特許異議申立
2022-701088
既設管理型廃棄物処分場の安定化方法
- 審判番号
- 2022-701088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-057836
- 登録番号
- 7064359
- 請求日
- 2022年11月08日
- 審決日
- 2023年09月27日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】五洋建設株式会社
- 【権利者代理人】石井 理太
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(B09B) / P1651.121-YAA(B09B) / P1651.537-YAA(B09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7064359号発明「既設管理型廃棄物処分場の安定化方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7064359号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7064359号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7064359号の請求項1~3に係る発明についての出願は、平成30年3月26日に出願され、令和4年4月26日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年5月10日に特許掲載公報(特許権者は「五洋建設株式会社」)が発行されたものであって、その特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和4年11月 8日 :特許異議申立人 金澤 毅(以下「申立人」
という。)による全請求項に係る特許に対す
る特許異議の申立て
令和5年 2月14日付け:取消理由通知書
同年 4月17日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 5月 9日 :前記訂正請求書についての手続補正書(特許
権者)
同年 6月15日 :意見書(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
令和5年5月9日の手続補正書により補正された同年4月17日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は「特許第7064359号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍に排気口が位置するように給気管を埋設し、該給気管から二酸化炭素を含む中和用ガスを前記廃棄物堆積層に供給することを特徴とする既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」と記載されているのを、
「 廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍に下端部に形成された排気口が位置するように上下に向けて給気管を埋設し、該給気管の下端部に形成された排気口から二酸化炭素を含む中和用ガスを前記廃棄物堆積層に供給することを特徴とする既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「 前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍且つ、保有水水位下限より下になるように配置され、浸出水を集水し、前記廃棄物堆積層上部に形成された内水ポンドに排水する水平に向けて埋設された給気管を兼ねる集排水管と、該集排水管の内水ポンド側部分に開閉可能な開閉バルブとを備え、前記開閉バルブを閉じた状態で前記給気管を兼ねる集排水管に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給する請求項1に記載の既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」と記載されているのを、
「 廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍且つ、保有水水位下限より下になるように配置され、浸出水を集水し、前記廃棄物堆積層上部に形成された内水ポンドに排水する水平に向けて埋設された給気管を兼ねる集排水管と、該集排水管の内水ポンド側部分に開閉可能な開閉バルブとを備え、前記開閉バルブを閉じた状態で前記給気管を兼ねる集排水管に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給し、前記給気管を兼ねる集排水管から前記廃棄物堆積層に前記中和用ガスを供給することを特徴とする既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
3 一群の請求項及び訂正単位
本件訂正前の請求項1~3において、請求項2及び3は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び2の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~3は一群の請求項である。そうすると、本件訂正は一群の請求項ごとにされた訂正である。
また、特許権者は、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めているが、訂正後の請求項3が請求項1及び請求項2を引用しているから、訂正後の請求項1~3は、一群の請求項となる。したがって、本件訂正の確定は請求項1~3について一体的に確定することになる。
