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特許異議申立

2023-700326

電力変換器の制御回路

審判番号
2023-700326
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-022526
登録番号
7160056
請求日
2023年03月30日
審決日
2024年03月01日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社デンソー
  • 【権利者代理人】山田 強
  • 【権利者代理人】日野 京子
  • 【権利者代理人】松田 洋
  • 【権利者代理人】北 裕介
  • 【異議申立人】田中 貞嗣
  • 【異議申立人】小山 卓志
審判長/審判官
  • 審判長 須田 勝巳
  • 審判官 林 毅
  • 審判官 山澤 宏
分類
P1651.113-YAA(H02M) / P1651.121-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M) / P1651.831-YAA(H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7160056号発明「電力変換器の制御回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7160056号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6-8〕、9について訂正することを認める。 特許第7160056号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7160056号の請求項1ないし9に係る特許(以下、「本件特許」という。)の特許出願に係る手続及び本件特許異議申立てに係る手続の経緯は、以下のとおりである。 令和2年 2月13日 :特許出願 令和4年10月17日 :特許権の設定登録 令和4年10月25日 :特許掲載公報の発行 令和5年 3月30日 :特許異議申立書の提出 (特許異議申立人 田中貞嗣 及び 小山卓 志(以下、2名まとめて単に「申立人」とい う。)による特許異議の申立て) 令和5年 6月 6日付け:取消理由通知書 令和5年 8月 7日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 令和5年 9月26日 :意見書の提出(申立人) 令和5年10月10日付け:取消理由通知書 令和5年11月30日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 令和6年 1月11日 :意見書の提出(申立人) 令和6年 1月18日 :手続補正書の提出(申立人) なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和5年8月7日に提出された訂正請求書に係る訂正の請求は、令和5年11月30日に提出された訂正請求書に係る訂正の請求(以下、この訂正の請求に係る訂正を「本件訂正」という。)をもって、取り下げられたものとみなす。 また、令和6年1月18日に提出された手続補正書に係る補正は、令和6年1月11日に提出された意見書を補正するものである。(以下、この補正された意見書を、単に「申立人意見書」という。) 第2 特許異議の申立ての理由及び証拠 特許異議申立書及び申立人意見書の全趣旨からして、特許異議申立人が主張する特許異議の申立ての理由(以下、「申立理由」という。)及び証拠は、以下のとおりのものと認められる。 1 特許異議の申立ての理由の概要 (1)申立理由1(明確性要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、以下の点において明確ではないので、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 請求項1の「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」、並びに、請求項5の「第1電力生成部(65)」及び「第2電力生成部(67)」については、「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし(て)」と記載されているにとどまり、どのような条件においてどのような態様で両電源が電力供給源とされるのかについての記載がない。このため、「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)、並びに、「第1電力生成部(65)」及び「第2電力生成部(67)」については、任意のタイミングにおいて「第2電源」及び「第3電源」の両方を、ともに(或いは同時に)電力供給源とする場合が含まれる。 一方、本件特許明細書には、異常が生じた場合に、低圧電源31(第2電源)とバックアップ電源回路63(第3電源)のいずれか一方から電力供給されることが記載され、低圧電源31と電源回路63の両方がともに電力供給源となる場合については記載されていない。 そうすると、請求項1及び5の記載において、第2電源と第3電源のいずれか一方を電力供給源とすることを意味するのか、第2電源と第3電源の両方をともに(同時に)電力供給源とすることを意味するのか等が判然としない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし4の記載についても同様であり、本件特許発明1ないし5は、明確ではない。 (2)申立理由2(新規性欠如) 本件特許の特許請求の範囲の請求項9に係る発明は、甲第3号証に記載の発明と同一であり特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 (3)申立理由3(進歩性欠如) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基いて、又は、甲第1号証に記載の発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基いて、また、同請求項6ないし9に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基いて、甲第1号証に記載の発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基いて、又は、甲第1号証に記載された発明と周知技術(甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1、2及び6ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 なお、特許異議申立書及び申立人意見書の全趣旨からして、上記における「甲第1号証に記載の発明」は、請求項1、2及び9に係る発明に対しては、甲第1号証の第1実施形態に記載された発明のことであり、請求項7及び8に係る発明に対しては、甲第1号証の第5実施形態に記載された発明のことと認められる。 2 証拠 甲第1号証:特開2019-198139号公報 甲第2号証:国際公開第2016/092985号 甲第3号証:特開2017-118815号公報 甲第4号証:国際公開第2018/030381号 甲第5号証:特開2014-183702号公報 甲第6号証:特開平11-252987号公報 甲第7号証:特開2003-244966号公報 なお、以下において、上記甲第1号証ないし甲第7号証を、単に「甲1」ないし「甲7」という場合がある。 