特許異議申立
2024-700265
石膏ボード廃材から金属を回収する方法
- 審判番号
- 2024-700265
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-016785
- 登録番号
- 7349924
- 請求日
- 2024年03月25日
- 審決日
- 2024年07月30日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社トクヤマ
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.121-Y (B09B) / P1651.537-Y (B09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7349924号発明「石膏ボード廃材から金属を回収する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7349924号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7349924号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年2月4日に出願され、令和5年9月14日に特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年3月25日に特許異議申立人である金澤 毅(以下「申立人」という。)により、全請求項に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明及び本件明細書の記載
1 本件発明
本件発明は、次のとおりの発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)である。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボード廃材から磁性物質を回収する方法であって、
石膏ボード廃材を破砕して破砕物を得る破砕工程と、
破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う分離工程と、
分離工程で得られた高比重成分を磁選機にかけ、前記磁性物質を吸引して回収する工程を含むことを特徴とする石膏ボード廃材からの磁性物質の回収方法。
【請求項2】
磁性物質がステンレスである請求項1記載の磁性物質の回収方法。
【請求項3】
石膏ボード廃材の破砕をせん断型破砕機で行う請求項1または2記載の磁性物質の回収方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の方法で石膏ボード廃材から磁性物質の回収を行うと共に、前記低比重成分側として回収された石膏は、加熱して半水石膏及び/又はIII型無水石膏とし、次いで水に溶解させた後に二水石膏粒子として析出させ、該二水石膏粒子を含む石膏スラリーを固液分離に供して二水石膏粒子を回収する石膏ボード廃材のリサイクル方法。」
2 本件明細書の記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石膏ボード廃材を前記したような方法でリサイクルする際、これら異物は事前に取り除く必要がある。例えば鉄やステンレスなどの重量異物は二水石膏析出槽内で沈降し、装置の安定運転を妨害する恐れがある。一方、このような鉄やステンレスは、それ自体がリサイクルの対象物として有価で扱われ、これを効率的に回収できれば有用である。
【0006】
当該異物は、比較的形状の大きなものであれば、粉砕前あるいは粉砕後に手作業でより分けることも可能であるが、クギやネジなどの小さなものを十分に取り除くことはできない。
【0007】
また様々な物質が含まれる混合物中から磁性物質を回収する方法としては、従来から磁選機が使用されている。しかしながら本発明者等の検討によれば、廃石膏粉に含まれる磁性物質を磁選機で回収しようとしても、特に広く使用されているオーステナイト系ステンレスなどの磁性の弱い物質は十分に回収できないという問題があった。さらにこの方法では、磁選機での回収物中に多量の石膏粉が混入することもあった。
【0008】
従って本発明の目的は、石膏ボード廃材から効率的に上記鉄やステンレス等の磁性物質を回収する方法を提供することにある。」
「【0013】
図1,図2に本発明を実施するための一例を示す。図1は、磁性異物の回収工程を含む石膏ボード廃材の処理工程を示す。受け入れた石膏ボード廃材中にはステンレスなどの磁性異物が混入している。また場合により、砂や砂利なども混入している。
【0014】
受け入れた石膏ボード廃材は、2軸のせん断型破砕機から成る1次破砕機2により破砕する。ステンレスなどの金属や砂利等を含むボードでも、せん断破砕機を用いると容易に破砕できる。またせん断型破砕機を用いると金属自体の破砕も容易なため、磁選機で回収しやすい大きさに破砕できる。
【0015】
1次破砕により石膏ボード廃材は、ステンレスのクギやネジ、砂や砂利などの小さな異物と破砕された石膏とから成る比較的細かい粉粒体と、石膏ボード廃材が塊状に破砕された大きめの塊状体(ボード片)とに分かれる。当該塊状体は繰り返し破砕にかけて細かくし、全量を後述する比重選別機にかけてもよいが、粉砕効率や各成分の分離効率の点で、いったん粉粒体と塊状体とが分離されるように篩にかけ、比重選別機にかけるまでは別々に扱うことが好ましい。」
「【0016】
当該篩は公知の篩を適宜選択して使用できるが、効率の点で乾式の振動篩が好ましい。篩4の目開きは、塊状体が篩下へ通過せず、かつ石膏粉による目詰まりが生じないように定める。例えば目開き6mmの篩では、石膏粉による目詰まりは生じず、かつ塊状体は篩下には見られなかった。目開きを2mmよりも小さくすると、石膏粉による目詰まりの可能性が増し、目開きを10mmよりも大きくすると塊状体が篩下に混入する可能性が増す。これらのことから、目開きは例えば2mm以上10mm以下とし、好ましくは4mm以上10mm以下とし、最も好ましくは4mm以上8mm以下とする。
【0017】
なお、石膏ボード廃材に含まれる紙は、破砕機にかけても比較的大きな形状を保つため、このような篩にかけた場合、当該紙成分は、通常は篩上成分となる。
【0018】
本発明においては上記篩を通過した成分(篩下成分)を、エアテーブル式の比重選別機に供給する。比重選別機12の構造は図2に示す。即ち、多孔板、スクリーン等から成り、水平面から傾斜し、かつ風が通るデッキ(盤面)28に、上記の篩下成分を載せる。送風機30によりデッキ28の下から上へ風を通し、石膏を揺動させる。また加振機32によりデッキ28を振動させる。加振する方向を図2の黒矢印で示し、デッキ28上の混合物に、斜め上側への衝撃が加わるように加振する。
【0019】
