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特許異議申立

2023-701009

分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具および表示装置ならびに分散液の製造方法

審判番号
2023-701009
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-066553
登録番号
7243388
請求日
2023年09月22日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2025年07月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友大阪セメント株式会社
  • 【権利者代理人】後藤 仁志
  • 【権利者代理人】荒井 滋人
  • 【異議申立人】三和 優子
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7243388号発明「分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具および表示装置ならびに分散液の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7243388号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。 特許第7243388号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7243388号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成31年3月29日の出願であって、令和5年3月13日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月22日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和 5年 9月22日 :特許異議申立人三和優子(以下「申立人」 という。)による請求項1~7に係る特許 に対する特許異議の申立て 令和 6年 1月12日付け:取消理由通知書(以下、この通知書に係る 取消理由を「第1次取消理由」という。) 令和 6年 3月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以 下、この訂正請求書による訂正を「第1次 訂正」という。)の提出 令和 6年 4月12日付け:訂正拒絶理由通知書 令和 6年 5月16日 :特許権者による意見書の提出 令和 6年 7月 5日 :申立人による意見書の提出 令和 6年 8月23日 :特許権者との面接 令和 6年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下、こ の通知書に係る取消理由を「第2次取消理 由」という。) 令和 6年11月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以 下、この訂正請求書による訂正を「本件訂 正」という。)の提出 なお、第1次訂正に係る請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。 また、当合議体は、申立人に対して、本件訂正に係る請求について、特許法第120条の5第5項の規定に基づき相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所として特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、それぞれ一群の請求項である訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕に対して請求されている。 (1) 訂正事項1 請求項1に「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、前記分散媒が、疎水性溶媒を含み、前記水の含有量は、10ppm以上300ppm以下であり、前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量は、前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量に対し、50質量%以下である、分散液。」と記載されているのを、「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、前記分散媒が、疎水性溶媒を含み、前記水の含有量は、10ppm以上300ppm以下であり、前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない遊離表面修飾材料の含有量は、前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量に対し、50質量%以下であり、前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であり、前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含み、前記表面修飾材料が、シリコーン化合物を含み、前記遊離表面修飾材料の含有量は、以下の方法(I)により測定される値である、分散液(但し、金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く)。方法(I):前記分散液5g中の液体を、エバポレータで除去して濃縮物を得、前記濃縮物にアセトンを2g添加して混合し、混合液を作製し、10gのシリカゲルを充填したカラムと、100ccの展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)を用いたカラムクロマトグラフィーにて、前記混合液から分離された抽出液を回収し、前記抽出液中の液体をエバポレータにて除去し、得られた残留物を前記遊離表面修飾材料と仮定し、その質量を測定し、前記残留物の質量を、前記分散液に含まれる前記無機酸化物粒子と前記表面修飾材料の合計質量で除した値の百分率を計算した結果を、前記遊離表面修飾材料の含有量とする。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 請求項6に「表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る第1の工程と、前記混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、前記無機酸化物粒子が分散した分散液を得る第2の工程と、前記分散液から前記水の少なくとも一部を除去する第3の工程と、前記分散液を加熱する第4の工程と、を有する、分散液の製造方法。」と記載されているのを、「表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る第1の工程と、前記混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、 前記無機酸化物粒子が分散した分散液を得る第2の工程と、前記分散液から前記水の少なくとも一部を除去する第3の工程と、前記分散液を加熱する第4の工程と、を有し、前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であり、前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含み、前記表面修飾材料が、シリコーン化合物を含む、分散液の製造方法。」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。) 