特許異議申立
2023-700364
AC-AC電力変換装置
- 審判番号
- 2023-700364
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-042376
- 登録番号
- 7154019
- 請求日
- 2023年04月11日
- 審決日
- 2023年12月15日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ナブテスコ株式会社
- 【権利者代理人】森下 賢樹
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 山崎 慎一
- 審判官 山澤 宏
- 分類
- P1651.113-YAA(H02M) / P1651.121-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7154019号発明「AC-AC電力変換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7154019号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7154019号の請求項1~2、4~5に係る特許を維持する。
特許第7154019号の請求項3についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7154019号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年3月8日に出願され、令和4年10月6日にその特許権の設定登録がされ、同年10月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年4月11日に特許異議申立人角田朗(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月4日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、この訂正の請求を、「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、申立人は、同年11月15日に意見書(以下、「申立人意見書」という。)を提出した。
第2 異議申立理由の概要
申立人は、以下の証拠(甲第1号証~甲第10号証)を提出し、本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の1に示す理由により、本件特許の請求項1~5に係る発明は、以下の2~3に示す理由により、取り消すべきものである旨主張する。
1 特許法第29条第1項第3号(理由1)
(1)理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由1」という。
2 特許法第29条第2項(理由2)
(1)理由2-1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-1」という。
(2)理由2-2(甲第3号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第3号証並びに甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-2」という。
(3)理由2-3(甲第5号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第5号証並びに甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-3」という。
(4)理由2-4(甲第6号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第6号証並びに甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-4」という。
(5)理由2-5(甲第7号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第7号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第7号証並びに甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-5」という。
(6)理由2-6(甲第8号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第8号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項4~5に係る発明は、甲第8号証並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-6」という。
(7)理由2-7(甲第9号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第9号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-7」という。
(8)理由2-8(甲第10号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第10号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-8」という。
(証拠)
甲1号証 : 特開2016-073203号公報
甲2号証 : 特開2010-166719号公報
甲3号証 : 特開2017-121120号公報
甲4号証 : 特開2007-244193号公報
甲5号証 : 特開2015-084637号公報
甲6号証 : 特開2016-154434号公報
甲7号証 : 国際公開第2015/140867号
甲8号証 : 特開2010-166719号公報
甲9号証 : 米国特許出願公開第2001/0001227号明細書
甲10号証 : 特開2012-151962号公報
以降において、上記甲第1号証~甲第10号証の各々を、「甲1」~「甲10」という場合がある。
