特許異議申立
2023-700913
直流電力供給システム
- 審判番号
- 2023-700913
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-071053
- 登録番号
- 7233825
- 請求日
- 2023年09月05日
- 審決日
- 2024年04月25日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】西芝電機株式会社
- 【権利者代理人】鹿股 俊雄
- 【権利者代理人】石川 太郎
- 【異議申立人】藤本 信男
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 吉田 美彦
- 分類
- P1651.113-YAA(H02M) / P1651.121-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7233825号発明「直流電力供給システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7233825号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-7〕について訂正することを認める。
特許第7233825号の請求項1、3ないし5に係る特許を維持する。
特許第7233825号の請求項2、6、7に係る特許に対する異議申し立てを却下する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7233825号の請求項1ないし7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年4月22日に出願されたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和5年 2月16日付け:特許査定
令和5年 2月27日 :特許権の設定登録
令和5年 3月 7日 :特許掲載公報の発行
令和5年 9月 5日 :特許異議の申立て
(特許異議申立人 藤本 信男)
令和5年11月21日付け:取消理由通知
令和6年 1月18日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
令和6年 2月27日付け:訂正請求があった旨の通知
令和6年 3月22日 :意見書の提出(特許異議申立人)
第2.訂正請求について
1.訂正の趣旨及び訂正の内容
令和6年1月18日提出の訂正請求書における訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7233825号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」(訂正請求書第1頁)というものであって、その内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許第7233825号の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し、
前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との発明特定事項を付加する。
(2)訂正事項2
特許第7233825号の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許第7233825号の特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(4)訂正事項4
特許第7233825号の特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
特許第7233825号明細書における段落0010の記載を、
「【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態における直流電力供給システムは、負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する制御回路とを具備し、前記第1変換装置は、前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し、前記第2変換装置は、前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧し、前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し、前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力することを特徴とする。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許第7233825号明細書における段落0011を削除する。
2.訂正の適否
以下、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面をそれぞれ、「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」及び「本件図面」といい、これらを総称して「明細書等」という。
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2ないし5は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1ないし5に対応する本件訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
本件訂正前の請求項7は、請求項6を引用しているものであって、訂正事項3によって訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項6及び7に対応する本件訂正後の請求項6及び7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア.訂正の目的
訂正事項1のうち、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し」との発明特定事項を付加する訂正は、「制御回路」について、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し」との発明特定事項を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との発明特定事項を付加する訂正は、「制御回路」について、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との発明特定事項を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1により付加された「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し、
前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との構成は、本件明細書の段落0025、0035、0051、0065ないし0066、0088、本件図面の図2、4、5に記載されており、また、上記ア.で検討した訂正の目的に鑑みれば、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。
よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項1は、上記ア.で検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項2について
ア.訂正の目的
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項3について
ア.訂正の目的
訂正事項3は、請求項6を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項6を削除するというものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項3は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項4について
ア.訂正の目的
訂正事項4は、請求項7を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、請求項7を削除するというものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項4は、請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(6)訂正事項5について
ア.訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正後の請求項1の記載に整合させるために、明瞭でない記載の釈明を目的として、本件訂正前の段落0010を添付の訂正明細書に記載のとおり訂正するものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、上記(2)イ.で説示したとおり、明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項5は、上記ア.及びイ.に照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項6について
ア.訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正後の請求項6の削除に整合させるために、明瞭でない記載の釈明を目的として、本件訂正前の段落0011を添付の訂正明細書に記載のとおり削除するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項6の削除に整合させるために、本件訂正前の段落0011を削除するというものであって、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項5は、上記ア.及びイ.に照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
3.小括
以上のとおりであるから、上記訂正事項1ないし6は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件明細書及び本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。
第3.本件特許発明
本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、
第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、
第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、
前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、
前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、
前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、
前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、
前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する制御回路と
を具備し、
前記第1変換装置は、前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し、
前記第2変換装置は、前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧し、
