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特許異議申立

2024-700186

段差を有する床スラブ付き鉄骨梁

審判番号
2024-700186
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-212847
登録番号
7335143
請求日
2024年02月29日
審決日
2025年03月06日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】石川 壽彦
  • 【権利者】清水建設株式会社
  • 【権利者代理人】石川 壽彦
  • 【異議申立人】三和 優子
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 蔵野 いづみ
  • 審判官 澤田 真治
分類
P1651.113-YAA(E04B) / P1651.121-YAA(E04B) / P1651.537-YAA(E04B) / P1651.851-YAA(E04B) / P1651.857-YAA(E04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7335143号発明「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7335143号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。 特許第7335143号の請求項2~4に係る特許を維持する。 特許第7335143号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7335143号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和元年11月26日に出願され、令和5年8月21日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年2月29日に特許異議申立人 三和 優子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てが請求項1~3に対してされた。 その後の手続等の概要は、以下のとおりである。 令和6年 5月30日付け:取消理由通知書 同年 7月29日 :訂正請求書、意見書(特許権者) 同年 9月18日 :意見書(申立人) 同年11月20日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 1月24日 :意見書(特許権者)”” 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正請求の趣旨と訂正の内容 令和6年7月29日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7335143号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1、2、3、4のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上であることを特徴とする請求項1記載の段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」と記載されているのを、独立形式に改め、 「両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上であることを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいことを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上であり、 前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいことを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」に訂正する。 (5)訂正の単位について 本件訂正前の請求項1~3について、訂正前の請求項2、3は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているから、本件訂正後の請求項1~4は一群の請求項である。 したがって、本件訂正請求は、一群の請求項である請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。 そして、請求項2~4に係る訂正が認められる場合、訂正後の請求項2~4については、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされている。 2 本件訂正についての当審の判断 以下、訂正事項について、訂正の適否について検討する。なお、本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているので、訂正事項について特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないことから、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした(引用請求項数の削減)上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項3は、上記アのとおり引用請求項数の削減をしたことで、訂正前の請求項3の記載を減縮するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、訂正前の請求項3が引用していた請求項2の引用を削除したものであり、当該訂正により訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした(引用請求項数の削減)上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項4は、上記アのとおり引用請求項数の削減をしたことで、訂正前の請求項3の記載を減縮するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、訂正前の請求項3が引用していた請求項1の引用を削除したものであり、当該訂正により訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)小括 したがって、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 訂正の適否についての判断の小括 以上のとおり、本件訂正は、訂正要件を満たすものである。そして、本件訂正は、上記1(5)のとおり、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~4〕に対して請求されたものであるが、訂正後の請求項2~4のそれぞれについては、別の訂正単位とする求めがなされている。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に合わせて「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、符号A等は分説のため当審で付した。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 A 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 F 前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である E ことを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 【請求項3】 A 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 G 前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きい E ことを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 【請求項4】 A 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されており、 F 前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上であり、 G 前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きい E ことを特徴とする段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。」 第4 申立理由について 1 申立人は、証拠方法として、いずれも本願の出願日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、次の甲第1~8号証(以下「甲1」等という。)及び参考資料1~2を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の請求項1~3に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)証拠方法 ア 特許異議申立書に添付して提出された証拠 甲1:三立産業株式会社、「TRUSTDECK[鉄筋トラス付デッキ]」カタログ、2019年4月:インターネット<URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/images/download/09.pdf> 甲2:特開2011-26920号公報 甲3:本件特許に係る令和5年3月30日付け拒絶理由通知書 甲4:特許第5885911号公報 甲5:社団法人日本建築学会「鉄骨工事技術指針・工事現場施工編」2007年2月15日第6版第1刷、p.384 甲6:本件特許に係る令和5年5月31日提出の意見書 甲7-1:桶川市役所庁舎建設の経緯について、2019年1月8日更新:インターネット<URL:https://www.city.okegawa.lg.jp/soshiki/soumubu/keiyakukanzai/shiyakusho/chosha/2347.html> 甲7-2:新庁舎建設実施設計業務について、2019年1月8日更新:インターネット<URL:https://www.city.okegawa.lg.jp/soshiki/soumubu/keiyakukanzai/shiyakusho/chosha/2057.html> 甲7-3:甲7-2にアドレス(URL)が掲載された桶川市新庁舎実施設計図書(日本設計「桶川市新庁舎建設工事 建築(総合)」2016年3月):インターネット<URL:https://www.city.okegawa.lg.jp/material/files/group/12/kentiku1.pdf> 甲7-4:甲7-2にアドレス(URL)が掲載された桶川市新庁舎実施設計図書(日本設計「桶川市新庁舎建設工事 建築(構造)」2016年3月):インターネット<URL:https://www.city.okegawa.lg.jp/material/files/group/12/kouzou.pdf> 甲8:一般社団法人鉄骨建設業協会「建築鉄骨標準ディテール 2016年版」平成28年4月株式会社鋼構造出版、p.172 イ 令和6年9月18日提出の意見書に添付して提出された証拠 参考資料1:Wayback Machine(URL:https://web.archive.org/)に保存された2019年8月28日時点の三立産業株式会社のウェブサイト(URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/)のアーカイブ URL:https://web.archive. org/web/20190828023104/http://www.sanritsu-s.co.jp/ 参考資料2:三立産業株式会社の「資料ダウンロード」(カタログダウンロード)ページ URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/download/ (2)申立理由1(新規性) ア その1 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ その2 本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 なお、特許異議申立書の「3.申立ての理由」には、「理由1:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)」として「(請求項1-3)」と記載されているが、同頁の「(1)申立ての理由の要約(1-1)理由1・その1:特許法第29条第1項第3号(新規性)」の項目には、請求項1についてのみ記載され、3頁~4頁の「(1-2)理由1・その2:特許法第29条第1項第3号(新規性)」の項目には、請求項1及び2についてのみ記載され、11頁の「(1-7)理由の要点(1)特許法第29条第1項(新規性)」の項目には、「(その1)」として「請求項1:甲1号証により新規性がない。」