3 特許法第36条第6項第2号(理由3)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に、「前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し」と記載され、請求項2に「前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し」と記載されているところ、これらの「外部機器」がどのようなものを意味するのか不明確であり、当該記載を含む本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由3」という。
第3 各証拠に記載された事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証に記載された事項
申立人が提出した甲第1号証には、次のア~ウに示す事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
ア 「【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
…
【0011】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、
交流電源(30)に接続された、昇圧チョッパ(15)を有するコンバータ回路(11)と、
上記コンバータ回路(11)の出力端子間に接続されたコンデンサ(12a)と、
上記コンデンサ(12a)の端子電圧(vdc)を交流に変換してモータ(20)に電力を供給する多相インバータ回路(13)と、
上記昇圧チョッパ(15)の動作を制御する昇圧チョッパ制御部(16)と、
を備え、
上記コンデンサ(12a)は、上記昇圧チョッパ(15)の動作を常に停止した場合に、該コンデンサ(12a)の端子電圧(vdc)が上記交流電源(30)の周波数の2倍の周波数で脈動するような容量を有し、
上記多相インバータ回路(13)の出力電力を電源に同期して変動させることを特徴とする。
…
【0033】
〈コンバータ回路〉
本実施形態では、コンバータ回路(11)は、全波整流回路(11a)と昇圧チョッパ(15)により構成されている。
…
【0038】
〈直流リンク部〉
直流リンク部(12)は、コンデンサ(12a)を備えている。コンデンサ(12a)は、コンバータ回路(11)の出力ノードの間に接続され、該コンデンサ(12a)の両端に生じた端子電圧(vdc)(以下、コンデンサ電圧(vdc)とも呼ぶ)がインバータ回路(13)の入力ノードに印可されている。
…
【0040】
図2は、交流電源(30)からの電流(以下、電源電流(is))、交流電源(30)の電圧(以下、電源電圧(vs))、及びコンデンサ電圧(vdc)の波形を例示する。図2では、コンデンサ電圧(vdc)及び電源電流(is)の波形は、昇圧チョッパ(15)が動作していない場合(或いは存在しない場合)を想定した波形である。この例では、コンデンサ(12a)は、コンデンサ電圧(vdc)が上記交流電源の周波数の2倍の周波数で脈動するような容量を有しており、昇圧チョッパ(15)が動作していない場合には、コンデンサ電圧(vdc)は、電源電圧(vs)の2倍の周波数で脈動することになる。具体的に、コンデンサ電圧(vdc)は、その最大値(Vmax)がその最小値(Vmin)の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
…
【0045】
〈PWM制御部〉
PWM制御部(14)は、マイクロコンピュータ(図示は省略)とそれを動作させるプログラムが格納されたメモリディバイスを含み、インバータ回路(13)の出力を制御して、モータ(20)の駆動を制御する。モータ(20)の駆動の制御には、例えばベクトル制御が用いられる。この例では、PWM制御部(14)には、モータ(20)の回転速度(ω)と、回転速度の指令値(ω*)が入力されており、ベクトル制御を行う際に、モータ(20)のトルクが電源電圧に同期して脈動するように、それぞれのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)をオンにする時間を求め、これらのスイッチング素子を駆動するゲート信号(G1,G2,…,G6)を生成する。
…
【0047】
〈電力変換装置の動作〉
本実施形態では、昇圧チョッパ制御部(16)が昇圧チョッパ(15)のスイッチングの制御(スイッチングの有無、及びデューティー比(D)の制御)を行うことによって、インバータ回路(13)への入力電圧(すなわちコンデンサ電圧(vdc))の下限値が所定目標値以上となるようにコンデンサ電圧(vdc)を昇圧させ、それにより、PWM制御部(14)がモータ(20)に対して弱め磁束制御をなるべく行わなくてもよいようにしている。弱め磁束制御では、磁石磁束を弱めるための電流が必要であり、コンデンサ電圧(vdc)が低いほど大きな電流を要する。そこで、本実施形態の昇圧チョッパ制御部(16)は、モータ(20)のd軸電圧(vd)、q軸電圧(vq)を検知し(例えばPWM制御部(14)から情報を取得する)、検知した値に応じて、昇圧チョッパ(15)のスイッチング制御を行うのである。」
イ 「図1
[図:0001407830000001.jpg]
」
ウ 「図2
[図:0001407830000002.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)ア~ウに示した記載事項(特に下線部)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「交流電源(30)に接続された、昇圧チョッパ(15)を有するコンバータ回路(11)と、
上記コンバータ回路(11)の出力端子間に接続されたコンデンサ(12a)と、
上記コンデンサ(12a)の端子電圧(vdc)を交流に変換してモータ(20)に電力を供給する多相インバータ回路(13)と、
上記昇圧チョッパ(15)の動作を制御する昇圧チョッパ制御部(16)と、を備えることを特徴とする(【0011】)電力変換装置であって(【0001】、図1)、
コンバータ回路(11)は、全波整流回路(11a)と昇圧チョッパ(15)により構成され(【0033】)、
直流リンク部(12)は、コンデンサ(12a)を備え、コンデンサ(12a)は、コンバータ回路(11)の出力ノードの間に接続され、該コンデンサ(12a)の両端に生じた端子電圧であるコンデンサ電圧(vdc)がインバータ回路(13)の入力ノードに印可され(【0038】)、コンデンサ電圧(vdc)は、電源電圧(vs)の2倍の周波数で脈動し(【0040】、図2)、
