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特許異議申立

2023-700210

熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物およびそのフィラメント状成形体

審判番号
2023-700210
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-550369
登録番号
7130256
請求日
2023年02月24日
審決日
2024年12月20日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ユニチカ株式会社
  • 【権利者代理人】山尾 憲人
  • 【権利者代理人】高岡 健
  • 【異議申立人】須藤 晃伸
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 清水 康司
  • 審判官 神谷 健一
分類
P1651.121-YAA(B29C) / P1651.113-YAA(B29C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7130256号発明「熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物およびそのフィラメント状成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7130256号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5、6〕、4、7について訂正することを認める。 特許第7130256号の請求項4、7に係る特許を維持する。 特許第7130256号の請求項1~3、5、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7130256号(請求項の数6。以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2019-550369号。以下「本件出願」という。)は、2018年(平成30年)10月29日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年10月31日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、令和4年8月26日にその特許権の設定登録がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、請求項1ないし6に係る特許について、令和5年2月24日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)により本件特許異議の申立てがされ、当審において、同年6月30日付けで取消理由通知がされ、その指定期間内である同年8月25日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、同年12月26日に申立人より意見書が提出され、令和6年3月29日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、同年6月3日に特許権者より訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書が提出された。 その後、本件訂正請求に関して、特許法120条の5第5項の規定に基づいて、申立人に対して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からの応答はなかった。 なお、特許法120条の5第7項の規定により、令和5年8月25日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、特許第7130256号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める、というものである。 また、本件訂正は、次の訂正事項からなる(下線は、訂正箇所を表す。)。 訂正事項1: 請求項1を削除する。 訂正事項2: 請求項2を削除する。 訂正事項3: 請求項3を削除する。 訂正事項4: 請求項4に「熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物で構成されていることを特徴とするフィラメント状成形体。」とあるのを、「熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物において、前記造形材料は直径1.5~3.2mmのモノフィラメントであり、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、前記樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が50nm以下であり、前記ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物であり、分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されていることを特徴とするフィラメント状成形体。」に訂正する。 訂正事項5: 請求項5を削除する。 訂正事項6: 請求項6を削除する。 訂正事項7: 「熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物において、前記造形材料は直径1.5~3.2mmのモノフィラメントであり、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、前記樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が50nm以下であり、前記ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物であり、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤に属する化合物である分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されていることを特徴とするフィラメント状成形体。」との請求項7を新たに設ける。 (当合議体注:便宜上、令和6年6月3日に提出された訂正請求書における訂正事項の番号を上記のように再整理した。) 2 別の訂正単位とすることの求め 訂正事項4及び7に係る訂正について、それぞれの訂正が訂正前の請求項4のうち請求項2を引用する部分と、訂正前の請求項4のうち請求項3を引用する部分を独立形式に訂正することを含むことから、特許権者は、一群の請求項を構成する訂正前の請求項1~6のうちの他の請求項(請求項1~3、5、6)に係る訂正(訂正事項1~3、5、6)とは、別の訂正単位とすることを求めている。 3 訂正の適否について (1)訂正の目的について ア 訂正事項1~3、5、6について 訂正事項1~3、5、6に係る訂正は、特許請求の範囲から請求項1~3、5、6を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 訂正事項4、7について 訂正事項4は、訂正前の請求項4のうち請求項2の記載を引用する部分について、独立形式の記載に改めるとともに、フィラメント状造形材料のモノフィラメント・マルチフィラメントの別や、サイズが任意であったものを、直径1.5~3.2mmのモノフィラメントに限定し、さらに、訂正前の樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が10μm以下であったものを、50nm以下に限定して、訂正後の請求項4とする訂正である。