と、「(その2)」として「請求項1及び2:甲7号証により新規性がない。」と、それぞれ記載され、14頁~21頁の「(5)理由1・その1(新規性違反):甲1号証を主引例として」及び「(6)理由1・その2(新規性違反):甲7号証を主引例として」においても、請求項1及び2についてのみ記載されており、請求項3については、いずれの箇所においても記載されていない。 よって、「3.申立ての理由」の「(請求項1-3)」との記載は「(請求項1-2)」の誤記と認める。 (3)申立理由2(進歩性) ア その1 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 イ その2 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ウ その3 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲2に記載された発明と周知技術に基いて、又は、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 エ その4 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲2に記載された発明、甲5に記載された発明、甲8に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)申立理由3(明確性) 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)申立理由4(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、その記載が出願時の技術常識に照らしても、本件特許請求項に記載された範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されていないため、本件訂正前の請求項1~3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 令和6年5月30日付け取消理由通知に記載した取消理由について 令和6年5月30日付けで訂正前の請求項1及び2について特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1(新規性)請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1又は甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(以下「取消理由1」という。)。 2(進歩性)請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、技術常識(甲5)及び周知技術(甲4)又は甲7に記載された発明、技術常識(甲5)及び及び周知技術(甲4)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「取消理由2」という。)。 第6 令和6年11月20日付け取消理由通知に記載した取消理由(決定の予告)について 令和6年11月20日付けで訂正後の請求項2について特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 (進歩性)請求項2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、技術常識(甲5)及び周知技術(甲4)又は甲7に記載された発明、技術常識(甲5)及び周知技術(甲4)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「取消理由3」という。)。 第7 甲各号証について 1 甲1について (1)頒布日について 甲1は三立産業株式会社のウェブサイト(URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/)の「資料ダウンロード」ページ(URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/download/)から入手可能であって、同ウェブサイトの「NEWS」欄には、「2019/4/19 トラストデッキの製造を開始しました」と記載されており、その文言に貼られたリンク先は、上記「資料ダウンロード」ページである。 また、過去のウェブサイトの内容を保存しているWayback Machine (URL:https://web.archive.org/)によると、2019年8月28日時点の上記同社ウェブサイトにも、既に「2019/4/19 トラストデッキの製造を開始しました」と同一の文言が記載され、Wayback Machine に保存された2019年8月28日時点の同社ホームページからは、当該文言に貼られているリンク先の内容は確認できないものの、その文言に貼られたリンク先のURLアドレス(URL:http://www.sanritsu-s.co.jp/download/)は、同社のカタログをダウンロードするページ(「資料ダウンロード」)のURLアドレス(URL:http://www.sanritsu-s.co.ip/downIoad/)と同一である。 そうすると、当該文言に貼られているリンク先から甲1のカタログをダウンロードすることができたと認められる。 また、一般に、カタログ最終ページに記載された「2019.4」というような日付の記載は当該カタログが印刷あるいは発行された日を示すことが慣習であり、カタログは製品の販売促進に用いるためのものであるから、頒布もその付近で行われることが一般的であるといえ、この点、「2019/4/19 トラストデッキの製造を開始しました」との同社ウェブサイトの記載とも整合する。 以上のことから、甲1の「トラストデッキ」のカタログに記載された「2019.4」が2019年4月を示し、甲1のカタログが2019年4月19日と示され、2019年8月28日に、同社ホームページを通じて電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっていることからみて、甲1は、遅くとも2019年8月28日までには頒布されていたと認められる。 (2)記載事項 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲1として提出した「TRUSTDECK[鉄筋トラス付デッキ]」カタログには、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 2頁「 [図:0001423471000001.jpg] 」 TRUSTDECK(以下「トラストデッキ」という。)のカタログにおいて、「用途例」として、「工場」、「倉庫」、「物流センター」及び「ショッピングセンター」が記載されている。 3頁「 [図:0001423471000002.jpg] 」 4頁「 [図:0001423471000003.jpg] [図:0001423471000004.jpg] 」 5頁「 [図:0001423471000005.jpg] 」 トラストデッキのカタログにおいて、5頁には、「製品形状・種類」として、デッキタイプにより、トラストデッキは、トラス全高が、95~260mm、適応スラブの厚さが、135~300mmであることが記載されている。 9頁「 [図:0001423471000006.jpg] 」 10頁「 [図:0001423471000007.jpg] 」 トラストデッキのカタログにおいて、3頁には、「特長」として、トラストデッキは、「鉄筋コンクリートスラブの主筋とデッキプレートを一体化した合理的床構成材」であることが記載されており、4頁の「施工性」の図及び9頁と10頁の「施工順序」の図から、トラストデッキは、H形断面の鉄骨梁に配置されること、鉄骨梁の上フランジの全長にスタッドジベルが設けられること、及び、打設されるコンクリートと鉄骨梁とは、スタッドジベルを介して接合されることが看取される。 9頁「 [図:0001423471000008.jpg] 」 トラストデッキのカタログにおいて、9頁には、「標準納まり図」として、「スラブ段差(例)」が記載され、トラストデッキにより構成されるスラブの梁材軸直交方向の右側の下面が、鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さであり、スラブの梁材軸直交方向の左側の下面が、鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置するスラブ段差を有しており、スタッドジベルの頂部は、デッキ受けの高さより高い位置にあることが看取される。 また、スラブの梁材軸直交方向の左側の下面は、鉄骨梁の上フランジ上面からスラブの厚さよりも低い位置にあることが看取される。 (3)甲1発明 上記「(2)記載事項」及び記載事項から看取される事項から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。 (甲1発明) 「H形断面の鉄骨梁を備え、鉄骨梁の上フランジの全長にスタッドジベルが設けられ、打設されるコンクリートと鉄骨梁とは、スタッドジベルを介して接合される鉄筋コンクリートスラブの主筋とデッキプレートを一体化した合理的床構成材であって工場、倉庫、物流センター及びショッピングセンターが用途例であるトラストデッキにおいて、 トラストデッキにより構成されるスラブの梁材軸直交方向の右側の下面が、鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さであり、スラブの梁材軸直交方向の左側の下面が、鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置するスラブ段差を有しており、スタッドジベルの頂部は、デッキ受けの高さより高い位置にあり、 スラブの梁材軸直交方向の左側の下面は、鉄骨梁の上フランジ上面からスラブの厚さよりも低い位置にあり、スラブの厚さが、135~300mmであるトラストデッキにより構成されるスラブ。」 2 甲2について (1)記載事項1 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲2として提出した特開2011-26920号公報には、次の事項が記載されている。 「【0028】 以下、本発明の端部閉塞フラットデッキプレート、及びこれを用いた建築構造物のRCスラブ構築方法の実施例を、図1~図9を参照して説明する。 ・・・ 【0030】 図1、図2、及び、図4の斜視図に示すように、本発明の端部閉塞フラットデッキプレート1は、図10、図11で説明した従来の端部閉塞フラットデッキプレート1’とは逆に、上面側(平板部2側)が補剛用リブ3の略下面位置まで押し潰されている。すなわち、平板部2を補剛用リブ3の略下面位置まで押し潰してなるリブ下面位置閉塞端部(以下、単に閉塞端部と言う)1aを備えている。 【0031】 図5は、この端部閉塞フラットデッキプレート(以下、場合により単にフラットデッキプレートと略す)1を用いてRCスラブ15を構築する一実施例を示す。 この実施例は、H形鋼梁6を境界として、片側に適宜構造のスラブ11といわゆるOA床等の二重床12とからなる執務部床13、他側にRCスラブ15とカーペット等の仕上16とからなる廊下等の共用部床17を構築する場合である。18は壁である。 【0032】 事務を行う執務部床13のスラブ11としては、合成スラブ構造、一方向性スラブ構造、RCスラブ構造などの各種のスラブが採用されるが、この実施例では、経済性を重視して、合成スラブ用のデッキプレートを用いて構築した合成スラブ構造を採用する場合を想定している。11aはデッキプレート、11bはデッキプレート上面より上のコンクリート層部分を示す。 RCスラブでは捨て型枠のデッキプレートは剛性を負担しないのでデッキプレート上面より上の鉄筋コンクリート部分dがスラブ厚dとされるが、合成スラブでは合成スラブ用のデッキプレート11aがコンクリートと一体化して引張り剛性を負担するので、デッキプレート11aを含めた厚みaがスラブ厚aとされる。 また、スラブ11の上に快適性、汎用性を考慮し、LAN環境に対応したOA床(すなわち二重床)12を配置している。 一方、廊下やトイレ等の共用部床17には、配管空調等を配慮して、フラットデッキプレートを用いたRCスラブ構造を採用し、仕上16はカーペット敷き等を配置している。 【0033】 この場合、共用部床17の床面17aと執務部床13の床面13aとは同じ高さレベルである必要があるが、図12のように従来の端部閉塞フラットデッキプレート1’を梁6に直接載せてRCスラブ15を構築したのでは、スラブ厚dが過剰に厚い過剰設計となる。 そこで、図示のように、本発明の端部閉塞フラットデッキプレート1を共用部床17のRCスラブ15を構築する捨て型枠としてを用いる。フラットデッキプレート1は図1、図2、図4の態様でスパン両側のH形鋼梁6間に架け渡され、これを捨て型枠としてRCスラブを構築すれば、図5のようなスラブ厚dのかさ上げRCスラブ15が構築される。 