特許異議申立
2024-700381
皮膚外用組成物
- 審判番号
- 2024-700381
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-107022
- 登録番号
- 7376250
- 請求日
- 2024年04月20日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ロート製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】工藤 知江
- 【異議申立人】今井 崇
- 【異議申立人】根本 未果
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 川口 裕美子
- 審判官 池上 京子
- 分類
- P1651.112-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7376250号発明「皮膚外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7376250号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7376250号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7376250号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願(特願2019-107022)は、令和1年6月7日(優先権主張 平成31年2月8日)に出願され、令和5年10月30日に設定登録がされ、同年11月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 4月20日 :特許異議申立人工藤知江(以下「申立人A」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 5月 2日 :特許異議申立人今井崇(以下「申立人B」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 5月 7日 :特許異議申立人根本未果(以下「申立人C」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 7月19日付け:取消理由通知書
令和6年 9月20日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和6年10月28日 :申立人Bによる意見書の提出
令和7年 2月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 4月 7日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和7年 5月15日 :申立人Bによる意見書の提出
令和7年 8月25日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
なお、申立人A及びCからは、意見書は提出されなかった。また、令和6年9月20日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
令和7年4月7日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。
また、上記訂正請求書には、令和6年9月20日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲の記載からの訂正事項について記載されているが、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の記載からの訂正事項として読み替えた(下線は訂正箇所である。また、本決定中で引用箇所に付した下線は、特に断りがない限り、いずれも当審によるものである。)。
なお、訂正前の請求項1~3は、一群の請求項である。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「(A)ジェランガム、寒天、アルギン酸類及びペクチンからなる群より選ばれる」を、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「(C)ホスホリルコリン含有ポリマー、二価カルボン酸エステル、炭素数5~10のアルカンジオール及び下記化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体からなる群より選ばれる」を、「(C)メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体、
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、コハク酸ジエトキシエチル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上、
炭素数5~10のアルカンジオール、及び
下記化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体からなる群より選ばれる」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「但し、以下の(i)~(iii)の皮膚外用組成物を除く:
(i)下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、及びアルギン酸硫酸ナトリウムを含有する、皮膚外用組成物
【化1】
[図:0001429981000001.jpg]
(式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す);
(ii)アスコルビン酸グルコシド、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有し、pHが4~8であり、さらにジェランガム、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコール1000を含有する、化粧水;
(iii)下記の(1)~(32)の成分からなる、水中油型乳化化粧料である、クリーム
(成分) (%)
(1)ニコチン酸アミド 8.0
(2)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 4.0
(3)プロピレングリコール 5.0
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0
(5)精製水 残量
(6)ポリオキシエチレングリセリン(26E.O.) 3.0
(7)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 2.0
(8)クエン酸ナトリウム 0.6
(9)リン酸水素ナトリウム 0.3
(10)エデト酸2ナトリウム 0.05
(11)エチルパラベン 0.1
(12)フェノキシエタノール 0.3
(13)L-テアニン 0.5
(14)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
(20E.O.) 1.0
(15)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
(16)セスキステアリン酸ソルビタン 0.2
(17)セトステアリルアルコール 2.0
(18)ベヘニルアルコール 1.0
(19)ミツロウ 1.0
(20)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 1.5
(21)オレイン酸オレイル 0.5
(22)ワセリン 1.5
(23)水添ポリイソブテン 0.5
(24)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 0.5
(25)ホホバ油 2.0
(26)トコフェロール 0.02
(27)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))
クロスポリマー 0.05
(28)ジェランガム 0.01
(29)シロキクラゲ多糖類 0.005
(30)水酸化ナトリウム 0.03
(31)加水分解ヒアルロン酸 0.01
(32)ヒアルロン酸プロピレングリコール 0.005〕。」を、「但し、以下の(I)~(VIII)の皮膚外用組成物を除く:
(I)下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、及びアルギン酸硫酸ナトリウムを含有する、皮膚外用組成物
【化1】
[図:0001429981000002.jpg]
(式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す);
(II)アスコルビン酸グルコシド、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有し、pHが4~8であり、さらにジェランガム、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコール1000を含有する、化粧水;
(III)下記の(1)~(32)の成分からなる、水中油型乳化化粧料である、クリーム
(成分) (%)
(1)ニコチン酸アミド 8.0
(2)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 4.0
(3)プロピレングリコール 5.0
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0
(5)精製水 残量
(6)ポリオキシエチレングリセリン(26E.O.) 3.0
(7)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 2.0
(8)クエン酸ナトリウム 0.6
(9)リン酸水素ナトリウム 0.3
(10)エデト酸2ナトリウム 0.05
(11)エチルパラベン 0.1
(12)フェノキシエタノール 0.3
(13)L-テアニン 0.5
(14)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
(20E.O.) 1.0
(15)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
(16)セスキステアリン酸ソルビタン 0.2
(17)セトステアリルアルコール 2.0
(18)ベヘニルアルコール 1.0
(19)ミツロウ 1.0
(20)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 1.5
(21)オレイン酸オレイル 0.5
(22)ワセリン 1.5
(23)水添ポリイソブテン 0.5
(24)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 0.5
(25)ホホバ油 2.0
(26)トコフェロール 0.02
(27)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))
クロスポリマー 0.05
(28)ジェランガム 0.01
(29)シロキクラゲ多糖類 0.005
(30)水酸化ナトリウム 0.03
(31)加水分解ヒアルロン酸 0.01
(32)ヒアルロン酸プロピレングリコール 0.005〕
(IV)ゲルシート;
(V)(a)酵素、(b)組成物の少なくとも30重量%の水を含み、(c)多価アルコールと水の量比は1:2~1:100のような量で存在する、多価アルコール;(d)組成物の5重量%未満のアルカリ土類金属塩、及び(e)浸透圧保護剤を含むことを特徴とする組成物であって、前記浸透圧保護剤が、
(i)式(I)に従う浸透圧保護剤であって、
【化2】
[図:0001429981000003.jpg]
(I)
式中、R1、R2、及びR3が-H、-CH3、-CH2CH3、及び-CH2CH(OH)R4(R4は-H、及びC1~C4アルカンから選択される)から独立して選択され;nが1~3の整数、好ましくは1であるもの;
(ii)式(I)に従う浸透圧保護剤であって、R1、R2、及びR3の中で任意の2つがそれぞれ-H、及び-CH3から独立して選択され、R1、R2、及びR3の中で第3の部分が-H、-(CH2)mCH3から選択され、mが4又は5であり、nが1~3の整数、好ましくは1であるもの;
(iii)式(II)に従う浸透圧保護剤であって、
【化3】
[図:0001429981000004.jpg]
(II)
式中、R1、R2、R3、R4、及びnが上述の(i)により規定され;R5がPO3及びSO3から選択されるもの;
(iv)アラニン、グリシン、セリン、プロリン、カルニチン、タウリン及びトリメチルアミンオキシドより成る群から選択される浸透圧保護剤;
(v)トリシン、ジメチルプロリン、ガンマブチロベタイン、ベータアラニンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、グルタミン酸ベタイン、及びフェニルアラニンベタインから成る群より選択される浸透圧保護剤;並びに
(vi)これらの混合物
から成る群から選択される組成物;
(VI)パーソナルケアで局所に適用されるリーブオン型組成物であって、
(a)酵素、(b)組成物の少なくとも30重量%の水を含み、(c)組成物の5重量%未満のアルカリ土類金属塩、及び(d)阻害定数(Ki)が10nM~25,000nMを有する酵素阻害物質を含むことを特徴とする組成物;及び
(VII)マドンナリリー花水、水、プロパンジオール、BG、グリセリン、ナイアシンアミド5%、アマニ種子エキス、1,2-ペンタンジオール、トカチャ末(粉末)、パーム油、パーム核油、ホンカンゾウ花エキス、真珠粉(粉末)、ポリグリセリン、PEG-60水添ヒマシ油(加水分解)、1,2-ヘキサンジオール、トロメタミン、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カンテン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、アルギン、ジェランガム、ペクチン、カルボマー、エデト酸Na、フェノキシエタノール、パルファム(香料)を含有する美白機能性化粧品