PWM制御部(14)は、インバータ回路(13)の出力を制御して、モータ(20)の駆動を制御するものであって、ベクトル制御を行う際に、モータ(20)のトルクが電源電圧に同期して脈動するように、それぞれのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を駆動するゲート信号(G1,G2,…,G6)を生成し(【0045】)、
昇圧チョッパ制御部(16)は、昇圧チョッパ(15)のスイッチングの制御を行うことによって、インバータ回路(13)への入力電圧(すなわちコンデンサ電圧(vdc))の下限値が所定目標値以上となるようにコンデンサ電圧(vdc)を昇圧させる(【0047】)
電力変換装置。」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証に記載された事項
申立人が提出した甲第2号証には、次のア~ウに示す事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
三相交流電源を整流する三相整流器と、
リアクター、スイッチング素子及び逆流防止素子を備え、前記三相整流器の出力電圧をチョッピングにより昇圧する昇圧コンバーター部と、
前記昇圧コンバーター部のスイッチング素子を制御するスイッチング制御手段と、
前記昇圧コンバーター部の出力を平滑する平滑コンデンサーと、
前記昇圧コンバーター部の出力である直流電圧を交流電圧に変換し、モーターに供給するインバーター回路と、
前記インバーター回路を駆動するインバーター駆動手段と
を備え、
前記スイッチング制御手段は、
前記リアクターと母線との間の容量によって母線電流に生じる共振成分を低減するべく、前記スイッチング素子のオンデューティーを補償して制御することを特徴とするモーター駆動制御装置。」
イ 「【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るモーター駆動制御装置の構成の一例を示した図である。図1において、1は三相交流電源、2は三相交流電源1の交流電圧を整流する三相整流器である。三相整流器2は6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっている。3は昇圧コンバーター部である。昇圧コンバーター部3は、昇圧リアクター4と、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子5と、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6により構成される。7は昇圧コンバーター部3の出力を平滑する平滑コンデンサーである。8は母線電流検出部、9は出力電圧検出器である。10はスイッチング制御手段である。11は母線電流検出部8より検出した母線電流に現れる共振成分を抽出する共振成分抽出部である。スイッチング制御手段10は、母線電流検出器8、出力電圧検出部9、及び共振成分抽出部11の出力信号よりスイッチング素子5を動作させる駆動信号を生成する。12はインバーター回路である。インバーター回路12は、例えばIGBTのようなスイッチング素子12a~12fで構成されている。13はモーター15に流れる電流を検出するモーター電流検出部である。14はインバーター駆動手段である。インバーター駆動手段14は、モーター電流検出部13の検出信号からインバーター回路12を動作させる駆動信号を生成する。」
ウ 「図1
[図:0001407830000003.jpg]
」
(2)甲2記載事項
上記(1)ア~ウの記載事項(特に下線部)より、甲2には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「三相整流器2とインバーター回路12の間に、昇圧コンバーター3を設けるとともに、母線電流に生じる共振成分を低減するべく、スイッチング素子のオンデューティーを補償して制御すること。」
3 甲第3号証
(1)甲第3号証に記載された事項
申立人が提出した甲第3号証には、次のア及びイに示す事項が記載されている。
ア 「【0021】
A.直接形電力変換装置の構成:
図1は、本実施の形態で示される制御方法が適用される直接形電力変換装置の構成を示すブロック図である。当該直接形電力変換装置は、コンバータ3と、電力バッファ回路4と、インバータ5とを備えている。
…
【0023】
コンバータ3は例えばダイオードブリッジを採用し、ダイオードD31~D34を備えている。ダイオードD31~D34はブリッジ回路を構成し、単相交流電源1から入力される入力電圧である単相交流電圧Vinを単相全波整流して整流電圧Vrecに変換し、これを直流電源線LH,LL(これらはいわゆる直流リンクを形成する)の間に出力する。直流電源線LHには直流電源線LLよりも高い電位が印加される。コンバータ3には単相交流電源1から入力電流Iinが流れ込む。
【0024】
電力バッファ回路4は直流リンクと電力を授受する回路であり、昇圧回路4aおよびバッファ回路4bを有する。バッファ回路4bはコンデンサC4を含んでいる。昇圧回路4aは整流電圧Vrecを昇圧してコンデンサC4を充電する。」
イ 「図1
[図:0001407830000004.jpg]
」
(2)甲3記載事項
上記(1)ア及びイの記載事項(特に下線部)より、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「単相交流電圧Vinを単相全波整流するコンバータ3とインバータ5との間に、昇圧回路4aを設けること。」
4 甲第4号証
申立人が提出した甲第4号証には、「制御部が整流回路を制御する構成」が記載(段落0009-0012、図1)されていると認められる。
5 甲第5号証
申立人が提出した甲第5号証には、「コンバータ3と、電力バッファ回路4と、インバータ5と、直流リンク7とを備えている直接形電力変換装置(段落0031)であって、単相交流電源1から入力される入力電圧である単相交流電圧Vinを単相全波整流して整流電圧Vrecに変換するコンバータ3(段落0034)と、直流電源線LH、LLの間の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ5(段落0042)と、インバータ5のスイッチング素子の動作を制御する制御部10(段落0168、0169)と、を備え、単相交流電圧が発生する電力および整流電圧が発生する電力の持つ脈動がインバータ5に入力され、三相交流の電流が誘導性負荷6に供給され(請求項1、図1)、昇圧チョッパである充電回路4b(段落0037)が設けられていることを特徴とする直接形電力変換装置。」の発明、及び、コンバータ3とインバータ5の間の電力バッファ回路4がコンデンサC4を含むこと(段落0035、図1)が記載されていると認められる。
