特許異議申立
2023-701161
ホットメルト接着剤組成物および衛生用品
- 審判番号
- 2023-701161
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-542591
- 登録番号
- 7271681
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2025年04月02日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社MORESCO
- 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【異議申立人】佐藤 幸代
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(B09B) / P1651.121-YAA(B09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7271681号発明「ホットメルト接着剤組成物および衛生用品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7271681号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7271681号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和2年7月3日(優先権主張令和元年8月29日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年4月28日に特許権の設定登録がされ(請求項の数11)、同年5月11日に特許掲載公報が発行され、同年10月31日に特許異議申立人 佐藤 幸代(以下「申立人」という。)により、請求項1~11(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立がされたものである。
その後、当審は、令和6年7月31日付けで取消理由を通知し(発送は同年8月5日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年10月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。
当審は、本件訂正請求に対し、同年10月15日付けで特許権者に手続補正指令を通知し(発送は同年同月18日)、この通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年10月30日に手続補正書を提出した。
また、当審は、同年11月5日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知し(発送は同年同月7日)、この通知に対し、申立人は、その指定期間内である同年12月6日に意見書を提出した。
第2 本件訂正請求について
1 本件訂正
(1)本件訂正は、次の訂正事項1~3からなるものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:・・・」と記載されているのを、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):・・・」に、「前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり」と記載されているのを、「前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、・・・メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く」に、訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:・・・」と記載されているのを、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):・・・」に、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり」と記載されているのを、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、20モル%以上30モル%以下であり」に、訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
(訂正事項3-1)
特許請求の範囲の請求項5に、「前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部である、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、請求項1に、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:・・・」と記載されているのを、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):・・・」に、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり」と記載されているのを、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、20モル%以上30モル%以下であり」に、訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する)。
(訂正事項3-2)
特許請求の範囲の請求項5に、「前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部である、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、請求項2に、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:・・・」と記載されているのを、「前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):・・・」に、「前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり」と記載されているのを、「前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、・・・メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く」に、訂正し、新たに請求項12とする。
(2)一群の請求項について
訂正後の請求項1~12に対応する訂正前の請求項1~11について、請求項5~11は、それぞれ独立請求項である請求項1、2、3又は4を直接又は間接的に引用するものである。
また、訂正後の請求項12について、別の訂正単位とする求めはない。 したがって、訂正前の請求項1~11に対応する本件訂正後の請求項1~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求ごとに請求されたものである。
3 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る「ホットメルト接着剤組成物」について、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」を除く訂正をするとともに(以下、「訂正事項1-1」ともいう。)、「前記ベースポリマー」に含まれている「スチレン系ブロックコポリマー」について、「メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く」を充足するものに限定する訂正をする(以下、「訂正事項1-2」ともいう。)ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に係る「ホットメルト接着剤組成物」から、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除くものであり、訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1に係る「前記ベースポリマー」に含まれている「スチレン系ブロックコポリマー」について、「メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率」が、「メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率」よりも多い態様のみに限定するものであるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1-1は、単に本件訂正前の請求項1に係る「ホットメルト接着剤組成物」から、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除くものであって、それによって新たな技術的事項が導入されているわけではない。
また、訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1に係る「スチレン系ブロックコポリマー」のメルトフローレート及び含有率に関するものであるところ、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」ともいう。)には以下の記載がある。
「【0062】
〔使用した材料〕
下記の実施例および比較例では、以下の材料を使用して、ホットメルト接着剤組成物を調製した。
・ベースポリマーA:旭化成株式会社製 アサプレンT-412(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーB:クレイトンポリマージャパン株式会社製 D-1118(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーC:旭化成株式会社製 アサプレンT-439(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーD:旭化成株式会社製 タフテックP-2000(スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレンブロックコポリマー)」
「【0067】
【表1】
[図:0001424552000001.jpg]
」
「【0077】
【表2】
[図:0001424552000002.jpg]
そうすると、本件訂正前の請求項1に係る「ホットメルト接着剤組成物」の具体的な態様である実施例1~7において、「スチレン系ブロックコポリマー」として、「ベースポリマーA」、「ベースポリマーB」、及び、「ベースポリマーC」の中から選択した1つまたは複数を使用していること、ベースポリマーA~Cのメルトフローレートは、それぞれ、0.1g/10分、10g/10分、50g/10分であること、いずれの実施例においてもベースポリマーAの含有率よりも、ベースポリマーB及びベースポリマーCの含有率の合計の方が多くなっていること(相対的にみてベースポリマーAの含有率が少ないこと)が理解できる。
そうすると、訂正事項1-2は、実施例の記載に基づいて、本件訂正前の請求項1に係る「スチレン系ブロックコポリマー」のメルトフローレート及び含有率を、単に、実施例が存在する範囲に限定する(実施例が存在しない範囲を除く)ものであり、その際当該範囲を、「メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く」と表現したものであって、当該表現を用いたことによって新たな技術的事項が導入されているわけではない。
したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る「ホットメルト接着剤組成物」について、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」を除く訂正をするとともに(以下、「訂正事項2-1」ともいう。)、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率」を「4モル%以上30モル%以下」から、「20モル%以上30モル%以下」に限定する訂正をする(以下、「訂正事項2-2」ともいう。)ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2-1は、本件訂正前の請求項2に係る「ホットメルト接着剤組成物」から、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除くものであり、訂正事項2-2は、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率」の範囲を「4モル%以上30モル%以下」から、「20モル%以上30モル%以下」に減縮するものであるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 新規事項の追加の有無について
訂正事項2-1は、単に本件訂正前の請求項2に係る「ホットメルト接着剤組成物」から、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除くものであって、それによって新たな技術的事項が導入されているわけではない。
また、訂正事項2-2は、本件特許明細書に上記(1)ウに摘記した事項が記載されており、その実施例7(【表2】)において、「ベースポリマー全体のスチレン系ユニットの含有率」が「20モル%」であることに基づき、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率」を「4モル%以上30モル%以下」から、「20モル%以上30モル%以下」に減縮するものであり、当該減縮をしたことによって、新たな技術的事項が導入されているわけではない。