4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1の「給気管」について、その向き及び排気口の位置を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、本件特許の明細書(後記第3の2参照。)の【0022】~【0023】の「給気管8は、例えば、塩化ビニール製のパイプによって構成され」、「上下に向けて埋設されるようになっている。このパイプには、下端部に多数の透水孔7a,7a・・・からなる排気口7が形成されており」との記載に基いて、「給気管」の構成を限定したものであって、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、独立形式の請求項へ改めるための訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、実質的な内容の変更を伴うことなく、訂正前の請求項1で特定されていた事項を請求項2に組み込むものであって、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
5 独立特許要件
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~3に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び同第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明等
1 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下項番に応じて「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」もいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍に下端部に形成された排気口が位置するように上下に向けて給気管を埋設し、該給気管の下端部に形成された排気口から二酸化炭素を含む中和用ガスを前記廃棄物堆積層に供給することを特徴とする既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。
【請求項2】
廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍且つ、保有水水位下限より下になるように配置され、浸出水を集水し、前記廃棄物堆積層上部に形成された内水ポンドに排水する水平に向けて埋設された給気管を兼ねる集排水管と、該集排水管の内水ポンド側部分に開閉可能な開閉バルブとを備え、前記開閉バルブを閉じた状態で前記給気管を兼ねる集排水管に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給し、前記給気管を兼ねる集排水管から前記廃棄物堆積層に前記中和用ガスを供給することを特徴とする既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。
【請求項3】
前記廃棄物堆積層に前記給気管から前記中和用ガスを供給するとともにモニタリングを行い、該モニタリングに基づき前記給気管の稼働範囲及び運転条件を見直す請求項1又は2に記載の既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」
2 明細書の記載
本件特許の願書に添付された明細書には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、海面廃棄物処分場等の管理型廃棄物処分場の安定化を促進し、廃止を促進する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法に関する。」
「【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、既設の海面廃棄物処分場に適用することができ、廃棄物処分場の早期安定化を促進することができる管理型廃棄物処分場の安定化方法の提供を目的としてなされたものである。」
「【0015】
本発明に係る既設管理型廃棄物処分場の安定化方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、既設の管理型廃棄物処分場の廃棄物層に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給することによって、短期間で安定化を図ることができる。
【0016】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、集排水管及び給気管のスケールによる目詰まりを防止することができる。
【0017】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、pHやCODの高い範囲の安定化促進を重点的に行え、処分場の安定化を安価かつ効率的に実施することができる。」
「【0019】
次に、本発明に係る既設管理型廃棄物処分場の安定化方法の実施態様を図1~図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は、既設の管理型海面廃棄物処分場である。
【0020】
この既設管理型海面廃棄物処分場1は、遮水護岸によって区画された貯留空間が形成され、図1に示すように、貯留空間内の遮水層2上に廃棄物が投入されて廃棄物堆積層3が形成され、その上面が覆土4されている。
【0021】
また、この既設管理型海面廃棄物処分場1では、図1、図2に示すように、廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限位置の近傍、例えば、保有水水位6の下限位置より下に排気口7が位置するように所定の間隔d(1~10m)をおいて給気管8を埋設し、給気管8から二酸化炭素を含む中和用ガス9を供給することにより安定化が図られている。符号10は、給気管8に中和用ガス9を供給するためのコンプレッサーである。
【0022】