また、訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項4のうち請求項3の記載を引用する部分について、独立形式の記載に改めるとともに、フィラメント状造形材料のモノフィラメント・マルチフィラメントの別を特定し、サイズが任意であったものを、直径1.5~3.2mmのモノフィラメントに限定し、さらに、訂正前の樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が10μm以下であったものを、50nm以下に限定して、訂正後の請求項7とする訂正である。 よって、訂正事項4、7に係る訂正は、いずれも、同項ただし書1号及び4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について ア 訂正事項1~3、5、6について 訂正事項1~3、5、6に係る訂正は、特許請求の範囲から請求項1~3、5、6を削除する訂正であるから、新規事項を追加するものでないことは明らかである。 イ 訂正事項4、7について 訂正事項4及び7に係る訂正は、訂正前の請求項4のうち請求項2の記載を引用する部分及び請求項3の記載を引用する部分について、それぞれ、独立形式の記載に改めるとともに、フィラメント状造形材料のモノフィラメント・マルチフィラメントの別を特定し、サイズが任意であったものを、直径1.5~3.2mmのモノフィラメントに限定し、さらに、訂正前の樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が10μm以下であったものを、50nm以下に限定して、訂正後の請求項4及び7とする訂正であって、造形材料が直径1.5~3.2mmのモノフィラメントである点は、本件特許明細書の【0046】及び【0047】に記載された事項であり、セルロース繊維の平均繊維径が50nm以下である点は、【0021】に記載された事項であるから、訂正事項4及び7に係る訂正は、いずれも、新規事項を追加するものでない。 よって、本件訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無について ア 訂正事項1~3、5、6について 訂正事項1~3、5、6に係る訂正は、それぞれ特許請求の範囲から請求項1~3、5、6を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 イ 訂正事項4、7について 訂正事項4及び7に係る訂正は、訂正前の請求項4のうち請求項2の記載を引用する部分及び請求項3の記載を引用する部分について、それぞれ、独立形式の記載に改めるとともに、フィラメント状造形材料のモノフィラメント・マルチフィラメントの別を特定し、サイズは任意であったものを、直径1.5~3.2mmのモノフィラメントに限定し、さらに、訂正前の樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径は10μm以下であったものを、50nm以下に限定する訂正であるから、訂正事項4及び7に係る訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 よって、本件訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (4)小括 前記(1)~(3)で述べたとおり、訂正事項1~7に係る訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ここで、前記2に示したとおり、特許権者は、訂正後の請求項4、7について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項のうち他の請求項(請求項1~3、5、6)とは別途訂正することを求めている。 よって、訂正後の請求項〔1~3、5、6〕、4、7について訂正することを認める。 第3 本件特許の各請求項に係る発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項4、7に係る発明(請求項1~3、5、6は削除された。以下、本件訂正後の請求項4、7に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明4」、「本件訂正発明7」という。)は、本件訂正後の請求項4、7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項4】 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物において、前記造形材料は直径1.5~3.2mmのモノフィラメントであり、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、前記樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が50nm以下であり、前記ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物であり、分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されていることを特徴とするフィラメント状成形体。 【請求項7】 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物において、前記造形材料は直径1.5~3.2mmのモノフィラメントであり、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、前記樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径が50nm以下であり、前記ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物であり、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤に属する化合物である分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されていることを特徴とするフィラメント状成形体。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 本件訂正前の請求項4に係る特許に対して通知された取消理由は、概略、次のとおりである。 取消理由(新規性・進歩性欠如): 本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許に係る優先権主張の基礎とした先の出願の出願前(以下、単に「先の出願前」という。)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 前記取消理由(新規性・進歩性欠如)において引用された引用例及び周知例は、次のとおりである。 