上であることで床材としての耐久性を付与させることができ、2000g/m2以下であることで通気性が保持できるため、吸音性を向上させることができ、中でも230g/m2~1100g/m2であることがより好まく、(【0033】)
前記繊維層のかさ密度としては、特に限定されるものではないが、0.01g/cm3~0.3g/cm3であることが好ましく、0.01g/cm3以上であることで床材としての耐久性を付与させることができ、0.3g/cm3以下であることで通気性を保持し、吸音性を向上させることができ、中でも0.02g/cm3~0.3g/cm3であることがより好ましく、(【0034】)
前記繊維層の空隙率としては、特に限定されるものではないが、60%~95%であることが好ましく、60%以上であることで内部空隙を利用して吸音性を向上させることができ、95%以下であることで床材の形状及び耐久性を保持することができ、中でも70%~90%であることがより好ましく、(【0035】)
前記繊維層の繊維径としては、特に限定されるものではないが、3デシテックス~20デシテックスであることが好ましく、3デシテックス以上であることで繊維層の形成を容易に行うことができ、20デシテックス以下であることで空気層を均一に含んだ層を形成することができ、中でも5デシテックス~15デシテックスであることがより好ましく、(【0036】)
前記繊維層に用いられている繊維の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられ、中でもコスト面及び繊維層の耐久性という点から、ポリエステルであることがより好ましく、(【0037】)
前記繊維層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、2mm~20mmであることが好ましく、2mm以上であることで吸音性を向上させることができ、20mm以下であることで床材としての取り回しを容易にすることができ、中でも3mm~15mmであることがより好ましく、(【0038】)
前記コア層としては、表面に貫通孔がある樹脂シートが前記コア層の片面または両面に積層しているコア層であってもよく、(【0039】)
前記コア層の筒状の壁体としては、壁体に孔が開いておらず独立していても良いし、前記空気室と該空気室とを連通する連通孔を設けていても構わず、(【0040】)
前記コア層の厚みとしては、3mm~30mmであることが好ましく、3mm以上であることで吸音性を向上させることができ、30mm以下であることで部材の取り回しを容易にすることができ、中でも5mm~28mmであることがより好ましく、(【0041】)
前記コア層の筒状の大きさとしては、特に限定されるものではないが、20mm2~400mm2であることが好ましく、20mm2以上であることでコア層内部の空気を利用して吸音性を高めることができ、400mm2以下であることでコア層としての強度を維持することができ、(【0042】)
前記コア層の筒状の形状としては、特に限定されるものではないが、正六角柱状、正八角柱状等の多角形状や円柱状であってもよく、また、異なる形状のセルが混在していてもよく、(【0043】)
前記コア層を構成する材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、紙、熱可塑性樹脂、等が挙げられ、(【0044】)
実施例2は、通気性の表皮材層及び多孔質材層としてAを、多孔質材層の下面側に繊維層としてCを1枚及びGを1枚、繊維層の下面側にコア層としてHを、さらにコア層の下面側に繊維層としてCを1枚積層して、床材を得たものであり、(【0052】)
実施例3は、通気性の表皮材層及び多孔質材層としてAを、多孔質材層の下面側に繊維層としてGを1枚、繊維層の下面側にコア層としてHを、さらにコア層の下面側に繊維層としてCを2枚積層して、床材を得たものであり、(【0053】)
Aは、通気性の表皮材層としては、目付90g/m2のポリエステル繊維製不織布からなる基布に、ナイロン糸からなる目付520g/m2のループパイルがタフトされたカーペットの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2のプレコート層を形成せしめて、表皮材層を得て、次に、表皮材層の上に、接着樹脂(ポリエチレンパウダー、平均粒径355μm、メルトフローレイト値200、融点107℃)を散布量300g/m2で散布し、次いで加熱装置により、150℃で接着樹脂を加熱溶融せしめた後、この上にポリウレタンフォーム(厚み6mm、目付660g/m2)を重ね合わせつつ、水冷式の冷却加圧ロールで加圧して、冷却した後、50cm角に裁断した(厚みは9.0mmであった。)ものであり、(【0050】)
Cは、不織布(厚み15mm、目付375g/m2、繊維材質ポリエステル、かさ密度0.025g/cm3、空隙率90%、繊維の太さ10dtex)であり、(【0050】)
Gは、立体編物(ユニチカテクノス株式会社製、品番R14006-2、厚み10mm、ポリエステル100%、790g/m2)であり、(【0050】)
Hは、樹脂シートが両面に積層されているハニカムコア層(岐阜プラスチック工業株式会社製、商品名テクセル(TECCELL)、厚み28mm、コアサイズ65mm2、材質ポリプロピレン)において、樹脂シート(厚み1mm)の片方の面に貫通孔(直径1mm、個数120個/10cm×10cm)を開けたもので、貫通孔がある面を上側にしたものであり、(【0050】)
上記実施例の床材は、160~500Hzの低周波帯域で吸音性に優れており、(【0072】)
自動車等の床材として好適である、床材。(【0074】)
(8)甲2-2について
甲2-2の記載事項及び甲2-2に記載された技術は、上記(3)に示したとおりである。
(9)甲2-3について
ア 記載事項
甲2-3には、次の記載がある。
「【0016】
