特許異議申立
2022-701174
廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法
- 審判番号
- 2022-701174
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-200466
- 登録番号
- 7078512
- 請求日
- 2022年11月28日
- 審決日
- 2023年10月05日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社トクヤマ
- 【権利者代理人】塩入 明
- 【権利者代理人】塩入 みか
- 【権利者】株式会社トクヤマ・チヨダジプサム
- 【権利者代理人】塩入 明
- 【権利者代理人】塩入 みか
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 関根 裕
- 審判官 塩見 篤史
- 分類
- P1651.113-YAA(B09B) / P1651.121-YAA(B09B) / P1651.537-YAA(B09B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7078512号発明「廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7078512号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7078512号の請求項2、3に係る特許を維持する。
特許第7078512号の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7078512号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年10月25日の出願であって、令和4年5月23日に特許権の設定登録がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行されたものであって、その特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和4年11月28日 特許異議申立書(特許異議申立人 金澤 毅
(以下「申立人」という。)による全請求項に
対する特許異議の申立て)
令和5年 2月22日付け 取消理由通知書
同年 4月14日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 5月16日 前記訂正請求書を補正対象とする手続補正書
(特許権者)
同年 6月28日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年4月14日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、訂正前には請求項1の記載を引用する形式で、
「【請求項1】
廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去することを特徴とする、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項2】
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、
当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、
分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、
前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることを特徴とする、請求項1の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」と記載されていたものを、独立形式の記載に改め、
「【請求項2】
廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去するために、
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、
当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、
分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、
前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることを特徴とする、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」に訂正する。
また、請求項2の記載を引用する請求項3についても同様に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~3において、請求項2は請求項1の記載を引用し、請求項3は請求項2の記載を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~3は一群の請求項である。そうすると、本件訂正は一群の請求項ごとにされた訂正である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正事項である。
そして、訂正事項1は、請求項を削除することにより特許請求の範囲を減縮するものであって、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用しないものにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、請求項2を独立請求項の形式に変更することを目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないので、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~3に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明等
