特許異議申立
2022-701041
歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物
- 審判番号
- 2022-701041
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-549029
- 登録番号
- 7058343
- 請求日
- 2022年10月21日
- 審決日
- 2024年10月07日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】出口 智也
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】遠藤 逸子
- 【異議申立人】家田 亘久
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 井上 典之
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.14 -YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7058343号発明「歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7058343号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~30〕について訂正することを認める。
特許第7058343号の請求項1~5、7、9~14、16~27に係る特許を維持する。
特許第7058343号の請求項6、8、15、28~30に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7058343号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2020-549029号)は、2018年(平成30年)3月29日を国際出願日とする出願であり、令和4年4月13日に設定の登録(請求項の数:30)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年10月21日に特許異議申立人 家田 亘久 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~30に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 5月 8日付け 取消理由通知
同年 8月 9日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月22日付け 訂正請求があった旨の通知
同年10月27日 意見書の提出(申立人)
令和6年 1月22日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月25日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 5月27日付け 手続補正指令(方式)(特許権者宛て)
同年 6月20日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 7月 8日付け 訂正拒絶理由通知
同年 8月28日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者)
なお、令和5年8月9日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和6年4月25日提出の訂正請求書による訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、申立人には、先の訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられており、下記第2の2で述べる本件訂正請求により、本件特許の特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠及び意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、本件訂正請求による訂正後の本件特許の請求項1~5、7、9~14、16~27に係る特許を維持すべきとの結論になると合議体は判断した。
したがって、本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正請求について
1 訂正請求書の補正及びその適否
(1) 第1の補正について
令和6年6月20日提出の手続補正書(方式)による補正(以下「第1の補正」という。)は、同年4月25日提出の訂正請求書の訂正事項18の説明において、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項26に3箇所ある「口腔ケア組成物」との記載について、それらのいずれが訂正される箇所であるのか正確に特定できるように記載を補正するものであり、訂正事項18の実体的な内容には何ら変更はなく、当該補正は、同年5月27日付け手続補正指令(方式)により命じられた事項についてされたものである。
したがって、第1の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項ただし書き第3号に該当するから、当該補正を認める。
(2) 第2の補正について
令和6年8月28日提出の手続補正書による補正(以下「第2の補正」という。)は、第1の補正後の同年4月25日提出の訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲において、訂正事項1により本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された組成物から「除く」とされる組成物が含む成分として「エチレンジアミン、四酢酸」なるものが記載されているところ(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)、当該記載を「エチレンジアミン四酢酸」に補正するものである。
第2の補正前の上記訂正請求書及び訂正特許請求の範囲は、「四酢酸」という現実に存在するのか不明な化合物の記載が含まれているため、技術的に適切に理解することができないものであったこと、また、令和6年4月25日提出の意見書において、訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1に係る発明の組成物は、甲2発明の認定の根拠とされた甲第2号証に記載の実施例VIを具体例の一つとする、甲第2号証の請求項1に規定された第1組成物(第一スズ組成物)の必須成分を含む組成物を除外したものである旨の説明が記載されているところ、甲第2号証の請求項1には、「エチレンジアミン、四酢酸」なる記載は存在せず、「エチレンジアミン四酢酸」との記載があることから、上記「エチレンジアミン、四酢酸」なる記載は、「エチレンジアミン四酢酸」の明らかな誤記であったことが理解できる。
そうすると、第2の補正は、当該「エチレンジアミン、四酢酸」なる明らかに誤った記載を、正しい記載である「エチレンジアミン四酢酸」に補正するものといえるから、「軽微な瑕疵の補正」に該当し、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、第2の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、当該補正を認める。
そして、第2の補正により、令和6年7月8日付け訂正拒絶理由通知書において指摘した訂正拒絶理由(概略、「四酢酸」なる化合物を含む技術的に理解できない組成物は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から「除く」ことができないから、令和6年4月25日提出の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない、というもの。)は、解消した。
2 訂正の請求の趣旨
上記1の第1及び第2の補正後の令和6年4月25日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7058343号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~30について訂正することを求める。」
というものである。
3 訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載、本件訂正請求書の記載、及び、本訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~22からなるものであると認められる。なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物。」
と記載されているのを、
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにフッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項1には、「請求項1を引用する請求項1~5,7,13,14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項7の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項8~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項3には、「請求項7を引用する請求項13,14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。」
と記載されているうち、請求項2~8に従属するものを削除するとともに、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
c)前記組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源と
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。」
に訂正する。
請求項9の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項10~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項5には、「請求項9を引用する請求項11~14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。」
と記載されているうち、請求項2~9に従属するものを削除するとともに、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
c)前記組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源と
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。」
に訂正する。
請求項10の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項11~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項6には、「請求項10を引用する請求項11~14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項8~11のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項9~11のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項12の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項13~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項7には、「請求項12を引用する請求項13,14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に、
「請求項1~12のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~12のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項13の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項14~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項8には、「請求項13を引用する請求項14,16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14に、
「請求項1~13のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~13のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項14の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項15~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項9には、「請求項14を引用する請求項16~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項16に、
「請求項1~15のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項16の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項17~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項11には、「請求項16を引用する請求項17~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項17に、
「請求項1~16のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項17の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項18~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項12には、「請求項17を引用する請求項18~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項18に、
「請求項1~17のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16,17いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項18の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項19~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項13には、「請求項18を引用する請求項19~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項20に、
「請求項1~19のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16~19いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項20の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項21~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項14には、「請求項20を引用する請求項21~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項21に、
「請求項1~20のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16~20いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項21の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項22~25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項15には、「請求項21を引用する請求項22~25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項24に、
「請求項1~23のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16~23いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項24の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項25、28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項16には、「請求項24を引用する請求項25も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項25に、
「請求項1~24のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~5,7,9~14,16~24いずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項25の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項17には、請求項28~30についての記載はないが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(18) 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項26に、
「口腔ケア組成物。」
と記載されているのを、
「口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。」
に訂正する。
請求項26の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項27~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項17には、請求項27~30についての記載はないが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(19) 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項27に
「前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の口腔ケア組成物。」
と記載されているのを、独立形式に改め、
「口腔ケア組成物であって、
(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源と、
(ii)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、又はこれらの組み合わせから選択される中性アミノ酸と、
(iii)前記組成物の0.2重量%~2重量%の、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される亜鉛イオン源と、
(iv)前記組成物の0.5重量%~1.5重量%の、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源と、
(v)前記組成物の0.01重量%~5重量%の、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される増粘系と、
(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vii)前記組成物の30重量%~55重量%の、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される保湿剤と、
を含み、
前記口腔ケア組成物が歯磨き組成物であり、
前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。」
に訂正する。
請求項27の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項28~30も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項17には、請求項28~30についての記載はないが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
(20) 訂正事項20
特許請求の範囲の請求項28を削除する。
(21) 訂正事項21
特許請求の範囲の請求項29を削除する。
(22) 訂正事項22
特許請求の範囲の請求項30を削除する。
4 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~25、28~30について、請求項2~25、28~30は、それぞれ請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~25、28~30に対応する訂正後の請求項1~25、28~30は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。
本件訂正前の請求項26~30について、請求項27~30は、それぞれ請求項26の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、訂正事項18によって記載が訂正される請求項26に連動して訂正されるから、訂正前の請求項26~30に対応する訂正後の請求項26~30は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。