図3は、2列の六角形のハニカムセルを形成するためにほぼ完全に折り畳まれた材料を示す。折り畳まれることによって、隣接する領域3(あるいは4)は相互に当接する。各ハニカムセルは少なくとも一方の側で領域3または4により閉鎖される。つまり、セルは一方の端部で領域3、4により形成される閉鎖された面を有する。表面15は、たとえば接着剤または粘着材または超音波溶接のような溶接により相互に接続可能である。しかし、この接続は本発明に必須の要件ではない。」
「【0025】
折り畳まれたハニカムコアおよび被覆層に使用される原材料に応じてサンドイッチパネルは、たとえば構造部品、衝撃および衝突保護、装飾パネルまたは梱包用途に使用されることが可能である。」
「
[図:0001411365000006.jpg]
」
イ 甲2-3技術
上記アから、甲2-3には、次の技術(以下、「甲2-3技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲2-3技術〕
構造部品、衝撃および衝突保護、装飾パネルまたは梱包用途に使用されることが可能であるサンドイッチパネルであって、(【0025】)
折り畳まれることによって、隣接する領域は相互に当接し、各ハニカムセルは少なくとも一方の端部で閉鎖された面を有する(【0016】)
サンドイッチパネル。
(10)甲2-4について
ア 記載事項
甲2-4には、次の記載がある。
「
[図:0001411365000007.jpg]
」
イ 甲2-4技術
上記アから、甲2-4には、次の技術(以下、「甲2-4技術」という。)が記載されている。
〔甲2-4技術〕
コアの一方の端にスキン材の追加接触部分が一列おきに形成されているハニカム構造のThermHexコアと、ThermHexコアの両方の面に設けられたPP閉鎖フィルムと、PP閉鎖フィルムの外側に設けられたポリエステルフリース層とを備える複数構造体。
(11)甲2-5について
ア 記載事項
甲2-5には、次の記載がある。
「物性については一例としてTHPP80-FNという製品についてみてみたいと思います。基本的なカタログは以下のページで見ることができます。
https://thermhex.com/wp-content/uploads/2017/05/TH_Datbl_enl_THPP80_Ans.pdf」
(12)甲2-6について
ア 記載事項
甲2-6には、次の記載がある。
「上記の動画によるとeconcoreは20年以上にわたって ThermHexのハニカム技術を蓄積してきており、その高い剛性と強度のポテンシャルからコンテナ、自動車内装、建築物の床材などへの適用はもちろん、展示用の棚なども形状設計自由度を高めることに大きく貢献できていると述べられています。
動画の中では本製品は EXALITE(R)(当審中:「(R)」は丸中R)という商標で紹介されています。
現在のHPでは ThermHex という名前の製品が紹介されており、輸送コンテナを一例とした場合に想定されるメリットが以下のように述べられています。
・thermo-formability (complex shapes possible in one shot process, including over-molding options)
・thermal insulation (still air in the small honeycomb cells is a perfect insulator)
・enhanced damping performance
・weight reduction due to the honeycomb sandwich design
・cost reduction due to the in-line integrated, efficient production process
この中で興味を惹かれたのが、断熱性と減衰効果というところです。
熱可塑性の Honeycomb を用いることに限ったものではないのかもしれませんが、ハチの巣からヒントを得てロングセラーとなっている本技術はその特徴的な形状によって高剛性、変形柔軟性に加え減衰といった機能性を発現するのかもしれません。
尚、断熱性はハニカム構造中に残っている空気層が断熱層になると書かれています。
同様に自動車内装材のケースは以下のようなメリットや使用方法が想定されているようです。
・luggage compartment floor and spare wheel covers
・door panels / door inserts
・seat back stiffeners and compartment dividers
・cabin floor and underfloor systems
・overhead systems (enhanced sounds absorption with an open cell honeycomb structure)」
イ 甲2-6技術
上記アから、甲2-6には、次の技術(以下、「甲2-6技術」という。)が記載されている。
〔甲2-6技術〕
開放セルのハニカム構造コアにより吸音する自動車内装材。
(13)甲2-7について
甲2-7の記載事項及び甲2-7に記載された技術は、上記(6)に示したとおりである。
5 当審の判断
(1)理由1(進歩性(申立1、申立2))について
ア 甲1―1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明のハニカム化粧板は、エンボスシート、平シート及び繊維布により構成され、車両用に使用されるものの遮音性能は特定されていない。
よって、本件発明1と甲1-1発明は、複層構造の自動車用部材である点で共通し、当該自動車用部材が、本件発明1では自動車用遮音材であるのに対し、甲1-1発明では車両用の内装板などに使用されるハニカム化粧板であって、遮音材として使用されることは特定されていない点で相違する。