従来、石膏ボード廃材の破砕物の分離にエアテーブル式の比重選別機を用いる際には、高比重成分側に石膏が、低比重成分側に紙が分離されるように設定して、石膏と紙の分離を行うことが行われてきたが、本発明においては、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように選別機の設定をして分離を行う。なお、前記のように篩にかけることにより紙は篩上成分として分離されているため、低比重成分側に混入する紙は1%以下である。また、石膏ボード廃材中に前記した砂や砂利が含まれる場合には、当該砂や砂利も高比重成分側となるように設定することが好ましい。
【0020】
上記のように設定したエアテーブル式の比重選別機において、比重が小さい石膏は、気流により揺動し、デッキ28の振動の影響を余り受けず、デッキ28の下側へ移動する。これに対して、重量成分(ステンレス等の金属や砂利など)は振動によりデッキ28から跳ね上げられ、デッキ28の上側へ移動する。また石膏の微粉は風に乗って上方へ移動し、図示しない集塵機により集塵する。このようにして石膏と、ステンレス等の金属や砂利等の重量成分とが簡易に分離される。
【0021】
このようなエアテーブル式の比重選別機は一般に市販されており、適宜のものを使用できる。例えば、ジェイテック株式会社製のT-10型やBX-110型等、MM Nagata Coal Tech株式会社製のNCTAT013、富士鋼業株式会社製のVS1500H型、原島電機工業製のMH-510シリーズやMH-310シリーズ、株式会社松岡エンジニアリング製のGSシリーズ、GSDシリーズ、原田産業株式会社製のSH型、SHB型等のエアテーブル式比重選別機が使用できる。
【0022】
重量成分として回収された側の成分には、上述のステンレス等の各種金属からなる磁性物質と、少量の石膏や砂、砂利等の非磁性の物質が含まれた混合物となっているのが通常である。本発明においては、この混合物を磁選機にかけて磁性物質を回収する。本発明においては、上記したエアテーブル式比重選別機により大部分の石膏粉が分離されているため、ステンレスなどの磁性の弱い物質でも磁選機で容易に回収ができる。なお、石膏ボード廃材には、強磁性物質である鉄製金具などが含まれている場合もあり、このうち最初から小さかった部材や、前記破砕により小さくなり篩を通過するような大きさになったものも、当然ここで磁選機により回収される。
【0023】
当該磁選機は公知の磁選機を適宜使用すれば良く、例えば市販のものとしては、吊下げ式磁選機、ドラム式磁選機、プーリー式磁選機等が使用できる。ステンレスなどの磁性の弱い物質を分離するには、分離する物質と磁石との距離ができるだけ小さい方がより効率よく分離できる。このため、吊下げ式磁選機よりも、ドラム式およびプーリー式磁選機の方がより好適である。磁石は、永久および電磁タイプどちらでも使用可能である。」
「【符号の説明】
【0037】
2 1次破砕機
4 篩
6 磁選機
8 2次破砕機
10 篩
11 磁選機
12 エアテーブル式比重選別機
14 か焼機
16 混合槽
18 析出槽
20 送液ポンプ
22 篩
24 固液分離装置
28 デッキ
30 送風機
32 加振機
【図1】
[図:0001413365000001.jpg]
【図2】
[図:0001413365000002.jpg]
」
第3 異議申立ての概要及び証拠方法
1 異議申立ての概要
(1)申立理由1(進歩性欠如)
本件発明1~4は、下記2の甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件違反)
本件特許に係る出願は、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性違反)
本件特許に係る出願は、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法の一覧
申立人は、次の甲第1号証~甲第8号証を提出した。甲第1号証~甲第8号証を、以下「甲1」~「甲8」ともいう。
甲第1号証:平成21年度環境省請負業務 平成21年度廃石膏ボードの再資源化促進方策検討業務調査報告書、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部、平成22年3月、第18頁~24頁
甲第2号証:特開2008-178807号公報
甲第3号証:特開2000-70915号公報
甲第4号証:特開2003-320311号公報
甲第5号証:特開2006-159052号公報
甲第6号証:特開2002-326055号公報
甲第7号証:特開2002-11373号公報
甲第8号証:特開2018-39727号公報
第4 甲号証等の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
(1)「
[図:0001413365000003.jpg]
」(第18頁)
(2)「
[図:0001413365000004.jpg]
・・・
[図:0001413365000005.jpg]
」(第19頁)
(3)「
[図:0001413365000006.jpg]
」(第20頁)
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
高速旋回される多段方式の鎖の打撃によって被破砕物を破砕処理する縦型円筒状の破砕室を有し、且つ、この破砕室の下部に熱風又は空気を旋回流として供給し得る手段を備えた下部供給口を有する鎖打撃式破砕乾燥機において、下部供給口から空気を供給しながら、石膏、紙、釘等の複合廃棄物からなる廃石膏ボードを破砕し、比重の軽い石膏及び紙は上記空気と共に上方から回収し、次いで篩い分けにより石膏と紙に分離回収し、比重の重い釘等の金属分は破砕機下から分離回収することを特徴とする廃石膏ボードの分離回収方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は鎖打撃式破砕機を用いて、廃石膏ボードの破砕、乾燥、分離回収を同時に行うことが出来、各構成分を分離回収することにより、リサイクルが可能となる廃石膏ボードの分離回収方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし篩い分けオーバー品として回収される紙は、石膏との分離が不充分なため、リサイクルが難しいという問題がある。又、建築廃材として出される石膏ボードについては、水分が多いと言うこともあり、乾燥機が別に必要となる。
【0004】
上記問題を解消するため、本発明は、廃石膏ボードのリサイクルに鎖打撃式破砕乾燥機を使って、破砕、乾燥、分離を同時に行うことにより、設備機械の台数を減らし、紙と石膏の分離を向上させ、紙のリサイクルを図れる廃石膏ボードの分離回収方法を提供することを課題とした。」
「【0011】
図1及び図2は、本分離回収方法で使用する鎖打撃式破砕乾燥機であるが、ベース1上に駆動部本体2を取付け、その上に破砕乾燥容器3を固定する。破砕乾燥容器3内には主軸4を垂直に配置し、主軸には、鎖取付けホルダー5を取付け、鎖6はシャックル等で簡単に取付け出来るようになっている。
【0012】
鎖6は、主軸を高速で回転した際、放射状に広がり、供給口7においては、被処理物は供給スクリュー等の定量供給装置で供給され、次いで被処理物を細かく破砕し、破砕しながら、石膏、釘、紙に分離される。
【0013】