甲1:特開2017-170881公報 甲2:国際公開第2011/126038号(主引用例) 周知例1:特開2017-128073号公報 周知例2:特開2016-28887号公報 第5 引用例に記載された技術事項及び周知の技術事項 1 甲2 (1)甲2の記載 甲2は、先の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ、次の記載がある(下線は、各引用例等に記載された事項や発明の認定又は判断等で合議体が活用した箇所を示すものである。以下同様。)。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は、機械的特性、耐熱性が向上したポリアミド樹脂組成物及び該樹脂組成物の製造法に関するものである。 背景技術 [0002] ポリアミド樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイなどの無機充填剤で強化した樹脂組成物は広く知られている。・・・(中略)・・・ [0004] 近年、樹脂材料の強化材としてセルロースが用いられている。セルロースには、樹木から得られるものや、稲、綿、ケナフ、麻などの非木材質源から得られるものや、微生物が生産するバクテリアセルロースなどがあり、セルロースは地球上に非常に多量に存在する。セルロースは機械的特性に優れており、これを樹脂中に含有させることにより、樹脂組成物の特性を向上させる効果が期待される。 [0005] 熱可塑性樹脂中にセルロースを含有させる方法としては、樹脂とセルロースとを溶融混合する方法が一般的である。しかしながら、この方法ではセルロースが凝集した状態のまま樹脂中に混合され、セルロースが均一に分散された樹脂組成物を得ることはできない。このため、樹脂組成物の特性を十分に向上させることができない。 ・・・(中略)・・・ 発明が解決しようとする課題 [0009] 本発明は、上記の問題点を解決するものであり、ポリアミド樹脂中にセルロース繊維が凝集することなく均一に分散され、機械的特性や耐熱性が向上したポリアミド樹脂組成物及び該樹脂組成物の製造法を提供することを目的とするものである。 課題を解決するための手段 [0010] 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。 すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。 (1)ポリアミド樹脂100質量部に対して、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維0.01~50質量部を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 (2)ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維0.01~50質量部を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 ・・・(中略)・・・ (10)ポリアミド樹脂がナイロン6又はナイロン66である、(1)、(2)、(6)~(8)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。 (11)上記(1)~(10)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造法。 発明の効果 [0011] 本発明のポリアミド樹脂組成物は、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を含有し、樹脂組成物中に該セルロース繊維が凝集することなく均一に分散されているため、強度、線膨張係数等の機械的特性や耐熱性が向上したものである。このため、本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、発泡成形等の成形法により各種の成形体を得ることが可能となり、様々な用途に使用することが可能となる。 また、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造法により、セルロース繊維が凝集状態のままポリアミド樹脂中に含有されることがないため、セルロース繊維が均一に分散された本発明のポリアミド樹脂組成物を得ることができる。このため、セルロース繊維の含有量が比較的少量であっても、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性や耐熱性を向上させることが可能となる。」 イ 「発明を実施するための形態 [0013] 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明で用いるポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する重合体をいうものである。 ・・・(中略)・・・ [0016] より具体的には、本発明で用いるポリアミド樹脂としては、・・・(中略)・・・が挙げられ、これらの共重合体や混合物であってもよい。中でも特に好ましいポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、およびこれらの共重合体や混合物である。 ・・・(中略)・・・ [0018] 本発明のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を含有することによって、強度、線膨張係数等の機械的特性や耐熱性が向上したものとなる。樹脂組成物の機械的特性や耐熱性を十分に向上させるには、セルロース繊維を凝集させることなく、樹脂中に均一に分散させることが必要である。そのためにはポリアミド樹脂に対するセルロース繊維の分散性や、ポリアミド樹脂とセルロース繊維の親和性が重要である。また、セルロース繊維が有する水酸基などの性質をできるだけ発揮させるためには、セルロース繊維の表面積を増やすことが重要である。このため、できるだけ微細化されたセルロース繊維を使用することが必要となる。 [0019] したがって、本発明においては、セルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが必要であり、中でも繊維径は500nm以下であることが好ましく、さらには、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下である。平均繊維径が10μmを超えるセルロース繊維では、セルロース繊維の表面積を増やすことができず、ポリアミド樹脂や、ポリアミド樹脂を形成するモノマーに対する分散性や親和性を向上させることが困難となる。・・・(中略)・・・ [0026] そして、本発明のポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維(A)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01~50質量部であることが必要であり、中でも0.05~30質量部であることが好ましく、さらには0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。セルロース繊維(A)の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して0.01質量部未満である場合は、上記したようなセルロース繊維(A)を含有する効果、すなわち機械的特性や耐熱性を向上する効果を奏することができない。一方、セルロース繊維(A)の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、セルロース繊維(A)を樹脂組成物中に含有させることが困難となったり、得られた樹脂組成物を射出成形等の成形時に高温で熱処理すると変色が生じることになる。 [0027] 本発明のポリアミド樹脂組成物を、後述するような本発明の製造法で得ることにより、セルロース繊維(A)の含有量が少量であっても、それがポリアミド樹脂中に均一に分散されるので、ポリアミド樹脂組成物には、十分な機械的特性や耐熱性の向上効果が得られる。つまり、セルロース繊維(A)の含有量が、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.01~10質量部の範囲のものであっても、ポリアミド樹脂組成物は、強度が高く、線膨張係数が低く、機械的特性に優れるとともに耐熱性にも優れたものとなる。」 ウ 「[0029] セルロース繊維は水との親和性が非常に高く、平均繊維径が小さいほど水に対して良好な分散状態を保つことができる。また、水を失うと水素結合により強固にセルロース繊維同士が凝集し、一旦凝集すると凝集前と同様の分散状態をとることが困難となる。特にセルロース繊維の平均繊維径が小さくなるほどこの傾向が顕著となる。 したがって、セルロース繊維は水を含んだ状態でポリアミド樹脂と複合化することが好ましい。 そこで、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造法としては、ポリアミド樹脂を重合反応により得る際に、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、セルロース繊維(A)の水分散液とを混合し、重合反応を行う方法を採用することが好ましい。つまり、本発明の製造法は、ポリアミド樹脂の重合時に、水を含んだ状態のセルロース繊維を存在させ、重合反応を行うことにより、セルロース繊維(A)を含有する樹脂組成物を得る方法である。 このような本発明の製造法により、セルロース繊維(A)が凝集することなく均一に分散したポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となり、特に機械的特性と耐熱性が向上した樹脂組成物とすることができる。」 エ 「[0041] なお、本発明における曲げ強度・・・中略・・・引張り弾性率は、以下のような射出条件によって得た試験片を用い、ASTM D790に基づき、23℃で測定を行うものである。 (射出条件) ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械社製、IS-80G型)を用い、長さ×幅×厚さ=127mm(5インチ)×12.7mm(1/2インチ)×3.2mm(1/8インチ)の試験片を得る。 [0042] 次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造法について説明する。 本発明のポリアミド樹脂組成物の製造法は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うものである。そして、本発明の製造法におけるセルロース繊維の水分散液は、このような平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を水に分散させたものであり、水分散液中のセルロース繊維の含有量は0.01~50質量%とすることが好ましい。このような水分散液は、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で攪拌することにより得ることができる。 [0043] そして、セルロース繊維の水分散液と、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとを混合し、ミキサー等で攪拌することにより均一な分散液とする。その後、分散液を加熱し、150~270℃まで昇温させて攪拌することにより重合反応させる。このとき、分散液を加熱する際に徐々に水蒸気を排出することにより、セルロース繊維の水分散液中の水分を排出することができる。なお、上記ポリアミド重合時においては、必要に応じてリン酸や亜リン酸などの触媒を添加してもよい。そして、重合反応終了後は、得られた樹脂組成物を払い出した後、切断してペレットとすることが好ましい。 ・・・(中略)・・・ [0045] このように、本発明の製造法では、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を用い、かつセルロース繊維を水分散液のまま重合反応に供することで、分散性が良好な状態で重合反応に供されることとなる。さらに、重合反応に供されたセルロース繊維は、重合反応中のモノマーや水との相互作用により、また上記のような温度条件で攪拌することにより、分散性が向上し、繊維同士が凝集することがなく、平均繊維径が小さいセルロース繊維が良好に分散した樹脂組成物を得ることが可能となる。このように、本発明の製造法によれば、セルロース繊維の分散性が向上するため、重合反応前に添加したセルロース繊維の平均繊維径よりも、重合反応終了後に樹脂組成物中に含有されているセルロース繊維のほうが、平均繊維径や繊維長が小さいものとなることもある。 また、本発明の製造法では、セルロース繊維を乾燥させる工程が不要となり、微細なセルロース繊維の飛散が生じる工程を経ずに製造が可能であるため、操業性よくポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。またモノマーとセルロースを均一に分散させる目的として水を有機溶媒に置換する必要がないため、ハンドリングに優れるとともに製造工程中において化学物質の排出を抑制することが可能となる。」 オ 「[0049] なお、本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、発泡成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体、あるいは、押出し成形してなるフィルム、シート、および、これらフィルム、シートから加工してなる成形体、あるいは、ブロー成形してなる中空体、および、この中空体から加工してなる成形体、溶融紡糸して得られる繊維などとすることができる。」 カ 「[0052]実施例1 セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY100G(ダイセルファインケム社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が10質量%含有されたもの)を使用し、これに精製水を加えてミキサーで攪拌し、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調整した。 このセルロース繊維の水分散液170質量部と、ε-カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とを、均一な溶液となるまでミキサーで攪拌、混合した。続いて、この混合溶液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精錬を行い、乾燥させた。・・・(中略)・・・ [0075]比較例5 セルロース繊維としてコットンの短繊維(平均繊維径16μm)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。 なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、実施例1と同様であった。 ・・・(中略)・・・ [0080]比較例10 セルロース繊維として、セリッシュKY100G(ダイセルファインケム社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が10質量%含有されたもの)を凍結乾燥後、粉砕処理を施し、粉末状セルロースとしたものを使用した。 ナイロン6(ユニチカ社製BRL 数平均分子量17000)100質量部に対して、得られた粉末状セルロース2質量部をブレンドし、スクリュー径が30mm、平均溝深さが2.5mmの二軸押出機(池員社製PCM-30)に供給し、バレル温度240℃、スクリュー回転数120rpm、滞留時間2.7分にて溶融混レンした。用幽魂連で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットをそのまま成形し、各種物性測定を行った。なお、曲げ強度等の測定に使用する試験片を得る際の射出成形条件は、実施例1と同様であった。・・・(中略)・・・ [0084] 実施例1~17、比較例1~13で得られたポリアミド樹脂組成物の特性値を測定した結果を表1に示す。 [0085] [表1] [図:0001422369000001.jpg] [0086] 表1から明らかなように、実施例1~17で得られたポリアミド樹脂組成物は、繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とポリアミド樹脂を構成するモノマーを混合し、重合反応を行うことにより得られたものであったため、ポリアミド樹脂中に微細なセルロース繊維が凝集することなく均一に分散されたものであった。・・・(中略)・・・ このため、実施例1~17で得られたポリアミド樹脂組成物は、いずれも曲げ弾性率、引張り弾性率、曲げ強度、引張降伏強度ともに高く、さらに、MD方向の線膨張係数は低く、機械的特性に優れたものであった。さらには、熱変形温度が高く耐熱性にも優れていた。 一方、比較例1~4で得られたポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を含有していないものであったため、実施例1~5のポリアミド樹脂組成物と比較して、曲げ弾性率、曲げ強度、引張り弾性率、引張降伏強度、熱変形温度のいずれも低く、線膨張係数は高い値を示しており、機械的特性、耐熱性ともに劣るものであった。比較例5~8で得られたポリアミド樹脂組成物は、繊維径が10μmを超えるセルロース繊維を用いて重合反応を行ったものであり、得られたポリアミド樹脂組成物は、平均繊維径が10μmを超えるセルロース繊維が含有されたものであったため、実施例1~5のポリアミド樹脂組成物と比較して、曲げ弾性率、曲げ強度、引張り弾性率、引張降伏強度、熱変形温度のいずれも副区、線膨張係数は高い値を示しており、機械的強度、熱変形温度ともに劣るものであった。比較例9では、セルロース繊維の含有量が多すぎたため、重合反応時に攪拌が困難となり、樹脂組成物を得ることができなかった。比較例10~13で得られたポリアミド樹脂組成物は、本発明の製造法ではない溶融混練法で得られたものであったため、溶融混練する工程において、セルロース繊維の分散性が悪く、セルロース繊維の凝集が生じた。・・・(中略)・・・このため、比較例10~13で得られたポリアミド樹脂組成物は、平均繊維径が大きいセルロース繊維が含有されたものとなり、実施例1~5で得られた樹脂組成物(セルロース繊維を同量含有するもの)と比較して、曲げ弾性率、曲げ強度、引張り弾性率、引張降伏強度、熱変形温度のいずれも低く、線膨張係数は高い値を示しており、機械的特性、耐熱性ともに劣るものであった。」 キ 「請求の範囲 [請求項1] ポリアミド樹脂100質量部に対して、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維0.01~50質量部を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 [請求項2] ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うことにより得られたものである、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。 ・・・(中略)・・・ [請求項10] ポリアミド樹脂がナイロン6又はナイロン66である、請求項1、2、6~8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。」 (2)甲2に記載された発明 前記(1)ア~キで摘記した甲2の記載から、請求項2の記載を引用する請求項10において、ポリアミド樹脂としてナイロン6を選択したポリアミド樹脂組成物を、成形して得られる成形体に係る発明として、次の発明が記載されていると認められる。 「ポリアミド樹脂組成物を、射出成形、ブロー成形、押出成形、発泡成形等の成形方法により成形して得られる成形体であって、([0049]) 前記ポリアミド樹脂組成物は、ナイロン6 100質量部に対して、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維0.01~50質量部を含有し、前記ナイロン6を構成するモノマーと、前記セルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うことによって得られるポリアミド樹脂組成物である、(請求項1、請求項2、請求項10) 成形体。」(以下「甲2発明」という。) 2 甲1 (1)甲1の記載 甲1は、先の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ、次の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、3Dプリンタによって三次元造形物を得る際に使用する造形材料に関するものである。 【背景技術】 【0002】 コンピュータ上の設計データをもとに三次元のものを作り出す3Dプリンタは、金型や溶融成形装置を用いずにプラスチック製の部品、治具、製品を作ることができ、企業を中心に急速に普及している。特に、熱可塑性樹脂を造形材料に用いる熱溶解積層方式の3Dプリンタは廉価版も販売され、個人にまで普及し始めている。 このような熱溶解積層法式3Dプリンタに用いられる造形材料としては、熱可塑性樹脂とこの樹脂中に分散された機能性ナノフィラーを含む機能性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。」 イ 「【0008】 以下、本発明の3Dプリンタ用造形材料について、構成要件別に詳細に説明するが、本発明の造形材料は、(A)ナノファイバー、(B)分散剤および(C)樹脂成分を主成分とする。 【0009】 <(A)ナノファイバー> ナノファイバーとは、一般に直径が1~1、000nmで長さが直径の100倍以上ある繊維の総称である。ナノファイバーの素材としては、バイオナノファイバー(セルロースナノファイバー、キチン・キトサンナノファイバー)、カーボンナノファイバー、その他のナノファイバー(炭素以外の無機ナノファイバー、有機高分子ナノファイバー)などが挙げられるが、好ましくはセルロースナノファイバーである。以下、(A)ナノファイバーに関しては、セルロースナノファイバーを例にとって詳述する。」 ウ 「【0027】 <(C)樹脂成分> (C)樹脂成分としては、熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂である。 このうち、熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形を行う樹脂を言う。