したがって、訂正事項2-1及び訂正事項2-2からなる訂正事項2は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3-1は、本件訂正前の請求項5に係る「ホットメルト接着剤組成物」が、請求項1または2を引用する形式で記載されていたものを、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるとともに(以下、「訂正事項3-1-1」ともいう。)、本件訂正前の請求項5に係る「ホットメルト接着剤組成物」について、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除く訂正(以下、「訂正事項3-1-2」ともいう。)、及び、「前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率」の範囲を「4モル%以上30モル%以下」から、「20モル%以上30モル%以下」に限定する訂正をする(以下、「訂正事項3-1-3」ともいう。)ものである。
また、訂正事項3-2は、本件訂正前の請求項5に係る「ホットメルト接着剤組成物」が、請求項1または2を引用する形式で記載されていたものを、請求項2を引用するものについて独立形式に改めたうえで新たな請求項12とするとともに(以下、「訂正事項3-2-1」ともいう。)、本件訂正前の請求項5に係る「ホットメルト接着剤組成物」について、「25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物」の態様を除く訂正(以下、「訂正事項3-2-2」ともいう。)、及び、「前記ベースポリマー」に含まれている「スチレン系ブロックコポリマー」について、「メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く」を充足するものに限定する訂正をする(以下、「訂正事項3-2-3」ともいう。)ものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3-1-1及び訂正事項3-2-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-1-2及び訂正事項3-2-2は、は、訂正事項1-1と同じ内容の訂正であるから、訂正事項1-1と同様の理由(上記(1)イ)で実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-1-3は、は、訂正事項2-2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項2-2と同様の理由(上記(2)イ)で実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-2-3は、は、訂正事項1-2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項1-2と同様の理由(上記(1)イ)で実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 新規事項の追加の有無について
訂正事項3-1-1及び訂正事項3-2-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
また、訂正事項3-1-2及び訂正事項3-2-2は、は、訂正事項1-1と同じ内容の訂正であるから、訂正事項1-1と同様の理由(上記(1)ウ)で願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
また、訂正事項3-1-3は、は、訂正事項2-2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項2-2と同様の理由(上記(2)ウ)で願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
また、訂正事項3-2-3は、は、訂正事項1-2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項1-2と同様の理由(上記(1)ウ)で願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(4)独立特許要件について
上記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、本件特許の全ての請求項に係る特許に対してなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件が課される請求項はない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第7項に適合する。
(5)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定、及び、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~12に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された以下のとおりのものである(請求項1~12に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。分説のための記号A:~O:等を当審が付した。
「【請求項1】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であり、
T:メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く、
E’:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):45%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
【請求項2】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
C’:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、20モル%以上30モル%以下であり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であり、
E’:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):45%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
【請求項3】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であり、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部であり、
I:前記軟化剤は、ナフテン系プロセスオイルおよび当該ナフテン系プロセスオイル以外の軟化剤を含んでおり、
J:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):40%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
【請求項4】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であり、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部であり、
I:前記軟化剤は、ナフテン系プロセスオイルおよび当該ナフテン系プロセスオイル以外の軟化剤を含んでおり、
J:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):40%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
【請求項5】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
C’:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、20モル%以上30モル%以下であり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であり、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部であり、
E’:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):45%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
【請求項6】
E:前記軟化剤のナフテン含有率(Cn)は、45%以上である、請求項3または4に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
K:前記粘着付与剤におけるスチレン系樹脂の含有率は、ホットメルト接着剤組成物全体の重量を100重量部とすると、0重量部~5重量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
L:前記ホットメルト接着剤組成物は、ワックスを含んでいない、請求項1~7のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
M:前記スチレン系ブロックコポリマーがスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、または、これらの水素化物からなる群から選択される1種類以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
N:前記粘着付与剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、40~65重量部である、請求項1~9のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
O:請求項1~10のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物を含む、衛生用品。
【請求項12】
A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であり、
T:メルトフローレートが10g/10分以上の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、メルトフローレートが10g/10分未満の前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率よりも多く、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部であり、
E’:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物(但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く):
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):45%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。」
第4 特許異議の申立ての概要
1 証拠方法
申立人の提示した証拠は次のとおりである。なお、甲第1号証を甲1などという。
甲1:国際公開第2019/131972号
甲2:米国特許出願公開第2006/0229411号明細書及び抄訳
甲3:アリババ社、中国石油社KN4010製品情報及び抄訳
甲4:一般社団法人潤滑油協会、パラフィン系基油とナフテン系基油の相違について
甲5:特開2013-64056号公報
甲6:特開2020-63448号公報
甲7:特開2017-145425号公報
甲8:特開2011-162747号公報
甲9:令和4年11月28日付け拒絶理由通知
(以上、特許異議申立書に添付して提出)
甲10:上海松漢プラスチックテクノロジー社、Quintac-3520製品情報及び抄訳
甲11:クレイトン社、クレイトンG1652製品情報及び抄訳
甲12:ATPエラストマー社、TAIPOL SIS 1307製品情報及び抄訳
(以上、令和6年12月6日提出の意見書に添付して提出)
2 申立人の主張の概要
(1)サポート要件違背
本件発明1、2においては、拒絶理由通知(甲9)を回避するために、軟化剤のナフテン含有率(Cn)を45%以上と補正した上で、タック力と保持力とが両立できると主張した。
本件明細書の段落【0077】の【表2】を参照すると、実施例1~6のうち、Cnが44%の実施例2及び実施例5と比較して、Cnが45%以上である実施例1、3、4、6とで、評価に違いがないから、本件発明1、2及び6並びにそれらを引用する本件発明5、7~11の記載はサポート要件違背となっている。
(2)甲1を主引用例とした新規性欠如
本件発明1、2、5、7~11は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない発明である。
(3)甲7を主引用例とした新規性欠如
本件発明2、7、9、10は、甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない発明である。
(4)甲2を主引用例とした進歩性欠如