(VIII)酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、マイカ、及び/又は合成金雲母を含む化粧品]」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の(A)成分の選択肢のうち、アルギン酸類を削除する訂正であるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の(C)成分のうち、ホスホリルコリン含有ポリマーを、明細書の【0051】の記載に基づき「メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体」に特定し、訂正前の請求項1に記載の(C)成分のうち、二価カルボン酸エステルを、明細書の【0052】の記載に基づき「(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、コハク酸ジエトキシエチル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上」に特定する訂正であるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1の但し書きの「但し、以下の(i)~(iii)の皮膚外用組成物を除く」を「但し、以下の(I)~(VIII)の皮膚外用組成物を除く」に訂正し、そのうち、(I)~(III)は、訂正前の(i)~(iii)と同一であり、(IV)は、甲B1に記載のゲルシートを除き、(V)は、甲C1の請求項1を除き、(VI)は、甲C2の請求項1を除き、(VII)は、甲C6の実施品をそのまま除き、(VIII)は、「酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、マイカ、及び/又は合成金雲母を含む化粧品」を除くことにより、甲B4~8、10、11の実施品を除くものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、訂正前の全ての請求項である請求項1~3に対して特許異議申立てがされているので、本件訂正については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
なお、本件発明1における(A)成分及び(C)成分を、それぞれ「(A)本件所定の水溶性多糖類」及び「(C)本件所定の両親媒性成分」ということがある。
「【請求項1】
(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上、
(B)ニコチン酸アミド3質量%以上、及び
(C)メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体、
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、コハク酸ジエトキシエチル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上、
炭素数5~10のアルカンジオール、及び
下記化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する、皮膚外用組成物:
Z-{O(AO)a(EO)b-(BO)cH}n (I)
(式中
nは1~9の整数であり;
Zは、水素原子、又は炭素数1~30のヒドロキシ化合物からn個のヒドロキシ基を除去することによって得られる基であり;
AOは3~4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基であり;
EOはオキシエチレン基であり;
BOは4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基であり;
a、b、及びcはそれぞれAO、EO、及びBOの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0~200であり;a、b、及びcが全て0になることはなく;
AO及びEOはランダム状に付加しても、ブロック状に付加してもよく;
nが2以上の場合は、複数のa、b、及びcはそれぞれ同一でも異なってもよく;
Zが水素原子の場合は、nは1である)
〔但し、以下の(I)~(VIII)の皮膚外用組成物を除く:
(I)下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、及びアルギン酸硫酸ナトリウムを含有する、皮膚外用組成物
【化1】
[図:0001429981000005.jpg]
(式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す);
(II)アスコルビン酸グルコシド、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有し、pHが4~8であり、さらにジェランガム、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコール1000を含有する、化粧水;
(III)下記の(1)~(32)の成分からなる、水中油型乳化化粧料である、クリーム
(成分) (%)
(1)ニコチン酸アミド 8.0
(2)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 4.0
(3)プロピレングリコール 5.0
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0
(5)精製水 残量
(6)ポリオキシエチレングリセリン(26E.O.) 3.0
(7)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 2.0
(8)クエン酸ナトリウム 0.6
(9)リン酸水素ナトリウム 0.3
(10)エデト酸2ナトリウム 0.05
(11)エチルパラベン 0.1
(12)フェノキシエタノール 0.3
(13)L-テアニン 0.5
(14)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
(20E.O.) 1.0
(15)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
(16)セスキステアリン酸ソルビタン 0.2
(17)セトステアリルアルコール 2.0
(18)ベヘニルアルコール 1.0
(19)ミツロウ 1.0
(20)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 1.5
(21)オレイン酸オレイル 0.5
(22)ワセリン 1.5
(23)水添ポリイソブテン 0.5
(24)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 0.5
(25)ホホバ油 2.0
(26)トコフェロール 0.02
(27)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))
クロスポリマー 0.05
(28)ジェランガム 0.01
(29)シロキクラゲ多糖類 0.005
(30)水酸化ナトリウム 0.03
(31)加水分解ヒアルロン酸 0.01
(32)ヒアルロン酸プロピレングリコール 0.005〕
(IV)ゲルシート;
(V)(a)酵素、(b)組成物の少なくとも30重量%の水を含み、(c)多価アルコールと水の量比は1:2~1:100のような量で存在する、多価アルコール;(d)組成物の5重量%未満のアルカリ土類金属塩、及び(e)浸透圧保護剤を含むことを特徴とする組成物であって、前記浸透圧保護剤が、
(i)式(I)に従う浸透圧保護剤であって、
【化2】
[図:0001429981000006.jpg]
(I)
式中、R1、R2、及びR3が-H、-CH3、-CH2CH3、及び-CH2CH(OH)R4(R4は-H、及びC1~C4アルカンから選択される)から独立して選択され;nが1~3の整数、好ましくは1であるもの;
(ii)式(I)に従う浸透圧保護剤であって、R1、R2、及びR3の中で任意の2つがそれぞれ-H、及び-CH3から独立して選択され、R1、R2、及びR3の中で第3の部分が-H、-(CH2)mCH3から選択され、mが4又は5であり、nが1~3の整数、好ましくは1であるもの;
(iii)式(II)に従う浸透圧保護剤であって、
【化3】
[図:0001429981000007.jpg]
(II)
式中、R1、R2、R3、R4、及びnが上述の(i)により規定され;R5がPO3及びSO3から選択されるもの;
(iv)アラニン、グリシン、セリン、プロリン、カルニチン、タウリン及びトリメチルアミンオキシドより成る群から選択される浸透圧保護剤;
(v)トリシン、ジメチルプロリン、ガンマブチロベタイン、ベータアラニンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、グルタミン酸ベタイン、及びフェニルアラニンベタインから成る群より選択される浸透圧保護剤;並びに
(vi)これらの混合物
から成る群から選択される組成物;
(VI)パーソナルケアで局所に適用されるリーブオン型組成物であって、(a)酵素、(b)組成物の少なくとも30重量%の水を含み、(c)組成物の5重量%未満のアルカリ土類金属塩、及び(d)阻害定数(Ki)が10nM~25,000nMを有する酵素阻害物質を含むことを特徴とする組成物;及び
(VII)マドンナリリー花水、水、プロパンジオール、BG、グリセリン、ナイアシンアミド5%、アマニ種子エキス、1,2-ペンタンジオール、トカチャ末(粉末)、パーム油、パーム核油、ホンカンゾウ花エキス、真珠粉(粉末)、ポリグリセリン、PEG-60水添ヒマシ油(加水分解)、1,2-ヘキサンジオール、トロメタミン、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カンテン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、アルギン、ジェランガム、ペクチン、カルボマー、エデト酸Na、フェノキシエタノール、パルファム(香料)を含有する美白機能性化粧品
(VIII)酸化鉄、酸化スズ、酸化チタン、マイカ、及び/又は合成金雲母を含む化粧品〕
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、3~20質量%である、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記化学式(I)において、Zが、水素原子、又は、炭素数4~24のアルキルモノアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アルキルグルコシド、ジグリセリン、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、スクロース、トレハロース、マルチトール若しくは炭素数1~30のヒドロキシ化合物から、n個のヒドロキシ基を除去することによって得られる基である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 申立人Aによる申立理由の概要
申立人Aは、証拠方法として甲第1~7号証(以下「甲A1」等という。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1) 申立理由Aア(甲A1に基づく新規性:特許法第113条第2号)
請求項1~3に係る発明は、甲A1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由Aイ(甲A1に基づく進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~3に係る発明は、甲A1に記載された発明、又は、甲A1に記載された発明及び甲A2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由Aウ(サポート要件:特許法第113条第4号)
請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4) 申立理由Aエ(明確性:特許法第113条第4号)
請求項1~3に係る発明は、明確ではないので、それらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(5) 証拠方法
・甲A1:特開2004-300106号公報
・甲A2:特開2004-262851号公報
・甲A3:本件特許の審査過程で通知された拒絶理由通知書
・甲A4:化粧品成分オンラインウェブサイト、https://cosmetic-ingredients.org/viscosity-increasing-agents/69/、2024年4月9日(出力日)
・甲A5:特開2017-200904号公報
・甲A6:特開2014-88353号公報
・甲A7:アルギン酸「製品パンフレット」、株式会社キミカ、2020年9月
2 申立人Bによる申立理由の概要
申立人Bは、証拠方法として甲第1~17号証(以下「甲B1」等という。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1) 申立理由Bア(甲B1~B12に基づく新規性:特許法第113条第2号)
請求項1~3に係る発明は、甲B1~B12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由Bイ(甲B1~B13に基づく進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~3に係る発明は、甲B1~B13に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由Bウ(サポート要件:特許法第113条第4号)
請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4) 証拠方法
・甲B1:特表2008-507525号公報
・甲B2:特表2019-512457号公報
・甲B3:MINTEL GNPD, (ID#)5429209, Essence,2018年2月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5429209/from_search/PoxNr6iUly/?page=2
・甲B4:MINTEL GNPD, (ID#)3424401, Pearl Capsule Cream,2015年9月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3424401/from_search/PoxNr6iUly/?page=5
・甲B5:MINTEL GNPD, (ID#)4680145, Essence,2017年3月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4680145/from_search/PoxNr6iUly/?page=4
