特許異議申立
2023-700521
弾性積層体を備える着用可能物品
- 審判番号
- 2023-700521
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-545155
- 登録番号
- 7175991
- 請求日
- 2023年05月19日
- 審決日
- 2023年08月01日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】出口 智也
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】塙 和也
- 【異議申立人】須藤 晃伸
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 西本 浩司
- 審判官 中野 裕之
- 分類
- P1651.121-Y (A61F) / P1651.537-Y (A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7175991号発明「弾性積層体を備える着用可能物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7175991号の請求項1~19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7175991号の請求項1~19に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年3月6日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和4年11月11日にその特許権の設定登録がされ、令和4年11月21日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~19に係る特許に対し、令和5年5月19日に特許異議申立人須藤晃伸(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、まとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
弾性積層体を備える着用可能物品であって、前記弾性積層体は、
内側不織布層及び外側不織布層を含み、前記内側不織布層及び前記外側不織布層は、約5%~約50%の区域にわたって互いに直接接合されており、
前記内側不織布層は、前記物品が着用されたときに前記外側不織布層よりも着用者の身体により近接し、前記内側不織布層は、前記外側不織布層とは反対の方を向く第1の表面と、前記外側不織布層の方を向く第2の表面と、を有し、
前記外側不織布層は、前記内側不織布層よりも高い親水性を有し、かつ前記内側不織布層の方を向く第1の表面と、前記内側不織布層とは反対の方を向く第2の表面と、を有し、
前記積層体は、NMR MOUSE法に供されたときの総キャリパを有し、前記総キャリパは、前記外側不織布層の第2の表面から始まり、前記内側不織布層の第1の表面に向かって延在する、前記総キャリパの50%に対応する第1の副キャリパと、前記内側不織布層の第1の表面から始まり、前記外側不織布層の第2の表面に向かって延在する、前記総キャリパの残り50%に対応する第2の副キャリパと、を有し、
前記弾性積層体は、前記NMR MOUSE法によると、1分後に少なくとも1.1の前記第1の副キャリパ対前記第2の副キャリパの液体比を有し、
前記弾性積層体において、前記内側不織布層の坪量が、前記外側不織布層の坪量以下であり、
前記弾性積層体において、前記内側不織布層が5g/m2~45g/m2の坪量を有し、前記外側不織布層が10g/m2~45g/m2の坪量を有し、
前記外側不織布層は、少なくとも50μmの厚さを有し、
前記弾性積層体が、少なくとも1つの方向において少なくとも110%の伸長率を有し、
前記弾性積層体が、前側ベルト及び後側ベルトから形成された弾性ベルトによって構成されているか、又は前記弾性ベルトを形成している、着用可能物品。
【請求項2】
前記弾性積層体は、前記NMR MOUSE法によると、20分後に少なくとも2.0の前記第1の副キャリパ対前記第2の副キャリパの液体比を有する、請求項1に記載の着用可能物品。
【請求項3】
前記弾性積層体が、前記内側不織布層及び外側不織布層が平坦化されるように伸張されたときに決定される、前記弾性積層体の表面積の少なくとも40%は、前記内側不織布層及び前記外側不織布層を除いていずれの更なる層も含まない、請求項1又は2に記載の着用可能物品。
【請求項4】
前記内側不織布層及び前記外側不織布層が非弾性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項5】
