特許異議申立
2023-700557
使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システム
- 審判番号
- 2023-700557
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-046545
- 登録番号
- 7219127
- 請求日
- 2023年05月30日
- 審決日
- 2025年03月27日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】住友重機械エンバイロメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人雄渾
- 【異議申立人】三和 優子
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.121-ZAA(B09B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第126条第5項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7219127号発明「使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7219127号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~8〕について訂正することを認める。
特許第7219127号の請求項1~8に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許第7219127号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成31年3月13日の出願であって、令和5年1月30日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年5月30日に特許異議申立人である三和 優子(以下「申立人」という。)により、請求項1~8に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。
2 以後の手続は、次のとおりである。
令和 5年12月12日付け 取消理由通知
令和 6年 2月13日 特許権者から訂正の請求及び意見書の提出
同年 2月27日付け 手続補正指令
同年 3月27日 手続補正書(方式)の提出
同年 4月 4日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 5月 8日 申立人から意見書の提出
同年 6月19日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月26日 特許権者から訂正の請求(以下「本件訂正請 求」という。)及び意見書の提出
同年 9月12日付け 手続補正指令(方式)
同年10月18日 特許権者から手続補正書(方式)の提出
同年12月 5日付け 訂正請求があった旨の通知
令和 7年 1月 7日 申立人から意見書の提出
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和6年2月13日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の請求の趣旨は、「特許第7219127号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、令和6年10月18日の手続補正書(方式)により補正された本件訂正請求の内容(以下「本件訂正」ともいう。)は、以下の訂正事項1~8からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する工程と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備えることを特徴とする」と記載されているのを、「前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する工程と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを破砕する工程と、前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備えることを特徴とする」と記載されているのを、「前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを破砕する工程と、前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする」に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
(訂正事項3-1)
特許請求の範囲の請求項4に「前記処理工程によって、」と記載されているのを、「前記分離回収工程によって、」に訂正する。
(訂正事項3-2)
特許請求の範囲の請求項4に「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを」と記載されているのを、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備えることを特徴とする」と記載されているのを、「前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備えることを特徴とする」と記載されているのを、「前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備え、前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
(訂正事項6-1)
特許請求の範囲の請求項8に「前記処理設備によって、」と記載されているのを、「前記分離回収工程によって、」に訂正する。
(訂正事項6-2)
特許請求の範囲の請求項8に「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを」と記載されているのを、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4について、請求項3、4はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、3、4は一群の請求項である。また、請求項3、4はそれぞれ請求項2を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2~4は一群の請求項である。そして、訂正前の請求項3、4は、訂正前の請求項1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、これら2つの一群の請求項は組み合わされて1つの一群の請求項となる。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項5~8について、請求項7、8はそれぞれ請求項5を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項5、7、8は一群の請求項である。また、請求項7、8はそれぞれ請求項6を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6~8は一群の請求項である。そして、訂正前の請求項7、8は、訂正前の請求項5又は6を直接又は間接的に引用するものであるから、これら2つの一群の請求項は組み合わされて1つの一群の請求項となる。したがって、訂正前の請求項5~8に対応する訂正後の請求項5~8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「処理工程」における「前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程」に「前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程」という発明特定事項を直列的に付加し、さらに、下記第4の甲第4号証に記載される発明に対応する「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」投入すると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書」という。)の【0013】、【0063】にはそれぞれ、「また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えるという特徴を有する。」、「第3の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1cは、図6に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を下水処理設備31に投入する投入手段44を更に設けるものである。」と記載されている。また、紙おむつDの構成成分に対して、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」、構成成分を下水処理設備に投入するから、訂正事項1は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのとおり、使用済み紙おむつの処理方法における分離回収工程に投入工程に関する発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「処理工程」における「前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程」に「前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程」という発明特定事項を直列的に付加し、さらに、下記第4の甲第4号証に記載される発明に対応する「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」投入すると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書の【0013】、【0063】にはそれぞれ、「また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えるという特徴を有する。」、「第3の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1cは、図6に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を下水処理設備31に投入する投入手段44を更に設けるものである。」と記載されている。また、紙おむつDの構成成分に対して、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」、構成成分を下水処理設備に投入するから、訂正事項2は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのとおり、使用済み紙おむつの処理方法における分離回収工程に投入工程に関する発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3のうち、訂正事項3-1は、訂正前の請求項4の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収」が「前記処理工程によって」行われることを特定しているのに対し、訂正後の請求項4は、「前記処理工程」をその工程の一部である「前記分離回収工程」に限定するものである。すなわち、訂正事項3-1は、上位概念である「前記処理工程」を下位概念である「前記分離回収工程」に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3のうち、訂正事項3-2は、訂正前の請求項4の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたもの」における分離回収の対象である「もの」を「汚物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書の【0037】、【0041】にはそれぞれ、「処理設備40は、使用済み紙おむつDを破砕する破砕手段41、使用済み紙おむつDを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段42を備えている」、「分離回収手段42は、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を行うためのものである」と記載されているから、訂正事項3-1は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、当初明細書の【0042】には、「また、破砕された使用済み紙おむつCDを構成する構成成分としては、例えば、パルプD1、高吸水性樹脂D2、プラスチックD3、汚物D4などが挙げられる。なお、分離回収手段42によって、全ての構成成分を個別回収するものであってもよく、一部の構成成分が複数種類混合した状態で回収するものとしてもよい。」と記載されているから、訂正事項3-2は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3-1は、上記アのとおり、上位概念である「前記処理工程」を下位概念である「前記分離回収工程」に変更するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