そして、共通する訂正後の請求項28~30を有する、「一群の請求項」である訂正後の請求項1~25、28~30と、他の「一群の請求項」である訂正後の請求項26~30は、特許法施行規則第45条の4に規定されるとおり、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係が、当該関係に含まれる請求項を介して他の一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係を有するものであるから、組み合わされて1つの「一群の請求項」を構成するものである。
一方、本件訂正請求においては、「別の訂正単位とする求め」はされていない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である、訂正前の請求項1~30に対応する訂正後の請求項1~30についてされたものである。
5 訂正事項についての訂正要件の判断
訂正事項1~22についての訂正要件の判断は、以下のとおりである。
なお、下線は、訂正による記載の変更箇所を示すもののほか、当審合議体が便宜のために付したものである。
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載された事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の態様である「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」並びに「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から、令和5年5月8日付け取消理由通知で引用した甲1(特開昭63-66113号公報)に記載の「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」、及び、同取消理由通知で引用した甲2(米国特許第5281410号明細書)に記載の「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」という、特定の態様のみを除外しているだけであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではなく、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、上記アで述べたとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であって、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」並びに「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」という特定の態様のみを「除く」ものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項1についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2、4、10、20~22について
訂正事項2、4、10、20~22による訂正は、それぞれ、請求項6、8、15、28~30を削除するものにすぎないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないことは明らかであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2、4、10、20~22による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項3、7~9、11~17について
ア 訂正の目的の適否
(ア)
訂正事項3による訂正は、先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項7の記載について、請求項6の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
訂正事項7による訂正は、先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項12の記載について、請求項8の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
訂正事項8及び9による訂正は、それぞれ先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項13及び14の記載について、請求項6及び8の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
訂正事項11~17による訂正は、それぞれ先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項16~25の記載について、請求項6、8及び15の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
したがって、訂正事項3、7~9、11~17による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)
また、本件訂正前の請求項12には、
「前記亜鉛イオン源が、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」
という事項が記載されており、同項が記載を引用する請求項8、及び、請求項8が記載を引用する請求項1~7のいずれにも、「亜鉛イオン源」に該当する事項は記載されていないため、本件訂正前の請求項12に記載された事項と、同項が記載を引用する請求項8に記載された事項との間には、不整合が存在していた。
これに対して、請求項12が記載を引用する請求項9~11には、「亜鉛イオン源」が記載されており、不整合はないから、請求項12が請求項8の記載を引用した記載は誤記と解される。
それゆえ、訂正事項7による訂正により、請求項12が記載を引用する請求項から「請求項8」を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものでもある。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3、7~9、11~17による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項7、12~14、16~25の記載について、記載を引用する先行する複数の請求項のうち一部の請求項の記載を引用する部分を削除するだけのものであり、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないことは明らかであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3、7~9、11~17による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3、7~9、11~17についてのまとめ
上記ア及びイのとおり、訂正事項3、7~9、11~17による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5による訂正は、請求項1~8のいずれかの記載を引用する請求項9の記載について、請求項2~8の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する部分について、請求項1の記載の内容を変更することなく請求項1の記載を引用しない形(独立形式)に書き替えるものであり、また、請求項9に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載された事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の態様である「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項5による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項9の記載について、請求項2~8の記載を引用する部分を削除し、請求項1の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項9に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであるから、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、訂正事項5による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項9の記載について、請求項2~8の記載を引用する部分を削除し、請求項1の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項9に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項5についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5) 訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6による訂正は、請求項1~9のいずれかの記載を引用する請求項10の記載について、請求項2~9の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する部分について、請求項1の記載の内容を変更することなく請求項1の記載を引用しない形(独立形式)に書き替えるものであり、また、請求項10に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載した事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の態様である「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項6による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項10の記載について、請求項2~9の記載を引用する部分を削除し、請求項1の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項10に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであるから、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、訂正事項6による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項10の記載について、請求項2~9の記載を引用する部分を削除し、請求項1の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項10に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項6についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6) 訂正事項18について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項18による訂正は、請求項26に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載した事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の態様である「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項18による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項18に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであるから、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、訂正事項18による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項18による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項18に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項18についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7) 訂正事項19について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項19による訂正は、請求項26の記載を引用する請求項27の記載について、請求項26の記載の内容を変更することなく請求項26の記載を引用しない形(独立形式)に書き替えるものであり、また、請求項27に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載した事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の事項である「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項19による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項19による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項26の記載を引用する請求項27の記載について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項27に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであるから、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、訂正事項19による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項19による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項19による訂正は、上記アで説示したとおり、請求項26の記載を引用する請求項27の記載について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、請求項27に記載の「口腔ケア組成物」から、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」という特定の態様のみを除外しているだけであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項19による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項19についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項19による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(8) 独立特許要件について
訂正事項1~22による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的として含むものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~30に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~30に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~30〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~5、7、9~14、16~27(以下「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5、7、9~14、16~27に記載されたとおりのものであり(請求項6、8、15、28~30は、本件訂正により削除される。)、本件訂正請求項1~5、7、9~14、16~27に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5、7、9~14、16~27に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める(以下「本件訂正発明1」等といい、総称して「本件訂正発明」ということがある。下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。
「【請求項1】
組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにフッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。
【請求項2】
前記中性アミノ酸が、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記中性アミノ酸が、グリシン、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記中性アミノ酸が、前記組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記中性アミノ酸が、前記組成物の1重量%~3重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.1重量%~2重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
c)前記組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源と
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。
【請求項10】
組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
c)前記組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源と
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。
【請求項11】
前記亜鉛イオン源が、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記亜鉛イオン源が、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含む、請求項1~5,7,9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の0.1重量%~2重量%のフッ化物イオン源を更に含む、請求項1~5,7,9~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
前記組成物の0.01重量%~5重量%の増粘剤を更に含み、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~5,7,9~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物の1重量%~35重量%の研磨剤を更に含み、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~5,7,9~14,16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の5重量%~25%重量%の研磨剤を更に含む、請求項1~5,7,9~14,16,17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記研磨剤がシリカ研磨剤である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含む、請求項1~5,7,9~14,16~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物の30重量%~55重量%の保湿剤を更に含む、請求項1~5,7,9~14,16~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記保湿剤が、ポリオールである、請求項20又は21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリオールが、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、9.0以下のpHを有する、請求項1~5,7,9~14,16~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、4.0~8.5のpHを有する、請求項1~5,7,9~14,16~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
口腔ケア組成物であって、
(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源と、
(ii)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、又はこれらの組み合わせから選択される中性アミノ酸と、
(iii)前記組成物の0.2重量%~2重量%の、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される亜鉛イオン源と、
(iv)前記組成物の0.5重量%~1.5重量%の、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源と、
(v)前記組成物の0.01重量%~5重量%の、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される増粘系と、
(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vii)前記組成物の30重量%~55重量%の、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される保湿剤と、
を含み、
前記口腔ケア組成物が歯磨き組成物である、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。
【請求項27】
口腔ケア組成物であって、
(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源と、
(ii)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、又はこれらの組み合わせから選択される中性アミノ酸と、