前記内側不織布層が、スパンボンド不織布、又はカードエアースルー結合不織布である、請求項1~4のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項6】
前記外側不織布層が、エアースルー結合カード不織布である、請求項1~5のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項7】
前記弾性積層体が、前記内側不織布層と前記外側不織布層との間に提供された、複数の弾性体を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項8】
前記物品が長手方向と、横断方向と、を有し、前記弾性積層体において、前記弾性体は、前記横断方向に沿って延在し、前記物品の前記長手方向に互いに離間している、請求項7に記載の着用可能物品。
【請求項9】
前記弾性体並びに前記内側不織布層及び前記外側不織布層が、接着剤によって少なくとも部分的に接合されている、請求項7又は8に記載の着用可能物品。
【請求項10】
前記内側不織布層及び前記外側不織布層、並びに前記複数の弾性体が、前記内側不織布層及び前記外側不織布層の繊維を直接接合することによって少なくとも部分的に接合されている、請求項7、8、又は9に記載の着用可能物品。
【請求項11】
前記外側不織布層は、約5%~約50%の開口率で、前記外側不織布層内に複数の開口部を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項12】
前記外側不織布層は、0.1mm2~25mm2の有効開口面積を有する、請求項11に記載の着用可能物品。
【請求項13】
前記弾性積層体において、前記内側不織布層は、5%~30%の開口率、及び0.1mm2~25mm2の前記内側不織布層の有効開口面積で、複数の開口部を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項14】
前記弾性積層体において、前記内側不織布層の気孔率が、前記外側不織布層の前記気孔率よりも小さい、請求項1~13のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項15】
前記弾性積層体が、弾性ベルト、ウエストバンド、サイドパネル、レッグカフ、及び外側カバーからなる群から選択される構成要素として使用されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の着用可能物品。
【請求項16】
前記弾性ベルトは、前記外側不織布層が前記弾性積層体を越えて伸長され、前記外側不織布層の前記伸長された部分が前記弾性積層体に折り重ねられている、外側層折り重なり領域を含み、前記外側層折り重なり領域は、それによって第3の層を形成し、その結果、前記弾性ベルトの少なくとも一部は、前記外側不織布層と前記第3の層との間に挟まれた前記内側不織布層を含み、使用時に前記着用者の前記身体の方を向く前記第3の層は、前記内側不織布層と同等以上の高い疎水性を有するように処理されている、請求項15に記載の着用可能物品。
【請求項17】
前記弾性ベルトは、前記内側不織布層が前記弾性積層体を越えて伸長され、前記内側不織布層の前記伸長された部分がそれ自体に折り重ねられている、内側層折り重なり領域を含み、前記内側層折り重なり領域は、それによって第3の層を形成し、その結果、前記弾性ベルトの少なくとも一部は、前記内側不織布層、前記外側不織布層、及び前記第3の層を含み、使用時に前記着用者の皮膚の方を向く前記第3の層は、前記内側不織布層よりも高い疎水性を有するように処理されている、請求項15に記載の着用可能物品。
【請求項18】
前記弾性ベルトは、前記外側不織布層が前記弾性積層体を越えて伸長され、前記外側不織布層の前記伸長された部分が前記第3の層に折り重ねられている、外側層折り重なり領域を更に含み、前記外側層折り重なり領域は、それによって第4の層を形成し、その結果、前記弾性ベルトの少なくとも一部は、外側不織布層と前記第4の層との間に挟まれた前記内側不織布層及び第3の層を含み、前記第3の層は前記第4の層を越えて延在し、前記第3の層の延在した部分は、前記弾性積層体が伸張されて、その結果、前記内側不織布層及び前記外側不織布層が平坦化されたときに決定される、前記弾性積層体の表面積の20%未満又は10%未満を形成している、請求項17に記載の着用可能物品。
【請求項19】