訂正事項3-2は、上記アのとおり、分離回収の対象である「もの」を「汚物」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5の「処理設備」における「分離回収手段」に「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段」という発明特定事項を直列的に付加し、さらに、下記第4の甲第4号証に記載される発明に対応する「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」投入すると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書の【0013】、【0063】にはそれぞれ、「また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えるという特徴を有する。」、「第3の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1cは、図6に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を下水処理設備31に投入する投入手段44を更に設けるものである。」と記載されている。また、紙おむつDの構成成分に対して、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」、構成成分を下水処理設備に投入するから、訂正事項4は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アのとおり、使用済み紙おむつの処理設備における分離回収手段に投入手段に関する発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項6の「処理設備」における「分離回収手段」に「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段」という発明特定事項を直列的に付加し、さらに、下記第4の甲第4号証に記載される発明に対応する「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」、投入すると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書の【0013】、【0063】にはそれぞれ、「また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えるという特徴を有する。」、「第3の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1cは、図6に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を下水処理設備31に投入する投入手段44を更に設けるものである。」と記載されている。また、紙おむつDの構成成分に対して、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに」、構成成分を下水処理設備に投入するから、訂正事項5は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、上記アのとおり、使用済み紙おむつの処理設備における分離回収手段に投入手段に関する発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6のうち、訂正事項6-1は、訂正前の請求項8の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収」が「前記処理設備によって」行われることを特定しているのに対し、訂正後の請求項8は、「前記処理設備」を構成する処理手段の一部である「前記分離回収手段」に限定するものである。すなわち、訂正事項6-1は、上位概念である「前記処理設備」を下位概念である「前記分離回収手段」に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6のうち、訂正事項6-2は、訂正前の請求項8の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたもの」における分離回収の対象である「もの」を「汚物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書の【0037】、【0041】にはそれぞれ、「処理設備40は、使用済み紙おむつDを破砕する破砕手段41、使用済み紙おむつDを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段42を備えている」、「分離回収手段42は、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を行うためのものである」と記載されているから、訂正事項6-1は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、当初明細書の【0042】には、「また、破砕された使用済み紙おむつCDを構成する構成成分としては、例えば、パルプD1、高吸水性樹脂D2、プラスチックD3、汚物D4などが挙げられる。なお、分離回収手段42によって、全ての構成成分を個別回収するものであってもよく、一部の構成成分が複数種類混合した状態で回収するものとしてもよい。」と記載されているから、訂正事項6-2は、当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6-1は、上記アのとおり、上位概念である「前記処理設備」を下位概念である「前記分離回収手段」に変更するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
訂正事項6-2は、上記アのとおり、分離回収の対象である「もの」を「汚物」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(7)特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
本件訂正請求による訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~8に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程と、
前記下水処理場内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、
前記処理工程は、
前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕工程と、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、
前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項2】
使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程と、
前記下水処理場内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、
前記処理工程は、
前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、
前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項3】
前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、前記下水処理場で処理された処理水を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項4】
前記分離回収工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項5】
下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え、
前記処理設備は、
前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備え、
前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。
【請求項6】
下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え、
前記処理設備は、
前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備え、
前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。
【請求項7】
前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を備え、
前記洗浄手段は、前記下水処理場で処理された処理水を用いることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用済み紙おむつの処理システム。
【請求項8】
前記分離回収手段によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用済み紙おむつの処理システム。」
第4 取消理由の概要及び証拠方法
1 令和5年12月12日付け取消理由通知及び令和6年6月19日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由は、概略次のとおりである。
理由1:(進歩性)本件特許の下記の請求項1~8に係る発明は、本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証又は甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 甲号証について
申立人は、次の甲第1号証~甲第9号証を提出した。甲第1号証~甲第9号証を、以下「甲1」~「甲9」ともいう。
甲第1号証:特開2014-151254号公報
甲第2号証:特開2013-150976号公報
甲第3号証:特開2018-89785号公報
甲第4号証:特開2012-219172号公報
甲第5号証:特開2002-273731号公報