本件発明1~11は、甲2に記載された発明及び甲1~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許を受けることができない発明である。
第5 証拠方法等の記載事項
1 甲1には次の記載がある。
「[0001] 本発明は、ホットメルト接着剤に関し、特に生理用ナプキン、尿取りライナー等の吸収性物品を下着、肌着等の衣類に固定する用途(いわゆる位置決めの用途)に適したホットメルト接着剤に関する。」
「[0075] 実施例1~12及び比較例1~5
表1に示す各成分(A~D及びその他(酸化防止剤))を混合し、約150℃で約1時間かけて攪拌機を用いて溶融混練することにより実施例1~12及び比較例1~5の各ホットメルト接着剤を調製した。
[0076] 成分A~Dの詳細を下記に示す。
(A1-1)スチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「アサプレンT-439(商品名)」(スチレン含有量45質量%、ジブロック比率65質量%、Mw:トリブロック共重合体85,361,ジブロック共重合体43,833)
(A1-2)スチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「アサプレンT-413(商品名)」(スチレン含有量30質量%、ジブロック比率80質量%、Mw:トリブロック共重合体303,645、ジブロック共重合体69,682)
(A2-1)スチレン-イソプレンブロックコポリマー
日本ゼオン社製「クインタック3520(商品名)」(スチレン含有量15質量%、ジブロック比率78質量%、Mw:トリブロック共重合体353,286、ジブロック共重合体147,374)
(A2-2)スチレン-イソプレンブロックコポリマー
日本ゼオン社製「クインタック3433N(商品名)」(スチレン含有量16質量%、ジブロック比率56質量%、Mw:トリブロック共重合体及びジブロック共重合体ともに40,000~350,000の範囲内)
(B1)25℃で固体状の粘着付与樹脂
出光興産社製C5C9系石油樹脂「アイマーブS-100(商品名)」(環球式軟化点100℃)
(B2)25℃で固体状の粘着付与樹脂
JXTGエネルギー社製C5C9系石油樹脂「T-REZ HB-103(商品名)」(環球式軟化点103℃)
(C1)25℃で液体状の粘着付与樹脂
イーストマンケミカル社製「リガライトC8010(商品名)」
(D1)パラフィンオイル
出光興産社製「PS-90(商品名)」(粘度指数108、100℃における粘度11.20mm2/s)
(D2)パラフィンオイル
出光興産社製「PW-90(商品名)」(粘度指数107、100℃における粘度10.89mm2/s)
(D3)炭化水素系合成オイル
三井化学社製「ルーカントHC-10(商品名)」(粘度指数150、100℃における粘度10mm2/s)
(D4)ナフテンオイル
中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)
(D5)ナフテンオイル
出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)
酸化防止剤(BASF社製「イルガノックス1010」)
得られた各ホットメルト接着剤について、tanδピーク温度を測定した。測定結果を表1に併せて示す。」
「[0085]
[図:0001424552000003.jpg]
」
2 甲2には次の記載がある。訳文を<>内に付記する。
「
[図:0001424552000004.jpg]
」
<本発明は、線状A-B-AトリブロックコポリマーとA-Bジブロックコポリマー(ここでB成分はポリブタジエン、A成分はポリスチレン)および/またはスチレンとブタジエンのマルチブロックコポリマーおよび/またはスチレンとブタジエンのランダムコポリマー(スチレンブタジエンゴム)をブレンドしたホットメルト感圧接着剤(HMPSA)に関する。このような接着剤は、テープ、プレ適用ラベル、容器ラベル、ラミネート加工、製品組み立て、フェムケア製品および使い捨て製品組み立て用の位置決め接着剤などに有用である。>
「
[図:0001424552000005.jpg]
」
<
[図:0001424552000006.jpg]
[図:0001424552000007.jpg]
>
「[0060]・・・
[図:0001424552000008.jpg]
」
<[0060]・・・
[図:0001424552000009.jpg]
[図:0001424552000010.jpg]
>
3 甲3には次の記載がある。下線部の翻訳を<>内に摘記する。
「
[図:0001424552000011.jpg]
」
<KN4010
動粘度
(40℃),mm2/s 166.1
・・・
炭素種類分析%,CA 1
CN 50
CP 49>
4 甲4には次の記載がある。
「
[図:0001424552000012.jpg]
[図:0001424552000013.jpg]
」
5 甲5には次の記載がある。
「【0040】
更に本発明のホットメルト接着剤は、(D)可塑剤を含むことができる。(D)可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ブロック共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。(D)可塑剤として、例えばパラフィンオイル、ナフテンオイル及び芳香族系オイルを挙げることができ、無色、無臭であるナフテンオイル、パラフィンオイルが特に好ましい。
【0041】
(D)可塑剤としては、市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、プロセスオイルNS100(商品名)、ペトロチャイナカンパニー社製のKN4010(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの(D)可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。」
「【0071】
(D)可塑剤
(D1)ナフテンオイル(プロセスオイルNS100(商品名)、出光興産社製)
(D2)ナフテンオイル(KN4010(商品名)、ペトロチャイナカンパニー社製)
(D3)パラフィンオイル(ダイアナプロセスオイルPW90(商品名)、出光興産社製)」
「【0079】
[図:0001424552000014.jpg]
6 甲6には次の記載がある。
「【0058】
上記オイルDに含まれない可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度などを調整するために用いることができる。上記オイルDに含まれない可塑剤の具体的種類は限定的ではないが、例えば、粘度指数80未満のオイル、ワックス、液状ゴム等が挙げられる。
【0059】
粘度指数80未満のオイルとしては、市販されている製品を用いることができる。例えば、中国石油社製の製品名「KN-4010」、出光興産社製の製品名「N-90」、Nynas社製の製品名「Nyflex222B」等が挙げられる。これらの粘度指数80未満のオイルは、単独又は混合して使用することができる。」
7 甲7には次の記載がある。
「【0049】
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤の作製方法>
[実施例1]
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、プロセスオイル(C)として35部のPW-90をを投入し、加熱撹拌した。加熱は内容物が150℃以上にならないように注意して行った。この溶融物にスチレン系エラストマー(A)として、20部のG-1652を徐々に加え、添加終了後、酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)として40部のハリタックFを加えた。最後に、ワックス(D)として5部のBW-3250、及び蛍光増白剤(E)として0.01部のUVITEX OBを添加して、溶融均一混合物とし、冷却してアルカリ分散型ホットメルト粘着剤を作製した。
得られたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤を用いて後述する方法に従い、蛍光性、アルカリ剥離性、接着性(接着強度)(対OPP、対PET)、及び糊残り性を下記の方法により行い、評価したところ、蛍光性、アルカリ剥離性、及び糊残り性は良好(○)であり、接着性(対OPP)は0.5N/15mmであり、接着性(対PET)は0.4N/15mm であった。
【0050】
[実施例2~7]、[比較例1~7]
表1に示すような組成で、実施例1と同様に溶融・混合して、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。」
「【0056】
【表1】
[図:0001424552000015.jpg]
【0057】
表1中の略称を以下に示す。
・G-1652:クレイトンG-1652(クレイトンポリマー社製)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)、溶融粘度:1,800mPa・s(溶融粘度は、スチレン系エラストマー濃度25wt%トルエン溶液の25℃において、B型粘度計RB80L(東機産業社製)、ローターNo.3を用いて適した回転数で測定した値である。)
・ハリタックF:ハリタックF(ハリマ化成社製)、酸価:175mgKOH/g、軟化点:72℃
・PW-90:ダイアナプロセスPW-90(出光興産社製)、パラフィン系プロセスオイル(パラフィン系:71%、ナフテン系:29%、芳香族系:0%)、流動点:-15℃
・PW-380:ダイアナプロセスPW-380(出光興産社製)、パラフィン系プロセスオイル(パラフィン系:73%、ナフテン系:27%、芳香族系:0%)、流動点:-15℃
・N-90:ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)、ナフテン系プロセスオイル(パラフィン系:47.7%、ナフテン系:46.1%、芳香族系:6.2%)、流動点:-32.5℃
・BW-3250:TOPCO BW-3250(東洋アドレ株式会社製)、パラフィンワックス、融点:74℃
・UVITEX OB:UVITEX OB(BASF社製)、2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール)
・レックスタック2535: REXtac2535(LLS社製)、エチレン-プロピレンコポリマー、溶融粘度:3500mPas(190℃)
・P-100:アルコンP-100(荒川化学工業社製)、C9石油系樹脂、軟化点:100℃
【0058】
実施例1~7から、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、アルカリ剥離性、接着性、及び糊残り性に優れ、紫外線の照射により蛍光を発することが示された。一方、比較例1~7のホットメルト粘着剤は、アルカリ剥離性、接着性、糊残り性、及び蛍光性の全てを満足する結果は得られなかった。」
8 甲8には次の記載がある。
「【0051】
・・・Kraton G-1652:クレイトンポリマージャパン社製「Kraton G-1652」、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、重量平均分子量79000、スチレン含量30%」
9 当審が追加した参考文献について
(1)文献名:KRATONTM G1652 E Polymer Data Document
(2)URL
https://kraton.com/ja/product-sds/shared-files/87764/?K040DDg19E_G1652_E_Polymer.pdf
(3)記載事項
「
[図:0001424552000016.jpg]
」
10 甲10には次の記載がある。訳文を<>内に付記する。
「
[図:0001424552000017.jpg]
<
[図:0001424552000018.jpg]
>
12 甲12には次の記載がある。訳文を<>内に付記する。
「
[図:0001424552000019.jpg]
」
<
[図:0001424552000020.jpg]
>
第6 当審合議体の判断
1 令和6年7月31日付けで通知した取消理由について
当審が令和6年7月31日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりであるが、いずれも、解消したと判断している。
取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1、2、5、7-11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(新規性)
本件特許の請求項2、7、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲7)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~11に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲2)に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1~3で主として引用する刊行物等
国際公開第2019/131972号(甲1)
米国特許出願公開第2006/0229411号明細書(甲2)
特開2017-145425号公報(甲7)
2 取消理由1について
(1)甲1-4発明の認定
ア 甲1の比較例4に注目すると、甲1の表1からは、A1-1を21重量%、A2-1を9重量%、B1を20重量%、B2を21重量%、C1を10重量%、D4を18.5重量%、酸化防止剤0.5重量%で合計100重量%となるホットメルト接着剤組成物が開示されている。