1 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は次のとおりのものであり、以下、請求項2に係る発明を「本件訂正発明2」、請求項3に係る発明を「本件訂正発明3」ともいう。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去するために、
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、
当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、
分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、
前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることを特徴とする、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項3】
前記混合物から重量異物と石膏スラリーへの篩い分けを振動篩により行うと共に、
前記固液分離前に石膏スラリーから紙粉を振動篩により篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを固液分離することを特徴とする、請求項2の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」
2 本件明細書の記載
本件特許の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」ともいう。)には、次の記載がある。
「【0001】
この発明は廃石膏ボードからの二水石膏の回収に関する。」
「【0004】
発明者らは、廃石膏ボードには、石膏ボードの原紙に由来する紙と金属異物の他に、石膏プラスター等に由来する砂利、砂が混入していることに気付いた。また銅、アルミニウム等の非磁性金属は、磁選機では分離できない。か焼後に風力選別等により石膏中の砂、砂利等と金属異物(重量異物)を分離することを試みたが、重量異物に石膏が固着しているため、石膏と重量異物の分離は不十分であった。
【0005】
この発明の課題は、石膏スラリー中の重量異物を効率的に分離することにある。」
「【0007】
重量異物を風力選別等により乾式で分離することに比べ、石膏スラリー中で重量異物を沈降させると、重量異物とスラリーを容易に分離でき、分離装置に附属する篩等が石膏により目詰まりすることもない。この発明では、二水石膏スラリーから重量異物を効率的に除去できる。」
「【0010】
重力沈降で重量異物のみを分離することは難しく、重量異物に石膏スラリーも随伴する。そこで混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることにより、石膏スラリーのロスを防止する。」
「【0016】
か焼した石膏を混合槽10へ投入し、後述の異物分離装置12から還流した石膏スラリー、石膏スラリーのろ液及び水と混合し、石膏スラリーとする。石膏スラリーを重力落下あるいはスラリーポンプ等により、図示しない撹拌機を備えた析出槽11へ供給し、析出槽11で石膏スラリーは撹拌され、半水石膏等が溶解し、二水石膏粒子として析出する。重量異物は撹拌機の撹拌羽根、後述のスラリーポンプ21のインペラー、配管等を摩耗させ、また撹拌を不安定にするので、異物分離装置12により除去する。なお析出槽11は多段に限らず1段でも良い。
【0017】
混合槽10あるいは析出槽11の底部あるいは下部から、スラリーポンプ13により石膏スラリーを異物分離装置12へ圧送する。異物分離装置12の底部にスラリー中の重量異物を沈降させ、異物分離装置12の上部から、石膏スラリーを還流路18を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。異物分離装置12内に沈降した重量異物には石膏スラリーが随伴しているので、振動篩14により篩上の重量異物と篩下の石膏スラリーとに分離し、石膏スラリーを還流路19を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。」
「【0022】
実験例
半水石膏5t/hと、ろ液と水の混合物10t/hを混合槽10へ投入し、合計容積175m3の析出槽11で二水石膏粒子を析出させた。析出装置11の底部から石膏スラリーを15m3/hで抽出し、異物分離装置12に供給し、重量異物を濃縮した石膏スラリーを排出し、重量異物を除去済みの石膏スラリーを析出槽11等へ還流した。強制排出装置から排出した石膏スラリーを開口1mmの振動篩14により篩い分けした。
【0023】
乾式での篩い分けと異なりスラリーから重量異物を分離するので、開口1mmの篩でも二水石膏による目詰まりは生じなかった。なお篩を多量の石膏スラリーが通過したので、析出槽11へ還流させた。重量異物の多くは砂利と砂で、石膏プラスターの骨材であり、サイズは1~3mm程度、石膏の付着量は僅かで、重量は乾燥重量で40kg/hであった。
【0024】
析出槽11から12m3/hで石膏スラリーを抽出し、振動篩15により紙粉を除去し、紙粉を除去済みのスラリーをフィルタープレス16により固液分離した。振動篩15の開口は0.5mmで、乾燥重量で15kg/hの軽量異物を分離した。軽量異物中の灰分は22mass%で、石膏と砂に由来していた。灰分がこのレベルであれば、製紙用にリサイクルが可能である。」
「【図1】
[図:0001405801000001.jpg]
」
第4 取消理由及び特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知に記載した取消理由の概要
(1)取消理由1(甲2を主たる引用例とした請求項1に対する新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、後記3の甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(甲1又は甲2を主たる引用例とした請求項1に対する進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、後記3の甲1又は甲2に記載された発明、並びに甲1ないし甲2に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。