(iii)前記組成物の0.2重量%~2重量%の、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される亜鉛イオン源と、
(iv)前記組成物の0.5重量%~1.5重量%の、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源と、
(v)前記組成物の0.01重量%~5重量%の、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される増粘系と、
(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vii)前記組成物の30重量%~55重量%の、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される保湿剤と、
を含み、
前記口腔ケア組成物が歯磨き組成物であり、
前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物を除く)。
【請求項28】
(削除)
【請求項29】
(削除)
【請求項30】
(削除) 」
第4 特許異議の申立ての理由及び当審において通知した取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(5)に示す甲第1号証~甲第11号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件特許の請求項1~30に係る特許を取り消すべきとの特許異議の申し立てをしており、その理由(以下「申立理由」という。)は、申立書の記載全体からみて、下記(1)~(4)に示すとおりのものと認められる。
なお、ここでいう「請求項1」及び「本件発明1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
(1) 申立理由1(新規性)
ア 甲1に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~11、13~25、28~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 甲2に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 甲3に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(進歩性)
ア 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(、甲9に記載された事項、及び、甲2~3、10~11に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 甲3を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 甲4を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 甲5を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3(産業上の利用可能性)
本件特許の請求項28~30に係る発明は、対象における歯肉健康を促進する方法に関するものであって、人間を治療する方法の発明に該当し、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4) 申立理由4(明確性)
本件特許の請求項1~25、28~30の記載は、組成物がフッ化第一スズを含む場合、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、当業者が理解できないため、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲1 特開昭63-66113号公報
甲2 米国特許第5281410号明細書
甲3 米国特許第4902497号明細書
甲4 特開平8-151324号公報
甲5 特開平8-151325号公報
甲6 特開2006-312613号公報
甲7 特開平10-158131号公報
甲8 特開2005-306890号公報
甲9 特表2009-521507号公報
甲10 堀井欣一、「フッ素とう蝕予防」、
新潟歯学会誌、1980年、10巻、2号、83~93頁
甲11 田中入、「フッ化ナトリウム配合歯磨剤の口腔内動態に関する
研究」、
口腔衛生学会雑誌、1993年、43巻、357~368頁
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
(1) 先の取消理由通知の取消理由の概要
当審合議体が令和5年5月8日付け取消理由通知(以下「先の取消理由通知」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~ウのとおりであり、当審合議体は、申立人が提出した甲1~3、9~11とともに、下記エの引例Aを職権で追加して引用した。先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係は、下記オのとおりである。
なお、ここでいう「請求項1」及び「本件発明1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
ア 取消理由1(新規性)
(ア) 甲1に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~4、6~8、13~25、28~30に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性)
(ア) 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~30に係る発明は、甲1に記載された発明(、甲9に記載された事項、並びに、甲2~3、10~11及び引例Aに記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は、甲2に記載された発明(、及び、甲2~3、10~11に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 取消理由3(産業上の利用可能性)
本件特許の請求項28~30に係る発明は、対象における歯肉健康を促進する方法に関するものであって、人間を治療する方法の発明に該当し、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 当審合議体が職権で追加して引用した文献
引例A 峯裕一ほか、「市販洗口剤と歯磨剤がチタンの表面性状に与える
影響」、日本口腔インプラント学会誌、2012年3月、25巻、
1号、22~30頁
オ 先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係
取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)は、申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項1~8、13~25、28~30を対象とするものに対応する。
取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)は、申立理由1(甲2に基づく新規性欠如)に対応する。
取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)に対応する。
取消理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)に対応するものである。
取消理由3(産業上の利用可能性)は、申立理由3(産業上の利用可能性)に対応する。
(2) 取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
当審合議体が令和6年1月22日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~ウのとおりであり、取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由の対応関係は、下記エのとおりである。
なお、ここでいう「本件訂正請求項1」及び「本件訂正発明1」等は、先の訂正請求により訂正された請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
ア 取消理由1(新規性:甲2に基づく新規性欠如)
本件訂正発明1~4、6~8、13~25は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正請求項1~4、6~8、13~25に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性)
(ア) 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明9、11~26は、甲1に記載された発明(、甲9に記載された事項、並びに、甲2~3、10~11及び引例Aに記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項9、11~26に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明1~8、13~25は、甲2に記載された発明(、及び、甲2~3、10~11に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項1~8、13~25に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 取消理由4(明確性)
本件訂正請求項6、7、13~25が直接的に又は間接的に記載を引用する本件訂正請求項1では、組成物について、「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」と規定しているところ、「ピロリン酸第一スズ」は「ピロリン酸イオン源」に該当すると解されるから、「第一スズイオン源」の選択肢として「ピロリン酸第一スズ」を含むとする、本件訂正請求項6、7、13~25の記載は、本件訂正請求項1の記載と矛盾しており、「ピロリン酸第一スズ」を含む組成物が、本件訂正発明6、7、13~25の組成物に該当するか否か明確に把握することができないため、本件訂正請求項6、7、13~25の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由
の対応関係
取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)は、先の取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項1~4、6~8、13~25を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項9、11~26を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項1~8、13~25を対象とするものに対応する。
取消理由4(明確性)は、先の訂正請求により、本件訂正請求項1において、組成物について「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」と規定されたことによって新たに生じたものである、
第5 取消理由についての当審の判断
当審合議体は、本件訂正請求項1~5、7、9~14、16~27に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由1~2、4、及び、先の取消理由通知で通知した取消理由1~3によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 引用文献等の記載事項
取消理由の判断において引用する文献(甲1~3、9~11及び引例A)は、上記第4の1(5)及び2(1)エに示したとおりである。
以下では、便宜のために、これらの文献に加えて、甲4~8についても、記載事項の摘記等を行う。
(1) 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項
甲1(特開昭63-66113号公報)には、以下の事項が記載されている。
なお、摘記中の下線は、特に注釈がない限り、当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の文献についても同様。
・摘記甲1a(請求項1)
「1.トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する口腔用組成物において、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体から選ばれる水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20重量%配合したことを特徴とする口腔用組成物。」
・摘記甲1b(1頁右下欄7行~2頁左上欄3行)
「従来、トコフェロールやそのエステル誘導体を口腔用組成物に配合し、血行促進作用を与えて歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防、治療することが知られている(・・・)。
しかしながら、・・・、トコフェロールやそのエステル誘導体は、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステルの水溶性塩を含有する口腔用組成物に配合した場合、長期間、特に高温下で長期間保存するとトコフェロールやそのエステル誘導体が分解され易く、アルキル硫酸エステルの水溶性塩を含む口腔用組成物中での安定性に問題があった。」
・摘記甲1c(2頁左上欄11~15行)
「本発明は・・・、アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもトコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持することができる口腔用組成物を提供することを目的とする。」
・摘記甲1d(2頁左上欄17行~右上欄10行)
「本発明者らは、・・・、水溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体がトコフェロール及びその誘導体を安定化させる効果に優れ、これらの水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20%(重量%、以下同じ)配合することにより、トコフェロールやそのエステル誘導体が高温下で長期間安定に保持され、アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもその残存率が高まることを知見し、本発明をなすに至った・・・。」
・摘記甲1e(2頁右下欄15行~3頁左上欄10行)
「ここで、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩としては、無機の水溶性化合物、特に・・・が好ましく用いられる。具体的には、フッ化ナトリウム、・・・、塩化亜鉛、フッ化第1錫、塩化第1錫等が挙げられる。」
・摘記甲1f(3頁左上欄11行~右上欄19行)
「また、安定化剤として使用されるアミノ酸としては、・・・α-アミノ酸が最も好適である。・・・。具体的には、モノアミノカルボン酸としてグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラノン、L-ドパ、チロシン、トリプトファン、シスチン、システィン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸等があり、モノアミノジカルボン酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン等があり、ジアミノモノカルボン酸としてはアルギニン、ヒスチジン、リジン等がある。これらの中では、特にグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンが特に好適である。
また、安定化剤としては、アミノ酸塩も有効に使用し得、アミノ酸塩としてはアミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が用いられる。これらの中では特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。」
・摘記甲1g(3頁左下欄7~8行)
「なお、上述した安定化剤はその1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。」
・摘記甲1h(3頁左下欄9~15行)
「安定化剤の配合量は、組成物全体の0.2~20%であり、特にアルカリ金属無機塩、アルカリ土類金属無機塩、アンモニウム無機塩、無機亜鉛塩、無機錫塩を使用する場合は0.5~20%、アミノ酸、アミノ酸塩、アミノ酸誘導体を使用する場合は0.3~10%、より望ましくは0.5~5%とすることが好適である。」
・摘記甲1i(3頁左下欄19行~右下欄8行)
「本発明の口腔用組成物は練歯磨、潤製歯磨、液状歯磨等の歯磨類、マウスウォッシュ、歯肉マツサージクリーム、口腔用パスタなどとして調製、適用され得るが、口腔用組成物のその他の成分としてはその種類等に応じた適宜な成分が使用される。例えば、歯磨の場合には研磨剤、粘稠剤、粘結剤、甘味剤、香料、防腐剤などが用いられる。なお、本発明においては、界面活性剤、有効成分として、上述した以外の他のものも併用しても差し支えない。」
・摘記甲1j(3頁右下欄20行~4頁左上欄2行)
「以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。」
・摘記甲1k(6頁左上欄6行~右上欄3行)
「〔実施例12〕 練歯磨
炭酸カルシウム 45.0%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ヒドロキシエチルセルロース 1.0
ソルビット 15.0
グリセリン 15.0
プロピレングリコール 2.0
ラウリル硫酸ナトウリム 1.0
セチル硫酸ナトリウム 0.5
酢酸トコブエロール 1.0
トラネキサム酸 0.05
塩化亜鉛 1.0
パラベン 0.3
安息香酸ナトリウム 0.5
サッカリンナトリウム 0.2
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
・摘記甲1l(7頁左下欄14行~右下欄13行)
「〔実施例19〕 練歯磨
第2リン酸カルシウム 50.0%
酸化アルミニウム 3.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
カラギーナン 0.5
ソルビット 15.0
グリセリン 15.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
酢酸トコフェロール 0.2
塩酸クロロへキシジン 0.01
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
グリシン 1.0
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.2
パラベン 0.2
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
・摘記甲1m(9頁右上欄8行~左下欄7行)
「〔実施例25〕 練歯磨
無水ケイ酸 25.0%
二酸化チタン 2.0
カルボキシメチル 0.5
セルロースナトリウム
アルギン酸ナトリウム 1.0
グリセリン 40.0
ポリエチレングリコール 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
酢酸トコフェロール 0.2
グルコン酸クロロへキシジン 0.001
フッ化ナトリウム 0.2
フェニルアラニン 0.1
リジン 0.1
アスパラギン酸カリウム 1.9
パラベン 0.05
安息香酸ナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
・摘記甲1n(9頁左下欄9行~右下欄8行)
「〔実施例26〕 練歯磨
無水ケイ酸 10.0%
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
キサンタンガム 0.5
ソルビット 50.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.08
酢酸トコフェロール 1.0
フッ化第1錫 0.4
グリシン 0.5
アスパラギン 0.8
グルタミン酸ナトリウム 0.8
パラベン 0.2
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
イ 甲1に記載された発明
上記アで認定した甲1の記載事項によれば、甲1には、従来、トコフェロール又はそのエステル誘導体を配合した口腔用組成物により、血行促進作用を与えて歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防、治療することが知られていたこと(摘記甲1b)、トコフェロール又はそのエステル誘導体は、アルキル硫酸エステルの水溶性塩を含有する口腔用組成物に配合した場合、長期間保存すると分解され易く、組成物中での安定性に問題があったこと(摘記甲1b)、そこで、トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する口腔用組成物において、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体から選ばれる水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20重量%配合することによって、トコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持できることを知見したこと(摘記甲1a(請求項1)、摘記甲1d)、当該安定化剤である水溶性化合物のうち、アルカリ金属塩、亜鉛塩、錫塩の具体例としては、フッ化ナトリウム、塩化亜鉛、フッ化第1錫、塩化第1錫等が挙げられ(摘記甲1e)、アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラノン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システィン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トラネキサム酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられ、それらのナトリウム塩等のアミノ酸塩も使用し得ること(摘記甲1f)、が記載されている。