本件発明1のハニカム化粧板における、「熱可塑性合成樹脂シートから、熱成形で多数の小凹部を形成したエンボスシート」は、ハニカムボードにおけるハニカム構造を構成する層であり、小凹部が格子状に配置されているから、単位構造が複数の列をなして配置されているコア層といえるものである点で、本件発明1と共通する。
しかしながら、当該単位構造が、本件発明1では筒状のセルであって、隣接して配置されているのに対し、甲1-1発明では(例えば円柱または円錐台形の凹みである)小凹部であって、隣接して配置されていることは特定されていない点で、両者は相違する。
甲1―1発明のハニカム化粧板における、エンボスシートの凹部底面側又は凹部開口面側に一体的に貼着される「熱可塑性合成樹脂製の平シート」は、本件発明1の「前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層」に相当し、「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔であり、」に相当する構成を備えるものである。
本件発明1のデカップリング層について、本件明細書の【0039】には「デカップリング層30は、・・・繊維が好ましく、・・・発泡体も好ましい。また、繊維と発泡体を組み合わせてもよい。」と記載されているから、甲1-1発明のハニカム化粧板における、「不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布」はデカップリング層といえるものである。
そして、当該「不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布」は、エンボスシートに平シートを貼着したハニカムボードにおけるその平シートの外面に貼着されるものであるから、本件発明1の「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層」に相当する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲1-1発明のハニカム化粧板は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲1-1発明のハニカム化粧板は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
以上から、本件発明1と甲1-1発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
単位構造が複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用部材であって、
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔である
自動車用部材。
〔相違点1〕
自動車用部材が、本件発明1では自動車用遮音材であるのに対し、甲1-1発明では車両用の内装板などに使用されるハニカム化粧板であって、遮音材として使用されることは特定されていない点。
〔相違点2〕
単位構造が、本件発明1では筒状のセルであって、隣接して配置されているのに対し、甲1-1発明では(例えば円柱または円錐台形の凹みである)小凹部であって、隣接して配置されていることは特定されていない点。
〔相違点3〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲1-1発明のハニカム化粧板は、当該構成を備えていない点。
〔相違点4〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲1-1発明のハニカム化粧板は、当該構成を備えていない点。
b 判断
最初に上記相違点4について検討する。
デカップリング層の音響インピーダンスZaが、デカップリング層の素材、目付け、厚み等に依存することは、当業者にとって明らかな事項である。
一方、甲1-1発明のハニカム化粧板における、「不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布」(デカップリング層)は、目付け、厚みが特定されていない以上、Zaが上記相違点4に係る本件発明1の条件を満たすということはできない。
さらに、上記「不織布、立毛した布、またはそれらの布に発泡シートを裏打ちしたものなどから成る繊維布」(デカップリング層)は、装飾用とされているから、遮音特性の改善を試みようとする動機付けは存在しない。
以上から、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲1-1発明から当業者が容易に相当しうるものではない。
よって、相違点1~3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1-1発明及び甲1-2~1-6、2-1~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件発明2~本件発明5について
本件発明2~本件発明5も、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記(ア)と同様の理由により、当業者であっても甲1-1発明及び甲1-2~1-6、2-1~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 甲1―2発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1-2発明とを対比する。
甲1-2発明の「中芯」、熱可塑性樹脂のシートから成る「下部ライナー」、及び、「下部ライナーの外面に遮音のために使用される厚さ5~10mmのフェルト、ウレタンフォーム等の緩衝材層」は、本件発明1の「コア層」「前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層」「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層」にそれぞれ相当する。