2 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
(1)申立理由1(甲1を主たる引用例とした請求項1に対する新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、後記3の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲1又は甲2を主たる引用例とした請求項2~3に対する進歩性)
本件特許の請求項2~3に係る発明は、後記3の甲1又は甲2に記載された発明、並びに甲1~甲6に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当するから、請求項2~3に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が、後記ア、イの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第4号に該当するから、本件特許は取り消されるべきものである。
ア 本件特許発明は、重量異物を重量沈降させる際の条件が規定されていないため、本件特許発明の課題を解決できない場合を含むから、サポート要件を充足していない。
イ 本件特許発明は、石膏スラリーを析出層と異物装置の間で循環させることが特定されていないから、サポート要件を充足していない。
(4)申立理由4(明確性)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が、後記アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第4号に該当するから、本件特許は取り消されるべきものである。
ア 本件特許発明の「重量異物」がどの程度の範囲の重量の異物を意味しているのかが明らかでない。
3 申立人が提出した証拠方法
申立人は、特許異議の申立ての証拠方法として、甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1」~「甲6」ともいう。)を提出した。
甲1:平成11年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託、「解体廃石膏ボードの再資源化技術開発成果報告書」、社団法人石膏ボード工業会、平成13年3月、17~82頁
甲2:国際公開第2012/176688号
甲3:特開平9-271606号公報
甲4:特開2009-57645号公報
甲5:特開2010-13304号公報
甲6:特開2016-117617号公報
4 甲号証に記載された事項
(1)甲1には、次の記載がある。
ア 20頁1行~13行、「3.3.2 廃石膏ボード中の夾雑物除去フロー」
「
[図:0001405801000002.jpg]
[図:0001405801000003.jpg]
」
イ 65頁26行~35行、「4.4.6 解体廃石膏ボードから大型二水石膏合成のための最適条件」
「・・・
[図:0001405801000004.jpg]
・・・」
ウ 70頁、「図4-35 大型二水石膏の合成のための条件」
「
[図:0001405801000005.jpg]
」
エ 73頁12行~76頁下から3行、「4.5 開発した技術の製造プロセスと設備」の「4.5.1 設定条件」
「
[図:0001405801000006.jpg]
・・・
[図:0001405801000007.jpg]
[図:0001405801000008.jpg]
」
オ 79頁1行~9行、「4.5.4 プロセスフロー」
「
[図:0001405801000009.jpg]
」
カ 80頁、「図4-40 大型二水石膏製造のプロセスフロー(10t/day)」
「
[図:0001405801000010.jpg]
」
(2)甲2には、次の記載がある。
ア 20頁、「請求の範囲」
「
[図:0001405801000011.jpg]
[図:0001405801000012.jpg]
・・・」
イ 12頁6行~23行、「各工程の説明」
「
[図:0001405801000013.jpg]
」
ウ 12頁26行~13頁21行、「図1の説明」
「
[図:0001405801000014.jpg]
[図:0001405801000015.jpg]
」
エ 図1
「
[図:0001405801000016.jpg]
」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】シックナー容器底部の排出管を閉じた状態でシックナー容器にスラリーを供給し、スラリーをオーバーフローさせながら容器底部にスラリー中の異物を堆積させ、異物堆積後に前記排出管を開いてスラリーとともに異物を排出することを特徴とするガラス研磨用スラリーの異物除去方法。」
「【0002】
【従来の技術】従来、一般にスラリー中の異物除去手段としては、固定ふるい、振動ふるい、サイクロン、シックナーなどが知られている。」
「【0017】第1自動開閉弁4が閉じている間、シックナー1に供給されたスラリーはオーバーフローとしてタンク7に戻される。このとき、シックナー1内では上昇流が生じ、その上昇速度よりも沈降速度の速い粒子は沈降し、シックナー下部へ堆積する。この場合、研磨材粒子の上昇速度が研磨材粒子の沈降速度よりも大きくなり、研磨材粒子の沈降速度が異物の沈降速度より小さくなるようにシックナーの径を設定する。これにより異物は上昇することなく全て沈降する。
【0018】次に、第1自動開閉弁4を開くと、シックナー下部に堆積した異物を含んだスラリーが排出され、異物が除去される。ただし、このスラリーには研磨材も含まれているため、自動開閉弁4の開時間を短くし、閉時間を長くして研磨材の流出を防ぐ必要があり、制御装置6に設けたタイマーでこの時間を調節する。」
(4)甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも、石膏ボード古紙を主成分とする古紙原料を離解工程にて離解処理し、該離解工程を経た古紙パルプ原料をクリーナーによる処理を主体とした精選工程にて精選処理し、該精選工程を経た精選物を脱水濃縮工程にて脱水濃縮処理することを特徴とする、古紙パルプの製造方法。」