中央シャーシ及び環状弾性ベルトを含み、前記環状弾性ベルトは、前記弾性積層体から形成され、前側ベルト及び後側ベルトからなり、前記前側ベルトの中央は、前記中央シャーシの前側腰部パネルに接合されており、前記後側ベルトの中央は、前記中央シャーシの後側腰部パネルに接合されており、前記中央シャーシの残りは股部領域を形成し、前記前側ベルト及び前記後側ベルトはそれぞれ、左側パネル及び右側パネルを有し、前記中央シャーシは重ならず、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横断方向縁部は、シームによって接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成しており、前記前側ベルト及び前記後側ベルトは、前記股部領域において前記物品の長手方向に互いに連続しておらず、
前記中央シャーシは、衣類に面する表面上の外側カバー層と、前記外側カバー層の内側表面に取り付けられたバックシートと、を含み、前記外側カバー層の長手方向長さは、前記股部領域の前記長手方向長さよりも長く、かつ、前記バックシートの前記長手方向長さよりも短い、請求項15~18のいずれか一項に記載の着用可能物品。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第11号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1~2を申立てている。なお、本件特許の願書に添付した明細書を、「本件明細書」という。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~15、19は、下記の甲1に記載された発明及び甲2~11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~15、19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 申立理由2(明確性)
本件発明1~19は、ア)本件特許の請求項1、11には「約」という字句を伴って数値が規定されていることから、その発明特定事項によって特定される発明の範囲が明確でなく(特許異議申立書(以下、単に「申立書」という)第65頁)、イ)本件特許の請求項15に記載された「弾性積層体」の使用対象用途が、請求項15が引用する請求項1に記載された使用対象要素である「弾性ベルト」と整合しているとはいえないことから(申立書第65~66頁)、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1、11、15の記載、また当該請求項を直接的又は間接的に引用する請求項2~19は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件発明1~19に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
3 証拠方法
甲1:国際公開第2017/110396号
甲2:特開2008-23116号公報
甲3:特開2009-106667号公報
甲4:特開2008-228834号公報
甲5:特開平6-296638号公報
甲6:特開平7-236650号公報
甲7:特開2015-123141号公報
甲8:特開2015-128573号公報
甲9:特開2014-221122号公報
甲10:特許第6001810号公報
甲11:特開2015-104606号公報
第4 各甲号証
1 甲1に記載された発明
甲1の、[0027]~[0028]、[図2]から、肌側シート4及び非肌側シート5によって「弾性積層体」が形成されており、また、肌側シート4及び非肌側シート5は、所定の区域にわたって互いに直接接着されているといえる。また、該「弾性積層体」が、横方向において所定の伸長率を有していることは明らかである。
甲1の、[0017]、[図3]から、肌側シート4は、非肌側シート5とは反対の方を向く面と、前記非肌側シート5の方を向く面と、を有し、また、非肌側シート5は肌側シート4の方を向く面と、前記肌側シート4とは反対の方を向く面と、を有している点が看取される。
甲1の、[0017]、[0040]から、肌側シート4は、疎水性の繊維で構成された疎水性の不織布等からなるシートであり、非肌側シート5は、親水性の繊維で構成された親水性の不織布等からなるシートであることから、非肌側シート5は、肌側シート4よりも高い親水性を有しているといえる。
甲1の、[0024]、[0056]、[0071]、[0072][実施例2]から、「肌側シート4」の坪量が、「非肌側シート5」の坪量以下であるといえる。
甲1の、[0017]、[図2]から、「弾性積層体」は「腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBから形成された弾性ベルトによって構成されているか、又は前記弾性ベルトを形成」されているといえる。なお、弾性積層体が、少なくとも1つの方向において所定の伸長率を有していることは、出願時の技術常識から明らかである。