破砕分離された被処理物は、比重の重い釘は下部排出口8から、比重の軽い細かく砕かれた石膏と紙は、容器下部に設けてある熱風供給口8から供給される熱風と共に上部排出口9から排出される。
【0014】
被処理物の供給口7は、破砕容器内での紙と石膏の分離が充分に行なわれるように滞留時間をとるため、容器中位置より下方に設けてある。そして、熱風供給口8は、熱風が旋回流となるよう胴体接線方向に設けてあり、容器内で熱風と被処理物が混合、接触し、被処理物のいない中心部からの吹き抜けを防ぐことにより、効率良く熱交換されるよう配慮されている。これらにより、被処理物の乾燥が速やかに進み、破砕、分離が充分に行われて排出することが出来る。
【0015】
一方、図3に示すように、熱風発生炉14で作られる熱風と共に鎖打撃式破砕乾燥機10の上部から排出される石膏と紙は、サイクロン11にて回収され、サイクロン下に配置された篩い12により、石膏粉と紙に分別回収される。又、サイクロンから排出される熱風中にも微細な石膏粉が含まれているので、バグフィルタ13により回収され、石膏のリサイクルに回される。
【0016】
ダンパ15は、破砕容器内の風速が速すぎて充分な破砕のための滞留時間がとれない場合に絞るために使用する。なお、図3中、16は廃石膏供給スクリュー、17は釘等の異物回収箱、18は排気ファンを示す。
【0017】
以上のことにより、鎖打撃式破砕乾燥機を使って、廃石膏ボードの石膏と紙と釘に分離回収する事が出来、石膏のリサイクルは勿論のこと、紙のリサイクルも可能となる。」
「【図1】
[図:0001413365000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001413365000008.jpg]
」
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】 建築廃材として発生した石膏ボードを所定粒度以下に破砕して、石膏ボード選別原料とする破砕工程と、該石膏ボード選別原料を所定粒度範囲の1又は複数の慣性選別原料に選別する振動篩工程と、該慣性選別原料から有機質物を除去するための1又は複数の慣性選別工程とからなることを特徴とする石膏ボードのリサイクル処理方法。
【請求項2】 上記破砕工程で破砕された石膏ボード選別原料から磁力を利用して磁性金属を選別除去する磁力選別工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の石膏ボードのリサイクル処理方法。
【請求項3】 上記慣性選別工程で有機質物を除去された慣性選別原料から非磁性金属を除去するための非磁性金属検知工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2記載の石膏ボードのリサイクル処理方法。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築廃材として発生する石膏ボード等を再生資源として再利用するために破砕選別するリサイクル処理方法及び装置に関する。」
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来の装置の問題点に鑑みてなされたもので、建築廃材として発生した石膏ボードを、粒径による選別(振動篩)だけでなく、比重による選別(慣性選別)を行うことで、石膏原料、紙類及び金属類に効率よく高精度かつ高純度で選別し、また、破砕サイズによって分別することで、需要者の要求に合わせた精度又は純度の再生石膏製品を供給可能とし、さらに、磁力選別及び金属検知によって、釘や鋲として混入している鉄・ステンレスなどの磁性金属はもちろん、非磁性金属、例えば非鉄金属の銅・アルミニウムなどが混入している場合でも各種金属を高精度除去して異なる物質ごとの選別処理を可能とし、一台の破砕機のみで細破砕処理可能とすることで、低コスト及び省スペースを実現し、焼却処理を不要とすることで環境資源の保護に貢献し、且つ量的時間的処理能力及び石膏原料の回収歩留りを大幅に向上させた石膏ボードのリサイクル処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の石膏ボードのリサイクル処理方法は、建築廃材として発生した石膏ボードを所定粒度以下に破砕して、石膏ボード選別原料とする破砕工程と、該石膏ボード選別原料を所定粒度範囲の1又は複数の慣性選別原料に選別する振動篩工程と、該慣性選別原料から有機質物を除去するための1又は複数の慣性選別工程とからなることを特徴とする。
【0010】上記破砕工程で破砕された石膏ボード選別原料から磁力を利用して磁性金属を選別除去する磁力選別工程を行うことで鉄やステンレス等の磁性金属を効率良く除去でき、選別の精度及び純度を高めることができる。
【0011】上記慣性選別工程で有機質物を除去された慣性選別原料から非磁性金属を除去するための非磁性金属検知工程を行うことで、銅やアルミニウム等の非磁性金を効率良く除去でき、選別の精度及び純度を高めることができる。」
「【0028】図1において、134は本発明の石膏ボードのリサイクル処理方法及び装置の選別原料である石膏ボードである。
【0029】136は、該選別原料134を所定サイズ以下、例えば6~10mm以下の石膏ボード選別原料に破砕するための破砕機である。この破砕機136は選別原料134を所定サイズ以下に破砕できるものであれば適用可能であるが、例えば、スクリューとカッタを具備した構造の破砕機が好適に用いられる。この形式の破砕機によれば、スクリューによって圧送されてきた選別原料をカッタ(回転刃)によって破砕するので、選別原料134を所定サイズ以下に確実に破砕できる有利さがある。
【0030】138は、該破砕機136により破砕された該選別原料134から磁性金属140を選別するための磁力選別機であり、142は該磁性金属140が除かれた該選別原料134を1又は複数の慣性選別原料、例えば、粒度2mm未満の粉体選別原料と粒度2~10mmの粒体選別原料とに選別するための振動篩である。
【0031】また、この振動篩142においては、破砕機136を通過したにもかかわらず、例えば硬い金属と一緒に処理されたために所定サイズ以下に破砕されなかった大きいサイズのままの未破砕選別原料も選別されるが、この未破砕選別原料は再度破砕する必要があるため、破砕機136に再び投入される。この未破砕選別原料は所定サイズ以下に破砕されない限り、繰り返し破砕機136に投入される。
【0032】そのため、破砕機136を一台設置してあれば、選別原料134を所定サイズ以下に確実に破砕することができ、破砕機136を複数台設置する必要がないというメリットがある。
【0033】144は、該振動篩142により選別された粉体選別原料から有機質物156を選別するための粉体慣性選別機であり、146は該振動篩142により選別された粒体選別原料から有機質物156を選別するための粒体慣性選別機である。
【0034】148は、該粉体慣性選別機144により該有機質物156が除かれた該粉体選別原料から非磁性金属150を検知除去するための金属検知機である。149は、該粒体慣性選別機146により該有機質物156が除かれた該粒体選別原料から非磁性金属150を検知除去するための金属検知機である。なお、該金属検知機148及び149は、非磁性金属150を検知除去する作用を有すればよいもので、公知の金属検知機を適用することができる。