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し、
前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する
直流電力供給システム。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記第1電源は、充電可能な第1バッテリであり、
前記第2電源は、充電可能な第2バッテリであり、
前記第1出力部は、前記第1バッテリの第1バッテリ残量に応じて変化する第1バッテリ電圧を検出する第1電圧検出器を含み、
前記第2出力部は、前記第2バッテリの第2バッテリ残量に応じて変化する第2バッテリ電圧を検出する第2電圧検出器を含み、
前記制御回路は、前記第1バッテリ電圧および前記第1バッテリの放電特性に基づいて、前記第1バッテリ残量を算出し、前記第2バッテリ電圧および前記第2バッテリの放電特性に基づいて、前記第2バッテリ残量を算出し、
前記制御回路は、前記第1バッテリ残量が前記第2バッテリ残量よりも少ないとき、前記第1バッテリの電力負担割合が低減され、前記第2バッテリの電力負担割合が増加されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項4】
前記第1電源は、充電可能な第1バッテリであり、
前記第2電源は、充電可能な第2バッテリであり、
前記第1出力部は、前記第1バッテリの第1推定充電量を算出する第1の推定充電量算出部を含み、
前記第2出力部は、前記第2バッテリの第2推定充電量を算出する第2の推定充電量算出部を含み、
前記制御回路は、前記第1推定充電量が、前記第2推定充電量よりも少ないとき、前記第1バッテリの電力負担割合が低減され、前記第2バッテリの電力負担割合が増加されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が多い方の電力受電割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)」
第4.特許異議申立理由の概要、取消理由通知の概要、及び、証拠方法
1.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人による特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。(特許異議申立書第9頁ないし第11頁など)
(1)申立理由1
本件特許の請求項1、2、4、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、請求項1、2、4、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(2)申立理由2
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術から容易に想到し得るものであって、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(3)申立理由3
本件特許の請求項1、2、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、請求項1、2、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(4)申立理由4
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術から容易に想到し得るものであって、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(5)申立理由5
本件特許の請求項1、6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないため、請求項1、6に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。
(6)申立理由6
本件特許の請求項2~5、7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、請求項2~5、7に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。
2.取消理由通知の概要
本件訂正前の請求項1ないし7について、令和5年11月21日付けで当審が通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由1
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)取消理由2
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
「本件明細書の段落0009によると、本件発明1の解決しようとする課題は、「本発明の目的は、変換装置の動作停止を抑制し、変換装置の冗長性を維持することにより、安定した直流電力供給システムを提供することである。」といえる。
一方、本件発明1では、「制御回路」における処理において、第1出力電圧指令値と第2出力電圧指令値との間の関係が何ら特定されていないところ、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が増大されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する」ものも包含されていると解される。
しかしながら、本件発明1において上記「エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が増大される」場合には、上記課題の「変換装置の動作停止を抑制」することが解決されるとはいえない。
したがって、本件発明1は、上記課題を解決できるのか不明であって、本件出願時における技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものではないから、発明の詳細な説明に記載したものでない。
そして、同様の理由により、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」(取消理由通知書第31頁から第32頁)
3.証拠方法
甲第1号証:特開2020-191698号公報
甲第2号証:特表2016-528868号公報
甲第3号証:国際公開第2019/103059号
甲第4号証:特開2019-205225号公報
甲第5号証:特開2013-68431号公報
甲第6号証:特開2022-62948号公報
甲第7号証:特開2017-175888号公報
第5.甲号証の記載事項
1.甲第1号証
以下、甲第1号証ないし甲第7号証を「甲1」ないし「甲7」という。
(1)甲第1号証の記載事項
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線部は当審で付与した。以下、同様である。)
「【0001】
本開示は、直流バスに機器が接続される電力システムに関する。
・・(中略)・・
【0010】
(実施例1)
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の基礎となった知見を説明する。実施例は、需要家において、発電装置、蓄電池、電力系統等のそれぞれに電力変換装置を接続し、複数の電力変換装置を直流バスに接続する電力システムに関する。この電力システムには、複数の蓄電池が電力系統に並列に接続される。需要家は、電力会社等からの電力の供給を受けている施設であり、例えば、住宅、事務所、店舗、工場、公園などである。需要家において電力系統から延びる配電線は電力変換装置に接続される。また、電力変換装置からは直流バスが延びるとともに、直流バスが分岐点において複数の直流バスに分岐され、分岐された各直流バスに蓄電池が接続される。複数の蓄電池のそれぞれには電力変換装置が接続されており、電力変換装置を介して複数の蓄電池は充放電を実行する。
・・(中略)・・
【0012】
図1は、電力システム100の構成を示す。電力システム100は、電力系統10に接続されるとともに、配電線12、直流バス14、分岐点16、第1直流バス18、第2直流バス20、第1蓄電池30、第1電力変換装置32、第2蓄電池40、第2電力変換装置42、第3電力変換装置50、負荷60、計測装置62と総称される第1計測装置62a、第2計測装置62b、第3計測装置62cを含む。電力システム100は、需要家内に設置される。第1蓄電池30と第1電力変換装置32は、別の装置であってもよいが、第1蓄電装置34として一体化されてもよい。第2蓄電池40と第2電力変換装置42は、別の装置であってもよいが、第2蓄電装置44として一体化されてもよい。
【0013】
電力系統10は、電力会社の商用電源であり、例えば単相3線式200V/100Vの商用電力である。電力系統10から需要家内に向かって配電線12が延びる。配電線12には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。配電線12には、第3電力変換装置50が接続され、第3電力変換装置50からは直流バス14が延び、直流バス14は、分岐点16において第1直流バス18と第2直流バス20とに分岐される。第1直流バス18には第1蓄電池30と第1電力変換装置32が接続され、第2直流バス20には第2蓄電池40と第2電力変換装置42とが接続される。直流バス14、第1直流バス18、第2直流バス20は、直流バスと総称されてもよい。
【0014】
第1蓄電池30は、電力を充放電可能であり、直列または直並列接続された複数の蓄電池セルにより構成される。蓄電池セルには、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が使用される。第1蓄電池30として、電気二重層コンデンサが使用されてもよい。第2蓄電池40は、第1蓄電池30と同様に構成されるが、第1蓄電池30とは異なった容量を有してもよい。
【0015】
第1電力変換装置32は、第1直流バス18において第1蓄電池30と分岐点16との間に配置される。第1電力変換装置32は、第1蓄電池30の充放電を制御する。第2電力変換装置42は、第2直流バス20において第2蓄電池40と分岐点16との間に配置される。第2電力変換装置42は、第2蓄電池40の充放電を制御する。第1電力変換装置32と第2電力変換装置42の構成は後述する。ここで、第1電力変換装置32と第2電力変換装置42とは、並列に直流バスに接続される。そのため、第1蓄電池30と第2蓄電池40は、第1電力変換装置32、第1直流バス18、分岐点16、第2直流バス20、第2電力変換装置42を介して、互いに並列に接続される。
・・(中略)・・
【0017】
第3電力変換装置50は、配電線12からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力を直流バス14に出力する。また、第3電力変換装置50は、直流バス14からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を配電線12に出力する。このように第3電力変換装置50は、交流電力と直流電力との間の変換を実行する。
【0018】
負荷60は、配電線12において電力系統10と第3電力変換装置50との間に配置される。負荷60は、配電線12を介して供給される電力を消費する機器である。配電線12を介して供給される電力には、電力系統10から供給される電力、第3電力変換装置50を介して第1蓄電池30から供給される電力、第3電力変換装置50を介して第2蓄電池40から供給される電力が含まれる。負荷60は、空調機器(エアコン)、テレビジョン受信装置(テレビ)、照明装置の機器を含む。ここでは、1つの負荷60が配電線12に接続されているが、複数の負荷60が配電線12に接続されてもよい。
・・(中略)・・
【0020】