・甲B6:MINTEL GNPD, (ID#)5587529, Never Oily ALL-In-One,2018年4月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5587529/from_search/PoxNr6iUly/?page=2
・甲B7:MINTEL GNPD, (ID#)4680141, Toner,2017年3月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4680141/from_search/PoxNr6iUly/?page=4
・甲B8:MINTEL GNPD, (ID#)4585341, Capsule Essence,2017年2月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4585341/from_search/PoxNr6iUly/?page=4
・甲B9:MINTEL GNPD, (ID#)3839121, Capsule Essence,2016年3月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3839121/from_search/PoxNr6iUly/?page=5
・甲B10:MINTEL GNPD, (ID#)4944839, Ampoule Cream,2017年7月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4944839/from_search/PoxNr6iUly/?page=3
・甲B11:MINTEL GNPD, (ID#)4677277, Renewing Capsule,2017年3月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4677277/from_search/PoxNr6iUly/?page=3
・甲B12:MINTEL GNPD, (ID#)2728921, Serum,2014年10月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2728921/frorn_search/PoxNr6iUly/?page=6
・甲B13:箱崎智洋:ニコチン酸アミドの美白効果とそのメカニズム, フレグランスジャーナル, 2005,Vol.5, p.55-59
・甲B14:国際化粧品規制2015-EU・アセアン・中国・米国・韓国・台湾・日本-,株式会社薬事日報社,2015年4月10日,p.26,229,231,237,317
・甲B15:川田暁:特集/しわ・たるみの非手術的治療 化粧品による治療, MB Derma, 2012,No.192,p.1-5
・甲B16:南井宣明・友田敬二:添加剤基礎講座(第X講)増粘剤,色材,1993,Vol.66,NO.7,p.434-444
・甲B17:粧技誌,2014,Vol.48,No.1,p.2-10
3 申立人Cによる申立て理由の概要
申立人Cは、証拠方法として甲第1~8-3号証(以下「甲C1」等という。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1) 申立理由Cア(甲C1~8に基づく新規性:特許法第113条第2号)
請求項1、2に係る発明は、甲C1~4、6~8に記載された発明であり、請求項1~3に係る発明は、甲C5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由Cイ(甲C1~8に基づく進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~3に係る発明は、甲C1~8に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由Cウ(甲C6~8に基づく新規性:特許法第113条第2号)
請求項1、2に係る発明は、甲C6~8の製品と同一の発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当するから、それらの請求項に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4) 申立理由Cエ(サポート要件:特許法第113条第4号)
請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(5) 証拠方法
・甲C1:特表2005-513007号公報
・甲C2:特表2005-515180号公報
・甲C3:国際公開第2017/164429号
・甲C3-2:特表2019-512457号公報
・甲C4:中国特許出願公開第103340817号明細書
・甲C4-2:甲C4の日本語機械翻訳
・甲C4-3:甲C4の表1の日本語機械翻訳
・甲C5:中国特許出願公開第105853317号明細書
・甲C5-2:甲C5の日本語機械翻訳
・甲C6:MINTEL GNPD, (ID#)3839121, Capsule Essence,2016年3月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3839121/
・甲C6-2:甲第6号証の画像の日本語機械翻訳
・甲C7:MINTEL GNPD, (ID#)4557101, Ultimate Sleep Cream,2017年2月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4557101/
・甲C7-2:Ultimate Sleep Creamの成分分析結果(ロット番号 50323P BBE03/26)、令和6年4月8日、株式会社ベジテック理化学分析センター
・甲C8:MINTEL GNPD, (ID#)6053473, Dry Scalp Treatment,2018年11月掲載,URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/6053473/
・甲C8-2:Dry Scalp Treatment(ロット番号C22103A)の成分分析結果、令和6年4月8日、株式会社ベジテック理化学分析センター
・甲C8-3:Dry Scalp Treatment(ロット番号C22277A)の成分分析結果、令和6年4月8日、株式会社ベジテック理化学分析センター
4 令和7年2月5日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
当審において通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
[取消理由A](進歩性)
請求項1~3に係る発明は、甲B4~8、B10~11に記載された発明及び甲B14に記載された事項、又は、甲C6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)の取消理由及びそれと同旨の申立理由についての判断
(1) 甲C6に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイ、Cア~Cウについて
(当審注:甲C6は、甲B9と同じ商品についての文献である。)
ア 甲C6の記載並びに甲C6に基づく公然実施発明及び甲C6に記載された発明
(ア) 甲C6には、次のとおりの記載がある。
(i)
「
[図:0001429981000008.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000009.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000010.jpg]
」
(iv)
(甲C6-2に記載の商品パッケージ画像の日本語機械翻訳)
「
[図:0001429981000011.jpg]
」
(イ) 上記(ア)に示した甲C6の記載(特に、摘記事項(iii)、(iv))によれば、甲C6には、以下の甲C6発明が記載されていると認められる。
(甲C6発明)
「以下の成分を含み、ナイアシンアミド5%配合の美白機能性化粧品。
[図:0001429981000012.jpg]
」
また、甲C6における「掲載時期: 2016年3月」、「市場:韓国」、「製造国:韓国」及び「店舗形態: 量販店」、「店舗住所: Yongin 448-160」という記載から、上記スキンケア製品は、2016年3月頃から上記量販店の所在地である外国で、その組成が理解できる状態で不特定多数の者に販売されていた製品であって、当該製品は、本件優先日前に公然実施された発明であるといえる。
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C6発明の「ジェランガム」、「カンテン」、「ペクチン」、「ナイアシンアミド」、「1,2-ペンタンジオール」、「1,2-ヘキサンジオール」、「化粧品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ペクチン」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。また、甲C6発明の「ナイアシンアミド5%配合」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド3質量%以上」に相当する。
ここで、甲C6発明は、本願発明1から除かれている(VII)の皮膚外用剤に相当し、(I)~(VI)、(VIII)の皮膚外用剤には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲C6発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上、
(B)ニコチン酸アミド3質量%以上、及び
(C)メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体、
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、コハク酸ジエトキシエチル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上、
炭素数5~10のアルカンジオール、及び
下記化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する、皮膚外用組成物:
Z-{O(AO)a(EO)b-(BO)cH}n (I)
(当審注:式(I)の説明省略)
〔但し、以下の(I)~(VI)、(VIII)の皮膚外用組成物を除く:(当審注:(I)~(VI)、(VIII)の摘記は省略)〕」
(相違点1)
本件発明1は、(VII)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲C6発明は(VII)の皮膚外用組成物である点。
(当審注:(VII)の摘記は省略)
(イ) 判断
a 新規性(刊行物、公然実施)について
相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲C6に記載された発明ではなく、また、公然実施された発明でもない。
b 進歩性について
甲C6発明は、甲C6に記載された、本件優先日当時に市販されていた美白機能性化粧品に基づく発明((VII)の皮膚外用組成物)であって、甲C6には、その成分等を変更することについて何ら記載されていない。
市販された化粧品の成分等を適宜変更して更に改良することは、当業者が通常行うことではあるものの、甲C6の記載に接した当業者が、甲C6発明において、本件発明1の(A)~(C)に相当する成分(及びその含有量)はそのままとし、それ以外の、ある成分のみを使用しない又は他の成分に変更して本件発明1の構成を有するものとする、具体的な動機付けがあったとはいえない。
例えば、Parfum(香料)について検討すると、化粧品において、香りは消費者の購買意欲を高める重要な要素の一つである。また、化粧品の香りは、配合されている様々な成分が組み合わさったものであり、香料を入れないと、化粧品としてふさわしくない香りがする可能性もある。甲C6発明においても、香料は、マドンナリリー花水など、香りがする他の成分と組み合わせて、化粧品として、消費者に訴求する香りを有する製品として完成されているというべきであり、甲C6発明から香料を除いて、その結果、本件発明1の相違点1に係る構成を備えたものとすることが、直ちに容易であったとまではいえない。
また、甲C6発明は、全ての成分が組み合わさって、一つの製品として完成されているものであり、パーム油及びパーム核油のどちらか一方のみを用いることや、どちらか一方又は双方を他の同様の性質を有する油に変更すること、寒天、ジェランガム及びペクチンといった水溶性多糖類のうち一つを省略して、本件発明1の相違点1に係る構成を備えたものとすることには、具体的な動機付けがあったとはいえない。
そして、本件発明1は、皮膚外用組成物において(A)本件所定の水溶性多糖類と(B)3質量%以上のニコチン酸アミドが共存すると、経時的に粘度が低下してしまうという新たな課題を見いだし、(A)本件所定の水溶性多糖類、(B)3質量%以上のニコチン酸アミドに加えて、更に(C)本件所定の両親媒性成分を含有させることにより、上記の課題を解決し、経時的な粘度低下を抑制できるという効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲C6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C6発明とは、少なくとも相違点1において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C6に記載された発明又は公然実施された発明ではなく、また、甲C6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C6に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイ、Cア~Cウにより取り消すことはできない。
(2) 甲B4に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B4の記載及び甲B4に記載された発明
(ア) 甲B4には、次のとおりの記載がある。外国語で記載されている箇所は、必要に応じて当審による翻訳文を記載する。
(i)
「
[図:0001429981000013.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000014.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000015.jpg]
」
(iv)
「外装情報
シワ改善と美白のための機能性化粧品」
(イ) 上記(ア)に示した甲B4の記載(特に、摘記事項(iii)、(iv))によれば、甲B4には、以下の甲B4発明が記載されていると認められる。
(甲B4発明)