このように、本発明の端部閉塞フラットデッキプレート1によれば、かさ上げ材を用いることなく、かさ上げRCスラブを構築することができ、かさ上げ材の材料費及び加工費によりコスト増や、かさ上げ材設置工数及び管理箇所増によるコスト増の問題のない経済設計が実現される。 【0034】 なお、図5の構造の具体的寸法例について説明すると、執務部床13の仕様は図13と同じであり、合成スラブ11のスラブ厚aが145~165mm、二重床12の高さbが100mm、スラブ厚aと二重床高さbとの合計cが245~265mmを想定している。 共用部床17については、フラットデッキプレート1として成(せい)hが一般的なフラットデッキプレートの成75mmより高い100mmのものを用いている。RCスラブ15のスラブ厚dが図13と同じく140~165mm、カーペット敷等の仕上げeが0~10mmである。 【実施例2】 【0035】 図6は、図5におけるH形鋼梁6を合成梁とした実施例を示す。 すなわち、図5のRCスラブ15及び合成スラブ11を構築する際のコンクリート打設に際して、H形鋼梁(鉄骨梁)6の上面に予め頭付きスタッド22を溶接固定した上で梁直上にもコンクリート23を打設して、合成梁21を同時に構築したものである。」 「 [図:0001423471000009.jpg] 」 「 [図:0001423471000010.jpg] 」 「 [図:0001423471000011.jpg] 」 (2)甲2発明1 上記「(1)記載事項1」から、甲2には、次の発明が記載されていると認められる(なお、根拠となる箇所を併記した。以下「甲2発明1」という。)。 (甲2発明1) 「平板部2を補剛用リブ3の略下面位置まで押し潰してなるリブ下面位置閉塞端部1aを備えた端部閉塞フラットデッキプレート1(【0030】)を用いてRCスラブ15を構築し(【0031】)、 H形鋼梁6を境界として、片側に適宜構造のスラブ11といわゆるOA床等の二重床12とからなる執務部床13、他側にRCスラブ15とカーペット等の仕上16とからなる廊下等の共用部床17を構築する場合(【0031】)、 事務を行う執務部床13のスラブ11としては、合成スラブ用のデッキプレートを用いて構築した合成スラブ構造を採用し、スラブ11の上に、LAN環境に対応したOA床(すなわち二重床)12を配置し、廊下やトイレ等の共用部床17には、配管空調等を配慮して、フラットデッキプレートを用いたRCスラブ構造を採用し(【0032】)、 この場合、共用部床17の床面17aと執務部床13の床面13aとは同じ高さレベルである必要があるが、端部閉塞フラットデッキプレート1を共用部床17のRCスラブ15を構築する捨て型枠としてを用い、スラブ厚dのかさ上げRCスラブ15が構築され、かさ上げ材を用いることなく、かさ上げRCスラブを構築することができ(【0033】)、 執務部床13の仕様は、合成スラブ11のスラブ厚aが145~165mm、二重床12の高さbが100mm、スラブ厚aと二重床高さbとの合計cが245~265mmを想定し、共用部床17については、フラットデッキプレート1として成(せい)hが一般的なフラットデッキプレートの成75mmより高い100mmのものを用いており、RCスラブ15のスラブ厚dが140~165mm、カーペット敷等の仕上げeが0~10mmであり(【0034】)、 RCスラブ15及び合成スラブ11を構築する際のコンクリート打設に際して、H形鋼梁(鉄骨梁)6の上面に予め頭付きスタッド22を溶接固定した上で梁直上にもコンクリート23を打設して、合成梁21を同時に構築した(【0035】)、 建築構造物のRCスラブ構築方法(【0028】)。」 (3)記載事項2 また、甲2には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、長手方向の端部を閉塞した端部閉塞フラットデッキプレート、及びこれを用いた建築構造物のRCスラブ(鉄筋コンクリートスラブ)構築方法に関する。 ・・・ 【0004】 ところで、事務所ビルなどの建築物の最近の傾向としては、経済性、快適性、汎用性を兼ね備えた仕様となるように、用途別の床構造を複数種類用いて設計することが多くなっている。 例えば、図12は、H形鋼梁6を境界として、片側に、適宜構造のスラブ11といわゆるOA床等の二重床12とからなる執務部床13、他側にRCスラブ15とカーペット等の仕上16とからなる廊下、トイレ等の共用部床17を構築する場合を示す。18は壁を示す。」 「【0008】 そこで、従来は、共用部床17として、図13のように、剛性上必要なスラブ厚に合わせて、仕上高さから逆算した位置にフラットデッキプレート1’を敷設する工法、すなわち、フラットデッキプレート1’の上面をH形鋼梁6の上面より高い位置にかさ上げするかさ上げ工法を採用しており、そのためにかさ上げ材19として溝形鋼または山形鋼を事前に梁脇に溶接して取り付ける構造としていた。これにより、共用部床17のRCスラブ15が経済設計となる。 【0009】 なお、かさ上げ材19を用いる図13の構造を構築する場合の具体的事例では、執務部床13のスラブ11として合成スラブを採用した場合、例えば次のような寸法範囲での設計が多く採用されている。 執務部床13については、合成スラブ11のスラブ厚aが145~165mm、二重床12の高さbが100mm、スラブ厚aと二重床高さbとの合計cが245~265mm、共用部床17については、RCスラブ15のスラブ厚dが140~165mm、カーペット敷等の仕上げeが0~10mmである。それらの各寸法の具体的設定に応じてかさ上げ高さfが決まる。 なお、図12において、執務部床13が前記各寸法a、b、cの通りである場合、RCスラブ15のスラブ厚dはc(=245~265mm)から仕上げ厚e(0~10mm)を引いた厚みとなり、前述の通りスラブが過剰に厚くなる設計となる。 なお、共用部床17として、経済性に優れた合成スラブ構造でなくRCスラブ構造を採用するのは、前述した配管空調等を配慮してのことである。すなわち、建築物の設計では、共用部床に各種配管を貫通させることが多いが、デッキプレートが強度部材として機能している合成スラブでは、デッキプレートに配管のための貫通穴をあけることは強度を損なうため設計が難しく、各種配管を貫通させる共用部床には合成スラブ構造は採用しずらい。」 「 [図:0001423471000012.jpg] 」 (4)甲2発明2 上記「(3)記載事項2」から、甲2には、次の発明が記載されていると認められる(なお、根拠となる箇所を併記した。以下「甲2発明2」という。)。 (甲2発明2) 「長手方向の端部を閉塞した端部閉塞フラットデッキプレートを用いた建築構造物のRCスラブ構築方法(【0001】)であって、 H形鋼梁6を境界として、片側に、適宜構造のスラブ11といわゆるOA床等の二重床12とからなる執務部床13、他側にRCスラブ15とカーペット等の仕上16とからなる廊下、トイレ等の共用部床17を構築する場合(【0004】)、 共用部床17として、剛性上必要なスラブ厚に合わせて、仕上高さから逆算した位置にフラットデッキプレート1’を敷設する、フラットデッキプレート1’の上面をH形鋼梁6の上面より高い位置にかさ上げするかさ上げ工法を採用し、かさ上げ材19として溝形鋼または山形鋼を事前に梁脇に溶接して取り付ける構造とし(【0008】)、 執務部床13のスラブ11として合成スラブを採用した場合、合成スラブ11のスラブ厚aが145~165mm、二重床12の高さbが100mm、スラブ厚aと二重床高さbとの合計cが245~265mm、共用部床17については、RCスラブ15のスラブ厚dが140~165mm、カーペット敷等の仕上げeが0~10mmである。それらの各寸法の具体的設定に応じてかさ上げ高さfが決まる(【0009】)、 建築構造物のRCスラブ構築方法(【0001】)。」 3 甲4について (1)記載事項 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲4として提出した特許第5885911号公報には、次の事項が記載されている。 「【0010】 請求項1に記載の発明に係る鉄筋コンクリートスラブ付鉄骨梁の設計方法は、ウェブとフランジとで構成された鉄骨梁の両端部が柱に剛接合され、前記鉄骨梁に設けられた鉄筋コンクリートスラブが、前記鉄骨梁の横移動を拘束するのに必要とされるスタッド本数以上のスタッドで、前記フランジと接合される鉄筋コンクリートスラブ付鉄骨梁の設計方法において、 前記鉄骨梁の細長比が150~250、前記鉄筋コンクリートスラブの板厚が140mm以上、又は前記鉄筋コンクリートスラブがデッキスラブの場合、デッキスラブの板厚が130mm以上、前記鉄筋コンクリートスラブの有効幅を柱幅、としたときの、下記(1)式で算出される前記鉄筋コンクリートスラブのねじり剛性を、下記(2)式で算出される前記鉄骨梁のねじり剛性の10倍以上とし、前記鉄骨梁には横座屈を防止する横座屈補剛材を取り付けないことを特徴としている。 鉄筋コンクリートスラブのねじり剛性 =cG×cJ …(1) 鉄骨梁のねじり剛性 =sG×sJ …(2) ここに cG:鉄筋コンクリートスラブのせん断弾性係数 cJ:鉄筋コンクリートスラブのサンブナンのねじり定数 【数4】 [図:0001423471000013.jpg] Be:鉄筋コンクリートスラブの有効幅(Be=柱幅) tc:鉄筋コンクリートスラブ厚 (鉄筋コンクリートスラブではtc=140mm以上、 又はデッキスラブではtc=130mm以上) sG:鉄骨梁のせん断弾性係数 sJ:鉄骨梁のサンブナンのねじり定数 【数8】 [図:0001423471000014.jpg] H:鉄骨梁の成 tf:フランジ厚 tw:ウェブ厚 B:鉄骨梁の幅」 「【0019】 鉄骨梁20は、梁成Wが1200mm以下のH形鋼とされ、両端面が柱14の側壁に固定されている。スラブ12は、鉄筋コンクリート製の厚さTが140mm以上とされ、鉄骨梁20の上面に形成されている。なお、鉄筋の図示は省略している。」 「【0021】 また、鉄骨梁20の上フランジ24とスラブ12はスタッド28で接合され、スタッド本数は、完全合成梁として必要とされるスタッド本数の1/2以上が使用されている。 なお、スタッド本数の表示手法として合成率を下記のごとく定義して使用した。即ち、合成率1.0を、日本建築学会で規定した全合成梁として必要とされるスタッド本数と同数のスタッド本数で接合されている場合とし、合成率0.5を、完全合成梁として必要とされるスタッド本数の1/2のスタッド本数で接合されている場合とした。 【0022】 柱14の間には、鉄骨梁20と直交する方向に直交梁21が架けられ、架構を構成している。このとき、鉄骨梁20の間には、鉄骨梁20の横座屈を防止する横座屈補剛材は架けられていない。」 「 [図:0001423471000015.jpg] 」 (2)甲4記載の技術事項 上記「(1)記載事項」から、甲4には、次の技術事項が記載されていると認められる(なお、根拠となる箇所を併記した。以下「甲4記載の技術事項」という。)。 (甲4記載の技術事項) 「鉄骨梁の両端部が柱に剛接合され、前記鉄骨梁に設けられた鉄筋コンクリートスラブにおいて(【0010】)、鉄骨梁20は、両端面が柱14の側壁に固定されており(【0019】)、鉄骨梁20の上フランジ24とスラブ12は全長にわたってスタッド28で接合され、スタッド本数は、完全合成梁として必要とされるスタッド本数の1/2以上が使用されており(【0021】、図1)、鉄骨梁20の間には、鉄骨梁20の横座屈を防止する横座屈補剛材は架けられていない(【0022】)こと。」 (3)周知技術 上記「(2)甲4記載の技術事項」から、 「鉄筋コンクリートスラブ付きの鉄骨梁において、鉄骨梁の両端部が柱に剛接合され、鉄骨梁の全長に亘って頭付きスタッドを設け、横補剛部材を設けないこと。」 は、本件特許出願前に鉄筋コンクリートスラブ付きの鉄骨梁の分野で周知(以下「周知技術」という。)であると認められる。 4 甲5について (1)記載事項 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲5として提出した「鉄骨工事技術指針・工事現場施工編」には、次の事項が記載されている。 384頁第1行~第8行「 [図:0001423471000016.jpg] 」 (2)技術常識A 上記「(1)記載事項」に摘記したとおり、 「軸径dが13、16、19、22mmの4種類で、長さLは4d以上、かつ、デッキプレートの全せいHdに30mmを加えたもの以上、とある程度決められた範囲内で選択すること。」 は、鉄筋コンクリートスラブ付きの鉄骨梁の分野で技術常識(以下「技術常識A」という。)である。 5 甲7について 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲7-1~甲7-4として提出した甲7-2に掲載された桶川市新庁舎実施設計図書(日本設計「桶川市新庁舎建設工事 建築(総合)」2016年3月:インターネット<URL: https://www.city.okegawa.lg.jp/material/files/group/12/kentiku1.pdf>、甲7-2に掲載された桶川市新庁舎実施設計図書(日本設計「桶川市新庁舎建設工事 建築(構造)」2016年3月:インターネット<URL:https://www.city.okegawa.lg.jp/material/files/group/12/kouzou.pdf>には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)記載事項 甲7-1から甲7-4は、桶川市新庁舎に関するものであることが記載されている。 