図2は、電力変換装置200の構成を示す。電力変換装置200は、変換部210、第1制御部220、第2制御部230、入力部240を含む。第1制御部220は、安定化用指令値導出部250、制御用指令値導出部260、制御値導出部270、指示部280を含み、安定化用指令値導出部250は、上側導出部252、下側導出部254を含む。第2制御部230は、計測部232、目標値制御部234、記憶部236を含む。ここで、第2制御部230は、電力システム100に同種の制御対象が2つ以上含まれている場合に、当該制御対象を制御する電力変換装置200に含まれる。そのため、図1の場合、第1電力変換装置32と第2電力変換装置42には第2制御部230が含まれる。
・・(中略)・・
【0025】
(2)電力変換装置200が第1電力変換装置32あるいは第2電力変換装置42である場合
第1電力変換装置32における変換部210は、図1の第1蓄電池30と分岐点16との間に配置される。変換部210は、DC-DCコンバータである。変換部210は、第1蓄電池30の放電の際に、第1蓄電池30からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を第1直流バス18に出力する。また、変換部210は、第1蓄電池30の充電の際に、第1直流バス18からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を第1蓄電池30に出力する。つまり、変換部210によって第1蓄電池30は充放電される。このような変換部210の制御は第1制御部220によってなされる。以下では、放電を中心に説明することもある。
・・(中略)・・
【0027】
記憶部236は、第1出力電力と、入力部240からの電圧値と比較すべき目標値(以下、「第1目標値」という)との関係を第1制御ルールとして記憶する。図3は、記憶部236に記憶される制御ルールを示す。横軸が出力電力割合[%」を示し、縦軸が目標値[V]、具体的には第1目標値を示す。出力電力割合は、変換部210の定格出力電力に対する第1出力電力の割合を示す。第1出力電力が大きくなると、出力電力割合も大きくなるので、出力電力割合のことを第1出力電力ということもある。一例として、第1制御ルール300において、第1目標値は、出力電力割合が0%のときにA[V]になり、出力電力割合が50%のときにB[V]になり、出力電力割合が100%のときにC[V]となるように規定される。ここで、A>B>Cである。ここで、目標値が高くなる方に第1制御ルール300をシフトさせたルールが第1上側しきい値ルール310であり、目標値が低くなる方に第1制御ルール300をシフトさせたルールが第1下側しきい値ルール320である。第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320は、第1制御ルール300と同一の傾きを有するので、第1制御ルール300を挟むように定義されている。図2に戻る。
【0028】
目標値制御部234は、計測部232からの第1出力電力の値を受けつける。目標値制御部234は、記憶部236に記憶した第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320を参照して、第1出力電力の値に対応した第1上側しきい値と第1下側しきい値を取得する。そのため、第1出力電力の変化に応じて、第1上側しきい値と第1下側しきい値が変化する。図3の第1制御ルール300の場合、第1出力電力が増加すると第1目標値が下がる。目標値制御部234は、第1上側しきい値を上側導出部252に出力し、第1下側しきい値を下側導出部254に出力する。
【0029】
安定化用指令値導出部250は、入力部240からの電圧値、つまり直流バス14の電圧値を受けつける。安定化用指令値導出部250は、第1上側しきい値と第1下側しきい値とで挟まれた範囲(以下、「第1蓄電池用範囲」という)から電圧値が出た場合に、電圧値を第1蓄電池用範囲内に入れるための蓄電池安定化用指令値を生成する。具体的に説明すると、上側導出部252は、電圧値が第1上側しきい値以上である場合に、電圧値を下げるための第1上側安定化用指令値を生成する。上側導出部252は、第1上側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。下側導出部254は、電圧値が第1下側しきい値以下である場合に、電圧値を上げるための第1下側安定化用指令値を生成する。下側導出部254は、第1下側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。第1上側安定化用指令値と第1下側安定化用指令値は、直流バス14の電圧を第1目標値に近づけるための第1安定化用指令値であるといえる。
・・(中略)・・
【0031】
制御値導出部270は、上側導出部252からの第1上側安定化用指令値、下側導出部254からの第1下側安定化用指令値、制御用指令値導出部260からの蓄電池制御用指令値を受けつける。これらの指令値のうちの少なくとも1つが生成されない場合、制御値導出部270は当該指令値を受けつけない。制御値導出部270は、第1上側安定化用指令値、第1下側安定化用指令値、蓄電池制御用指令値をもとに、蓄電池制御値を生成する。例えば、制御値導出部270は、第1上側安定化用指令値と、第1下側安定化用指令値と、蓄電池制御用指令値との和を演算することによって、蓄電池制御値を生成する。制御値導出部270は、蓄電池制御値を指示部280に出力する。指示部280は、蓄電池制御値を制御値導出部270から受けつける。指示部280は、蓄電池制御値を変換部210に出力することによって、変換部210を制御する。これは、第1蓄電池30の電力制御を実行することに相当する。
【0032】
第2電力変換装置42における入力部240は、第2計測装置62bにおいて計測された電圧値を受けつける。入力部240は、電圧値を第1制御部220に出力する。計測部232は、変換部210からの第2直流バス20に出力される第2出力電力の値を計測する。計測部232は、計測した第2出力電力の値を目標値制御部234に出力する。
【0033】
記憶部236は、第2出力電力と、入力部240からの電圧値と比較すべき目標値(以下、「第2目標値」という)との関係を第2制御ルールとして記憶する。例えば、第1電力変換装置32における第1制御ルール300と、第2電力変換装置42における第2制御ルールとは同一である。
【0033】
記憶部236は、第2出力電力と、入力部240からの電圧値と比較すべき目標値(以下、「第2目標値」という)との関係を第2制御ルールとして記憶する。例えば、第1電力変換装置32における第1制御ルール300と、第2電力変換装置42における第2制御ルールとは同一である。ここでも、出力電力割合のことを第2出力電力ということがある。また、第1上側しきい値ルール310と同一の第2上側しきい値ルールと、第1下側しきい値ルール320と同一の第2下側しきい値ルールも記憶される。目標値制御部234は、計測部232からの第2出力電力の値を受けつける。目標値制御部234は、記憶部236に記憶した第2上側しきい値ルールと第2下側しきい値ルールを参照して、第1出力電力の値に対応した第2上側しきい値と第2下側しきい値を取得する。そのため、第2出力電力の変化に応じて、第2上側しきい値と第2下側しきい値が変化する。図3の第2制御ルールの場合、第2出力電力が増加すると第2目標値が下がる。目標値制御部234は、第2上側しきい値を上側導出部252に出力し、第2下側しきい値を下側導出部254に出力する。
・・(中略)・・
【0036】
第2電力変換装置42の計測部232において計測された出力電力割合が「0%」であるので、第2電力変換装置42の目標値制御部234は、出力電力割合「0%」に対応した第2目標値A[V]を使用する。第2電力変換装置42の入力部240において受けつけた電圧値が第2目標値A[V]よりも小さければ、第2電力変換装置42の第1制御部220は、安定化用指令値導出部250による安定化用指令値の生成を行わない。一方、制御用指令値導出部260は、制御対象本来の機能を発揮させるための制御に応じた制御用指令値を生成する。したがって、制御値導出部270は、制御用指令値導出部260が生成した制御用指令値に基づき、変換部210に出力する制御値を決定する。この制御値に応じて、第1制御部220は、第2電力変換装置42の変換部210から出力される第2出力電力を変化させる。この場合、第2出力電力を大きくさせる。第2電力変換装置42の変換部210から出力される第2出力電力が大きくなることによって、直流バスの電圧が上昇する。その結果、第2電力変換装置42の計測部232において計測される出力電力割合も大きくなり、第2電力変換装置42の目標値制御部234は、増加した出力電力割合に対応するように第2目標値を小さくする。
【0037】
一方、第1電力変換装置32の出力電力割合が「100%」であるので、第1電力変換装置32の目標値制御部234は、出力電力割合「100%」に対応した第1目標値C[V]を使用している。しかしながら、直流バスの電圧が上昇することによって、第1電力変換装置32の入力部240において受けつけた電圧値は、それまでよりも増加して第1目標値よりも大きくなる。第1電力変換装置32の第1制御部220は、第1電力変換装置32の変換部210から出力される第1出力電力を小さくさせる。その結果、第1電力変換装置32の計測部232において計測される出力電力割合も小さくなり、第1電力変換装置32の目標値制御部234は、減少した出力電力割合に対応するように第1目標値を大きくする。
【0038】
第2電力変換装置42の入力部240において受けつけた電圧値が第2目標値A[V]よりも小さいかぎり、第2電力変換装置42の第1制御部220は、安定化用指令値導出部250による安定化用指令値の生成を行わない。したがって、第1制御部220は、制御用指令値導出部260が生成した制御用指令値に基づき、第2電力変換装置42の変換部210から出力される第2出力電力を大きくさせる。このような処理を繰り返して、第1目標値と第2目標値が一致して、第1出力電力と第2出力電力が一致したときに、処理は収束する。図3に示した制御ルールを使用することによって、第1電力変換装置32と第2電力変換装置42では、ドループ制御がなされる。
・・(中略)・・
【0040】
本実施例によれば、第1電力変換装置32からの第1出力電力の変化に応じて第1目標値が変化し、第2電力変換装置42からの第2出力電力の変化に応じて第2目標値が変化するので、第1蓄電池30と第2蓄電池40とを協調して動作させることができる。また、第1蓄電池30と第2蓄電池40とを協調して動作されるので、第1蓄電池30と第2蓄電池40の使用頻度を近くしながら、制御を安定化できる。また、直流バスの電圧値を計測するので、第1出力電力と第2出力電力とを制御するために電圧値を使用できる。また、第1制御ルール300と第2制御ルールとは同一であるので、第1出力電力による出力電力割合と、第2出力電力による出力電力割合とを均等にできる。また、第1出力電力が増加すると第1目標値が下がり、第2出力電力が増加すると第2目標値が下がるので、第1電力変換装置32の制御と第2電力変換装置42の制御との間の干渉の発生を抑制できる。
・・(中略)・・
【0065】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、これまでと同様に、需要家において複数の蓄電池が電力系統に並列に接続された電力システムに関する。これまで、電圧値をもとにした出力電力の制御、出力電力をもとにした目標値の制御がなされている。実施例3では、これらに加え、第1蓄電池30および第2蓄電池40の残量を考慮した制御が実行される。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0066】