「以下の成分を含むシワ改善と美白のための機能性化粧品。
[図:0001429981000016.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲B4発明の「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「1、2-ヘキサンジオール」、「化粧品」は、それぞれ、本件発明1の「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B4発明は、酸化チタン、酸化スズ、合成金雲母を含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B4発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上、
(B)ニコチン酸アミド、及び
(C)メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体、
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、アジピン酸ビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、コハク酸ジエトキシエチル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される1種又は2種以上、
炭素数5~10のアルカンジオール、及び
下記化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する、皮膚外用組成物:
(当審注:式(I)の説明省略)
〔但し、以下の(I)~(VII)の皮膚外用組成物を除く:(当審注:(I)~(VII) の摘記は省略〕」
(相違点2-1)
本件発明1は、(VIII)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲B4発明は、(VIII)の皮膚外用組成物に該当する点。
(当審注:(VIII)の摘記は省略)
(相違点2-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲B4発明は、ナイアシンアミドの含有量が不明である点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点2-1、2-2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲B4に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点2-1について検討すると、甲B4には、そもそも、酸化スズ、酸化チタン、合成金雲母がどのような機能を目的として配合されたのかが記載されていないから、同様の機能の成分に代えることは困難であるし、また、これらの成分を除くことにより、シワ改善や美白という機能性を維持しながら、製品として成立するか否かも不明であるから、甲B4発明において、これらの成分を、同様の機能の成分に変更したり、除いたりして、本件発明1の相違点2-1の構成を有するものとすることに、具体的な動機付けがあるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3とB4発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B4に記載された発明ではなく、また、甲B4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B4に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(3) 甲B5に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B5の記載及び甲B5に記載された発明
(ア) 甲B5には、次のとおりの記載がある。外国語で記載されている箇所は、必要に応じて当審による翻訳文を記載する。
(i)
「
[図:0001429981000017.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000018.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000019.jpg]
」
(iv)
「外装情報
抗シワと美白二重機能化粧品」
(イ) 上記(ア)に示した甲B5の記載(特に、摘記事項(iii)、(iv))によれば、甲B5には、以下の甲B5発明が記載されていると認められる。
(甲B5発明)
「以下の成分を含む抗シワと美白二重機能化粧品。
[図:0001429981000020.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B5発明の、「ジェランガム」、「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「1、2-ヘキサンジオール」、「化粧品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B5発明は、合成金雲母、酸化チタン、酸化鉄、マイカ、酸化スズを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B5発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B5に記載された発明ではなく、また、甲B5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3とB5発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B5に記載された発明ではなく、また、甲B5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B5に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(4) 甲B6に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B6の記載及び甲B6に記載された発明
(ア) 甲B6には、次のとおりの記載がある。
(i)
「
[図:0001429981000021.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000022.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000023.jpg]
」
(イ) 上記(ア)に示した甲B6の記載(特に、摘記事項(ii)、(iii))によれば、甲B6には、以下の甲B6発明が記載されていると認められる。
(甲B6発明)
「以下の成分を含む小ジワ対策、美白・ホワイトニング用のスキンケア製品。
[図:0001429981000024.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B6発明の、「ジェランガム」、「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「1、2-ヘキサンジオール」、「スキンケア製品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B6発明は、酸化チタンを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B6発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、少なくとも上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B6に記載された発明ではなく、また、甲B6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B6発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B6に記載された発明ではなく、甲B6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B6に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(5) 甲B7に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B7の記載及び甲B7に記載された発明
(ア) 甲B7には、次のとおりの記載がある。外国語で記載されている箇所は、必要に応じて当審による翻訳文を記載する。
(i)
「
[図:0001429981000025.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000026.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000027.jpg]
」
(iv)
「外装情報
抗シワと美白二重機能化粧品」
(イ) 上記(ア)に示した甲B7の記載(特に、摘記事項(iii)、(iv))によれば、甲B7には、以下の甲B7発明が記載されていると認められる。
(甲B7発明)
「以下の成分を含む抗シワと美白二重機能化粧品。
[図:0001429981000028.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B7発明の、「ジェランガム」、「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「1、2-ヘキサンジオール」、「化粧品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B7発明は、合成金雲母、酸化チタン、マイカ、酸化鉄、酸化スズを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B7発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B7に記載された発明ではなく、また、甲B7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B7発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B7に記載された発明ではなく、また、甲B7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B7に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(6) 甲B8に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B8の記載及び甲B8に記載された発明
(ア) 甲B8には、次のとおりの記載がある。外国語で記載されている箇所は、必要に応じて当審による翻訳文を記載する。
(i)
「
[図:0001429981000029.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000030.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000031.jpg]
」
(iv)
「外装情報
美白とシワ改善」
(イ) 上記(ア)に示した甲B8の記載(特に、摘記事項(iii)、(iv))によれば、甲B8には、以下の甲B8発明が記載されていると認められる。
(甲B8発明)
「以下の成分を含む美白とシワ改善用のスキンケア製品。
[図:0001429981000032.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B8発明の、「ジェランガム」、「カンテン」、「ペクチン」、「ナイアシンアミド」、「1、2-ペンタンジオール」、「1、2-ヘキサンジオール」、「スキンケア製品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ペクチン」、「ニコチン酸アミド」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B8発明は、合成金雲母、酸化チタン、マイカ、酸化スズ、酸化鉄を含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B8発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B8に記載された発明ではなく、また、甲B8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B8発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B8に記載された発明ではなく、また、甲B8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B8に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(7) 甲B10に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B10の記載及び甲B10に記載された発明
(ア) 甲B10には、次のとおりの記載がある。
(i)
「
[図:0001429981000033.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000034.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000035.jpg]
」
(イ) 上記(ア)に示した甲B10の記載(特に、摘記事項(ii)、(iii))によれば、甲B10には、以下の甲B10発明が記載されていると認められる。
(甲B10発明)
「以下の成分を含む小ジワ対策、美白・ホワイトニング用のスキンケア製品。
[図:0001429981000036.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B10発明の、「ジェランガム」、「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン」、「1、2-ヘキサンジオール」、「スキンケア製品」は、それぞれ、本件発明1の「ジェランガム」、「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