「【0033】
(2)精選工程
次に、この精選工程にて、前記離解工程を経た古紙パルプ原料を、精選設備(クリーナー)による処理を主体とした精選処理に供する。すなわち、該古紙パルプ原料に適宜希釈水を加え、古紙パルプ原料から石膏分(図1中、「石膏粕リジェクト」と示す)を除去する。
【0034】
精選処理の最初に例えば径が4mm以下のスクリーンを用いると、通常目詰まりの発生が著しく、石膏分を除去することができないため、本実施形態においては、クリーナーによる処理を主体として石膏分を充分に除去する。
【0035】
前記クリーナーとしては、比重差により異物を分離することができるクリーナーを用いることが好ましく、例えば高濃度クリーナー(処理濃度:3.0~5.0質量%)、中濃度クリーナー(処理濃度:1.0~3.0質量%)のいずれも使用可能であり、これらを適宜組み合わせ、石膏分を比重差により分離することができる。ただし、石膏の比重は2.3であり、通常の重量異物(例えば鉄は7.8、銅は8.5、アルミニウムは2.7)よりも軽いので、入圧、出圧、加注水圧、濃度等をバランスよく調整することにより、一定以上の大きさの石膏分を古紙パルプ原料中から分離することができる。」
「【0065】
まず、本実施形態4に係る製造方法では、用いる古紙原料の主成分である石膏ボード古紙の品質が悪く、例えば木系、金属系、プラスチック系の粗大異物が含まれている場合や、石膏ボード古紙の処理量が多い場合には、離解工程における離解処理の際に、別途スクリーニング設備を設けてスクリーニング工程を行い、これらの粗大異物がパルパー出口に設けたエキストラクションプレートに送られないようにする。
【0066】
本実施形態4におけるスクリーニング工程では、スクリーニング設備として、重量リジェクト中の金属系粗大重量異物を遠心分離や単純沈降によって比重差分離することが可能な設備と、軽量リジェクト中の木系、プラスチック系粗大軽量異物をスクリーニングによって除去することが可能な設備とが組み合わされたものが用いられる。このようなスクリーニング設備での処理により、これら粗大重量異物及び粗大軽量異物を連続的に分離除去することができ、かつ粗大異物の破砕化及び金属系粗大異物による設備劣化を防止することができる。
【0067】
本実施形態4において、前記スクリーニング工程を経た古紙原料はパルパー内に再度投入され、離解処理が施される。このように、本実施形態4では、パルパーとスクリーニング設備との間で古紙原料を循環させて処理が行われる(このような古紙原料を、図4中「循環原料」と示す)。」
(5)甲5には、次の記載がある。
「【請求項1】
石膏ボード廃材中の石膏を粉砕した後、種晶石膏が存在する水性媒体中で溶解して再析出させる、石膏ボード廃材中の石膏を再生する方法において、
前記粉砕後の石膏の全累積細孔容積が1mL/g以下となるように制御することを特徴とする、石膏ボード廃材中の石膏を再生する方法。」
「【請求項4】
再析出した再生石膏の一部を種晶石膏として循環する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
再生される石膏が二水石膏であり、前記溶解および再析出が、種晶石膏として二水石膏が存在する温度90℃以下の水性媒体中で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。」
「【0017】
図1は、本発明の方法の一態様を好適に実施するための装置の一例を示した説明概略図である。
回収された石膏ボード廃材1は、先ず、2軸粉砕機2により100~300mm程度の大きさに一次破砕され、次いで2軸衝撃破砕機3により二水石膏は0.5~2mm程度の大きさまで2次破砕される。その後、破砕片はトロンメル4に送られ、廃ボード原紙5と廃石膏とに分離される。
【0018】
廃石膏は、次いで、仮焼炉6に投入され、加熱処理される。得られた石膏は、一旦サイロ7に貯蔵された後、ボールミル8に定量フィードされる。ここで、ボールミル8の出口から粉砕後の石膏を適時サンプリングし、水銀ポロシメータにより石膏の全累積細孔容積を分析してボールミル8の粉砕条件を適宜調整することにより、石膏の全累積細孔容積が上記の範囲内となるように制御する。
粉砕後の石膏は、晶析反応槽9に送られる。粉砕後の石膏は、晶析反応槽9中で一旦溶解し、反応槽中の水性媒体中に存在する種晶の種類、反応槽の温度条件および水性媒体の種類により、二水石膏、II型無水石膏またはα-半水石膏として再析出する。
反応槽から出た再生石膏スラリー13のうち、一部が任意的に反応槽9に戻され、種晶として循環利用され、残余の大部分はドラムフィルター10に送られる。ドラムフィルター10では水性媒体と再生石膏との分離が行われ、再生石膏11を得る。一方、分離されたろ液12は晶析反応槽9に戻されて水性媒体として循環再利用されることになる。」
「【図1】
[図:0001405801000017.jpg]
」
(6)甲6には、次の記載がある。
「【請求項1】
(a)半水石膏粉末と種結晶二水石膏スラリーとの混合槽、(b)半水石膏の二水石膏への変換を行わせる反応槽、及び(c)前記混合槽からスラリーポンプを経由して反応槽に混合スラリーを移送する配管を備えた、連続的に半水石膏粉末を二水石膏スラリーと混合して、半水石膏から二水石膏を生じさせる製造装置であって、
前記配管が軟質塩化ビニル樹脂製であることを特徴とする二水石膏製造装置。」
「【0016】
当該廃石膏ボードから半水石膏を製造する方法は前記特許文献などに公知であるが、簡単に説明すると以下の通りである。まず、廃石膏ボードを平均粒径が0.5~50mm程度となるように粗粉砕しボード原紙と分離する。続いて得られた粗粉砕物を加熱して半水石膏とする。・・・」
「【0018】
本発明は、上記例の如くして得られた半水石膏粉末を二水石膏スラリーと混合、水和させる製造装置に関する。以下に図1を参照して本発明の製造装置及び該装置を用いた製造方法について説明する。」
「【0031】