そして、[請求項1]、[0012]、[0017]、[0024]、[0027]、[0028]、[0040]、[0042]、[0050]、[0056]、[0065]、[0070]、[0071]、[0073]、[図1]~[図4]の記載事項を総合すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「弾性積層体を備えるパンツ型使い捨ておむつ1であって、前記弾性積層体は、
疎水性の繊維で構成された疎水性の不織布等からなる肌側シート4及び親水性の繊維で構成された親水性の不織布等からなる非肌側シート5を含み、前記肌側シート4及び前記非肌側シート5は、所定の区域にわたって互いに直接接着されており、
前記肌側シート4は、前記パンツ型使い捨ておむつ1が着用されたときに前記非肌側シート5よりも着用者の身体により近接し、前記肌側シート4は、前記非肌側シート5とは反対の方を向く面と、前記非肌側シート5の方を向く面と、を有し、
前記非肌側シート5は、前記肌側シート4よりも高い親水性を有し、かつ前記肌側シート4の方を向く面と、前記肌側シート4とは反対の方を向く面と、を有し、
前記肌側シート4は、前記非肌側シート5側に向かって窪んだ複数の窪み部41と、各該窪み部41内の頂部に融着部42とを備え、
前記融着部42は、前記肌側シート4の構成繊維が溶融して該構成繊維どうしが隙間なく融着している部分を含み、
前記肌側シート4は、その坪量が30g/m2以下であり、
前記窪み部内の前記融着部42は、その厚みが、前記肌側シート4における該窪み部41を除く部分の厚みの1/3以下であり
前記弾性積層体において、前記肌側シート4の坪量が、前記非肌側シート5の坪量以下であり、
前記弾性積層体において、前記肌側シート4が10g/m2~20g/m2の坪量を有し、前記非肌側シート5が20g/m2~30g/m2の坪量を有し、
前記非肌側シート5は、少なくとも100μmの厚さを有し、
前記弾性積層体が、横方向において所定の伸長率を有し、
前記弾性積層体が、腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBから形成された弾性ベルトによって構成されているか、又は前記弾性ベルトを形成している、着用可能物品。」
2 甲2に記載された事項
甲2の【0028】、【0073】の記載事項を総合すると、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「内層シート13(内側不織布層)及び外層シート12(外側不織布層)は、0%~40%の区域にわたって互いに直接接合され、少なくとも1つの方向において1.5~3.0倍の伸長率を有している弾性積層体。」
3 甲3に記載された事項
甲3の【0026】、【0031】、【0048】、【図8】の記載事項を総合すると、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「内シート1A(内側不織布層)及び外シート1B(外側不織布層)は、40%以下の区域にわたって互いに直接接合され、少なくとも1つの方向において220~320%の伸長率を有している弾性積層体。」
4 甲4に記載された事項
甲4の【0024】、【図4】の記載事項を総合すると、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「内層シート13A、13B(内側不織布層)及び外層シート12A、12B(外側不織布層)は、0%~40%以下の区域にわたって互いに直接接合された弾性積層体。」
5 甲5に記載された事項
甲5の【0005】の記載事項を総合すると、甲5には以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「少なくとも1つの方向において130~150%の伸長率を有しているウエストギャザー(弾性積層体)。」
6 甲6に記載された事項
甲6の【0010】、【0013】、【図2】の記載事項を総合すると、甲6には以下の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。