第3 当審取消理由の概要 1 当審取消理由1 令和5年6月6日付けで当審が通知した取消理由(以下、「当審取消理由1」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1-1(新規性) 本件特許の特許請求の範囲の請求項9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第3号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由1-2(進歩性) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、また、同請求項6ないし9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び6ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 当審取消理由2 令和5年10月10日付けで当審が通知した取消理由(以下、「当審取消理由2」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由2-1(明確性要件) 本件特許の特許請求の範囲の請求項6ないし9に係る発明は、以下の点にいて明確ではないから、請求項6ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。 ア 請求項6には、「前記スイッチ指令生成部」と記載されているが、これ以前に「スイッチ指令生成部」は記載されていないので、「前記スイッチ指令生成部」が指し示すものが何であるのか不明である。 仮に、請求項6に記載の「前記スイッチ指令生成部」が「スイッチ指令生成部」の誤記であるとしても、請求項6に記載の「前記異常時制御部は、前記短絡制御を行うための上下アームの前記スイッチのスイッチング指令を生成して出力」することと、請求項6に記載の「前記スイッチ指令生成部から出力された上アームの前記スイッチのスイッチング指令」、並びに、請求項6に記載の「前記スイッチ指令生成部から出力された下アームの前記スイッチのスイッチング指令」との関係も不明である。 また、請求項7に記載の「スイッチ指令生成部(72)」と、請求項7が引用する請求項6に記載の「スイッチ指令生成部」及び「異常時制御部」による「スイッチング指令」との関係も不明である。 そして、「スイッチ指令生成部」がどのようなときに「スイッチング指令」を出力するのか、及び、「スイッチ指令生成部」と「異常時制御部」による「スイッチング指令」との関係が明確ではないため、請求項6ないし9に係る発明は、「短絡制御」の際に、「スイッチ指令生成部」及び「異常時制御部」の両者が出力する「スイッチング指令」が競合する場合を含むことが本願出願時における技術常識を参酌すれば明らかであるところ、請求項6ないし9に係る発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ない。 イ 請求項6に記載の「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステム」(構成要件A1)によれば、「システム」には、「電力変換器(15)」が含まれている。 したがって、請求項6に記載の「前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部」において「異常判定部」が異常判定の対象とする「前記システム」には、「電力変換器15」も含まれるものと認められる。 一方、請求項6を引用する請求項7に記載の「前記スイッチ指令生成部の異常 が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定する安全状態判定部(73)」(構成要件N)によれば、「安全状態判定部(73)」は、「スイッチ指令生成部(72)」を異常判定の対象とするものである。 ここで、請求項6に記載の「電力変換器(15)」と、請求項6に記載の「スイッチ指令生成部」及び請求項7に記載の「スイッチ指令生成部(72)との関係が具体的に特定されていないが、「スイッチ指令生成部」及び「スイッチ指令生成部(72)」が、「電力変換器(15)」に含まれる態様を排除していない。(実際、本件特許の図面【図1】及び【図2】を参酌すれば、「電力変換器(15)」が「制御回路(50)」を含み、「制御回路(50)」が「メインMCU(72)」(スイッチ指令生成部)を含んでいる。) そうすると、請求項7に係る発明は、「スイッチ指令生成部」又は「スイッチ指令生成部(72)」の異常を、「異常判定部」と「安全状態判定部(73)」との両者が行い、当該異常に対する処理を、「異常時制御部(76,83)」と「安全状態判定部」の両者が行う態様を含んでいる。 しかしながら、同一箇所に対する異常の判定及び当該異常に対する処理を、2つの手段が行うことにどのような技術的意義があるのか、本件特許明細書及び図面の記載並びに本件特許出願時における技術常識を参酌しても不明である。 よって、請求項7及び8に係る発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ないから、明確ではない。 (2)取消理由2-2(サポート要件) 本件特許の特許請求の範囲の請求項6ないし9に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項6ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。 請求項6ないし9に係る発明は、本件特許明細書及び図面の記載を参酌すれば、上記「1 理由1(明確性要件)について」で指摘した記載不備と相まって、「システム」に含まれる「スイッチ指令生成部(メインMCU72)における異常の発生の有無を「異常判定部」としての「スイッチ指令生成部」(メインMCU72)自らが判定し、異常が発生している場合、「スイッチ指令生成部」(メインMCU72)に接続されている「第1ロジック回路76」及び「OR回路83」のみから構成される「異常時制御部(76,83)」により短絡制御を行う態様を含むところ、当該態様は、上記課題解決手段を明確に反映しているとはいえず、また、異常状態にある手段が自らにおける異常の発生の有無を正しく判定できないこと、及び、異常状態にある手段と接続されている論理回路のみにより当該異常に対応することができないことは本願出願時における技術常識であるから、請求項6ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明の記載若しくは示唆又は本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 したがって、請求項6ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 第4 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正された箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項6に「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、を備え、前記異常時制御部は、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定し、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う電力変換器の制御回路」と記載されているのを、「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、を備え、前記異常時制御部は、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定し、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う電力変換器の制御回路」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に「前記電力変換器の制御を行うためのスイッチング指令を生成して出力するスイッチ指令生成部(72)と、前記スイッチング指令に基づいて、上下アームの前記スイッチの駆動制御を行うスイッチ駆動部(92a,93a)と、前記スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定する安全状態判定部(73)と、を備え、前記安全状態判定部は、前記短絡制御の実行中において前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う請求項6に記載の電力変換器の制御回路。」