給気管8は、例えば、塩化ビニール製のパイプによって構成され、覆土4表面より廃棄物堆積層3の所定の深さ、即ち、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限より下の位置まで上下に向けて埋設されるようになっている。
【0023】
このパイプには、下端部に多数の透水孔7a,7a・・・からなる排気口7が形成されており、排気口7を通して中和用ガス9が廃棄物堆積層3に向けて供給されるようになっている。
【0024】
尚、複数の給気管8のうちの一部は、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の近傍であって、その下限より上側に位置していてもよい。」
「【0026】
(調査)
先ず、事前に対象となる既設管理型廃棄物処分場1のpH、化学的酸素要求量(以下、CODという)、保有水水位6、透水係数、重金属溶出量等を測定し、状況を調査する(s1)。
【0027】
調査方法は、処分場の全域に亘って複数の観測孔を設け、自記式水位計によって一定期間連続して測定を行う。図4は、計測結果の一例であり、各計測位置における保有水水位6と、内水ポンド水位の変化が時系列に従って記載されている。保有水水位6は、各観測孔によって異なり、降水量や天候等の条件によって変動する。
【0028】
また、内水ポンド及び観測孔より定期的に保有水を採取し、pH、COD及び重金属溶出量を測定する。
【0029】
(対象範囲・条件設定)
次に、保有水水位6の測定結果に基づいて、測定期間内における最低水位を保有水水位6の下限と定め、給気管8の設置深度を決定する(s2)。尚、排気口7の位置は、廃棄物堆積層3の保有水水位6下限位置より下であって、その管理水位及び内水ポンドの水位までの位置とする。」
「【0039】
以下に、二酸化炭素を含む中和用ガス9を供給した場合のpH、COD、重金属溶出量の効果について検討した実験結果を示す。
【0040】
実験は、焼却灰を円筒形のカラム(直径60mm×高さ250mm)に充填し、カラム内に所定の中和用ガス9(空気、CO2濃度:400ppm程度)を一定の供給量(1000mL/min)で供給し、その際のpH、COD及び重金属溶出量を測定した。
【0041】
その結果、pHは、図5(a)に示すように、初期値pH12.7のものが通気2か月後にはpH8.8に低下した。
【0042】
また、CODは、初期値9mg/Lから2ヶ月後に3mg/Lまで低下した(図示せず)。」
「【0053】
この給気管20の埋設深さ及び間隔dは、上述の実施例と同様に、事前の調査に基づいて決定し、保有水水位6の下限の近傍、例えば、保有水水位6の下限より下になるように設置する。尚、図中符号21,22は観測用井戸、符号23は内水ポンドである。
【0054】
また、この給気管20は、図8に示すように、廃棄物堆積層3の保有水(浸出水)を内水ポンド23に排出するための集排水管を兼ね、集排水管に給気管が接続された構造を成すようにしてもよい。
【0055】
その場合、給気管20には、内水ポンド23側部分に開閉バルブ24を備え、開閉バルブ24を開いた状態にすることによって、排気孔を通して廃棄物堆積層3から集水された保有水(浸出水)が給気管20を通して内水ポンド23に排出され、開閉バルブ24を閉じた状態で中和用ガスを供給することによって廃棄物堆積層3に中和用ガスを排出できるようにしている。」
「【図1】
[図:0001404775000001.jpg]
」
「【図8】
[図:0001404775000002.jpg]
」
第4 取消理由及び特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知に記載した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1、3に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項1、3に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1、3に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項1、3に係る特許は取り消されるべきものである。
2 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
(1)取消理由1(新規性)
本件特許の請求項2に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項2に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項2に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の「保有水水位下限の近傍」との語が不明確であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第4号に該当するから、本件特許は取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が、後記ア~ウの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第4号に該当するから、本件特許は取り消されるべきものである。
ア 本件発明において、「既設管理型廃棄物処分場」が「海面」のものであることが特定されていないが、本件明細書には、「内水ポンド」が存在する「海面」の廃棄物処分場ではない処分場においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない。
イ 本件発明において、全ての「給気管」の「排気口」が「保有水水位下限の近傍」に位置することが特定されていないが、本件明細書には、たった1本の「給気管」の「排気口」が「保有水水位下限の近傍」に位置している場合においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない。