図6は、電力システム100の構成を示す。電力システム100は、図1の構成に加えて、制御装置70を含む。第1電力変換装置32は、第1蓄電池30の残量に関する情報(以下、「第1残量」という)を取得する。残量に関する情報の一例は、SOC(State Of Charge)である。第1電力変換装置32は、第1残量を制御装置70に出力する。第2電力変換装置42は、第2蓄電池40の残量に関する情報(以下、「第2残量」という)を取得する。第2電力変換装置42は、第2残量を制御装置70に出力する。
【0067】
制御装置70は、第1残量と第2残量とを受けつける。制御装置70は、第1残量と第2残量とを比較する。制御装置70は、第1残量と第2残量との差異がしきい値よりも小さい場合、図3に示した制御ルールの使用を決定する。これは、第1電力変換装置32における第1制御ルール300と、第2電力変換装置42における第2制御ルールとが同一であることに相当する。一方、制御装置70は、第1残量と第2残量との差異がしきい値以上である場合、第1残量が第2残量以上であるか否かを判定する。第1残量が第2残量以上でない場合、つまり第2残量が第1残量よりも大きい場合、制御装置70は、第1蓄電池30から出力される電力よりも第2蓄電池40から出力される電力の方が大きくなるように、第1制御ルール300と第2制御ルールを調節する。これは、残量の多い方の蓄電池から出力される電力が大きくなるように制御ルールを調節することに相当する。この調節を説明するために、ここでは図7(a)-(b)を使用する。
【0068】
図7(a)-(b)は、制御装置70において調節された制御ルールを示す。図7(a)は、第2残量が第1残量よりも大きい場合の第1制御ルール300と第2制御ルール302とを示す。第1制御ルール300と第2制御ルール302とは出力電力割合「0%」のときに一致するが、第2制御ルール302の傾斜は第1制御ルール300の傾斜よりも緩くされている。そのため、出力電力割合が同一である場合に、第2目標値は第1目標値よりも大きくなるので、第2出力電力は第1出力電力よりも大きくなりやすくなる。これまでと同様に、第1制御ルール300に対して第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とが規定され、第2制御ルール302に対して第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とが規定される。ここでは、第1制御ルール300と第2制御ルール302との傾斜を異なるようにしているが、両者の傾斜は同じで、第2制御ルール302は第1制御ルール300に対して上方にシフトされてもよい。図6に戻る。
【0069】
第1残量が第2残量以上である場合、制御装置70は、第2蓄電池40から出力される電力よりも第1蓄電池30から出力される電力の方が大きくなるように、第1制御ルール300と第2制御ルール302を調節する。図7(b)は、第1残量が第2残量以上である場合の第1制御ルール300と第2制御ルール302とを示す。第1制御ルール300と第2制御ルール302との傾斜は同じであるが、第2制御ルール302は第1制御ルール300に対して下方にシフトされる。そのため、出力電力割合が同一である場合に、第1目標値は第2目標値よりも大きくなるので、第1出力電力は第2出力電力よりも大きくなりやすくなる。これまでと同様に、第1制御ルール300に対して第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とが規定され、第2制御ルール302に対して第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とが規定される。ここでは、第1制御ルール300と第2制御ルール302との傾斜を同一にしているが、第2制御ルール302の傾斜は第1制御ルール300の傾斜よりも急にされてもよい。図6に戻る。
【0070】
以上の説明において、制御装置70は、傾斜あるいはシフトを調節することにより、第2制御ルール302を調節している。しかしながら、制御装置70は、傾斜あるいはシフトを調節することにより、第1制御ルール300を調節してもよい。さらに、制御装置70は、第1制御ルール300と第2制御ルール302をともに調節してもよい。つまり、制御装置70は、第1蓄電池30の状態および第2蓄電池40の状態を取得し、第1蓄電池30の状態および第2蓄電池40の状態をもとに、第1制御ルール300と第2制御ルール302を調節する。第1制御ルール300を調節することは、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とを調節することに相当する。また、第2制御ルール302を調節することは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節することに相当する。
【0071】
制御装置70は、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320を第1電力変換装置32に出力し、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322を第2電力変換装置42に出力する。第1電力変換装置32は、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320を使用してこれまでと同様の処理を実行し、第2電力変換装置42は、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322を使用してこれまでと同様の処理を実行する。ここで、第1電力変換装置32における第1制御ルール300と、第2電力変換装置42における第2制御ルール302とは異なる。
【0072】
本実施例によれば、第1蓄電池30の残量および第2蓄電池40の残量をもとに、第1制御ルール300と第2制御ルール302を調節するので、第1蓄電池30の残量および第2蓄電池40の残量に適した第1制御ルール300と第2制御ルール302を使用できる。また、第1電力変換装置32における第1制御ルール300は、第2電力変換装置42における第2制御ルール302と異なるので、第1蓄電池30および第2蓄電池40の残量を考慮した制御を実行できる。
【0073】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。第1電力変換装置32における第1出力電力と第1目標値との関係は、第2電力変換装置42における第2出力電力と第2目標値との関係と異なる。」
「【図2】
[図:0001413328000001.jpg]
【図6】
[図:0001413328000002.jpg]
【図7】
[図:0001413328000003.jpg]
」
(2)甲1発明
ア.上記段落0012、0013、0018の記載、及び、図6によると、甲1には、負荷60および電力系統10が接続される直流バス14が記載されているといえる。
イ.上記段落0014によると、甲1には、電力を充放電可能な第1蓄電池30、及び、第2蓄電池40が記載されているといえる。
ウ.上記段落0015、0025によると、甲1において、第1電力変換装置32は、第1蓄電池30の放電の際に、第1蓄電池30からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を第1直流バス18に出力すること、及び、第2電力変換装置42は、第2蓄電池40の放電の際に、第2蓄電池40からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を第2直流バス20に出力することが記載されているといえる。
そして、上記図6によると、第1直流バス18と第2直流バス20とは、直流バス14に接続され、第1電力変換装置32及び第2電力変換装置42は、それぞれ第1蓄電池30及び第2蓄電池40と直流バスとの間に配置されることが見て取れる。
したがって、甲1には、第1蓄電池30と直流バス14との間に配置され、第1蓄電池30の直流電力を所望の直流電力に変換する「第1電力変換装置32」と第2蓄電池40と直流バス14との間に配置され、第2蓄電池40の直流電力を所望の直流電力に変換する「第2電力変換装置42」とが記載されているといえる。
エ.上記段落0027、0028、0033、0068-0070によると、甲1において、上記制御装置70は、第1蓄電池30の残量である第1残量及び第2蓄電池40の残量である第2残量を取得し、当該第1残量及び第2残量に基づいて、第1電力変換装置32に記憶された、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2電力変換装置42に記憶された、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節することが記載されているといえる。
オ.上記段落0025、0027-0029、0031の記載、及び、図2によると、上記第1電力変換装置32は、第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第1出力電力の値と第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とに基づいて蓄電池制御値を生成し、当該蓄電池制御値を変換部210に出力することによって、変換部210から出力する電圧を制御するものであるといえる。
カ.上記段落0065-0071の記載、及び、図7によると、上記第1電力変換装置32の第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とは、上記制御装置70によって調節されて、上記第1出力変換装置32に出力されるものといえるところ、上記オをふまえると、上記第1電力変換装置32は、変換部210を備え、当該変換部210から出力される第1出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、当該変換部210から出力する電圧を制御するものであるといえる。
そして、同様の理由で、上記第2電力変換装置42は、変換部210を備え、当該変換部210から出力される第2出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、当該変換部210から出力する電圧を制御するものであるといえる。
キ.上記段落0012、0065、0066の記載、及び図6によると、甲1には、上記アないしオで説示した直流バス14、第1蓄電池30、第2蓄電池40、第1電力変換装置32、第2電力変換装置42、及び、制御装置70を含む電力システム100が記載されているといえる。
ク.上記段落0067-0069の記載によると、上記制御装置70は、第2残量が第1残量よりも大きい場合、第1蓄電池30から出力される電力よりも第2蓄電池40から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節し、また、第1残量が第2残量以上である場合、第2蓄電池40から出力される電力よりも第1蓄電池30から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節するものといえる。
ケ.以上のとおりであるから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「負荷60および電力系統10が接続される直流バス14と、
電力を充放電可能な第1蓄電池30及び第2蓄電池40と、
第1蓄電池30と直流バス14との間に配置され、第1蓄電池30の直流電力を所望の直流電力に変換する第1電力変換装置32と、
第2蓄電池40と直流バス14との間に配置され、第2蓄電池40の直流電力を所望の直流電力に変換する第2電力変換装置42と、
第1蓄電池30の残量である第1残量と第2蓄電池40の残量である第2残量とを取得し、第1残量及び第2残量に基づいて、第1電力変換装置32に記憶される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2電力変換装置42に記憶される第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節する制御装置70とを備え、