甲第6号証:国土交通省、「下水熱利用の取組状況と事業概要報告」、平成29年3月8日、https://www.mlit.go.jp/common/001179371.pdf
甲第7号証:国土交通省、「雑用水利用の現状と課題」、平成20年3月27日、https://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/07study/documents/05/doc03.pdf
甲第8号証:通商産業省、「工業用水道事業法の解釈について」、昭和33年10月27日、https://www.meti.go.jp/policy/tsutatsutou/tuuti1/aa32.pdf
甲第9号証:公益社団法人大阪府産業廃棄物協会, 「Clean Life」, 2015, Vol.61, p.26~31
第5 前記第4における理由1(進歩性)についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌する攪拌工程と、
前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分との混合物、紙おむつの包装材、及び、汚水、の3つに分離する分離工程と、
備えることを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項2】
前記攪拌工程においては、前記ポリマー分解剤を含む水として中水を用いる
請求項1に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。」
「【請求項12】
裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌し、前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との第1混合物、及び、ビニールと不織布の第2混合物、に分離して排出する攪拌装置と、
前記第1混合物の脱水を行う第1脱水装置と、
前記第2混合物の脱水を行う第2脱水装置と、
前記第1混合物と前記第2混合物の少なくとも一方から出る汚水を浄化する非高度処理型浄化槽と、
備えることを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化システム。
【請求項13】
本使用済み紙おむつの再資源化システムに係る施設は、中水又は浸出水の水処理施設に並設されており、前記水処理施設にて処理した中水又は浸出水を前記洗浄水として用いることを特徴とする請求項12に記載の使用済み紙おむつの再資源化システム。」
「【0001】
本発明は、使用済み紙おむつの再資源化方法、土壌改良材、及び、使用済み紙おむつの再資源化システムに関する。」
「【0006】
しかしながら、現時点における紙おむつの再資源化施設は、前記施設が唯一であり、普及していないのが現状である。その原因として様々な要因が考えられるが、パルプ回収施設運転費、資源化施設で回収されたパルプの需要、処理に伴い発生する汚水の処理、等の課題が考えられる。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みて成されたものであり、現状の使用済み紙おむつの資源化システムにおける問題点を解決することを目的とする。」
「【0014】
(1)第1の実施形態:
図1は、第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法の流れを説明するフローチャートであり、図2は、第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムSの一例を示した図である。
【0015】
図1に示す再資源化方法は、回収工程S10、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を含んで構成される。
【0016】
回収工程S10においては、使用済み紙おむつTを回収して、搬入トラック等の搬送手段で、使用済み紙おむつTの再資源化に係る装置(図2に示す、裁断機10、ポリマー分解槽20、第1脱水装置30、第2脱水装置40、浄化槽50、等)が設置されている施設に搬入する。
【0017】
裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを、例えば10cm四方程度の小片に裁断する。これにより、使用済み紙おむつTは、高分子吸水ポリマーを包容する外装材や内部表面材等が裁断され、内部に収容されている高分子吸水ポリマーが露出又は溢れ出る。」
「【0025】
[攪拌工程]
攪拌工程S30においては、攪拌装置としてのポリマー分解槽20(図2ではパルパー)に、洗浄水やポリマー分解剤としての分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌する。これにより、使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされる。」
「【0029】
攪拌工程S30において用いる洗浄水には、使用済み紙おむつTを洗浄可能な各種の水を使用することができるが、本実施形態では、再生水(中水)や浸出水等の高硬度水を用いるものとする。再生水や浸出水は少なくともCaイオンを含んでおり、特に浸出水はCaイオンを多く含んでいるためである。
【0030】
再生水は、下水や雨水などをろ過・滅菌(再生処理)した水であり、小便等に由来するCaイオンが溶存している。浸出水は、廃棄物処分場や埋立地において浸透した雨水等に処分された汚泥や廃棄物が分解して浸出する汚水であり、焼却ゴミのダイオキシンを除去するために添加されたCaに由来するCaイオンが溶存している。」
「【0033】
[分離工程]
分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物(以下、攪拌物と記載する。)を、第1混合物と第2混合物とに分離する。第1混合物は、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物である。第2混合物は、非水溶性の包装材(小片化した外装材D1と内部表面材D2の混合物)である。
【0034】
第1混合物は、ポリマー分解槽20の下部に設けられた排出口から排出される。排出口にはフィルタが設けられており、フィルタには、上述した脱水後の高分子吸水ポリマーD5が通過可能な程度の孔が複数形成されている。このため、排出口からは、第1混合物が排出され、第2混合物は排出されない。
【0035】
排出された第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離される。このように分離された第3混合物は、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる。
【0036】
第3混合物は、大小便に含まれていた窒素やリンも含んでいるため、土壌改良材として緑農地に還元すると好適である。
【0037】
一方、第2混合物は、掻上げと越流の少なくとも一方の方式によりポリマー分解槽20から排出される。これにより、ビニールと不織布の第2混合物が、攪拌物から分離される。第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、第4混合物としての固形物と液分とに分離される。第4混合物は廃プラスチックであり、油化してRPF(固形燃料)としたり、サーマルリサイクルの原料としたりできる。なお、紙おむつTの外装材D1や内部表面材D2といった包装材を、生分解性材料で作成することも可能である。この場合、第4混合物も土壌改良材として用いることができる。
【0038】
第1脱水装置30や第2脱水装置40で分離された液分は、浄化槽50に送られる。浄化槽は、いわゆる家庭用の浄化槽であり、非高度処理型浄化槽とする。浄化には、微生物の働きで汚水の浄化に非高度処理型浄化槽を用いることで、再資源化に係るコストを低減することが出来る。浄化槽に貯まる汚泥は、第1固形分と同様、土壌改良材として緑農地に還元すると好適である。」
「【0040】
以上説明した第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法(再資源化システム)によれば、従来の再資源化方法(再資源化システム)に比べて、使用する洗浄水の量を大幅に少なく、高分子吸水ポリマーの分離助剤の量も少なくて済む。また、初期コストが低く、工程数が少なく、実施しやすい。従って、焼却処分の代替手段として再資源化を採用しやすくなり、焼却に流れていた使用済み紙おむつが再資源化に回るようになり、焼却施設の傷みを防止するとともに焼却処理によって発生する温室効果ガス(GHGs)も削減でき、地球温暖化防止及び森林の保護にも寄与できる。」
「【0052】
(3)第3の実施形態:
次に、第3の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムについて説明する。本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムは、その施設が、中水又は浸出水の水処理施設に並設されている点で、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる。
【0053】
本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムによれば、中水や浸出水の供給を受けやすいことはもちろん、配管が短くて済む。中水や浸出水はCaを含むことから配管が詰まりやすいため、配管が短いとメンテナンスが容易である。」
「【図1】
[図:0001427902000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001427902000002.jpg]
」
(2)甲4には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は吸水性ポリマーから得られる新規なポリマー、さらに詳しくはおむつに使われていた吸水性ポリマーから得られる新規なポリマー、並びにその用途に関する。」
「【0020】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、吸水性ポリマーがおむつに使われていた吸水性ポリマーの再利用方法を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、吸水性ポリマーがおむつに使われていた吸水性ポリマーに化学処理を施して有機汚泥に添加する吸水性ポリマーの再利用方法を提供することである。」
「【0109】
本発明の処理方法では、吸収性ポリマーは特に限定されないが、特におむつに使われていた吸収性ポリマーに好適に適用できる。以下おむつについて説明する。」
「【0112】
再利用に当って、構成成分を有価な材料に変換することが必須になる。有価原料への変換には、まず構成成分を分解する必要がある。分解する方法は処理目的、処理容量などにより、一概に規定できない。基本的には、まず必要に応じて、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去する。次いで、使用済紙おむつを解体する。解体後、洗浄してもよい。
【0113】
解体方法として、プラスチックシートと他の成分に分離する方法、及びおむつそのものを一挙に破断する方法がある。前者の方法としては、スクリューにより表面を破断して、プラスチックシートと不織布・パルプ・吸収性ポリマー混合物に分離して、不織布・パルプ・吸収性ポリマー混合物は水中に添加して各成分が分散するようにする。使用する水としては、河川の表流水、工業用水、水道水などで特に制限はない。その際、吸収性ポリマーの膨潤を抑制するために無機塩を溶解した水溶液を使用しても良い。無機塩としては、アルカリ金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、アルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などがあり、水溶性であればよい。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムなどがあげられる。無機塩として、一種以上併用しても良い。その濃度は10ppm~10000ppmであり、10ppm以下であると、吸収性ポリマーの膨潤抑制効果が少なく、一方10000ppm以上であると、装置の腐食等が生起し、問題となる。そのように分散された不織布・パルプ・吸収性ポリマーの懸濁液はスクリーン等のろ過器により、まず不織布が分離され、引き続き次のスクリーンによりパルプが分離される。最後に膨潤した吸収性ポリマーが分離される。