6 甲第6号証
申立人が提出した甲第6号証には、「モータ駆動装置(図2)であって、ダイオードブリッジ151(段落0047、図2)と、得られた直流電力を再度交流電力に変換するモータ駆動回路3(段落0047、図2)と、PWM変換手段161にてパルス幅信号に変換され、モータ駆動回路3を駆動して速度制御系(段落0049、図2)と、を備え、電源電流の指令値を調整することでモータ負荷脈動を調整し(段落0056)、リアクタ153、半導体スイッチ152、ダイオード154(図2)が昇圧チョッパ回路を構成していることを特徴とするモータ駆動装置。」の発明、及び、ダイオードブリッジ151とモータ駆動回路3の間の平滑コンデンサ2(段落0047、図2)。」が記載されていると認められる。
7 甲第7号証
申立人が提出した甲第7号証には、「モータ駆動制御装置1(段落0027、図1)であって、三相交流電源3の交流電圧を直流母線電圧Vdcに変換する三相整流器11(段落0028)と、平滑コンデンサ15に充電された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路17(段落0031)と、インバータ回路17の動作を制御するインバータ制御手段53(段落0037)と、を備え、インバータ出力電力と平滑コンデンサの推定リプル電流の相関が設定され、リプル電流がしきい値を超えた場合、リプル電流を抑制する制御を行う(段落0121、0124、0125)、三相整流器11とインバータ回路17との間に設けられた昇圧回路13(段落0028、0029、図1)が設けられていることを特徴とするモータ駆動制御装置1。」の発明、及び、三相整流器11とインバータ回路17の間に設けられた平滑コンデンサ15(段落0028、図1)が記載されていると認められる。
8 甲第8号証
申立人が提出した甲第8号証には、「モーター駆動制御装置(段落0010、図1)であって、三相交流電源1の交流電圧を整流する三相整流器2(段落0010、図1)と、インバーター回路12(段落0010、図1)と、モーター電流検出部13の検出信号からインバーター回路12を動作させる駆動信号を生成するインバーター駆動手段14(段落0010、図1)と、昇圧コンバーター部3(段落0010、図1)が設けられていることを特徴とするモーター駆動制御装置。」の発明、及び、三相整流器2とインバーター回路12との間の平滑コンデンサー7(段落0010、図1)が記載されていると認められる。
9 甲第9号証
申立人が提出した甲第9号証には、「モータ制御装置(図1)であって、コンバータ回路2の中の整流回路101(段落0031)と、平滑コンデンサから供給される直流電圧を所望の交流電圧に変換して同期電動機4を駆動するインバータ3(段落0031)と、インバータ3を制御するインバータ制御回路6とコンバータ回路2を制御するコンバータ制御回路8(段落0032~0036)と、を備え、コンバータ回路2における昇圧チョッパ回路(段落0031)が設けられていることを特徴とするモータ制御装置。」の発明、及び、コンバータ回路2とインバータ3との間に設けられた平滑コンデンサ105(段落0031、図1)が記載されていると認められる。
10 甲第10号証
申立人が提出した甲第10号証には、「単相の交流電源(6)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給する電力変換装置(1)(段落0027、図1)であって、交流電源(6)が出力した交流を直流に全波整流するコンバータ回路(2)(段落0028、図1)と、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換してモータ(7)に供給するインバータ回路(4)(段落0030、図1)と、インバータ回路(4)におけるスイッチング(オンオフ動作)を制御する制御部(5)(段落0030、図1)と、を備え、制御部(5)は、モータ電流が電源電圧の脈動に同期して脈動するように、インバータ回路(4)におけるスイッチングを制御する(段落0050)ことを特徴とする電力変換装置(1)。」の発明、並びに、コンデンサ(3a)を備える直流リンク部(340)がコンバータ回路(2)とインバータ回路(4)の間に設けられている(段落0029、図1)こと、及び、直流リンク部に小容量のコンデンサ(3a)を設けているため、直流リンク電圧がより大きく脈動し、制御部(5)は、モータ電流が電源電圧の脈動に同期して脈動するようにインバータ回路(4)におけるスイッチングを制御すること(段落0050、図1)が記載されていると認められる。
第4 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(5)のとおりである。(なお、下線は、訂正請求書において特許権者によって付加されたものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられている」
とあるのを、
「前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられており、
前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、
前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」に訂正する。(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項4および5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられている」
とあるのを、
「前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられており、
前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、
前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」に訂正する。(請求項2の記載を直接的または間接的に引用する請求項4および5も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項3に記載のAC-AC電力変換装置」と