と記載されているのを、「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、前記電力変換器の制御を行うためのスイッチング指令を生成して出力するスイッチ指令生成部(72)を含む第1状態制御部(72,76)と、前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、上アームの前記スイッチの駆動制御を行う上アーム駆動部(92a)と、前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、下アームの前記スイッチの駆動制御を行う下アーム駆動部(93a)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記上アーム駆動部に電力を出力する上アーム駆動電源(90)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記下アーム駆動部に電力を出力する下アーム駆動電源(91)と、を備え、前記上アーム駆動部は、前記上アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、前記下アーム駆動部は、前記下アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、前記スイッチ指令生成部の異常が発生しているか否かを判定する第2状態制御部(73,77)を備え、前記第2状態制御部は、前記スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御、又は前記第2電源及び前記第3電源の少なくも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御のいずれであるかを判定し、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記短絡制御の実行中において前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う電力変換器の制御回路。」に訂正する。 また、請求項7の記載を直接的に引用する請求項8についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9に「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、を備え、前記第3電源は、前記第1電源から電力が供給されることにより電力を生成する電力変換器の制御回路」と記載されているのを、「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、を備え、前記第3電源は、前記第1電源から電力が供給されることにより電力を生成する電力変換器の制御回路」に訂正する。 (4)一群の請求項 本件訂正請求は、一群の請求項〔6-8〕と、請求項9とに対して請求されたものである。 なお、特許権者は、訂正後の請求項7、8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、請求項6に、「制御回路」が備える要素として「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0019】、【0022】ないし【0024】、【0042】ないし【0044】及び願書に添付した図面(以下、「本件図面」という。)の【図2】に記載した事項の範囲内のものである。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記ア及びイから明らかなように、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内で、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリー、対象又は目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項1に係る請求項6及び7は、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の要件(独立特許要件)は課されない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2のうち、訂正前の請求項7の記載が訂正前の請求項6の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項6の記載を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 訂正事項2のうち、「スイッチ指令生成部(72)」を「スイッチ指令生成部を含む第1状態制御部(72,76)」とする訂正は、訂正前の請求項7に係る発明に、発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2のうち、「前記スイッチング指令に基づいて、上下アームの前記スイッチの駆動制御を行うスイッチ駆動部(92a,93a)」を「前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、上アームの前記スイッチの駆動制御を行う上アーム駆動部(92a)と、前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、下アームの前記スイッチの駆動制御を行う下アーム駆動部(93a)」とする訂正は、訂正前の請求項2に記載の「スイッチ駆動部(92a,93a)」を「上アーム駆動部(92a)」と「下アーム駆動部(93a)」とに下位概念化するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2のうち、「前記スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定する安全状態判定部(73)と、を備え、前記安全状態判定部は、前記短絡制御の実行中において前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う」を、「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記上アーム駆動部に電力を出力する上アーム駆動電源(90)と、前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記下アーム駆動部に電力を出力する下アーム駆動電源(91)と、を備え、前記上アーム駆動部は、前記上アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、前記下アーム駆動部は、前記下アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、前記スイッチ指令生成部の異常が発生しているか否かを判定する第2状態制御部(73,77)を備え、前記第2状態制御部は、前記スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御、又は前記第2電源及び前記第3電源の少なくも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御のいずれであるかを判定し、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