その具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。 なお、本発明の造形材料においては、(A)ナノファイバーとしてセルロースナノファイバーを用いる場合、耐熱性が充分ではない場合があるので、(C)樹脂成分としては、融点の比較的低い、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂のうち、ナイロン6などが特に好適に用いられる。」 エ 「【0039】 <造形材料の製造方法> 本発明の造形材料の形態は3Dプリンタに装着できるものであれば限定しないが、例えば熱溶解積層方式の3Dプリンタに用いる場合には、連続線状に成形されたものとする。この場合、直径1.75mm~3.00mmの線状体、いわゆるモノフィラメント糸の形態を呈する成形体がよい。連続線状であるモノフィラメント糸の形態を呈する成形体はボビンに巻いたものとする、あるいは、かせ状にすることにより、コンパクトな形態にできるため好ましい。」 (2)甲1に記載された技術事項 前記(1)ア~エで摘記した甲1の記載によれば、甲1には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「熱溶解積層方式の3Dプリンタ用の造形材料として、樹脂組成物を、直径1.75mm~3.00mmのモノフィラメント糸の形態を呈する成形体に成形したものを用いること。」(以下「甲1技術事項」という。) 3 周知の技術事項 (1)周知例1の記載 周知例1(特開2017-128073号公報)は、先の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ、次の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は立体構造物の製造方法に関する。より具体的には、3Dプリンタを用いて、熱可塑性樹脂を含むフィラメントを積層して立体構造物を製造する方法に関する。 【背景技術】 【0002】 3Dプリンタは、ラピッドプロトタイピング(3次元造形機)の一種で、コンピュータ上で作成したCAD、CGなどの3Dデータを設計図として、プラスチック等からなる立体構造物(3次元のオブジェクト)を製造する立体プリンタである。 3Dプリンタは、積層方式により分類される。具体的には、アクリル系光硬化樹脂を使用したインクジェット紫外線硬化方式の3Dプリンタ(例えば、オブジェットジオメトリーズ社製、CONNEX、EDEN、キーエンス社製、AGILISTA-3000など)が知られている。また、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニルスルフォン樹脂(PPSF)などの熱可塑性樹脂を使用した熱溶解積層方式の3Dプリンタ(例えば、ストラタシス社製、FORTUSシリーズ、DimensionシリーズおよびuPrintシリーズ、Solidoodle社製、Solidoodle3など)も知られている。さらに、樹脂系粉末材料や銅・青銅・チタン・ニッケルなどの金属系の粉末材料に高出力のレーザ光線をあて焼結または溶融させるSLS方式(SelectiveLaserSintering)、またはSLM方式(SelectiveLaserMelting)の3Dプリンタ(例えば、3DSystems社製、SLSシリーズ、アスペクト社製、RaFael550、EOS社製、EOSIntシリーズなど)も知られている。 【0003】 3Dプリンタでは、立体構造物の材料である樹脂(インク)を使用し、形状を作る。例えば、熱溶解積層方式に用いられる樹脂(インク)では、ABS樹脂フィラメントなど熱可塑性樹脂をフィラメント状にしたものが用いられる。そして、熱溶解積層方式では、熱可塑性樹脂フィラメントを3Dプリンタから、溶融させながら吐出し、基板上に、所望の形状を構成するように、積層していく。熱溶解積層方式では、樹脂が溶融した状態で、基板上に吐出されるため、容易に所望の形状に造形できる。 【0004】 これまで、製造業を中心に建築・医療・教育・先端研究など幅広い分野で、実際に製品を作る前にそれぞれの部品を3Dプリンタで出力できるサイズに縮小して出力して、デザインの検証・機能検証などの試作に使われてきた。しかしながら、近年、より精密な検証に用いられたり、実際の樹脂成形品の製造についても期待されている。 さらに、近年は、熱可塑性樹脂に繊維を配合した立体構造物を3Dプリンタで製造することも検討されている(非特許文献1参照)。非特許文献1では、図5に示すように、ドライブギヤで熱可塑性樹脂フィラメントを送り出している。」 イ 「【0027】 3Dプリンタ用フィラメントのフィラメント径(直径)は、用途や用いるノズル等に応じて適宜定めることができるが、断面を円に換算した時の径が、下限値としては、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1.1mm以上であってもよい。また、フィラメント径の上限値としては、3.0mm以下が好ましく、2.5mmであることがより好ましく、2.0mm以下であってもよい。」 ウ 「【0028】 以下、フィラメントに用いる材料について説明する。 <熱可塑性樹脂> 本発明で用いるフィラメントに含まれる熱可塑性樹脂としては、特に定めるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニルスルフォン樹脂、熱可塑性ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリアミド樹脂であることが好ましい。本発明で用いることができるポリアミド樹脂の詳細については、後述する。・・・(中略)・・・ 【0029】 <<ポリアミド樹脂>> 本発明で用いるポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。」 エ 「【0048】 <強化繊維> フィラメントに用いる強化繊維は、上述のとおり、短繊維であってもよいし、連続強化繊維であってもよい。 本発明で用いる強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。・・・(中略)・・・また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。」 (2)周知例2の記載 周知例2(特開2016-28887号公報)は、先の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ、次の記載がある。 ア 「【請求項1】 熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメントであって、熱可塑性を有するマトリックス樹脂と、この熱可塑性を有するマトリックス樹脂中に分散された機能性ナノフィラーを含む機能性樹脂組成物によって形成されていることを特徴とする熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメント。」 イ 「【0007】 本発明において、熱可塑性を有するマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂エラストマー、ゴムなどが挙げられ、具体的には、アクリロニトリル-ブチレン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、液晶ポリマー、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの芳香族ポリエーテルケトン樹脂などの熱可塑性樹脂だけでなく、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などの熱可塑性樹脂エラストマーやゴム、これらの樹脂のアロイが挙げられ、中でもABS樹脂、PLA、PA、PP、PE、PC、PETなどが好適である。 