そして、甲1には、請求項1に記載の口腔用組成物の具体例の一つである実施例26の練歯磨として(摘記甲1n)、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲1発明≫
「練歯磨であって、
無水ケイ酸 10.0重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.5重量%
キサンタンガム 0.5重量%
ソルビット 50.0重量%
プロピレングリコール 3.0重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5重量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.08重量%
酢酸トコフェロール 1.0重量%
フッ化第1錫 0.4重量%
グリシン 0.5重量%
アスパラギン 0.8重量%
グルタミン酸ナトリウム 0.8重量%
パラベン 0.2重量%
安息香酸ナトリウム 0.2重量%
サッカリンナトリウム 0.1重量%
香 料 1.0重量%
精 製 水 残
を含む、錬歯磨。」
(2) 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
ア 甲2の記載事項
甲2(米国特許第5281410号明細書)には、以下の事項が記載されている。
なお、甲2の原文は英語で記載されているため、当審合議体による訳文で摘記した。
・摘記甲2a(請求項1~5、12~13)
「1.以下を有する、着色の低減とともにプラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物:
(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、第1組成物、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体
を含む、第2組成物。
2.フッ化第一スズの含有量が約0.05%~約1.1%であって、第一スズ組成物が約3.0~約5.0のpHである、請求項1に記載の口腔用組成物。
3.フッ化物でない第一スズ化合物の量が約0.1%~約11%である、請求項1に記載の口腔用組成物。
4.第一スズ組成物及びピロリン酸組成物のための薬学的に許容しうる担体が練歯磨である、請求項3に記載の口腔用組成物。
5.練歯磨が歯科用シリカ研磨剤も含む、請求項4に記載の口腔用組成物。」
・摘記甲2b(1欄下から22行~2欄4行)
「抗プラーク/抗歯肉炎の分野における多くの開示にもかかわらず、製品の改善の必要性は今も存在する。・・・米国特許第5,004,597号・・・には、口腔用組成物がグルコン酸第一スズで安定化されたフッ化第一スズを含むことが記載されている。これらの組成物は、優れた抗プラーク及び抗歯周病の利点を付与する。しかし、該組成物は、エナメル質表面の多少の着色を生じさせる。
本発明者らは、第一スズイオン製剤とともにピロリン酸イオンを含む組成物を使用することにより、着色が低減され得ることを発見した。
したがって、本発明の目的は、着色の低減とともに改善された抗プラーク/抗歯周病の効果をもたらす組成物を提供することである。
本発明の更なる目的は、1つの組成物中のフッ化第一スズ及び別の第一スズ化合物と、別の組成物中のピロリン酸イオンとを用いる、改善された製品を提供することである。
・・・
ここで用いられる全ての百分率及び比率は、他に特記がない限り、全組成物の重量あたりのものである。・・・。」
・摘記甲2c(2欄29~33行)
「本発明の第一スズ組成物は、フッ化第一スズ及び第2の第一スズ化合物と、薬学的に許容しうる担体とを含む。ピロリン酸組成物は、ピロリン酸イオンと、薬学的に許容しうる担体とを含む。」
・摘記甲2d(2欄下から9~1行)
「 フッ化第一スズ
フッ化第一スズは、第一スズ組成物の第1の必須成分である。この材料は、定番の商品であり、第一スズ組成物中に約0.05%~約1.1%、好ましくは約0.4%~約0.95%存在する。別個の可溶性の第一スズ及びフッ素塩を用いてin-situでフッ化第一スズを形成させてもよいし、塩を直接添加してもよい。in-situでフッ化第一スズを形成させるのに適した塩は、多くの他の塩のうち塩化第一スズ及びフッ化ナトリウムを含む。」
・摘記甲2e(3欄1~16行)
「 第2の第一スズ塩
第2の第一スズ塩は、本発明の第一スズ組成物の第2の必須成分である。第2の第一スズ塩は、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、グリシン、及び、それらの混合物の、第一スズ塩である。これらの化合物は、既知の第一スズのキレートであり、本組成物中に、キレートとして、又は、フッ化第一スズを用いる場合のように、in-situでキレートが形成される別々の可溶性の第一スズ及びキレート剤として加えることができる。適切なα-ヒドロキシ酸は、グルコン酸、・・・を含む。このような塩は塩化第一スズ及びフッ化第一スズを含む。第2の第一スズ化合物は、約0.1%~約11%、好ましくは約2%~約4%のレベルで本発明の組成物中に存在する。」
・摘記甲2f(3欄26行~4欄7行)
「本発明での使用が意図される研磨艶だし材料は、・・・、フッ化第一スズから供給されるフッ化物イオンを沈降させうるカルシウムイオンを供給しない、任意の材料であり得る。これらは、例えば、ゲル及び沈降性を含むシリカ、・・・を含む。研磨剤の混合物もまた、使用してもよい。・・・。
種々のタイプの歯科用シリカ研磨剤は、歯のエナメル及び象牙質を過度に研磨することなく、優れた歯のクレンジング及び艶だし性能といった特有の利益を与えることができる。シリカ研磨材料はまた、可溶性フッ化物源と非常に優れた相溶性を有する。これらの理由から、これらは本発明での使用に好ましい。
・・・
ここに記載される組成物中の研磨剤は、歯磨剤が練歯磨である場合には、約6%~約70%、好ましくは約15%~約25%のレベルで存在する。・・・。」
・摘記甲2g(4欄24~33行)
「追加の抗齲蝕効力を与えるために、歯磨剤及び他の口腔組成物に追加の水溶性フッ化化合物を、25℃で組成物中に及び/又は使用時に、約0.0025%~約5.0%、好ましくは約0.005%~約2.0%のフッ化物イオン濃度を与えるのに十分な量で存在させることは、一般的である。好適なフッ化物は、フッ化第一スズに加え、フッ化ナトリウム、フッ化インジウム、及びモノフルオロリン酸ナトリウムである。」
・摘記甲2h(4欄47~58行)
「練歯磨を製造する際に、望ましい粘稠性を付与するための何らかの増粘材料を加えることが必要である。好適な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、及び、カルボキシメチルセルロースナトリウム、・・・等のセルロースエーテルの水溶性塩である。・・・。コロイド性ケイ酸マグネシウムアルミニウム又は微細シリカも、テクスチャーを更に改善するために増粘剤の一部として使用できる。増粘剤は、全組成物中に0.5重量%~5.0重量%の量で使用できる。」
・摘記甲2i(4欄59~63行)
「練歯磨の硬化を避けるため、何らかの保湿材料を含有させることも望ましい。適切な保湿剤は、約15%~約70%の全体レベルで、グリセリン、ソルビトール及び他の食用多価アルコールを含む。」
・摘記甲2j(5欄30~37行)
「本発明の組成物のpH及び/又は口内におけるそのpHは、口の硬組織及び軟組織に安全であり、第2の第一スズ化合物の最適な効果を与える、如何なるpHでもよい。このようなpHは、通常、約3.0~約5.0であり、好ましくは約4.0~約5.0、最も好ましくは約4.5である。所望の場合には、7.5程度に高いなど、より高いpHにおいてフィチン酸を用いてもよい。」
・摘記甲2k(5欄38~51行)
「 ピロリン酸組成物
本発明の第2組成物は、有効量のピロリン酸イオンを、含む/提供を可能にする、組成物である。・・・。
第一スズ組成物及びピロリン酸組成物は、液体又はペーストの場合、別々の容器内に配置される。ロゼンジ又はガムの場合、それらの別々の容器は必要ではないが、大半の例では別々に包装される。製品の形状とは無関係に、それらはキットの一部として包装されてもよい。」
・摘記甲2l(6欄1~9行)
「 組成物の使用
方法の側面における本発明は、安全有効量の、ここに記載した2つの組成物を口腔に適用することに関連する。・・・。
2つの組成物は、どのような順序でも用いられ得るが、第一スズ組成物が最初に用いられることが好ましい。」
・摘記甲2m(6欄~7欄)
「 実施例V~VIII
以下は、本発明の追加的な第一スズ歯磨剤組成物の代表例である。
[図:0001418185000001.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アで認定した甲2の記載事項によれば、甲2には、着色の低減とともにプラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物であって、
(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、「第1組成物」、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体、
を含む、「第2組成物」、
を有する口腔用組成物について記載されており(摘記甲2a)、当該「第1組成物」は「第一スズ組成物」とも称され、当該「第2組成物」は「ピロリン酸組成物」とも称され、それぞれが別々に練歯磨の態様とされ得ること(摘記甲2a(請求項4)、摘記甲2b)、当該「第一スズ組成物」は優れた抗プラーク及び抗歯周病の利点を付与し、当該「ピロリン酸組成物」と併用することによって、着色が低減され得ること(摘記甲2b)、当該「第一スズ組成物」における、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はグリシンの第一スズ塩は、組成物中に、キレートとして、又は、in-situでキレートが形成されるように、可溶性の第一スズ及びキレート剤として別々に加えることができること(摘記甲2e)、が記載されている。
そして、甲2には、当該「第一スズ組成物」の具体例の一つである実施例VIの歯磨剤組成物として(摘記甲2m)、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲2発明≫
「歯磨剤組成物であって、
水 12.500重量%
ソルビトール(70%溶液) 43.878重量%
グリセリン 10.000重量%
PEG-12 3.000重量%
二酸化チタン 0.525重量%
シリカ 20.000重量%
カラギーナンNa 0.450重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.400重量%
アルキル硫酸Na(27.9%溶液) 4.000重量%
グリシン酸Na 0.772重量%
フッ化第一スズ 0.454重量%
塩化第一スズ二水和物 1.141重量%
サッカリンNa 0.230重量%
香料 1.000重量%
青色1号(1%溶液) 0.050重量%
水酸化ナトリウム(50%溶液) 0.600重量%
を含み、pHが4.5である、歯磨剤組成物。」
(3) 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
ア 甲3の記載事項
甲3(米国特許第4902497号明細書)には、以下の事項が記載されている。
なお、原文は英語で記載されているため、当審合議体による訳文で摘記した。
・摘記甲3a(請求項1~5)
「1.歯石の低減に有効な方法であって、以下の成分を含有する安全有効量の練歯磨組成物を、歯石形成に感受性の対象の歯のエナメル質に適用することを含む方法:
(a)塩化第一スズからの少なくとも1000ppmの第一スズイオン;
(b)グルコン酸又はその水溶性塩であり、第一スズに対する平衡結合定数が約105未満であるモノ又はジカルボン酸又は多価アルコールである錯化剤;及び、
(c)許容しうる練歯磨の担体;
ここで、前記組成物のpHは約3.5~約7.0である。
2.第一スズイオンの濃度が約1000~約2500ppmである、請求項1に記載の方法。
3.練歯磨がシリカ歯科用研磨剤も含む、請求項2に記載の方法。
4.練歯磨がフッ化物イオン源も含む、請求項3に記載の方法。
5.フッ化物イオン源がフッ化第一スズである、請求項4に記載の方法。」
・摘記甲3b(2欄3~16行)
「抗歯石の分野における多くの開示にもかかわらず、製品及び方法の改善の必要性は今も存在する。本発明は、第一スズイオンが、ある種のカルボン酸又は多価アルコールと錯体化したときに、抗歯石効果を付与することに関する。
したがって、本発明の目的は、歯石を低減するための方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、第一スズイオンを利用する方法を提供することである。
・・・
ここで用いられているすべての百分率及び比率は、他に特記がない限り、全組成物の重量あたりのものである。・・・。」
・摘記甲3c(2欄38~41行)
「本発明の方法に有用な組成物は、ある種のカルボン酸又は多価アルコールと錯体化する第一スズイオンと、薬理学的に許容可能な担体とを含む。」
・摘記甲3d(2欄下から6行~3欄11行)
「 第一スズイオン
第一スズイオンは、本発明の方法で用いられる組成物の第1の必須成分である。適切な第一スズイオン源は、多くの他の第一スズイオン源のうち、塩化第一スズ、酢酸第一スズ、臭化第一スズ、グルコン酸第一スズを含む。可溶性の状態の第一スズイオンのレベル(ppm)は、少なくとも1000、好ましくは約1500~約2500、・・・である。これらのレベルは、練歯磨のペースト1部を水3部に希釈させた場合のものである。・・・。
第一スズイオンは、錯化剤との錯体として組成物に配合してもよく、錯化剤以外の物質との塩の形で配合してもよい。」
・摘記甲3e(3欄12~24行)
「 カルボン酸又は多価アルコールである錯化剤
本発明において有用な適切なモノ及びジカルボン酸は、多くの他のもののうち、酢酸、酪酸、グルコン酸、グリシン、安息香酸、酒石酸、マレイン酸、サリチル酸を含む。酸は、遊離酸又は水溶性塩の形態(例えば、アルカリ金属塩)で用いられてもよい。多価アルコールは、ソルビトール、グリセリン及びポリエチレングリコール等のものを含む。
ポリカルボン酸のレベルは、約0.01%~約10%、好ましくは約0.5%~約5%である一方、多価アルコールのレベルは、約10%~約95%である。」
・摘記甲3f(3欄33行~4欄10行)
「本発明での使用が意図される研磨艶だし材料は、・・・、フッ化第一スズから供給されるフッ化物イオンを沈降させうるカルシウムイオンを供給しない、任意の材料であり得る。これらは、例えば、ゲル及び沈降性を含むシリカ、・・・を含む。研磨剤の混合物もまた、使用してもよい。・・・。
種々のタイプの歯科用シリカ研磨剤は、歯のエナメル及び象牙質を過度に研磨することなく、優れた歯のクレンジング及び艶だし性能といった特有の利益を与えることができる。シリカ研磨材料はまた、可溶性フッ化物源と非常に優れた相溶性を有する。これらの理由から、これらは本発明での使用に好ましい。
・・・
ここに記載される組成物中の研磨剤は、歯磨剤が練歯磨である場合には、約6%~約70%、好ましくは約15%~約25%のレベルで存在する。」
・摘記甲3g(4欄28~36行)
「追加の抗齲蝕効力を与えるために、歯磨剤及び他の口腔組成物に追加の水溶性フッ化化合物を、25℃で組成物中に及び/又は使用時に、約0.0025重量%~約5.0重量%、好ましくは約0.005重量%~約2.0重量%のフッ化物イオン濃度を与えるのに十分な量で存在させることは、一般的である。好適なフッ化物は、フッ化第一スズに加え、フッ化ナトリウム、フッ化インジウム、及びモノフルオロリン酸ナトリウムである。」
・摘記甲3h(4欄49~60行)
「練歯磨を製造する際に、望ましい粘稠性を付与するための何らかの増粘材料を加えることが必要である。好適な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、及び、カルボキシメチルセルロースナトリウム、・・・等のセルロースエーテルの水溶性塩である。・・・。コロイド性ケイ酸マグネシウムアルミニウム又は微細シリカも、テクスチャーを更に改善するために増粘剤の一部として使用できる。増粘剤は、全組成物中に0.5重量%~5.0重量%の量で使用できる。」
・摘記甲3i(4欄61~66行)
「練歯磨の硬化を避けるため、何らかの保湿材料を含有させることも望ましい。適切な保湿剤は、約15%~約70%の全体レベルで、グリセリン、ソルビトール及び他の食用多価アルコールを含む。これは錯化剤として含まれるこのような材料の量を含む。」
・摘記甲3j(5欄28~33行)
「本発明の組成物のpH及び/又は口内におけるそのpHは、口の硬組織及び軟組織に安全であり、第2のスズ化合物の最適の効果を与える、如何なるpHでもよい。このようなpHは、通常、約3.0~約5.0、好ましくは約4.0~約5.0、最も好ましくは約4.5である。」
・摘記甲3k(5欄41~43行)
「本発明は、安全有効量の、ここに記載した組成物を口腔に適用することに関連する。」
・摘記甲3l(6欄)
「 実施例VIII-X
以下は、本発明の練歯磨の代表例である。
[図:0001418185000002.jpg]
上記組成物において、塩化第一スズは、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、及び硫酸第一スズに置き換え可能であり、グルコン酸ナトリウムは、以下の酸又はそれらの水溶性塩:酢酸、酪酸、グリシン、安息香酸、酒石酸、マレイン酸及びサリチル酸、に置き換え可能であり、同様の結果が得られる。」
イ 甲3に記載された発明
上記アで認定した甲3の記載事項によれば、甲3には、歯石の低減に有効な方法に用いられる、以下の成分:
(a)塩化第一スズからの少なくとも1000ppmの第一スズイオン;
(b)グルコン酸又はその水溶性塩であり、第一スズに対する平衡結合定数が約105未満であるモノ又はジカルボン酸又は多価アルコールである錯化剤;及び、
(c)許容しうる練歯磨の担体
を含有する練歯磨組成物が記載され(摘記甲3a「請求項1」)、当該組成物の実施例の一つである実施例IXの歯磨剤組成物として(摘記甲3l)、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲3発明≫
「歯磨剤組成物であって、
水 12.500重量%
ソルビトール(70%溶液) 45.712重量%
グリセリン 10.000重量%
二酸化チタン 0.525重量%
シリカ 20.000重量%
カラギーナンNa 0.350重量%
アルキル硫酸Na(27.9%溶液) 4.000重量%
グルコン酸Na 2.082重量%
フッ化第一スズ 0.450重量%
塩化第一スズ二水和物 1.500重量%
サッカリンNa 0.230重量%
香料 1.000重量%
青色1号(FD&C Blue #1;1%溶液) 0.051重量%
水酸化ナトリウム(50%溶液) 0.600重量%
を含み、pHが4.5である、歯磨剤組成物。」
(4) 甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
ア 甲4の記載事項
甲4(特開平8-151324号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲4a
「【請求項1】アルギニンまたはその誘導体および抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤
・・・
【請求項6】抗菌活性を示す化合物がフッカ物である請求項1、2および3記載の抗菌製剤
【請求項7】フッカ物がフッカナトリウムまたはフッカスズである請求項6記載の抗菌製剤 」
・摘記甲4b
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗菌剤が単独では作用しにくいバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌活性を示す抗菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】抗菌剤には種々のタイプのものがあり、・・・幅広く用いられている。しかし、その抗菌効果には限界があり、・・・、必ずしも満足できるものばかりではなかった。
【0003】
【問題点を解決するための手段】・・・、その作用機序は明らかではないが、アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、より優れた抗菌効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】尚、特開平3-178926にはアルギニンを配合した口腔用組成物が開示されているが、これはその歯周疾患の慢性炎症時の出血予防、浮腫抑制効果について述べたものであり、・・・。
【0005】本発明はアルギニンまたはその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤、・・・を提供するものである。本発明の抗菌製剤は・・・、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これら感染症の予防や治療・・・に非常に有用である。」
・摘記甲4c
「【0006】本発明のアルギニンの誘導体はアルギニンの塩酸塩や燐酸塩、アルギニンエチルエステル、・・・など製造上許容されるものなら何れでもよく、・・・。本発明中アルギニンまたはその誘導体の配合量は抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲4d
「【0007】・・・抗菌活性を示す化合物とは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッカ物、・・・が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、・・・である。これらの抗菌剤は単独で、またはこれらを組み合わせて用いることができ、その配合量は抗菌剤の総量で抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲4e
「【0011】本発明の抗菌製剤は、常法により製造することができ、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム状、固形物とすることができる。例えば、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)、・・・、イリゲーター用溶液等の形態にすることができる。更に、前記の成分に加え、抗菌製剤の形態に応じて通常の有効基剤を用いてもよい。例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ビタミンE、アズレンなどの薬効剤やその他界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、粘結剤、研磨剤等を配合することができる。」