記短絡制御の実行中において前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う」とする訂正は、「上アーム駆動電源(90)」、「下アーム駆動電源(91)」及び「スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合」における制御を実施する主体が、訂正前の請求項7が引用する訂正前の請求項6に記載された「異常時制御部」ではなく、「安全状態判定部(73)」を包含する「第2状態制御部(73,77)」であることを明確にするとともに具体的な制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、同3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び同4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、本件明細書の【0019】、【0022】ないし【0024】、【0042】ないし【0044】、【0047】ないし【0054】、【0118】ないし【0124】及び本件図面の【図2】ないし【図4】に記載した事項の範囲内のものである。 よって、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記ア及びイから明らかなように、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内で、特許請求の範囲を減縮し、明瞭な記載とするとともに、独立形式の請求項へ改めるものであり、カテゴリー、対象又は目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項2に係る請求項7及び8は、特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の要件(独立特許要件)は課されない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項9に「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)」及び「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、本件明細書の【0019】、【0022】ないし【0024】、【0042】ないし【0044】及び本件図面の【図2】に記載した事項の範囲内のものである。 よって、訂正事項3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記ア及びイから明らかなように、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内で、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリー、対象又は目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項3に係る請求項9は、特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の要件(独立特許要件)は課されない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6-8〕、9について訂正することを認める。 第5 本件特許発明 本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 なお、本件特許発明1、2及び6ないし9に係る分説は、一部、特許異議申立書13~17ページに記載されたものを援用する。また、分説記号A、B…が付された構成を、「構成要件A」、「構成要件B」…などということとする。 1 本件特許発明1 A 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 B 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 C 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 D 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、 E 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、 F 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、 A を備える電力変換器の制御回路。 2 本件特許発明2 H 前記システムに異常が発生していない場合、前記第2電源及び前記第3電源のうち前記第2電源から電力供給され、前記システムに異常が発生した場合、前記第2電源及び前記第3電源のうち前記第3電源から電力供給されるように構成されている I 請求項1に記載の電力変換器の制御回路。 3 本件特許発明3 前記システムの異常として前記第2電源から前記制御回路に給電できなくなる異常が発生したと判定された場合において前記回転電機の制御量の制御を継続するとき、該異常が発生していない場合よりも前記スイッチのスイッチング周波数を低下させる請求項2に記載の電力変換器の制御回路。 4 本件特許発明4 前記異常時制御部としての第1状態制御部(72,76)及び第2状態制御部(73,77)を備え、 前記第2電源及び前記第3電源が前記第1状態制御部及び前記第2状態制御部の電力供給源とされている請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換器の制御回路。 5 本件特許発明5 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、を備え、 前記異常時制御部としての第1状態制御部(72,76)及び第2状態制御部(73,77)を備え、 前記第2電源及び前記第3電源が前記第1状態制御部及び前記第2状態制御部の電力供給源とされ、 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源として電力を生成する第1電力生成部(65)と、 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源として電力を生成する第2電力生成部(67)と、を備え、 前記第1状態制御部は、前記第1電力生成部により生成された電力が供給されることにより動作可能に構成され、 前記第2状態制御部は、前記第2電力生成部により生成された電力が供給されることにより動作可能に構成されている電力変換器の制御回路。 6 本件特許発明6 6A 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 6B 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 6C 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 6D 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、 6E 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、 6F 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、 6A を備え、 J 前記異常時制御部は、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるかを判定し、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う 6A 電力変換器の制御回路。 