イ 甲1の[0076]を参照すると、次の発明(以下「甲1-4発明」という。)が把握できる。
「スチレン-ブタジエンブロックコポリマー(A1-1)旭化成社製「アサプレンT-439(商品名)」(スチレン含有量45質量%、ジブロック比率65質量%、Mw:トリブロック共重合体85,361,ジブロック共重合体43,833)を21重量%、
スチレン-イソプレンブロックコポリマー(A2-1)日本ゼオン社製「クインタック3520(商品名)」(スチレン含有量15質量%、ジブロック比率78質量%、Mw:トリブロック共重合体353,286、ジブロック共重合体147,374)を9重量%、
25℃で固体状の粘着付与樹脂(B1)出光興産社製C5C9系石油樹脂「アイマーブS-100(商品名)」(環球式軟化点100℃)を20重量%、
25℃で固体状の粘着付与樹脂(B2)JXTGエネルギー社製C5C9系石油樹脂「T-REZ HB-103(商品名)」(環球式軟化点103℃)を21重量%、
25℃で液体状の粘着付与樹脂(C1)イーストマンケミカル社製「リガライトC8010(商品名)」を10重量%、
ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)を18.5重量%、
酸化防止剤を0.5重量%の合計100重量%を含有するホットメルト接着剤組成物。」
(2)甲1-5発明の認定
甲1の比較例5に注目すると、前記(1)と同様に次の発明(以下「甲1-5発明」といい、甲1-4発明と甲1-5発明のD成分以外の共通部分をまとめて「甲1発明」という。)が認定できる。
「スチレン-ブタジエンブロックコポリマー(A1-1)旭化成社製「アサプレンT-439(商品名)」(スチレン含有量45質量%、ジブロック比率65質量%、Mw:トリブロック共重合体85,361,ジブロック共重合体43,833)を21重量%、
スチレン-イソプレンブロックコポリマー(A2-1)日本ゼオン社製「クインタック3520(商品名)」(スチレン含有量15質量%、ジブロック比率78質量%、Mw:トリブロック共重合体353,286、ジブロック共重合体147,374)を9重量%、
25℃で固体状の粘着付与樹脂(B1)出光興産社製C5C9系石油樹脂「アイマーブS-100(商品名)」(環球式軟化点100℃)を20重量%、
25℃で固体状の粘着付与樹脂(B2)JXTGエネルギー社製C5C9系石油樹脂「T-REZ HB-103(商品名)」(環球式軟化点103℃)を21重量%、
25℃で液体状の粘着付与樹脂(C1)イーストマンケミカル社製「リガライトC8010(商品名)」を10重量%、
ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)を18.5重量%、
酸化防止剤を0.5重量%の合計100重量%を含有するホットメルト接着剤組成物。」
(3)本件発明1との対比・判断
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1発明におけるA1-1及びA2-1は、本件発明1の「ベースポリマー」に相当する。
甲1発明におけるB1、B2及びC1は、本件発明1の「粘着付与剤」に相当する。
甲1-4におけるD4及び甲1-5発明におけるD5は、前記第4、5に摘記した甲5の段落【0040】に摘記したように、「(D)可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され」たものと成分が同様なものであることから、本件発明1における「軟化剤」に相当するものである。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の構成Aを充足するものである。
(イ)甲1発明のA1-1及びA2-1は、スチレン系ブロックコポリマーであり、合計含有量は、30重量%であるから、甲1発明は、本件発明1の構成B、Dを充足するものである。
(ウ)一致点
本件発明1と甲1発明との一致点は次のとおりである。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であ」る点。
(エ)相違点
本件発明1と甲1発明との相違点は、次のとおりである。
<相違点1-1>
本件発明1においては、構成Cを有するのに対し、甲1発明のスチレン系ユニット含有率が明らかでない点。
<相違点1-2>
軟化剤の物性について、本件発明1においては、「Z平均分子量(Mz):300~700;」、「ナフテン含有率(Cn):45%以上;」、及び、「40℃における動粘度:55mm2/s以上」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明における物性が明らかでない点。
<相違点1-3>
軟化剤の種類について、本件発明1においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤に相当する「ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)」(甲1-4発明)、「ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)」(甲1-5発明)を含んでいる点。
<相違点1-4>
本件発明1においては、構成Tを有するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明のスチレン-ブタジエンブロックコポリマー(A1-1)及びスチレン-イソプレンブロックコポリマー(A2-1)のメルトフローレートが明らかでない点。
イ 判断
(ア)相違点1-3について
事案に鑑み、相違点1-3から検討する。
相違点1-3は、要するに、本件発明1が25℃で液体状の粘着付与剤を含まないホットメルト接着剤組成物であるのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物であるというものであるから、実質的な相違点である。そうすると、さらに相違点1-1、相違点1-2、及び、相違点1-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
a 申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(2~3頁、「(1)-1.本件訂正発明1」の項)において、相違点1-3に対応する「訂正要件2」(「2」は○で囲まれて表記されている。以下、同様。)について、「甲第1号証の比較例1は、粘着付与樹脂として、固体状の粘着付与樹脂(アイマーブS-100)のみを含み、液状の粘着付与樹脂を含んでいません。したがって、訂正要件2は、甲第1号証に記載されています。」(以下、「主張1」ともいう。同意見書3頁7~9行)、及び、「上述のとおり、甲第1号証の比較例1のホットメルト接着剤は、固体状粘着付与樹脂(アイマーブS-100)のみを含み、液状粘着付与樹脂を含みません。一方で、甲第1号証の比較例1のホットメルト接着剤は、可塑剤としてパラフィンオイルを含みますが、ナフテンオイルを含みません。しかし、甲第1号証の比較例4,5のホットメルト接着剤がナフテンオイルを含みますので、同一文献上のこれら比較例1,4,5を互いに参照すれば、本件訂正発明1に進歩性がないことは明らかです。」(以下、「主張2」ともいう。同意見書3頁13~20行)と主張している。
b しかし、上記(1)のとおり、甲1-4発明(甲1-5発明についても同様。以下、同様。)は、甲1の比較例4のみに注目して認定した発明であって、比較例1に記載されている事項は、甲1-4発明(の構成)と関係がないから、主張1は、上記(ア)の判断を左右する内容を含んでいない。
c 次に、主張2について検討する。
主張2は、本件発明1が甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるというものである。
しかし、甲1に接した当業者は、甲1にはその実施例(12例記載されている。)や請求の範囲にもホットメルト接着剤が記載されていることや、これらがいずれも比較例4のホットメルト接着剤よりも優れたものであると理解する。また、ホットメルト接着剤組成物の発明をしようとする場合には、通常より優れたホットメルト接着剤組成物に着目するところ、上記(1)のとおり、甲1-4発明は、甲1の比較例4のホットメルト接着剤に注目して認定した発明である。
そうすると、そもそも、ホットメルト接着剤組成物の発明をしようとする当業者が、甲1の実施例や請求の範囲に記載されているホットメルト接着剤ではなく、あえて、比較例4に係るホットメルト接着剤に注目して発明をしようと動機付けられることはありえないし、甲1にはそれを強く動機付けるような記載や示唆もない。
また、仮に何らかの理由で比較例4に注目し得たとしても、申立人が指摘する比較例1,4,5は、これらが単に個別に記載されているだけで、これらの構成を相互に組み合わせることを動機づける記載や示唆等が何もないし、申立人も、「同一文献上のこれら比較例1,4,5を互いに参照すれば」と述べるにとどまる。そして、仮に参照したとしてもそのことから直ちに相違点1-3に係る構成を備えるものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、申立人の主張は、要するに本件発明1を参照しながら、本件発明1に近づけるように比較例1と比較例4,5を組み合わせることで本件発明1を特定する全ての事項を充足することができるという程度のものであって、いわゆる後知恵と言わざるをえないものである。
以上のとおりであるから、当業者といえども甲1-4発明において、相違点1-3に係る構成を備えるものとすることを容易になし得たとはいえないし、したがって、さらに相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明1は、相違点1-3に係る構成等を備えることによって、「凹凸の多い素材に対しても十分な接着性を示す」(本件特許明細書、段落【0009】)という効果を奏するものである。
したがって、主張2も採用できない。
ウ 小括
上記イ(ア)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1によって、本件発明1に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
なお、上記イ(イ)cのとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明1に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(4)本件発明2との対比・判断
ア 本件発明2と甲1発明との対比
(ア)本件発明2の構成Aについては、前記(3)ア(ア)と同じく実質的な相違点ではない。
(イ)本件発明2の構成Fについて
甲1発明のA1-1及びA2-1は、いずれもスチレン系ブロックコポリマーである。また、甲1発明には他にポリマー成分は含まれていないから、「スチレン系ブロックコポリマーのみからなり」といえるから、甲1発明は本件発明2の構成Fを充足する。
(ウ)本件発明2の構成Gについて
前記ア(イ)において検討したように、甲1発明のベースポリマーの含有率は、30重量%であるから、本件発明2の構成Gの「20~45重量部」を充足する。
(エ)一致点
本件発明2と甲1発明との一致点は次のとおりである。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であ」る点。
(オ)相違点
本件発明2と甲1発明との相違点は、次のとおりである。
<相違点2-1>
本件発明1においては、構成C’を有するのに対し、甲1発明のスチレン系ユニット含有率が明らかでない点。
<相違点2-2>
軟化剤の物性について、本件発明2においては、「Z平均分子量(Mz):300~700;」、「ナフテン含有率(Cn):45%以上;」、及び、「40℃における動粘度:55mm2/s以上」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明における物性が明らかでない点。
<相違点2-3>
軟化剤の種類について、本件発明2においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤に相当する「ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)」(甲1-4発明)、「ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)」(甲1-5発明)を含んでいる点。
イ 判断
(ア)相違点2-3について
事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
相違点2-3は、実質的に相違点1-3と同じものであるから、相違点1-3と同様の理由(上記(3)イ(ア)参照。)により、実質的な相違点である。そうすると、さらに相違点2-1及び相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(3~4頁、「(1)-2.本件訂正発明2」の項)において、相違点2-3に対応する「訂正要件2」について、「既に述べたように、訂正要件2については、甲第1号証に記載されています。」(4頁2~3行)、「本件訂正発明2の進歩性についても、本件訂正発明1と同様、甲第1号証で否定されます。甲第1号証の比較例1,4,5を互いに参照すれば、本件訂正発明2に進歩性がないことは明らかです。」(4頁12~15行)と主張をしているが、相違点1-3と同様の理由(上記(3)イ(イ)b、c参照。)で、これらの主張はいずれも採用できない。
ウ 小括