・摘記甲4f
「【0012】
【実施例】次に、実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実験例においては、本発明の抗菌性剤の有する微生物の集合体や塊に対する抗菌活性を評価した。(当審注:「性剤」は「製剤」の明らかな誤記と認める。)
【0013】実験例1
方法:Staphylococcus aureus ATCC6538菌株を・・・(TSB)培地100mlで37℃、24時間培養後、遠心(・・・)洗浄、滅菌蒸留水に懸濁したものを試験菌液とした。
【0014】この試験菌液10mlをメンブランフィルター(・・・)に吸引固着させたものを微生物の菌塊モデルとした。
【0015】この菌塊モデルを塩化セチルピリジニウム(CPCと略す)溶液、塩化セチルピリジニウムとアルギニン(ARGと略す)の混合溶液、あるいはこれらにプルロニック(PLUと略す)を加えた溶液中に一定時間浸漬し、滅菌蒸留水で軽く洗浄後、10mlの滅菌蒸留水中で・・・分散し、この一白金耳を・・・(TSA)培地に塗抹、37℃で24時間培養後、生育の有無を肉眼で判定した。
・・・
【0018】実験例2
方法:試験菌をStreptococcus mutans ATCC25175とし、抗菌剤としてチモール、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(SFEと略す)を用い、実験例1と同様な実験を行なった。
【0019】結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
・・・
・・・、ARGの添加あるいはARGとSFEの両方の添加により殺菌に必要な時間が短縮され、優れた抗菌効果が認められた。・・・。
【0021】実験例3
方法:試験菌としてEscherichia coli K12を用い、種々の抗菌剤とアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)の組み合わせ溶液の抗菌活性を実験例1と同様な方法により評価した。
【0022】結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
[図:0001418185000003.jpg]
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べアルギニン塩酸塩の添加により、殺菌に要する時間が短縮され、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
【0024】実験例4
方法:Porphyromonas gingivalis 381菌株を・・・(BHI)培地100mlで37℃48時間嫌気培養後、菌液1mlを47℃に保温した1.5%寒天を含むBHI20mlに混釈し、直径10cmシャーレに分注、冷却した菌入りプレートを作成した。本プレート上に内径8mm、高さ1cmのステンレス製円筒をたて、それに種々の抗菌剤とアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)およびプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液を満たし、37℃48時間嫌気培養後、形成された発育阻止帯の直径を測定した。
【0025】結果を表4に示す。
【0026】
【表4】
・・・
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)の添加およびプルロニック(PLU)の添加により、発育阻止帯の直径が大きくなり、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
・・・
実施例5
イリゲーション液 配合量(重量%)
チモール 0.2
フッカ第一スズ 0.2
アルギニンエチルエステル 5.0
ビタミンE 0.1
香料 1.0
精製水 残量 」
イ 甲4に記載された発明
上記アで認定した甲4の記載事項によれば、甲4には、アルギニンを配合した口腔用組成物が歯周疾患の慢性炎症時の出血予防や浮腫抑制の効果を奏することが知られていたこと(摘記甲4b【0004】)、アルギニン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とを配合することにより、バイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対して優れた抗菌効果を発揮することを見出したこと(摘記甲4b【0003】)、アルギニン又はその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合した抗菌製剤(摘記甲4a【請求項1】)が、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に非常に有用であること(摘記甲4b【0005】)、「抗菌活性を示す化合物」の例として「フッカナトリウム」及び「フッカスズ」が挙げられ(摘記甲4a【請求項7】、摘記甲4d【0007】)、「アルギニンの誘導体」の例として「アルギニンの塩酸塩」が挙げられること(摘記甲4c【0006】)、当該「抗菌製剤」は、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)の形態にすることができ、粘結剤や研磨剤等の通常の有効基剤が用いられること(摘記甲4e【0011】)、が記載されており、当該「抗菌製剤」の抗菌活性を評価した「実験例3」では、0.5重量%の「フッカ第一スズ」と0.5重量%の「アルギニン塩酸塩(ARG-Cl)」との組み合わせ溶液(No.6)が、抗菌剤(フッカ第一スズ)単独(No.5)と比較して、殺菌に要する時間を短縮し、優れた抗菌活性を発揮したことが示されている(摘記甲4f【0023】)。
そうすると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲4発明≫
「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための、抗菌製剤であって、
0.5重量%のフッカ第一スズと、
0.5重量%のアルギニン塩酸塩と、
を含む、
抗菌製剤。」
(5) 甲5の記載事項及び甲5に記載された発明
ア 甲5の記載事項
甲5(特開平8-151325号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲5a
「【請求項1】リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤からなることを特徴とする抗菌製剤
・・・
【請求項5】抗菌活性を示す化合物がフッカ物である請求項1および2記載の抗菌製剤
【請求項6】フッカ物がフッカナトリウムまたはフッカスズである請求項5記載の抗菌製剤 」
・摘記甲5b
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗菌剤が単独では作用しにくいバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌活性を示す抗菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】抗菌剤には種々のタイプのものがあり、・・・幅広く用いられている。しかし、その抗菌効果には限界があり、・・・、必ずしも満足できるものばかりではなかった。
【0003】
【問題点を解決するための手段】・・・、その作用機序は明らかではないが、リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物から選ばれる1種または2種以上を配合し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】尚、特開平3-178925ならびに特開平2-56413には、リジンを配合した口腔用組成物が開示されているが、前者はその歯周疾患の慢性炎症時の出血予防、浮腫抑制効果について述べたものであり、後者は歯表面の変色を防止する効果について述べたものであり、・・・。
【0005】本発明はリジンまたはその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合し、さらにはこれらとノニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を配合してなる抗菌製剤を提供するものである。本発明の抗菌製剤は・・・、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これら感染症の予防や治療・・・に非常に有用である。」
・摘記甲5c
「【0006】本発明のリジンの誘導体はリジンの塩酸塩や燐酸塩、リジンエチルエステル、・・・など製造上許容されるものなら何れでもよく、・・・。本発明中リジンまたはその誘導体の配合量は抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲5d
「【0007】・・・抗菌活性を示す化合物とは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッカ物、・・・が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、・・・である。これらの抗菌剤は単独で、またはこれらを組み合わせて用いることができ、その配合量は抗菌剤の総量で抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲5e
「【0011】本発明の抗菌製剤は、常法により製造することができ、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム状、固形物とすることができる。例えば、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)、・・・、イリゲーター用溶液等の形態にすることができる。更に、前記の成分に加え、抗菌製剤の形態に応じて通常の有効基剤を用いてもよい。例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ビタミンE、アズレンなどの薬効剤やその他界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、粘結剤、研磨剤等を配合することができる。」
・摘記甲5f
「【0012】
【実施例】次に、実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実験例においては、本発明の抗菌性剤の有する微生物の集合体や塊に対する抗菌活性を評価した。(当審注:「性剤」は「製剤」の明らかな誤記と認める。)
【0013】実験例1
方法:Staphylococcus aureus ATCC6538菌株を・・・(TSB)培地100mlで37℃、24時間培養後、遠心(・・・)洗浄、滅菌蒸留水に懸濁したものを試験菌液とした。
【0014】この試験菌液10mlをメンブランフィルター(・・・)に吸引固着させたものを微生物の菌塊モデルとした。
【0015】この菌塊モデルを塩化セチルピリジニウム(CPCと略す)溶液、塩化セチルピリジニウムとリジン(LYSと略す)の混合溶液、あるいはこれらにプルロニック(PLUと略す)を加えた溶液中に一定時間浸漬し、・・・、10mlの滅菌蒸留水中で・・・分散し、この一白金耳を・・・(TSA)培地に塗抹、37℃で24時間培養後、生育の有無を肉眼で判定した。
・・・
【0018】実験例2
方法:試験菌をStreptococcus mutans ATCC25175とし、抗菌剤としてチモール、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(SFEと略す)を用い、実験例1と同様な実験を行なった。
【0019】結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
・・・
・・・、LYSの添加あるいはLYSとSFEの両方の添加により殺菌に必要な時間が短縮され、優れた抗菌効果が認められた。・・・。
【0021】実験例3
方法:試験菌としてEscherichia coli K12を用い、種々の抗菌剤とリジン塩酸塩(LYS-Cl)トプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液の抗菌活性を実験例1と同様な方法により評価した。(当審注:「トプルロニック」は「とプルロニック」の明らかな誤記と認める。)
【0022】結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
[図:0001418185000004.jpg]
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べリジン塩酸塩の添加により、殺菌に要する時間が短縮され、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
【0024】実験例4
方法:Porphyromonas gingivalis 381菌株を・・・(BHI)培地100mlで37℃48時間嫌気培養後、菌液1mlを47℃に保温した1.5%寒天を含むBHI20mlに混釈し、直径10cmシャーレに分注、冷却した菌入りプレートを作成した。本プレート上に内径8mm、高さ1cmのステンレス製円筒をたて、それに種々の抗菌剤とリジン塩酸塩(LYS-Cl)およびプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液を満たし、37℃48時間嫌気培養後、形成された発育阻止帯の直径を測定した。
【0025】結果を表4に示す。
【0026】
【表4】
・・・
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べリジン塩酸塩(LYS-Cl)の添加およびプルロニック(PLU)の添加により、発育阻止帯の直径が大きくなり、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。」
イ 甲5に記載された発明
上記アで認定した甲5の記載事項によれば、甲5には、リジンを配合した口腔用組成物が歯周疾患の慢性炎症時の出血予防や浮腫抑制の効果を奏することが知られていたこと(摘記甲5b【0004】)、リジン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を配合することにより、バイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌効果を発揮することを見出したこと(摘記甲5b【0003】)、リジン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を配合した抗菌製剤(摘記甲5a【請求項1】)が、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に非常に有用であること(摘記甲5b【0005】)、「抗菌活性を示す化合物」の例として「フッカナトリウム」及び「フッカスズ」が挙げられ(摘記甲5a【請求項6】、摘記甲5d【0007】)、「リジンの誘導体」の例として「リジンの塩酸塩」が挙げられること(摘記甲5c【0006】)、当該「抗菌製剤」は、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)の形態にすることができ、粘結剤や研磨剤等の通常の有効基剤が用いられること(摘記甲5e【0011】)、が記載されており、当該「抗菌製剤」の抗菌活性を評価した「実験例3」では、0.5重量%の「フッカ第一スズ」と0.5重量%の「リジン塩酸塩(LYS-Cl)」と0.1重量%のプルロニック(PLU)との組み合わせ溶液(No.6)が、抗菌剤(フッカ第一スズ)単独(No.5)と比較して、殺菌に要する時間を短縮し、優れた抗菌活性を発揮したことが示されている(摘記甲5f【0023】)。
そうすると、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲5発明≫
「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための、抗菌製剤であって、
0.5重量%のフッカ第一スズと、
0.5重量%のリジン塩酸塩と、
0.1重量%のプルロニックと、
を含む、
抗菌製剤。」
(6) 甲6の記載事項
甲6(特開2006-312613号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲6a
「【請求項1】
歯周病を予防または改善する効果を有し、その作用機序が互いに異なる、複数種のアミノ酸を含むことを特徴とする口腔用組成物。」
・摘記甲6b
「【0020】
・・・、歯周病を予防または改善する効果を有し、その作用機序が互いに異なる、複数種のアミノ酸を含むことにより、歯周病を予防または改善する効果が顕著に発現することを見出した。・・・。
・・・
【0023】
歯周病を予防または改善する効果を発現するための機能としては、例えば、口腔内組織を構成する細胞のコラーゲン合成を促進する機能(コラーゲン合成促進能)、歯周病菌のコラゲナーゼ活性を阻害する機能(コラゲナーゼ活性阻害能)、口腔内組織を構成する細胞の細胞を賦活化する機能(細胞賦活化能)等が挙げられる。このような機能が2つ以上組み合わされるように、アミノ酸を選択する。
・・・
【0025】
コラーゲン合成促進能を有するアミノ酸としては、例えば、セリン、グルタミン酸ナトリウム、トレオニン、リジン、グリシン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0027】
口腔用組成物中の、コラーゲン合成促進能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・
【0028】
また、コラゲナーゼ活性阻害能を有するアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0030】
口腔用組成物中の、コラゲナーゼ活性阻害能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・
【0031】
また、細胞賦活化能を有するアミノ酸としては、例えば、アルギニン、バリン、イソロイシン、トレオニン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0033】
口腔用組成物中の、細胞賦活化能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・」
(7) 甲7の記載事項
甲7(特開平10-158131号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲7a
「【請求項1】 グリシン、アラニン、ロイシン、ヒスチジン及びプロリンから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸からなり、構成アミノ酸数が1~4個である成分を歯周病細菌内毒素中和有効成分として含有してなることを特徴とする歯周病予防用口腔用組成物。」
・摘記甲7b
「【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者は、・・・、グリシン、アラニン、ロイシン、ヒスチジン及びプロリンから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸からなり、構成アミノ酸数が1~4個である成分が、インビトロ細菌内毒素活性抑制試験(エンドスペシー法)で内毒素活性を抑制すること、家兎皮内毒性試験による内毒素活性抑制試験で発赤、腫脹、出血性壊死を抑制するなど、優れた抗内毒素効果を有し、歯周病細菌内毒素を中和する優れた効果を有し、歯周病の予防に有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
・・・
【0007】・・・。本発明の有効成分は、グリシン、アラニン、ロイシン、ヒスチジン及びプロリンから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸からなり、構成アミノ酸数が1~4個、・・・からなるものである
・・・
【0009】本発明の口腔用組成物は、上記有効成分を含有するものであるが、その配合量は組成物全体の0.001~5%(重量%、以下同様)、特に0.01~3%とすることが好ましい。」
(8) 甲8の記載事項
甲8(特開2005-306890号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲8a
「【請求項1】
アクチノバシルス・アクチノマイセテムコミタンス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フゾバクテリウム・ヌクレエータムから選ばれる歯周病細菌に、(I)ラクトフェリン、ラクトフェリン分解物およびラクトフェリン関連ペプチドから選ばれる1種以上と、(II)グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、ロイシン、ヒスチジンおよびプロリンから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸からなり、構成アミノ酸数が1~3個であるアミノ酸又はペプチド成分とを作用させる上記細菌の内毒素中和方法。」
・摘記甲8b
「【0018】
(I)/(II)の配合比率(モル比)は10-5~1000、特に0.0001~10とすることが好ましい。10-5未満であると、期待以上の相乗効果が出にくく、1000を超えると相乗効果が定常に達する。」
(9) 甲9の記載事項
甲9(特表2009-521507号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲9a
「【請求項17】
クエン酸亜鉛剤及びトコフェロール剤を含んでなる有効成分を含んでなる口腔用組成物と炎症口腔組織を接触させることを含んでなる、口腔組織中の炎症を治療する方法。」
・摘記甲9b
「【0016】
・・・。本発明における使用に適した例示の亜鉛イオン供給源には、例えば、クエン酸亜鉛、・・・、グルコン酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、・・・、フッ化亜鉛、・・・、乳酸亜鉛、・・・、塩化亜鉛、又はこれらの混合物のような亜鉛塩が含まれる。