2 訂正事項の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、下記の内容からなる。 (ア) 本件訂正前の請求項1の「前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量」の記載(以下「本件含有量記載」という。)中の「前記表面修飾材料」の記載(以下「本件表面修飾材料記載」という。)が、(i)「前記無機酸化物粒子に付着した」ものを意味するのか、(ii)「前記無機酸化物粒子に付着していない」ものを意味するのか、(iii)前記(i)及び(ii)の双方を合わせたものを意味するのか、(iv)そのいずれでもないのか(その場合、何を意味するのか)が不明瞭であったところ、「無機酸化物粒子に付着していない」ものを「表面修飾材料」から「遊離表面修飾材料」に訂正することによって、(iii)を意味することを明瞭とする訂正。すなわち、前記訂正によって、「遊離表面修飾材料」の記載が(ii)を意味することが明瞭となり、その結果、「表面修飾材料」の記載が(ii)以外のいずれかを意味することになったところ、「前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない遊離表面修飾材料」における「表面修飾材料」の記載が(iii)を意味することが明らかであり、その他の「表面修飾材料」の記載も(iii)のとおり解して特段の差し支えがないことから、当該「表面修飾材料」の記載は(iii)を意味することが明瞭となった。 (イ) 本件訂正前の請求項1の「無機酸化物粒子に付着していない」ものを「表面修飾材料」から「遊離表面修飾材料」に訂正した(前記(ア))ことに伴って、「遊離表面修飾材料の含有量」の記載を、(i)その文言の一応は自然といえる理解にしたがい、遊離表面修飾材料のみの含有量を意味すると解するのか、(ii)本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0046】及び【0047】に例示的な算出方法が記載されていることから、それにより算出された含有量を意味すると解するのかが、不明瞭であったところ、「前記遊離表面修飾材料の含有量は、以下の方法(I)により測定される値である、」「方法(I):前記分散液5g中の液体を、エバポレータで除去して濃縮物を得、前記濃縮物にアセトンを2g添加して混合し、混合液を作製し、10gのシリカゲルを充填したカラムと、100ccの展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)を用いたカラムクロマトグラフィーにて、前記混合液から分離された抽出液を回収し、前記抽出液中の液体をエバポレータにて除去し、得られた残留物を前記遊離表面修飾材料と仮定し、その質量を測定し、前記残留物の質量を、前記分散液に含まれる前記無機酸化物粒子と前記表面修飾材料の合計質量で除した値の百分率を計算した結果を、前記遊離表面修飾材料の含有量とする。」に訂正することによって、上記の「遊離表面修飾材料の含有量」が、上記の例示的な算出方法と同一の方法を用いて算出された値を意味すること、つまり、(ii)を意味することを明瞭とする訂正。 (ウ) 本件訂正前の請求項1の「無機酸化物粒子」を「前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であ」るものに限定する訂正。 (エ) 本件訂正前の請求項1の「疎水性溶媒」を「前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含」むものに限定する訂正。 (オ) 本件訂正前の請求項1の「表面修飾材料」を「前記表面修飾材料がシリコーン化合物を含」むものに限定する訂正。 (カ) 本件訂正前の請求項1の「分散液」を「(但し、金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く)。」ものに限定する訂正。 前記(ア)及び(イ)の訂正は、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものであり、前記(ウ)~(カ)の訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 前記ア(ア)の訂正について、本件明細書等の【0046】には、「本明細書において「遊離表面修飾材料」とは、無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料を意味する」ことが記載されている。そして、前記ア(ア)のとおり、前記ア(ア)の訂正を行うことによって、「前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量」の記載中の「前記表面修飾材料」が、「前記無機酸化物粒子に付着した」もの、及び「前記無機酸化物粒子に付着していない」ものを併せたものを意味することになるところ、後記ウのとおり、当該「前記表面修飾材料」がそのような意味となることによって、実質上特許請求の範囲が拡張されたり、変更されたりすることはない。そうすると、当該訂正によって新たな技術的事項が導入されることはないというべきである。 前記ア(イ)の訂正について、本件明細書等の【0047】には、「分散液5g中の液体を、エバポレータで除去して濃縮物を得る。次いで、この濃縮物にアセトンを2g添加して混合し、混合液を作製する。シリカゲル10gを充填したカラムと、展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)100ccを用いたカラムクロマトグラフィーにて、混合液から分離された抽出液を回収する。この抽出液中の液体をエバポレータにて除去し、得られた残留物を遊離表面修飾材料と仮定し、その質量を測定する。この残留物の質量を、本実施形態の分散液5gに含まれる無機酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量で除した値の百分率を計算した結果を、遊離表面修飾材料の含有量とする。」ことが記載されており、当該記載と前記ア(イ)の本件訂正後の記載とは、実質的に相違するところがない。 前記ア(ウ)の訂正について、本件明細書等の【0022】には、「無機酸化物粒子は」「屈折率が1.7以上である」ことが記載されている。 前記ア(エ)の訂正について、本件明細書等の【0052】には、「疎水性溶媒として」「芳香族炭化水素が好ましい」ことが記載されている。 前記ア(オ)の訂正について、本件明細書等の【0038】には「表面修飾材料としては」「シリコーン化合物」を「用いること」が記載されている。 前記ア(カ)の訂正について、当該訂正は、金属酸化物粒子を含む分散液であって、当該金属酸化物粒子に付着されている表面修飾材料が特定の表面修飾材料であるという態様を除くことに係るものであるところ、本件明細書等には、「表面修飾材料」について、「無機酸化物粒子に付着でき、後述するような樹脂成分との相溶性が良好なものであれば、特に限定されない。」(【0036】)と記載されているにとどまり、特段の材料を要することの記載や示唆はない。そして、分散液の技術分野において、当該訂正に係る態様のような分散液が技術常識であるとも認められない。そうすると、前記ア(カ)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)a 前記ア(ア)に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないというためには、本件訂正前の請求項1の記載に接した当業者が、「前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量」の記載(本件含有量記載)中の「前記表面修飾材料」の記載(本件表面修飾材料記載)を、当業者が「前記無機酸化物粒子に付着した」もの(以下「付着表面修飾材料」という。)