甲B10発明の「ポリクオタニウム-51(リピジュア)」は、本件明細書段落【0051】には、「ホスホリルコリン含有ポリマーは、ホスホリルコリンを含有する有機化合物をモノマーとして含むポリマー全般を指す。特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、中でも、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むモノマーを重合させて得られるポリマーである、メタクロイルオキシホスホリルコリン含有重合体が好ましい。中でも、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウムー51)・・・より選ばれる1種又は2種以上が好ましく」と記載されていることから、本件発明1の「メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体」に相当する。
また、甲B10発明は、合成金雲母、酸化チタンを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B10発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B10に記載された発明ではなく、また、甲B10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B10発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B10に記載された発明ではなく、また、甲B10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B10に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(8) 甲B11に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B11の記載及び甲B11に記載された発明
(ア) 甲B11には、次のとおりの記載がある。
(i)
「
[図:0001429981000037.jpg]
」
(ii)
「
[図:0001429981000038.jpg]
」
(iii)
「
[図:0001429981000039.jpg]
」
(イ) 上記(ア)に示した甲B11の記載(特に、摘記事項(ii)、(iii))によれば、甲B11には、以下の甲B11発明が記載されていると認められる。
(甲B11発明)
「以下の成分を含む小ジワ対策、美白・ホワイトニング用のスキンケア製品。
[図:0001429981000040.jpg]
」
イ 本件発明1について
甲B11発明の、「カンテン」、「ナイアシンアミド」、「PEG/PPG/polybutylene glycol-8/5/3」、「1、2-ヘキサンジオール」、「スキンケア製品」は、それぞれ、本件発明1の「寒天」、「ニコチン酸アミド」、「化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体」、「炭素数5~10のアルカンジオール」、「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲B11発明は、合成金雲母、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、マイカを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲B11発明とは、上記(2)イ(ア)で示した点で一致し、上記相違点2-1、2-2と同じ点で相違するから、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、甲B11に記載された発明ではなく、また、甲B11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B11発明とは、少なくとも相違点2-1、2-2と同じ点において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B11に記載された発明ではなく、甲B11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B11に基づく取消理由A、申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
2 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった申立理由について
(1) 甲A1に基づく申立理由Aア、Aイについて
ア 甲A1に記載された発明
(ア) 甲A1には、実施例8の記載から見て、以下の甲A1発明が記載されていると認められる。
(甲A1発明)
「以下の組成を有する乳液。
[図:0001429981000041.jpg]
」
(イ) また、申立人Aは、甲1Aには、以下の[甲1発明]が記載されていることを主張する。
[甲1発明]
(A)ニコチン酸アミド0.01~10質量%
(B)アルギン酸またはその塩、寒天、ジェランガム及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上、及び
(C)ポリオキシエチレンメチルグルコシドを含有する、
化粧料。
この点について検討する。甲1Aの請求項1には、「(A)ニコチン酸アミドと、(B)水溶性の皮膜形成性高分子からなる群より選択される1種以上と、(C)ポリオキシエチレンメチルグルコシド、分子量600以上のポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上とを含有することを特徴とする化粧料。」が記載されている。そして、【0009】には、「(A)成分の含有量は、化粧料の総量を基準として、0.01~10.0質量%が好まし」いことは記載されているから、請求項1に記載の発明において、(A)ニコチン酸アミド0.01~10質量%であることは記載されているといえる。
一方、(B)成分については、【0011】において、皮膜形成高分子剤が列挙されており、(C)成分についても、請求項1には、「ポリオキシエチレンメチルグルコシド」と「分子量600以上のポリエチレングリコール」という選択肢がある。そして、申立人Aが主張する[甲1発明]に対応する具体的な組成例の記載もない。
そうすると、請求項1に記載の発明において、(B)成分として、アルギン酸、寒天、ジェランガム、ペクチンを選択し、(C)成分として、ポリオキシエチレンメチルグルコシドを選択する発明が記載されているとはいえず、甲1Aには、申立人Aが主張する[甲1発明]が記載されているとはいえない。
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲A1発明の「POE(20)メチルグルコシド」は、本件発明1の「化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体」に相当する。
甲A1発明の「乳液」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲A1発明は、本件発明1において除かれている(I)~(VIII)の皮膚外用組成物には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲A1発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点3)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲A1発明は、ニコチン酸アミドを0.5%含む点
(イ) 判断
a 新規性について
相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲A1に記載された発明ではない。
b 進歩性について
本件発明1は、皮膚外用組成物において(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上とが共存すると、経時的に粘度が低下してしまうという新たな課題を見いだし、(A)及び(B)に加えて、更に(C)所定の両親媒性成分を含有させることにより、上記の課題を解決し、経時的な粘度低下を抑制できるという効果を奏するものである。
他方、甲A1には、「(A)ニコチン酸アミドと、(B)水溶性の皮膜形成性高分子からなる群より選択される1種以上と、(C)ポリオキシエチレンメチルグルコシド、分子量600以上のポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上とを含有することを特徴とする化粧料。」(請求項1)と記載され、「本発明」は、優れた荒れ肌改善及び予防効果を有する化粧料を提供することが目的である旨が記載されている。
また、甲A1には、(A)成分のニコチン酸アミドの含有量は0.01~10.0%であること(【0009】)、(B)水溶性の皮膜形成性高分子として、「カルボキシビニルポリマー、・・・・・1種以上」の様々なものが使用できることが記載され(請求項2)、甲A1発明は、上記請求項1に係る化粧料において、(A)ニコチン酸アミドの含有量を【0009】に記載された範囲から「0.5%」を選択し、(B)水溶性皮膜形成性高分子として【請求項2】に列記された中から「ジェランガム」を選択したものである。
しかしながら、甲A1の実施例1~9におけるニコチン酸アミドの含有量は、0.5~2.0%であって、3%を超える例は具体的に記載されていないし、(B)水溶性皮膜形成性高分子も、甲A1発明における「ジェランガム」以外にも、多数のものが使用可能であるから、甲A1の記載に接した当業者が、甲A1発明において何らかの変更が可能であることを理解したとしても、甲A1発明において、(B)水溶性皮膜形成性高分子の「ジェランガム」は変更せず、ニコチン酸アミドの含有量だけを、他の実施例において使用されていない「3~10%」という高用量を選択するという積極的な動機付けがあるとまではいえない。
また、上記のとおり、甲A1発明と本件発明1とでは、発明が解決しようとする課題が異なり、もともと、甲A1発明において、本件発明1の課題を解決するための改良を加える動機付けも存在しない。
そうすると、本件発明1は、甲A1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲A1発明とは、少なくとも相違点3において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲A1に記載された発明ではなく、また、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲A1に基づく申立理由Aア、Aイにより取り消すことはできない。
(2) 甲B1に基づく申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B1に記載された発明
甲B1には、表3の実施例16の記載から見て、以下の甲B1発明が記載されていると認められる。
(甲B1発明)
「以下の組成を有するゲルシート組成物。
[図:0001429981000042.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲B1発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲B1発明の「ヘキシレングリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲B1発明の「ゲルシート組成物」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
ここで、甲B1発明は、本件発明1において除かれている(IV)ゲルシートに当たる。
そうすると、本件発明1と甲B1発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点4-1)
本件発明1は、(IV)ゲルシートを除くのに対し、甲B1発明は、(IV)ゲルシートに該当する点。
(相違点4-2)
本件発明1は、(A)「ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上」を含むのに対し、甲B1発明は、「アガロース」を含む点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点4-1、4-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B1に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点4-1について検討すると、甲B1は、「(1)皮膚科学的に許容可能な予備成形基材と、(2)フラボノイド化合物とを含むスキンケアデバイスであって、前記デバイスが前記フラボノイド化合物を送達するための液体媒体を含むデバイス。」(【請求項1】)について記載され、その具体化物として、予備成形基材が、ゲル化剤及び親水性溶媒を含むゲルシートであるものが記載され(【請求項8】)、これに対応する実施例16に記載されたゲルシートが甲B1発明である。
甲B1には、「デバイス」として、ゲルシート以外に、マスクとすることが記載されているものの(【0044】、【0045】)、ゲルシートの実施例である甲B1発明を、その組成を変更せずに、そのまま他の形態であるマスクに変更し、相違点4-1に係る本件発明1の構成を有するものとすることに、動機付けがあるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲B1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B1発明とは、少なくとも相違点4-1、4-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B1に記載された発明ではなく、また、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B1に基づく申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(3) 甲C3に基づく申立理由Bア、Bイ、Cイについて
(当審注:甲B2は、甲C3に対応する日本語の国内公表である。)
ア 甲C3に記載された発明
甲C3には、[76]の表1の実施例1、[85]の記載から見て、以下の甲C3発明が記載されていると認められる。(当審注:原文は韓国語であるので、当審による翻訳文を記載した。)
(甲C3発明)
「以下の組成を有するエマルジョンビーズを含む、化粧用組成物