・・・
【0018】
・・・様々な態様の文脈において、クエン酸亜鉛が有効成分として有用であるのは、抗菌、抗歯垢、抗歯石、及び抗口臭の活性剤としてそれが特に有効であるからである。亜鉛イオンを in vivo で提供することに加えて、クエン酸アニオンは、有効成分の抗菌効力に特に寄与して、それ自体で口腔用ケア組成物において特に有効であると考えられている。」
・摘記甲9c
「【0039】
・・・、口腔組織中の炎症を治療する方法は、トコフェロール剤を含む有効成分を有する口腔用組成物を接触させることを含む。ある態様において、有効成分は、上記に記載したようなクエン酸亜鉛剤をさらに含む。有効成分のトコフェロール剤は、1以上の炎症性メディエーターの産生を低下及び/又は抑制して、口腔組織中の炎症を抑える場合がある。」
・摘記甲9d
「【0043】
・・・上記に記載の口腔用組成物のいずれでも有効成分として含めることができる、追加の任意選択の口腔用ケア化合物には、例えば、追加の抗菌剤、美白剤、追加の抗虫歯及び歯石制御剤、歯周活性剤、研磨剤、息清涼剤、口臭制御剤、歯脱感作剤、唾液刺激剤、美白剤、及びこれらの組合せが含まれる。・・・。
・・・
【0045】
・・・。上記に記載の亜鉛イオン供給源とポリリン酸に追加する有用な抗歯石剤には、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及びピロリン酸第一スズのような、スズイオン供給源が含まれる。
【0046】
・・・いくつかの態様において、有効成分は、抗虫歯及び/又は抗歯石剤として、フッ化物イオン供給源又はフッ素供与成分を約25ppm~5,000ppmのフッ化物イオンを供給するのに十分な量で含んでよい。フッ化物イオン供給源は、可溶性アルカリ金属塩のような無機フッ化物塩、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、・・・、並びにフッ化第一スズのようなスズフッ化物を含む。」
・摘記甲9e
「【0066】
・・・以下の非限定的な実施例(複数)により、本発明をさらに例示する。
実施例1(当審注:下線は原文のとおり。)
以下の成分を組み合わせることによって、本発明の歯磨き組成物を作製する:
【0067】
【表1】
[図:0001418185000005.jpg]
【0068】
・・・歯磨き剤1は、抗歯垢、抗歯石、抗虫歯、及び抗炎症の口腔用組成物を提供する、クエン酸亜鉛剤、α-トコフェロール剤(ビタミンE)、パンテノール(ビタミンB5)剤、及びフッ化物供与源(モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP))が含まれる有効成分を含んでなる口腔用組成物に対応する。・・・」
(10) 甲10の記載事項
甲10(堀井欣一、「フッ素とう蝕予防」、新潟歯学会誌、1980年、10巻、2号、83~93頁)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲10a(86頁左欄11~20行)
「 フッ素によるう蝕予防法とその効果
う蝕予防に用いるフッ素の利用方法は,大別して2つに分けられる。1つは,主として歯牙形成期に作用させる全身的応用であり,もう1つは歯牙萌出後,歯面に作用させる局所応用である。前者には,水道水フッ素化,飲食物へのフッ素添加(塩,ミルクなど),錠剤や薬液として投与,などがある。後者では,フッ素液歯面塗布,フッ素液による洗口(フッ素洗口法),歯磨剤へのフッ素添加が実用化されている。」
・摘記甲10b(90頁右欄2行~91頁左欄1行)
「3.フッ素添加歯磨剤22)
フッ素がう蝕予防に有効であることが明らかになりはじめた1945年頃から,これを歯磨剤に加え,予防効果の研究が行われ出した。まず,NaFを用いて実験を行ったが効果は認められなかったという。ついでSnF2(0.4%)について試みられ,20~40%のう蝕予防効果が報告されている。しかし,この弗化第1錫の場合,長期間使用すると歯に茶色の着色がみられることがある。1961年,EricssonがNaF,SnF2とNa2PO3F(・・・)の3種のフッ化物について,種々の基礎剤とフッ素の結合を調べ,Na2-PO3Fが他の2種に比べ多くの基礎剤との反応性が少く,とくにCaC03との反応性が低いことを示した。以来,このフッ素化合物添加歯磨剤のう蝕予防効果について多くの研究があり,その効果は20~40%と報告されている。今日では商品として市販され,多数の人々に利用されている。」
(11) 甲11の記載事項
甲11(田中入、「フッ化ナトリウム配合歯磨剤の口腔内動態に関する研究」、口腔衛生学会雑誌、1993年、43巻、357~368頁)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲11a(358頁左欄2~28行)
「現在,う蝕予防にフッ化物がさまざまな形で用いられている。・・・。次に,フッ化物の局所応用にはいくつかの法がある。・・・。なかでも近年,フッ化物配合歯磨剤のう蝕抑制効果がホーム・ケアにおけるブラッシングと相まって評価されている。そこには,歯垢の除去作用,形成阻止作用および再付着阻止作用などの歯磨剤としての機能7)に加えて,歯磨きという行為がきわめて日常的なものであり,他の方法に比較して,導入や動機づけが行いやすいという背景がある。さらに,歯磨剤に配合されたフッ化物が歯垢や唾液のなかに継続的に存在することによって,エナメル質の脱灰の抑制ならびに初期う蝕病変の再石灰化が期待できると考えられているからである8-10)。」
・摘記甲11b(366頁左欄7~28行)
「歯磨剤に配合されたフッ化物が,口腔内でどのような動態を示しているかを明らかにするために,フッ化ナトリウム配合歯磨剤使用時における歯垢中および唾液中フッ素濃度の変化,歯垢中有機酸産生量の変化および歯垢中細菌数の変化について検討を行い,次の結論を得た。
1.本歯磨剤の使用により,歯垢中フッ素濃度および唾液中フッ素濃度は有意に増加することが明らかとなった。
2.・・・。
3.本歯磨剤の使用により,グルコース負荷条件における歯垢の乳酸産生が,有意に抑制されることが明らかとなった。
4.250ppmF歯磨剤を5日間使用した場合,統計学的有意差は認めないものの,歯垢中細菌数が若干減少する傾向がみられた。
以上の結果から,本歯磨剤の使用は,う蝕の発生抑制および進行抑制に寄与することが示唆された。」
(12) 引例Aの記載事項
引例A(峯裕一ほか、「市販洗口剤と歯磨剤がチタンの表面性状に与える影響」、日本口腔インプラント学会誌、2012年3月、25巻、1号、22~30頁)には、以下の事項が記載されている。
・摘記Aa(23頁右欄14~16行)
「本実験で使用した各市販洗口剤(以下洗口剤)を表1に示す.さらに各市販歯磨剤(以下歯磨剤)を表2に示す.」
・摘記Ab(24頁)
「
[図:0001418185000006.jpg]
」
2 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1) 甲1を主引例とした場合
甲1を主引例とした場合については、上記第4の2(1)ア(ア)及びイ(ア)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~30に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)イ(ア)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された請求項9、11~26に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項6、8、15、28~30は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~5、7、9~14、16~27に係る発明について、甲1を主引例とした場合の新規性及び進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(1)イで認定した甲1発明を対比する。
甲1発明の「練歯磨」は、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲1発明の練歯磨が「0.4重量%」の「フッ化第1錫」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)
甲1発明における「グリシン」及び「アスパラギン」は、本件訂正発明1における「中性アミノ酸」に相当し、その合計の含有量「1.3重量%(=0.5重量%+0.8重量%)」は、本件訂正発明1における「組成物の0.01重量%~10重量%」という中性アミノ酸の含有量の条件を満たしている。
甲1発明の練歯磨は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含んでいるから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしていない。
甲1発明の練歯磨は、「フッ化第1錫」(「フッ化第一スズ」と同義。)を含むが、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩」に該当する成分を含むものでないから、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
本件訂正発明1の口腔ケア組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」並びに「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」という条件以外には、「第一スズイオン源」及び「中性アミノ酸」以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲1発明の練歯磨が「パラベン」等の他の複数の成分を含むことは、本件訂正発明1と甲1発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。」
<相違点1-1>
本件訂正発明1は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲1発明は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲1発明とは、相違点1-1で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記1(1)イで説示したとおり、甲1発明を認定する根拠とした甲1に記載の実施例26の練歯磨は、甲1において、トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤を配合した口腔用組成物に係る発明の具体例の一つとして記載されているものであって、当該発明は「アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもトコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持することができる口腔用組成物を提供すること」(摘記甲1c)を目的とするものであるから、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩」は、当該発明の前提とされている構成成分であり、これらの成分を口腔用組成物から除くのであれば、「トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤」としての「錫塩」や「アミノ酸」を配合する意味も損なわれてしまうため、甲1発明の練歯磨において、その前提となる成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、先の訂正請求により訂正された請求項1に係る発明1の甲1に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の2頁)。
アミノ酸類及び錫塩が、それぞれ抗歯周病の効果を有する成分であることは、既に知られており、技術常識ともいえることであって、例えば、甲6には、アミノ酸が歯周病の予防、改善効果を有すること、その配合量が0.01~10wt%であることが記載され(請求項1、【0027】、【0030】、【0033】)、甲7には、グリシン、アラニン、ロイシン、ヒスチジン及びプロリンが歯周病細菌内毒素中和有効成分であり、その配合量が0.001~5重量%であることが記載され(請求項1、【0009】)、甲2には、プラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物が記載され、フッ化第1スズ、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸、又はそれら混合物の、スズ塩を、それぞれ約0.05%~約1.1%、約0.1%~約11%含んでよいことが記載されている(クレーム1、2欄下から9~6行、3欄13~16行)。そのため、トコフェロール又はその誘導体及びアルキル硫酸エステルの水溶性塩が除外されるか否かにかかわらず、歯槽膿漏や歯肉炎等の予防用途に使用する口腔用組成物において、いずれも抗歯周病の効果を有することが知られている又は技術常識である、アミノ酸類及び錫塩を選択し、通常用いられる範囲の配合量とすることは、当業者にとって明らかに容易である。
しかしながら、アミノ酸類及び錫塩のいずれもが抗歯周病の効果を有することが既知であったとしても、甲1発明の練歯磨において、その前提となる構成成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することが、当業者において動機付けられるものとはいえないことは、上記(イ)bで説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件訂正発明2~5、7について
次に示すとおり、本件訂正発明2~5、7は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定するものである。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物において、「中性アミノ酸」が、「アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の口腔ケア組成物において、「中性アミノ酸」が、「グリシン、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明4は、本件訂正発明1~3のいずれかの口腔ケア組成物において、「中性アミノ酸」が、「組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在する」ことを特定するものである。
本件訂正発明5は、本件訂正発明1~4のいずれかの口腔ケア組成物において、「中性アミノ酸」が、「組成物の1重量%~3重量%の量で存在する」ことを特定するものである。
本件訂正発明7は、本件訂正発明1~5のいずれかの口腔ケア組成物において、「第一スズイオン源」が、「組成物の0.1重量%~2重量%の量で存在する」ことを特定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明2~5、7も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明9について
(ア) 対比
本件訂正発明9は、上記第2の3(5)のとおり、訂正事項5により本件訂正前の本件発明9のうち本件訂正前の本件発明1の口腔ケア組成物を引用する部分のみを独立形式とするとともに、当該組成物から「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」としたものである。
そして、本件訂正発明9は、本件訂正発明1と比較すると、「組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源」を更に含むことを特定している一方で、「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」という条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲1発明の対比を参照すれば、本件訂正発明9と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物。」
<相違点1-1'>
本件訂正発明9は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲1発明は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むものである点。
<相違点1-2>
本件訂正発明9は、「組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源」を含むものであるのに対し、甲1発明は、「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものでない点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明9と甲1発明とは、相違点1-1'及び相違点1-2で相違しており、これらの相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明9は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
相違点1-1'は、本件訂正発明1と甲1発明との相違点1-1と実質的に同じ内容であるから、上記ア(イ)bで説示したのと同じ理由により、甲1発明の練歯磨において、その前提となる成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるとはいえない。
したがって、相違点1-2について検討をするまでもなく、本件訂正発明9は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件訂正発明10について
(ア) 対比
本件訂正発明10は、上記第2の3(6)のとおり、訂正事項6により本件訂正前の本件発明10のうち本件発明1の口腔ケア組成物を引用する部分のみを独立形式とするとともに、当該組成物から「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」としたものである。
そして、本件訂正発明10は、本件訂正発明1と比較すると、「組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源」を更に含むことを特定している一方で、「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」という条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲1発明の対比を参照すれば、本件訂正発明10と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物。」
<相違点1-1''>
本件訂正発明10は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲1発明は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むものである点。
<相違点1-2'>
本件訂正発明10は、「組成物の0.2重量%~2重量%の亜鉛イオン源」を含むものであるのに対し、甲1発明は、「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものでない点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明10と甲1発明とは、相違点1-1''及び相違点1-2'で相違しており、これらの相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、いずれも実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明10は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
相違点1-1''は、本件訂正発明1と甲1発明の間の相違点1-1と実質的に同じ内容であるから、上記ア(イ)bで説示したのと同じ理由により、甲1発明の練歯磨において、その前提となる成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるとはいえない。
したがって、相違点1-2'について検討するまでもなく、本件訂正発明10は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明10は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
オ 本件訂正発明11及び12について
本件訂正発明11は、本件訂正発明9又は10のいずれかの口腔ケア組成物において、「亜鉛イオン源」が、「クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明12は、本件訂正発明9~11のいずれかの口腔ケア組成物において、「亜鉛イオン源」が、「クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」ことを特定するものである
そして、上記ウ及びエで説示したとおり、本件訂正発明9及び10は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明9又は10の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明11及び12も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件訂正発明13~14、16~25について
本件訂正発明13は、本件訂正発明1~5、7、9~12のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含む」ことを特定するものである。
本件訂正発明14は、本件訂正発明1~5、7、9~13のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の0.1重量%~2重量%のフッ化物イオン源を更に含む」ことを特定するものである。