ウ 本件発明において、「保有水水位下限の近傍」のみに「給気管」の「排気口」が位置することが特定されていないが、本件明細書には、「保有水水位下限の近傍」以外の位置にも「給気管」の「排気口」が位置している場合においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない。
3 証拠方法
申立人は、特許異議の申立ての証拠方法として、甲第1号証~甲第5号証(以下順に「甲1」等ともいう。)を提出した。
また、申立人は、令和5年6月15日の意見書に添付して、参考資料1(以下「参1」ともいう。)を提出した。
甲1:福井県・敦賀市、「平成28年度 敦賀市民間最終処分場環境保全対策協議会 -抜本対策事業の実施状況について-」、平成29年3月28日
<URL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10349833/www.pref.fukui.lg.jp/doc/junkan/kankyouhozen/k-siryou.html>
甲2:管理型海面処分場の早期安定化及び利用高度化技術に関する委員会、「港湾における管理型海面最終処分場の早期安定化に関する技術情報集」、平成29年3月
<URL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10958347/www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk6_000026.html>
甲3:明星大学大学院 理工学研究科 環境システム学専攻 高橋廣大、「最終処分場における高アルカリ性浸出水のCO2によるpH低減」、修士研究テーマ 平成26年度(5期)
<URL:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9913944/www.hino.meisei-u.ac.jp/es/miyawaki/index.html>
甲4:東急建設株式会社、「タイ・チョンブリ県・ラムチャバン廃棄物最終処分場における準好気処理CDM事業調査」、2010年11月24日時点のWebページ情報
<https://web.archive.org/web/20101124021312/http://gec.jp/gec/jp/Activities/cdm/sympo/2010/t2-2_tokyu.pdf>
甲5:石垣智基、「循環・廃棄物の基礎講座 ニッポンの埋立地「準好気性埋立地」」、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター、2012年2月号
<https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3488519/www-cycle.nies.go.jp/magazine/kisokouza/201202.html>
参1:環境省環境管理局水環境部、「揮発性有機化合物による地下水汚染対策に関するパンフレット「地下水をきれいにするために」」、環境省環境管理局水管理部、平成16年7月
<https://www.env.go.jp/water/chikasui/panf/>
<https://www.env.go.jp/water/chikasui/panf/pdf/p07.pdf>
4 甲号証等に記載された事項
(1)甲1には、「平成28年度 敦賀市民間最終処分場環境保全対策協議会 -抜本対策事業の実施状況について-」に関し、次の記載がある。
ア 資料9頁
「
[図:0001404775000003.jpg]
」
イ 資料11頁
「
[図:0001404775000004.jpg]
」
(2)甲2の34頁1~22行には、次の記載がある。
「
[図:0001404775000005.jpg]
」
(3)甲3の「1.序論」及び「3.実験方法」には、次の記載がある。
ア 「
[図:0001404775000006.jpg]
」
イ 「
[図:0001404775000007.jpg]
[図:0001404775000008.jpg]
」
(4)甲4の2頁下欄には、次の記載がある。
「
[図:0001404775000009.jpg]
」
(5)甲5には、次の記載がある。
「
[図:0001404775000010.jpg]
」
(6)参1の「5.2 対策技術」の「4)エアースパージング」には、次の記載がある。
「
[図:0001404775000011.jpg]
」
第5 当審の判断
1 判断の順序
判断を行うにあたり、新規性等を判断する前提として特許請求の範囲の明確性が求められるところ、本件においては、明確性(前記第4の2(3)「申立理由3」参照)の判断を先に行う。
2 申立理由3(明確性)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2)「保有水水位下限の近傍」について
本件訂正発明の「保有水水位下限」との記載について、本件特許の明細書(前記第3の2参照)の【0053】には「保有水水位6の測定結果に基づいて、測定期間内における最低水位を保有水水位6の下限と定め、給気管8の設置深度を決定する。」と記載されており、「保有水水位下限」とは「測定期間内における最低水位」であることを理解できる。