あるのを、「請求項1または2に記載のAC-AC電力変換装置」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか一項に記載のAC-AC電力変換装置」とあるのを、「請求項1、2または4に記載のAC-AC電力変換装置」に訂正する。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項3~5はそれぞれ請求項1または2を引用しているものであって、訂正事項1および2によって記載が訂正される請求項1および2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項と認める。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載される「前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し」について、訂正後の請求項1における「前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、」「前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」との記載により、「前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動」を「前記外部機器に出力」することを「前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように」と具体的に特定し、さらに限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したとおり、訂正事項1は、「脈動を外部機器に出力する」という発明特定事項を、概念的により下位の「前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」に具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の記載に基づいて導き出される構成である。
すなわち、願書に添付した明細書の段落【0035】には「DCリンク電圧vDCは、時間的に一定な値(脈動を持たない)となるように制御されている。」と記載され、段落【0042】には「従って、DCリンクキャパシタ電流iCは流れず、DCリンクキャパシタ電圧vDCは時間的に一定な値となる。」と記載されている。
以上の記載から、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載される「前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられている」について、訂正後の請求項2における「前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」との記載により、「前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動」を「前記外部機器に出力」することを「前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように」と具体的に特定し、さらに限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アにおいて指摘したとおり、訂正事項2は、「前記脈動を前記外部機器に出力する」という発明特定事項を、概念的により下位の「前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」に具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の記載に基づいて導き出される構成である。
すなわち、願書に添付した明細書の段落【0035】には「DCリンク電圧vDCは、時間的に一定な値(脈動を持たない)となるように制御されている。」と記載され、段落【0042】には「従って、DCリンクキャパシタ電流iCは流れず、DCリンクキャパシタ電圧vDCは時間的に一定な値となる。」と記載されている。
以上の記載から、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1~3のいずれか一項を引用するうち、訂正前の請求項3を引用するものを削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上記アに示したとおり、引用する請求項のうち一部を削除するというものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1~4のいずれか一項を引用するうち、訂正前の請求項3を引用するものを削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、上記アに示したとおり、引用する請求項のうち一部を削除するというものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第5 訂正後の本件特許発明
上記第4のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、各構成要件の前に付した、「1A」等の記号は、説明のために当審で付加したものであり、それぞれ、「構成要件1A」などということがある。
1 本件特許発明1
1A 第1の交流電圧を第2の交流電圧に変換するAC-AC電力変換装置であって、
1B 前記第1の交流電圧を整流して整流電圧を生成する整流回路と、
1C 前記整流電圧から前記第2の交流電圧を生成するインバータと、
1D 前記整流回路および前記インバータを制御する制御部と、を備え、
1E 前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
1F 前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられており、
1G 前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、
1H 前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力することを特徴とするAC-AC電力変換装置。
2 本件特許発明2
2A 第1の交流電圧を第2の交流電圧に変換するAC-AC電力変換装置であって、