【0008】 機能性ナノフィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンブラック(CB)、グラフェン、銀や銅などの金属ナノ粒子、ナノクレイ、セルロースナノファイバー、シリカナノ粒子などが挙げられる。」 ・・・(中略)・・・ 【0010】 金属ナノ粒子は、配合によって造形物の導電性を高めたり、衝撃強度を高めたりすることができる。 セルロースナノファイバーは、添加によって造形物の引張強さや弾性率を高めたり、ガス透過性を減少させたりすることができる。 シリカナノ粒子は、添加によって造形物の引張強さや弾性率を高めることができる。」 (3)甲1、周知例1、周知例2の記載から把握される周知の技術事項 前記2(1)ア~エ、前記(1)及び前記(2)によれば、次の技術事項が、先の出願前に周知の技術事項であったと認められる。 「熱溶解積層方式の3Dプリンタの造形材料用成形体として、熱可塑性樹脂に強化繊維を分散させた樹脂組成物により形成されたフィラメントを用いることができ、前記熱可塑性樹脂として、ポリアミド樹脂を用いることができ、前記強化繊維として、セルロース繊維を用いることができること」(以下「周知事項」という。) 第6 当合議体の判断 1 本件訂正発明4について (1)対比 甲2発明の「成形体」、「樹脂組成物」、「ポリアミド樹脂」、「セルロース繊維」及び「ナイロン6」は、本件訂正発明4の「成形体」、「樹脂組成物」、「ポリアミド」、「セルロース繊維」及び「ポリカプロアミド(ポリアミド6)」に、それぞれ相当する。 甲2発明は、「ポリアミド樹脂」(本件訂正発明4の「ポリアミド」に対応する。以下、本「(1)対比」欄において、カギ括弧で囲まれた甲2発明の構成に続く丸括弧内の文言は、当該甲2発明の構成に対応する本件訂正発明4の発明特定事項を表す。)100質量部に対して、平均繊維径が10μm以下の「セルロース繊維」(セルロース繊維)0.01~50質量部を含有するポリアミド「樹脂組成物」(樹脂組成物)であるから、甲2発明は、「樹脂組成物において、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、」なる本件訂正発明4の発明特定事項に相当する構成を具備している。 また、甲2発明においては、「ポリアミド樹脂」(ポリアミド)がナイロン6であるところ、「ナイロン6」とは、「ポリカプロアミド(ポリアミド6)」のことにほかならないから、甲2発明は、「ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物である」なる本件訂正発明4の発明特定事項に相当する構成を具備している。 また、甲2発明のポリアミド樹脂組成物は、分散剤を含有していないから、「分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されている」なる本件訂正発明4の発明特定事項に相当する構成を具備している。 したがって、本件訂正発明4と甲2発明を対比すると、両者は、 「樹脂組成物において、前記造形材料は、ポリアミド中にセルロース繊維を含有し、前記ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)であるか、またはポリカプロアミド(ポリアミド6)と、ポリアミド66、ポリアミド11もしくはポリアミド12との混合物であり、分散剤を含有しない樹脂組成物で構成されている成形体。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 本件訂正発明4のフィラメント状成形体の材料である樹脂組成物は、熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用であって、前記造形材料は直径1.5~3.2mmのモノフィラメントであるのに対して、 甲2発明の成形体はフィラメント状のものとは特定されておらず、かつ、その材料であるポリアミド樹脂組成物の用途として、本件訂正発明4に係る上記用途が特定されていない点。 相違点2: 本件訂正発明4の成形体の材料である樹脂組成物中のセルロース繊維は、平均繊維径が50nm以下であるのに対して、 甲2発明の成形体の材料である樹脂組成物中のセルロース繊維は、平均繊維径が10μm以下であるものの、50nm以下とは特定されていない点。 (2)相違点1について 相違点1に係る本件訂正発明4の発明特定事項は、フィラメント状成形体という物の発明である本件訂正発明4において、その材料である樹脂組成物の用途を用いてフィラメント状成形体という物を特定しようとする、いわゆる用途限定である。 ここで、用途限定を伴う物の発明においては、用途限定が付された物が、その用途に特に適した物を意味する場合は、その物を、用途限定が意味する形状、構造、組成等(以下「構造等」という。)を有する物であると認定すべきものと解される(特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 第4節 「3.物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合」を参照。)。 これを本件についてみると、本件特許の本件訂正請求による訂正後の請求項4の記載からみて、本件訂正発明4は「フィラメント状成形体」の発明であって、(造形材料用)「樹脂組成物」の発明ではないこと、また、本件特許明細書の【0003】の「この熱溶解積層法3Dプリンターにおいては、造形材料として、フィラメント状成形体が用いられ」との記載からみて、本件訂正発明4において、「成形体」とは「熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形材料」として用いることができる形状・サイズに成形したものを意味していることは明らかであるから、相違点1に係る上記用途限定は、「フィラメント状成形体」それ自体が「直径1.5~3.2mmのモノフィラメント」という形状・サイズを有することを意味していると解するのが相当である。 そこで、上記用途限定についての上記解釈を踏まえて検討するに、甲2発明は、ナイロン6中にセルロース繊維を分散させたポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体であるところ、周知事項(上記第5 3(3))及び甲1技術事項を踏まえれば、、当該周知事項を熟知し、甲1の記載に接した当業者が、甲2発明の成形体の用途として、熱溶解積層方式の3Dプリンタ用造形材料に思い至り、当該成形体を直径1.5~3.2mmのモノフィラメント糸の形態を呈する造形材料とすることは一応容易といえる。 (3)相違点2について 甲2の[0019]には、「セルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが必要であり、中でも繊維径は500nm以下であることが好ましく、さらには、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下である。」と記載されている。 また、甲2に記載された実施例1~17のうち、実施例8~13は、平均繊維径が50nm以下のセルロース繊維を用いている。 