また、本件訂正発明の「保有水水位下限」と「排気口」との関係について、同【0021】には「廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限位置の近傍、例えば、保有水水位6の下限位置より下に排気口7が位置するように所定の間隔d(1~10m)をおいて給気管8を埋設し、給気管8から二酸化炭素を含む中和用ガス9を供給することにより安定化が図られている。」と記載され、同【0022】には「給気管8は、例えば、塩化ビニール製のパイプによって構成され、覆土4表面より廃棄物堆積層3の所定の深さ、即ち、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限より下の位置まで上下に向けて埋設されるようになっている。」と記載され、同【0024】には「尚、複数の給気管8のうちの一部は、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の近傍であって、その下限より上側に位置していてもよい。」と記載され、同【0029】には「排気口7の位置は、廃棄物堆積層3の保有水水位6下限位置より下であって、その管理水位及び内水ポンドの水位までの位置とする。」と記載されており、「排気口」は、「保有水水位下限より下」に配置されるが、「保有水水位6の近傍であって、その下限より上側に位置していてもよい」ものとされており、さらに、同【図1】から、廃棄物堆積層3における保有水水位6付近から中和用ガス9を供給し、それより上側の廃棄物堆積層3に中和用ガス9を行き渡らせて中和反応を発生させることが見て取れ、これらの記載を総合すると、本件訂正発明は、「排気口」を、保有水位下限付近であって、かつ、「保有水水位下限より下」のような常時水に浸かった位置か、「下限より上側」の水に浸かっていることが多い位置に配置することにより、「給気管8から二酸化炭素を含む中和用ガス9を供給することにより安定化が図られ」るものといえる。
そうすると、本件訂正発明の「保有水水位下限の近傍」とは、保有水位下限付近の「排気口」が位置する場所であって、「保有水水位」との関係において、常時水に浸かった位置か、水に浸かっていることが多い位置であって、変動するものである保有水位において、廃棄物堆積層3内に中和用ガスを行き渡らせることができる位置を意図したものであることを理解できる。
してみると、本件訂正発明の「保有水水位下限の近傍」との記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確というほどのものではない。
(3)まとめ
したがって、本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
3 取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
「敦賀市民間最終処分場」に関する資料である甲1の9頁(前記第4の4(1)ア参照)には、「廃棄物層に空気を注入し、内部環境を好気化し、廃棄物の分解を促進する・・・[空気注入工]」と記載され、また、その説明図には、キャッピング、廃棄物層及び帯水層にまたがって上下方向に注入井戸を配置し、注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入することが示されているから、甲1には、次の発明が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「敦賀市民間最終処分場において、廃棄物層に空気を注入し、内部環境を好気化し、廃棄物の分解を促進する空気注入工法において、
キャッピング、廃棄物層及び帯水層にまたがって上下方向に注入井戸を配置し、注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入する、空気注入工法」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「敦賀市民間最終処分場」は、「廃棄物層」を有するから、本件訂正発明1の「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場」に相当する。
甲1発明の「敦賀市民間最終処分場において、廃棄物層に空気を注入し、内部環境を好気化し、廃棄物の分解を促進する空気注入工法」は、その工法を実施することにより処分場の安定に寄与するものといえるから、本件訂正発明1の「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法」に相当する。
甲1発明の「注入井戸」は、「ブロアからの空気を」「廃棄物層に注入する」ものであって、本件訂正発明1の「給気管」に相当するから、甲1発明の「キャッピング、廃棄物層及び帯水層にまたがって上下方向に注入井戸を配置し」は、本件訂正発明1の「上下に向けて給気管を埋設し」に相当する。
甲1発明の「注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入する」は、その「ブロアからの空気」が二酸化炭素を含むガスであることが明らかであるから、本件訂正発明1の「該給気管の」「排気口から二酸化炭素を含む」「ガスを前記廃棄物堆積層に供給する」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
上下に向けて給気管を埋設し、該給気管の排気口から二酸化炭素を含むガスを前記廃棄物堆積層に供給する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」
<相違点1>
本件訂正発明1は「廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍に下端部に形成された排気口が位置するように上下に向けて給気管を埋設し、該給気管の下端部に形成された排気口から二酸化炭素を含む中和用ガスを前記廃棄物堆積層に供給する」のに対し、甲1発明は「キャッピング、廃棄物層及び帯水層にまたがって上下方向に注入井戸を配置し、注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入する」ものであるが、保有水水位下限位置と、給気管の下端部に形成された排気口との位置関係は特定されておらず、また、ガスが中和用のものとも特定されていない点。
前記相違点1について検討する。
甲1には、注入井戸から廃棄物層に空気を供給すること(前記第4の4(1)参照。)は記載されているものの、給気管の下端部に形成された排気口を、保有水水位下限の近傍に設けたことについては記載されていないし、排気口を給気管(注入井戸)の下端部に形成することについては、記載も示唆もない。
甲2には、焼却灰を埋め立てた処分場において、大気中の二酸化炭素が、内水ポンドのpH低減に寄与すること(前記第4の4(2)参照。)が記載されているが、保有水水位下限位置と、給気管の下端部に形成された排気口との位置関係については記載がない。