さらに、前記熱可塑性樹脂のシートから成る「下部ライナー」は、本件発明1の「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔であり、」に相当する構成を備えるものである。
甲1-2発明の「車両用内装材」は、遮音のために使用される厚さ5~10mmのフェルト、ウレタンフォーム等の緩衝材層を備えるから、本件発明1の「自動車用遮音材」に相当する。
以上から、本件発明1の自動車用遮音材と甲1-2発明の車両用内装材は、「コア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材」である点で共通する。
しかしながら、前記コア層が、本件発明1では筒状のセルが隣接して複数の列をなして配置されているものであるのに対し、甲1-2発明では当該構造が備わっていない点で、両者は相違する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
以上から、本件発明1と甲1-2発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
コア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔である
自動車用遮音材。
〔相違点1〕
前記コア層が、本件発明1では筒状のセルが隣接して複数の列をなして配置されているものであるのに対し、甲1-2発明では当該構造が備わっていない点。
〔相違点2〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点。
〔相違点3〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点。
b 判断
最初に上記相違点3について検討する。
上記ア(ア)bでも示したとおり、デカップリング層の音響インピーダンスZaが、デカップリング層の素材、目付け、厚み等に依存することは、当業者にとって明らかな事項である。
一方、甲1-2発明の車両用内装材における、「緩衝材層」(デカップリング層)は、厚さ5~10mmのフェルト、ウレタンフォーム等とされているが、当該特定のみでは音響インピーダンスZaを特定することができず、Zaが上記相違点3に係る本件発明1の条件を満たすということはできない。
さらに、上記「緩衝材層」は、素材からは「デカップリング層」といえるものであるが、デカップリング機能を有するものとして使用することは甲1-2には記載も示唆もされていないから、甲1-2発明において、上記相違点3に係る本件発明1の比音響インピーダンス比の条件を考慮しようとする動機付けは存在しない。
以上から、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲1-2発明から当業者が容易に相当しうるものではない。
よって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1-2発明及び甲1-1、1-3~1-6、2-1~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件発明2~本件発明5について
本件発明2~本件発明5も、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記(ア)と同様の理由により、当業者であっても甲1-2発明及び甲1-1、1-3~1-6、2-1~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 甲2―1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2-1発明とを対比する。
甲2-1発明の「内部に空気室を有すると共に筒状の壁体を有するセルが該壁体を介して隣接するように複数配列されて構成されたコア層」は、本件発明1の「筒状のセルが隣接して複数の列をなして配置されているコア層」に相当する。
甲2-1発明の実施例2、3における、ハニカムコア層の両面に積層され、片方である上側の面に貫通孔が開けられている樹脂シートのうち、下側の貫通孔が開けられていない樹脂シートは、本件発明1の「前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層」に相当する。
甲2-1発明の実施例2、3における、コア層の下面側に積層される繊維層は、本件発明1の「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層」に相当し、「前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔であり、」に相当する構成を備えるものである。
甲2-1発明の上記各層を備えた床材は、自動車等の床材として好適であるから、「複層構造の自動車用部材」である点で本件発明1の自動車用遮音材と共通する。
しかしながら、当該自動車用部材が、本件発明1では自動車用遮音材であるのに対し、甲1-1発明では吸音性に優れている床材であって、遮音材として使用されることは特定されていない点で相違する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲2-1発明の床材は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲2-1発明の床材は、当該構成を備えていない点で、両者は相違する。
以上から、本件発明1と甲2-1発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
筒状のセルが隣接して複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が非開孔である
自動車用部材。
〔相違点1〕