「少なくとも1つの方向において1.0倍以上1.3倍以下の伸長率を有している中央部N(弾性積層体)。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「パンツ型使い捨ておむつ1」、「疎水性の繊維で構成された疎水性の不織布等からなる肌側シート4」、「親水性の繊維で構成された親水性の不織布等からなる非肌側シート5」、「接着」、「肌側シート4は、前記非肌側シート5とは反対の方を向く面と、前記肌側シート5の方を向く面」、「前記非肌側シート5は、前記肌側シート4よりも高い親水性を有し、かつ前記肌側シート4の方を向く面と、前記肌側シート4とは反対の方を向く面と、非肌側シート5の方を向く面」、「前記肌側シート4が10g/m2~20g/m2の坪量を有し、前記非肌側シート5が20g/m2~30g/m2の坪量を有」すること、「前記非肌側シート5は、少なくとも100μmの厚さを有」すること、「腹側ウエストフラップFA」及び「背側ウエストフラップFB」は、それぞれの有する機能に照らして、本件発明1の「着用可能物品」、「内側不織布層」、「外側不織布層」、「接合」、「前記内側不織布層は、前記外側不織布層とは反対の方を向く第1の表面と、前記外側不織布層の方を向く第2の表面」、「前記外側不織布層は、前記内側不織布層よりも高い親水性を有し、かつ前記内側不織布層の方を向く第1の表面と、前記内側不織布層とは反対の方を向く第2の表面と、外側不織布層の方を向く第2の表面」、「前記内側不織布層が5g/m2~45g/m2の坪量を有し、前記外側不織布層が10g/m2~45g/m2の坪量を有」すること、「前記外側不織布層は、少なくとも50μmの厚さを有」すること、「前側ベルト」及び「後側ベルト」に相当する。
また、甲1発明の「肌側シート4及び非肌側シート5は、所定の区域にわたって互いに直接接着されて」いる態様と、本件発明1の「内側不織布層及び外側不織布層は、約5%~約50%の区域にわたって互いに直接接合されて」いる態様とは、「内側不織布層及び外側不織布層は、所定の区域にわたって互いに直接接合されて」いる態様の限りにおいて一致する。
更に、甲1発明の「弾性積層体が、横方向において所定の伸長率を有」する態様と、本件発明1の「弾性積層体が、少なくとも1つの方向において少なくとも110%の伸長率を有」する態様とは、「弾性積層体が、少なくとも1つの方向において所定の伸長率を有し」ている態様の限りにおいて一致する。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「弾性積層体を備える着用可能物品であって、前記弾性積層体は、
内側不織布層及び外側不織布層を含み、前記内側不織布層及び前記外側不織布層は、所定の区域にわたって互いに直接接合されており、
前記内側不織布層は、前記物品が着用されたときに前記外側不織布層よりも着用者の身体により近接し、前記内側不織布層は、前記外側不織布層とは反対の方を向く第1の表面と、前記外側不織布層の方を向く第2の表面と、を有し、
前記外側不織布層は、前記内側不織布層よりも高い親水性を有し、かつ前記内側不織布層の方を向く第1の表面と、前記内側不織布層とは反対の方を向く第2の表面と、を有し、
前記弾性積層体において、前記内側不織布層の坪量が、前記外側不織布層の坪量以下であり、
前記弾性積層体において、前記内側不織布層が5g/m2~45g/m2の坪量を有し、前記外側不織布層が10g/m2~45g/m2の坪量を有し、
前記外側不織布層は、少なくとも50μmの厚さを有し、
前記弾性積層体が、少なくとも1つの方向において所定の伸長率を有し、
前記弾性積層体が、前側ベルト及び後側ベルトから形成された弾性ベルトによって構成されているか、又は前記弾性ベルトを形成している、着用可能物品。」
<相違点1>
「内側不織布層及び外側不織布層は、所定の区域にわたって互いに直接接合されて」いる態様に関して、本件発明1では「内側不織布層及び前記外側不織布層は、約5%~約50%の区域にわたって互いに直接接合されて」いるのに対し、甲1発明では「肌側シート4及び非肌側シート5は、所定の区域にわたって互いに直接接着されて」いる点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記積層体は、NMR MOUSE法に供されたときの総キャリパを有し、前記総キャリパは、前記外側不織布層の第2の表面から始まり、前記内側不織布層の第1の表面に向かって延在する、前記総キャリパの50%に対応する第1の副キャリパと、前記内側不織布層の第1の表面から始まり、前記外側不織布層の第2の表面に向かって延在する、前記総キャリパの残り50%に対応する第2の副キャリパと、を有し、前記弾性積層体は、前記NMR MOUSE法によると、1分後に少なくとも1.1の前記第1の副キャリパ対前記第2の副キャリパの液体比を有し、」であるのに対し、甲1発明では、「NMR MOUSE法に供されたときの総キャリパ」及び「前記NMR MOUSE法による」「前記第1の副キャリパ対前記第2の副キャリパの液体比」が不明である点。
<相違点3>
「弾性積層体が、少なくとも1つの方向において所定の伸長率を有し」ている態様に関して、本件発明1では「弾性積層体が、少なくとも1つの方向において少なくとも110%の伸長率を有し」ているのに対し、甲1発明では「弾性積層体が、横方向において所定の伸長率を有」ている点。
イ 判断
事案に鑑みて、<相違点2>から検討する。