甲3には、最終処分場へ搬入される60%が焼却残渣であること、焼却灰中の酸化カルシウムが高pH浸出水の原因となっていること、集配水管近傍のでの大気中のCO2による中和の可能性について研究したこと(前記第4の4(3)ア参照。)、及びカラムの下方位置で空気を供給したこと(前記第4の4(3)イ、特に図3-1参照。)が記載されているものの、保有水水位下限位置と、給気管の下端部に形成された排気口との位置関係については記載がない。
甲4には、好気性埋立の説明図として、ごみ層であって、浸出水集配水管の上方に、ブロワから空気を送る空気送入管を配置したこと(前記第4の4(4)参照。)が記載されているものの、給気管の下端部に形成された排気口を、保有水水位下限の近傍に設けたことについては記載されていない。
甲5には、上下方向に配置されたガス抜き管から廃棄物層に空気を供給すること(前記第4の4(5)参照。)が記載されているものの、給気管の下端部に形成された排気口を、保有水水位下限の近傍に設けたことについては記載されていない。
参1には、土壌中あるいは地下水中に空気を注入してVOCの気化を促し土壌・地下水の浄化を促進するエアースパージング工法について、所望の範囲よりも下の位置から空気を注入していることが記載されている(前記第4の4(6)、特に「エアースパージング工法概念図」参照。)ものの、給気管の下端部に形成された排気口を、保有水水位下限の近傍に設けたことについては記載されていない。
本件訂正発明は、前記2(2)で検討したように、「給気管の下端部に形成された排気口」を「保有水水位下限より下」のような、常時水に浸かった位置か、「下限より上側」の水に浸かりやすい位置に配置することにより、本件特許の明細書(前記第3の2参照。)の【0015】に記載されるような「既設の管理型廃棄物処分場の廃棄物層に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給することによって、短期間で安定化を図ることができる。」との効果を奏するものといえる。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明並びに甲1~甲5及び参1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲1発明を対比すると、甲1発明の「敦賀市民間最終処分場」は、「廃棄物層」を有するから、本件訂正発明2の「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場」に相当する。
甲1発明の「敦賀市民間最終処分場において、廃棄物層に空気を注入し、内部環境を好気化し、廃棄物の分解を促進する空気注入工法」は、その工法を実施することにより処分場の安定に寄与するものといえるから、本件訂正発明2の「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法」に相当する。
甲1発明の「注入井戸」は、「ブロアからの空気を」「廃棄物層に注入する」ものであって、本件訂正発明2の「給気管」に相当するから、甲1発明の「注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入する」は、本件訂正発明2の「給気管」「に二酸化炭素を含む」「ガスを供給し、前記給気管」「から前記廃棄物堆積層に前記」「ガスを供給する」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法において、
給気管に二酸化炭素を含むガスを供給し、前記給気管から前記廃棄物堆積層に前記ガスを供給する既設管理型廃棄物処分場の安定化方法。」
<相違点2>
本件訂正発明2は「廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍且つ、保有水水位下限より下になるように配置され、浸出水を集水し、前記廃棄物堆積層上部に形成された内水ポンドに排水する水平に向けて埋設された給気管を兼ねる集排水管と、該集排水管の内水ポンド側部分に開閉可能な開閉バルブとを備え、前記開閉バルブを閉じた状態で前記給気管を兼ねる集排水管に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給し、前記給気管を兼ねる集排水管から前記廃棄物堆積層に前記中和用ガスを供給する」のに対し、甲1発明は、「キャッピング、廃棄物層及び帯水層にまたがって上下方向に注入井戸を配置し、注入井戸に接続した配管を通じて送られたブロアからの空気を、その注入井戸を介して廃棄物層に注入する」ものであるが、保有水水位下限位置と、給気管との位置関係は特定されておらず、また、開閉バルブを備えておらず、さらに、ガスが中和用のものとも特定されていない点。
前記相違点2について検討する。
前記アで検討したとおり、甲1~甲5及び参1には、給気管を、保有水水位下限の近傍に設けたことについては記載されていない。
また、甲1~甲5及び参1には、開閉バルブを閉じた状態で給気管を兼ねる集排水管に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給することについては、記載も示唆もない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明並びに甲1~甲5及び参1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件訂正発明3
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の特定事項を全て含むものであるから、前記ア又はイと同じ理由により、本件訂正発明3も、甲1発明並びに甲1~甲5及び参1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立人の主張