甲7-4の図面番号2027の抜粋その1(28頁)「 [図:0001423471000017.jpg] 」 甲7-4の図面番号2027の抜粋その2(28頁)「 [図:0001423471000018.jpg] 」 甲7-4の図面番号2041の抜粋(42頁)「 [図:0001423471000019.jpg] 」 甲7-4の図面番号2043の抜粋(44頁)「 [図:0001423471000020.jpg] 」 甲7-4の図面番号2027の抜粋その1には、段差部の床スラブの条件が記載されており、上記図は、新庁舎の構造の4階の床構造を上方から見た図であって、この床伏図中のY3a柱列~Y4柱列の間においてX3柱列の左右で床の模様が異なることが看取され、これは床スラブの仕様が異なるものであり、床に段差がある部分を示している(以下、この段差を「4階床段差」という。)。 また、甲7-4の図面番号2027の抜粋その2の図には「9.----- :横補剛材を示す」と記載され、甲7-4の図面番号2027の抜粋その1の図で、X3柱列のY3柱列~Y4柱列の間は「-----」の記号が付されていないことから横補剛部材のない鉄骨梁であることが看取される。 ここで、上記抜粋その2の図を参照すると、X3柱列の右側は、スラブ上端がFL(フロア基準)から-100mm、大梁上端がFL-250mmであり、X3柱列の左側は、スラブ上端がFL-10mm、大梁上端がFL-250mmであることが記載されている。 また、X3柱列の大梁は、甲7-4の図面番号2041の抜粋(42頁)によれば、H形断面の鉄骨梁であることが記載されている。 また、床スラブ符号はX3柱列の右側でDS3、左側は図面中に記号はないものの、上記抜粋その2の図に、「特記なき限り下記による」として「1.スラブ符号:DS1」とあることからDS1であって、甲7-4図面番号2043(44頁)「床スラブ断面表」からDS1もDS3もスラブ厚が150mmであることが記載されている。 以上のことより、上記4階床段差は、X3柱列の左右の段差であるから、90mmの段差であることが記載されているといえる。 甲7-4の図面番号2044の抜粋その1(45頁)「 [図:0001423471000021.jpg] 」 甲7-4の図面番号2044の抜粋その2(45頁)「 [図:0001423471000022.jpg] 」 甲7-4の図面番号2044(45頁)には「鉄骨部材断面表」が開示され、段差に関する仕様が記載されており、上記4階床段差は、上記のとおり段差が90mmであるから、甲7-4の「鉄骨部材断面表」中の「スラブ段差詳細図」の「(a)大梁上端よりスラブレベルが高い場合」の「h(段差)≦100」の場合が該当する。 また、甲7-4の「鉄骨部材断面表」中「共通事項」には頭付きスタッドが軸径19mmで長さ100mmであることが記載され、「19φ@200」との記載から、軸軽19mmの頭付きスタッドを200mmピッチで設けることが分かるから、頭付きスタッドは鉄骨梁の上フランジ上面の全長に亘って設けられていることが記載されている。 (2)認定事項 甲7-3の図面番号1110の抜粋(29頁)「 [図:0001423471000023.jpg] 」 甲7-3の図面番号1126の抜粋その1(37頁)「 [図:0001423471000024.jpg] 」 甲7-3の図面番号1126の抜粋その2(37頁)「 [図:0001423471000025.jpg] 」 Y3a柱列~Y4柱列の間の4階段差の形状については甲7-3に明示されたものはないが、上記甲7-3の図面番号1126(37頁)「断面図6」に、新庁舎の構造の断面図であってY5柱列を断面視する図が記載されており、この断面図のX3柱列の4階床部分の段差は、X3柱列の左右の床仕様が同じことが上記アの甲7-4の図面番号2027の抜粋その1から看取されるので、Y3a柱列~Y4柱列の間の4階床段差と同じであると認められ、X3柱列の右側のコンクリートスラブの下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであることが看取される。 また、甲7-3の図面番号1110の凡例を参照すると、4階床段差を形成するスラブは、コンクリートスラブであることが看取でき、上記アの甲7-4の図面番号2044の抜粋その2の図と併せると、鉄骨梁は頭付きスタッドを介してコンクリートスラブに接合されていると認められる。 (3)甲7発明 上記「(1)記載事項」、記載事項から看取される事項及び上記「(2)認定事項」から、甲7には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲7発明」という。)。 (甲7発明) 「桶川新市庁舎に関するものであって、X3柱列のY3柱列~Y4柱列の間は横補剛部材のないH形断面の鉄骨梁と、鉄骨梁の上フランジの上面の全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリートスラブとを有し、 スラブ厚が150mmのコンクリートスラブは、X3柱列の右側は、スラブ上端がFL(フロア基準)から-100mm、X3柱列の左側は、スラブ上端がFL-10mmであり、X3柱列の右側のコンクリートスラブの下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであり、Y3a柱列~Y4柱列の間においてX3柱列の左右で床に段差があるコンクリートスラブであって、 90mmの段差であって、長さ100mmの頭付きスタッドが設けられる段差を有するコンクリートスラブが接合された鉄骨梁。」 6 甲8について (1)記載事項 本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立人が甲8として提出した「建築鉄骨標準ディテール 2016年版」には、次の事項が記載されている。 172頁「 [図:0001423471000026.jpg] 」 (2)甲8記載の技術事項 上記「(1)記載事項」から、甲8には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲8記載の技術事項」という。)。 (甲8記載の技術事項) 「嵩上げ高さHに応じて用いる使用部材が記載され、特に、嵩上げ高さが70mm以下のときは、L-75×75×6を使用部材とすること」が記載されている。 第8 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、令和6年5月30日付けで通知した取消理由及び同年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立ての理由のいずれによっても、本件訂正後の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 本件訂正後の請求項2~4に係る特許 本件訂正後の請求項2~4に係る特許は、上記「第3 本件訂正発明」で記載したとおりである。 2 取消理由1(新規性)、申立理由1(新規性)について 本件訂正により、請求項1に係る発明は削除されたため、当審が令和6年5月30日付けで通知した取消理由通知の請求項1に対する取消理由、申立理由1のうち甲1を主引用発明とする取消理由(上記「第4 1(2)」の「申立理由1」のうちの「その1」及び上記「第5 1」)については、対象とする請求項が存在しないものとなった。 そこで、以下では、甲7を主引用発明とする取消理由(上記「第4 1(2)」の「申立理由1」のうちの「その2」)について検討する。 (1)甲7を主引用発明としたもの ア 本件訂正発明2について (ア)対比 a 構成Aについて 甲7発明の「横補剛部材のない」こと、「H形断面の鉄骨梁」は、それぞれ本件特許発明2の「横座屈補剛部材が設けられていない」こと、「H形断面の鉄骨梁」に相当する。 よって、本件特許発明2の構成Aと甲7発明とは、「横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁」を備えている点で共通する。 b 構成Bについて 甲7発明の「鉄骨梁の上フランジの上面の全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して」「接合され」ること、「コンクリートスラブ」は、それぞれ本件訂正発明2の「該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して接合され」ること、「コンクリート床スラブ」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Bに相当する構成を有する。 c 構成Cについて 甲7発明の「コンクリートスラブ」の「X3柱列の右側」、「下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」ること、「コンクリートスラブ」の「X3柱列の左側」、「段差がある」ことは、それぞれ本件訂正発明2の「該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置」すること、「前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側」、「段差を有する」ことに相当する。 また、甲7発明では、「スラブ厚が150mm」であり「X3柱列の右側は、スラブ上端がFL(フロア基準)から-100mm」で、「コンクリートスラブの下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」って、「90mmの段差」であることから、「X3柱列の左側」の「コンクリートスラブの下面」は、「鉄骨梁の上フランジ上面」から90mm上方であるといえ、本件訂正発明2の「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置する」ことに相当する構成を備えている。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Cに相当する構成を有する。 d 構成Dについて 甲7発明では、「90mmの段差であって、長さ100mmの頭付きスタッドが設けられる」ことから、「頭付きスタッド」は、「90mmの段差」より10mm長いこととなり、「頭付きスタッド」の先端は「コンクリートスラブの下面」より10mm上方に位置することとなる。 したがって、甲7発明は、本件訂正発明2の「その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置する」ことに相当する構成を有している。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Dに相当する構成を有する。 e 構成Eについて 甲7発明の「段差を有するコンクリートスラブが接合された鉄骨梁」は、本件訂正発明2の「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Eに相当する構成を有する。 f 一致点・相違点 以上のことから、本件訂正発明2と甲7発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 <一致点> A’横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されている E 段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 <相違点1>(構成A) 「鉄骨梁」に関して、 本件訂正発明2では、「両端部が柱に剛接合され」ているのに対して、 甲7発明では、鉄骨梁の両端部が柱にどのように接合されているか不明である点。 <相違点2>(構成F) 本件訂正発明2では、「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である」のに対して、 甲7発明では、鉄骨梁の上フランジの上面とコンクリートスラブにおけるX3柱列の左側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ頭付きスタッドの先端とコンクリートスラブにおけるX3柱列の左側の下面との鉛直方向距離が50mm以上ではない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点2についてまず検討すると、上記(ア)dで検討したとおり、甲7発明では、「90mmの段差であって、長さ100mmの頭付きスタッドが設けられる」ことから、「頭付きスタッド」は、「90mmの段差」より10mm長いこととなり、「頭付きスタッド」の先端は「コンクリートスラブの下面」より10mm上方に位置しており、「10mm」は50mm以上ではないから、少なくとも上記相違点2は実質的な相違点である。 よって、本件訂正発明2は、甲7発明ではない。 (ウ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(6)理由1・その2(新規性違反):甲7号証を主引例として」の「(6-2)請求項2(6-2-1)甲7号証の記載」において、「・・・甲7号証には以下の段差を有する床スラブ付鉄骨梁が開示されている。・・・かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が10mm(50mm以上)であることを特徴とする・・・」と主張している(21頁1行~9行)。 なお、令和6年9月18日提出の意見書では、申立人は、申立理由1(新規性)についての主張はない。 (エ)主張の検討 上記(ウ)の主張について検討する。 甲7で頭付きスタッドの頂部とコンクリート床スラブにおける他方側の下面との鉛直方向距離が10mmであることは本件訂正発明2で50mm以上であることと一致しないから上記申立人の主張は妥当ではないことから、上記(イ)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 3 取消理由2(進歩性)、取消理由3(進歩性)、申立理由2(進歩性)について (1)甲1を主引用発明としたもの ア 本件訂正発明2について (ア)対比 a 構成Aについて 甲1発明の「H形断面の鉄骨梁」は、本件訂正発明2の「H形断面の鉄骨梁」に相当する。 よって、本件訂正発明2の構成Aと甲1発明とは、「H形断面の鉄骨梁」を備えている点で共通する。 b 構成Bについて 甲1発明の「鉄骨梁の上フランジの全長に」「設けられ」ること、「スタッドジベル」、「介して接合される」こと、「コンクリート」が「打設され」「構成されるスラブ」は、それぞれ本件訂正発明2の「該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して接合され」ること、「コンクリート床スラブ」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明2の構成Bに相当する構成を有する。 c 構成Cについて 甲1発明の「スラブの梁材軸直交方向の右側」、「下面が、鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さであ」ること、「スラブの梁材軸直交方向の左側」、「下面が、鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置する」こと、「段差を有」することは、それぞれ本件訂正発明2の「該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置」すること、「前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置する」こと、「段差を有する」ことに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明2の構成Cに相当する構成を有する。 d 構成Dについて 甲1発明の「スタッドジベルの頂部」は、本件訂正発明2の「その頂部」に相当する。 また、甲1発明で、「スラブの梁材軸直交方向の左側の下面」は、「鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置する」ことから、「スタッドジベルの頂部」が「デッキ受けの高さより高い位置にある」ことは、本件訂正発明2の「その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置する」ことに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明2の構成Dに相当する構成を有する。 e 構成Eについて 甲1発明の「スラブ段差を有」する「スタッドジベルを介して接合され」た「スラブ」と「鉄骨梁」は、本件訂正発明2の「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明2の構成Eに相当する構成を有する。 f 一致点・相違点 以上のことから、本件訂正発明2と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点3及び4で相違する。 <一致点> A’H形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されている E 段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 <相違点3>(構成A) 「鉄骨梁」に関して、 本件訂正発明2では、「両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていない」のに対して、 甲1発明では、鉄骨梁の両端部が柱にどのように接合されているか、横座屈補剛部材が設けられているか否かが不明である点。 <相違点4>(構成F) 本件訂正発明2では、「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である」のに対して、 甲1発明では、鉄骨梁の上フランジの上面とコンクリートが打設され構成されるスラブにおけるスラブの梁材軸直交方向の左側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつスタッドジベルの頂部とコンクリートが打設され構成されるスラブにおけるスラブの梁材軸直交方向の左側の下面との鉛直方向距離が50mm以上ではない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点4についてまず検討する。 相違点4に係る構成Fの技術的意義は、「床スラブに段差がある場合」、「横座屈防止用の小梁、孫梁等を設けることなく、横座屈による鉄骨梁の上フランジの構面外変形を拘束して十分な変形能力を確保」できないこと(【0015】)を課題とした上で、その課題解決手段として、「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である」と頭付きスタッドの高さと段差との関係を規定することで、「地震時の頭付きスタッド接合部の性能維持がより確実なものとなる」と課題を解決できた(【0032】)ものであるところ、甲1では、段差の有無に応じてスタッドジベルの長さを変えていないことから、そのような機能・効果を発揮するものではなく、他の甲号証を参酌しても、前記課題を解決できるようなことを示したり示唆するものはないため、頭付きスタッドの高さと段差との関係を規定することに動機付けはなく、その点が設計事項とはいえない。 よって、その余の相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(7)理由2・その1(進歩性違反):甲1号証を主引例として」の「(7-2-1)数値自体に意味がないこと」において、「請求項2の要件について、本件特許明細書では、[0032]に以下のように記載されているだけである。・・・即ち、頭付きスタッドの頂部の位置に関して「50mm」や「150mm」の数値自体に臨界的意義はなく、この数値自体に意味はない。」と、「(7-2-2)当業者が適宜設定する事項であること」において、「そもそも・・・現場の状況に合わせ、当業者が適宜に決めることができる事項である。・・・」と、「(7-2-3)甲1号証の図から容易に想像がつくこと」において、「例えば甲1号証のトラストデッキは・・・容易に想像されるものである。」と、それぞれ主張している(22頁22行~23頁19行)。 また、令和6年9月18日提出の意見書では、「特許権者は「従来において、頭付きスタッドの高さを段差との関係で規定することは行われていない」「従来行われていない構成Fを採用することで、上述した特有の効果が得られている」等と主張していますが、特許権者が主張するように「従来において、頭付きスタッドの高さを段差との関係で規定することは行われていない」のであるのなら、従来技術において「頭付きスタッドの呼び長さ」が170mmである場合に段差は“常に”120mm超であったとか、「頭付きスタッドの呼び長さ」が150mmである場合に段差は“常に”100mm超であったということになりません。したがって、「頭付きスタッドの呼び長さ」が170mmである場合に段差を120mm以内とすることや、「頭付きスタッドの呼び長さ」が150mmである場合に段差を100mm以内とすることは従来から当然に行われてきたことです。」と主張している(5頁9行~18行)。 (エ)主張の検討 上記(ウ)の主張について検討する。 申立人は、数値自体に意味はないと主張するが、本件特許の【0032】には、 「【0032】 また、頭付きスタッド11の頂部の位置に関しては、図3に示すように、段差によって梁材軸直交方向において一方側よりも上方にある側の床スラブの下面よりも50mm以上上方に位置するよう頭付きスタッド11の高さを規定し、さらに鉄骨梁5の上面と、段差によって上方側に位置するコンクリート床スラブ13の下面との鉛直方向距離を150mm以内とするのが好ましい。 これによって、地震時の頭付きスタッド接合部の性能維持がより確実なものとなる。」 と、【0034】~【0036】において、「2つの試験体A、Bは共に、高さ150mmの段差を設け、頭付きスタッド11、51は軸部直径19mmのものを1本設け・・・従来の形態を模擬した試験体Aでは、頭付きスタッド51を100mmとし、発明例を模擬した試験体Bでは、頭付きスタッド11の高さを200mmとして、段差高さよりも50mm高く」し、実験を行い、「試験体Aでは、段差部のコンクリート縁と頭付きスタッド51との間のコンクリート29がコーン状に破壊することで、耐力が大きく低下したのに対し、試験体Bでは段差部のコンクリート縁と頭付きスタッド11との間のコンクリート29がコーン状に破壊した後も耐力が大きく低下することはなく、十分な耐力を維持し続けた。 これは、前述のようにコンクリート縁と頭付きスタッド11との間のコンクリート29が破壊しても、頭付きスタッド11の頂部付近が健全なコンクリート29に埋設された状態のため、急激な耐力低下を防止することができことによる。」と記載されており、これらの記載から数値自体に意味がないとはいえない。 また、上記(イ)で検討したとおり、スタッドジベルの高さを段差との関係で規定する動機付けはなく、設計事項であるとは認められないから、現場の状況に合わせ、当業者が適宜に決めることができる事項であるともいえない。 よって、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(イ)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 イ 本件訂正発明3について (ア)対比 a 構成Aについて 甲1発明の「H形断面の鉄骨梁」は、本件訂正発明3の「H形断面の鉄骨梁」に相当する。 よって、本件訂正発明3の構成Aと甲1発明とは、「H形断面の鉄骨梁」を備えている点で共通する。 b 構成Bについて 甲1発明の「鉄骨梁の上フランジの全長に」「設けられ」ること、「スタッドジベル」、「介して接合される」こと、「コンクリート」が「打設され」「構成されるスラブ」は、それぞれ本件訂正発明3の「該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して接合され」ること、「コンクリート床スラブ」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明3の構成Bに相当する構成を有する。 c 構成Cについて 甲1発明の「スラブの梁材軸直交方向の右側」、「下面が、鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さであ」ること、「スラブの梁材軸直交方向の左側」、「下面が、鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置する」こと、「段差を有」することは、それぞれ本件訂正発明3の「該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置」すること、「前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置する」こと、「段差を有する」ことに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明3の構成Cに相当する構成を有する。 d 構成Dについて 甲1発明の「スタッドジベルの頂部」は、本件訂正発明3の「その頂部」に相当する。 また、甲1発明で、「スラブの梁材軸直交方向の左側の下面」は、「鉄骨梁の上フランジ上面からデッキ受けの高さ分だけ上に位置する」ことから、「スタッドジベルの頂部」が「デッキ受けの高さより高い位置にある」ことは、本件訂正発明3の「その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置する」ことに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明3の構成Dに相当する構成を有する。 e 構成Eについて 甲1発明の「スラブ段差を有」する「スタッドジベルを介して接合され」た「スラブ」と「鉄骨梁」は、本件訂正発明2の「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明2の構成Eに相当する構成を有する。 