【0114】
最初に分離されたプラスチックシートは圧縮成形され、固形燃料等に利用できる。不織布も同様に圧縮成形され、固形燃料等に利用できる。パルプはさらに洗浄され、スクリーンで水と分離して、脱水機を経て、乾燥器で乾燥・成形され、パルプシートして製紙用原料及び紙おむつ原料として利用できる。分離された膨潤吸収性ポリマーは前記した化学処理を施して有用な材料として利用できる。化学処理は分離したその場で行っても良いし、処理品を使用する場所まで持って行って化学処理を施しても良い。このように、本発明の吸収性ポリマーは実際に紙おむつに使用した後、各構成成分に分解することにより、有効に利用することができる。」
「【0116】
(汚泥の処理方法)
上記した方法で使用済紙おむつの再利用が可能になり、し尿・汚物の処理をし尿処理場・下水処理場で行うことにより、汚物の懸濁液の処理を多大な投資及び施設運営の多大な経費を必要とせずに行うことができる。
【0117】
また上記した使用済紙おむつの再利用をし尿汚水の処理施設で実施することにより吸水性ポリマーは例えば前記した化学処理の一つのホフマン反応を施すことにより、カチオン性を示す一級アミノ基が導入されたPAM(以下、ホフマンPAMと略す。)に変換され、ホフマンPAMは各種有機汚泥に添加することにより、それらの凝集・脱水に有効に作用する。それらの中でも、下水汚泥に添加することにより、汚泥の凝集・脱水に有効に作用する。その際、併せて分離されるパルプを汚泥に添加することにより、結果的に脱水汚泥の含水率を低下できる。また、同時に分離されるプラスチック製のシート及び不織布を脱水汚泥の燃焼時に添加することにより、補助燃料を削減できるとともに、併せて燃焼温度を高くできる。現在、概ね燃焼温度は800℃であり、それを850℃にアップできれば、温室効果がCO2の310倍のN2O濃度を半減できるので、温室効果ガス削減に効果的になる。」
「【0120】
下水処理場では、汚泥への古紙添加は行われているので、その設備の転用は可能である。
【0121】
即ち、使用済おむつより汚物を除去する洗浄機は新設するにしても、その後の古紙のプレス成型品を解砕する解体機はそのまま使用し、紙おむつを解砕してそれを古紙貯留槽で懸濁し、破砕機、細断機をとおして、古紙に添加できるまで細断する。それを別の貯留槽にいれ、濃度を調製した後、それを汚泥供給機に送液し、別ラインで供給される汚泥と混合する。その際、貯留槽より汚泥供給機に行く配管中にホフマン分解反応を行うための薬品供給ライン及び加熱ラインを設置しておき、細断した懸濁液中の吸水性ポリマーをホフマンPAMに変換し、汚泥の凝集、脱水に有用な原料として利用する。」
2 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1(上記1(1)参照。)には、「本発明は、使用済みの紙おむつの再資源化方法、・・・、及び、使用済み紙おむつの再資源化システムに関する」こと(【0001】)が記載され、「再資源化方法は、回収工程S10、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を含んで構成される」こと(【0015】)が記載されている。
また、甲1には、第1の実施形態の再資源化方法について、「回収工程S10においては、使用済み紙おむつTを回収して、搬入トラック等の搬送手段で、使用済み紙おむつTの再資源化に係る装置が設置されている施設に搬入する」こと(【0016】)、再資源化に係る装置が「図2に示す、裁断機10、ポリマー分解槽20、第1脱水装置30、第2脱水装置40、浄化槽50、等」であること(【0016】)が記載され、「裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを、・・・小片に裁断する」こと(【0017】)が記載され、「攪拌工程S30においては、攪拌装置としてのポリマー分解槽20に、洗浄水やポリマー分解剤としての分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌」し、「使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされる」こと(【0025】)、「攪拌工程S30において用いる洗浄水には、・・・本実施形態では、再生水(中水)や浸出水等の高硬度水を用いる」こと(【0029】)、「分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物・・・を、第1混合物と第2混合物とに分離する」こと(【0033】)、「排出口にはフィルタが設けられており、・・・排出口からは、第1混合物が排出され、第2混合物は排出されない」こと(【0034】)、「第1混合物は、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物であ」り、「第2混合物は、非水溶性の包装材」であること(【0033】)、「排出された第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離され」、「第3混合物は、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる」こと(【0035】)、「第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、第4混合物としての固形物と液分とに分離され」、「第4混合物は廃プラスチックであ」ること(【0037】)が記載されている。
さらに、甲1には、第3の実施形態の再資源化システムについて、「本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムは、その施設が、中水又は浸出水の水処理施設に並設されている点で、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる」こと(【0052】)が記載されている。ここで、「再資源化システムは、その施設」における「施設」が、「再資源化方法に係る装置が設置されている施設」であり、「再資源化方法に係る装置」が「裁断工程S20」、「攪拌工程S30」、及び、「分離工程S40」のそれぞれの工程を実施する装置を含んで構成されることは明らかである。
そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」、「甲1B発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1A発明)
「使用済みの紙おむつの再資源化方法であって、
再資源化方法は、回収工程S10、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を含んで構成され、
回収工程S10においては、使用済み紙おむつTを回収して、搬入トラック等の搬送手段で、使用済み紙おむつTの再資源化に係る装置が設置されている施設に搬入し、
裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを小片に裁断し、
攪拌工程S30においては、ポリマー分解槽20に、洗浄水としての再生水(中水)や分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌し、使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされ、
分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物を、排出口に設けられたフィルタにより、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物である第1混合物と、非水溶性の包装材である第2混合物とに分離し、
第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離され、
第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、廃プラスチックである第4混合物としての固形物と液分とに分離され、
再資源化方法に係る装置が設置されている施設が、再生水(中水)の水処理施設に並設されている、
使用済み紙おむつの再資源化方法。」
(甲1B発明)
「甲1A発明における、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を実施する装置を含んで構成される再資源化方法に係る装置が設置されている施設を備える再資源化システムであって、当該施設が、再生水(中水)の水処理に並設されている、使用済み紙おむつの再資源化システム。」
(2)甲4に記載された発明
甲4(上記1(2)参照。)の段落【0020】には、本発明が解決しようとする他の課題は、吸水性ポリマーがおむつに使われていた吸水性ポリマーの再利用方法を提供すること」が記載されている。
また、甲4には、おむつに使われていた吸水性ポリマーの再利用方法について、「まず必要に応じて、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去する。次いで、使用済紙おむつを解体する」こと(【0112】)、「解体方法として、・・・スクリューにより表面を破断して、プラスチックシートと、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物に分離して、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物は水中に添加して各成分が分散するようにする」こと、「そのように分散された不織布・パルプ・吸収性ポリマーの懸濁液はスクリーン等のろ過器により、まず不織布が分離され、引き続き次のスクリーンによりパルプが分離される。最後に膨潤した吸収性ポリマーが分離される。」こと(【0113】)、が記載されている。ここで、再利用方法における、洗浄、破断、分離処理を行う設備は再利用システムを構成しているといえる。
そして、甲4には、上記再利用方法について、「上記した方法で使用済紙おむつの再利用が可能になり、し尿・汚物の処理をし尿処理場・下水処理場で行うことにより、汚物の懸濁液の処理を多大な投資及び施設運営の多大な経費を必要とせずに行うことができる」こと(【0116】)、「上記した使用済紙おむつの再利用をし尿汚水の処理施設で実施することにより」、「吸水性ポリマーは、・・・カチオン性を示す一級アミノ基が導入されたPAM(以下、ホフマンPAMと略す。)に変換され」、「下水汚泥に添加することにより、汚泥の凝集・脱水に有効に作用する」こと(【0117】)、「その際、併せて分離されるパルプを汚泥に添加することにより、結果的に脱水汚泥の含水率を低下できる」こと(【0117】)、「同時に分離されるプラスチック製のシート及び不織布を脱水汚泥の燃焼時に添加することにより、補助燃料を削減できる」こと(【0117】)、「下水処理場では、汚泥への古紙添加は行われているので、その設備の転用は可能である」こと(【0120】)が記載されている。ここで、再利用方法における添加処理を行う設備は、洗浄、破断、分離処理を行う設備によって構成される再利用システムの一部を構成しているといえる。また、使用済紙おむつの再利用方法が、し尿処理場・下水処理場で行われること、および、下水処理場では設備の転用は可能であることから、甲4に記載された当該再利用方法における洗浄、破断、分離、添加処理を行う設備が、し尿処理場・下水処理場内に並設されていることは明らかである。また、上記再利用方法では、分離された吸水性ポリマーのほかに、分離されたプラスチックシート、パルプ、不織布も再利用されていることから、上記再利用方法が使用済紙おむつの再利用方法であるといえる。