申立人は、令和5年6月15日の意見書の1頁下から4行~2頁27行において、ア 本件発明1では、給気管の下端部以外にも排気口が形成されている場合を明確に排除しているとまではいえないから、引用発明1(甲1発明)と相違点はない、イ 引用発明1(甲1発明)において、安定化可能範囲を広げるために、廃棄物堆積層の下部において空気を排出することができるように注入井戸における排気口の位置を適宜変更することは当業者が適宜設計する事項に過ぎない、ウ 参考資料1の「エアースパージング」の記載からは、所望の範囲よりも下の位置から空気を注入していることが読み取れる、との趣旨の主張をしている。
しかしながら、ア及びイについて、甲1には、給気管(注入井戸)の上下方向の中途部の廃棄物層に対応する領域に排気口を設けたことが図示されているものの、排気口を給気管(注入井戸)の下端部に形成することについては記載も示唆もないところ、甲1発明において、注入井戸における排気口の位置を、注入井戸の下端部に変更することは当業者が適宜設計する事項とはいえない。
さらに、ウについて、参1には、給気管の排気口をその下端部に形成することが図示されているものの、その排気口を、保有水水位下限位置に設けることについては記載も示唆もないから、参1の記載に基づいて、給気管の下端部に形成された排気口を、保有水水位下限の近傍に設けることが容易ともいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上より、本件訂正発明1~3は、甲1発明並びに甲1~甲5及び参1記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正後の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 申立理由4(サポート要件)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、以下、この観点に沿って検討を進める。
(2)発明の課題
本件訂正発明の解決しようとする課題は、本件特許の明細書に記載されたすべての事項からみて、「既設の海面廃棄物処分場に適用することができ、廃棄物処分場の早期安定化を促進することができる管理型廃棄物処分場の安定化方法」を提供すること(特に、前記第3の2の【0011】参照。)と認められる。
(3)明細書の記載及び判断
本件特許の明細書(前記第3の2参照。)の【0015】には、「本発明に係る既設管理型廃棄物処分場の安定化方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、既設の管理型廃棄物処分場の廃棄物層に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給することによって、短期間で安定化を図ることができる。」と記載され、同【0039】~【0042】には、具体的に、二酸化炭素を含む中和用ガス9を供給した場合のpH、COD等の効果について検討した実験結果として、「pHは、図5(a)に示すように、初期値pH12.7のものが通気2か月後にはpH8.8に低下した」こと、及び「CODは、初期値9mg/Lから2ヶ月後に3mg/Lまで低下した」ことが示されている。
そうすると、本件訂正発明の「既設管理型廃棄物処分場の安定化方法」は、前記(2)の「既設の海面廃棄物処分場に適用することができ、廃棄物処分場の早期安定化を促進することができる管理型廃棄物処分場の安定化方法」を提供するとの課題を解決できることを、当業者であれば認識できるものといえる。
(4)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、ア 本件発明において、「既設管理型廃棄物処分場」が「海面」のものであることが特定されていないが、本件明細書には、「内水ポンド」が存在する「海面」の廃棄物処分場ではない処分場においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない、イ 本件発明において、全ての「給気管」の「排気口」が「保有水水位下限の近傍」に位置することが特定されていないが、本件明細書には、たった1本の「給気管」の「排気口」が「保有水水位下限の近傍」に位置している場合においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない、ウ 本件発明において、「保有水水位下限の近傍」のみに「給気管」の「排気口」が位置することが特定されていないが、本件明細書には、「保有水水位下限の近傍」以外の位置にも「給気管」の「排気口」が位置している場合においても本件発明の課題を解決し得ることは記載されていない、と主張している。
しかしながら、前記アに関し、本件訂正発明の「安定化方法」は、「二酸化炭素を含む中和用ガスを前記廃棄物堆積層に供給すること」により実現されるものであって、その作用機序を考慮すれば、「内水ポンド」が存在する「海面」の廃棄物処分場ではない処分場においても課題を解決できることは、当業者が理解できることといえる。
前記イ及びウに関し、本件訂正発明1では、「給気管の」「下端部に形成された」「排気口」は「廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍に」「位置する」ものであって、「中和用ガス」は「給気管の下端部に形成された排気口から」「供給する」ものであることが記載されており、また、本件訂正発明2では、「廃棄物堆積層の保有水水位下限の近傍且つ、保有水水位下限より下になるように配置され」た「給気管」「から前記廃棄物堆積層に前記中和用ガスを供給する」ことが記載されているから、本件訂正発明においては、実質的に、中和用ガスを、廃棄物堆積層の保有水位下限の近傍に供給することが特定されている。そうすると、前記イ及びウで主張するような特定がなされていなくとも、前記課題を解決できることは、当業者が理解できることである。
してみると、申立人の主張は、いずれも採用できない。
(5)まとめ
以上より、本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701088