7 本件特許発明7 7A 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 7B 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 G 前記電力変換器の制御を行うためのスイッチング指令を生成して出力するスイッチ指令生成部(72)を含む第1状態制御部(72,76)と、 H 前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、上アームの前記スイッチの駆動制御を行う上アーム駆動部(92a)と、 I 前記スイッチ指令生成部により生成された前記スイッチング指令に基づいて、下アームの前記スイッチの駆動制御を行う下アーム駆動部(93a)と、 7E 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記上アーム駆動部に電力を出力する上アーム駆動電源(90)と、 7F 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記下アーム駆動部に電力を出力する下アーム駆動電源(91)と、 7A を備え、 H-1 前記上アーム駆動部は、前記上アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、 I-1 前記下アーム駆動部は、前記下アーム駆動電源の出力電力が供給されることにより動作可能に構成されており、 J 前記スイッチ指令生成部の異常が発生しているか否かを判定する第2状態制御部(73,77)を備え、 J 前記第2状態制御部は、 J-1 前記スイッチ指令生成部の異常が発生したと判定した場合、前記電力変換器を安全状態にできる制御が、上下アームの前記スイッチをオフ状態にするシャットダウン制御、又は前記第2電源及び前記第3電源の少なくも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御のいずれであるかを判定し、 J-2 前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記短絡制御であると判定した場合に前記短絡制御を行い、その後、前記短絡制御の実行中において前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御であると判定した場合、前記短絡制御の実行を停止して前記シャットダウン制御を行う 7A 電力変換器の制御回路。 8 本件特許発明8 K 前記電力変換器を安全状態にできる制御が前記シャットダウン制御又は前記短絡制御のいずれであるか否かは、前記巻線で発生する逆起電圧情報に基づいて判定される 8A 請求項7に記載の電力変換器の制御回路。 9 本件特許発明9 9A 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 9B 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 9C 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 9D 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、 9E 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、 9F 前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、 9A を備え、 L 前記第3電源は、前記第1電源から電力が供給されることにより電力を生成する 9A 電力変換器の制御回路。 第6 甲号証の記載 1 甲第1号証について (1)甲第1号証の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) ア 「【0001】 本発明は、回転電機の各相の巻線に電気的に接続された上下アームのスイッチを有する電力変換器の制御回路に関する。」 イ 「【0005】 本発明は、電力変換器及び回転電機の少なくとも一方に異常が発生したと判定された場合において回生が実施されることを抑制できる電力変換器の制御回路を提供することを主たる目的とする。」 ウ 「【0009】 <第1実施形態> 以下、本発明に係る制御回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御回路は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、制御回路及びインバータを備える制御システムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。 【0010】 図1に示すように、制御システムは、回転電機10、インバータ20及び制御回路30を備えている。回転電機10は、例えば、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石埋込型のものが用いられている。 【0011】 回転電機10の各相巻線11には、インバータ20を介して、直流電源としての蓄電池21が接続されている。蓄電池21の出力電圧は、例えば百V以上である。なお、インバータ20の入力側には、インバータ20の入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ22が設けられている。 【0012】 インバータ20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上、下アームスイッチSWH、SWLの接続点には、巻線11の第1端が接続されている。各相巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11は、電気角で互いに120°ずれている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH、SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、IGBTが用いられている。上、下アームスイッチSWH、SWLには、フリーホイールダイオードである上、下アームダイオードDH、DLが逆並列に接続されている。」 エ 「【0015】 制御回路30は、回転電機10の制御量をその目標値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対するスイッチング指令を生成する図2に示すマイコン50を備えている。制御量は、例えばトルクである。マイコン50は、指令生成部に相当し、各センサ23a~23cの出力信号に基づいて、スイッチング指令を生成する。なお、マイコン50は、各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとが交互にオンされるようなスイッチング指令を生成する。 【0016】 マイコン50は、電圧センサ23aから出力された電圧信号Vsに基づいて、平滑コンデンサ22の端子電圧を電源電圧VDCとして検出する。マイコン50は、相電流センサ23bから出力された電流信号に基づいて、各相電流のうち少なくとも2相分の電流を検出する。マイコン50は、角度センサ23cから出力された角度信号に基づいて、回転電機10の電気角θeを検出する。マイコン50は、検出した電気角θeに基づいて、回転電機10の電気角速度ωeを算出す る。」 オ 「【0017】 図2を用いて、制御回路30の構成について説明する。 【0018】 制御回路30は、マイコン50に加え、電源部に相当する低圧電源回路40と、複合IC60とを備えている。複合IC60は、電源制御部61、電源監視部62及び電源生成部63を備えている。電源制御部61は、低圧電源回路40を制御する。電源監視部62は、所定の条件が成立していると判定した場合、マイコン50に対してその動作を停止させるリセット信号を出力する。