f 一致点・相違点 以上のことから、本件訂正発明3と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点5及び6で相違する。 <一致点> A’H形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されている E 段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 <相違点5>(構成A) 「鉄骨梁」に関して、 本件訂正発明3では、「両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていない」のに対して、 甲1発明では、鉄骨梁の両端部が柱にどのように接合されているか、横座屈補剛部材が設けられているか否かが不明である点。 <相違点6>(構成G> 本件訂正発明3では、「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きい」のに対して、 甲1発明では、スタッドジベルの高さが鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さのスラブの梁材軸直交方向の右側のスラブの厚さより大きくない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点6についてまず検討する。 頭付きスタッドの高さを段差との関係や段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で規定するということを開示又は示唆する証拠は甲1を含めその他の甲号証、技術常識及び周知技術でも示されていないことから、スタッドジベルの高さを段差との関係や段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で規定する動機付けがあるとは認められず、さらに、甲1では、段差がある場合にスラブの厚さに応じてスタッドジベルの長さを変えていないことからも、甲1発明において、段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係でスタッドジベルの高さを規定することは当業者にとって容易とはいえない。 そして、本件訂正発明3のように「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいこと」により「段差部からひび割れが生じた場合でも、頭付きスタッド11の存在により、上下のコンクリート床スラブ13が分離するような破壊を防止することができる。」(【0033】)という格別の効果を奏するものである。 よって、その余の相違点5について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(7)理由2・その1(進歩性違反):甲1号証を主引例として」の「(7-3-1)当業者が適宜設定する事項であること」において、「請求項2でも述べたように、そもそも請求項1に規定する頭付きスタッドの位置関係を満足しつつ、頭付きスタッドの長さを決定することは、現場の状況に合わせ、当業者が適宜設定する事項である。・・・即ち、頭付きスタッドの長さ(高さ)は、軸径(例えば、22mm)の4倍以上であることが望ましいから、低い側の床スラブの厚さよりも長くなり得ることを示唆している。」と主張している(23頁28行~24頁6行)。 また、令和6年9月18日提出の意見書では、「(5)異議申立人の意見:訂正後請求項3及び4について」において、「訂正後の請求項3及び4は、元の請求項3と同じです。元の請求項3には取消理由は出されていませんが、異議申立人は、異議申立書で述べた通り、訂正後の請求項3及び4(元の請求項3)も取り消されるべきものと思料します。 さらに上記(4-1)で述べましたように、スタッド高さは種々の条件を総合的に考慮して設計されることから、訂正後の請求項3及び4に記載の発明(訂正発明3及び4)も従来から当然に行われてきたことであることは明白であると思料します。」と主張している(8頁3行~9行)。 (エ)主張の検討 上記(ウ)の主張について検討する。 上記(イ)で検討したとおり、スタッドジベルの高さを段差との関係や段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で規定する動機付けがあるとは認められないから、甲1発明のスタッドジベルの高さは、現場の状況に合わせ、当業者が適宜に決めることができる事項であるとはいえない。 よって、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(イ)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 ウ 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明2及び3の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記ア又はイで検討した理由と同じ理由により、甲1発明及びその他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、申立理由2のその1により、本件訂正後の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 エ 小括 したがって、本件訂正発明2~4は、甲1発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲7を主引用発明としたもの ア 本件訂正発明2について (ア)対比 a 構成Aについて 甲7発明の「横補剛部材のない」こと、「H形断面の鉄骨梁」は、それぞれ本件特許発明2の「横座屈補剛部材が設けられていない」こと、「H形断面の鉄骨梁」に相当する。 よって、本件特許発明2の構成Aと甲7発明とは、「横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁」を備えている点で共通する。 b 構成Bについて 甲7発明の「鉄骨梁の上フランジの上面の全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して」「接合され」ること、「コンクリートスラブ」は、それぞれ本件訂正発明2の「該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して接合され」ること、「コンクリート床スラブ」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Bに相当する構成を有する。 c 構成Cについて 甲7発明の「コンクリートスラブ」の「X3柱列の右側」、「下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」ること、「コンクリートスラブ」の「X3柱列の左側」、「段差がある」ことは、それぞれ本件訂正発明2の「該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置」すること、「前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側」、「段差を有する」ことに相当する。 また、甲7発明では、「スラブ厚が150mm」であり「X3柱列の右側は、スラブ上端がFL(フロア基準)から-100mm」で、「コンクリートスラブの下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」って、「90mmの段差」であることから、「X3柱列の左側」の「コンクリートスラブの下面」は、「鉄骨梁の上フランジ上面」から90mm上方であるといえ、本件訂正発明2の「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置する」ことに相当する構成を備えている。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Cに相当する構成を有する。 d 構成Dについて 甲7発明では、「90mmの段差であって、長さ100mmの頭付きスタッドが設けられる」ことから、「頭付きスタッド」は、「90mmの段差」より10mm長いこととなり、「頭付きスタッド」の先端は「コンクリートスラブの下面」より10mm上方に位置することとなる。 したがって、甲7発明は、本件訂正発明2の「その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置する」ことに相当する構成を有している。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Dに相当する構成を有する。 e 構成Eについて 甲7発明の「段差を有するコンクリートスラブが接合された鉄骨梁」は、本件訂正発明2の「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明2の構成Eに相当する構成を有する。 f 一致点・相違点 以上のことから、本件訂正発明2と甲7発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点7及び8で相違する。 <一致点> A’横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されている E 段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 <相違点7>(構成A) 「鉄骨梁」に関して、 本件訂正発明2では、「両端部が柱に剛接合され」ているのに対して、 甲7発明では、鉄骨梁の両端部が柱にどのように接合されているか不明である点。 <相違点8>(構成F) 本件訂正発明2では、「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である」のに対して、 甲7発明では、鉄骨梁の上フランジの上面とコンクリートスラブにおけるX3柱列の左側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ頭付きスタッドの先端とコンクリートスラブにおけるX3柱列の左側の下面との鉛直方向距離が50mm以上ではない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点8についてまず検討する。 上記(1)ア(イ)で説示したとおり、相違点8に係る構成Fの技術的意義は、床スラブに段差がある場合」、「横座屈防止用の小梁、孫梁等を設けることなく、横座屈による鉄骨梁の上フランジの構面外変形を拘束して十分な変形能力を確保」できないこと(【0015】)を課題とした上で、その課題解決手段として、「前記鉄骨梁の上フランジ上面と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内であり、かつ前記頭付きスタッドの頂部と前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上である」と頭付きスタッドの高さと段差との関係を規定することで、「地震時の頭付きスタッド接合部の性能維持がより確実なものとなる」と課題を解決できた(【0032】)ものであるところ、甲7では、頭付きスタッドの高さは基本的に100mmであって段差に応じて変えておらず、頭付きスタッドの頂部と鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するコンクリート床スラブにおける他方側の下面との鉛直方向距離が10mm程度のものが、そのような機能・効果を発揮するものではなく、他の甲号証を参酌しても、前記課題を解決できるようなことを示したり示唆するものはないため、頭付きスタッドの高さと段差との関係を規定することに動機付けはなく、その点が設計事項とはいえない。 よって、その余の相違点7について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲7発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(8)理由2・その2(進歩性違反):甲7号証を主引例として」「(8-2-2)数値自体に意味がないこと」において、「さらに、上記(7-2-1)に述べたとおり、本件特許の請求項2に記載された頭付きスタッドの頂部の位置に関して「50mm」や「150mm」の数値自体に臨界的意義はなく、この数値自体に意味はない。」と主張している(24頁11行~25頁12行)。 また、令和6年9月18日提出の意見書では、「特許権者は「従来において、頭付きスタッドの高さを段差との関係で規定することは行われていない」「従来行われていない構成Fを採用することで、上述した特有の効果が得られている」等と主張していますが、特許権者が主張するように「従来において、頭付きスタッドの高さを段差との関係で規定することは行われていない」のであるのなら、従来技術において「頭付きスタッドの呼び長さ」が170mmである場合に段差は‘‘常に’'120mm超であったとか、「頭付きスタッドの呼び長さ」が150mmである場合に段差は“常に’'100mm超であったということになりません。