そうすると、甲4には、次の発明(以下「甲4A発明」、「甲4B発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲4A発明)
「使用済紙おむつの再利用方法において、
まず、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去し、次いで、使用済紙おむつを解体する、洗浄および解体処理を行い、
解体処理では、スクリューにより表面を破断して、プラスチックシートと、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物に分離して、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物は水中に添加して各成分が分散するようにし、そのように分散された不織布・パルプ・吸収性ポリマーの懸濁液はスクリーン等のろ過器により、まず不織布が分離され、引き続き次のスクリーンによりパルプが分離され、最後に膨潤した吸収性ポリマーが分離される、破断処理および分離処理を行い、
上記汚物の処理、上記解体処理をし尿処理場・下水処理場で行い、分離された吸水性ポリマーはホフマンPAMに変換された後に下水汚泥に添加され、分離されたパルプは汚泥に添加され、分離されたプラスチックシート及び不織布は脱水汚泥の燃焼時に添加される添加処理をし尿処理場・下水処理場で行う、
使用済紙おむつの再利用方法。」
(甲4B発明)
「甲4A発明の使用済紙おむつの再利用方法における、洗浄、破断、分離、添加処理を行う設備によって構成される再利用システムであって、当該設備が、し尿処理場・下水処理場内に並設されている、使用済紙おむつの再利用システム」
3 対比・判断
(1)甲1を主引用例とする場合について
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1A発明を対比する。
甲1A発明の「再生水(中水)の水処理施設」と本件発明1の「下水処理場」とは、いずれも「水処理施設」である点で共通する。
そして、甲1A発明の「再資源化方法に係る装置が設置されている施設」は、「水処理施設に並設されている」ことから、それを水処理施設の一部とみなせば、甲1A発明の「使用済み紙おむつTを回収して、搬入トラック等の搬送手段で、使用済み紙おむつTの再資源化に係る装置が設置されている施設に搬入し」と本件発明1の「使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程」とは、「使用済み紙おむつを水処理施設に搬送する搬送工程」である点で共通する。
甲1A発明の「裁断」は、本件発明1の「破砕」に相当する。また、甲1A発明の「裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを小片に裁断し」について、洗浄水としての再生水(中水)を添加する前に裁断していることから、乾式状態で裁断しているといえる。よって、甲1A発明の「裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを小片に裁断し」は、本件発明1の「使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕工程」に相当する。
甲1A発明の「分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物を、排出口に設けられたフィルタにより、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物である第1混合物と、非水溶性の包装材である第2混合物とに分離し、第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離され、第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、廃プラスチックである第4混合物としての固形物と液分とに分離され」について、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物が、「上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分」、「汚水」、「廃プラスチックである第4混合物としての固形物」、「液分」とに分離されており、これら分離された成分は使用済みの紙おむつの構成成分であって、構成成分ごとに回収されることは明らかである。よって、甲1A発明の「分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物を、排出口に設けられたフィルタにより、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物である第1混合物と、非水溶性の包装材である第2混合物とに分離し、第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離され、第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、廃プラスチックである第4混合物としての固形物と液分とに分離され」は、本件発明1の「使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程」に相当する。
そして、甲1A発明の「裁断工程S20」と「攪拌工程S30」と「分離工程S40」は、本件発明1の「使用済み紙おむつを処理する処理工程」に相当し、また、甲1A発明の攪拌工程30において洗い落とされた「汚物」、及び、分離工程において分離された「上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分」、「汚水」、「廃プラスチックである第4混合物としての固形物」、「液分」は、使用済み紙おむつから除去または分離回収されたものであるから、本件発明1の「処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたもの」に相当する。
すると、本件発明1と甲1A発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「使用済み紙おむつを水処理施設に搬送する搬送工程と、前記水処理施設内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕工程と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備える、使用済み紙おむつの処理方法。」
<相違点1-1>
本件発明1では、水処理施設が「下水処理場」であるのに対し、甲1A発明では「再生水(中水)の水処理施設」である点。
<相違点1-2>
本件発明1では、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものについて、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備える」のに対し、甲1A発明ではそのように特定されていない点。
(イ) 相違点についての検討
a 相違点1-1について
甲1(上記1(1)参照)には、「再生水は、下水や雨水などをろ過・滅菌(再生処理)した水」(【0030】)であることが記載されており、甲1A発明において、洗浄水として下水をろ過・滅菌(再生処理)した水を選択する場合、その再生処理を行う施設は下水処理施設であるといえる。してみれば、相違点1-1は実質的な相違点ではない。
また、念のため、本件発明1の「下水処理場」について、次のように限定解釈した場合についても検討する。本件特許の明細書の段落【0034】には、「本実施態様の下水処理場30は特に限定されないが水処理プロセス、汚泥処理プロセス、消化ガス発電プロセスを実施可能な下水処理設備31を備えることが好ましい」と記載され、段落【0035】には、「下水処理場30の下水処理設備31としては、例えば、水処理プロセスに用いる下水処理設備として、最初沈殿池31a、反応槽31b、最後沈殿池31c、消毒設備31dなどが挙げられ・・・汚泥処理プロセスに用いる下水処理設備として、濃縮設備31e、消化設備31f、脱水設備31g、焼却設備31hなどが挙げられ・・・消化ガス発電プロセスに用いる下水処理設備として、脱硫装置31i、ガスホルダ31j、発電設備31kなどが挙げられる」と記載されているところ、本件特許1の「下水処理場」は、前記水処理プロセス、汚泥処理プロセス、消化ガス発電プロセス等に用いる各種下水処理設備を備えた施設であると解し得る。
甲4(上記1(2)参照)には、「使用済みの紙おむつを洗浄して汚物を除去」(【0113】)し、その「し尿・汚物の処理をし尿処理場・下水処理場で行うことにより、汚物の懸濁液の処理を多大な投資及び施設運営の多大な経費を必要とせずに行うことができる」(【0116】)こと、「上記した使用済紙おむつの再利用をし尿汚水の処理施設で実施することにより」、「吸水性ポリマーは・・・カチオン性を示す一級アミノ基が導入されたPAM(以下、ホフマンPAMと略す。)に変換され」、それを「下水汚泥に添加することにより、汚泥の凝集・脱水に有効に作用する」(【0117】)こと、「併せて分離されるパルプを汚泥に添加することにより、結果的に脱水汚泥の含水率を低下できる」(【0117】)こと、「同時に分離されるプラスチック製のシート及び不織布を脱水汚泥の燃焼時に添加することにより、補助燃料を削減できる」(【0117】)ことが記載されている。すなわち、使用済み紙おむつの洗浄後の汚物を水処理プロセスの設備に投入し、使用済み紙おむつの解体後に分離されたパルプを汚泥処理プロセスの設備に投入し、同じく分離されたプラスチック製のシート及び不織布を汚泥処理プロセスの焼却設備に投入することで、処理コストを低減し、使用済み紙おむつを水処理プロセス、汚泥処理プロセスにおいて有効利用できることが記載されている。
してみれば、甲1A発明における下水処理施設を、使用済み紙おむつの洗浄後の汚物や分離工程で分離された吸水性ポリマー、パルプ、プラスチック製のシート及び不織布等の各成分を投入可能な前記各種下水処理設備を備えた施設とすることで、処理コストを低減し、使用済み紙おむつを有効利用できるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
b 相違点1-2について
前記aで検討したとおり、甲1A発明における下水処理施設を、使用済み紙おむつの洗浄後の汚物や分離工程で分離された各成分を投入可能な前記各種下水処理設備を備えた施設とする際に、分離工程で分離された各種成分を投入する投入工程を備えたものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである。また、甲1発明において、投入前に、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応を施すことが必須であるとするような事情はないから、甲1A発明において、投入する各種成分は、吸水性ポリマーを除き、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに投入できることは明らかである。
(ウ)効果について