水和反応が完了したスラリーは固液分離により二水石膏を分離させるが、図示するように該ろ過前にその一部をとりわけ、混合槽において半水石膏粉末と混合する種結晶二水石膏スラリーとして用いることができる。この際、反応後スラリー中の二水石膏の平均粒径は30~100μm程度あるのが通常なため、種結晶として用いるために一旦粉砕器(図示しない)で前記した粒径まで粉砕することが好ましい。」
第5 当審の判断
1 判断の順序
判断を行うにあたり、新規性等を判断する前提として特許請求の範囲の明確性が求められるところ、本件においては、明確性(前記第4の2(4)「申立理由4」を参照。)の判断を、先に行う。
2 申立理由4(明確性)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2)本件訂正発明の「重量異物」について
本件訂正発明の「重量異物」について、本件明細書(前記第3の2参照)の【0007】~【0008】には「重量異物を風力選別等により乾式で分離することに比べ、石膏スラリー中で重量異物を沈降させると、重量異物とスラリーを容易に分離でき、分離装置に附属する篩等が石膏により目詰まりすることもない。」「好ましくは、混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し」と記載され、同【0023】に「重量異物の多くは砂利と砂で、石膏プラスターの骨材であり、サイズは1~3mm程度」と記載されている。
そうすると、本件訂正発明の「重量異物」とは、石膏スラリー中で、重力沈降により分離できるものであって、多くは1~3mm程度の砂利や砂であることを理解できる。
(3)申立人の主張
本件訂正発明の「重量異物」について、申立人は、特許異議申立書の42頁3~11行において、本件明細書(前記第3の2参照)の【0024】に「・・・振動篩15により紙粉を除去し、・・・振動篩15の開口は0.5mmで、乾燥重量で15kg/hの軽量異物を分離した。軽量異物中の灰分は22mass%で、石膏と砂に由来していた。」との記載によれば、砂や石膏は軽量異物であり、重量異物に相当しないとも解されるから、本件訂正発明の「重量異物」がどの程度の範囲の重量の異物を意味しているのかが明らかではないとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、前記【0024】の記載は、軽量異物に含まれる灰分が石膏と砂に由来することを説明するだけであって、前記した「重量異物とは、石膏スラリー中で、重力沈降により分離できるものであって、多くは1~3mm程度の砂利や砂である」との理解を妨げるものではないから、申立人の主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって、本件訂正発明は、特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確ではないから、その特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
3 取消理由2及び申立理由1、2(甲1を主引例とした新規性、進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の「4.5 開発した技術の製造プロセスと設備」(前記第4の4(1)エ参照。)には、「図4-39に廃石膏ボードから大型二水石膏の合成の概要を示す。」と記載されており、同「図4-39 大型二水石膏の製造の概要」(前記第4の4(1)エ参照。)には、「解体廃石膏ボード」を「粉砕機」で粉砕し、「懸濁工程」で「硫酸ナトリウム水溶液」を添加して懸濁したあと、「脱水転移反応工程」を行い、「冷却工程」、「水和反応工程」及び「熟成工程」を経たあと、「分離・ろ過工程」で「紙(上層部)」と「重質残分(下層部)」を分離したあと、「洗浄工程」を経て「乾燥機」で「大型二水石膏」を得る方法が記載されている。
イ 甲1の「4.4.6 解体廃石膏ボードから大型二水石膏合成のための最適条件」(前記第4の4(1)イ参照。)には、「廃石膏ボードから大型二水石膏を合成するための条件を図4-35に示す。」と記載され、同「図4-35 大型二水石膏の合成のための条件」(前記第4の4(1)ウ参照。)に記載されたフローチャートと合わせ読めば、上記アの「脱水転移反応工程」は「二水石膏懸濁液」を脱水転移させて「半水石膏懸濁液」とする工程であり、「冷却工程」、「水和反応工程」及び「熟成工程」は「半水石膏懸濁液」に「二水石膏種結晶」を添加して冷却することにより「大形二水石膏」を析出させる工程であることが読み取れる。
ウ 甲1の「4.5 開発した技術の製造プロセスと設備」(前記第4の4(1)エ参照。)には、上記アの「重質残分」は、「廃材中に含まれる金属、砂と考えられる」ことが記載されている。
エ 甲1の「4.5.4 プロセスフロー」(前記第4の4(1)オ参照。)及び「図4-40 大型二水石膏製造のプロセスフロー(10t/day)」(前記第4の4(1)カ参照。)を合わせ読めば、上記アの「洗浄工程」は、水を加えた「大形二水石膏」を「分離機(ろ過)(遠心分離式)」で固液分離する工程であることが読み取れる。
オ してみると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「解体廃石膏ボードを粉砕機で粉砕し、懸濁工程により硫酸ナトリウム水溶液と懸濁して二水石膏懸濁液とし、脱水転移反応工程により二水石膏懸濁液を脱水転移させて半水石膏懸濁液とし、冷却工程、水和反応工程及び熟成工程により半水石膏懸濁液に二水石膏種結晶を添加して冷却して大形二水石膏を析出させ、分離・ろ過工程により紙(上層部)と、金属・砂を含む重質残分(下層部)を分離したあと、洗浄工程により水を加えた大形二水石膏を分離機(ろ過)(遠心分離式)で固液分離し、乾燥機で乾燥させて大型二水石膏を得る方法」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲1発明を対比すると、甲1発明の「解体廃石膏ボードを粉砕機で粉砕し、懸濁工程により硫酸ナトリウム水溶液と懸濁して二水石膏懸濁液とし、脱水転移反応工程により二水石膏懸濁液を脱水転移させて半水石膏懸濁液とし」と本件訂正発明2の「廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後」とは、ともに「廃石膏ボード由来の石膏を石膏スラリーとした後」である点で共通する。