上記イ(ア)のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいいえないから、取消理由1によって、本件発明2に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
なお、上記イ(イ)(上記(3)イ(イ)cも参照。)のとおりであるから、本件発明2は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明2に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(5)本件発明5、12との対比・判断
ア 対比
本件発明1、2、5、12は、いずれも構成E’を備えている(上記第3)ことに着目しつつ、また、本件発明1または本件発明2と甲1発明との対比(上記(3)ア及び(4)ア)を踏まえて、本件発明5または本件発明12と甲1発明とを対比すると、本件発明5及び本件発明12は、それぞれ甲1発明と以下の点(相違点5、相違点12)で少なくとも相違している。
<相違点5>
軟化剤の種類について、本件発明5においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤に相当する「ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)」(甲1-4発明)、「ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)」(甲1-5発明)を含んでいる点。
<相違点12>
軟化剤の種類について、本件発明12においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲1-4発明、甲1-5発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤に相当する「ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)」(甲1-4発明)、「ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)」(甲1-5発明)を含んでいる点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、相違点5及び相違点12について検討する。
相違点5及び相違点12は、いずれも実質的に相違点1-3と同じものである。したがって、さらに対比検討するまでもなく、相違点1-3と同様の理由(上記(3)イ(ア)参照。)により、本件発明5及び本件発明12は、いずれも甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(4頁、「(1)-3.本件訂正発明5」の項)において、本件発明5に係る相違点5に対応する「訂正要件2」について、「減縮に係る訂正要件2・・・については甲第1号証に記載されています。」(4頁27~28行)、「本件訂正発明5の進歩性についても、本件訂正発明1と同様、甲第1号証で否定されます。」(4頁32~33行)と主張している。
また、本件発明12に係る相違点12に対応する「訂正要件2」についても同様の主張をしている(5頁、「(1)-4.本件訂正発明12」の項)
しかしながら、これらの主張はいずれも相違点1-3に対する主張1、主張2と同じ内容のものであるから、同様の理由(上記(3)イ(イ)b、c参照。)で、採用できない。
ウ 小括
上記イ(ア)のとおり、本件発明5及び本件発明12は、いずれも、甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1によって、本件発明5及び本件発明12に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
なお、上記イ(イ)のとおり(上記(3)イ(イ)cも参照。)であるから、本件発明5及び本件発明12は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明5及び本件発明12に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(6)本件発明7~11との対比・判断
ア 本件発明7~11は、それより前に記載されている請求項に係る発明のうちいずれか1つを引用しさらに限定した発明に該当するが、上記1のとおり、取消理由1は、本件発明3、4、6に対応する本件特許の請求項3、4、6に係る発明に係る特許を対象としていないから、本件発明7~11のうち、取消理由1の対象とされたのは、本件発明1、2、5を引用するものである。
イ 上記(3)~(5)で説示したとおり、本件発明1、2、5は、いずれも甲1に記載された発明であるとはいえないものであり、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものである。
ウ 以上によれば、さらに検討するまでもなく、本件発明7~11は、いずれも、甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1によって、本件発明7~11に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、本件発明7~11は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明7~11に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(7)小括
以上のとおりであるから、取消理由1は全て解消した。
3 取消理由2について
(1)甲7発明の認定
ア 甲7の比較例4は次のとおりである。
「スチレン系エラストマー(A)G-1652を20重量部、ロジン系粘着付与剤(B)ハリタックFを40重量部、プロセスオイル(C)ナフテン系N-90を35重量部、合計95重量部を含有するホットメルト接着剤」
イ 全量を100重量部に変更すると、次の発明(以下「甲7発明」という。)が認定できる。
「スチレン系エラストマー(A)G-1652を21.05重量部、ロジン系粘着付与剤(B)ハリタックFを42.11重量部、プロセスオイル(C)ナフテン系N-90を36.84重量部、合計100重量部を含有するホットメルト接着剤」
(2)本件発明2との対比・判断
ア 本件発明2と甲7発明との対比
(ア)甲7発明の「スチレン系エラストマー(A)G-1652」、「ロジン系粘着付与剤(B)ハリタックF」、「プロセスオイル(C)ナフテン系N-90」は、本件発明2における「ベースポリマー」、「粘着付与剤」、「軟化剤」にそれぞれ相当するから、甲7発明は、構成Aを充足する。
(イ)甲7発明の「スチレン系エラストマー(A)G-1652を21.05重量部」は、スチレン系ブロックコポリマーのみからなるから、本件発明2の構成Fを充足し、「20~45重量部」を充足するから、構成Gを充足する。
(ウ)一致点
本件発明2と甲7発明は次の点で一致する。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であ」る点。
(エ)相違点
本件発明2と甲7発明は次の点で相違する。
<相違点2-4>
本件発明2が構成C’を有するのに対して、甲7発明ではスチレンユニットの含有率が明らかでない点。
<相違点2-5>
軟化剤の物性について、本件発明2においては、「Z平均分子量(Mz):300~700;」、「ナフテン含有率(Cn):45%以上;」、及び、「40℃における動粘度:55mm2/s以上」を充足するのに対し、甲7発明における物性が明らかでない点。
<相違点2-6>
軟化剤の種類について、本件発明7においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲7発明は、いずれも、25℃で液体状の粘着付与剤に相当する「ナフテンオイル(D4)中国石油社製「KN-4010(商品名)」(粘度指数1(比較品)、100℃における粘度9.866mm2/s)」(甲1-4発明)、「ナフテンオイル(D5)出光興産社製「N-90(商品名)」(粘度指数53(比較品)、100℃における粘度9.254mm2/s)」(甲1-5発明)を含んでいる点。
イ 判断
(ア)相違点2-4について
前記第5、9に摘記した参考資料によると、G-1652のスチレン含有量は、28.2~30.0%mとされているが、%massの略記であると他の欄を参照すると推認できる。
G-1652のエチレンとブチレンの比率が明らかでないため、正確には計算できないが、スチレン、エチレン、ブチレンのモル質量(104.15、28.05、56.11)を使用し、スチレン含有量が30%massで、エチレンとブチレンの比率がそれぞれ100:0である場合と0:100の場合について、スチレン含有率を計算すると、前者は(30/104.15)/(30/104.15+70/28.05)=0.103、後者は、(30/104.15)/(30/104.15+70/56.11)=0.188である。また、スチレン含有量が28.2%massの場合についても同様に計算すると、前者は0.096、後者は0.175である。したがって、G-1652のスチレン含有率は、概ね9.6モル%~18.8モル%の間にあると推測できる。
したがって、G-1652の正確なスチレン含有率(モル%)は不明であるが、甲7発明が本件発明2の構成C’を充足しないことは明らかであるから、相違点2-4は実質的な相違点である。
また、以上のとおりであるから、さらに相違点7-2、相違点7-3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲7に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
a 申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(6~7頁、「(2)-1.本件訂正発明2」の項)において、相違点2-4に対応する「訂正要件3」について、「クレイトンG-1652のスチレン含有率(モル%)は、正確には計算できません。・・・それにもかかわらず、特許権者は、上記クレイトンG-1652のスチレン含有率を根拠もなく14.1~15.0モル%と勝手に推認・・・このような推認値に基づいて、本件訂正発明2に対する新規性を主張することは許されるべきではありません。」(以下、「主張3」ともいう。同意見書6頁18~27行)、「仮に、甲第7号証の比較例4に含まれるクレイトンG-1652のスチレン含有率(モル%)が14.1~15.0モル%であったとしても、本件訂正発明2の進歩性は、甲第7号証によって否定されます。本件特許明細書の表2を見れば・・・スチレン含有率(モル%)が14.1~15.0モル%であるホットメルト接着剤の検証が一切ありません。・・・スチレン系ユニット含有率の下限について4モル%との記載があるに過ぎません。言い換えますと、訂正要件3は、実施例のなかで最も低い20モル%の値を採用しただけで、本件特許明細書には4~20モル%の範囲を排除する理由の記載も示唆もなく、さらに20モル%を使用することによる効果についても記載も示唆もありません。・・・よって、訂正要件3は、本件訂正発明2の進歩性に全く寄与していないと解するのが妥当です。」(以下、「主張4」ともいう。同意見書6頁29行~7頁29行)と主張をしている。
b 主張3について、G-1652のスチレン含有率の正確な値は不明であるものの、上記(ア)のとおり、その値は、概ね9.6モル%~18.8モル%の範囲にあると推測することができ、本件発明2が構成C’を充足しないことが明らかであると言えるので、主張3は採用できない。
c また、主張4は、本件特許明細書の記載に基づいて本件発明2について縷々主張しているだけであって、甲7(に記載されている事項)に基づいて本件発明2の進歩性がないことを主張する内容を含んでいない。
したがって、主張4も採用できず、本件発明2は、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 小括
上記イ(ア)のとおり、本件発明2は、甲7に記載された発明であるとはいえないから、取消理由2によって、本件発明2に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
なお、上記イ(イ)cのとおりであるから、本件発明2は、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明2に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(3)本件発明7、10との対比・判断
ア 本件発明7、10は、それぞれそれより前に記載されている請求項に係る発明のうちいずれか1つを引用しさらに限定した発明に該当するが、上記1のとおり、取消理由2は、本件発明1、3、4~6、8、9に対応する本件特許の請求項1、3、4~6、8、9に係る発明に係る特許を対象としていないから、本件発明7、10のうち、取消理由1の対象とされたのは、本件発明2を引用するものである。
イ 上記(2)で説示したとおり、本件発明2は、甲7に記載された発明であるとはいえないものであり、また、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものである。
ウ 以上によれば、さらに検討するまでもなく、本件発明7、10は、いずれも、甲7に記載された発明であるとはいえないから、取消理由2によって、本件発明7、10に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、本件発明7、10は、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明7、10に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、取消理由2は全て解消した。