及び「前記無機酸化物粒子に付着していない」もの(つまり、「遊離表面修飾材料」)の双方を合わせたものを意味すると当然に理解できれば足りる。 b そこで検討すると、前記ア(ア)のとおり、本件表面修飾材料記載は、その文言上、明確とはいえないことから、本件明細書等をみると、同【0138】には、本件表面修飾材料記載を含む本件含有量記載について、実施例1において、遊離表面修飾材料の含有量が、「得られた残留物」を「分散液5gに含まれる(酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計含有量1.6g)」で除した値の百分率である旨記載されている。しかるに、以下のとおり、この「合計含有量1.6g」は、分散液の固形分の質量を意味しており、当該固形分は、無機酸化物粒子、付着表面修飾材料及び遊離表面修飾材料からなることが当業者にとって明らかであって、そのため、本件表面修飾材料記載が付着表面修飾材料及び遊離表面修飾材料の双方を意味することも当業者にとって明らかである。 すなわち、上記の分散液の固形分は、分散液を磁性るつぼにいれて、ホットプレートで150℃1時間加熱し、揮発せずに残留した成分に基づき得られる(【0135】)ところ、技術常識に照らして、上記程度の加熱によって、付着表面修飾材料は当然として、遊離表面修飾材料であっても、これが揮発するとは考えにくいことから、当該固形分は、無機酸化物粒子、付着表面修飾材料及び遊離表面修飾材料からなることが当業者にとって理解できる。実際、この固形分の質量%である33.1%(表1参照)に、分散液の質量である5gを乗すると、1.655gとなり、おおむね、上記の「分散液5gに含まれる(酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計含有量1.6g)」の値と一致する。そのため、当該「分散液5gに含まれる(酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計含有量1.6g)」は、分散液の固形分、つまり、無機酸化物粒子、付着表面修飾材料及び遊離表面修飾材料からなることが、当業者にとって当然に理解できるといえる。 このように、実施例1における遊離表面修飾材料の含有量を求める際の分母である「分散液5gに含まれる(酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計含有量1.6g)」は、無機酸化物粒子、付着表面修飾材料及び遊離表面修飾材料からなることが、当業者にとって当然に理解できることから、前記aが満たされたことになる。 c 以上のとおりであるから、前記ア(ア)に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)a 前記ア(イ)に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないというためには、本件訂正前の請求項1の記載に接した当業者が、本件訂正前の「無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量」の記載(以下「本件遊離表面修飾材料含有量記載」という。)を、本件訂正後に記載されたところの、方法(I)により測定される値を意味すると当然に理解できれば足りる。 b そこで検討すると、本件遊離表面修飾材料含有量記載に係る「無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量」、つまり、遊離表面修飾材料の含有量(以下「本件遊離含有量」という。)については、これを直接的に測定することができれば、その文言どおりの概念として理解できるものの、そのような直接的な測定が可能であることを示す技術常識が存在するとはいえず、また、当業者であれば直ちにその測定方法を理解できることを示す技術常識が存在するともいえないことから、当業者は、本件遊離含有量をどのようにして測定するのかについては、本件明細書等の記載を参酌するほかないといえる。しかるに、本件明細書等には、【0047】に、本件遊離含有量の測定方法の例示として、前記イで摘記した内容(なお、【0138】にも同様の内容が記載されている。)が記載されている一方で、本件明細書等には、その他の測定方法の記載が存在しない。そうすると、当業者は、上記の例示内容が例示であるとしても、これをもって、本件遊離含有量の測定方法であると理解するほかないといえる。 そして、前記イで説示したとおり、当該【0047】に記載された本件遊離含有量の測定方法と前記ア(イ)の本件訂正後に記載される本件遊離含有量の測定方法とは、実質的に相違するところがない。 このように、当業者は、本件訂正前の本件遊離表面修飾材料含有量記載を、当然に、本件明細書等の記載を参酌して理解し、その結果、本件訂正後に記載されたところの、方法(I)により測定される値を意味すると、当然に理解することになるから、前記aが満たされたことになる。 c 以上のとおりであるから、前記ア(イ)に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ) 前記ア及びイにも照らせば、前記ア(ウ)~(カ)に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (エ) 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件の存否 訂正事項1に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項に係るものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。 オ 小括 したがって、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的 (ア) 本件訂正前の請求項6の「無機酸化物粒子」を「前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であ」るものに限定する訂正。 (イ) 本件訂正前の請求項6の「疎水性溶媒」を「前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含」むものに限定する訂正。 (ウ) 本件訂正前の請求項6の「表面修飾材料」を「前記表面修飾材料がシリコーン化合物を含む」ものに限定する訂正。 前記(ア)、(イ)及び(ウ)の訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 前記ア(ア)、(イ)及び(ウ)に係る訂正は、それぞれ、前記(1)ア(イ)、(ウ)及び(エ)に係る訂正と同様であり、そのため、新規事項を追加するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記ア及びイにも照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件の存否 訂正事項2に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項に係るものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。 オ 小括 したがって、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たす。 3 訂正の適否の小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、本件訂正には、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。 