甲1発明の「冷却工程、水和反応工程及び熟成工程により半水石膏懸濁液に二水石膏種結晶を添加して冷却して大形二水石膏を析出させ、」「洗浄工程により水を加えた大形二水石膏を分離機(ろ過)(遠心分離式)で固液分離し、乾燥機で乾燥させて大型二水石膏を得る方法」は、本件訂正発明2の「当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」に相当する。
甲1発明の「分離・ろ過工程により紙(上層部)と、金属・砂を含む重質残分(下層部)を分離し」は、甲1発明の「洗浄工程により水を加えた大形二水石膏を分離機(ろ過)(遠心分離式)で固液分離し」よりも前になされる工程であり、かつ、重力で沈降した「下層部」の「重質残分」を分離することを含むから、本件訂正発明2の「石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去する」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「廃石膏ボード由来の石膏を石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去するために、
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させる、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」
<相違点1-1>
石膏スラリーが、本件訂正発明2は「廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリー」としたものであるのに対し、甲1発明は、「解体廃石膏ボードを粉砕機で粉砕し、懸濁工程により硫酸ナトリウム水溶液と懸濁して二水石膏懸濁液とし、脱水転移反応工程により二水石膏懸濁液を脱水転移させて半水石膏懸濁液」としたもの、すなわち、「石膏スラリー」が「半水石膏懸濁液」の状態を経由したものではあるものの、「半水石膏」が「脱水転移反応」で生じたものであって、「か焼」で生じたものではない点。
<相違点1-2>
重量異物の分離について、本件訂正発明2は「当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる」ものであるのに対し、甲1発明は「金属・砂を含む重質残分(下層部)を分離」する工程を含むものであるが、「異物分離装置」で分離された「金属・砂を含む重質残分(下層部)」をさらに「篩い分け」するという2段階の工程を備えるものではなく、また、それぞれの工程で「分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる」ものでもない点。
事案に鑑み、前記相違点1-2について検討する。引用文献2(特に、前記第4の4(2)ウ及びエ参照。)には、晶析反応層11で二水石膏スラリーGを得て、希釈層12でスラリー中の二水石膏濃度を10重量%以下に調整し、振動篩13で篩上に繊維状異物Hが分離除去され、篩下に純度の高い二水石膏スラリーを得て、ドラムフィルター14で二水石膏Iとろ液Jとに分離され、分離されたろ液Jは希釈層12及び粉液混合機10に戻され水性媒体として循環再利用されることが記載されているものの、重量異物を分離した後、さらに重量異物を含む画分を篩い分けする2段階の工程を備えることや、それらの工程で分離された二水石膏スラリーを混合層あるいは析出層に環流させることは記載されていない。
また、引用文献3(前記第4の4(3)参照。)の【0002】には「スラリー中の異物除去手段としては、固定ふるい、振動ふるい、サイクロン、シックナーなどが知られている」と記載され、引用文献4(前記第4の4(4)参照。)の【0066】には「本実施形態4におけるスクリーニング工程では、スクリーニング設備として、重量リジェクト中の金属系粗大重量異物を遠心分離や単純沈降によって比重差分離することが可能な設備と、軽量リジェクト中の木系、プラスチック系粗大軽量異物をスクリーニングによって除去することが可能な設備とが組み合わされたものが用いられる。」と記載され、各種分離装置が公知であることは記載されているものの、重量異物を分離した後、さらに重量異物を含む画分を篩い分けする2段階の工程を備えることや、それらの工程で分離された二水石膏スラリーを混合層あるいは析出層に環流させることは記載されていない。
また、引用文献5(前記第4の4(5)参照。)の【0018】には「反応槽から出た再生石膏スラリー13のうち、一部が任意的に反応槽9に戻され、種晶として循環利用され、残余の大部分はドラムフィルター10に送られる。ドラムフィルター10では水性媒体と再生石膏との分離が行われ、再生石膏11を得る。一方、分離されたろ液12は晶析反応槽9に戻されて水性媒体として循環再利用されることになる。」と記載され、引用文献6(前記第4の4(6)参照。)の【0031】には「水和反応が完了したスラリーは固液分離により二水石膏を分離させるが、図示するように該ろ過前にその一部をとりわけ、混合槽において半水石膏粉末と混合する種結晶二水石膏スラリーとして用いることができる。」と記載され、分離された二水石膏スラリーを反応層に戻して種結晶として利用することが公知であることは記載されているものの、重量異物を分離した後、さらに重量異物を含む画分を篩い分けする2段階の工程を備えることは記載されていない。
そして、本件訂正発明2の「石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し」、「前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし」との特定事項は、本件明細書(前記第3の2参照。)の【0017】に「異物分離装置12内に沈降した重量異物には石膏スラリーが随伴しているので、振動篩14により篩上の重量異物と篩下の石膏スラリーとに分離し、石膏スラリーを還流路19を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。」、同【0010】に「重量沈降で重量異物のみを分離することは難しく、重量異物に石膏スラリーも随伴する。そこで混合物を重量異物と石膏スラリーに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることにより、石膏スラリーのロスを防止する。」と記載されるように、異物分離装置12で沈降した重量異物に随伴した石膏スラリーを振動篩14で分離することにより、石膏スラリーの回収効率を高めるものであり、そのような構成や効果については、甲1~甲6に記載も示唆もされていない。