【0035】152は、該金属検知機148により非磁性金属150を除いた再生石膏粉体製品で、154は、同様に該金属検知機149により非磁性金属150を除いた再生石膏粒体製品である。」
「【0047】図2において、50は慣性選別機である。該慣性選別機50は、架台52上に取りつけられた架枠54に設けられている。56は該架枠54に設置された送風手段、例えば、送風ファン装置で、該送風ファン装置56の上方に設けられた選別移動床58の下面に空気を送る作用を行う。55は該送風ファン装置56のための風胴である。該選別移動床58は、図示したごとく、適宜傾斜して設けられる。この傾斜角度は必要に応じて適宜設定される。60は該送風ファン装置56を駆動するためのモータである。
【0048】該選別移動床58の両側部及び上端部には枠体62が設けられ、該選別移動床58と枠体62によって振動箱64が形成されている。前記架枠54の上面の上端部及び下端部にはそれぞれ上端支持柱(図示せず)及び下端支持柱(図示せず)が立設されている。該枠体62の側面上端部は上部アーム(図示せず)によって該上端支持柱に吊持されている。該枠体62の側面下端部は下部アーム(図示せず)によって該下端支持柱に吊持されている。
【0049】66は偏心クランクで、振動機68を介してモータ70によって駆動される。該偏心クランク66の先端部は該振動箱64の上端下面部に連結されている。したがって、該偏心クランク66の偏心運動により、該振動箱64及び選別移動床58は、上端及び下端方向に振動可能とされている。
【0050】72は該振動移動床の上面に選別原料を投入するための原料投入口である。74は該選別移動床58の上端部に形成された比重の大きい重量物の排出口である。76は該選別移動床58の下端部に形成された比重の小さい軽量物の排出口である。
【0051】図2において、78は該選別移動床58の下端部に設けられた集塵配管で、その下部には集塵風量を調節する集塵風量調節板80が設置されている。82は原料投入口72の下部に連設された投入原料の飛散を防止するフードである。84はファン装置56に連通する小クズ出口である。」
「【図1】
[図:0001413365000009.jpg]
」
「【図2】
[図:0001413365000010.jpg]
」
4 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【0020】この廃家電製品の処理方法は、廃家電製品11を所定の大きさに破砕する破砕工程1と、前記破砕工程1で破砕された破砕物から風力選別により発泡樹脂12を取り出す第1風力選別工程2と、前記第1風力選別工程2で発泡樹脂12を取り出された破砕物から磁気選別により鉄系金属13を取り出す磁力選別工程3と、前記磁力選別工程3で鉄系金属13が取り出された破砕物から渦電流選別により非鉄金属14を取り出す渦電流選別工程4と、前記渦電流選別工程4で非鉄金属14が取り出された破砕物から被覆銅線15を分離する被覆銅線分離工程5と、前記被覆銅線分離工程5で被覆銅線15を分離された破砕物から風力選別により小塊状金属16を取り出す第2風力選別工程6と、前記第2風力選別工程6で小塊状金属16が取り出された破砕物から振動篩により微小な銅線17を取り出す篩い選別工程7とを有している。」
「【0028】前記被覆銅線分離工程5は、前工程で非鉄金属14が回収された破砕物から被覆銅線分離装置を用いて被覆銅線15を分離する工程である。
【0029】ここで使用する被覆銅線分離装置は、図3に示すエアテーブル型乾式比重形状分離装置である。」
(当審注:段落【0029】の「図3」は、「図2」の誤記と判断した。)
「【0030】エアテーブル型乾式比重形状分離装置21は、破砕物を選別するためのテーブル22と、このテーブル22に振動を付与するための振動付与手段(図示せず)と、前記テーブル22に対して空気を供給する空気供給手段(図示せず)を有している。
【0031】前記テーブル22は、一端側に破砕物投入部23が設けられ、他端側に破砕物排出部24が設けられ、前記破砕物投入部23から投入された破砕物がテーブル面上を移動して前記破砕物排出部24から排出されるようにしてある。
【0032】テーブル22のテーブル面は、破砕物投入部23側から破砕物排出部24側に向かって下向きに傾斜するとともに、テーブル上での破砕物の移動方向と略直交する方向の一方の側に下向きに傾斜している。
【0033】また、テーブル22は前記振動付与手段によって、破砕物の移動方向と略直交する方向で略水平方向に振動する。
【0034】さらに、テーブル面には空気吹き出し孔が貫設され、この空気吹き出し孔には空気供給手段からの空気が供給されて、上昇空気流28が形成されている。
【0035】なお、テーブル面には、破砕物の移動方向と略直交する方向に配設された複数のリッフル23が設けられており、破砕物の急激な移動を防いでいる。
【0036】このようなエアテーブル型乾式比重形状分離装置21のテーブル面に破砕物を投入すると、比重及び形状の点から上昇空気流28の影響が小さく、テーブル面による摩擦力の大きい物体は、テーブル面の振動による運搬力によって振動方向の傾斜上方に移動し、上方回収部26から回収される。一方、比重及び形状の点から上昇空気流28の影響が大きい等によってテーブル面による摩擦力の小さい物体は、テーブル面を滑落して振動方向の傾斜下方に移動し、下方回収部27から回収される。」
「【図1】
[図:0001413365000011.jpg]
」
「【図2】
[図:0001413365000012.jpg]
」
5 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
「【請求項1】
フィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を含むプラスチック系残さ物から、少なくとも前記フィルム状物、前記銅線、前記水に濡れると見掛け比重が変化する材料を乾式選別手段によって予め除去した後に、湿式選別手段によりプラスチックの比重差による材種選別を行うことを特徴とする再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項2】
前記乾式選別手段として、風力選別とエアテーブルを併用することを特徴とする請求項1記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項3】
前記乾式選別手段として、前記風力選別の後に前記エアテーブルを配置することを特徴とする請求項2記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項4】
前記乾式選別手段として、前記風力選別および前記エアテーブルの前に篩いを行うことを特徴とする請求項2記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項5】
前記乾式選別の前に、粉砕機による粉砕を行うことを特徴とする請求項1記載の再利用可能プラスチック生産方法。」
「【0008】
実施の形態1.