リセット信号がマイコン50に入力されると、マイコン50の動作が停止され、スイッチング指令の生成及び出力等が停止される。電源生成部63は、低圧直流電源24から入力された電圧を複合IC60内で使用する電圧レベルに変換して出力する。 【0019】 低圧電源回路40は、低圧直流電源24の出力電圧を降圧する機能を有している。低圧直流電源24の出力電圧VBは、蓄電池21の出力電圧よりも低い。なお、制御回路30が提供する機能の少なくとも一部は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。」 カ 「【0024】 制御回路30は、第1絶縁伝達部80、駆動回路部90、絶縁電源91、異常検知部92及び第2絶縁伝達部93を備えている。本実施形態において、第1絶縁伝達部80及び第2絶縁伝達部93は、フォトカプラにて構成されている。絶縁電源91は、低圧直流電源24を電力供給源として、駆動回路部90を構成する駆動回路に電力を供給する。駆動回路は、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対応して備えられ、絶縁電源91から給電されて駆動する。本実施形態では、各スイッチSWH、SWLに対応した駆動回路が合わせて6つ設けられている。 【0025】 複合IC60は、スイッチ制御部70、状態判定部64及び過電圧検知部65を備えている。スイッチ制御部70は、マイコン50から出力されたスイッチング指令を第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達させる。」 キ 「【0027】 図3に、スイッチ制御部70と、第1絶縁伝達部80のうちフォトダイオード側の構成とを示す。スイッチ制御部70は、3相分の上アームスイッチSWHに対応する上アーム制御部71H及びハイスイッチ72Hと、3相分の下アームスイッチSWLに対応する下アーム制御部71L及びロースイッチ72Lとを備えている。本実施形態において、ハイスイッチ72H及びロースイッチ72Lは、NチャネルMOSFETである。第1絶縁伝達部80は、3相分の上アームスイッチSWHに対応する上アームフォトダイオード82H及び上アーム抵抗体81Hと、3相分の下アームスイッチSWLに対応する下アームフォトダイオード82L及び下アーム抵抗体81Lとを備えている。」 ク 「【0031】 上アーム制御部71Hには、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令が入力される。上アーム制御部71Hは、強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、マイコン50からのスイッチング指令に従ってハイスイッチ72Hをオン又はオフにする。上アーム制御部71Hは、強制スイッチ指令がシャットダウン指令又はASC(Active Short Circuit)指令であると判定した場合、マイコン50からのスイッチング指令が入力されているか否かにかかわらず、ハイスイッチ72Hをオフに維持する。これにより、第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90には、オフ指令が伝達される。その結果、上アームスイッチSWHがオフされる。」 ケ 「【0033】 下アーム制御部71Lには、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令が入力される。下アーム制御部71Lは、強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、マイコン50からのスイッチング指令に従ってロースイッチ72Lをオン又はオフにする。下アーム制御部71Lは、強制スイッチ指令がシャットダウン指令であると判定した場合、スイッチング指令が入力されているか否かにかかわらず、ロースイッチ72Lをオフに維持する。これにより、第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90には、オフ指令が伝達される。その結果、下アームスイッチSWLがオフされる。下アーム制御部71Lは、強制スイッチ指令がASC指令であると判定した場合、スイッチング指令が入力されているか否かにかかわらず、ロースイッチ72Lをオンに維持する。これにより、第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90には、オン指令が伝達される。その結果、下アームスイッチSWLがオンされる。」 コ 「【0035】 先の図2の説明に戻り、異常検知部92は、上、下アームスイッチSWH、SWL及び駆動回路部90の少なくとも1つに異常(以下、スイッチ側異常)が生じたと判定した場合、第2絶縁伝達部93を介して状態判定部64に異常信号を伝達する。なお、上、下アームスイッチSWH、SWLの異常には、電流が過電流閾値を超える過電流異常、温度が温度閾値を超える過熱異常、及びスイッチのエミッタ及びコレクタ間電圧Vceが所定範囲からはずれる異常の少なくとも一方が含まれる。また、駆動回路部90の異常には、絶縁電源91から駆動回路部 90へと電力が出力されない異常、絶縁電源91から駆動回路部90への出力電圧が規定電圧を低圧閾値を下回る異常、絶縁電源91から駆動回路部90への出力電圧が過電圧閾値を超える異常、及び絶縁電源91から駆動回路部90への出力電圧の変動量が規定値を超える異常のうち、少なくとも1つが含まれる。」 サ 「【0037】 複合IC60は、安全状態判定部66を備えている。安全状態判定部66は、電圧センサ23aの電圧信号Vsに基づいて電源電圧VDCを検出し、検出した電源電圧VDCに基づいて安全状態を判定する。 【0038】 図4に、安全状態判定部66により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。 【0039】 ステップS10では、電圧信号Vsに基づいて電源電圧VDCを検出し、検出した電源電圧VDCが判定電圧Vgmthを超えているか否かを判定する。この処理は、回生が実施されるか否かを判定するための処理である。ステップS10の処理が、電源電圧検出部及び電圧判定部に相当する。本実施形態において、判定電圧Vgmthは、正常な蓄電池21の端子電圧が取り得る範囲の最小値、又はこの最小値よりも大きくてかつこの範囲の最大値未満の値に設定されている。 【0040】 ステップS10において否定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧以下となって回生が実施されないと判定し、ステップS11に進む。ステップS11では、後述する図5のステップS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をシャットダウン指令にすることが安全状態であると判定する。 【0041】 一方、ステップS10において肯定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧よりも高くなって回生が実施されると判定し、ステップS12に進む。ステップS12では、ステップS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であると判定する。ステップS11、S12における安全状態判定部66による判定結果は、状態判定部64に入力される。 【0042】 続いて、図5を用いて、状態判定部64により実行される処理について説明する。この処理は、例えば、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。 【0043】 ステップS20では、異常検知部92からのスイッチ側異常の通知、マイコン50からのスイッチ停止指令の入力、及び過電圧検知部65からの過電圧異常の通知のうち、少なくとも1つの事象が生じたか否かを判定する。なお、スイッチ側異常が生じたか否かは、第2絶縁伝達部93を介して異常信号が入力されたか否かで判定されればよい。