したがって、前記相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明3
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明3も、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立人の主張
申立人は、令和5年6月28日の意見書の3頁下2行~4頁21行において、重力沈降により成分を分離する場合に、分離物に一部混入が生じることは技術常識である(甲3参照。)から、甲1発明においても、石膏スラリーと、金属等の重質残分とを分離する際に、重質残分に石膏スラリーが一部混入しているものといえることを根拠として、引用発明においても、重量残分と一緒に付随した石膏スラリーを廃棄するのではなく、ロスをなくすことを目的として、分離した重質残分と石膏スラリーをさらに周知な振動篩等により篩分けし、得られた石膏スラリーを環流することは、当業者が容易になしうるとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、甲3の【0018】に「このスラリーには研磨材も含まれているため、自動開閉弁4の開時間を短くし、閉時間を長くして研磨材の流出を防ぐ必要があ」ることは記載されているものの、スラリーと研磨材をさらに分離していずれかを再利用するとの技術思想は開示されていないから、甲3を参照した当業者であっても、甲1発明において、不要物として取り除いた重質残分から、さらに石膏スラリーを回収しようという動機付けを見いだすことはないと考えられる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上をまとめると、本件訂正発明2、3は、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 取消理由1、2及び申立理由2(甲2を主引例とした新規性、進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2の12頁26行~13頁21行、「図1の説明」(前記第4の4(2)ウ参照。)には、「石膏ボード廃材破砕物C」を「流動層か焼機6」で「焼成処理」し、「得られた半水石膏E」を「微粉砕機8で微粉砕処理」して「微粉砕処理後の半水石膏F」とし、「微粉砕処理後の半水石膏F」を「粉液混合機10」で「水性媒体と混合」して「スラリーを得」、この「スラリー」を「連続式の晶析反応槽11」で「半水石膏の溶解および二水石膏の析出」を行い「二水石膏スラリーGを得」、「晶析反応槽11から出た二水石膏スラリーGのうち、」「オーバーフロー分の二水石膏スラリーGは、」「振動篩13に送られ」、「篩上に繊維状異物Hが分離除去され、」「篩下より得られた二水石膏スラリー」を「ドラムフィルター14」で「二水石膏Iとろ液Jとに分離」する方法が記載されている。
イ してみると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「石膏ボード廃材破砕物Cを流動層か焼機6で焼成処理し得られた半水石膏Eを微粉砕機8で微粉砕処理して微粉砕処理後の半水石膏Fとし、微粉砕処理後の半水石膏Fを粉液混合機10で水性媒体と混合してスラリーを得、このスラリーを連続式の晶析反応槽11で半水石膏の溶解および二水石膏の析出を行い二水石膏スラリーGを得、晶析反応槽11から出た二水石膏スラリーGのうち、オーバーフロー分の二水石膏スラリーGは、振動篩13に送られ、篩上に繊維状異物Hが分離除去され、篩下より得られた二水石膏スラリーをドラムフィルター14で二水石膏Iとろ液Jとに分離する方法」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲2発明を対比すると、甲2発明の「石膏ボード廃材破砕物Cを流動層か焼機6で焼成処理し得られた半水石膏Eを微粉砕機8で微粉砕処理して微粉砕処理後の半水石膏Fとし」は、本件訂正発明2の「廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし」に相当する。
甲2発明の「微粉砕処理後の半水石膏Fを粉液混合機10で水性媒体と混合してスラリーを得、このスラリーを連続式の晶析反応槽11で半水石膏の溶解および二水石膏の析出を行い二水石膏スラリーGを得、」「篩下より得られた二水石膏スラリーをドラムフィルター14で二水石膏Iとろ液Jとに分離する方法」は、本件訂正発明2の「石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」に相当する。
甲2発明の「繊維状異物H」と本件訂正発明2の「重量異物」とは、ともに「石膏スラリー中の異物」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の異物を除去するために、
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させる、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」
<相違点2-1>
石膏スラリー中の異物が、本件訂正発明2は「重力沈降により」除去される「重量異物」であるのに対し、甲2発明は「繊維状異物」である点。
<相違点2-2>
異物の分離について、本件訂正発明2は「当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる」ものであるのに対し、甲2発明は「振動篩13に送られ、篩上に繊維状異物Hが分離除去され」る工程を含むものであるが、「重量異物」を除去するものではなく、「異物分離装置」で分離された「金属・砂を含む重質残分(下層部)」をさらに「篩い分け」するという2段階の工程を備えるものではなく、また、それぞれの工程で「分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる」ものでもない点。