第1電力変換装置32は、第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第1出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、変換部210から出力する電圧を制御するものであり、
第2電力変換装置42は、第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第2出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、変換部210から出力する電圧を制御するものであり、
制御装置70は、第2残量が第1残量よりも大きい場合、第1蓄電池30から出力される電力よりも第2蓄電池40から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節し、また、第1残量が第2残量以上である場合、第2蓄電池40から出力される電力よりも第1蓄電池30から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節するものである、
電力システム100。」
2.甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は電気化学的蓄電池を有するバッテリー用の充電平衡化装置に関する。
・・(中略)・・
【0010】
平衡化装置の機能は、バッテリーの充電を最適化し、直列に配置された1以上の蓄電池の段を等しい充電又は放電状態に導くことで自律性を最適化することである。エネルギー散逸型の平衡化装置及びエネルギー転移型の平衡化装置の2カテゴリの平衡装置が存在する。
・・(中略)・・
【0021】
図1及び2は、パワーバッテリー2の形式をとる電力貯蔵システムを有する電源システム1の図表示である。バッテリー2は、電気的に直列に接続されるk個の電力貯蔵素子を構成する、k個の段Et1~Etkを有する(kは最低でも2であり、好ましくは、kは最低でも3である)。各段iは、好都合にも、電気的に並列に接続されるn個の蓄電池Ai,1~Ai,nを有する(nは、最低でも2である)。また、電源システム1は、バッテリー2の充電平衡化装置3を有する。バッテリー2の陽極と陰極との間の電圧は、典型的には、100Vから750Vの間、例えば400Vオーダーの値を有する。バッテリー2は、例えば、インバータの端子に接続されることで、ハイブリッド車又は電気自動車のモータに電力を供給するものであり、好都合にも、このような車両の金属シャーシと分離されている。
【0022】
平衡装置3は、各段又は素子Etiのそれぞれの端子と接続されるように構成された接続インターフェイスを有する。また、平衡装置3は、例えば、電圧が概して12V近傍に調整される車載電気ネットワークである補助的ネットワーク6を有する。調整された電圧は、例えば10.5V~14Vの間の範囲で変化することができる。調整された電圧は、典型的には、バッテリー2の端子間の電圧の少なくとも6分の1である。
【0023】
平衡化装置3は、コンバータ301~30kを有し、例えばバッテリー2の各ステージに1つのコンバータが対応する。また、バッテリー2の直列する複数の段のコンバータに対して1つのコンバータを設けることもできる。コンバータ301~30kは、分離されているのが好都合である。コンバータ301~30kは、一方向でも双方向でもよい。以下で説明するように、コンバータ301~30kは、それぞれ出力電圧vs1~vskを印加し、出力電流量i1~ikを供給することで、バッテリー2のステージEtiの平衡化を保証すること(及び、これによりバッテリー2の充電を最適化すること)と、補助的ネットワーク6へ電源を供給することと、の双方を行うことを目的とする。コンバータ301~30kのそれぞれの出力は補助的ネットワーク6に接続され、同じ電位差Vauxを補助的ネットワーク6の端子間に印加する。平衡化装置3は、補助的ネットワーク6に電流iauxを供給する。自動車やカーラジオなどの補助的負荷61~63は、ネットワーク6に接続される。
・・(中略)・・
【0025】
コンバータ301~30kは、電流制限電圧源として設計される。コンバータ30iは、Iimaxで示される電流制限を有する。コンバータ30iのそれぞれは、出力を介して補助的ネットワーク6に供給する電流値Iiを補償する。このため、コンバータ30iのそれぞれは、出力を介して供給する電流値Iiを測定する電流センサ31iを有する。
【0026】
更に、コンバータ30iのそれぞれは、以下の形式の変換規則を有する。
Vouti=K1×Vei-f(Ii)
ここで、
Voutiは、コンバータ30iの出力電圧である。
K1は定数である。
Veiは、コンバータ30iの入力電圧である。
Iiは、コンバータ30iの出力電流である。
f(Ii)は、電流Iiのアフィン関数である。
・・(中略)・・
【0027】
電圧Voutiを定義するために関数f(Ii)を使用することで、以下で説明する動作において、複数のコンバータ間に電流を分配することができる。
【0028】
具体的事例においては、K2を定数とすると、f(Ii)=K2×Iiである。また、関数f(Ii)の大きさは、f(Ii)<0.1×K1×Veiminとなるように定義される。ここで、Veiminは、コンバータ30iの入力に印加される最小入力電圧である。
【0029】
平均電流Iiに対して制御規則が定義される。望ましくは、コンバータ30iは、K1<1の電圧ステップダウンコンバータである。定数K1は、端子がコンバータ30iに接続される蓄電池の段数に依存して、それらの技術に依存して、及び、補助的ネットワーク6の望ましい電圧の大きさのオーダーに依存して、固定することができる。
【0030】
コンバータ30iによって流れる電流がその電流Iimaxよりも小さい限り、この変換規則は保証される。電流Iimaxを超えると、各コンバータは電流調整によって動作する。これにより、出力電圧Voutiの値は、指令回路4によって定義されないが、コンバータ30iによって自発的に決定される。このシステムは、電圧Veiのそれぞれを監視する監視装置(不図示)を有してもよい。電圧Veiが下限閾値よりも小さい又は上限閾値よりも大きいことを監視装置が認識した場合、この装置は対応するコンバータVeiを非活性化又は活性化し、又は、指令回路4に情報を送出する。
【0031】
図3は、与えられたコンバータの入力電圧の値に対してコンバータ30iの出力電圧/出力電流を制御する規則の例を示している。Iimaxまでは、連続曲線は関数f(Ii)=K2×Iiの場合に対応する。Iimaxを超えると、図示したように、一定の係数、入口係数又は出口係数にて出力電流の調整が行われる(連続線)。
【0032】
ここで、電源システム1の動作について詳細に説明する。説明を簡略化するため、補助的バッテリー5はネットワーク6に接続されていない。特に、同数の直列接続された同数の電気化学的蓄電池の段及び同じ蓄電池技術のために、コンバータの端子間の入力電圧は同じのオーダーの大きさを有するものとする。連続的に用いられるコンバータ30iは、一定の係数での出力電流調整と、Vouti=K1×Veiなる形式の出力電圧調整と、を有する。但し、f(Ii)=K2×Ii+K3であり、K3は真に正の定数である。
・・(中略)・・
【0034】
図4で詳細に図示される動作は、同一の変換規則を有する2つのコンバータ301及び302のみを有する単純化された場合に対応する。コンバータ301の入力電圧Ve1はコンバータ302の入力電圧Ve2よりも大きい(コンバータ301の入力と接続される段の蓄電池の充電状態は、コンバータ302の入力と接続される段et2の蓄電池の充電状態はよりも良好である)。よって、コンバータ301の出力電圧Vout1は、コンバータ302の出力電圧Vout2よりも大きい。電圧Vomax2は、コンバータ302の開放回路出力電圧に対応する。
【0035】
第1の具体的事例(点線矢印)においては、ネットワーク6の電流Iauxは、制限I1maxよりも小さい。これにより、コンバータ301は、電流Iaux1の全体を供給することができ、ネットワーク6の電圧Vauxと同様に、出力電圧Vout1=Vaux1とすることができる。ここで、Vaux1>Vomax2であるので、コンバータ302は電流Iauxには寄与しない。
【0036】
第2の具体的事例(破線矢印)においては、ネットワーク6の電流Iauxは、制限I1maxよりも大きいが、制限I1max+I2maxよりも小さい。Iauxが制限I1maxよりも大きいので、出力電圧Vout1はVomax2(コンバータ301の電流調整)には達しない。コンバータ301は、電流I1=I1maxを供給する。出力電圧Vauxは値Vaux2まで下がり、Iaux2=I1max+I2となる。これにより、コンバータ302は、自身の変換規則に応じて付加的な電流I2を供給する。
【0037】
よって、電流は、最も充電された段の放電の優先順位を決めることで、異なる段に分割されて段の間の充電の平衡化に寄与する。また、このような平衡化はネットワーク6に電源供給することで実現され、このような平衡化電流の使用は、望まない散逸ロスを制限するために最適化される。更に、コンバータの出力電圧の差が大きくなるほど、最も充電された段に接続されるコンバータによって、補助的電流の供給の優先順位が高くなる。更にまた、このような平衡化装置3は、コンバータレベルでの複雑な相互依存制御ループを回避し、異なる段の電圧レベルに適合した複雑な通信インターフェイスに依存することを回避する。
・・(中略)・・
【0039】
図5で詳細に図示される動作は、多数のコンバータ30iを有するより複雑な例に対応し、又は、異なる段の電気化学的蓄電池が充電状態に依存してわずかな電圧変動を有する場合に対応する。このような具体的事例においては、複数のコンバータ30iの出力電圧の間で重複が起こり得る。コンバータ30iは、同じ変換規則を有する。
【0040】
重複領域では、コンバータは、自身の開放回路出力電圧に依存して、自身の負の勾配(定数K2)に依存して、及び、補助的電圧vauxに依存して決まる。
【0041】
この例では、コンバータ1及び4が同じ充電状態の段に接続され、その結果、同じ開放回路電圧Vomax1及びVomax4を有する。例えば、ゼロ電流と点Aに対応する電流との間の電流Iauxに対して、コンバータ301及び304は、それぞれ同じ電流I1及びI4(図示しないが、各コンバータの変換規則により決定される)を供給する。
【0042】
点Aと点Bとの間の電流Iauxに対して、コンバータ301、303及び304は、電圧Vauxに応じて、定数K2に応じて、かつ、各々の開放回路出力電圧に応じて分割された電流を供給する。点Aは、電圧Vauxが開放回路出力電圧Vomax3と等しい点として定義される。コンバータ301及び304は、それぞれ電流I12(I42)=(Vomax1-Vaux)/K2を供給する。コンバータは、以下の電流を供給する。
・・(中略)・・
【0049】
図6は、本発明にかかる平衡化装置の特定の利点である例示的なコンバータ30iを示している。コンバータ30iは、入力接続インターフェイスに接続される入力フィルタFEを有する。入力フィルタFEの出力は、DC/DC変換回路303のフルブリッジインバータOPと接続される。フルブリッジインバータは、制御スイッチM1、M2、M3及びM4を有する。DC/DC変換回路は、二次的TPMへのセンタータップを有するトランスを有する。トランスTPMは、スイッチM1~M4の間にブリッジ接続される一次巻線EPを有する。スイッチM1~M4は、出力電圧のレベルを決めるために、制御回路320を介したパルス幅変調によって制御される。また、コンバータ30iは、制御スイッチM5及びM6を含む同期整流器を有する。制御回路320自身は、レギュレータ回路350から設定点を受けとることができる。例については以下で説明する。
・・(中略)・・
【0061】