したがって、特許請求の範囲を、本件訂正に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6、7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正は前記第2のとおり認められたから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、次に示す本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、 前記分散媒が、疎水性溶媒を含み、 前記水の含有量は、10ppm以上300ppm以下であり、 前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない遊離表面修飾材料の含有量は、前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量に対し、50質量%以下であり、 前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であり、 前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含み、 前記表面修飾材料が、シリコーン化合物を含み、 前記遊離表面修飾材料の含有量は、以下の方法(I)により測定される値である、分散液(但し、金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く)。 方法(I): 前記分散液5g中の液体を、エバポレータで除去して濃縮物を得、 前記濃縮物にアセトンを2g添加して混合し、混合液を作製し、 10gのシリカゲルを充填したカラムと、100ccの展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)を用いたカラムクロマトグラフィーにて、前記混合液から分離された抽出液を回収し、 前記抽出液中の液体をエバポレータにて除去し、得られた残留物を前記遊離表面修飾材料と仮定し、その質量を測定し、 前記残留物の質量を、前記分散液に含まれる前記無機酸化物粒子と前記表面修飾材料の合計質量で除した値の百分率を計算した結果を、前記遊離表面修飾材料の含有量とする。 【請求項2】 請求項1に記載の分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる、発光素子を封止するための組成物。 【請求項3】 請求項2に記載の組成物の硬化物である、封止部材。 【請求項4】 請求項3に記載の封止部材と、前記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置。 【請求項5】 請求項4に記載の発光装置を備える、照明器具または表示装置。 【請求項6】 表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る第1の工程と、 前記混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、前記無機酸化物粒子が分散した分散液を得る第2の工程と、 前記分散液から前記水の少なくとも一部を除去する第3の工程と、 前記分散液を加熱する第4の工程と、を有し、 前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であり、 前記疎水性溶媒が、芳香族炭化水素を含み、 前記表面修飾材料が、シリコーン化合物を含む、分散液の製造方法。 【請求項7】 前記第3の工程において、前記分散液に疎水性溶媒をさらに添加する、請求項6に記載の分散液の製造方法。 第4 取消理由の概要及び申立人が提出した証拠 1 第2次取消理由の概要 第2次取消理由の概要は、次のとおりである。以下、証拠番号を記載するときは、「第」及び「号証」を略する。 なお、第1次訂正後の請求項6及び7に係る発明は、第2次取消理由の対象となっていない。 (1) 第1次訂正後の請求項1~5に係る発明に対する明確性要件違反。 (2) 第1次訂正後の請求項1~5に係る発明に対する甲2に記載された発明に基づく進歩性欠如。 2 第1次取消理由の概要 第1次取消理由(第2次取消理由に係るものを除く。)の概要は、次のとおりである。 (1) 本件特許の登録時の請求項1~5に係る発明に対する明確性要件違反。 (2) 本件特許の登録時の請求項1~7に係る発明に対するサポート要件違反。 (3) 本件特許の登録時の請求項1に係る発明に対する甲1に記載された発明、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基づく新規性欠如。 (4) 本件特許の登録時の請求項1~5に係る発明に対する甲1に記載された発明に基づく、又は甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如。 3 申立人が提出した証拠 甲1:国際公開第2016/181997号 甲2:国際公開第2016/060223号 甲3:特開2015-34106号公報 なお、特許権者は、証拠を提出していない。 第5 第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由についての判断 1 判断の概要 当合議体は、本件発明1~7に係る特許について、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。 2 第2次取消理由について (1) 明確性要件違反 上記理由は、請求項1の「前記無機酸化物粒子に付着していない遊離表面修飾材料の含有量」について、「遊離表面修飾材料の含有量」(本件遊離含有量)が、(i)遊離表面修飾材料のみの含有量を意味するのか、(ii)本件訂正後の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件訂正明細書等」という。)に記載された例示的な算出方法により算出された含有量を意味するのかが、明確でないというものであるが、前記第2の2(1)ア(イ)のとおり、本件訂正により(ii)であることが明確になったことから、当該理由は解消した。 (2) 甲2に記載された発明に基づく本件発明1~5に対する進歩性欠如 ア 甲2発明の認定 甲2には請求項5及び請求項3が引用する請求項1に係る表面修飾金属酸化物粒子分散液について、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下であり、(請求項1) 前記金属酸化物粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、または酸化亜鉛を含有してなり、(請求項3) カールフィッシャー水分計で測定される水分量が5ppm以上かつ200ppm以下であり、(請求項5) 表面修飾金属酸化物粒子を分散する分散媒は、トルエンなどの有機溶媒を用いる、([0027]) 表面修飾金属酸化物粒子分散液。(請求項5)」 (3) 対比・判断 イ 本件発明1について (ア) 対比 a 基本的な事項について 甲2発明の「金属酸化物粒子」は、本件発明1の「無機酸化物粒子」に相当し、以下同様に、 甲2発明の「ヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾」する材料は、本件発明1の「表面修飾材料」に、 甲2発明の「分散媒」は、本件発明1の「分散媒」に、 甲2発明の「水」は、本件発明1の「水」に、 甲2発明の「表面修飾金属酸化物粒子分散液」は、本件発明1の「分散液」に、 それぞれ相当する。 b 本件発明1の「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有」する「分散液」との特定事項について 甲2発明の「表面修飾金属酸化物粒子分散液」は、「無機酸化物粒子」と、「ヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有」し「無機酸化物粒子」の表面を修飾する材料と、「分散媒」と、「水」を含有している。 