事案に鑑み、前記相違点2-2について検討する。引用文献1の「図4-39 大型二水石膏の製造の概要」(前記第4の4(1)エ参照。)を、「図4-35 大型二水石膏の合成のための条件」(前記第4の4(1)ウ参照。)に記載されたフローチャートと合わせ読めば、引用文献1には、半水石膏懸濁液に二水石膏種結晶を添加して冷却することにより大形二水石膏を析出させる「冷却工程」、「水和反応工程」及び「熟成工程」を経たあと、「分離・ろ過工程」で「紙(上層部)」と「重質残分(下層部)」を分離することが記載されているものの、重量異物を分離した後、さらに重量異物を含む画分を篩い分けする2段階の工程を備えることや、それらの工程で分離された二水石膏スラリーを混合層あるいは析出層に環流させることは記載されていない。
また、前記アで検討したとおり、引用文献3~6にも、重量異物を分離した後、さらに重量異物を含む画分を篩い分けする2段階の工程を備えることは記載されていない。
そうすると、前記相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲2発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明3
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明3も、甲2発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上をまとめると、前記3(3)で検討した申立人の主張を考慮したとしても、本件訂正発明2、3は、甲2発明及び甲1~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 申立理由3(サポート要件)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、以下、この観点に立って検討を進める。
(2)発明の課題
本件訂正発明の解決しようとする課題は、本件明細書(前記第3の2参照。)に記載されたすべての事項からみて、同【0005】に記載された「石膏スラリー中の重量異物を効率的に分離すること」にあると認められる。
(3)明細書の記載及び判断
重量異物の分離について、本件明細書(前記第3の2参照。)の【0007】には「重量異物を風力選別等により乾式で分離することに比べ、石膏スラリー中で重量異物を沈降させると、重量異物とスラリーを容易に分離でき、分離装置に附属する篩等が石膏により目詰まりすることもない。この発明では、二水石膏スラリーから重量異物を効率的に除去できる。」と記載され、重量異物を除去するための具体的な構成について、同【0017】には、「異物分離装置12の底部にスラリー中の重量異物を沈降させ、異物分離装置12の上部から、石膏スラリーを還流路18を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。異物分離装置12内に沈降した重量異物には石膏スラリーが随伴しているので、振動篩14により篩上の重量異物と篩下の石膏スラリーとに分離し、石膏スラリーを還流路19を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。」と記載されている。
また、同【0022】、【0023】には、具体的な実験例として、「析出装置11の底部から石膏スラリーを15m3/hで抽出し、異物分離装置12に供給し、重量異物を濃縮した石膏スラリーを排出し、重量異物を除去済みの石膏スラリーを析出槽11等へ還流した。強制排出装置から排出した石膏スラリーを開口1mmの振動篩14により篩い分けした。」「乾式での篩い分けと異なりスラリーから重量異物を分離するので、開口1mmの篩でも二水石膏による目詰まりは生じなかった。」と記載されている。
そうすると、重量異物の分離について、「当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる」(前記第3の1参照。)と特定された本件訂正発明(前記第3の1参照。)は、本件明細書に記載された発明であり、しかも、その記載により当業者が前記「石膏スラリー中の重量異物を効率的に分離すること」との課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
(4)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、ア 本件特許発明は、重量異物を重量沈降させる際の要件が規定されていないため、本件特許発明の課題を解決できない場合を含むから、サポート要件を充足していない、イ 本件特許発明は、石膏スラリーを析出層と異物分離装置の間で循環させることが特定されていないから、サポート要件を充足していない、との趣旨の主張をしている。
しかしながら、前記アに関し、本件明細書(前記第3の2参照)の【0007】には「重量異物を風力選別等により乾式で分離することに比べ、石膏スラリー中で重量異物を沈降させると、重量異物とスラリーを容易に分離でき、分離装置に附属する篩等が石膏により目詰まりすることもない。この発明では、二水石膏スラリーから重量異物を効率的に除去できる。」と記載されており、本件訂正発明において、重量異物を重量沈降させる際の条件が規定されていなくとも、課題を解決できると認識できることは、前記(3)で検討したとおりである。
また、前記イに関し、石膏スラリーを異物分離装置から析出層に環流させることは、本件訂正発明において、「石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ」と特定されているから、申立人の主張は採用できない。
(5)まとめ
以上より、本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項2、3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は、本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701174