コンバータ30iは、レギュレータ回路350を有する。レギュレータ回路350は、0と1との間の値のデューティサイクルαiを生成する。レギュレータ回路350は、デューティサイクル指令αiをコンバータ回路303の制御回路に与える。
【0062】
レギュレータ回路350は、電流センサ31iで測定された電流Iiを反転入力で受け取り、電流Iref(以下で詳述する)を非反転入力で受け取る減算器351を有する。これにより、減算器351は、電流を制限するクローズドループを導入するための電流差分信号δ1を生成する。δ1は、この信号に基づいてデューティサイクル値を定式化する補正器352の入力に与えられ、最小値と最大値との間で定式化されたデューティサイクルの値を制限する。この補正器352は、例えばPI(比例積分)型である。補正器352の出力は、コンバータ回路303の指令入力に与えられる。
【0063】
レギュレータ回路350は、入力で電圧値Veiを受け取り、出力にて電圧値Vi=Vei×K1を生成する除算器を有する。電圧値Viは、減算器357の非反転入力に与えられる。電圧センサ36iは、コンバータ回路303の出力電圧を測定し、この電圧を減算器357の反転入力に印加する。これにより、電圧エラー信号δvが生成される。信号δvは、補正器358(例えば、PI型)の入力に印加される。補正器358は、電流指令Irefを生成する。
【0064】
スローループは、電流指令Irefが値Iimaxよりも小さい間は、活性化されている。irefが値Iimaxに到達すると、コンバータ回路303の出力電流はIimaxに制限される
・・(中略)・・
【0066】
この例では、f(Ii)=0であるが、センサ31iで測定された値Iiに依存して、コンバータ回路303に与えられるデューティサイクルを減少させるための方策をとることができる。
・・(中略)・・
【0070】
本発明は、好都合にも、充電残量が変動する間に実質的に端子間の電圧が変動する電気化学的蓄電池を有する電気エネルギー蓄積装置2を適用できる。
・・(中略)・・
【0074】
図示しないが、電源システム1は、都合の良いことに、蓄電池の段Etiの端子間の電圧を測定及びモニタリングする装置を有する。 」
「【図2】
[図:0001413328000004.jpg]
【図3】
[図:0001413328000005.jpg]
【図4】
[図:0001413328000006.jpg]
【図5】
[図:0001413328000007.jpg]
【図6】
[図:0001413328000008.jpg]
【図8】
[図:0001413328000009.jpg]
」
(2)甲2発明
上記(1)によると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「バッテリー2、平衡装置3、補助的ネットワーク6とを有する電源システムであって、
バッテリー2は、電気的に直列に接続されるk個の電力貯蔵素子を構成するk個の段Et1~Etkを有し(段落0021、図2)、
平衡装置は、コンバータ301~30kを有し、補助的ネットワーク6と接続され(段落0022、0023、図2)、コンバータ301~30kの出力電圧の差が大きくなるほど、最も充電された段に接続される当該コンバータによって、補助的電流の供給の優先順位が高くなるように動作し(段落0037)、
それぞれのコンバータ30iは、
Voutiがコンバータ30iの出力電圧、K1が定数、Veiがコンバータ30iの入力電圧、f(Ii)がコンバータ30iの出力での電流Iiのアフィン関数、Iimaxがコンバータ30iの電流制限であって、IiがImaxより小さい限り、Vouti=K1×Vei-f(Ii)なる形式の変換規則が保証され、IiがIimaxを超えると、電流を調整する動作を行うものであり(段落0026ないし0031)、
それぞれのコンバータ30iは、DC/DC変換回路303と制御回路320とレギュレータ回路350とを有し(段落0049、図6)、
レギュレータ回路350は、電流センサ31i、電圧センサ36i、除算器356、減算器357、補正器358、減算器351、補正器252、コンバータ回路303を有し(段落0061ないし0063、図8)、0と1との間の値のデューティサイクルαiを生成し、デューティサイクル指令αiをコンバータ回路303の制御回路320に与え(段落0061)、減算器351が、電流センサ31iで測定された電流Iiを反転入力で受け取り、かつ、電流Irefを非反転入力で受け取って、電流を制限するクローズドループを導入するための電流差分信号δ1を生成し、電流差分信号δ1は、デューティサイクル値を定式化する補正器352に与えられ、最小値と最大値との間で定式化されたデューティサイクルの値を制限し(段落0062、図8)、
また、レギュレータ回路350は、除算器356によって、電圧値Veiを受け取って、電圧値Vi=Vei×K1を生成し、電圧値Viは、減算器357の非反転入力に与えられ、電圧センサ36iは、コンバータ回路303の出力電圧を測定し、この電圧を減算器357の反転入力に印加して、電圧エラー信号δvが生成されて、補正器358の入力に印加されて、電流指令Irefを生成する(段落0063)、
電源システム。」
3.甲第3号証
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0024] 監視・指示装置80は、各発電システム10及び20、主安定化装置30、及び準安定化装置40,50,及び60の状態情報(電圧、電流、温度等)を収集して状態監視や動作監視を行うと共に、これらの監視結果に基づいて各部の運転指令(起動・停止指令等)、及び充放電閾値指令等を生成する。監視・指示装置80と上述した各部との間では、有線または無線により各種の監視信号及び指令を送受信可能である。
・・(中略)・・
[0044] 更に、制御回路42Bに設けられた比較部42bは、蓄電装置41の充放電閾値をバス電圧検出値と比較し、充電閾値または放電閾値とバス電圧検出値との大小関係に応じて充電指令または放電指令を出力して充放電制御部42dの動作を制御する。なお、充放電閾値は、制御回路42Bが自ら設定しても良いし、監視・指示装置80から指令として受信しても良い。
・・(中略)・・
[0055] また、充電閾値及び放電閾値は、各制御回路が自ら設定しても良いし、監視・指示装置80から指令として受信しても良い。」
「[図1]
[図:0001413328000010.jpg]
[図5]
[図:0001413328000011.jpg]
[図6]
[図:0001413328000012.jpg]
」
4.甲第4号証
甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0075】
本実施例2においては、電気負荷装置4-1の電力変動に対して、交流/直流電力変換装置6-1の制御モードが切り替えられると(電圧制御→電力制御)、系統監視装置10から直流/直流電力変換装置7-1に、制御モードの切り替え(電力制御→電圧制御)を指令する設定信号を送信する。さらに、発電装置3-1と電気負荷装置4-1との間の電力需給がバランスするタイミングで、系統監視装置10から、各電力変換装置に対し、制御モードを、電力変動発生前の状態に復帰させることを指令する設定信号を送信する。
・・(中略)・・
【0080】
系統監視装置10は、直流配電系統1における直流回路2の構成、潮流状態、発電装置の回転状態等を監視するとともに、系統監視装置は、各電力変換装置の制御モードを設定する。より具体的に、系統監視装置10は、第一変換器制御装置8-1、第二変換器制御装置9-1および第三変換器制御装置11-1から、それぞれ、変換器設定情報S65-1、変換器設定情報S73-1および変換器設定情報S73-2を受信する。また、系統監視装置10は、系統安定化機能を有する第一変換器制御装置8-1および第二変換器制御装置9-1に対して、それぞれ、電圧指令値または電力指令値もしくは制御モードを示す変換器制御信号S64-1および変換器制御信号S74-1を送信する。」
「【図9】
[図:0001413328000013.jpg]
」
5.甲第5号証
甲5には、次の事項が記載されている。
「【0037】
バッテリ電圧計測部24は、バッテリの電圧を計測する。
【0038】
バッテリ残量算出部25は、補正データ生成部23が生成した補正放電特性データと、バッテリ電圧計測部24が計測したバッテリの電圧とに基づいて、バッテリの残量を算出する。本実施の形態では、バッテリ電圧からバッテリ残量を検出する方法を用いているが、バッテリ放電電流からバッテリ残量を検出する方法を用いる場合には、バッテリ残量算出部25は、補正データ生成部23が生成した補正放電特性データと、放電電流計測部12が計測したバッテリの放電電流とに基づいて、バッテリの残量を算出する。
【0039】
バッテリ残量算出部25が、補正データ生成部23が生成した補正放電特性データと、バッテリ電圧計測部24が計測したバッテリの電圧とに基づいて算出するバッテリの残量は、補正したバッテリの残量である。バッテリ残量算出部25は、放電特性決定部15が決定した放電特性データと、バッテリ電圧計測部24が計測したバッテリの電圧とに基づいて、補正していないバッテリの残量を算出してもよい。」
6.甲第6号証
甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】
まず、本実施の形態の蓄電システムにおける制御モデルについて図3乃至図5を参照して詳細に説明する。
図3(a)は、DC接続バス20に接続されたN台の蓄電装置1をモデル化したものである。図3(a)において、i 1~i Nは、N台の蓄電装置1それぞれの充放電電流であり、Rは、電流-電圧ドループ特性の傾きとなる仮想抵抗値である。そして、Vof 1~Vof Nは、DC接続バス20のグリッド電圧Vgridとi 1~i NとRとから導出されるN台の蓄電装置1それぞれのオフセット電圧である。
【0026】
図3(a)のモデルによると、k台目の蓄電装置1における充放電電流i kは、
i k=Vgrid/R-Vof k/R
となり、
N台の蓄電装置1の合計充放電電流iΣは、Vof 1~Vof Nの平均をVof avrとすると、
iΣ=N×Vgrid/R-N×Vof avr/R
となる。
【0027】
従って、系全体のモデルは、図3(b)で表すことができ、系全体ドループ特性は、図3(c)に示す系全体のブロック図のように
Vgrid=(R/N)×iΣ+Vof avr
となる。なお、図3(b)に示すi LOADは、DC接続バス20に接続された負荷電流であり、
iΣ=-i LOAD
の関係である。
・・(中略)・・
【0032】
グリッド電圧算出部181には、図7に示すように、出力電力の最小値Pcmin及び最大値Pcmaxが、電流-電圧ドループ特性における制御領域の制御下限電圧Vcmin及び制御上限電圧Vcmaxとなる1次関数の演算式による垂下特性をもつ電力‐電圧ドループ特性が設定されている。グリッド電圧算出部181は、この電力‐電圧ドループ特性を用いることでグリッド電圧指令Vgrid*を
Vgrid *=
(1/Ksoc)×[(Vc max-Vc min)/(Pc max-Pc min)]×P OUT+Vc mid
によって算出する。これにより、電力検出部16によって検出された電力POUTに応じて、充電時はグリッド電圧指令Vgrid*が中間電圧Vcmidから制御上限電圧Vcmaxの方向へ,放電時はグリッド電圧指令Vgrid*が中間電圧Vcmidから制御下限電圧Vcminの方向へそれぞれ操作される。
【0033】
(1/K soc)は、電力‐電圧ドループ特性を蓄電量検出部17によって算出されたSOCで重みづけするための係数である。本実施の形態において、Ksocは、図8に示すように、SOCに基づいて.555以上1.0以下の値に算出される。そして、Ksocは、電力POUTの極性を用いて演算式を変え、電力POUTが正で充電方向である場合、蓄電量が少ないほど小さい値となり、電力POUTが負で放電方向である場合、蓄電量が多いほど小さい値となる。従って、電力POUTが正で充電方向である場合、蓄電量が少ないほど電力‐電圧ドループ特性の傾きが大きくなるため、算出されるグリッド電圧指令Vgrid*は、蓄電量が多い蓄電装置1よりも蓄電量が少ない蓄電装置1の方が大きい値となる。また、電力POUTが負で放電方向である場合、蓄電量が多いほど電力‐電圧ドループ特性の傾きが大きくなるため、算出されるグリッド電圧指令Vgrid*は、蓄電量が多い蓄電装置1よりも蓄電量が少ない蓄電装置1の方が大きい値となる。」