4 取消理由3について
(1)甲2発明の認定
ア 甲2の「Example4(Comparative)」から、次の発明が認定できる。なお、商品名中のスペースは、ハイフンに置き換えた。
「TAIPOL-1307を28重量部、NYFLEX-222Bを14重量部、ESCOREZ-1310-LCを28.75重量部、SYVALITE-RE-101Lを28.75重量部、IRGANOX-B-225を0.5重量部、合計100重量部含有するテープラベル用ホットメルト粘着剤」
イ 甲2の表1の脚注3から、TAIPOL-1307は、スチレン含有量18重量%の線状S-I-Sトリブロックである。
ウ 甲2の表1の脚注4から、NYFLEX-222Bは、ナフテン油可塑剤である。
エ 甲2の表1の脚注5ESCOREZ-1310-LCは、脂肪族炭化水素タッキファイヤー樹脂である。
オ 甲2の表1の脚注6から、SYVALITE-RE-101Lは、ロジンタッキファイヤー樹脂のペンタエリスリトールエステルである。
カ 甲2の表1の脚注10から、IRGANOX-B-225は、安定剤である。
キ 甲2発明
以上から、甲2の比較例4には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると、読み取ることができる。
「スチレン含有量18重量%の線状S-I-Sトリブロック(TAIPOL-1307)を28重量部、ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)を14重量部、脂肪族炭化水素タッキファイヤー樹脂(ESCOREZ-1310-LC)を28.75重量部、ロジンタッキファイヤー樹脂のペンタエリスリトールエステル(SYVALITE-RE-101L)を28.75重量部、安定剤(IRGANOX-B-225)を0.5重量部、合計100重量部含有するテープラベル用ホットメルト粘着剤」
(2)本件発明1との対比・判断
ア 対比
(ア)甲2発明における「スチレン含有量18重量%の線状S-I-Sトリブロック(TAIPOL-1307)」は、本件発明1におけるベースポリマーに相当する。
(イ)甲2発明における「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」は、本件発明1における軟化剤に相当する。
(ウ)甲2発明における「脂肪族炭化水素タッキファイヤー樹脂(ESCOREZ-1310-LC)」及び「ロジンタッキファイヤー樹脂のペンタエリスリトールエステル」は、いずれも、本件発明1の「粘着付与剤」に相当する。そうすると、甲2発明は本件発明1の構成Aの3成分を有するから、構成Aを充足する。
(エ)甲2発明の線状S-I-Sトリブロックは、スチレン-イソプレン-スチレントリブロックコポリマーであることは技術常識であるから、「スチレン系ブロックコポリマー」に属するから、本件発明1の構成Bを充足する。
(オ)甲2発明の「線状S-I-Sトリブロックのスチレン含有量18重量%」は、前記2(3)ア(オ)と同様に、(18/104.15)/(18/104.15+82/68.12)=0.173/(0.173+1.204)=0.173/1.377=12.56モル%となるから、4モル%以上30モル%以下を充足し、本件発明1の構成Cを充足する。
(カ)甲2発明の「線状S-I-Sトリブロック・・・を28重量部」は、本件発明1の構成Dを充足する。
(キ)甲2発明の「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」は、本件明細書の段落【0062】に記載された軟化剤Bであり、その物性は、段落【0067】【表1】を参照すると、Z平均分子量が540、ナフテン含有率が44%、40℃における動粘度が100mm2/sであるから、本件発明の構成E’のうち、Z平均分子量と40℃における動粘度を充足する。
イ 一致点
本件発明1と甲2発明とは次の点で一致する。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であり、
e:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。」
ウ 相違点
本件発明1と甲2発明との相違点は、次のとおりである。
<相違点1-5>
軟化剤のナフテン含有率について、本件発明1においては45%以上と特定されているのに対し、甲2発明においては、44%である点。
<相違点1-6>
軟化剤の種類について、本件発明1においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲2発明は、「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」を含んでいる点。
<相違点1-7>
本件発明1においては、構成Tを有するのに対し、甲2発明の「TAIPOL-1307」は、そのMFIが9であり(前記第5、2の表1の脚注参照。)、かつ、甲2発明は、TAIPOL-1307の他にスチレン系ブロックコポリマーを含有していないから、構成Tを充足しない点
エ 判断
事案に鑑み、相違点1-7から検討する。
上記(1)のとおり、甲2発明は、比較例(比較例4)の記載に注目して認定した発明である。そうすると、甲1発明や甲7発明の場合と同様であり(上記2(3)イ(イ)c参照。)、当業者が、甲2の実施例や特許請求の範囲に記載されているホットメルト接着剤ではなく、あえて、比較例4に係るホットメルト接着剤に注目して発明をしようと動機付けられることはありえない。
また、仮に比較例4に係るホットメルト接着剤に注目したとしても、甲2には、甲2発明において、「TAIPOL-1307」の他にさらにスチレン系ブロックコポリマーを併用すると同時に、当該併用するコポリマーのメルトフローレートを10g/10分以上とし、かつ、当該併用するコポリマーの使用量をTAIPOL-1307よりも多くすることによって本件発明1の構成Tを充足するものとすることを動機づけるような記載も示唆もない。
そうすると、さらにその余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 小括
上記エのとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明1に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(3)本件発明2との対比・判断
ア 対比
(ア)本件発明2の構成A、構成E’については、前記(2)において、検討したとおりである。
(イ)甲2発明におけるベースポリマーは、S-I-Sトリブロックのみであるから、「スチレン系ブロックコポリマーのみからなり」といえるから、本件発明2の構成Fを充足する。
(ウ)甲2発明の「線状S-I-Sトリブロック・・・を28重量部」は、本件発明2の構成Gを充足する。
イ 一致点
以上から、本件発明2と甲2発明との一致点は、
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であり、
e:前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。」
ウ 相違点
本件発明2と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-7>
軟化剤のナフテン含有率について、本件発明2においては45%以上と特定されているのに対し、甲2発明においては、44%である点。
<相違点2-8>
本件発明2が構成C’を有するのに対して、甲2発明ではスチレン系ユニット含有率が12.56モル%(上記(2)ア(オ)参照。)であって、20モル%以上30モル%以下の範囲にない点。
<相違点2-9>
軟化剤の種類について、本件発明2においては、「但し、25℃で液体状の粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物を除く」を充足するのに対し、甲2発明は、「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」を含んでいる点。
エ 判断
事案に鑑み、相違点2-8から検討する。
上記(1)のとおり、甲2発明は、比較例(比較例4)の記載に注目して認定した発明である。そうすると、甲1発明や甲7発明の場合と同様であり(上記2(3)イ(イ)c参照。)、当業者が、甲2の実施例や特許請求の範囲に記載されているホットメルト接着剤ではなく、あえて、比較例4に係るホットメルト接着剤に注目して発明をしようと動機付けられることはありえない。
また、仮に比較例4に係るホットメルト接着剤に注目したとしても、甲2には、甲2発明において、「TAIPOL-1307」のスチレン系ユニット含有率に着目し、当該含有率がより大きいものに変更することによって本件発明2の構成C’を充足するものに変更することを動機づけるような記載も示唆もない。
そうすると、さらにその余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 小括
上記エのとおり、本件発明2は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明2に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(4)本件発明3との対比・判断
ア 対比
(ア)本件発明3の構成A、構成B、構成C、構成Dについては、前記(2)において、検討したとおりである。
(イ)甲2発明の「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)を14重量部」は、8~25重量部を充足するから、本件発明3の構成Hを充足する。
イ 一致点
本件発明3と甲2発明とは次の点で一致する。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
B:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
D:前記スチレン系ブロックコポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、28~41重量部であり、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部である、
ホットメルト接着剤組成物」
ウ 相違点
本件発明3は次の点で甲2発明と相違する。
<相違点3>
軟化剤について、本件発明3においては、「前記軟化剤は、ナフテン系プロセスオイルおよび当該ナフテン系プロセスオイル以外の軟化剤を含んでおり」と特定されているとともに、当該軟化剤全体の物性について、「Z平均分子量(Mz):300~700;ナフテン含有率(Cn):40%以上;40℃における動粘度:55mm2/s以上。」と特定されているのに対し、甲2発明においては、軟化剤として「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」が単独で用いられている点
エ 判断
相違点3について検討する。
(ア)上記(1)のとおり、甲2発明は、比較例(比較例4)の記載に注目して認定した発明である。そうすると、甲1発明や甲7発明の場合と同様であり(上記2(3)イ(イ)c参照。)、当業者が、甲2の実施例や特許請求の範囲に記載されているホットメルト接着剤ではなく、あえて、比較例4に係るホットメルト接着剤に注目して発明をしようと動機付けられることはありえない。
(イ)また、仮に比較例4に係るホットメルト接着剤に注目したとしても、以下に説示するとおり、相違点3に係る構成を備えるものとなるように甲2発明を変更することを当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)甲2発明の「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」は、本件明細書の段落【0062】に記載されている軟化剤Bであるから、同段落【0067】に記載のように、Z平均分子量が540、ナフテン含有率が44%、40℃における動粘度が100mm2/sであり、本件発明3の構成Jに係る「Z平均分子量(Mz):300~700;ナフテン含有率(Cn):40%以上;40℃における動粘度:55mm2/s以上。」を充足する。
また、前記第4、2において摘記した甲2の段落[0060]の表4の比較例10は、可塑剤として「RENOIL 181」を9質量部と「NYFLEX-222B」を21質量部併用するものであり、表4の脚注によれば、前者はレンカート・オイル社製のテクニカルホワイトオイル可塑剤であり、後者はナイナス社製のナフテン系可塑剤であるから、仮に比較例10の記載に基づいて、甲2発明の「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」を、「NYFLEX-222B」とRENOIL 181」の混合物に変更した発明を想定すると、当該変更した発明は相違点3のうち、「前記軟化剤は、ナフテン系プロセスオイルおよび当該ナフテン系プロセスオイル以外の軟化剤を含んでおり」を充足するものとなる。
しかし、甲2には上記比較例10に係る可塑剤の混合物全体としての物性(Z平均分子量(Mz)やナフテン含有率(Cn)や40℃における動粘度)が記載されていないし、当該物性が「NYFLEX-222B」のそれと一致しないことも明らかである。また、当該物性を予測することができる計算式なども存在しないから、その値が「NYFLEX-222B」のそれとほぼ一致するともいえない。