自動車用部材が、本件発明1では自動車用遮音材であるのに対し、甲1-1発明では吸音性に優れている床材であって、遮音材として使用されることは特定されていない点。
〔相違点2〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点。
〔相違点3〕
本件発明1の自動車用遮音材は、「前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である」との構成を備えているのに対し、甲1-2発明の車両用内装材は、当該構成を備えていない点。
b 判断
最初に上記相違点3について検討する。
甲2-1発明の自動車等の床材は、160~500Hzの低周波帯域における吸音性を向上させるものであり、当該床材において500Hz~6400Hzの間の音響特性に基づいて(遮音に係る)構成を変更しようとする動機は存在しない。
したがって、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲2-1発明から当業者が容易に想到しうるものではない。
なお、申立2では、「甲1発明の狭い範囲の課題としては、160Hz~500Hzの低周波帯域の騒音に対する吸音率の改善を目的とするものであるが、より広い課題として、段落0005に「500~2000Hzの音域での吸音性には優れているが、さらなる吸音性の向上が求められている」旨が記載され、500~2000Hzの音域での吸音性の向上も課題とされ、実施例の評価としても、1000Hzでの吸音性も確認している(段落0070)。」との主張がなされている。
しかしながら、前者については、甲2-1の【0005】及び【0006】に「特許文献1では、500~2000Hzの音域での吸音性には優れているが、さらなる吸音性の向上が求められている。特に、車内で人が不快に感じる160Hz~500Hzの低周波帯域の騒音に対する吸音率の向上が求められている。本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、160Hz~500Hzの低周波帯域の吸音性に優れた床材を提供することが目的である。」と記載されているように、甲2-1発明が500~2000Hzの音域の吸音率向上を意図してなされたものとは認められない。
また、後者については、甲2-1の【0072】に「表3から明らかなように、本発明の実施例1~10の床材は、160~500Hzの低周波数帯域で吸音性に優れていた。」と記載されているように、1000Hzの音域の吸音率向上を意図したものとは認められない。
以上から、申立2の上記主張は採用することができない。
よって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲2-1発明及び甲1-1~1-6、2-1~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件発明2~本件発明5について
本件発明2~本件発明5も、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記(ア)と同様の理由により、当業者であっても甲2-1発明及び甲1-1~1-6、2-2~2-7に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)理由3(サポート要件(申立1、申立2))について
本件明細書の発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用遮音材に関し、さらに詳しくは、吸音性能を有する自動車用遮音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構造として、前方にエンジン室があり、後方にはトランク室があり、その中間に客室を設ける構造が一般的である。客室には、運転席、助手席および後部座席といった座席を設けている。また、客室には、自動車内装の外側を覆うようにダッシュインシュレータ、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、及びトランクフロアーが設置されており、これら部品は、車体の形状や部品のデザインに合わせた凹凸状の形状に成形されている。更に、車体下の外装には、フロントフェンダーライナー、リアフェンダーライナー、及び空気の流れを制御する凹凸形状に成形されたアンダーカバーが設置されている。これら部品の多くは、材料として熱可塑性樹脂が使用され、この材料を加熱して当該部品の形状の型によりプレス成形し、厚みが異なる複数の部分を有する凹凸形状の部品に仕上げられる。
【0003】
自動車開発の最近の動向として車内の静寂性が重要視されている。自動車の車内に伝わる騒音としては、ウインドウからの騒音、タイヤからの騒音、車体下からの騒音、エンジン音からの騒音、モータ音からの騒音などがある。騒音中の特に500Hzから4000Hzの周波数が、運転者や同乗者に耳障りとなると言われている。また、電気自動車では、従来、耳障りと感じていなかった4000Hz~8000Hzの周波数についても、エンジンがないことから、運転者や同乗者に耳障りとなるだろうと言われている。よって、この周波数の帯域の騒音を吸音する機能が、自動車の内外装部品に求められている。一方で、燃費削減も重要であり、自動車の内外装部品の軽量化も求められている。
【0004】