「【図3】
[図:0001413328000014.jpg]
」
7.甲第7号証
甲7には、次の事項が記載されている。
「【0063】
第1蓄電部3aと第2蓄電部3bの用途が同じ場合、充電量が少ない方の蓄電部に接続されたDC-DC変換装置のバス電圧制御の優先順位を、充電量が多い方の蓄電部に接続されたDC-DC変換装置より高く設定する。充電量が少ない蓄電部の方が、充電量が多い蓄電部より充電の必要性が高いといえる。」
第6.取消理由についての当審の判断
本件特許の請求項2、6、7は本件訂正により削除されたので、請求項2、6、7に係る特許に対する異議申立てを却下する。
そして、本件特許発明1、3ないし5について以下に検討する。
1.取消理由1について
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲1発明とを以下に対比する。
(ア)甲1発明の「負荷60および電力系統10が接続される直流バス14」は、本件特許発明1の「負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線」に相当する。
(イ)甲1発明の「電力を充放電可能な第1蓄電池30及び第2蓄電池40」は、本件特許発明1の「第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源」及び「第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源」に相当する。
(ウ)甲1発明の「第1蓄電池30と直流バス14との間に配置され、第1蓄電池30の直流電力を所望の直流電力に変換する第1電力変換装置32」は、当該「第1電力変換装置32」から直流バス14に出力する電力の電圧を昇降圧して制御するものといえるから、本件特許発明1の「前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置」に相当する。
そして、同様の理由により、甲1発明の「第2蓄電池40と直流バス14との間に配置され、第2蓄電池40の直流電力を所望の直流電力に変換する第2電力変換装置42」は、本件特許発明1の「前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置」に相当する。
(エ)外部装置によって所定の装置の動作を調節するための具体的構成として、外部装置において当該調節に対応するパラメータを決定し、決定されたパラメータを所定の装置に対して出力することは、本件出願時の技術常識であることからすると、甲1発明の「制御装置70」における「第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320」及び「第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322」の出力は、それぞれの調節に対応するパラメータを決定し、決定された各パラメータを「第1電力変換装置32」及び「第2電力変換装置42」に対して出力するものであると解される。
そうすると、本件特許発明1の「前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する制御回路」と、甲1発明の「第1蓄電池30の残量である第1残量と第2蓄電池40の残量である第2残量とを取得し、第1残量及び第2残量に基づいて、第1電力変換装置32に記憶される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2電力変換装置42に記憶される第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節する制御装置70」とは、「前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対するパラメータ、および、前記第2変換装置に対するパラメータを決定し、それぞれ決定されたパラメータを前記第1変換装置と前記第2変換装置とに出力する制御回路」で共通する。
(オ)本件特許発明1における「電圧ドループ特性」は、本件出願時の技術常識によると、出力電力が増加すると電圧が降下するような制御特性を包含すると解されるところ、甲1発明の「第1制御ルール300」は、「第1電力変換装置32」の出力電力が増加すると、当該第1電力変換装置32の出力電圧を降下するように制御するものであるから、「電圧ドループ特性」であるといえる。
そして、甲1発明の「第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第1出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、変換部210から出力する電圧を制御する」ことは、第1出力電圧指令値と制御装置70から出力されるパラメータとに基づいて、出力電圧を制御するものといえることからすると、本件特許発明1の「第1変換装置」が「前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧」することと、甲1発明の「第1電力変換装置32」が「第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第1出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、変換部210から出力する電圧を制御する」こととは、「第1変換装置」が「制御回路から出力されるパラメータと、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧する」で共通する。
(カ)同様の理由で、本件特許発明1の「第2変換装置」が「前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧」することと、甲1発明の「第2電力変換装置42」が「第1制御部220及び第2制御部230と、変換部210とを備え、第1制御部220及び第2制御部230は、変換部210から出力される第2出力電力の値と、上記制御装置70によって調節される第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とに基づいて生成した蓄電池制御値によって、変換部210から出力する電圧を制御する」こととは、「第2変換装置」が「制御回路から出力されるパラメータと、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧」することで共通する。
(キ)上記(エ)ないし(カ)のとおりであるところ、本件特許発明1の「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定し、前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」ことと、甲1発明の「制御装置70は、第2残量が第1残量よりも大きい場合、第1蓄電池30から出力される電力よりも第2蓄電池40から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節し、また、第1残量が第2残量以上である場合、第2蓄電池40から出力される電力よりも第1蓄電池30から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節する」こととは、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対するパラメータ、および、前記第2変換装置に対するパラメータを決定する」ことで共通する。
(ク)甲1発明の「電力システム100」は、直流電力を供給するものといえるから、本件特許発明1の「直流電力供給システム」に相当する。
イ.一致点、相違点
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点において一致し、また、相違している。
(ア)一致点
「負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、
第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、
第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、
前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、
前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、
前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対するパラメータ、および、前記第2変換装置に対するパラメータを決定し、それぞれ決定されたパラメータを前記第1変換装置と前記第2変換装置とに出力する制御回路と
を具備し、
前記第1変換装置は、制御回路から出力されるパラメータと、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し、
前記第2変換装置は、制御回路から出力されるパラメータと、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧し、
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対するパラメータ、および、前記第2変換装置に対するパラメータを決定する
直流電力供給システム。」
(イ)相違点
a.相違点1-1
本件特許発明1は、「前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部」と、「前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部」とを備え、「制御回路」では、第1物理量及び第2物理量に基づいて、「第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量」及び「第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量」を算出するものであるのに対して、甲1発明は、上記「第1出力部」と上記「第2出力部」に対応する構成を備えておらず、「制御装置70」では、「第1蓄電池30の残量」と「第2蓄電池40の残量」とを取得するものである点。
b.相違点1-2
本件特許発明1は、「制御回路」から「第1変換装置」及び「第2変換装置」に対して出力されるパラメータが、「第1出力電圧指令値」と「第2出力電圧指令値」であって、かつ、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」ものであるのに対して、甲1発明は、「制御装置70」から「第1電力変換装置32」及び「第2電力変換装置42」に対して出力されるパラメータが、「第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320」及び「第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322」であって、「制御装置70」は、「第2残量が第1残量よりも大きい場合、第1蓄電池30から出力される電力よりも第2蓄電池40から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節し、また、第1残量が第2残量以上である場合、第2蓄電池40から出力される電力よりも第1蓄電池30から出力される電力の方が大きくなるように、第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320、あるいは、第2上側しきい値ルール312と第2下側しきい値ルール322とを調節する」ものである点。