したがって、甲2発明は、本件発明1の前記特定事項を満たしている。 c 本件発明1の「前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上であり、」との特定事項について 甲2発明の「金属酸化物粒子」に含有される「酸化ジルコニウム、酸化チタン、または酸化亜鉛」は、いずれも屈折率が1.7以上である。 したがって、甲2発明は、本件発明1の前記特定事項を満たしている。 (イ) 一致点及び相違点の認定 前記(ア)によれば、本件発明1と甲2発明は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 【一致点】 「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、 前記無機酸化物粒子の屈折率が1.7以上である、分散液。」 【相違点2-1】 分散媒が、本件発明1は、「芳香族炭化水素を含」む「疎水性溶媒」を含んでいるのに対し、甲2発明は、「トルエンなどの有機溶媒を用いる」点。 【相違点2-2】 水の含有量が、本件発明1は、「10ppm以上300ppm以下」であるのに対し、甲2発明は、「カールフィッシャー水分計で測定される水分量が5ppm以上かつ200ppm以下であ」る点。 【相違点2-3】 表面修飾材料が、本件発明1は、「シリコーン化合物を含」むのに対し、甲2発明は、そのようなものか明らかでない点。 【相違点2-4】 本件発明1は、「前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない遊離表面修飾材料の含有量」が、本件発明1で特定された所定の方法によって得た値として、「50質量%以下」であるのに対し、甲2発明は、そのようなものか明らかでない点。 【相違点2-5】 本件発明1は、「金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く」のに対し、甲2発明は、そのようなものでない点。 (ウ) 判断 a 事案に鑑み、相違点2-5から検討する。 甲2発明は、光学特性、機械的特性及び経時安定性を兼ね備えた、金属酸化物粒子-シリコーン樹脂複合体を得るための表面修飾金属酸化物粒子分散液を提供する(【0011】)という課題を解決するために、表面修飾剤に含まれるヒドロキシル基が過剰に存在すると、水素の発生源となって経時安定性が悪くなる一方で、これが過剰に排除されると、シリコーン樹脂と混合して複合体とした場合に機械的強度に劣ることを踏まえて、ヒドロキシル基とシラノール基の割合を5:95以上かつ50:50以下という所定の割合として、水素の発生を減らしつつ、シリコーン樹脂と複合化した場合の特性にも優れるようにしたものである(【0048】)。そうすると、甲2発明において、「金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下であ[る]」ことは、上記課題を解決するための必須の構成というべきものであり、そのため、これを採用しないこと、つまり、相違点5に係る本件発明1の構成を採用することは、甲2発明から出発した当業者にとって阻害要因になるといえる。 したがって、甲2発明から出発した当業者が、相違点2-5に係る本件発明1の構成に容易に至るとはいえない。 b 申立人は、前記aの点について反論していないことから、申立人の主張によって、前記aの説示が左右されることはない。 c そして、甲2、1及び3の他の記載をみても、前記説示を左右するものはない。 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~5は、本件発明1に従属するものであるから、本件発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 第2次取消理由についての小括 以上のとおりであるから、第2次取消理由によって、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。なお、本件発明6及び7に係る特許は、第2次取消理由の対象とはなっていない。 3 第1次取消理由(第2次取消理由に係るものを除く。)について (1) 明確性要件違反 上記理由は、本件特許の登録時の請求項1の「前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量は、前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量に対し、50質量%以下である」の記載について、「前記無機酸化物粒子および前記表面修飾材料の合計の含有量」の記載中の「前記表面修飾材料」が、(i)「前記無機酸化物粒子に付着した」ものを意味するのか、(ii)「前記無機酸化物粒子に付着していない」ものを意味するのか、(iii)前記(i)及び(ii)の双方を合わせたものを意味するのか、(iv)そのいずれでもないのか(その場合、何を意味するのか)が明確でないというものであるが、前記第2の2(1)ア(ア)のとおり、本件訂正により、(iii)を意味することが明確になったから、当該理由は解消した。 (2) サポート要件違反 ア 本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、本件訂正明細書等の【0006】によれば、発光素子を封止するための組成物(以下「発光素子封止用組成物」という。)として、比較的低粘度であるという特性(以下「低粘度特性」という。)と、発光装置の光の明るさのより一層の向上を可能とするという特性(以下「明るさ向上特性」という。)の両者を同時に満足するもの、及びこの原料となる分散液が、従来知られていなかったことであると認められる。 そこで、本件訂正明細書等の記載及び技術常識に基づいて、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲がどのようなものといえるかについて検討する。 本件訂正明細書等には、(i)分散液に含有される水の含有量が300ppm以下と少ないことにより、分散液が樹脂成分と混和しやすくなって、得られる組成物の粘度が低く維持されるとともに、分散液の透明性も低下しないこと(【0048】・【0049】)、(ii)他方で、上記の水の含有量が10ppm以上であって、微量の水が存在しているので、表面修飾材料の加水分解が促進され、表面修飾材料の無機酸化物粒子の表面へ付着が促進されて、無機酸化物粒子の分散性が維持される一方で、遊離表面修飾材料が低下すること(【0048】・【0049】)、(iii)遊離表面修飾材料の量が低減されると、この分散液を用いて樹脂成分を含む組成物を製造し、当該組成物を用いて発光素子を封止した際に、発光装置の光の明るさが向上すること(【0093】)、(iv)分散媒が疎水性溶媒を含んでおり、疎水性溶媒は、無機酸化物粒子の分散性に優れるとともに、樹脂成分との相溶性に優れているため、分散液と樹脂成分とを混合し、組成物を製造した際においても、無機酸化物粒子の分散状態が維持されやすいこと(【0051】)が記載されている。(ii)については、さらに、微量の水の存在によって、表面修飾材料の無機酸化物粒子の表面へ付着が促進されて、無機酸化物粒子の分散性が維持されるということは、分散液を発光素子封止用組成物に混入したときに、粘度が上昇しにくいことを意味するといえる。このように、本件訂正明細書等の記載及び技術常識によれば、分散液に含まれる水の含有量を300ppm超にしないことによって、分散液の樹脂成分への混和性を高めて低粘度特性を実現する一方で、上記の水の含有量を10ppm未満にしないことによって、表面修飾材料の加水分解を促進し遊離表面修飾材料の量を低減させて、発光素子封止用組成物の粘度を上昇させずに明るさ向上特性を実現することが本件課題の解決原理となっていることを当業者は理解できるといえる。 