したがって、仮に比較例10の記載に基づいて、甲2発明の「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」を、「NYFLEX-222B」とRENOIL 181」の混合物に変更することを着想し得たとしても、当該混合物の物性が不明であり、そのZ平均分子量(Mz)が300~700であり、ナフテン含有率(Cn)が40%以上であり、かつ、40℃における動粘度が55mm2/s以上である(本件発明3の構成I)を充足するとはいえない。
また、甲2には、当該混合物の物性について、そのZ平均分子量(Mz)を300~700とし、ナフテン含有率(Cn)を40%以上とし、かつ、40℃における動粘度を55mm2/s以上となるように調整することに関する記載も示唆もない。
そうすると、本件発明3は、甲2発明及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(11~12頁、「(3)-3.本件訂正発明3、4の進歩性について」の項)において、「甲第2号証の実施例10で用いられている、RENOIL 181が30%、NYFLEX 222Bが70%を含む軟化剤の物性(Z平均分子量、ナフテン含有量、40℃における動粘度)は、RENOIL 181の物性がどうであれ、その大半を占めるNYFLEX-222Bに近しくなると解することが妥当ですから、本件訂正発明3,4に合致する可能性が高いといえます。」(以下、「主張5」ともいう。同意見書12頁18~22行)と主張しているが、論理的な根拠に基づかないものであって、採用できない。
オ 小括
上記エのとおり、本件発明3は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明3に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(5)本件発明4との対比・判断
ア 対比
(ア)本件発明4の構成A、構成Cについては、前記(2)について検討したとおりである。
(イ)本件発明4の構成F、構成Gについては、前記(3)について検討したとおりである。
(ウ)本件発明4の構成H、構成Jについては、前記(4)について検討したとおりである。
イ 一致点
本件発明4と甲2発明とは次の点で一致する。
「A:ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
F:前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーのみからなり、
C:前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、4モル%以上30モル%以下であり、
G:前記ベースポリマーの含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、20~45重量部であり、
H:前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、8~25重量部であ
る、ホットメルト接着剤組成物」
ウ 相違点
本件発明4と甲2発明とは次の相違点がある。
<相違点4>
軟化剤について、本件発明4においては、「前記軟化剤は、ナフテン系プロセスオイルおよび当該ナフテン系プロセスオイル以外の軟化剤を含んでおり」と特定されているとともに、当該軟化剤全体の物性について、「Z平均分子量(Mz):300~700;ナフテン含有率(Cn):40%以上;40℃における動粘度:55mm2/s以上。」と特定されているのに対し、甲2発明においては、軟化剤として「ナフテン油可塑剤(NYFLEX-222B)」が単独で用いられている点
エ 判断
相違点4は、相違点3と同じものである。そうすると、前記(4)エにおいて相違点3について検討したとおり、相違点4に係る構成を備えるものとなるように甲2発明を変更することを当業者が容易になし得たとはいえない。
オ 小括
上記エのとおり、本件発明4は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明4に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(6)本件発明5との対比・判断
ア 対比
本件発明2、5は、いずれも構成C’を備えている(上記第3)ことに着目しつつ、また、本件発明2と甲2発明との対比(上記(3)ア~ウ)を踏まえて、本件発明5と甲2発明とを対比すると、本件発明5と甲2発明は以下の点(相違点5-1)で少なくとも相違している。
<相違点5-1>
本件発明5が構成C’を有するのに対して、甲2発明ではスチレン系ユニット含有率が12.56モル%(上記(2)ア(オ)参照。)であって、20モル%以上30モル%以下の範囲にない点
イ 判断
相違点5-1は、実質的に相違点2-8と同じものである。したがって、さらに対比検討するまでもなく、相違点2-8と同様の理由(上記(3)エ参照。)により、本件発明5は、甲2発明及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 小括
上記イのとおり、本件発明5は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明5に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(7)本件発明12との対比・判断
ア 対比
本件発明1、12は、いずれも構成E’を備えている(上記第3)ことに着目しつつ、また、本件発明1と甲2発明との対比(上記(2)ア~ウ)を踏まえて、本件発明12と甲2発明とを対比すると、本件発明12と甲2発明は以下の点(相違点12-1)で少なくとも相違している。
<相違点12-1>
本件発明12においては、構成Tを有するのに対し、甲2発明の「TAIPOL-1307」は、そのMFIが9であり(前記第5、2の表1の脚注参照。)、かつ、甲2発明は、TAIPOL-1307の他にスチレン系ブロックコポリマーを含有していないから、構成Tを充足しない点
イ 判断
相違点12-1は、実質的に相違点1-7と同じものである。したがって、さらに対比検討するまでもなく、相違点1-7と同様の理由(上記(3)エ参照。)により、本件発明12は、甲2発明及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 小括
上記イのとおり、本件発明12は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであり、したがって、本件発明12に係る特許を、取消理由3により、取り消されるべきものとすることはできない。
(8)本件発明6~11との対比・判断
本件発明6~11は、それぞれそれより前に記載されている請求項に係る発明のうちいずれか1つを引用しさらに限定した発明に該当する。
また、上記(2)~(6)で説示したとおり、本件発明1~5は、いずれも甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明6~11も、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないものであり、したがって、本件発明6~11に係る特許を、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものとすることはできない。
(9)小括
以上のとおりであるから、取消理由3は全て解消した。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
特許異議の申立理由の概要は、上記第4のとおりであり、取消理由通知で通知した取消理由は、上記第6の1のとおりであるから、取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、甲7を主引用例とした新規性欠如のうち、本件発明9を対象とするもの、及び、サポート要件違背である。
1 甲7を主引用例とした新規性欠如のうち、本件発明9を対象とするものについて
本件発明9は、それより前に記載されている請求項に係る発明のうちいずれか1つを引用しさらに限定した発明に該当する。
また、上記第6、3(2)で説示したとおり、本件発明2は、甲7に記載された発明であるとはいえないものである。
また、取消理由2は、本件発明1、3、4~6、8に対応する本件特許の請求項1、3、4~6、8に係る発明に係る特許を対象としていない(上記第6、1参照。)。
以上によれば、さらに検討するまでもなく、本件発明9は、甲7に記載された発明であるとはいえないから、取消理由2によって、本件発明9に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
2 サポート要件違背について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである〔知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
(2)本件明細書の記載
本件の願書に添付された明細書には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、紙オムツの製造などにホットメルト接着剤組成物が使用されてきた。近年では、エアスルー素材を用いた蒸れない紙オムツが注目を集めている。このような凹凸の多い素材は難接着基材であり、溶融したホットメルト接着剤組成物が付着しにくいことが知られている。
【0005】
このとき、特許文献1のように、スチレン成分の含有率を高くしたブロックコポリマーをホットメルト接着剤組成物に配合すると、組成物が固くなり、タック力の低下を招いてしまう。そのため、このようなホットメルト接着剤組成物には、凹凸の多い素材などに対する接着性が悪いという問題があった。
【0006】
また、特許文献2のように、保持力を向上させるためにスチレン系樹脂をホットメルト接着剤組成物に配合すると、当該組成物は溶剤のような特有の臭気を発するようになる。このため、このようなホットメルト接着剤組成物を製造に使用した紙オムツなどの衛生用品にも、臭気を与えてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、凹凸の多い素材に対しても充分な接着性を示すホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。本発明の他の態様は、保持力を維持させると同時に、臭気を抑制したホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意努力を重ねた結果、特定の条件を満たす軟化剤を配合することにより、前記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
<1>
ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、30モル%以下であり、
前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):40%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
<2>
ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
前記粘着付与剤におけるスチレン系樹脂の含有率は、ホットメルト接着剤組成物全体の重量を100重量部とすると、0重量部~5重量部であり、
前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):40%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。
<3>
前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、30モル%以下である、<2>に記載のホットメルト接着剤組成物。
<4>
前記スチレン系ブロックコポリマーがスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、または、これらの水素化物からなる群から選択される1種類以上である、<1>または<3>に記載のホットメルト接着剤組成物。
<5>
前記ベースポリマー、前記粘着付与剤および前記軟化剤の含有率は、前記ホットメルト接着剤組成物の全重量を100重量部とすると、以下の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物:
ベースポリマー:15~45重量部;
粘着付与剤:40~65重量部;
軟化剤:8~25重量部。
<6>
<1>~<5>のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤組成物を含む、衛生用品。」
「【0017】
ここで、ベースポリマーとして複数の種類のスチレン系ブロックコポリマーを用いる場合は、各スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率の重み付き平均を、「スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率」とする。例えば、スチレン系ブロックコポリマーa、bおよびcを併せて用いる場合、スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、下記式で算出される。
St(モル%)=Sta(モル%)×{a/(a+b+c)}+Stb(モル%)×{b/(a+b+c)}+Stc(モル%)×{c/(a+b+c)}
式中、
St:スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率
Sta:スチレン系ブロックコポリマーaのスチレン系ユニット含有率