本件訂正発明16は、本件訂正発明1~5、7、9~14のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の0.01重量%~5重量%の増粘剤を更に含み、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明17は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の1重量%~35重量%の研磨剤を更に含み、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明18は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16、17のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の5重量%~25%重量%の研磨剤を更に含む」ことを特定するものである。(当審注:「25%重量%」との記載は、「25重量%」の明らかな誤記と認める。)
本件訂正発明19は、本件訂正発明17又は18の口腔ケア組成物において、「研磨剤がシリカ研磨剤である」ことを特定するものである。
本件訂正発明20は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16~19のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含む」ことを特定するものである。
本件訂正発明21は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16~20のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物の30重量%~55重量%の保湿剤を更に含む」ことを特定するものである。
本件訂正発明22は、本件訂正発明20又は21のいずれかの口腔ケア組成物において、「保湿剤が、ポリオールである」ことを特定するものである。
本件訂正発明23は、本件訂正発明22の口腔ケア組成物において、「ポリオールが、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明24は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16~23のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物が、9.0以下のpHを有する」ことを特定するものである。
本件訂正発明25は、本件訂正発明1~5、7、9~14、16~24のいずれかの口腔ケア組成物において、「組成物が、4.0~8.5のpHを有する」ことを特定するものである。
そして、上記ア~オで説示したとおり、本件訂正発明1~5、7、9~12は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1~5、7、9~12のいずれかの口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明13~14、16~25も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件訂正発明26について
(ア) 対比
本件訂正発明26と、甲1発明を対比する。
甲1発明の「練歯磨」は、本件訂正発明26の「口腔ケア組成物」である「歯磨き組成物」に相当する。
甲1発明における「フッ化第1錫」は、本件訂正発明26における「第一スズイオン源」としての「フッ化第一スズ」に相当するとともに、本件訂正発明26における「フッ化物イオン源」としての「フッ化第一スズ」に相当すると認められ、甲1発明の練歯磨が「0.4重量%」の「フッ化第1錫」を含むことは、本件訂正発明26の口腔ケア組成物が、「(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源」を含むことに相当する。
甲1発明の練歯磨が、「グリシン」及び「アスパラギン」を、合計で「1.3重量%(=0.5重量%+0.8重量%)」の量で含むことは、本件訂正発明26の口腔ケア組成物が、「(ii)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、又はこれらの組み合わせから選択される中性アミノ酸」を含むことに相当する。
甲1発明における「ヒドロキシエチルセルロース」及び「キサンタンガム」は、本件訂正発明26における「(v)」の「増粘系」である「増粘ポリマー」に相当するものであり、それらの含有量の合計である「1.0重量%(=0.5重量%+0.5重量%)」は、本件訂正発明26で特定する増粘系の含有量の条件(「0.01重量%~5重量%」)を満たしている。
甲1発明の練歯磨が、「10.0重量%」の「無水ケイ酸」を含むことは、本件訂正発明26の口腔ケア組成物が、「(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤」を含むことに相当する。
甲1発明における「ソルビット」は、本件訂正発明26における「(vii)」の「保湿剤」である「ソルビトール」に相当するものであり、その含有量である「50.0重量%」は、本件訂正発明26で特定する保湿剤の含有量の条件(「30重量%~55重量%」)を満たしている。
甲1発明の練歯磨は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含んでいるから、本件訂正発明26における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしていない。
本件訂正発明26の口腔ケア組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」という条件以外には、(i)~(vii)以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲1発明の練歯磨が「パラベン」等の他の複数の成分を含むことは、本件訂正発明26と甲1発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明26と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
(i)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、又はこれらの組み合わせから選択される第一スズイオン源と、
(ii)前記組成物の0.1重量%~2重量%の、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、又はこれらの組み合わせから選択される中性アミノ酸と、
(iv)フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源と、
(v)前記組成物の0.01重量%~5重量%の、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される増粘系と、
(vi)前記組成物の5重量%~25重量%のシリカ研磨剤と、
(vii)前記組成物の30重量%~55重量%の、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの組み合わせから選択される保湿剤と、
を含み、
前記口腔ケア組成物が歯磨き組成物である、口腔ケア組成物。」
<相違点1-1'''>
本件訂正発明26は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲1発明は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むものである点。
<相違点1-2''>
本件訂正発明26は、「(iii)前記組成物の0.2重量%~2重量%の、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される亜鉛イオン源」を含むものであるのに対し、甲1発明は、「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものではない点。
<相違点1-3>
本件訂正発明26が、「(iv)フッ化物イオン源」の含有量を「0.5重量%~1.5重量%」の範囲に特定しているのに対し、甲1発明は、当該「フッ化物イオン源」に相当する「フッ化第1錫」を当該範囲の下限値を下回る「0.4重量%」の量で含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明26と甲1発明は、相違点1-1'''、相違点1-2''及び相違点1-3で相違しており、これらの相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明26は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
相違点1-1'''は、本件訂正発明1と甲1発明の間の相違点1-1と実質的に同じ内容であるから、上記ア(イ)bで説示したのと同じ理由により、甲1発明の練歯磨において、その前提となる成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるとはいえない。
したがって、相違点1-2''及び相違点1-3について検討するまでもなく、本件訂正発明26は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明26は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ク 本件訂正発明27について
(ア) 対比
本件訂正発明27は、上記第2の3(19)のとおり、訂正事項19により本件訂正前の本件発明26を引用する本件発明27を独立形式とするとともに、当該組成物から「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」としたものである。
そして、本件訂正発明27は、本件訂正発明26と比較すると、
「増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される」
ことが特定されており、その余の発明特定事項は共通している。
ここで、甲1発明における「ヒドロキシエチルセルロース」及び「キサンタンガム」は、いずれも本件訂正発明27が特定する「増粘ポリマー」の列記された選択肢に含まれている。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲1発明との対比、及び、上記キ(ア)における本件訂正発明26と甲1発明との対比を参照すれば、本件訂正発明27と甲1発明には、本件訂正発明26と甲1発明との一致点及び相違点(<相違点1-1'''>、<相違点1-2''>及び<相違点1-3>)と実質的に同じ一致点及び相違点があるものと認められる。
(イ) 相違点の判断
上記キ(イ)で説示したとおり、本件訂正発明26は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明26の口腔ケア組成物の組成を更に限定したものに対応する、本件訂正発明27も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明27は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ケ 甲1を主引例とした場合の取消理由1及び取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~5、7、9~14、16~27は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 甲2を主引例とした場合
甲2を主引例とした場合については、上記第4の2(1)ア(イ)及びイ(イ)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~4、6~8、13~25、28~30に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~8、13~25、28~30に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)ア及びイ(イ)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項1~4、6~8、13~25に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~8、13~25に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項6、8、15、28~30は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~5、7、13~14、16~25に係る発明について、甲2を主引例とした場合の新規性及び進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(2)イで認定した甲2発明を対比する。
甲2発明の「歯磨剤組成物」は、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲2発明における「フッ化第一スズ」及び「塩化第一スズ二水和物」は、本件訂正発明1における「第一スズイオン源」に相当し、それらの含有量の合計「1.595重量%(=0.454重量%+1.141重量%)」は、本件訂正発明1における「組成物の0.01重量%~5重量%」という第一スズイオン源の含有量の条件を満たしている。
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0028】の記載によれば、「中性アミノ酸」には、遊離形態と塩形態の両方が含まれるとされているから、甲2発明の歯磨剤組成物が「0.772重量%」の「グリシン酸Na」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸」を含むことに相当する。
甲2発明の歯磨剤組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲2発明の歯磨剤組成物は、「フッ化第一スズ」、「グリシン酸Na」及び「塩化第一スズ二水和物」を含んでおり、甲2には、「第2の第一スズ塩は、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、グリシン、及び、それらの混合物の、第一スズ塩である。これらの化合物は、既知の第一スズのキレートであり、本組成物中に、・・・、in-situでキレートが形成される別々の可溶性の第一スズ及びキレート剤として加えることができる。」(摘記甲2e)と記載されているから、組成物中に「グリシンの第一スズ塩」が存在するといえるので、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしていない。
本件訂正発明1の口腔ケア組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」並びに「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」という条件以外には、「第一スズイオン源」及び「中性アミノ酸」以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲2発明の歯磨剤組成物が「サッカリンNa」等の他の複数の成分を含んでいることは、本件訂正発明1と甲2発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸と、
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)。」
<相違点2-1>
本件訂正発明1は、「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲2発明は、「フッ化第一スズ」及び「グリシンの第一スズ塩」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲2発明とは、相違点2-1で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記1(2)イで説示したとおり、甲2発明を認定する根拠とした甲2に記載の実施例VIの歯磨剤組成物は、甲2において、
「(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、「第1組成物」、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体、
を含む、「第2組成物」、
を有する口腔用組成物」(摘記甲2a)
に係る発明を構成する、「第1組成物」の具体例の一つとして記載されているものであり、当該口腔用組成物の発明において、「第1組成物」は「第一スズ組成物」とも称され、当該「第1組成物」中の「フッ化第一スズ」及び「別の第一スズ化合物」は、別の組成物である「第2組成物」(「ピロリン酸組成物」とも称される。)中のピロリン酸イオンとの併用により、着色の低減とともに、改善された抗プラーク/抗歯周病の効果をもたらすとされているから(摘記甲2b)、当該「第1組成物」においては、「フッ化第一スズ」及び「別の第一スズ化合物」である「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩」(甲2発明における「グリシンの第一スズ塩」。)は、当該口腔用組成物の発明の前提となる必須の構成成分である。
そうすると、甲2発明の歯磨剤組成物について、「フッ化第一スズ」及び「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩」である「グリシンの第一スズ塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件訂正発明2~5、7について
上記(1)イで説示したとおり、本件訂正発明2~5、7は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明2~5、7も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明13~14、16~25について
上記(1)カで説示したとおり、本件訂正発明13~14、16~25は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを更に限定した本件訂正発明13~14、16~25も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲2を主引例とした場合の取消理由1及び取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~5、7、13~14、16~25は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 取消理由3(産業上の利用可能性)について
上記第4の2(1)ウのとおり、先の取消理由通知において、本件特許の設定登録時の請求項28~30に係る発明は、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものである旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項28~30は削除されたため、取消理由3については、対象となる請求項が存在しないものとなった。
4 取消理由4(明確性)について
上記第4の2(2)ウのとおり、取消理由通知(決定の予告)において、先の訂正請求により訂正された請求項6、7、13~25の記載は、直接的に又は間接的に記載を引用する同請求項1の記載と矛盾しており、「ピロリン酸第一スズ」を含む組成物が、同請求項6、7、13~25に係る発明の組成物に該当するか否か明確に把握することができないため、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合しない旨を指摘していた。
本件訂正により、先の訂正請求により訂正された請求項1に記載されていた「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」なる事項は存在しないものとなったため、取消理由4は解消している。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係、及び、取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由の対応関係は、上記第4の2(1)オ及び(2)エに示したとおりである。
以下、取消理由通知において採用しなかった申立理由について検討する。
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1) 甲1に基づく新規性欠如について
上記第4の1(1)アで述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~11、13~25、28~30に係る発明について、甲1に基づく新規性欠如を主張しているが、同請求項9~11に係る発明については、先の取消理由通知において、甲1に基づく新規性欠如を指摘しなかった。
しかし、上記第5の2(1)ウ~オで述べたとおり、本件訂正発明9~11は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2) 甲3を主引例とした場合の新規性及び進歩性について
上記第4の1(1)ウ及び(2)ウで述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~8、13~25について、甲3に基づく新規性欠如及び甲3を主引例とする進歩性欠如を主張している。
本件訂正により、請求項6、8、15は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~5、7、13~14、16~25に係る発明について、甲3を主引例とした場合の新規性及び進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記第5の1(3)イで認定した甲3発明を対比する。
甲3発明の「歯磨剤組成物」は、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲3発明における「フッ化第一スズ」及び「塩化第一スズ二水和物」は、本件訂正発明1における「第一スズイオン源」に相当し、それらの含有量の合計「1.950重量%(=0.450重量%+1.500重量%)」は、本件訂正発明1における「組成物の0.01重量%~5重量%」という第一スズイオン源の含有量の条件を満たしている。
甲3発明の歯磨剤組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲3発明の歯磨剤組成物は、「フッ化第一スズ」及び「塩化第一スズ二水和物」を含むが、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、又はグリシン」を含まないから、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