また、本件訂正明細書等には、(i)表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る工程(第1の工程)を行うこと、第1の工程によって、表面修飾材料が添加された水により加水分解され、混合液中において表面修飾材料の一部が加水分解した混合液が得られること(【0060】)、(ii)第1の工程で得られた混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、無機酸化物粒子が分散した分散液を得る工程(第2の工程)を行うこと、第2の工程では、第1の工程において表面修飾材料の加水分解が既に行われているので、無機酸化物粒子の分散のために投入されるエネルギーを少なくすることができるので、分散時における表面修飾材料の不本意な変質が抑制され、遊離表面修飾材料が少なくなり、分散液の光の透過率が向上すること(【0075】)、(iii)第2の工程で得られた分散液から、減圧処理、加熱処理等を適宜組み合わせて、水の少なくとも一部を除去する工程(第3の工程)を行うこと、第3の工程によって、分散液中における水の含有量を、組成物の粘度の上昇が抑制できる程度に減少させるのが可能になること(【0081】・【0083】)、第3の工程を省略した場合、表面修飾材料の加水分解に必要な十分な量の水を第1の工程及び第2の工程で使用した場合、水が最終的に得られる分散液中に多く存在する結果、組成物の粘度が大きくなってしまうこと(【0082】)、(iv)第3の工程で得られた分散液を加熱する工程(第4の工程)を行うこと、第4の工程によって、表面修飾材料の反応が促進され、無機酸化物粒子により多くの表面修飾材料が付着し、この結果、分散液中に存在する遊離表面修飾材料が減少するとともに、無機酸化物粒子の分散安定性がより一層向上すること(【0090】)、が記載されている。このように、本件訂正明細書等の記載によれば、第3の工程によって、第1の工程及び第2の工程で得られた分散液に含まれる水の含有量を減少させることができることが理解できる。 そして、本件訂正明細書等には、実施例として実施例1が記載されているところ、この実施例1では、第1の工程~第4の工程が実施された上で(【0131】~【0134】)、分散媒がトルエンという疎水性溶媒であって、水の含有量が110ppmとなっているとともに、遊離表面修飾材料の含有量が20%となっており、粘度が31pa・s、白色LEDパッケージの明るさが78.3であって、比較例よりは向上しているという結果が得られている(【0152】)ことから、本件課題が解決できることが裏付けられている。 このように、本件訂正明細書等の記載及び技術常識に照らせば、当業者は、分散液に含有される水の含有量を10ppm以上300ppm以下の範囲にすることによって、本件課題を解決できることを認識できるといえる。また、上記のとおり、第3の工程によって、第1の工程及び第2の工程で得られた分散液に含まれる水の含有量を減少させることができることから、分散液に含まれる水の含有量を多すぎないようにすることが理解でき、その結果、当業者であれば、本件課題のうち、低粘度特性の発光素子封止用組成物が得やすくなるという意味において、本件課題を解決できることを認識できるのであり、第1の工程~第4の工程のみで特定される構成であっても、一定の技術的意味が存在するといえる。 そして、本件発明1には、上記の水の含有量を上記の範囲にすることが特定されており、本件発明6には、分散液から前記水の少なくとも一部を除去する第3の工程と、分散液を加熱する第4の工程が特定されている。 したがって、本件発明は、本件訂正明細書等の記載及び技術常識に基づいて、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲を超えていないものである。 イ これに対して、第1次取消理由では、(i)本件課題における低粘度特性と明るさ向上特性の両者を同時に満足するということを、両特性の間にトレードオフがあると理解した上で、本件課題がどのようなものであるかが理解できないこと、(ii)分散液に含有される水の含有量を300ppm超にしないことによって低粘度特性の課題を解決できる原理が理解できないこと、(iii)上記水の含有量を10ppm未満にしないことによって明るさ向上特性の課題を解決できる原理が理解できないこと、を問題視したところである。 しかしながら、(i)については、本件訂正明細書等に、両特性の間にトレードオフがあると明記されているわけではないので、両特性の間にトレードオフがあるという前提で本件課題を理解できないとすることはできない。 (ii)については、水それ自体の粘度が低いことから、水の含有量が多い方が低粘度特性を実現しやすいのではないかとも考えられるが、本件発明では、分散液の分散媒は疎水性溶媒であり、分散液中に微量の水が存在することから、分散液は、微量の水と疎水性溶媒とのエマルションとなるのであり、このようなエマルションを前提とすれば、水の量が増加すると粘度が上昇すると考えられる。 (iii)については、前記アで説示したとおり、本件訂正明細書等には、微量の水の存在が表面修飾材料の加水分解を促進する旨の記載があるところ、この「水」は分散液中におけるものである一方で、本件訂正明細書等には、表面修飾材料の加水分解が分散液が得られる前に完了している旨の記載がある(【0060】・【0075】)ことを問題視したものであるが、分散液中であっても、時間の経過とともに、無機酸化物粒子が表面に付着した表面修飾材料の一部が離脱して遊離表面修飾材料となり得ることからみて、微量の水が存在するのが完成した分散液中であっても、当業者は、低粘度特性の課題を解決できることを理解できるといえる。 ウ 申立人は、本件訂正明細書等には、特定の材料の場合でのみ本件課題が解決されていることが示されているのにとどまる旨主張しているが、前記アで説示したとおりである。 また、申立人は、本件発明6~7には、水の含有量の特定がされていない旨主張しているが、前記アで説示したとおり、そうであるとしても、一定の技術的意味が存在するといえるものである。 エ したがって、本件発明1~7は、サポート要件を満たしており、第1次取消理由に係るサポート要件違反の理由によって、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3) 甲1~3に記載された発明に基づく本件発明1に対する新規性欠如、並びに甲1に記載された発明に基づく、及び甲3に記載された発明に基づく本件発明1~5に対する進歩性欠如 ア 甲1発明及び甲3発明の認定 なお、甲2発明は、前記2(2)アで認定したとおりである。 (ア) 甲1には、請求項1に係るアミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「コロイダルシリカの表面に下記一般式(1): R1aSi(OR2)3-aO- (1) (式中、R1は炭素数1~10の置換又は無置換のアルキル基又はフェニル基、R2は炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシアルキル基であり、aは1乃至3である。R1が複数ある場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、複数のOR2は同一でも異なっていてもよい。) で表される第1シリル基と下記一般式(2): R3bSi(OR4)3-bO- (2) (式中、R3は炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はアミノ基、アミノアルキル基及びアルキルアミノ基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1~3のアルキル基であり、R3の少なくとも1つは、アミノ基、アミノアルキル基又はアルキルアミノ基のいずれかで置換された炭素数1~3のアルキル基である。R4は炭素数1~4のアルキル基であり、bは1又は2である。