2B 前記第1の交流電圧を整流して整流電圧を生成する整流回路と、
2C 前記整流電圧から前記第2の交流電圧を生成するインバータと、
2D 前記整流回路および前記インバータを制御する制御部と、を備え、
2E 前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
2F 前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられており、
2G 前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられており、
2H 前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力することを特徴とするAC-AC電力変換装置。
3 本件特許発明3
(削除)
4 本件特許発明4
4A 前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力の値を、外部機器と前記DCリンクとに分散して出力するように前記整流回路および前記インバータを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のAC-AC電力変換装置。
5 本件特許発明5
5A 前記制御部は、前記整流回路に出力される電力の脈動値に含まれる高周波を抑制する共振制御部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1、2または4に記載のAC-AC電力変換装置。
第6 取消理由通知の概要
訂正前特許請求の範囲の請求項1~3及び5に対して、当審が通知した、令和5年7月4日付けの取消理由通知(以下、「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
本件特許発明1~3及び5は、引用例1~3(上記甲第1号証~甲第3号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、取り消されるべきものである。
第7 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)本件特許発明1について
上記訂正請求により訂正された本件特許発明1は、上記第5の1に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した引用例1(甲1)の記載事項及び甲1発明は、上記第3の1(1)及び(2)に示したとおりである。
イ 対比
本件特許発明1と甲1発明(第3の1(2)参照。)とを対比する。
(ア)構成要件1Aについて
甲1発明の「交流電源(30)」による交流電圧、及び「多相インバータ回路(13)」が「交流に変換してモータ(20)に電力を供給する」ところの「交流」による交流電圧は、それぞれ構成要件1Aの「第1の交流電圧」及び「第2の交流電圧」に相当するといえる。
甲1発明の「電力変換装置」は、甲1発明の当該「交流電源(30)」による交流電圧を「モータ(20)に…供給」される「交流」に変換する、“AC-AC電力変換装置”といい得る。
したがって、甲1発明は、構成要件1Aに相当する構成を有する。
(イ)構成要件1Bについて
甲1発明の「コンバータ回路(11)」は、「全波整流回路(11a)と昇圧チョッパ(15)により構成され」るものであって、上記(ア)の認定を踏まえると、構成要件1Bの「前記第1の交流電圧を整流して整流電圧を生成する整流回路」であるといえる。
したがって、甲1発明は、構成要件1Bに相当する構成を有する。
(ウ)構成要件1Cについて
甲1発明の「多相インバータ回路(13)」は、「コンデンサ(12a)の端子電圧(vdc)を交流に変換」するものであって、上記(ア)及び(イ)の認定を踏まえると、構成要件1Cの「前記整流電圧から前記第2の交流電圧を生成するインバータ」であるといえる。
したがって、甲1発明は、構成要件1Cに相当する構成を有する。
(エ)構成要件1Dについて
甲1発明の「昇圧チョッパ制御部(16)」は、「上記昇圧チョッパ(15)の動作を制御」し、「PWM制御部(14)」は、「インバータ回路(13)の出力を制御」することから、上記(イ)及び(ウ)の認定を踏まえると、「昇圧チョッパ制御部(16)」及び「PWM制御部(14)」を合わせたものは、構成要件1Dの「前記整流回路および前記インバータを制御する制御部」であるといえる。
したがって、甲1発明は、構成要件1Dに相当する構成を有する。
(オ)構成要件1Eについて
甲1発明における「モータ(20)」は、甲1発明の「電力変換装置」側からみれば、“外部機器”であるといい得る。
そして、甲1発明の「PWM制御部(14)」は、「インバータ回路(13)の出力を制御して、モータ(20)の駆動を制御するものであって、ベクトル制御を行う際に、モータ(20)のトルクが電源電圧に同期して脈動するように、それぞれのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を駆動するゲート信号(G1,G2,…,G6)を生成」するものであるところ、上記(イ)及び(エ)の認定を踏まえると、“制御部”が“前記第1の交流電圧が発生する電力を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御”するといえるものの、“制御部”が整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御しているとはいえず、したがって、甲1発明と構成要件1Eとは、“前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御している”点(相違点1)で相違する。
(カ)構成要件1Fについて
甲1発明の「コンバータ回路(11)」の構成の一部である「昇圧チョッパ(15)」は、「昇圧チョッパ制御部(16)」によって動作の制御がなされる昇圧回路であるものの、上記(イ)及び(ウ)の認定を踏まえると、“前記整流回路と前記インバータとの間”に設けられている昇圧回路とはいえない。
したがって、甲1発明は、「前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられて」いる構成(構成要件1F)に相当する構成を有するとはいえない。(相違点2)
(キ)構成要件1Gについて