甲1発明の「弾性積層体」が、相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとまではいえず、甲1には、特に、「NMR MOUSE法による」「第1の副キャリパ対第2の副キャリパの液体比」について記載も示唆もされていない。また、甲2~甲11にも、相違点2に係る本件発明1の構成について記載も示唆もされていない。
申立人は、「引用発明1においても、非肌側シートが肌側シートよりも高い親水性51を有していること、肌側シート用及び非肌側シート用の不織布の坪量が本件特許発明1の内側不織布層及び外側不織布層の坪量とそれぞれ同程度であり、かつ肌側シートの坪量が非肌側シートの坪量以下であること、並びに、非肌側シートの厚みが本件特許発明1の外側不織布層と同程度であることによって、肌側シート及び非肌側シートを含む弾性積層体が着用者の汗を親水性の非肌側シートに素早く移行し易くし、再び疎水性の肌側シートや肌に戻り難くなるように構成されているから、引用発明1も本件特許発明1の構成要件1Fを備えている蓋然性が高い。」、「仮に、引用発明1が本件特許発明1の構成要件1Fを備えていないとしても、引用発明1において、着用者の汗を親水性の非肌側シートに素早く移行し易くし、再び疎水性の肌側シートや肌に戻り難くなるという効果がより一層奏されるようにするために、甲第1号証の開示内容を参照して肌側シート及び非肌側シートの坪量や厚み等を最適化し、本件特許発明1の上記構成要件1Fを備えるものとすることは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。」(申立書51~52頁)なる旨を主張しているが、申立人の蓋然性が高いという主張は、本件発明と同様の構成を有し且つ同構成に係る細部構成として同程度の数値範囲を備える甲1であれば、本件発明の相違点に係る構成を備える可能性があるというに留まるものであり、上記述べた「NMR MOUSE法による」「第1の副キャリパ対第2の副キャリパの液体比」に係る構成について、技術的にどのように蓋然性が高いものであるかについての説明がされているものではなく、直ちに採用できるものではない。この点、申立人の仮の主張についてみても、肌側シート及び非肌側シートの坪量や厚み等をどのように具体的に最適化し、本件発明1の上記構成要件1Fを備えるものとするのかについて、十分に説明がなされていない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~15、19について
本件発明2~15、19は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~15、19は、甲1発明及び甲2~6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由2(明確性)について
(1)本件特許の請求項1に記載された「内側不織布層及び外側不織布層を含み、前記内側不織布層及び前記外側不織布層は、約5%~約50%の区域にわたって互いに直接接合されており、」、本件特許の請求項11に記載された「前記外側不織布層は、約5%~約50%の開口率で、前記外側不織布層内に複数の開口部を有する」なる記載は、「約」という字句が使用されているものの、「約5%~約50%の区域」とは、「5%~50%の区域」及び当該区域と同等な数値範囲を特定していることは明らかであるから、本件特許の請求項1及び11に係る発明、及び請求項1又は11を直接的又は間接的に引用する請求項2~19に係る発明は明確である。
この点、本件明細書の【0130】に記載された事項とも整合するものである。
(2)本件特許の請求項15には「前記弾性積層体が、弾性ベルト、ウエストバンド、サイドパネル、レッグカフ、及び外側カバーからなる群から選択される構成要素として使用されている」と記載されている一方、請求項15が引用する請求項1には「前記弾性積層体が、前側ベルト及び後側ベルトから形成された弾性ベルトによって構成されているか、又は前記弾性ベルトを形成している」と記載されており、形式的に整合していない。
しかしながら、本件明細書の段落【0060】には「弾性積層体は、着用可能物品の弾性ベルト、ウエストバンド、サイドパネル、レッグカフ、及び外側カバーからなる群から選択される構成要素として使用されてもよい。」と説明されているように、請求項15では「弾性ベルト」以外の用途についての記載であることが理解できることから、本件特許の請求項15に係る発明、及び請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項16~19に係る発明は明確である。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700521