R3が複数ある場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよく、複数のOR4は同一でも異なっていてもよい。) で表される第2シリル基が結合しており、且つ20℃における比誘電率が15以上60未満の極性溶媒S1と20℃における比誘電率が1以上15未満の非極性溶媒S2との質量比(S1/S2)が0.3~6である混合溶媒を分散媒とするアミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液。(請求項1)」 (イ) 甲3には、請求項11が引用する請求項1に係るオルガノゾルについて、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲3発明] 「(A)無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程、 (B)水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程、 (C)下記一般式(1) R1pR2qR3rSi(OR4)4-p-q-r (1) (式中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基である。pは1~3の整数、qは0,1又は2、rは0,1又は2であり、p+q+rは1~3の整数である。)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物を添加する工程、 (D)マイクロ波を照射する工程、 (E)有機溶媒を添加する工程、 (F)共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を留去する工程、及び必要に応じて (G)水を1,000ppm以下まで除去する工程 からなる水性コロイド溶液の溶媒置換を経るオルガノゾルの製造方法によって、(請求項1) 製造されたオルガノゾル。」 イ 甲1に記載された発明に基づく本件発明1に対する新規性欠如、及び本件発明1~5に対する進歩性欠如について (ア) 本件発明1について a 対比 (a) 基本的な事項について 甲1発明の「コロイダルシリカ」は、本件発明1の「無機酸化物粒子」に相当し、以下同様に、 甲1発明は、「コロイダルシリカ」の表面に、「第1シリル基」及び「第2シリル基」が結合しており、「第1シリル基」を有する材料と「第2シリル基」を有する材料が「コロイダルシリカ」の表面に結合していると解されるところ、当該各材料は、本件発明1の「表面修飾材料」に、 甲1発明の「分散媒」は、本件発明1の「分散媒」に、 甲1発明の「アミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液」は、本件発明1の「分散液」に、 それぞれ相当する。 (b) 本件発明1の「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、」との特定事項について 甲1発明の「アミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液」は、「コロイダルシリカ」と、「コロイダルシリカ」の表面に結合する「第1シリル基」を有する材料と、同じく「第2シリル基」を有する材料と、「分散媒」を含有している。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、」「を含有」する点で一致する。 (c) 本件発明1の「前記分散媒が、疎水性溶媒を含み、」との特定事項について 甲1発明の「分散媒」は、「混合溶媒」であって、「極性溶媒」と「非極性溶媒」が混合されたものであるところ、そのうち「非極性溶媒」は、本件発明1でいう「疎水性溶媒」であるといえる。 したがって、甲1発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。 b 一致点及び相違点の認定 本件発明1と甲1発明は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 【一致点】 「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、を含有し、 前記分散媒が、疎水性溶媒を含む、分散液。」 【相違点1-1】 分散液が、本件発明1は、「水」を含有しており、「前記水の含有量は、10ppm以上300ppm以下」であるに対し、甲1発明は、水を含有しているのか明らかでない点。 【相違点1-2】 無機酸化物粒子が、本件発明1は、「屈折率が1.7以上であ」るのに対し、甲1発明は、「コロイダルシリカ」である点。 【相違点1-3】 疎水性溶媒が、本件発明1は、「芳香族炭化水素」を含むのに対し、甲1発明は、「20℃における比誘電率が1以上15未満の非極性溶媒」である点。 【相違点1-4】 表面修飾材料が、本件発明1は、「シリコーン化合物を含」むのに対し、甲1発明は、「第1シリル基」を有する材料と「第2シリル基」を有する材料である点。 【相違点1-5】 本件発明1は、「前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量」が、本件発明1で特定された所定の方法によって得た値として、「50質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、そのようなものか明らかでない点。 【相違点1-6】 本件発明1は、「金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く」ものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。 c 判断 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 (a) 甲1発明は、本件発明1の「無機酸化物粒子」に相当する構成として「コロイダルシリカ」を用いるものであるところ、コロイダルシリカの屈折率は1,4前後であることから、甲1発明から出発した当業者が相違点1-2に係る本件発明1の構成に至るためには、甲1発明の「コロイダルシリカ」を、「コロイダルシリカ」とは異なる、屈折率が1.7以上の無機酸化物粒子に置換する必要がある。 そこで検討すると、甲1は「アミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液及びその製造方法」の発明に係る特許文献であって、甲1発明は、コロイダルシリカの分散性を維持したままアミノシラン基を導入したアミノシラン修飾コロイダルシリカ分散液を提供することを目的とする(【0011】)ものであることから、コロイダルシリカを用いることが前提となっている。そのため、甲1発明から出発した当業者が、甲1発明の「コロイダルシリカ」を、それとは異なる無機酸化物粒子に置換することには阻害要因がある。 したがって、甲1発明から出発した当業者が、相違点1-2に係る本件発明1の構成に容易に至るとはいえない。 (b) 申立人は、前記(a)の点について反論していないことから、申立人の主張によって、前記(a)の説示が左右されることはない。 (c) そして、甲1、2及び3の他の記載をみても、前記説示を左右するものはない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえず、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (イ) 本件発明2~5は、本件発明1に従属するものであるから、本件発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 甲2に記載された発明に基づく本件発明1に対する新規性欠如について 前記3(2)の説示によれば、本件発明1は、甲2に記載された発明とはいえない。 