本件特許の明細書の段落【0017】には、「使用済み紙おむつの処理に掛かる処理コストを低減させるとともに、使用済み紙おむつの構成成分を資源として有効利用することができる」ことが記載されているが、この点については、甲1には、「パルプ回収施設運転費、資源化施設で回収されたパルプの需要、処理に伴い発生する汚水の処理、等の課題」(【0006】)を解決することを目的とすること、「使用済み紙おむつの再資源化システムは、その施設が、中水又は浸出水の水処理施設に並設されている」ことで「注水や浸出水の供給を受けやすいことはもちろん、配管が短くて済む」こと、「配管が短いとメンテナンスが容易であること」(【0052】~【0053】)が記載されており、甲4には、「し尿・汚物の処理をし尿処理場・下水処理場で行うことにより、汚物の懸濁液の処理を多大な投資及び施設運営の多大な経費を必要とせずに行うことができる」こと(【0116】)、「分離されるパルプを汚泥に添加することにより、結果的に脱水汚泥の含水率を低下できる」こと、「分離されるプラスチック製のシート及び不織布を脱水汚泥の燃焼時に添加することにより、補助燃料を削減できるとともに、併せて燃焼温度を高くできる」こと(【0117】)が記載されていることから、本件発明1の効果は、甲1及び甲4の記載から当業者が予測し得る範囲のものである。
(エ)特許権者の主張
特許権者は、令和6年8月26日提出の意見書において、以下a~cの主張を行っている。
a 甲1の段落【0029】~【0031】の記載からすると、甲1A発明においては、Caイオンを多く含む水として、再生水や浸出水を使用するのであって、どのような水を使用してよいわけではないから、甲1A発明において、再資源化方法に係る装置が設置されている施設を、再生水(中水)の水処理施設に代えて、下水処理施設内に備える動機はない。
b 甲4には、紙おむつを裁断した懸濁液に対してホフマン分解処理をして汚泥に添加することが記載されているにすぎないから、甲1A発明において、甲4に記載された発明を参酌しても、紙おむつに対して破砕工程と分離回収工程を施し、構成成分毎に分離されたものを汚泥に添加するという動機はない。
c 甲4に記載された発明は、吸水性ポリマーや吸水性ポリマーに水性媒体を吸収させた水性ゲルに化学処理を施すことを前提とする発明であるから、甲4に記載された発明を参酌しても、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、下水処理設備に適用する動機はない。
そこで、前記主張a~cについて検討する。
前記主張aについて、甲4には、「使用済みの紙おむつを洗浄して汚物を除去」(【0113】)し、その「し尿・汚物の処理をし尿処理場・下水処理場で行うことにより、汚物の懸濁液の処理を多大な投資及び施設運営の多大な経費を必要とせずに行うことができる」(【0116】)と記載されており、前記水処理プロセスで再生処理された処理水は、Caイオンを多く含む水であると理解できるから、甲4に記載された技術事項を甲1A発明に適用する動機づけが否定されるものではない。
前記主張b、cについて、甲4には、吸水性ポリマーだけでなく、使用済み紙おむつの汚物、汚水、解体後に分離されたパルプ、同じく分離されたプラスチック製のシート及び不織布についても下水処理設備に投入することが記載されており、これらについては化学処理を施すことを前提とするものではないから、甲4に記載された技術事項を甲1A発明に適用する動機づけが否定されるものではない。
よって、前記特許権利者の主張a~cはいずれも採用できない。
(オ)小括
したがって、本件発明1は、甲1A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2は、本件発明1の「前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕工程と」を「前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し」に置き換えたものに相当する。
そこで、本件発明2と甲1A発明を対比すると、甲1A発明の「裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを小片に裁断し」は、本件発明2の「使用済み紙おむつを破砕する破砕工程」に相当し、また、甲1A発明の「攪拌工程S30においては、ポリマー分解槽20に、洗浄水としての再生水(中水)や分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌し、使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされ」は、本件発明2の「使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程」に相当し、その余の点については、前記ア(ア)で検討したとおりである。
そうすると、本件発明2と甲1A発明とは、前記相違点1-1、相違点1-2の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
本件発明2では、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を破砕工程の前段に有するのに対し、甲1A発明では、裁断工程の後段に有する点
(イ)相違点についての検討
前記相違点1-3について検討する。
甲4には、使用済み紙おむつの構成成分を分解する際に、「基本的には、まず必要に応じて、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去する。次いで、使用済紙おむつを解体する。解体後、洗浄してもよい」(【0112】)、すなわち、洗浄工程を解体工程の前あるいは後のいずれも選択し得ることが記載されている。
してみれば、甲1A発明の破砕工程の後の攪拌工程での洗浄を実施する方法において、洗浄の実施を裁断工程の後から裁断工程の前に順番を入れかえることは当業者が適宜選択し得るものであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明2は、甲1A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3
(ア)対比
本件発明3は、本件発明1又は2の処理工程に、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を備え、前記洗浄工程は、下水処理場で処理された処理水を用いる、と限定するものである。
本件発明3と甲1A発明を対比すると、本件発明3と甲1A発明とは、上記相違点1-1、相違点1-2、相違点1-3の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-4>
本件発明3では、洗浄工程において、「下水処理場で処理された処理水」を用いるのに対し、甲1A発明では、「再生水(中水)」を洗浄水として用いている点
(イ)相違点についての検討
上記相違点1-4について検討する。
甲1には、「本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムは、その施設が、中水又は浸出水の水処理施設に並設され・・・中水や浸出水の供給を受けやすい」と記載されており、前記ア(イ)で検討したとおり、甲1A発明において、その水処理施設は下水処理施設であるといえるし、各種下水処理設備を備えた施設(下水処理場)とすることも当業者が容易に想到し得ることである。
してみれば、甲1A発明における洗浄水として下水処理場で処理した再生水を用いることは当業者が容易に想到し得ることであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、甲1A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明4
(ア)対比
本件発明4は、本件発明1~3のいずれかの分離回収工程によって、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備える」と限定するものである。
そうすると、本件発明4と甲1A発明とは、上記相違点1-1、相違点1-2、相違点1-3の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-5>
本件発明4では、投入工程において、「分離回収工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物」を投入するのに対し、甲1A発明では、そのように特定されていない点
(イ)相違点についての検討
甲1A発明における使用済み紙おむつから除去または分離されたもののうち、「汚物」、「汚水」は、本件発明4の「使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物」に相当する。
そして、前記ア(イ)で検討したとおり、「汚物」、「汚水」を下水処理設備に投入することは、当業者が容易に想到し得ることである。
(ウ)小括
したがって、本件発明4は、甲1A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件発明5
(ア)対比
本件発明5と甲1B発明を対比する。
甲1B発明の「甲1A発明における裁断工程S20」、「甲1A発明における分離工程S40」はそれぞれ、上記ア(ア)で検討したとおり、「使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する」、「使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する」に相当することから、甲1B発明の「甲1A発明における裁断工程S20を実施する装置」、「甲1A発明における分離工程S40を実施する装置」、「甲1A発明における、裁断工程S20、及び、分離工程S40を実施する装置を含んで構成される再資源化方法に係る装置」はそれぞれ、本件発明5の「使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段」、「使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段」、「使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え、前記処理設備は、破砕手段と分離回収手段を備える」に相当する。
また、甲1B発明の「甲1A発明における、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を実施する装置」は、本件発明5の「処理設備」に相当し、甲1A発明の攪拌工程30において洗い落とされた「汚物」、及び、分離工程において分離された「上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分」、「汚水」、「廃プラスチックである第4混合物としての固形物」、「液分」は、使用済み紙おむつから除去または分離回収されたものであるから、甲1B発明の「甲1A発明における、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を実施する装置」によって発生した「汚物」、「上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる第3混合物としての固形分」、「汚水」、「廃プラスチックである第4混合物としての固形物」、「液分」は、本件発明5の「処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたもの」に相当する。
さらに、甲1B発明の「再資源化システム」は、本件発明5の「処理システム」に相当する。
そして、甲1B発明の「再資源化方法に係る装置が設置されている施設」は、「水処理施設に並列されている」ことから、それを水処理施設の一部とみなせば、甲1B発明の「再資源化方法に係る装置が設置されている施設が、再生水(中水)の水処理施設に並設されている」と本件発明5の「下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え」とは、水処理施設内に処理設備を備える点で共通している。
すると、本件発明5と甲1B発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「水処理施設内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え、前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。」