[図:0001429981000043.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C3発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲C3発明の「1,2-ヘキサンジオール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C3発明の「エマルジョンビーズを含む化粧用組成物」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲C3発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点5-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C3発明は、これらの成分を含まない点。
(相違点5-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲C3発明はニコチン酸アミドの含有量が特定されていない点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点5-1、5-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲C3に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点5-1について検討すると、本件発明1は、ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上とが共存すると、経時的に粘度が低下してしまうという新たな課題を見いだし、(A)及び(B)に加えて、更に(C)所定の両親媒性成分を含有させることにより、上記の課題を解決し、経時的な粘度低下を抑制できるという効果を奏するものである。
他方、甲C3には、「有効成分を含有する液状エマルジョンを10℃以下の温度に保持される凍結冷媒に滴下して固体状のビーズを製造し、陽イオン性高分子物質を用いて皮膜を形成するステップを含む、エマルジョンビーズの製造方法。」(請求項1)と記載され、「本発明」は、有効成分の安定性を最大化するだけでなく、有効成分によって生じ得る皮膚刺激を最小限に抑えられるエマルジョンビーズ及びその製造方法を提供することが目的である旨が記載されている。
また、甲C3には、「液体エマルジョンが、室温で固体である脂質物質及びゲル形成物質から選択される1つ以上をさらに含有する」こと(請求項7)、「ゲル形成物質が、寒天・・・アルギン酸ナトリウム・・・ペクチン・・・から選択される1つ以上である」こと(請求項9)が記載されている。
そして、甲C3の実施例1のエマルジョンビーズにおけるナイアシンアミドの含有量は、5.00%であるが、エマルジョンビーズを含む化粧料組成物におけるナイアシンアミドの含有量は記載されていない([85])。しかしながら、[41]には、「本発明に係るエマルジョンビーズは、化粧料組成物の総重量(100wt%)に対して0.1~20wt%で含有されてもよい」と記載があるから、甲C3発明の化粧料組成物において、エマルジョンビーズは最大でも20wt%で含まれているといえ、ナイアシンアミドの含有量は最大でも1%であると認められる。
そうすると、甲C3の記載に接した当業者が、甲C3発明において、ニコチン酸アミドの含有量を1%から3%以上に増量した上に(相違点5-2)、更に、ゲル形成物質として、アルギン酸ナトリウムに代えて、あるいは、それに加えて、多数の例示の中から、寒天、ペクチンのいずれかを用いることに(相違点5-1)、動機付けがあるとする具体的な根拠に乏しい。
また、上記のとおり、甲C3発明と本件発明1とでは、発明が解決しようとする課題が異なり、もともと、甲C3発明において、本件発明1の課題を解決するための改良を加える動機付けも存在しない。
したがって、本件発明1は、甲C3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C3発明とは、少なくとも相違点5-1、5-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は甲C3に記載された発明ではなく、また、甲C3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C3に基づく申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(4) 甲B3に基づく申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B3に記載された発明
甲B3には、以下の甲B3発明が記載されていると認められる。
(甲B3発明)
「以下の組成を有するスキンケア製品。
[図:0001429981000044.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲B3発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲B3発明の「ポリクオタニウム-51(リピジュア)」は、本件明細書段落【0051】には、「ホスホリルコリン含有ポリマーは、ホスホリルコリンを含有する有機化合物をモノマーとして含むポリマー全般を指す。特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、中でも、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むモノマーを重合させて得られるポリマーである、メタクロイルオキシホスホリルコリン含有重合体が好ましい。中でも、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウムー51)・・・より選ばれる1種又は2種以上が好ましく」と記載されていることから、本件発明1の「メタクリロイルオキシホスホリルコリン含有重合体」に相当する。
甲B3発明の「1,2-ヘキサンジオール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲B3発明の「スキンケア製品」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B3発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点6-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲B3発明は、これらの成分を含まない点。
(相違点6-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲B3発明は、ニコチン酸アミドの含有量が特定されていない点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点6-1、6-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B3に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点6-1について検討すると、甲B3発明は、甲B3に記載された、本件優先日当時に市販されていたスキンケア製品に基づく発明であって、甲B3には、その成分等を変更することについて何ら記載されていない。
市販された化粧品の成分等を適宜変更して更に改良することは、当業者が通常行うことではあるものの、甲B3の記載に接した当業者が、特に、ジェランガム、寒天、及びペクチンを添加する具体的な動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B3発明とは、少なくとも相違点6-1、6-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B3に記載された発明ではなく、また、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B3に基づく申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(5) 甲B12に基づく申立理由Bア、Bイについて
ア 甲B12に記載された発明
甲B12には、以下の甲B12発明が記載されていると認められる。
(甲B12発明)
「以下の組成を有するスキンケア製品。
[図:0001429981000045.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲B12発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲B12発明の「1,2-ペンタンジオール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲B12発明の「PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン」は、本件発明1の「化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体」に相当する。
甲B12発明の「スキンケア製品」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B12発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点7-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲B12発明は、これらの成分を含まない点。
(相違点7-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲B12発明は、ニコチン酸アミドの含有量が特定されていない点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点7-1、7-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B12に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点7-1について検討すると、上記(5)イ(イ)bと同様の理由により、本件発明1は、甲B12発明から当業者が容易になし得たことであるということはできない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B12発明とは、少なくとも相違点7-1、7-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B12に記載された発明ではなく、また、甲B12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B12に基づく申立理由Bア、Bイにより取り消すことはできない。
(6) 甲B13に基づく申立理由Bイについて
ア 甲B13に記載された発明
甲B13の58頁左欄6~7行には、以下の甲B13発明が記載されていると認められる。
(甲B13発明)
「5%ニコチン酸アミド配合保湿剤」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲B13発明の「保湿剤」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B13発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点8-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲B13発明は、これらの成分を含有しない点。
(相違点8-2)
本件発明1は、(C)の成分(当審注:摘記省略)を含むのに対し、甲B13発明は、これらの成分を含有しない点。
(イ) 判断
相違点8-1、8-2について検討すると、甲B13には、有効成分がニコチン酸アミド5%であることしか記載されておらず、それ以外にどのような成分を用いて保湿剤とするのか、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲B13の記載に基づいて、上記(A)及び(C)の成分を併せて用いる動機付けがあるとはいえない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲B13発明とは、少なくとも相違点8-1、8-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲B13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲B13に基づく申立理由Bイにより取り消すことはできない。
(7) 甲C1に基づく申立理由Cア、Cイについて
ア 甲C1に記載された発明
甲C1には、表3の実施例XIIIの記載から見て、以下の甲C1発明が記載されていると認められる。
(甲C1発明)
「以下の実施例XIIIの組成を有するゲル/ヒドロゲル貼付剤。
[図:0001429981000046.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C1発明の「ヘキシレングリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C1発明の「ゲル/ヒドロゲル貼付剤」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
甲C1発明の「プロテアーゼ1」は、本件発明1の(V)における「(a)酵素」に相当し、甲C1発明は、計算すると水を78.39%含むから、本件発明1の(V)における「(b)組成物の少なくとも30重量%の水」を含むことに相当する。甲C1発明は、多価アルコールであるグリセリンを5%、ヘキシレングリコールを5%、合計で10%含むから、多価アルコールと水の量比は1:7.839であり、本件発明1の「(c)多価アルコールと水の量比は1:2~1:100のような量で存在する、多価アルコール」に相当する。そうすると甲C1発明は、本件発明1から除かれている「(V)の皮膚外用組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲C1発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点9-1)
本件発明1は、(V)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲C1発明は(V)の皮膚外用組成物に該当する点。
(当審注:(V)の摘記は省略)