加えて、熱溶解積層方式の3Dプリンタ用造形材料を開示する甲1には、造形材料を形成するための樹脂組成物に含有させるセルロースナノファイバーの平均繊維径について、「10~100nm程度、好ましくは10~40nm程度、最も好ましくは15~25nm程度である。」(【0026】)と記載されている。 そうすると、甲2発明において、樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径を50nm以下とすることは、一応当業者が適宜なし得た設計上の事項といえる。 (4)本件特許発明4の効果を踏まえた総合検討 上記(2)~(3)に示したとおり、当業者は、甲2発明において、上記相違点1及び2に係る本件特許発明4の構成に一応容易に想到し得たと認められるものの、本件特許発明4の構成によって奏される効果は、当業者が予測することができなかったものであって、かつ、その程度が顕著なものであることから、総合的にみて、本件訂正発明4は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない、と判断する。その理由は、以下に詳述するとおりである。 本件特許明細書の【0010】に記載された本件訂正発明4の効果のうち、「水分による寸法変化が小さい造形物を得ることができる」という効果についてみると、本件特許明細書の【0089】の表1、【0090】の表2には、特定の(ポリアミド6、ポリアミド66又はポリアミド6とポリアミド66、ポリアミド11若しくはポリアミド12との混合物)ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うことによって得られた、分散剤を含有しない実施例1~実施例11の熱溶解積層法による3Dプリンターによる造形物(本件特許明細書の【0060】に記載された板)の「水分による寸法変化率」(表1の「寸法変化率(2)」欄)が、セルロース繊維を含有しない又はセルロース繊維を分散剤により分散させた比較例1~14の造形物よりも顕著に小さいことが示されている。 そして、特定のポリアミド樹脂と平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とを混合し、重合反応を行うことによって得られた、分散剤を含有しないポリアミド樹脂組成物により得られたモノフィラメントを用いて上記3Dプリンターで実際に得られた造形物(板)によると、水分による寸法変化が小さいという効果が得られることが、当業者に知られていた証拠は見当たらない。 また、実施例1~11の上記造形物は、ポリアミド樹脂を含む比較例1~8、10~14の造形物と比較して、造形物に割れや隙間が生じない等、目視で容易に認識可能な顕著な外観上の差が確認されている(表1の「密着性(3)」欄)。 以上の効果は、いずれも、先の出願当時本件訂正発明4の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものであり、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと認められる。 そうすると、たとえ、前記(2)~(3)で述べたように、甲2発明において、相違点1及び2に係る本件訂正発明4の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たと一応いえるとしても、本件訂正発明4の進歩性を否定することはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって、本件訂正発明4に係る特許を取り消すことはできない。 2 本件訂正発明7について 本件訂正発明7と甲2発明を対比すると、両者は、前記1(1)で述べた相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。 そして、前記(2)~(4)で述べたのと同様の理由で、本件訂正発明7の進歩性を否定することはできない。 よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって、本件訂正発明7に係る特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由通知(予告)で採用しなかった申立ての理由について 1 取消理由通知(予告)で採用しなかった申立ての理由の概要 取消理由通知(予告)で採用しなかった本件訂正前の請求項4に係る特許に対する申立ての理由は、概略次のとおりである。 申立理由1:本件特許発明4は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 申立理由1について (1) 甲1の【0004】~【0006】等の記載からみて、甲1に記載された発明が解決しようとする課題は、セルロースナノファイバーなどのナノファイバーを樹脂中に均一に分散させることにより、強度、弾性率が向上し、強度、弾性率が向上し、設計上の形状を造形物としてより正確に再現でき、表面平滑性に優れ、さらに透明性や染色性にも優れる三次元造形物が得られる3Dプリンタ用の造形材料を提供することであると理解され、甲1に記載された発明は、当該課題を解決するために、樹脂成分中に(B)分散剤を含有させるという構成を必須の構成として採用したものと理解される。 そうすると、甲1に記載された発明において、樹脂組成物が(B)分散剤を含有するという構成は、発明の課題を解決するために欠くことのできない構成というべきであって、甲1に記載された発明において、「分散剤を含有しない」という構成を採用することには、阻害要因が存在するといわざるを得ない。 しかるに、本件訂正発明4は、「分散剤を含有しない」という構成を有するのであるから、甲1に記載された発明でなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2) また、本件訂正発明7は、「非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤に属する化合物である分散剤を含有しない」という構成を有するところ、甲1には、使用する分散剤として、「非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤に属する化合物」以外の分散剤を用いることについては、記載も示唆もないから、本件訂正発明7は、甲1に記載された発明でなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)小括 前記(1)及び(2)のとおりであるから、申立理由1によって、本件訂正発明4又は7に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 前記第6 1及び2で述べたとおり、本件訂正発明4及び7は、いずれも、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件訂正発明4及び7に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項1~3、5、6は、前記第2で述べたとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち請求項1~3、5、6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700210

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