また、ステップS20の処理が異常判定部に相当する。 【0044】 ステップS20において否定判定した場合には、ステップS21に進み、強制スイッチ指令をスイッチ制御部70に対して出力しない。これにより、マイコン50から出力されたスイッチング指令に基づく上、下アームスイッチSWH、SWLのスイッチング制御の継続が許可される。 【0045】 ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であるとの判定結果が安全状態判定部66から入力されているとの条件と、マイコン50からASC無効化指令が入力されていないとの条件とが成立しているか否かを判定する。ASC無効化指令については、後に詳述する。 【0046】 ステップS22において否定判定、すなわち、シャットダウン指令にすることが安全状態であるとの判定結果が入力されているとの条件、及びASC無効化指令が入力されているとの条件のうち、少なくとも一方の条件が成立していると判定した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、強制スイッチ指令としてのシャットダウン指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力する。これにより、3相全ての上、下アームスイッチSWH、SWLをオフするシャットダウン制御が実施される。 【0047】 ステップS22において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、強制スイッチ指令としてのASC指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力する。これにより、3相分の上アームスイッチSWHをオフし、3相分の下アームスイッチSWLをオンする全相短絡制御(以下、ASC制御)が実施される。ステップS22~S24の処理が異常時制御部に相当する。」 シ 「【0123】 ・ASC制御としては、全相の下アームスイッチSWLに代えて全相の上アームスイッチSWHをオンし、全相の下アームスイッチSWLをオフする制御であってもよい。」 ス 「【図1】 [図:0001411278000001.jpg] 」 セ 「【図2】 [図:0001411278000002.jpg] 」 ソ 「【図3】 [図:0001411278000003.jpg] 」 タ 「【図4】 [図:0001411278000004.jpg] 」 チ 「【図5】 [図:0001411278000005.jpg] 」 ツ 「【0058】 <第2実施形態> 以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図8及び図9に示すように、マイコン50のスイッチング指令を伝達するための構成を変更する。なお、図8及び図9において、先の図2及び図3に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。 【0059】 図9に示すように、スイッチ制御部70は、アーム制御部73、上アームSD部74、下アームSD部75及び下アームASC部76を備えている。アーム制御部73、上アームSD部74、下アームSD部75及び下アームASC部76は、低圧電源回路40の第2出力電圧V2rが供給されることにより駆動される。第1絶縁伝達部80は、第1ロースイッチ72Laと、第1ロースイッチ72Laに並列接続された第2ロースイッチ72Lbとを備えている。本実施形態において、各ロースイッチ72La,72Lbは、NチャネルMOSFETである。また、第1絶縁伝達部80は、第1切替スイッチ83H、上アーム駆動部84H、第2切替スイッチ83L及び下アーム駆動部84Lを備えている。 【0060】 アーム制御部73は、状態判定部64から強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、上アームSD部74及び下アームSD部75に対してオン指令を出力し、下アームASC部76に対してオフ指令を出力する。上アームSD部74は、入力されたオン指令を端子Trを介して上アーム駆動部84Hに出力する。下アームSD部75は、入力されたオン指令を端子Trを介して下アーム駆動部84Lに出力する。下アームASC部76は、入力されたオフ指令を端子Trを介して第2ロースイッチ72Lbのゲートに出力する。第1ロースイッチ72Laのゲートには、マイコン50のスイッチング指令が入力される。 【0061】 上アーム駆動部84Hは、オン指令が入力されていると判定した場合、第1切替スイッチ83Hをオンする。これにより、上アームフォトダイオード82Hに通電され、マイコン50のスイッチング指令が第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達される。 【0062】 下アーム駆動部84Lは、下アームSD部75からオン指令が入力されていると判定した場合、第2切替スイッチ83Lをオンする。これにより、下アームフォトダイオード82Lに通電され、マイコン50のスイッチング指令が第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達される。 【0063】 一方、アーム制御部73は、状態判定部64からの強制スイッチ指令がシャットダウン指令であると判定した場合、上アームSD部74、下アームSD部75及び下アームASC部76に対してオフ指令を出力する。上アーム駆動部84Hは、オフ指令が入力されていると判定した場合、第1切替スイッチ83Hをオフする。これにより、上アームフォトダイオード82Hへの通電が停止され、上アームスイッチSWHがオフされる。下アーム駆動部84Lは、オフ指令が入力されていると判定した場合、第2切替スイッチ83Lをオフする。これにより、下アームフォトダイオード82Lへの通電が停止され、下アームスイッチSWLがオフされる。その結果、シャットダウン制御が行われる。 【0064】 一方、アーム制御部73は、状態判定部64からの強制スイッチ指令がASC指令であると判定した場合、上アームSD部74に対してオフ指令を出力し、下アームSD部75及び下アームASC部76に対してオン指令を出力する。その結果、第2ロースイッチ72Lbがオンされ、ASC制御が行われる。 【0065】 図9に示す構成によれば、複合IC60と第1絶縁伝達部80との間の信号数を3つに減らすことができ、複合IC60の端子Trを3つに減らすことができる。」 テ 「【図8】 [図:0001411278000006.jpg] 」 ト 「【図9】 [図:0001411278000007.jpg] 」 ナ 「【0092】 <第5実施形態> 以下、第5実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図16に示すように、制御回路30は、監視部に相当する監視マイコン100を備えている。図16において、先の図8に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。本実施形態では、マイコン50を制御マイコン50と称すこととする。また、制御マイコン50から出力されるスイッチ停止指令を第1スイッチ停止指令と称すこととする。 【0093】 監視マイコン100は、制御マイコン50に異常が生じているか否かを監視する機能を有している。なお、この監視手法は、例えば、ウォッチドックタイマを用いる方法等、周知の方法が用いられればよい。 【0094】 監視マイコン100には、低圧電源回路40の第2出力電圧V2rが供給されている。また、監視マイコン100には、角度センサ23cの角度信号及び電圧センサ23aの電圧信号Vsが入力される。 【0095】 図17に、監視マイコン100により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。 