エ 甲3に記載された発明に基づく本件発明1に対する新規性欠如、及び本件発明1~5に対する進歩性欠如について (ア) 本件発明1について a 対比 (a) 基本的な事項について 甲3発明の「無機酸化物コロイド水分散液」は、「コロイド」が粒子の分散されたものを意味する以上、「無機酸化物」が粒子となっているといえるところ、甲3発明の「無機酸化物」の粒子は、本件発明1の「無機酸化物粒子」に相当し、以下同様に、 甲3発明の一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物は、無機酸化物の粒子の表面水酸基と反応すると解されることから、本件発明1の「表面修飾材料」に、 甲3発明の「有機溶媒」は、本件発明1の「分散媒」に、 甲3発明の「水」は、本件発明1の「水」に、 甲3発明の「オルガノゾル」は、本件発明1の「分散液」に、 それぞれ相当する。 (b) 本件発明1の「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、」との特定事項について 前記(a)によれば、甲3発明の「オルガノゾル」は、「無機酸化物」の粒子と、一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物と、「有機溶媒」と、「水」を含有しているといえる。 したがって、甲3発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。 (c) 一致点及び相違点の認定 本件発明1と甲3発明は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 【一致点】 「無機酸化物粒子と、少なくともその一部が前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有する、分散液。」 【相違点3-1】 分散媒が、本件発明1は、「芳香族炭化水素を含」む「疎水性溶媒を含」んでいるのに対し、甲3発明は、有機溶媒である点。 【相違点3-2】 水の含有量が、本件発明1は、「10ppm以上300ppm以下」であるのに対し、甲3発明は、「水を1,000ppm以下まで除去する」ものである点。 【相違点3-3】 無機酸化物粒子が、本件発明1は、「屈折率が1.7以上であ」るのに対し、甲3発明は、「無機酸化物」である点。 【相違点3-4】 表面修飾材料が、本件発明1は、「シリコーン化合物を含」むのに対し、甲3発明は、一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物」である点。 【相違点3-5】 本件発明1は、「前記表面修飾材料のうち前記無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料の含有量」が、本件発明1で特定された所定の方法によって得た値として、「50質量%以下」であるのに対し、甲3発明は、そのようなものか明らかでない点。 【相違点3-6】 本件発明1は、「金属酸化物粒子の表面にヒドロシリル基と疎水性官能基とシラノール基とを有する表面修飾金属酸化物粒子が分散媒中に分散してなり、前記ヒドロシリル基と前記シラノール基との割合が5:95以上かつ50:50以下である表面修飾金属酸化物粒子分散液を除く」ものであるのに対し、甲3発明は、そのようなものではない点。 b 判断 事案に鑑み、相違点3-4について検討する。 (a) 甲3発明から出発した当業者が相違点3-4に係る本件発明1の構成に至るためには、甲3発明の一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物(本件発明1の「表面修飾材料」に相当するものであり、以下「甲3物質」という。)として、「シリコーン化合物」を採用することを要するといえる。 そこで検討すると、甲3物質のうち、一般式(1)で示される有機ケイ素化合物は、「R1pR2qR3rSi(OR4)4-p-q-r」であるところ、R1(その添字のpは1~3の整数とされている。)が「ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基」を選択肢としてもつ一方で、R2~4はいずれも「炭素数1以上6以下のアルキル基」のみを取り得るから、「シリコーン化合物」に至る余地があるとすれば、R1として上記選択肢を選択する必要が少なくともある。そして、甲3発明を開示する甲3の【0078】には、p=1でR1がポリジメチルシロキサン基である場合について、シロキサン結合の数が50より大きくなると、シリコーンオイルとしての性質が強くなり、表面処理されたオルガノゾルの各種樹脂への溶解性が限定される旨記載されている。この点、甲3物質は、上記有機ケイ素化合物の(部分)加水分解縮合物であってもよいとされているが、甲3には、そのことをもって、シリコーンオイルとしての性質が強くなっても差し支えないことは記載されていない。さらに、甲3物質として甲3に記載された具体例をみても、一般的にはシラン化合物が記載されているにとどまる(【0077】・【0079】・【0080】)し、実施例でも、甲3物質として用いられているものは、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシ、ビニルトリメトキシシランといったシラン化合物にとどまる(【0122】・【0124】・【0128】・【0129】)。加えて、甲3には、オルガノゾルの用途として、「発光素子封止材」が記載されている(【0144】)が、当該オルガノゾルをシリコーン樹脂と相溶させることの記載も示唆もないから、このことをもって、甲3物質がシリコーンオイルとしての性質が強くなってもよいことを理解することはできない。 このように、甲3には、甲3物質として「シリコーン化合物」を採用する記載も示唆もあるとはいえず、むしろ、それを採用することに消極的な記載があることから、技術常識に照らして特段の動機付けがあればさておくとしても、そのような技術常識を示す証拠は存在しない。したがって、甲3発明から出発した当業者が、相違点3-4に係る本件発明1の構成に容易に至るとは言い難い。 (b) 申立人は、前記(a)の点について反論していないことから、申立人の主張によって、前記(a)の説示が左右されることはない。 (c) そして、甲3、1及び2の他の記載をみても、前記説示を左右するものはない。 したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明ではなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (イ) 本件発明2~5は、本件発明1に従属するものであるから本件発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 第1次取消理由についての小括 以上のとおりであるから、第1次取消理由(第2次取消理由に係るものを除く。)によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 4 特許異議申立理由(第1次取消理由及び第2次取消理由に係るものを除く。)について (1) 甲1~3に記載された発明に基づく本件発明2~5に対する新規性欠如 申立人は、本件発明2~5は、甲1~3に記載された発明である旨主張するが、本件発明2~5は、本件発明1に従属するものであるから、本件発明1と同様の理由で、甲1~3に記載された発明とはいえない。 (2) 特許異議申立理由についての小括 以上のとおりであるから、特許異議申立理由(第1次取消理由及び第2次取消理由に係るものを除く。)によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1~7に係る特許は、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701009

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