図1~9は実施の形態1を示す図で、図1は家電機器やOA機器起源のプラスチック系残さ物から再利用可能なプラスチックを回収する回収方法を示す図、図2は粉砕機5の構成を示す図、図3は風力選別機6の構成を示す図、図4は高磁力磁選機の構成を示す図、図5は篩い機4の構成を示す図、図6は風力選別機2の構成を示す図、図7は風力選別機2を用いた実験結果の一例を示す図、図8はエアテーブル3の構成を示す図、図9は風力選別とエアテーブルを併用した場合の実験結果の一例を示す図である。」
「【0023】
これは木片や、硬めのクッション材やウレタンフォームなど見掛け比重が0.1~0.8程度と比較的大きい軽質物が風力選別では精度良く除去できないためである。このような物を除去するために図8に示すようなエアテーブル3を併用する。
【0024】
図8に示すように、エアテーブル3では比重が0.1以下の極めて軽い物はテーブル上で風に吹かれて舞い上がり挙動が安定しないが、比重が0.1以上であれば比重差により精度良く軽質物を分離することができる。」
「【図1】
[図:0001413365000013.jpg]
」
「【図8】
[図:0001413365000014.jpg]
」
6 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】建築現場や解体現場から排出される廃棄物中、石膏ボード系のものを破砕してそれを省資源燃砂物として道路の路床上に敷設する路盤材としてリサイクルすることが公知である(例えば、特開2001-87750)。
【0003】前記の場合、廃棄物は破砕と篩分けを繰り返すことにより路盤材として使用可能な粒度のものに分別される。ところが、石膏ボード系の廃棄物には石膏ボードの施工に使用していた釘が混入していることが多く、リサイクルにあたってこの釘を分別することが不可欠であった。そして、そのための手段として磁力により釘を吸着して分別する磁選機が公知であった(例えば、特開平5-146708)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、近年、建築においては旧来の鉄やステンレス製の釘に代わり、アルミニウム製の釘が多用されており、この場合は磁性体である鉄やステンレスのように磁選機に反応しないので、手作業で分別しなくてはならない問題があった。」
7 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 石膏ボード廃材を破砕する一次破砕装置と、前記一次破砕装置で生じた一次破砕材を石膏と石膏付き紙とに分別する一次分別装置と、前記一次分別装置で分別された石膏付き紙を破砕する二次破砕装置と、前記二次破砕装置で生じた二次破砕材を石膏と紙とに分別する二次分別装置とを備えたことを特徴とする石膏ボード破砕分別設備。
【請求項2】 前記一次破砕装置が一軸式剪断破砕装置であり、前記二次破砕装置が二軸ローラ式破砕装置である請求項1記載の石膏ボード破砕分別設備。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石膏ボードの廃材を破砕して石膏分と紙分とに分離する設備に関する。」
8 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
「【請求項1】
(a)出発原料とする二水石膏を湿式焼成又は乾式焼成して半水石膏にする半水化工程、
(b)前記半水石膏を再結晶化反応槽内の水性スラリーへ供給する仕込み工程、
(c)前記半水石膏を水和・再結晶化させて前記原料とする二水石膏とは別の結晶形態である改質二水石膏とする再結晶化工程、
(d)前記改質二水石膏の一部を前記再結晶化反応槽より抜き出す抜き出し工程を有する二水石膏の連続式改質方法であって、
少なくとも前記(b)乃至(d)の工程を連続的又は間歇的に行うこと、
前記(b)の仕込み工程における前記半水石膏の供給量と、前記(d)の抜き出し工程における前記改質二水石膏の抜き出し量とをいずれも、一時間当り、前記再結晶化反応槽内の全石膏量の20%以下にすること、
前記(c)の再結晶化工程において、前記再結晶化反応槽中で水性スラリーが固液分離しないよう均一になるように攪拌しつつ一定の温度に保持すること、
前記(c)の再結晶化工程において、前記再結晶化反応槽中における水性スラリーの温度を、90℃以下にすること、
前記(c)の再結晶化工程において、前記再結晶化反応槽中に種晶となる二水石膏を供給すること、かつ、
前記種晶となる二水石膏を、前記再結晶化反応槽とは別系統の、半水石膏スラリーから再結晶化して二水石膏を得る反応槽で、前記半水化工程で焼成して一旦半水石膏とした後の半水石膏の一部を用い、半水石膏スラリーから再結晶化して得ること、
を特徴とする二水石膏の連続式改質方法。
・・・
【請求項12】
さらに、前記(c)の再結晶化工程において、再結晶化した二水石膏スラリーを前記再結晶化反応槽から抜き出した後に、(e)不溶性不純物の少ない、粒径の大きい二水石膏を分別する分別工程、を設けた請求項1~11のいずれか1項に記載の二水石膏の連続式改質方法。
【請求項13】
前記(e)の分別工程において、不溶性不純物の少ない、粒径の大きい二水石膏を分別するための、二水石膏を水中で撹拌及び静置し、その沈降速度の速い大きい結晶を分離する工程と、前記で分別した二水石膏を脱水・洗浄して最終生成物とする脱水洗浄工程とを設ける請求項12に記載の二水石膏の連続式改質方法。」
「【0015】
以下、好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明で改質の対象とする二水石膏は、石膏製品の原料として広く用いられているものをいずれも使用できる。具体的には、天然石膏、合成石膏、種々の化学プロセスの副産物として得られる各種の副生石膏、廃石膏型、或いは一戸建て、集合住宅若しくはマンション等の新築や解体時に発生する石膏ボード廃材に由来する廃石膏など、二水石膏であれば、いずれのものも原料として使用できる。本発明では、上記に挙げたような原料とする二水石膏(以下、「原料石膏」と呼ぶ)を、簡易な連続処理方法で、各種用途に最適な石膏原料として利用が可能な、これまで一般的には得ることができなかった大きな結晶粒径を有する純度の高い粒径の揃った二水石膏に改質する。本発明の方法は、少なくとも、上記に挙げたような原料石膏を焼成して半水石膏にする半水化工程と、上記半水石膏を再結晶反応槽内の水性スラリーへ供給する仕込み工程と、上記半水石膏を水性スラリー中で水和・再結晶化して、原料石膏とは別の結晶形態の改質二水石膏(以下、改質二水石膏と呼ぶ)にする再結晶化工程と、上記改質二水石膏の一部を上記再結晶反応槽より抜き出す抜き出し工程とを有する。そして、上記再結晶化工程において、上記再結晶化反応槽中で、水性スラリーの固形分と液分が分離せず、均一分散するように撹拌しつつ、一定の温度(好ましくは、80℃よりも高く、かつ、90℃以下の温度)に保持して再結晶化する。本発明では、上記再結晶化反応槽への半水石膏の供給量及び再結晶化した改質二水石膏の抜き出し量が実質的に等量になるよう制御し、連続して又は間歇して供給及び抜き出しを行い(好ましくは、一時間当りの供給量及び抜き出し量のいずれもが再結晶反応槽内の全石膏量の20%以下となるようにする)、連続処理によって上記半水石膏を水和・再結晶化して改質二水石膏にする。以下、詳述する。」