また、特開2005-99402号公報には、空気の音響インピーダンスと略同一若しくは僅かに大きい音響インピーダンスを有する材料から形成されている第1の吸音部と、第1の吸音部より大きい音響インピーダンスを有する材料から形成されている第2の吸音部とを備える吸音構造体が記載されている。この公報には、吸音層の音響インピーダンスが、空気の音響インピーダンスと大きく異なる場合は、入射する音波の大部分が、吸音層と空気層の境界面、即ち吸音層の表面で反射することになるが、空気層と境界面を構成する第1の吸音層を上記の音響インピーダンスとすることで、入射する音波の大部分は、第1の吸音層の表面で反射することなく、第2の吸音層に達するとともに、第1の吸音層と第2の吸音層の間の音響インピーダンスの不連続性を比較的小さくしたため、第1の吸音層と第2の吸音層の境界面で、入射する音波の一部が、音響インピーダンス差に起因して反射するのを最小限に抑えることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-99402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用遮音材は、上述したように、空気と層との間や層間の音響インピーダンスの差を大きくすることで、入射する音波を反射して遮音している。音響インピーダンスは、層の構成によって大きく異なり、例えば、繊維層は比較的に小さく、ゴム層は比較的に大きい。よって、ゴム層を遮音材に用いることで、遮音性を高くすることができるが、遮音材が高重量化してしまい、自動車用としては問題がある。
【0007】
そこで本発明は、高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する特に500Hz~6400Hzの周波数の騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる自動車用遮音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均は、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である。
【0009】
前記筒状のセルは、略四角筒状や略六角筒状などの多角筒状であってもよいし、略円筒状や略楕円筒状などの曲線筒状であってもよい。前記コア層の前記セルの各々は、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端は、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されていることが好ましい。前記解放端、前記一方側閉鎖面、および前記他方側閉鎖面は、前記セルの形状に従い、略四角形状や略六角形状などの多角形状であっても、略円形状や略楕円形状などの曲線形状であってもよい。
【0010】
本発明の自動車用遮音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50~200μmとなるものが好ましい。
【0011】
または、本発明の自動車用遮音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備えてもよい。
【0012】
前記コア層の前記セルが隣接して列をなす方向の前記セル間のピッチPcyは、10mm以下とすることが好ましい。
【0013】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層は、複数の異なる材料で積層された構造を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明に係る自動車用遮音材は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備え、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均を、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10とする構成によって、高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する500Hz~6400Hzの周波数の音波は、デカップリング層に入射した後、第1の非通気性の樹脂フィルム層との境界面でその大部分が反射することから、自動車で発生する騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる。」
「【0041】
本実施の形態において、コア層10に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40のコア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、デカップリング層30の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比(P/v)/Za(単位:無次元)の平均は、500Hz~6400Hzの間で、2.8から10までの範囲とする。比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を2.8以上にすることで、デカップリング層30に入射した周波数500Hz~6400Hzの音波を、デカップリング層30と非通気性の樹脂フィルム層40との境界面で十分に反射することができる。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を10以下に抑えることで、自動車用遮音材の軽量化を維持しつつ、上述した遮音性能を十分に発揮することができる。比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均の下限は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均の上限は、9以下が好ましく、8以下がより好ましい。」
「【0064】
表1及び図9に示すように、1000g/m2の面密度のゴムシートである比較例に比べて、いずれの実施例も、面密度に対して大きな値の比音響インピーダンス比を得ることができ、自動車用遮音材の軽量化を行っても高い遮音性を発揮することができることが確認された。・・・
【0065】