(相違点9-2)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C1発明は、「アガロース」を含む点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点9-1、9-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲C1に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点9-1、9-2についてまとめて検討する。
相違点9-1の(V)の皮膚外用組成物は、甲C1の請求項1に記載された内容と実質的に同じである。そして、甲C1は、「肌触り及び/又は肌の外観、好ましくは、肌の保湿、肌の柔らかさ、及び/又は肌の滑らかさなどのスキンケア効果を提供」するための手段として(【0006】)、かかる構成を採用したものであるから、甲C1発明からニコチン酸アミドとヘキシレングリコールだけを変更せずに甲C1の請求項1の範囲から外れる組成とし、かつ、甲C1に例示のないジェランガムなどの(A)成分を用いることにより、相違点9-1、9-2に係る本件発明1の構成を有するものとする動機付けは全くないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲C1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C1発明とは、少なくとも相違点9-1、9-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C1に記載された発明ではなく、また、本件発明2及び3は、甲C1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C1に基づく申立理由Cア、Cイにより取り消すことはできない。
(8) 甲C2に基づく申立理由Cア、Cイについて
ア 甲C2に記載された発明
甲C2には、表3の実施例XIIIの記載から見て、以下の甲C2発明が記載されていると認められる。
(甲C2発明)
「以下の実施例XIIIの組成を有するゲル/ヒドロゲル貼付剤。
[図:0001429981000047.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C2発明の「ヘキシレングリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C2発明の「ゲル/ヒドロゲル貼付剤」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
甲C2発明の「5%」の「ニコチン酸アミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド3質量%以上」に相当する。
本件発明1から除かれている(VI)の皮膚外用組成物は、甲C2の請求項1の組成物に相当し、当該組成物に対応する実施例XIIIが甲C2であるから、甲C2は、本件発明1から除かれている(VI)の皮膚組成物に相当する。
したがって、本件発明1と甲C2発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点10-1)
本件発明1は、(VI)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲C2発明は、(VI)の皮膚外用組成物に該当する点。
(当審注:(VI)の摘記は省略)
(相違点10-2)
本件発明1は、(A)「ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上」を含むのに対し、甲C2発明は、「アガロース」を含む点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点10-1、10-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲C2に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点10-1について検討すると、(VI)の皮膚外用組成物は、甲C2の請求項1に記載された内容と実質的に同じである。そして、甲C2は、「肌触り及び/又は肌の外観、好ましくは、肌の保湿、肌の柔らかさ、及び/又は肌の滑らかさなどのスキンケア効果を提供」するための手段として(【0006】)、かかる構成を採用したものであるから、甲C2発明からニコチン酸アミドとヘキシレングリコールだけを変更せずに甲C2の請求項1の範囲から外れる組成とし、かつ、甲C2に例示のないジェランガムなどの(A)成分を用いることにより、相違点10-1に係る本件発明1の構成を有するものとする動機付けは全くないといわざるを得ない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C2発明とは、少なくとも相違点10-1、10-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C2に記載された発明ではなく、また、本件発明2及び3は、甲C2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C2に基づく申立理由Cア、Cイにより取り消すことはできない。
(9) 甲C4に基づく申立理由Cア、Cイについて
ア 甲C4に記載された発明
甲C4には、実施例4の記載から見て、以下の甲C4発明が記載されていると認められる。
(甲C4発明)
「以下の組成を有する、葛根美白マスク用組成物。
[図:0001429981000048.jpg]
」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C4発明の「1,2-ヘキサンジオール」、「オクチルグリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C4発明の「5%」の「ニコチンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド3質量%以上」に相当する。
甲C4発明の「葛根美白マスク用組成物」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲C4発明は、二酸化チタンを含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲C4発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点11-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C4発明は、これらの成分を含まない点。
(相違点11-2)
本件発明1は、(VIII)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲C4発明は、(VIII)の皮膚外用組成物に該当する点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点11-1、11-2は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲C4に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点11-1について検討すると、本件発明1は、皮膚外用組成物において(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上とが共存すると、経時的に粘度が低下してしまうという新たな課題を見いだし、(A)及び(B)に加えて、更に(C)本件所定の両親媒性成分を含有させることにより、上記の課題を解決し、経時的な粘度低下を抑制できるという効果を奏するものである。
他方、甲C4には、「1.葛根美白マスクであって、マスク処方が以下の質量含有量の各成分を含むことを特徴とする:葛根エキス0.5~1%;真珠粉1~10%;ナイアシンアミド1~5%;ヒアルロン酸ナトリウム0.01~0.1%;アボカドオイル1~5%;水素化小麦胚芽油1~10%;マカダミアナッツオイル1~10%。」(請求項1、当審注:原文は中国語であるので、当審による翻訳文を記載した)と記載され、本発明は、良好な美白効果、かつ毒性副作用のない美白マスクを提供する旨が記載されている。
しかしながら、甲C4には、ジェランガム、寒天、ペクチンを含有することについて記載されておらず、甲C4の記載に接した当業者が、甲C4発明において、ジェランガム、寒天、ペクチンのいずれかを用いることに(相違点11)、動機付けがあるとする具体的な根拠に乏しい。
また、上記のとおり、甲C4発明と本件発明1とでは、発明が解決しようとする課題が異なり、もともと、甲C4発明において、本件発明1の課題を解決するための改良を加える動機付けも存在しない。
そうすると、本件発明1は、甲C4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C4発明とは、少なくとも相違点11-1、11-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C4に記載された発明ではなく、また、本件発明2及び3は、甲C4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C4に基づく申立理由Cア、Cイにより取り消すことはできない。
(10) 甲C5に基づく申立理由Cア、Cイについて
ア 甲C5に記載された発明
甲C5には、実施例3の記載から見て、以下の甲C5発明が記載されていると認められる。
(甲C5発明)
「以下の実施例3の製造方法により得られたマスクペースト。
(1)ポリビニルアルコール10重量部、アルギン酸ナトリウム5重量部、ニパギンメチル0.1重量部、イミダゾリジニル尿素1重量部、カルボキシメチルセルロース1部を精製水60重量部に溶解し、40-75℃に加熱して均一に溶解し、混合物Aを得る;
(2)ヒアルロン酸2重量部、ポリエチレングリコール5重量部とエタノール4重量部を混合物A中に添加し、一定温度に保った条件で攪拌溶解し、均一に混合し、混合物Bを得る;
(3)混合物Bを24h静置後、室温で密封し、アーティチョーク凍結乾燥粉末8重量部、ビタミンB35重量部とエタノール4重量部を加え、均一に攪拌した後、適量のトリエタノールアミンを加えて、pHを5~6に調節する。」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C5発明の「ビタミンB3」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。また、甲C5に記載された成分の重量部を全部足すと、105.1となり、適量のトリエタノールアミンの量は明らかではないが、甲C5発明の「ビタミンB35重量部」は、3重量%よりは多いといえるから、含有量も一致している。
甲C5発明の「ポリエチレングリコール」は、本件発明1の「化学式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体」に相当する。
甲C5発明の「マスクペースト」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そして、甲C5発明は、本件発明1において除かれている(I)~(VIII)の皮膚外用組成物にも当たらない。
そうすると、本件発明1と甲C5発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点12)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C5発明は、これらの成分を含まない点。
(イ) 判断
a 新規性について
相違点12は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲C5に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点12について検討すると、本件発明1は、皮膚外用組成物において(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上とが共存すると、経時的に粘度が低下してしまうという新たな課題を見いだし、(A)及び(B)に加えて、更に(C)本件所定の両親媒性成分を含有させることにより、上記の課題を解決し、経時的な粘度低下を抑制できるという効果を奏するものである。
他方、甲C5には、「アーティチョークアンチエイジングマスククリームであって、以下の重量部の原料から製造されることを特徴とする:アーティチョーク凍結乾燥粉1-8部、ビタミンB31-5部、ポリビニルアルコール2-10部、アルギン酸ナトリウム2-5部、ヒアルロン酸0.5-2部、ポリエチレングリコール1-5部、イミダゾリジニル尿素0.1-1部、カルボキシメチルセルロース0.1-1部、メチルパラベンを0.1部、エタノール8部、精製水40-60部」(請求項1、当審注:原文は中国語であるので、当審による翻訳文を記載した。)と記載され、「本発明」の原料は純粋な天然植物エキスであり、低刺激性で、様々な肌質に適しており、クレンジング効果とアンチエイジング効果の両方を有する旨が記載されている([0008])。
しかしながら、甲C5には、ジェランガム、寒天、ペクチンを含有することについて記載されておらず、甲C5の記載に接した当業者が、甲C5発明において、ジェランガム、寒天、ペクチンのいずれかを用いることに(相違点12)、動機付けがあるとする具体的な根拠に乏しい。
また、上記のとおり、甲C5発明と本件発明1とでは、発明が解決しようとする課題が異なり、もともと、甲C5発明において、本件発明1の課題を解決するための改良を加える動機付けも存在しない。
そうすると、本件発明1は、甲C5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C5発明とは、少なくとも相違点12において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C5に記載された発明ではなく、また、甲C5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C5に基づく申立理由Cア、Cイにより取り消すことはできない。
(11) 甲C7に基づく申立理由Cア、Cイ、Cウについて
ア 甲C7に基づく公然実施発明及び甲C7に記載された発明
甲C7には、特に「成分」の欄の記載から見て、以下の甲C7発明が記載されていると認められる。
(甲C7発明)
「以下の成分を含むクリームである、Ultimate Sleep Cream。
[図:0001429981000049.jpg]
」
そして、甲C7における「掲載時期: 2017年2月」、「市場:イギリス」、「製造国:イギリス」及び「店舗形態: インターネット、通信販売」という記載から、上記クリームは、2017年2月頃から、その組成が理解できる状態で不特定多数の者にインターネットで通信販売されていた製品であって、当該製品は、本件優先日前に公然実施された発明であるといえる。