したがって、「頭付きスタッドの呼び長さ」が170mmである場合に段差を120mm以内とすることや、「頭付きスタッドの呼び長さ」が150mmである場合に段差を100mm以内とすることは従来から当然に行われてきたことです。」と主張している(5頁9行~18行)。 (エ)主張の検討 上記(1)ア(エ)で既に検討したとおり、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(イ)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 イ 本件訂正発明3について (ア)対比 a 構成Aについて 甲7発明の「横補剛部材のない」こと、「H形断面の鉄骨梁」は、それぞれ本件訂正発明3の「横座屈補剛部材が設けられていない」こと、「H形断面の鉄骨梁」に相当する。 よって、本件訂正発明3の構成Aと甲7発明とは、「横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁」を備えている点で共通する。 b 構成Bについて 甲7発明の「鉄骨梁の上フランジの上面の全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して」「接合され」ること、「コンクリートスラブ」は、それぞれ本件訂正発明3の「該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられ」ること、「頭付きスタッド」、「介して接合され」ること、「コンクリート床スラブ」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明3の構成Bに相当する構成を有する。 c 構成Cについて 甲7発明の「コンクリートスラブ」の「X3柱列の右側」、「下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」ること、「コンクリートスラブ」の「X3柱列の左側」、「段差がある」ことは、それぞれ本件訂正発明3の「該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側」、「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置」すること、「前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側」、「段差を有する」ことに相当する。 また、甲7発明では、「スラブ厚が150mm」であり「X3柱列の右側は、スラブ上端がFL(フロア基準)から-100mm」で、「コンクリートスラブの下面は鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じであ」って、「90mmの段差」であることから、「X3柱列の左側」の「コンクリートスラブの下面」は、「鉄骨梁の上フランジ上面」から90mm上方であるといえ、本件訂正発明3の「下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置する」ことに相当する構成を備えている。 よって、甲7発明は、本件訂正発明3の構成Cに相当する構成を有する。 d 構成Dについて 甲7発明では、「90mmの段差であって、長さ100mmの頭付きスタッドが設けられる」ことから、「頭付きスタッド」は、「90mmの段差」より10mm長いこととなり、「頭付きスタッド」の先端は「コンクリートスラブの下面」より10mm上方に位置することとなる。 したがって、甲7発明は、本件訂正発明3の「その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置する」ことに相当する構成を有している。 よって、甲7発明は、本件訂正発明3の構成Dに相当する構成を有する。 e 構成Eについて 甲7発明の「段差を有するコンクリートスラブが接合された鉄骨梁」は、本件訂正発明3の「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」に相当する。 よって、甲7発明は、本件訂正発明3の構成Eに相当する構成を有する。 f 一致点・相違点 以上のことから、本件訂正発明3と甲7発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点9及び10で相違する。 <一致点> A’横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、 B 該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有し、 C 該コンクリート床スラブは、該コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の一方側の下面が、前記鉄骨梁の上フランジ上面と同じ高さに位置し、前記コンクリート床スラブにおける梁材軸直交方向の他方側の下面が前記鉄骨梁の上フランジ上面よりも鉛直上方に位置するように構成された段差を有する床スラブであって、 D 前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されている E 段差を有する床スラブ付き鉄骨梁。 <相違点9>(構成A) 「鉄骨梁」に関して、 本件訂正発明3では、「両端部が柱に剛接合され」ているのに対して、 甲7発明では、鉄骨梁の両端部が柱にどのように接合されているか不明である点。 <相違点10>(構成G) 本件訂正発明3では、「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きい」のに対して、 甲7発明では、頭付きスタッドの長さ100mmであって、X3柱列の右側のコンクリートスラブの下面が鉄骨梁の上フランジ上面と高さが同じコンクリートスラブのスラブ厚が150mmであるから、頭付きスタッドの高さがスラブの厚さより大きくない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点10についてまず検討する。 頭付きスタッドの高さを段差との関係や段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で規定するということを開示又は示唆する証拠は甲7を含めその他の甲号証、技術常識及び周知技術でも示されていないことから、頭付きスタッドの高さを段差との関係や段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で規定する動機付けがあるとは認められず、さらに、甲7では、段差がある場合にスラブの厚さに応じて頭付きスタッドの長さを変えていないことからも、甲7発明において、段差がある場合の鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側のコンクリート床スラブの厚さとの関係で頭付きスタッドの高さを規定することは当業者にとって容易とはいえない。 そして、本件訂正発明3のように「前記頭付きスタッドの高さが、下面が前記鉄骨梁の上面と同じ高さに位置する側の前記コンクリート床スラブの厚さよりも大きいこと」により「段差部からひび割れが生じた場合でも、頭付きスタッド11の存在により、上下のコンクリート床スラブ13が分離するような破壊を防止することができる。」(【0033】)という格別の効果を奏するものである。 よって、その余の相違点9について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲7発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(8)理由2・その2(進歩性違反):甲7号証を主引例として」の「(8-3-1)当業者が適宜に決めることができる事項であること」において、「上記(7-3-1)に述べたとおり、そもそも請求項1に規定する頭付きスタッドの位置関係を満足しつつ、頭付きスタッドの長さを決定することは、現場の状況に合わせ、当業者が適宜設定する事項である。さらに甲5号証には頭付きスタッドの長さ(高さ)が長くなり得ることが記載されているので、本件特許請求項3発明が示唆されている。」と主張している(25頁20行~24行)。 また、令和6年9月18日提出の意見書では、「(5)異議申立人の意見:訂正後請求項3及び4について」において、「訂正後の請求項3及び4は、元の請求項3と同じです。元の請求項3には取消理由は出されていませんが、異議申立人は、異議申立書で述べた通り、訂正後の請求項3及び4(元の請求項3)も取り消されるべきものと思料します。 さらに上記(4-1)で述べましたように、スタッド高さは種々の条件を総合的に考慮して設計されることから、訂正後の請求項3及び4に記載の発明(訂正発明3及び4)も従来から当然に行われてきたことであることは明白であると思料します。」と主張している(8頁3行~9行)。 (エ)主張の検討 上記(1)イ(エ)で既に検討したとおり、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(イ)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 ウ 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明2及び3の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記ア又はイで検討した理由と同じ理由により、甲7発明及びその他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 したがって、本件訂正発明2~4は、甲7発明、その他の甲号証に記載される事項、上記技術常識A及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲2を主引用発明としたもの ア 本件訂正発明2について (ア)対比・判断 本件訂正発明2と甲2発明1又は甲2発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点4及び相違点8と同様の点で相違し、上記(1)ア(イ)及び(2)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、申立理由2のその3又はその4により、本件訂正後の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。 (イ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(9)理由2・その3(進歩性違反):甲2号証を主引例として」の「(9-2-2)数値自体に意味がないこと」において、「これも上記(7-2-2)の甲第1号証を主引例としてときと同じことが言えるので要約して述べると、本件出願の[0032]の記載から分かるように、頭付きスタッドの頂部の位置に関して「50mm」や「150mm」の数値自体に臨界的意義はなく、この数値自体に意味はない。」と、「(9-2-3)甲2号証の図から容易に想像がつくこと」において、「甲2号証の[0032]によると、甲2号証の図6(図5も同じ)の合成梁の床スラブの構造は、高い方の床(共用部床17)の下面と鉄骨梁上フランジ上面との距離hが100mmであり、低い方の床(執務部床13)の合成スラブ厚さaが145~165mmである。とすると、本件特許請求項2の要件である ・鉄骨梁の上フランジ上面とコンクリート床スラブにおける他方側の下面との鉛直方向距離が150mm以内は、既に満たしており、 ・頭付きスタッドの頂部とコンクリート床スラブにおける他方側の下面との鉛直方向距離が50mm以上 を満たす場合があることは、容易に想像できる。」と主張している(30頁最終行~31頁15行)。 (ウ)主張の検討 上記(1)ア(エ)で既に検討したとおり、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(ア)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 イ 本件訂正発明3について (ア)対比・判断 本件訂正発明3と甲2発明1又は甲2発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点6及び相違点10と同様の点で相違し、上記(1)イ(イ)及び(2)イ(イ)で説示したのと同様の理由により、申立理由2のその3又はその4により、本件訂正後の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。 (イ)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(9)理由2・その3(進歩性違反):甲2号証を主引例として」の「(9-3-1)当業者が適宜設定する事項であること」において、「前記( 7-3-1)の甲1号証を主引例としたときと同じことが言えるので要約して述べると、そもそも頭付きスタッドの位置関係を満足しつつ、頭付きスタッドの長さを決定することは、現場の状況に合わせ、当業者が適宜設定する事項である。 