図10に示すように、実施例1は、比較例の約2/3の質量で、周波数500Hzから5000Hzにわたり音響透過損失が約3dB高く、よって、自動車用遮音材の大幅な軽量化を行っても高い遮音性を維持できることがわかる。」
本件発明は、「ゴム層を遮音材に用いることで、遮音性を高くすることができるが、遮音材が高重量化してしまい、自動車用としては問題がある」(【0006】)ことを解決すべき課題とし、当該課題を解決するために、「高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する特に500Hz~6400Hzの周波数の騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる自動車用遮音材を提供すること」(【0007】)を目的としてなされたものである。
そして、本件発明により、自動車用遮音材を「筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備え、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均を、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10とする構成」とすることで、「高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する500Hz~6400Hzの周波数の音波は、デカップリング層に入射した後、第1の非通気性の樹脂フィルム層との境界面でその大部分が反射することから、自動車で発生する騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる」(【0014】)ようになり、上記目的を達成したものである。
そうすると、本件発明の遮音材は、ゴム層を用いた遮音材には備わっていなかった、「高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができる」ことと「自動車で発生する騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる」ことを両立した遮音材を実現したものと解される。
つまり、本件発明が解決しようとする課題は、「高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができる」ことと「自動車で発生する騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる」ことを両立することであって、ゴム層を用いた遮音材よりも軽量化が図られている場合に、自動車で発生する騒音に対する十分な遮音性能が、ゴム層を用いた遮音材の遮音性能を超えることではない。
そして、上記「高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができる」ことは、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層を備えることで成されることは、当該層の構造から当業者に容易に理解される事項といえる。
また、「比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を2.8以上にすることで、デカップリング層30に入射した周波数500Hz~6400Hzの音波を、デカップリング層30と非通気性の樹脂フィルム層40との境界面で十分に反射することができる。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を10以下に抑えることで、自動車用遮音材の軽量化を維持しつつ、上述した遮音性能を十分に発揮することができる。」(【0041】)と説明され、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を7.7とした実施例1において、ゴムシートである比較例に比べて、約2/3の質量で、周波数500Hzから5000Hzにわたり音響透過損失が約3dB高く、よって、自動車用遮音材の大幅な軽量化を行っても高い遮音性を維持できることが示されている(【0064】)。
当該実施例1と比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均が近い同構造の遮音材が、同様の音響特性を示すであろうということは当業者が予測できることである。
以上から、自動車用遮音材を「筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備え、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均を、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10とする構成」とすることは、本件発明の課題を解決するものといえる。
そして、当該構成を備えた本件発明は、発明の詳細な説明に記載された課題を解決する手段が反映されているから、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)理由2(実施可能要件(申立1))について
上記(2)に示したとおり、自動車用遮音材を「筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備え、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均を、500Hz~6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10とする構成」とすることは、本件発明の課題を解決するものといえ、当該構成に対応する実施例が、実施例1~12として具体的に示されているから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700191