甲1発明の「コンデンサ(12a)」及び「直流リンク部(12)」は、それぞれ構成要件1Gの「DCリンクキャパシタ」及び「DCリンク」に相当するといえ、上記(イ)及び(ウ)の認定を踏まえると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられて」いるとの構成、すなわち構成要件1Gに相当する構成を有する。
(ク)構成要件1Hについて
上記(オ)に示したとおり、甲1発明は、“制御部”が“前記第1の交流電圧が発生する電力を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御”するといえるものの、甲1発明の「直流リンク部(12)」は、「コンデンサ(12a)を備え」るとともに、「該コンデンサ(12a)の両端に生じた端子電圧であるコンデンサ電圧(vdc)」は、「電源電圧(vs)の2倍の周波数で脈動」することから、構成要件1Hの「前記制御部は、前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力する」との構成を有するとはいえない。(相違点1)
(ケ)一致点及び相違点
以上、(ア)~(ク)の対比から、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
第1の交流電圧を第2の交流電圧に変換するAC-AC電力変換装置であって、
前記第1の交流電圧を整流して整流電圧を生成する整流回路と、
前記整流電圧から前記第2の交流電圧を生成するインバータと、
前記整流回路および前記インバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し、
前記整流回路と前記インバータとの間に、DCリンクキャパシタを備えるDCリンクが設けられていることを特徴とするAC-AC電力変換装置。
〈相違点1〉
本件特許発明1の「制御部」が、「前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御」するとともに、「前記DCリンクの電圧が時間的に一定な値になるように前記脈動を前記外部機器に出力」しているのに対し、甲1発明の「PWM制御部(14)」は、「モータ(20)のトルクが電源電圧に同期して脈動するように、それぞれのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を駆動するゲート信号(G1,G2,…,G6)を生成」するものの、整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように「PWM制御部(14)」及び「昇圧チョッパ制御部(16)」を制御するものではなく、また、「直流リンク部(12)」の電圧が時間的に一定な値となるように制御するものでもない点。
〈相違点2〉
本件特許発明1が、「前記整流回路と前記インバータとの間に、昇圧回路が設けられている」ものであるのに対し、甲1発明はそのような構成を有するものとはいえない点。
ウ 判断
事案に鑑み、先に相違点1につき検討する。
甲1には、構成要件1Hに相当する構成は開示されておらず、当該事項は、本件特許出願時の周知技術ともいえない。
また、取消理由通知において引用した引用例2及び3、すなわち甲2及び甲3にも、構成要件1Hに相当する構成は開示されていない。
よって、本件特許発明1は、上記甲1発明並びに甲2及び甲3(引用例2及び3)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ むすび
したがって、本件特許発明1は、相違点2について判断するまでもなく、引用例1~3(甲第1号証~甲第3号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した理由及び証拠によって取り消すべきものとはいえない。
(2)本件特許発明2について
上記訂正請求により訂正された本件特許発明2は、上記第5の2に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した引用例1(甲1)の記載事項及び甲1発明は、上記第3の1(1)及び(2)に示したとおりである。
イ 対比・判断
本件特許発明2と甲1発明(第3の1(2)参照。)とを対比すると、本件特許発明2は、甲1発明に対して、少なくとも上記(1)イ(ケ)に示した相違点1の点で相違し、当該事項は、本件特許出願時の周知技術ともいえない。
また、取消理由通知において引用した引用例2及び3、すなわち甲2及び甲3にも、相違点1に相当する構成は開示されていない。
よって、本件特許発明2は、上記甲1発明並びに甲2及び甲3(引用例2及び3)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ むすび
したがって、本件特許発明2は、相違点2について判断するまでもなく、引用例1~3(甲第1号証~甲第3号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した理由及び証拠によって取り消すべきものとはいえない。
(3)本件特許発明4~5について
上記訂正請求により訂正された本件特許発明4~5は、上記第5の4及び5に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した引用例1(甲1)の記載事項及び甲1発明は、上記第3の1(1)及び(2)に示したとおりである。
イ 対比・判断
本件特許発明4~5は、本件特許発明1又は本件特許発明2を直接又は間接的に引用するものであり、少なくとも上記相違点1の点で、甲1発明とは異なるものである。
そして、上記(1)ウに示したとおり、相違点1に係る構成は、甲1~甲3のいずれにも開示されておらず、本件特許出願時の周知技術ともいえない。
したがって、本件特許発明4~5は、上記甲1発明並びに甲2及び甲3(引用例2及び3)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ むすび
本件特許発明4~5は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した理由及び証拠によって取り消すべきものとはいえない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が主張する、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断を以下に示す。