ウ.判断
事案に鑑みて、まず上記相違点1-2を検討する。
本件特許発明1の「第1出力電圧指令値」は、出力すべき特定の電圧の値を指定するものであり、甲1発明の「第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320」は、「第1変換装置」が出力する電圧の上側と下側とを表すルールであるといえるところ、出力電圧の制御において、特定の電圧の値を指定することによる制御と、出力する電圧の上側と下側とを表すルールを指定することによる制御とは、その作用効果が異なるものであることが、本願出願時点における技術常識であることからすると、本件特許発明1の「第1出力電圧指令値」による「第1変換装置」の出力電圧の制御と、甲1発明の「第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320」による「第1変換装置」の出力電圧の制御とは、その作用効果が等しいものであるとはいえない。
そして、出力電圧の制御において、出力すべき特定の電圧の値を指定することが周知技術であるとしても、甲1発明の「第1上側しきい値ルール310と第1下側しきい値ルール320」に代えて、当該周知技術を適用するための技術課題が、甲1ないし甲7に記載あるいは示唆されているとはいえないことからすると、甲1発明において、「制御回路」から「第1変換装置」に出力されるパラメータを、「第1変換装置」が出力するべき「第1出力電圧指令値」とし、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力する」構成とすることに係る動機付けは認められない。
また、同様の理由によって、甲1発明において、「制御回路」から「第2変換装置」に出力されるパラメータを、「第2変換装置」が出力するべき「第2出力電圧指令値」とし、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合」、「前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」構成とすることに係る動機付けは認められない。
よって、本件特許発明1の上記相違点1-2に係る構成は、甲1発明、及び、甲2ないし甲7に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおりであるから、相違点1-1については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲2ないし甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明3ないし5
本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1の構成を全て含むものである。
よって、本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1と同様の理由により、甲1発明、及び、甲2ないし甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2.取消理由2について
本件訂正により、本件特許発明1は、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定」することが特定された。
これによって、本件特許発明1は、本件明細書に記載された課題を解決できると認識できる範囲内のものであると認められる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
3.特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和6年3月22日に提出された意見書において、次の理由により、訂正請求された請求項1の記載、及び、それを引用する請求項3ないし5の記載は明確でなく、また、本件訂正発明1は、甲1発明及び本件出願時における周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると主張している。
ア.明確性
「本件訂正発明1では、「前記第1出力電圧指令値」と「前記直流母線の目標電圧の値」との間の関係も、「前記第2出力電圧指令値」と「前記直流母線の目標電圧の値」との間の関係も、「前記第2出力電圧指令値」と「前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値」との間の関係も、「前記第1出力電圧指令値」と「前記第2出力電圧指令値」との間の関係も特定されていないため、「前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力する」ことがどのような制御を意味するのか明確でない。同様の理由により、「前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との記載も明確でない。
・・(中略)・・
前段の「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合」との事項と、後段の「前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」との事項との間の関係も明確でない。」(意見書第2頁から第4頁)
イ.進歩性
「甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)は、「制御装置70は、第1残量が第2残量よりも小さい場合、第1電力変換装置32に対する直流バス14の目標電圧の指令値を低く決定するか、又は、第2電力変換装置42に対する直流バス14の目標電圧の指令値を高く決定する」との事項を含むものであると認められる。
甲1発明の上記事項は、本件訂正発明1の「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」ことに相当する。」(意見書第4頁から第8頁)
(2)特許異議申立人の主張についての判断
ア.明確性
本願明細書の段落0061ないし0070、0078ないし0083の記載、及び、図2、4、5によると、本件特許発明1の「第1変換装置に対する第1出力電圧指令値」は、直流母線の目標電圧の値に決定されているところ、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合」に、「前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値」に決定(変更)するものであると解される。
また、同様の理由により、本件特許発明1の「第2変換装置に対する第2出力電圧指令値」は、直流母線の目標電圧の値に決定されているところ、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合」に、代替的に「前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値」に決定(変更)するものであると解される。
よって、本件特許発明1は明確であり、同様の理由により、本件特許発明3ないし5は明確である。
以上のとおりであるから、上記明確性に係る特許異議申立人の主張は認められない。
イ.進歩性
上記1.(2)ウで説示したとおり、本件特許発明1と甲1発明とは、相違点1-2で相違するものであって、甲1発明は、「制御装置70は、第1残量が第2残量よりも小さい場合、第1電力変換装置32に対する直流バス14の目標電圧の指令値を低く決定するか、又は、第2電力変換装置42に対する直流バス14の目標電圧の指令値を高く決定する」ものとはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲2ないし甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記進歩性に係る特許異議申立人の主張は認められない。
第7.特許異議申立理由についての当審の判断
本件訂正により削除された請求項2、6、7を除く、本件特許発明1、3ないし5について以下に検討する。
1.申立理由1、2について
上記第6.1で説示したとおりであるから、本件特許発明1、3ないし5は、甲1発明ではなく、また、甲1発明、及び、甲2ないし甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由1、2は採用できない。
2.申立理由3、4について
本件特許発明1と甲2発明とは、その構成が大きく異なるものであって、少なくとも本件特許発明1では、「制御回路」から「第1変換装置」及び「第2変換装置」に対して「第1出力電圧指令値」と「第2出力電圧指令値」が出力され、「前記第1変換装置は、前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し」、「前記第2変換装置は、前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧し」、かつ、「前記第1電源の電力負担割合を低減させ前記第2電源の電力負担割合を増加させる場合、前記制御回路は、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも低い電圧の値に決定して前記第1変換装置に出力するか、代替的に、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を前記直流母線の目標電圧の値よりも高い電圧の値に決定して前記第2変換装置に出力する」ことに係る構成を備えているのに対し、甲2発明は、当該構成が特定されていない点で相違するものであると認められる。
上記相違点について検討すると、上記相違点に係る構成は、甲1、甲3ないし甲7には記載されいるとはいえず、また、甲2発明における制御方式を、上記相違点に係る構成に改変する動機付けがあるともいえない。
よって、本件特許発明1、3ないし5は、甲2発明ではなく、また、甲2発明、及び、甲1、甲3ないし甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由3、4は採用できない。
3.申立理由5について
本件特許発明1は、「前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定」するものであって、
本件明細書に記載された課題を解決できると認識できる範囲内のものであると認められる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立理由5は採用できない。
4.申立理由6について
本件特許発明1の「電力負担割合」とは、本願出願時点における技術常識、及び、段落0002ないし0005、0063、0101の記載によると、直流母線に供給される電力に関して、第1電源と第2電源とのそれぞれの電源が負担する割合であると解される。
また、本件特許発明1の「電力負担割合を低減」させる、あるいは、「電力負担割合を増加」させるとは、「前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減される」ように「低減」あるいは「増加」させるものであるといえる。
したがって、本件特許発明1は明確であり、また、同様の理由により、本件特許発明3ないし5は明確である。
よって、申立理由6は採用できない。
第8.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項2、6、7は、本件訂正請求により削除されたので、請求項2、6、7に係る特許に対する異議申し立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700913