これに付け加えるに、甲5号証P384で日本建築学会が指針を出しているように、頭付きスタッドの長さは軸径の4倍以上、かつデッキプレートの全せいに30mmを加えたもの以上とされている。ここで、甲2号証においてデッキプレート厚さは100mmであるから、頭付きスタッドの長さは130mm以上であることが望ましいことから、低い側の床スラブの厚さ(145~165mm)よりも長くなり得ることを示唆している。」と主張している(31頁下から6行~32頁3行)。 (ウ)主張の検討 上記(1)イ(エ)で既に検討したとおり、上記申立人の主張は妥当ではないため、上記(ア)の判断を左右するものではなく、採用することができない。 ウ 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明2及び3の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記ア又はイで検討した理由と同じ理由により、甲2発明1及びその他の甲号証又は甲2発明2及びその他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立理由2のその3又はその4により、本件訂正後の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 エ 小括 したがって、本件訂正発明2~4は、甲2発明1及びその他の甲号証又は甲2発明2及びその他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 申立理由3(明確性)について (1)判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)本件訂正発明1~4について 本件訂正により、請求項1に係る発明は削除されたため、申立理由3のうち請求項1に対するものは、対象とする請求項が存在しないものとなった。 また、本件訂正発明2~4は上記第2のとおりであって、それ自体に不明確な記載は見当たらないし、本件明細書の記載や図面とも整合することを踏まえると、請求項2の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(11)理由3(明確性)」の「(11-1)請求項1について」において、「特許権者は、本件特許の拒絶理由通知(甲3号証)に対する意見書(甲6号証)において、以下のように主張している。 『本願発明1におけるコンクリート床スラブの段差は、以下に述べるように、引用発明1におけるスラブ11とRCスラブ16により形成される段差と相違するものであります。』 『引用発明1におけるスラブ11とRCスラブ15の段差は、傾斜部位を有する点において、本願発明1のコンクリート床スラブにおける段差と相違しています。』 とすると、いかなる床スラブが本件特許請求項1の「段差を有する床スラブ」に該当するのかどうかが、本件特許請求項1の記載および明細書の記載からは当業者といえども理解することはできない。従って、本件特許請求項1は明確性要件を満たさない。」と、「(11-2)請求項2及び3について」において、「本件特許請求項2及び3は、請求項1の従属項であり、本件特許発明が規定する「段差を有する床スラブ」について、さらに規定するものではない。従って、請求項1と同様、本件特許請求項2及び3も明確性要件を満たさない。」と主張している(35頁15行~同頁下から3行)。 (4)主張の検討 上記(3)の主張について検討する。 本件訂正発明2~4には「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」と記載されており、「段差」に関して、本件特許明細書及び図面の【0028】、【0029】、【0032】、【0033】、図3及び図4には、 「【0028】 <コンクリート床スラブ> コンクリート床スラブ13は、鉄骨梁5の上フランジ7の直上の近傍において段差が形成された段差を有するコンクリート床スラブ13である。 より詳細には、段差を有するコンクリート床スラブ13は、コンクリート床スラブ13における梁材軸直交方向の一方側の下面が、鉄骨梁5の上フランジ7上面と同じ高さに位置し、コンクリート床スラブ13における梁材軸直交方向の他方側の下面が鉄骨梁5の上フランジ7上面よりも鉛直上方に位置するように構成されている。 【0029】 コンクリート床スラブ13はコンクリート29の内部に鉄筋31が配設された鉄筋コンクリート構造であり、コンクリート床スラブ13の段差部分では、段差の上下で鉄筋31が連続するように配筋される。 コンクリート29には普通コンクリート、軽量コンクリートが用いられ、鉄筋31には異形鉄筋、丸鋼鉄筋、溶接金網が用いられる。また工場で製作したプレキャストコンクリート板を現場で兼用型枠として用いるハーフPCスラブや、中空部を含むボイドスラブも該当する。 ・・・ 【0032】 また、頭付きスタッド11の頂部の位置に関しては、図3に示すように、段差によって梁材軸直交方向において一方側よりも上方にある側の床スラブの下面よりも50mm以上上方に位置するよう頭付きスタッド11の高さを規定し、さらに鉄骨梁5の上面と、段差によって上方側に位置するコンクリート床スラブ13の下面との鉛直方向距離を150mm以内とするのが好ましい。 これによって、地震時の頭付きスタッド接合部の性能維持がより確実なものとなる。 【0033】 また、図4に示すように、頭付きスタッド11の高さが、段差によってかさ上げされない側のコンクリート床スラブ13の厚さ以上となるようにしてもよい。 頭付きスタッド11の高さをコンクリート床スラブ13の厚さ以上とすることで、図4に示す段差部からひび割れが生じた場合でも、頭付きスタッド11の存在により、上下のコンクリート床スラブ13が分離するような破壊を防止することができる。」(下線は当審にて付した。) 「 [図:0001423471000027.jpg] 」 「 [図:0001423471000028.jpg] 」 と記載されている。 そうすると、「段差を有する床スラブ付き鉄骨梁」という記載は、鉄骨梁5の上フランジ7の直上の近傍において段差が形成されたコンクリート床スラブ13を意味することが理解できるから、不明確な記載であるとはいえない。 よって、上記申立人の主張は妥当ではないため、採用することができないから、申立理由3により、本件訂正後の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。 (5)小括 以上のとおりであるから、申立理由3はその理由がない。 5 申立理由4(サポート要件)について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)判断 本件訂正により、請求項1に係る発明は削除されたため、申立理由4のうち請求項1に対するものは、対象とする請求項が存在しないものとなった。 また、本件訂正発明2~4の記載は上記第3のとおりである。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】によると、発明の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「床スラブに段差がある場合」、「横座屈防止用の小梁、孫梁等を設けることなく、横座屈による鉄骨梁の上フランジの構面外変形を拘束して十分な変形能力を確保でき」ないことである。 そして、発明の詳細な説明の【0030】には、 「【0030】 <頭付きスタッド> 頭付きスタッド11は、鉄骨梁5の上フランジ7の全長に亘って溶接接合されており、図2に示すように、その頂部が、段差によって梁材軸直交方向において一方側よりも上方にある側のコンクリート床スラブ13の下面よりも上方に位置するように高さの高い頭付きスタッド11を用いている。 これによって、地震時における鉄骨梁5の上フランジ7の構面外変形によって、頭付きスタッド11とコンクリート床スラブ13の縁部の間のコンクリート29がコーン状に破壊した場合でも、頭付きスタッド11の頂部付近は、健全なコンクリート29に埋設された状態となる。このため、急激な耐力劣化を防ぐことができ、鉄骨梁5に十分な変形能力が期待できるだけの頭付きスタッド11の接合部の性能を維持することができる。」と、 同【0032】には、 「また、頭付きスタッド11の頂部の位置に関しては、図3に示すように、段差によって梁材軸直交方向において一方側よりも上方にある側の床スラブの下面よりも50mm以上上方に位置するよう頭付きスタッド11の高さを規定し、さらに鉄骨梁5の上面と、段差によって上方側に位置するコンクリート床スラブ13の下面との鉛直方向距離を150mm以内とするのが好ましい。 これによって、地震時の頭付きスタッド接合部の性能維持がより確実なものとなる。」と、 同【0033】には、 「また、図4に示すように、頭付きスタッド11の高さが、段差によってかさ上げされない側のコンクリート床スラブ13の厚さ以上となるようにしてもよい。 頭付きスタッド11の高さをコンクリート床スラブ13の厚さ以上とすることで、図4に示す段差部からひび割れが生じた場合でも、頭付きスタッド11の存在により、上下のコンクリート床スラブ13が分離するような破壊を防止することができる。」と記載され、少なくとも、 「前記頭付きスタッドは、その頂部が、前記コンクリート床スラブにおける前記他方側の下面よりも上方に位置するように設置されていること」として構成された段差を有する床スラブ付き鉄骨梁であれば、頭付きスタッド11とコンクリート床スラブ13の縁部の間のコンクリート29がコーン状に破壊した場合でも、頭付きスタッド11の頂部付近は、健全なコンクリート29に埋設された状態となる。このため、急激な耐力劣化を防ぐことができ、鉄骨梁5に十分な変形能力が期待できるだけの頭付きスタッド11の接合部の性能を維持することができることが記載されているといえる。 また、同【0034】~【0036】、図5~図10では、訂正後の請求項2~4の数値範囲内にある段差を有する床スラブ付き鉄骨梁について、横座屈による鉄骨梁の上フランジの構面外変形を拘束して十分な変形能力を確保できることが記載されている。 したがって、本件訂正発明2~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件訂正発明2~4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (3)申立人の特許異議申立書等における主張について 申立人は、特許異議申立書の「(12)理由4(サポート要件)」の「(12-3)請求の範囲まで拡張ないし一般化できないこと」において、「しかし、本件特許の請求項1~3には「頭付きスタッドと床スラブの縁部までの距離」についてのなんら規定していない。 即ち、「頭付きスタッドと床スラブの縁部までの距離」がどの範囲であれば課題が発生するのか、何ら記載も示唆もない。即ち、本件特許の請求項1~3の態様は、課題が発生しない段差を有する床スラブ付き鉄骨梁を含んでいる。 さらに、課題が発生するとしても「頭付きスタッドと床スラブの縁部までの距離」がどの範囲であれば課題が解決できるのかについても、何ら記載も示唆もない。例えば、頭付きスタッドと段差の位置関係が請求項1~3の態様であったとしても、「頭付きスタッドと床スラブの縁部までの距離」が短い場合は(極めて短い場合を想定すれば、より分かり易い。)、スタッドと床スラブの縁部の間のコンクリートが破壊することは、当業者であれば容易に推察されることは明白である。 従って、出願時の技術常識に照らしても、本件特許請求項に記載された範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されていないため、本件特許請求項1~3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」と主張している(37頁25行~38頁10行)。 (4)主張の検討 上記(3)の主張について検討する。 頭付きスタッドと床スラブの縁部までの距離が規定されていなくても、発明の課題を理解できることは上記(2)で説示したとおりである。 よって、上記申立人の主張は妥当ではないため、採用することができないから、申立理由4により、訂正後の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。 (5)小括 以上のとおりであるから、申立理由4はその理由がない。 第9 むすび 以上のとおり、令和6年5月30日付け取消理由通知書に記載した取消理由、同年11月20日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項2~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項1は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てのうち、当該請求項1に係る特許に対する申立ては、その対象が存在しないものとなった。そのため、当該申立てについては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700186

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