(1)理由1について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲第1号証に記載された事項及び甲1発明
甲第1号証に記載された事項、及び甲1発明は、上記第3の1に記載したとおりのものである。
(イ)対比・判断
甲1発明と、本件特許発明1とを対比する。
甲1発明は、上記1(1)イ(ケ)に示した相違点1及び2の点で本件特許発明1とは相違する。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明と同一とはいえない。
イ 本件特許発明2について
甲1発明と、本件特許発明2とを対比する。
甲1発明は、本件特許発明1と同じく、少なくとも、上記1(1)イ(ケ)に示した相違点1の点で本件特許発明2とは相違する。
ウ 小括
したがって、本件特許発明1及び2は、甲1発明と同一とはいえず、申立人が主張する理由1は理由が無い。
(2)理由2-1~理由2-8について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲1~甲10に記載された事項並びに甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項
甲1~甲10に記載された事項並びに甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項は、上記第3の1~10に記載したとおりのものである。
(イ)対比・判断
甲1~甲10に記載された発明と、本件特許発明1とを対比すると、少なくとも上記1(1)イ(ケ)に示した相違点1の点で本件特許発明1とは相違する。
そして、相違点1に係る構成は、甲1~甲10には記載も示唆もされておらず、当該構成は本件特許出願時の周知技術ともいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1~甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証~甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1と同じく、甲1~甲10に記載された発明に対して、少なくとも上記1(1)イ(ケ)に示した相違点1の点で相違する。
そして、相違点1に係る構成は、甲1~甲10には記載も示唆もされておらず、当該構成は本件特許出願時の周知技術ともいえない。
よって、本件特許発明2は、甲1~甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
ウ 本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5は本件特許発明1又は本件特許発明2を構成として含むものであるから、上記ア及びイに示した理由と同じく、甲1~甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 小括
したがって、本件特許発明1~2及び4~5は、甲第1号証~甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、申立人が主張する理由2-1~理由2-8は理由が無い。
(3)理由3について
特許発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点にしたがって、本件特許発明1~2及び4~5が特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるか否かについて検討する。
願書に添付した明細書には、「外部機器」に関し、段落【0014】に、「AC-AC電力変換装置100は、PFC整流回路10と、DCリンク20と、インバータ30と、制御部40と、を備える。AC-AC電力変換装置100によって生成された三相電力は、モータ400などの外部機器に対して出力される。」と記載され、他の箇所にはモータ400以外の外部機器は記載されていない。
してみれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された、「前記制御部は、前記第1の交流電圧が発生する電力および前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し」との記載、及び請求項2に記載された、「前記制御部は、前記整流電圧が発生する電力の持つ脈動を外部機器に出力するように前記整流回路および前記インバータを制御し」との記載(以下、これらの記載をまとめて「引用記載1」という。)のうちの、「外部機器」は、「モータ400」のことを意味するものと明確に把握することができる。
そして、願書に添付された明細書及び図面には、その他の「外部機器」に相当するような構成は記載されていないのであるから、上記引用記載1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
したがって、申立人が主張する理由3は理由がない。
(4)申立人意見書について
申立人は、申立人意見書において、訂正後の本件特許発明1、2の「電圧が時間的に一定な値」との記載(以下、「引用記載2」という。)が不明確である旨主張している。
しかしながら、願書に添付された明細書及び図面を参照すると、明細書の段落【0041】~【0042】の記載、及び図面の図6(a)~(c)等を参照すると、図6(a)は、AC-AC電力変換装置200の入力電圧、入力電流および入力電力の時間変化を表していて、図6(b)からは、上記引用記載2が、少なくとも図6(a)に示される期間において一定であることが明確に示されている以上、上記引用記載2が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
したがって、申立人意見書の主張は採用の限りではない。
3 むすび
以上に示したとおり、本件請求項1~2及び4~5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1~2及び4~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
第8 むすび
以上のとおり、請求項1~2及び4~5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1~2及び4~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700364