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C7発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲C7発明の「1,2-ペンタンジオール」、「カプリリルグリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C7発明の「クリーム」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲C7発明は、酸化鉄を含むことから、本件発明1から除かれている「(VIII)の皮膚外用組成物」に相当し、また、「(I)~(VII)の皮膚外用組成物」には相当しない。
そうすると、本件発明1と甲C7発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点13-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C7発明は、これらの成分を含まない点。
(相違点13-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲C7発明は、ニコチン酸アミドの含有量が特定されていない点。
(相違点13-3)
本件発明1は、(VIII)の皮膚外用組成物を除くのに対し、甲C7発明は、(VIII)の皮膚外用組成物に該当する点。
(イ) 判断
a 新規性(刊行物、公然実施)について
相違点13-1は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C7に記載された発明ではなく、また、公然実施された発明でもない。
b 進歩性について
相違点13-1について検討すると、上記(5)イ(イ)bと同様の理由により、本件発明1が、甲C7発明から当業者が容易になし得たことであるということはできない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C7発明とは、少なくとも相違点13-1~13-3において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C7に記載された発明又は公然実施された発明ではなく、また、本件発明2及び3は甲C7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C7に基づく申立理由Cア、Cイ、Cウにより取り消すことはできない。
(12) 甲C8に基づく申立理由Cア、Cイ、Cウについて
ア 甲C8に基づく公然実施発明及び甲C8に記載された発明
甲C8には、特に「成分」の欄の記載から見て、以下の甲C8発明が記載されていると認められる。
(甲C8発明)
「以下の成分を含むクリームであるヘアケアトリートメント。
[図:0001429981000050.jpg]
」
そして、甲C8における「掲載時期: 2018年11月」、「市場:アメリカ」、「製造国:アメリカ」及び「店舗形態: インターネット、通信販売」という記載から、上記クリームは、2018年11月頃から、その組成が理解できる状態で不特定多数の者にインターネットで通信販売されていた製品であって、当該製品は、本件優先日前に公然実施された発明であるといえる。
イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲C8発明の「ナイアシンアミド」は、本件発明1の「ニコチン酸アミド」に相当する。
甲C8発明の「1,2-ペンタンジオール」、「カプリリルグリコール」は、本件発明1の「炭素数5~10のアルカンジオール」に相当する。
甲C8発明の「クリームであるヘアケアトリートメント」は、本件発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
そして、甲C8発明は、本件発明1において除かれている(I)~(VIII)の皮膚外用組成物にも当たらない。
そうすると、本件発明1と甲C8発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点14-1)
本件発明1は、「(A)ジェランガム、寒天、及びペクチンからなる群より選ばれる1種又は2種」を含むのに対し、甲C8発明は、そのような特定がない点。
(相違点14-2)
本件発明1は、ニコチン酸アミドを3質量%以上含むのに対し、甲C8発明は、ニコチン酸アミドの含有量が特定されていない点。
(イ) 判断
a 新規性(刊行物、公然実施)について
相違点14-1は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C8に記載された発明又は公然実施された発明ではない。
b 進歩性について
相違点14-1について検討すると、上記(5)イ(イ)bと同様の理由により、本件発明1が、甲C8発明から当業者が容易になし得たことであるということはできない。
ウ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2及び3と甲C8発明とは、少なくとも相違点14-1において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲C8に記載された発明又は公然実施された発明ではなく、また、本件発明2及び3は、甲C8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、甲C8に基づく申立理由Cア、Cイ、Cウにより取り消すことはできない。
(13) サポート要件(申立理由Aウ、Bウ、Cエ)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
この観点に立って、以下検討する。
イ 本件発明の課題
本件明細書の【0007】~【0009】の記載によれば、本件発明の課題は、「水溶性多糖類と、3質量%以上のニコチン酸アミドとを併用しても、粘度低下が抑制された皮膚外用組成物を提供すること」である。
ウ 発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には、本件発明が「本件発明の課題」を解決できることについて、以下の(ア)~(エ)の内容が記載されている。
(ア) 段落【0004】には、「水溶性多糖類は増粘、保湿等の機能を付与するために皮膚外用組成物に配合される。」ことが記載されている。
(イ) 段落【0007】~【0009】には、「本件発明の課題」を解決するための手段として、(A)本件所定の水溶性多糖類、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上、に加えて、(C)本件所定の両親媒性成分を含有することにより、皮膚外用組成物の経時的な粘度低下を抑制できることが記載されている。
(ウ) 段落【0031】~【0033】には、「【0031】
(A)成分の総含有量は、特に限定されず、水溶性多糖類の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定される・・・
(A)成分の総含有量は、皮膚外用組成物全量に対して、好ましくは0.005~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%、更に好ましくは0.05~2質量%、更により好ましくは0.1~1.5質量%である。
【0032】
(A)成分のうち、ガム類の総含有量は、特に限定されず、皮膚外用組成物全量に対して、好ましくは0.005~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%、更に好ましくは0.01~2質量%、更により好ましくは0.05~1質量%、特に好ましくは0.1~0.3質量%である。
(A)成分のうち、寒天の含有量は、特に限定されず、皮膚外用組成物全量に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、更に好ましくは、0.1~1.5質量%である。」ことが記載されている。
また、段落【0057】~【0058】には、「【0057】
(C)成分の総含有量は、特に限定されず、水溶性多糖類の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定される・・・
(C)成分の総含有量は、皮膚外用組成物の全量に対して、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.005~15質量%、更に好ましくは0.01~12質量%、更により好ましくは0.05~10質量%、特に好ましくは0.1~8質量%である。
【0058】
本発明の皮膚外用組成物中の(B)成分の総含有量1質量部に対する(C)成分の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.0001~10質量部、より好ましくは0.001~5質量部、更に好ましくは0.01~3質量部である。」ことが記載されている。
(エ) 実施例の欄(【0112】~【0136】)には、(A)水溶性多糖類であるジェランガム、カンテン、ペクチン等の水溶性多糖類に(B)ニコチン酸アミド3質量%以上を加えると、保存後の組成物の粘度低下が促進されるが、さらに、(C)両親媒性成分として、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)等のアルキレンオキシド誘導体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体等のホスホリルコリン含有ポリマー、コハク酸ジエトキシエチル等の二価カルボン酸エステル、1,2-ヘキサンジオールであるアルカンジオールを含有させることにより、粘度低下が抑制されることが記載されている一方(実施例1-1~4-5)、本件発明の水溶性多糖類の代わりにセルロース類(セルロース誘導体)であるヒドロキシエチルセルロースを用いた場合には、アルキレンオキシド誘導体を含有させても、粘度低下の抑制が起こらなかったことが記載されている(比較例1-7~1-9)。
エ サポート要件の判断
上記ウの発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明の(A)ジェランガム、寒天、ペクチンからなる群より選ばれる水溶性多糖類、(B)ニコチン酸アミド3質量%以上に加えて、(C)本件所定の両親媒性成分を含有させることによって、粘度低下が抑制され、「本件発明の課題」を解決できることを、認識できるといえる。
オ 申立人の主張について
(ア) 申立人A~Cは、本件発明では、(A)成分、(C)成分の含有量について特定されておらず、(A)成分、(C)成分が極微量である場合を包含するが、(A)成分が極微量であり、水溶性多糖類による増粘作用が生じない場合には、そもそも「粘度が低下するという課題」が生じないこと、(C)成分の配合量が少ない場合には、粘度低下を抑制することができず、本件発明の課題を解決できないことを主張する。
しかしながら、(A)成分が、皮膚外用剤剤において、増粘剤として一般に用いられる含有量が含まれていれば、本件発明の課題が生じるといえるから、サポート要件の観点で、本件発明において(A)成分の含有量が特定される必要があるとはいえない。
また、本件発明は、(C)成分を用いることにより、(A)成分と(B)成分を併用した場合に粘度が生じるという課題を解決できることを見いだしたものであり、【0057】の記載によれば、(C)成分の含有量に特徴があるものとはいえないから、(C)成分の含有量が本件発明において特定されていないことに、サポート要件の観点から問題があるということもできない。
したがって、(A)成分と(C)成分の含有量が特定されていないことについての申立人A~Cの上記主張は採用することができない。
(イ) 申立人Bは、(C)成分を添加することにより経時的な粘度低下が抑制される機構(メカニズム)については何ら記載されていないから、(A)成分の種類が異なれば、同じ(C)成分を用いたとしてもその効果が発揮されるかどうかは不明であり、本件発明全般にわたって本件課題を解決できることは到底理解できないことを主張する。
しかしながら、(A)成分であるジェランガム、寒天、ペクチンは、水溶性多糖類であり、医薬製剤の分野において、増粘剤として用いられるという共通の性質を有している。また、本件明細書の実施例において、ジェランガムについては、(C)成分として、アルキレンオキシド誘導体、ホスホリルコリン含有ポリマー、二価カルボン酸エステル、アルカンジオールなど、様々な両親媒性成分を用いた場合に、粘度低下作用が抑制されることが示されている。そうすると、寒天については2つのアルキレンオキシド誘導体、ペクチンについては、1つのアルキレンオキシド誘導体を用いた場合に、粘度低下作用が抑制されることが示されるにすぎないとしても、ジェランガム、カンテン、ペクチンは、同じ増粘性を有する水溶性多糖類であり、いずれも粘度低下が抑制されているのだから、ジェランガムにおいて粘度低下抑制作用を示された(C)成分であれば、寒天、ペクチンにおいても同様に粘度低下抑制作用を示すことを、当業者であれば認識できる。
そして、申立人Bは、実施例における組合せ以外の(A)成分と(C)成分の組合せでは、粘度低下抑制作用が示されていないことを具体的に示す根拠は提示していない。
そうすると、申立人Bの上記主張は採用することができない。
カ 小括
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、サポート要件についての申立理由Aウ、Bウ、Cエにより取り消すことはできない。
(14) 明確性(申立理由Aエ)について
申立人Aは、本件請求項1の(i)の皮膚組成物の「一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩」において、本件明細書の発明の詳細な説明には、薬理学的に許容される塩について定義が記載されていないから、薬理学的に許容される塩がいかなるものか不明であることを主張する。(当審注:(i)は、訂正後の本件発明の(I)に相当する。)
しかしながら、当業者においては、「薬理学的に許容される塩」といえば、ナトリウム塩やカリウム塩などの、一般に、医薬において用いられる塩を意味することは、明らかである。
また、本件特許の請求項1~3には、そのほかに、不明確な点は見いだせない。
したがって、本件発明1~3は、明確である。
以上によれば、本件発明1~3に係る特許は、明確性についての申立理由Aエにより取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1~3に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700381