第5 申立理由1(進歩性欠如)についての当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の第18~20頁には、廃石膏ボードの紙・石膏分離技術が記載されており(上記第4の摘記1(1)~(4)を参照)、図2.3-3に記載されたシステムの分離フロー及び第19~20頁の各工程を説明した記載に着目して整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「1次分別装置で廃石膏ボードを粗割りしてボード片にする工程と、ボード片を2次分別装置で揉み解して石膏・紙を分離しやすい状態にする工程と、2次分別装置で処理されたボード片から磁力選別機にて磁性物を除去する工程と、磁力選別機にて磁性物が除去されたものを3次分別装置にて、10mmオーバーのものは紙として排出し、10mmアンダーのものは微粒子化装置に送る工程と、微粒化装置において3mmアンダーのものを石膏として排出スクリューコンベアで排出し、3~10mmのものを専用出口から排出する工程とを含む、紙と石膏の分離方法。」
2 対比・判断
(1)甲1発明との対比・判断
ア 対比
甲1発明と本件発明1を対比する。
甲1発明の「1次分別装置で廃石膏ボードを粗割りしてボード片にする工程」は、本件発明1の「石膏ボード廃材を破砕して破砕物を得る破砕工程」に相当する。
また、甲1発明の方法は、「2次分別装置で処理されたボード片から磁力選別機にて磁性物を除去する工程」を有するから、「石膏ボード廃材からの磁性物質の回収方法」といえる。
さらに、甲1発明の「磁力選別機」による「磁性物」の「除去」は、「磁選機にかけ、磁性物質を吸引して回収する工程」といえるから、甲1発明と本件発明1とは、「破砕工程の後に、磁選機で、磁性物質を吸引して回収する工程」を含む点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「石膏ボード廃材から磁性物質を回収する方法であって、
石膏ボード廃材を破砕して破砕物を得る破砕工程と、
破砕工程の後に、磁選機で、磁性物質を吸引して回収する工程を含む、
石膏ボード廃材からの磁性物質の回収方法。」
<相違点1>
本件発明1は、破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う分離工程を含むのに対し、甲1発明は、そのような分離工程を含まない点。
<相違点2>
磁選機で、磁性物質を吸引して回収する工程が、本件発明1は、エアテーブル式の比重選別機で分離された高比重成分に対して行われるのに対して、甲1発明は、比重選別を経ていない石膏ボード片に対して行われる点。
イ 判断
相違点1についてまず検討する。
甲2の段落【0003】には、「廃石膏ボードのリサイクルに鎖打撃式破砕乾燥機を使って、破砕、乾燥、分離を同時に行うことにより、設備機械の台数を減らし、紙と石膏の分離を向上させ、紙のリサイクルを図れる廃石膏ボードの分離回収方法」が記載されており、同段落【0011】~【0014】、図1には、上記分離回収方法で用いる鎖打撃式破砕乾燥機では、回転する鎖によって、被処理物を細かく破砕されながら、石膏、釘、紙に分離され、比重の重い釘は下部排出口から排出され、比重の軽い細かく砕かれた石膏と紙は、容器下部に設けてある熱風供給口から供給される熱風と共に上部排出口から排出される旨記載されている。
そして、前記鎖打撃式破砕乾燥機は、空気を用いた比重選別機であり、石膏は、低比重成分として分離され、石膏より高比重である釘は、高比重成分として分離されるものと認められる。
しかしながら、甲2で比重分離に用いられる鎖打撃式破砕乾燥機は、設備機械の台数を減らすために、破砕、乾燥、分離を同時に行う装置であり、エアテーブル式の比重選別機を備えるものでもない。
してみれば、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1発明において回収ステップで回収されたものに、同一装置内で破砕と比重選別が連続的に行われる甲2に記載の鎖打撃式破砕乾燥機内の比重選別部分のみを破砕部分から分離して適用して、エアテーブル式の比重分離機等で比重分離を行うことを想起するとはいえない。
また、甲3の段落【0008】には、建築廃材として発生した石膏ボードを、粒径による選別(振動篩)だけでなく、比重による選別(慣性選別)を行うことで、石膏原料、紙類及び金属類に効率よく高精度かつ高純度で選別するリサイクル処理方法が記載され、同段落【0047】~【0051】、図2には、上記慣性選別は、選別移動床58と、選別移動床58の下面に空気を送る送風ファンとを備えた慣性選別機50で行われ、比重の大きい重量物は、選別移動床58の上端部に設けられた排出口74から排出され、比重の小さい軽量物は、選別移動床58の下端部に設けられた排出口76から排出され、同段落【0033】、図1には、慣性選別では、振動篩142により選別された粒体選別原料から有機質物156の選別が行われることが記載されている。
ここで、甲3に記載された慣性選別機50は、エアテーブル式の比重選別機と認められるところ、慣性選別機50は、粉体選別原料から、有機質物とそれ以外のものを分離するものであり、甲3の【0008】~【0009】、【0011】の記載から、有機質物は、紙であり、紙以外のものは、石膏原料と金属類と認められるから、慣性選別機50は、紙と、石膏原料を含むものとを分離するものであるといえる。そして、紙と石膏原料を、このような慣性選別機で分離する場合、紙が低比重成分側に分離され、石膏が高比重成分側に分離されると認められる。
そうすると、甲3には、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う」ことは、記載も示唆もされていない。
さらに、甲4、甲5は、エアテーブル式の比重選別機が周知であることを示す文献であり、甲4、甲5のいずれにも、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う」ことについては記載も示唆もされていない。