<相違点1-1’>
本件発明5では、水処理施設が「下水処理場」であるのに対し、甲1B発明では「再生水(中水)の水処理施設」である点
<相違点1-2’>
本件発明5では、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものについて、「ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備える」のに対し、甲1B発明ではそのように特定されていない点。
(イ)相違点についての検討
前記相違点1-1’、1-2’について検討する。
相違点1-1’について、前記ア(イ)aで相違点1-1について検討したのと同様の理由から、実質的な相違点ではないし、そうでなくても、甲1B発明における下水処理施設として、分離工程で分離された各成分を投入可能な前記各種下水処理設備を備えた施設、すなわち、下水処理場を選択することで、処理コストを低減し、使用済み紙おむつを有効利用できるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点1-2’について、前記ア(イ)bで相違点1-2について検討したのと同様の理由から、前記aで検討したとおり、甲1B発明における下水処理施設として、分離工程で分離された各成分を投入可能な前記各種下水処理設備を備えた施設を選択する際に、分離工程で分離された各種成分を投入する投入工程を備えたものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明5の効果についても、前記ア(ウ)で検討したとおり、甲1及び甲4の記載から当業者が予測し得る範囲のものである。
(ウ)小括
したがって、本件発明5は、甲1B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件発明6
(ア)対比
本件発明6は、本件発明5の「前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と」を「前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し」に置き換えたものに相当する。
そこで、本件発明6と甲1B発明を対比すると、甲1B発明(甲1A発明)の「裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを小片に裁断し」は、本件発明6の「使用済み紙おむつを破砕する破砕手段」に相当し、また、甲1B発明(甲1A発明)の「攪拌工程S30においては、ポリマー分解槽20に、洗浄水としての再生水(中水)や分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌し、使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされ」は、本件発明6の「使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段」に相当し、その余の点については、前記オ(ア)で検討したとおりである。
そうすると、本件発明6と甲1B発明とは、前記相違点1-1’、相違点1-2’の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-3’>
本件発明6では、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を破砕手段の前段に有するのに対し、甲1B発明では、裁断手段の後段に有する点
(イ)相違点についての検討
上記相違点1-3’について検討する。
相違点1-3’について、前記イ(イ)で相違点1-3について検討したのと同様の理由から、甲1B発明の再資源化システにおける使用済み紙おむつの洗浄を実施する装置を、裁断工程を実施する装置の後に有しているものから、裁断工程の前に有するように順番を入れかえることは当業者が適宜選択し得ることであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明6は、甲1B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ 本件発明7
(ア)対比
本件発明7は、本件発明5又は6の処理設備に使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を備え、前記洗浄手段は、下水処理場で処理した処理水を用いる、と限定するものである。
本件発明7と甲1B発明を対比すると、本件発明7と甲1B発明とは、上記相違点1-1’、相違点1-2’、相違点1-3’の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-4’>
本件発明7では、洗浄手段において、「下水処理場で処理された処理水」を用いるのに対し、甲1B発明(甲1A発明)では、「再生水(中水)」を洗浄水として用いている点
(イ)相違点についての検討
上記相違点1-4’について検討する。
相違点1-4’について、上記ウ(イ)で相違点1-4について検討したのと同様の理由から、甲1B発明における洗浄水として下水処理場で処理した再生水を用いることは当業者が容易に想到し得ることであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲1B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ク 本件発明8
(ア)対比
本件発明8は、本件発明5~7のいずれかの分離回収工程によって、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備える」と限定するものである。
そうすると、本件発明8と甲1B発明とは、上記相違点1-1’、相違点1-2’、相違点1-3’の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点1-5’>
本件発明8では、投入手段において、「分離回収工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物」を投入するのに対し、甲1B発明では、そのように特定されていない点
(イ)相違点についての検討
甲1B発明における使用済み紙おむつから除去または分離されたもののうち、「汚物」、「汚水」は、本件発明8の「使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物」に相当する。
そして、前記オ(イ)で検討したとおり、「汚物」、「汚水」を下水処理設備に投入することは、当業者が容易に想到し得ることである。
(ウ)小括
したがって、本件発明8は、甲1B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)甲4を主引用例とする場合について
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲4A発明を対比すると、甲4A発明の「解体処理」、「破断処理」はそれぞれ、本件発明1の「処理工程」、「破砕工程」に相当し、甲4A発明の「使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去し、次いで、使用済紙おむつを解体する、洗浄および解体処理を行い」、「スクリューにより表面を破断して」はそれぞれ、本件発明1の「使用済み紙おむつを処理する処理工程」、「前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程」に相当する。
また、甲4A発明の分離処理で分離された「吸水性ポリマー、パルプ、プラスチックシート、不織布」は使用済み紙おむつの構成成分であって、その後の添加処理のために分離後、回収されることは明らかであるから、甲4A発明の「分離処理」は本件発明1の「分離回収工程」に相当し、甲4A発明の「プラスチックシートと、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物に分離して、不織布・パルプ・吸水性ポリマー混合物は水中に添加して各成分が分散するようにし、そのように分散された不織布・パルプ・吸収性ポリマーの懸濁液はスクリーン等のろ過器により、まず不織布が分離され、引き続き次のスクリーンによりパルプが分離され、最後に膨潤した吸収性ポリマーが分離される」は、本件発明1の「前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程」に相当する。
さらに、甲4A発明の「上記解体処理をし尿処理場・下水処理場で行い」は、本件発明1の「前記下水処理場内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程」に相当する。
そして、甲4A発明の「し尿処理場・下水処理場で行」う「添加処理」は、「分離されたパルプ」が「汚泥に添加され」る態様、「分離されたプラスチックシート及び不織布」が「脱水汚泥の燃焼時に添加され」る態様のように、添加前にホフマン反応等の化学反応を施さない態様も含むから、そうした態様については、本件発明1の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程」に相当する。
また、甲4A発明では、「使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去し」、「し尿処理場・下水処理場」で「前記汚物の処理」しているところ、汚物をし尿処理場・下水処理場の下水処理設備に投入していることは明らかであるから、甲4A発明におけるこの構成も、本件発明1の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4A発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「下水処理場内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程を備え、前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備え、前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さず、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備える、使用済み紙おむつの処理方法。」
<相違点2-1>
本件発明1では、「使用済み紙おむつを処理場に搬送する搬送工程」を備えているのに対し、甲4A発明ではそのように特定されていない点
<相違点2-2>
本件発明1では、破砕工程が「乾式状態」で破砕するのに対し、甲4A発明では使用済紙おむつを洗浄した後に破断している点
(イ)相違点についての検討
a 相違点2-1について
甲4A発明では、使用済み紙おむつが下水処理場内で処理されていることから、外部から下水処理場に使用済み紙おむつが搬送される搬送工程を備えていることは明らかである。よって、相違点2-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点2-2について
甲4A発明では、使用済みおむつを洗浄した後に破断していることから、破断工程では湿式状態で破断されているといえる。一方、甲4には、使用済み紙おむつの構成成分を分解する際に、「基本的には、まず必要に応じて、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去する。次いで、使用済紙おむつを解体する。解体後、洗浄してもよい」こと(【0112】)、すなわち、洗浄工程を解体工程の前あるいは後のいずれも選択し得ることが記載されている。してみれば、甲4A発明の「まず、使用済み紙おむつを洗浄して、次いで、使用済み紙おむつを解体する」工程の順番について、解体後に洗浄する工程の順番に入れかえる、すなわち、使用済み紙おむつを乾式状態で破断することは当業者が適宜選択し得ることである。