Stb:スチレン系ブロックコポリマーbのスチレン系ユニット含有率
Stb:スチレン系ブロックコポリマーcのスチレン系ユニット含有率
a:スチレン系ブロックコポリマーaの含有量
b:スチレン系ブロックコポリマーbの含有量
c:スチレン系ブロックコポリマーcの含有量。」
「【0025】
[スチレン系樹脂]
ホットメルト接着剤組成物の保持力を向上させる目的で、粘着付与剤にピュアモノマー系といわれるスチレン系樹脂を採用する場合がある。しかし、スチレン系樹脂は溶剤のような特有な臭気を生じさせる。そのため、スチレン系樹脂を配合したホットメルト接着剤組成物を衛生用品に使用した場合、当該衛生用品のユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0026】
そのため、本発明の一実施形態において、ホットメルト接着剤組成物に含まれているスチレン系樹脂の含有率は、当該ホットメルト接着剤組成物全体の重量を100重量部とすると、0重量部~5重量部であることが好ましく、0重量部~3重量部であることがより好ましく、0重量部である(スチレン系樹脂を含有しない)ことがさらに好ましい。スチレン系樹脂の含有率が前記の範囲であるならば、不快な臭気を充分に抑制することができる。
【0027】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、第3級ブチルスチレン、クロルスチレンなどのピュアポリマーが挙げられる。より具体的な例を挙げると、スチレンホモポリマー、αメチルスチレンホモポリマーなどが挙げられる。」
「【実施例】
【0061】
以下、実施例について以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
〔使用した材料〕
下記の実施例および比較例では、以下の材料を使用して、ホットメルト接着剤組成物を調製した。
・ベースポリマーA:旭化成株式会社製 アサプレンT-412(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーB:クレイトンポリマージャパン株式会社製 D-1118(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーC:旭化成株式会社製 アサプレンT-439(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー)
・ベースポリマーD:旭化成株式会社製 タフテックP-2000(スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレンブロックコポリマー)
・粘着付与剤A:荒川化学工業株式会社製 アルコンM-100(水添C9石油樹脂)
・粘着付与剤B:三井化学株式会社製 FTR-2100(α-メチルスチレン)
・軟化剤A:三共油化工業株式会社製 SNH68(ナフテン油)
・軟化剤B:ジャパンケムテック株式会社製 NYFLEX 222B(ナフテン油)
・軟化剤C:ジャパンケムテック株式会社製 NYFLEX 223A(ナフテン油)
・軟化剤D:出光興産株式会社製 ダイアナフレシアN-90(ナフテン油)
・軟化剤E:三共油化工業株式会社製 SNH46(ナフテン油)
・軟化剤F:当社製 モレスコホワイトP-500(パラフィン油)
・酸化防止剤:アデカスタブ AO-60G。
【0063】
〔各種パラメータの測定方法〕
<1.ベースポリマーのパラメータ>
ベースポリマーA~Dのトリブロック含有率、ジブロック含有率、スチレン系ユニット含有率、およびメルトフローレートは、カタログ値を採用した。
【0064】
<2.軟化剤のパラメータ>
軟化剤A~Fについて、Z平均分子量の測定、環分析、40℃における動粘度の測定を行った。環分析は、n-d-M法に則り実施した。Z平均分子量は、GPC-HPLC(島津製作所社製ゲル浸透クロマトグラフィー SCL-10AVP)を用いて測定した。40℃における動粘度は、キャノン=フェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0065】
なお、n-d-M法による環分析に必要なパラメータは、以下の装置によって測定した。このときの測定温度は、37.78℃とした。
・動粘度:キャノン=フェンスケ粘度計
・密度:振動式密度計(京都電子工業株式会社製密度比重計 DA-645)
・屈折率:デジタル屈折計(株式会社アタゴ社製デジタル屈折計RX-5000α)。
【0066】
ベースポリマーおよび軟化剤に関するパラメータを、表1に示す。
【0067】
【表1】
[図:0001424552000021.jpg]
「【0075】
〔実施例1~8、比較例1~5〕
攪拌混練機中に、粘着付与剤、軟化剤および酸化防止剤を投入し、加熱した状態(150~190℃)にて攪拌することによって、充分に溶融させた。この溶融物の中に、ベースポリマーを投入し、加熱した状態(150~190℃)でさらに混練した。これによってベースポリマーを充分に溶融させ、溶融物の中に均一に分散させた。このようにして、ホットメルト接着剤組成物を得た。各ホットメルト接着剤組成物の評価結果を、表2に示す。
【0076】
なお、ホットメルト接着剤組成物の製造に使用した材料およびその配合は、表2に記載の通りである(単位:重量部)。
【0077】
【表2】
[図:0001424552000022.jpg]
〔結果〕
実施例1~6は、いずれも、ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤が、特定の条件を満たしている。具体的には、ベースポリマーに含まれるスチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、30モル%以下である。また、粘着付与剤としてピュアモノマー系といわれるスチレン系樹脂を配合していない(すなわち、「スチレン系樹脂の含有率がホットメルト接着剤組成物全体に対して5重量部以下」の条件を満たす)。さらに、軟化剤全体のZ平均分子量は300~700であり、ナフテン含有率は40%以上であり、40℃における動粘度は55mm2/s以上である。
【0078】
実施例7は、ベースポリマーおよび軟化剤が特定の条件を満たしているのに対し、粘着付与剤は特定の条件を満たしていない。実施例8は、粘着付与剤および軟化剤が特定の条件を満たしているのに対し、ベースポリマーが特定の条件を満たしていない。
【0079】
比較例1は、軟化剤のZ平均分子量が300未満であり、40℃における動粘度も55mm2/s未満である。比較例2は、軟化剤のZ平均分子量が700を超えており、ナフテン含有率が40%未満である。比較例3は、ベースポリマーに含まれるスチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率が、30モル%を超えている。比較例4は、軟化剤のナフテン含有率が40%未満である。比較例5は、軟化剤のZ平均分子量が700を超えており、ナフテン含有率が40%未満であり、粘着付与剤として5重量部超のスチレン系樹脂を配合している。
【0080】
実施例1~6から判るように、Z平均分子量、ナフテン含有率および40℃における動粘度が特定の範囲にある軟化剤を配合した場合には、スチレン系ベースポリマーのスチレン系ユニット含有率を30モル%以下にしても、充分な保持力が得られている。また、実施例1~6に係るホットメルト接着剤組成物は、高いタック力を有していることから、凹凸の多い基材にも好適に利用できる。これは、タック力が高ければ、ホットメルト接着剤組成物と基材表面との接触面積が小さくても、充分な接着性が得られるためである。このことは、凹凸基材に対する剥離強度試験の結果によっても支持されている。
【0081】
一方、比較例1、2、4、5は、軟化剤のパラメータが特定の範囲になく、比較例3は、スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率が高かった。そのため、保持力とタック力との両立が困難であったと考えられる。なお、実施例7を参照すると、ベースポリマーおよび軟化剤が特定の条件を満たし、かつ、粘着付与剤としてスチレン系ポリマーを5重量部超含有させた場合には、臭気を有するが、保持力とタック力とが両立しているホットメルト接着剤組成物が得られることが判る。
【0082】
また、実施例1~6から判るように、Z平均分子量、ナフテン含有率および40℃における動粘度が特定の範囲にある軟化剤を配合した場合には、粘着付与剤としてスチレン系樹脂を配合しなくても保持力が維持される。すなわち、実施例1~6に係るホットメルト接着剤組成物は、保持力の維持と臭気の抑制とが両立されている。
【0083】
一方、比較例1では、Z平均分子量が小さく、40℃における動粘度が小さい軟化剤を配合したところ、保持力の低下が見られた。また、比較例4では、ナフテン含有率が低い軟化剤を配合したところ、保持力の低下が見られた。比較例1、4の結果を総合すると、Z平均分子量、ナフテン含有率および40℃における動粘度の3つの条件を満たす軟化剤が、スチレン系樹脂を含んでいないホットメルト接着剤組成物における保持力の維持に関与していることが示唆される。さらに、比較例5では、粘着付与剤としてピュアモノマー系といわれるスチレン系樹脂を配合したところ、ホットメルト接着剤組成物は臭気を有していた。なお、実施例8を参照すると、粘着付与剤および軟化剤が特定の条件を満たし、かつ、ベースポリマーのスチレン系ユニット含有率が30モル%超の場合には、タック力には劣るが、充分な保持力を有し、臭気の少ないホットメルト接着剤組成物が得られることが判る。」
(3)発明が解決しようとする課題
本件特許明細書(段落【0007】)には、「本発明の一態様は、凹凸の多い素材に対しても充分な接着性を示すホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。本発明の他の態様は、保持力を維持させると同時に、臭気を抑制したホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。」と記載されている。
したがって、本件発明が解決しようとする課題は、「凹凸の多い素材に対しても充分な接着性を示すホットメルト接着剤組成物を提供すること」であると認める。
(4)検討
本件特許明細書には本件発明が課題を解決するための手段について、「本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意努力を重ねた結果、特定の条件を満たす軟化剤を配合することにより、前記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
<1>
ベースポリマー、粘着付与剤および軟化剤を含んでいるホットメルト接着剤組成物であって、
前記ベースポリマーは、スチレン系ブロックコポリマーを含んでおり、
前記スチレン系ブロックコポリマーのスチレン系ユニット含有率は、当該スチレン系ブロックコポリマーを構成するユニットの全体を100モル%とすると、30モル%以下であり、
前記軟化剤は、下記の物性を満たしている、ホットメルト接着剤組成物:
Z平均分子量(Mz):300~700;
ナフテン含有率(Cn):40%以上;
40℃における動粘度:55mm2/s以上。」(段落【0008】)と記載されている。
また、当該「以下の態様」に該当する実施例が8例(段落【0077】の【表2】)記載されており、いずれも、「保持力」、「ループタック」、「凹凸基材」の評価が全て「○」になっている。
そうすると、本件特許明細書の記載により、「下記の態様」は、本件発明の課題を解決することができるものであると理解できる。
また、本件発明はいずれも「下記の態様」に該当するものである。
以上のとおりであるから、本件発明は、本件特許明細書の記載によりその課題を解決することができるものであると理解できるものである。
(5)申立人の主張について
ア 申立人が申し立てたサポート要件違反の理由は、(上記第4、2(1)参照。)のとおりであるが、本件特許明細書には、その課題を解決するために充足すべき態様について上記(4)で説示したとおりの記載があり、これによれば、ナフテン含有率(Cn)は40%以上であればよいことが理解できる。そして、このことと、「Cnが44%の実施例2及び実施例5と比較して、Cnが45%以上である実施例1、3、4、6とで、評価に違いがない」ことはなんら矛盾しないし、「Cnが44%の実施例2及び実施例5と比較して、Cnが45%以上である実施例1、3、4、6とで、評価に違いがない」ことから直ちにサポート要件違反であるといえる理由を、上記(1)の判断手法に沿って説明しているわけでもない。そして、本件発明がその課題を解決することができるものであることは上述のとおりである。
イ 申立人は、令和6年12月6日提出の意見書(14~15頁、「(4)特許権者が行った訂正について(I)」、「(5)特許権者が行った訂正について(II)」の項)において、「本件特許発明に係る登録公報の段落[0006]、[0007]に記載されているように、臭気抑制は本件特許発明の課題であることは自明です。」(同意見書14頁30~32行)とも主張している。
しかし、臭気の抑制は「他の態様」に関する説明であって、本件発明が解決しようとする課題は上記(3)のとおりに認めることが妥当であるから、この主張も採用できない。
ウ したがって、申立人が主張するサポート要件違反の理由によって本件発明に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
(6)小括
上記(4)、(5)のとおりであるから、本件発明に係る特許を特許異議申立理由(サポート要件違背)によって取り消すべきものとすることはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701161