また、甲6~甲8にも、そのような比重分離ステップを甲1発明に採用する動機付けとなる記載はない。
してみれば、甲1発明において、甲2~甲8に記載された事項に基づいて、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う」ことは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、上記イで検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第24~25頁において、廃石膏ボードの破砕物について、石膏部分と、比重の大きい異物とを分離する際に、比重の違いにより分離することは、甲2及び甲3の記載から本件特許の出願日前の周知慣用技術であり、破砕物を比重により分離する分離装置として、エアテーブル式の比重選別機も甲4及び甲5の記載から本件特許の出願日前既に周知の技術であるから、甲1に記載された発明において、一次破砕材から分離した石膏や、二次破砕材から分離した石膏について、エアテーブル式の比重選別機により金属類を高比重成分として分離することは当業者であれば容易に想到しうることである旨主張する。
しかしながら、甲3には、石膏よりも高比重の金属類を高比重成分、石膏を低比重成分として分離することは記載されておらず、甲2には、破砕機能と比重分離機能とが一体である装置が開示されるに過ぎないことは、上記(1)イで検討したとおりである。また、甲4は廃家電製品からの、甲5はプラスチック系残さ物のエアテーブル式の比重選別機による分離を記載するものであって、廃石膏ボードからの分離を記載するものでもない。
以上のとおりであるから、甲2~甲5の記載をもって、甲1に記載された発明において、エアテーブル式の比重選別機により、石膏を低比重成分に、金属類を高比重成分に分離することを当業者が容易になし得たとする申立人の主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
第6 申立理由2(サポート要件違反)についての当審の判断
1 判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
2 発明の課題
本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0005】~【0008】の記載を参酌すると「廃石膏粉に含まれる磁性物質を磁選機で回収しようとしても、特に広く使用されているオーステナイト系ステンレスなどの磁性の弱い物質は十分に回収できず、磁選機での回収物中に多量の石膏粉が混入することもある従来技術に対して、石膏ボード廃材から効率的に鉄やステンレス等の磁性物質を回収する方法を提供すること」と認められる。
3 判断
本件明細書の段落【0015】には、「1次破砕により石膏ボード廃材は、ステンレスのクギやネジ、砂や砂利などの小さな異物と破砕された石膏とから成る比較的細かい粉粒体と、石膏ボード廃材が塊状に破砕された大きめの塊状体(ボード片)とに分かれる。」と記載されているから、1次破砕されたものには、少なくとも、磁性物質であるステンレスのクギやネジと、砂や砂利などの小さな異物と破砕された石膏とからなる粉粒体が含まれることが読み取れる。
また、同段落【0015】には、「当該塊状体は繰り返し破砕にかけて細かくし、全量を後述する比重選別機にかけてもよいが、粉砕効率や各成分の分離効率の点で、いったん粉粒体と塊状体とが分離されるように篩にかけ、比重選別機にかけるまでは別々に扱うことが好ましい。」との記載があり、比重選別機にかけるまで、粉粒体と塊状体を別々に扱うことが好ましい旨の記載から、篩いにかけて、粉粒体と塊状体を別々に扱うことは必須ではないことが読み取れる。
さらに、同段落【0019】には、エアテーブル式の比重選別機において、「石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように選別機の設定をして分離を行う」ことが記載されているところ、エアテーブル式の比重選別機には、1次破砕により得られた、磁性物質であるステンレスのクギやネジと、砂や砂利などの小さな異物と破砕された石膏とからなる粉粒体が少なくとも供給されるから、石膏は低比重成分側に分離され、磁性物質は高比重成分側に分離されることが読み取れる。
加えて、同段落【0022】には、エアテーブル式の比重選別機で、高比重成分側に分離されたものが磁選機にかけられることが記載されているところ、高比重成分側に分離されたものは、磁性物質の回収を妨げる廃石膏粉が取り除かれたものであるから、従来技術よりも、効率的に鉄やステンレス等の磁性物質を回収できると認められる。
そして、本件発明1は、上記段落【0015】、【0019】、【0022】に記載された「石膏ボード廃材を破砕して破砕物を得る破砕工程」と、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う分離工程」と、「分離工程で得られた高比重成分を磁選機にかけ、前記磁性物質を吸引して回収する工程」を全て含むものであるから、従来技術よりも、効率的に鉄やステンレス等の磁性物質を回収できるものであり、上記発明の課題を解決できるものといえる。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
よって、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2~4についても同様である。
4 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第29~30頁において、「廃石膏ボードについて破砕処理した後、篩分けを行ってから、比重選別機にかけている。また、篩別けの際、得られた篩上と、篩下とで、異なる処理を行ってから比重選別機にかけている。
これは、比重選別機に選別する試料を供給する際、選別する試料内の粒径のばらつきが大きいと、比重以外の影響を受け、適切に選別できないためと考えられる。
そうすると、本件特許発明の課題である「石膏ボード廃材から効率的に上記鉄やステンレス等の磁性物質を回収する方法を提供すること」([0008])を解決するためには、本件特許発明1で規定する、破砕工程と、分離工程との間に、少なくとも篩分けを行い、篩上と、篩下とを個別に比重選別機に供給することが必須の要件であると解される。」と主張する。