本件訂正発明1の口腔ケア組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」並びに「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」という条件以外には、「第一スズイオン源」及び「中性アミノ酸」以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲3発明の歯磨剤組成物が「サッカリンNa」等の他の複数の成分を含んでいることは、本件訂正発明1と甲3発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明1と甲3発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにフッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。」
<相違点3-1>
本件訂正発明1は、「組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸」を含むものであるのに対し、甲3発明は、「2.082重量%」の「グルコン酸Na」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲3発明とは、相違点3-1で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲3に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記第5の1(3)イで説示したとおり、甲3発明を認定する根拠とした実施例IXの歯磨剤組成物は、甲3において、歯石の低減に有効な方法に用いられる、以下の成分:
(a)塩化第一スズからの少なくとも1000ppmの第一スズイオン;
(b)グルコン酸又はその水溶性塩であり、第一スズに対する平衡結合定数が約105未満であるモノ又はジカルボン酸又は多価アルコールである錯化剤;及び、
(c)許容しうる練歯磨の担体
を含有する練歯磨組成物(摘記甲3a「請求項1」)の具体例の一つとして記載されているものであり、甲3発明における「グルコン酸Na」は、甲3の請求項1に記載された、「第一スズに対する平衡結合定数が約105未満であるモノ又はジカルボン酸又は多価アルコールである錯化剤」としての、「グルコン酸」の「水溶性塩」に該当するものである。
また、甲3には、「第一スズイオンが、ある種のカルボン酸・・・と錯体化したときに、抗歯石効果を付与する」こと(摘記甲3b)、「有用な適切なモノ及びジカルボン酸は、・・・、酢酸、酪酸、グルコン酸、グリシン、安息香酸、酒石酸、マレイン酸、サリチル酸を含む」こと(摘記甲3c)が記載されてり、実施例IXを含めた実施例の記載に続いて、「上記組成物において、・・・、グルコン酸ナトリウムは、以下の酸又はそれらの水溶性塩:酢酸、酪酸、グリシン、安息香酸、酒石酸、マレイン酸及びサリチル酸、に置き換え可能であり、同様の結果が得られる」(摘記甲3l)との記載もある。
そうすると、甲3発明において、「第一スズイオン」に対する錯化剤として含まれている「グルコン酸Na」を、同様の効果が得られることを期待して、「モノ又はジカルボン酸」の一つとして例示されている「グリシン」に置き換えることは、当業者において一応の動機付けはあるといえる。
しかしながら、甲3においては、実施例で用いられた「グルコン酸Na」を含めた「モノ又はジカルボン酸」が、実際に第一スズイオンを錯化して抗歯石効果を付与することを確認した試験結果等は記載されておらず、「グリシン」を配合した組成物の実施例も全く記載されていない。
一方、本件明細書においては、「本発明は、口腔ケア組成物における中性アミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、又はこれらの組み合わせなど)と第一スズイオン源との組み合わせが、少なくとも歯肉創傷治癒及び抗菌効果を含む歯肉健康上の利益を促進する」(【0009】)と記載されており、実際に、「組成物の0.01重量%~5重量%」の「第一スズイオン源」に該当する「塩化第一スズ二水和物」及び/又は「フッ化第一スズ」、及び、「組成物の0.01重量%~10重量%」の「中性アミノ酸」に該当する「グルタミン」、「アスパラギン」又は「グリシン」を含む組成物(【0087】~【0088】:「実施例1~4」)のうち、実施例1の組成物(「塩化第一スズ二水和物」及び「グルタミン」を含む)及び実施例3の組成物(「塩化第一スズ二水和物」及び「グリシン」を含む)は、バイオフィルム内への抗菌剤としての第一スズイオンの浸透が改善されることを裏付ける試験の結果が記載され(【0089】~【0103】「実施例B」)、上記実施例1の組成物及び実施例2の組成物(「塩化第一スズ二水和物」及び「アスパラギン」を含む)は、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されている(【0104】~【0110】「実施例C」)。このような本件訂正発明が奏する効果は、甲3の記載から予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲3において、「モノ又はジカルボン酸」として例示されている複数の化合物の中の一つに「グリシン」があるからといって、甲3発明における「グルコン酸Na」を、敢えて「グリシン」を選択して置き換え、本件訂正発明のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果も奏する組成物とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件訂正発明2~5、7について
上記第5の2(1)イで説示したとおり、本件訂正発明2~5、7は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明2~5、7も、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明13~14、16~25について
上記5の2(1)カで説示したとおり、本件訂正発明13~14、16~25は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明13~14、16~25も、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲3を主引例とした場合の新規性及び進歩性のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~5、7、13~14、16~25は、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 甲4を主引例とする進歩性欠如について
上記第4の1(2)エで述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~8、13~25、28~30について、甲4を主引例(甲6~8を副引例)とする進歩性欠如を主張している。
本件訂正により、請求項6、8、15、28~30は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~5、7、13~14、16~25に係る発明について、甲4を主引例(甲6~8を副引例)とした場合の進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記第5の1(4)イで認定した甲4発明を対比する。
甲4発明の「抗菌製剤」は、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための」ものであり、う蝕、歯周病、口内炎等の口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に有用なものであるから(摘記甲4b【0005】)、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲4発明の抗菌製剤が「0.5重量%のフッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。
甲4発明の抗菌製剤は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲4発明の抗菌製剤は、「フッ化第一スズ」を含むが、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、又はグリシン」を含まないから、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
そうすると、本件訂正発明1と甲4発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにフッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。」
<相違点4-1>
本件訂正発明1は、「組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸」を含むものであるのに対し、甲4発明は、「0.5重量%」の「アルギニン塩酸塩」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
上記第5の1(4)イで説示したとおり、甲4発明を認定する根拠とした甲4に記載の実験例3のNo.6の溶液は、甲4において、請求項1に記載の「アルギニンまたはその誘導体および抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤」の具体例の一つとして記載されているものであり、甲4には、「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮」することが記載されているから(摘記甲4b【0003】)、「アルギニン塩酸塩」を含むことは、甲4発明における課題の解決のために必須の構成であるといえる。
ところで、甲6には、歯周病を予防又は改善する効果を有し、その作用機序が互いに異なる、複数種のアミノ酸を含むことにより、歯周病を予防又は改善する効果が顕著に発現することが記載されており(摘記甲6b【0020】)、歯周病を予防又は改善する効果を発現するための機能として挙げられている、
・口腔内組織を構成する細胞のコラーゲン合成を促進する機能(コラーゲン
合成促進能)
・歯周病菌のコラゲナーゼ活性を阻害する機能(コラゲナーゼ活性阻害能)
・口腔内組織を構成する細胞の細胞を賦活化する機能(細胞賦活化能)
等の機能が2つ以上組み合わされるようにアミノ酸を選択することが記載され(摘記甲6b【0023】)、「コラーゲン合成促進能」を有するアミノ酸として、セリン、グルタミン酸ナトリウム、トレオニン、リジン、グリシン等が挙げられ(摘記甲6b【0025】)、「コラゲナーゼ活性阻害能」を有するアミノ酸として、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン等が挙げられ(摘記甲6b【0028】)、「細胞賦活化能」を有するアミノ酸として、アルギニン、バリン、イソロイシン、トレオニン等が挙げられている(摘記甲6b【0031】)。
また、甲7及び甲8には、グリシン、アラニン、ロイシン、プロリン等が歯周病細菌の細胞内毒素の中和能を有し、歯周病の予防に用いられることが記載されている(摘記甲7a、摘記甲8a)。
しかしながら、甲4には、請求項1に記載された抗菌製剤について、必須成分である「アルギニンまたはその誘導体」に代えて又は加えて、別のアミノ酸を含むものとすることは、何ら記載も示唆もされていないから、甲6~8にグリシン等のアミノ酸が歯周病を予防又は改善する効果を有することが記載されているからといって、甲4発明の抗菌製剤において、「アルギニン塩酸塩」に代えて又は加えて、グリシン等の中性アミノ酸を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
また、上記(2)ア(イ)bで説示した、本件明細書において裏付けられている本件訂正発明が奏する効果は、甲4、6~8の記載からは予測し得ない格別顕著なものであるから、甲4発明において、グリシン等の中性アミノ酸を含むものとし、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果も奏する組成物とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件訂正発明2~5、7について
上記第5の2(1)イで説示したとおり、本件訂正発明2~5、7は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明2~5、7も、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明13~14、16~25について
上記5の2(1)カで説示したとおり、本件訂正発明13~14、16~25は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明13~14、16~25も、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲4を主引例とした場合の進歩性のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~5、7、13~14、16~25は、甲4に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4) 甲5を主引例とする進歩性欠如について
上記第4の1(2)オで述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~8、13~25、28~30について、甲5を主引例(甲6~8を副引例)とする進歩性欠如を主張している。
本件訂正により、請求項6、8、15、28~30は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~5、7、13~14、16~25に係る発明について、甲5を主引例(甲6~8を副引例)とした場合の進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記第5の1(5)イで認定した甲5発明を対比する。
甲4発明の「抗菌製剤」は、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための」ものであり、う蝕、歯周病、口内炎等の口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に有用なものであるから(摘記甲5b【0005】)、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲5発明の抗菌製剤が「0.5重量%のフッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。
甲5発明の抗菌製剤は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲5発明の抗菌製剤は、「フッ化第一スズ」を含むが、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、又はグリシン」を含まないから、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
そうすると、本件訂正発明1と甲5発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源
を含み、
前記組成物が口腔ケア組成物である、組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、並びにフッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物を除く)。」
<相違点5-1>
本件訂正発明1は、「組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸」を含むものであるのに対し、甲5発明は、「0.5重量%」の「リジン塩酸塩」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
上記第5の1(5)イで説示したとおり、甲5発明を認定する根拠とした甲5に記載の実験例3のNo.6の溶液は、甲5において、請求項1に記載の「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤からなることを特徴とする抗菌製剤」の具体例の一つとして記載されているものであり、甲5には、「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物から選ばれる1種または2種以上を配合し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮」することが記載されているから(摘記甲5b【0003】)、「リジン塩酸塩」を含むことは、甲5発明における課題の解決のために必須の構成であるといえる。
その一方、甲6~8には、上記(3)ア(イ)で指摘した事項が記載されているが、甲5には、請求項1に記載された抗菌製剤について、必須成分である「リジンまたはその誘導体」に代えて又は加えて、別のアミノ酸を含むものとすることは、何ら記載も示唆もされていないから、甲6~8にグリシン等のアミノ酸が歯周病を予防又は改善する効果を有することが記載されているからといって、甲5発明の抗菌製剤において、「リジン塩酸塩」に代えて又は加えて、グリシン等の中性アミノ酸を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
また、上記(2)ア(イ)bで説示した、本件明細書において裏付けられている本件訂正発明が奏する効果は、甲5、6~8の記載からは予測し得ない格別顕著なものであるから、甲5発明において、グリシン等の中性アミノ酸を含むものとし、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果も奏する組成物とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件訂正発明2~5、7について
上記第5の2(1)イで説示したとおり、本件訂正発明2~5、7は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成を更に限定した本件訂正発明2~5、7も、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明13~14、16~25について
上記5の2(1)カで説示したとおり、本件訂正発明13~14、16~25は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明13~14、16~25も、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲5を主引例とした場合の進歩性のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~5、7、13~14、16~25は、甲5に記載された発明、及び、甲6~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 申立理由4(明確性)について
上記第4の1(4)で述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~25、28~30の記載は、組成物がフッ化第一スズを含む場合、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、当業者が理解できないため、特許を受けようとする発明が明確でない旨を主張している。
本件訂正により、請求項6、8、15、28~30は削除されている。
そこで、以下、本件訂正請求項1~5、7、9~14、16~25の記載について、申立理由4の明確性を検討する。
本件訂正請求項1~5、7、9~12においては、「フッ化物イオン源」について何ら規定されていないから、組成物がフッ化第一スズを含む場合であっても、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、という問題は生じ得ない。
本件訂正請求項13には、「前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含む」と記載され、本件訂正請求項14には、「前記組成物の0.1重量%~2重量%のフッ化物イオン源を更に含む」と記載されており、これら両請求項の記載は、本件訂正請求項16~25において直接的に又は間接的に引用されている。そして、これら両請求項が直接的に又は間接的に記載を引用する本件訂正請求項1、9、10には、「組成物の0.01重量%~5重量%」の「第一スズイオン源」を含むことが記載され、本件訂正請求項7には、「組成物の0.1重量%~2重量%」の「第一スズイオン源」の量で存在することが記載されている。
ここで、本件訂正請求項13~14、16~25に記載の組成物がフッ化第一スズを含む場合、当該成分は「第一スズイオン源」としても「フッ化物イオン源」としても含まれると理解できるし、組成物中のフッ化第一スズの量は、「第一スズイオン源」及び「フッ化物イオン源」のいずれの含有量としても把握できるから、申立人が主張するような記載の不備はない。
よって、本件訂正請求項1~5、7、9~14、16~25の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~30〕について訂正することを認める。
先の取消理由通知書及び/又は取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の訂正後の請求項1~5、7、9~14、16~27に係る特許を取り消すことはできない。また、その他に本件特許の訂正後の請求項1~5、7、9~14、16~27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項6、8、15、28~30は、上記第2のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項6、8、15、28~30に係る発明の特許についての特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、本件特許の請求項2及び3に係る発明の特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701041