また、甲4A発明において、洗浄後の使用済み紙おむつを乾燥させた後に、分級のために乾式粉砕することも、当業者が容易になし得ることといえる。
(ウ)効果について
本件発明1の効果は、前記(1)ア(ウ)で検討したとおり、甲1及び甲4の記載から当業者が予測し得る範囲のものである。
(エ)特許権者の主張
特許権者は、令和6年8月26日提出の意見書において、以下a、bの主張を行っている。
a 甲4には、紙おむつの構成成分を分離回収することについての記載はなく、紙おむつを裁断した懸濁液に対してホフマン分解処理をして汚泥に添加することが記載されているにすぎないから、甲4A発明において、使用済み紙おむつの構成成分を分離回収するための設備を追加して、細断された使用済み紙おむつまたは懸濁液から、使用済み紙おむつの構成成分を分離回収する動機づけはない。
b 甲4A発明において、ホフマン分解等の反応は、新規ポリマーを得るための必須の構成であるから、紙おむつを処理する処理工程において、ホフマン反応等の化学処理を施さない処理工程とする動機づけはない。
そこで、前記主張a、bについて検討する。
前記主張aについて、前記(ア)で検討したとおり、甲4A発明の分離処理で分離された「吸水性ポリマー、パルプ、プラスチックシート、不織布」は使用済み紙おむつの構成成分であって、その後の添加処理のために分離後、回収されることは明らかである。
前記主張bについて、前記(ア)で検討したとおり、分離されたパルプ、プラスチックシート及び不織布の添加については、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに行われている。
よって、前記特許権者の主張a、bはいずれも採用できない。
(オ)小括
したがって、本件発明1は、甲4A発明、及び、甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2は、本件発明1の「前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕工程と」を「前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し」に置き換えたものに相当する。
そこで、本件発明2と甲1A発明を対比すると、甲4A発明の「まず、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去し、次いで、使用済紙おむつを解体する、洗浄および解体処理を行い」は、破断処理を含む解体処理の前に使用済の紙おむつの洗浄を行っていることから、本件発明2の「前記破砕工程の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を有し」に相当する。
してみれば、本件発明2と甲4A発明とは、前記相違点2-1、相違点2-2以外に新たな相違点を有しない。
(イ)小括
したがって、本件発明2は、甲4A発明、及び、甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3
(ア)対比
本件発明3は、本件発明1又は2の処理工程に、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を備え、前記洗浄工程は、下水処理場で処理された処理水を用いる、と限定するものである。
本件発明3と甲4A発明を対比すると、本件発明3と甲4A発明とは、前記相違点2-1、相違点2-2の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点2-3>
本件発明3では、洗浄工程において、「下水処理場で処理された処理水」を用いるのに対し、甲4A発明ではそのように特定されていない点
(イ)相違点についての検討
前記相違点2-3について検討する。
甲1には、「洗浄水には、使用済み紙おむつTを洗浄可能な各種の水を使用することができるが、本実施形態では、再生水(中水)や浸出水等の硬度水を用いる」こと(【0029】)、「再生水は、下水や雨水などをろ過・滅菌(再生処理)した水」であること(【0030】)が記載されており、下水をろ過・滅菌(再生処理)する施設は下水処理施設であることから、甲1には使用済み紙おむつの洗浄水として、下水処理施設で処理された再生水を用いることが記載されているといえる。
してみれば、甲4B発明の洗浄に用いる洗浄水として、下水処理施設で処理された再生水を用いることは当業者が容易に想到し得るものであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、甲4A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明4
(ア)対比
本件発明4は、本件発明1~3のいずれかの分離回収工程によって、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程を備える」と限定するものである。
そこで、本件発明4と甲4A発明を対比すると、前記ア(ア)で検討したとおり、甲4A発明では、汚物をし尿処理場・下水処理場の下水処理設備に投入していることは明らかであるから、甲4A発明におけるこの構成は、本件発明1の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入工程」に相当する。
してみれば、本件発明4と甲4A発明とは、前記相違点2-1、相違点2-2、相違点2-3以外に新たな相違点は有しない。
(イ)小括
したがって、本件発明4は、甲4A発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件発明5
(ア)対比
本件発明5と甲4B発明を対比する。
甲4B発明の「甲4A発明の使用済紙おむつの再利用方法における破断処理を行う設備」、「甲4A発明の使用済紙おむつの再利用方法における分離処理を行う設備」はそれぞれ、本件発明5の「使用済み紙おむつを破砕する破砕手段」、「使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段」に相当する。
また、甲4B発明における「甲4A発明の使用済紙おむつの再利用方法における、破断、分離処理を行う設備が、し尿処理場・下水処理場内に並設されている」は、本件発明5の「下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え」に相当する。
そして、前記ア(ア)で検討したとおり、甲4B発明の「甲4A発明の再利用方法における添加処理」は、分離されたパルプ、プラスチックシート及び不織布の添加については、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに行われているから、本件発明5の使用済紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、下水処理場内の下水処理設備に投入する」に相当し、甲4B発明の「添加処理を行う設備」は本件発明5の「投入手段」に相当する。
そして、甲4B発明の「使用済紙おむつの再利用システム」は、本件発明5の「使用済み紙おむつの処理システム」に相当する。
すると、本件発明5と甲4B発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備を備え、前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備え、前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを、ホフマン反応、加水分解反応、スルホメチル化反応又はN-メチロール化反応のいずれの反応も施さずに、前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。」
<相違点2-2’>
本件発明5では、破砕手段が「乾式状態」で破砕するのに対し、甲4B発明では使用済紙おむつを洗浄した後に破断している点
(イ)相違点についての検討
上記相違点2-2’について検討する。
相違点2-2’は、上記ア(ア)で相違点2-2について検討したのと同様の理由から、甲4B発明の使用済紙おむつの洗浄処理と破断処理の順序を入れかえて破断処理の後に洗浄処理を行う、すなわち、使用済紙おむつを乾式状態で破断することは当業者が適宜選択し得るものであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明5は、甲4B発明、及び、甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件発明6
(ア)対比
本件発明6は、本件発明5の「前記使用済み紙おむつを乾式状態で破砕する破砕手段と」を「前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し」に置き換えたものに相当する。
そこで、本件発明2と甲1B発明を対比すると、甲4B発明(甲4A発明)の「まず、使用済の紙おむつを洗浄して汚物を除去し、次いで、使用済紙おむつを解体する、洗浄および解体処理を行い」は、破断処理を含む解体処理の前に使用済の紙おむつの洗浄を行っていることから、本件発明6の「前記破砕手段の前段に、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を有し」に相当し、その余の点については、前記オ(ア)で検討したとおりである。
してみれば、本件発明6と甲4B発明とは、前記相違点2-2’以外に新たな相違点を有しない。
(イ)小括
したがって、本件発明6は、甲4A発明、及び、甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ 本件発明7
(ア)対比
本件発明7は、本件発明5又は6の処理設備に使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を備え、前記洗浄手段は、下水処理場で処理した処理水を用いる、と限定するものである。
本件発明7と甲4B発明を対比すると、本件発明7と甲4B発明とは、前記相違点2-2’の点に加え、以下の点で相違する。
<相違点2-3’>
本件発明7では、洗浄手段において、「下水処理場で処理された処理水」を用いるのに対し、甲4B発明ではそのように特定されていない点
(イ)相違点についての検討
前記相違点2-3’について検討する。
相違点2-3’について、上記ウ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様の理由から、甲4B発明における洗浄水として下水処理場で処理した再生水を用いることは当業者が容易に想到し得ることであり、その効果は格別のものとは認められない。
(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲4B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ク 本件発明8
(ア)対比
本件発明8は、本件発明5~7のいずれかの処理設備によって、「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段を備える」と限定するものである。
そこで、本件発明8と甲4B発明を対比すると、前記ア(ア)で検討したとおり、甲4B発明(甲4A発明)では、汚物をし尿処理場・下水処理場の下水処理設備に投入していることは明らかであるから、甲4B発明におけるこの構成は、本件発明1の「前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収された汚物を前記下水処理場内の下水処理設備に投入する投入手段」に相当する。
してみれば、本件発明4と甲4B発明とは、前記相違点2-2’、相違点2-3’以外に新たな相違点は有しない。
(イ)小括
したがって、本件発明8は、甲4B発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700557