しかしながら、上記3で検討したとおり、本件明細書の段落【0015】の「粉砕効率や各成分の分離効率の点で、いったん粉粒体と塊状体とが分離されるように篩にかけ、比重選別機にかけるまでは別々に扱うことが好ましい。」との記載から、篩いにかけて、粉粒体と塊状体を別々に扱うことは必須ではないことが読み取れるし、廃石膏ボードを破砕処理したものには、少なくとも、磁性物質であるステンレスのクギやネジと、砂や砂利などの小さな異物と破砕された石膏とからなる粉粒体を含んでおり、それをエアテーブル式の比重選別機にかけて、石膏を低比重成分として分離することで、高比重成分において、磁性物質の回収を妨げる石膏粉の含有量は、従来技術のものよりも少なくなっていると認められるから、その後段の工程において、従来技術よりも、効率よく磁性物質を磁選機で回収することができると認められる。
よって、本件発明は、廃石膏ボードを破砕処理した後に、篩分けを行うか否かに関わらず、上記発明の課題を解決できるといえるから、上記申立人の主張は採用できない。
4 小括
以上で検討したとおり、本件発明1~4は、発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第7 申立理由3(明確性要件違反)についての当審の判断
1 判断手法
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
2 「エアテーブル式の比重選別機」について
(1)判断
本件発明1は、「エアテーブル式の比重選別機」により比重分離を行うものであるところ、本件明細書の段落【0018】~【0019】、図2には、「エアテーブル式の比重選別機」の具体的な構造や動作が示されており、その具体的な製品についても、同段落【0021】に記載されている。
そうすると、本件発明1における「エアテーブル式の比重選別機」と、そうでないものはとは、当業者であれば、容易に区別できると解されるから、本件発明1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2~4についても同様である。
(2)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第30~31頁において、「本件特許明細書[0018]、[0021]、図2にエアテーブル式の比重選別機の説明がなされているものの、特許発明1では、単に「エアテーブル式の比重選別機」と規定するのみであり、本件特許明細書に開示された構成を有する選別機を意味しているのか、エアテーブルを有する各種比重選別機を指しているのかが明らかではない。」と主張する。
しかしながら、上記(1)でも記載したとおり、本件明細書には、「エアテーブル式の比重選別機」の具体的な構造や動作が示されており、その具体的な製品も示されているから、当業者であれば、本件発明の「エアテーブル式の比重選別機」とそうでないものとは、容易に区別できると解される。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
3 「石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定」することについて
(1)判断
本件発明1は、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う分離工程」を含むものであるところ、本件明細書の段落【0018】~【0019】、図2には、エアテーブル式の比重選別機では、デッキ上の混合物に、斜め上側への衝撃が加わるように、デッキを振動させると同時に、デッキの下から上へ風を通し、石膏を揺動させることが記載されているから、「エアテーブル式の比重選別機」の「設定」とは、デッキの加振の強さやデッキへの送風の強さ等を調整して、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように操作を行うことを意味するのは明らかである。
また、比重選別機のような分離装置で、低比重成分と高比重成分とを分離するといった場合、低比重成分側に高比重成分が不可避に混入してしまう場合や、高比重成分側に低比重成分が不可避に混入してしまう場合に、低比重成分と高比重成分が分離されていないとするような技術常識はなく、むしろ、低比重成分と高比重成分を有意に分離することが比重分離といえるから、「石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように・・・分離を行う」という意味は当業者にとって明確であるといえる。
よって、本件発明1における「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う分離工程」という発明特定事項は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(2)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第31~32頁において、破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定して分離を行う場合に、どのような設定を行うのかが明らかでなく、また、一般的な分離技術において、混入等を生じさせずに、完全に分離することは不可能であることは技術常識であるから、どのような場合に、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定」したといえるのかは明らかではない旨主張する。
しかしながら、上記(1)に記載したとおり、エアテーブル式の比重選別機により、高比重成分と低比重成分を分離する際の「設定」とはどのようなものかは当業者にとって明らかであるし、比重選別機のような分離装置で、低比重成分と高比重成分とを分離するといった場合、低比重成分側に高比重成分が不可避に混入してしまう場合や、高比重成分側に低比重成分が不可避に混入してしまう場合に、低比重成分と高比重成分が分離されていないとするような技術常識はなく、むしろ、低比重成分と高比重成分を有意に分離されることが比重分離といえるから、どのような場合に、「破砕物をエアテーブル式の比重選別機にかけ、石膏が低比重成分側に、磁性物質が高比重成分側となるように設定」したといえるのかは、当業者は明確に把握できる。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
4 小括
以上で検討したとおり、本件発明1~4は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、本件特許に係る出願は、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものとはいえない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700265