【0096】 ステップS30では、制御マイコン50に異常が生じているか否かを判定する。 【0097】 ステップS30において異常が生じていると判定した場合には、ステップS31に進み、ASC制御の実行が必要な状況であるか否かを判定する。具体的には例えば、電圧センサ23aの電圧信号に基づく図4のステップS10の手法、又は電圧信号及び角度センサ23cの角度信号に基づく図11のステップS13の手法を用いて、巻線11に逆起電圧が発生する場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧よりも高くなっているか否かを判定する。 【0098】 なお、制御システムに入力電流センサ23dが備えられる場合、図15のステップS15の手法を用いてもよい。また、上述したいくつかの手法のうち、少なくとも2つの手法を組み合わせた手法を用いてもよい。 【0099】 ステップS31においてASC制御の実行が必要な状況でないと判定した場合には、ステップS33に進み、状態判定部64に対して第2スイッチ停止指令を出力する。第2スイッチ停止指令は、第1スイッチ停止指令と同じ目的で出力される信号である。 【0100】 ステップS31においてASC制御の実行が必要な状況であると判定した場合には、ステップS32に進み、安全状態判定部66に対してASC指令を出力する。安全状態判定部66は、入力されたASC指令を状態判定部64に対して出力する。ここで、ASC指令は、信号固着の問題に対処すべく、連続するパルス信号であってもよい。 【0101】 以上説明した本実施形態によれば、制御マイコン50に異常が発生した場合、監視マイコン100から安全状態判定部66及び状態判定部64を介してASC制御の実行を指示することができる。」 ニ 「【図16】 [図:0001411278000008.jpg] 」 ニ 「【図17】 [図:0001411278000009.jpg] 」 (2)甲1発明 上記(1)アないしタの特に下線部に着目すれば、甲1には、第1実施形態に係る次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「 回転電機の各相の巻線に電気的に接続された上下アームのスイッチを有する電力変換器の制御回路であって、 制御システムは、回転電機10、インバータ20及び制御回路30を備え、 回転電機10の各相巻線11には、インバータ20を介して、蓄電池21が接続され、 インバータ20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備え、各相において、上、下アームスイッチSWH、SWLの接続点には、巻線11の第1端が接続され、 制御回路30は、回転電機10の制御量をその目標値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対するスイッチング指令を生成するマイコン50を備え、 制御回路30は、マイコン50に加え、電源部に相当する低圧電源回路40と、複合IC60とを備え、 複合IC60は、電源制御部61、電源監視部62及び電源生成部63を備え、 電源生成部63は、低圧直流電源24から入力された電圧を複合IC60内で使用する電圧レベルに変換して出力し、 低圧電源回路40は、低圧直流電源24の出力電圧を降圧する機能を有し、 制御回路30は、第1絶縁伝達部80、駆動回路部90、絶縁電源91、異常検知部92及び第2絶縁伝達部93を備え、 絶縁電源91は、低圧直流電源24を電力供給源として、駆動回路部90を構成する駆動回路に電力を供給し、 駆動回路部90は、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対応して備えられ、絶縁電源91から給電されて駆動し、 複合IC60は、スイッチ制御部70、状態判定部64及び過電圧検知部65を備え、 スイッチ制御部70は、マイコン50から出力されたスイッチング指令を第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達させ、 スイッチ制御部70は、3相分の上アームスイッチSWHに対応する上アーム制御部71H及びハイスイッチ72Hと、3相分の下アームスイッチSWLに対応する下アーム制御部71L及びロースイッチ72Lとを備え、 上アーム制御部71Hは、強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、マイコン50からのスイッチング指令に従ってハイスイッチ72Hをオン又はオフにし、 下アーム制御部71Lは、強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、マイコン50からのスイッチング指令に従ってロースイッチ72Lをオン又はオフにし、 異常検知部92は、上、下アームスイッチSWH、SWL及び駆動回路部90の少なくとも1つに異常(以下、スイッチ側異常)が生じたと判定した場合、第2絶縁伝達部93を介して状態判定部64に異常信号を伝達し、 複合IC60は、安全状態判定部66を備え、安全状態判定部66により実行される処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行され、 ステップS10では、電源電圧VDCが判定電圧Vgmthを超えているか否かを判定し、この処理は、回生が実施されるか否かを判定するための処理であり、 ステップS10において否定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧以下となって回生が実施されないと判定し、ステップS11に進み、ステップS11では、ステップS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をシャットダウン指令にすることが安全状態であると判定し、 一方、ステップS10において肯定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧よりも高くなって回生が実施されると判定し、ステップS12に進み、ステップS12では、ステプS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であると判定し、 ステップS11、S12における安全状態判定部66による判定結果は、状態判定部64に入力され、 状態判定部64により実行される処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行され、 ステップS20では、異常検知部92からのスイッチ側異常の通知、マイコン50からのスイッチ停止指令の入力、及び過電圧検知部65からの過電圧異常の通知のうち、少なくとも1つの事象が生じたか否かを判定し、 ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であるとの判定結果が安全状態判定部66から入力されているとの条件と、マイコン50からASC無効化指令が入力されていないとの条件とが成立しているか否かを判定し、 ステップS22において否定判定、すなわち、シャットダウン指令にすることが安全状態であるとの判定結果が入力されているとの条件、及びASC無効化指令が入力されているとの条件のうち、少なくとも一方の条件が成立していると判定した場合には、ステップS23に進み、ステップS23では、強制スイッチ指令としてのシャットダウン指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力し、3相全ての上、下アームスイッチSWH、SWLをオフするシャットダウン制御が実施され、 ステップS22において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、強制スイッチ指令としてのASC指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力し、3相分の上アームスイッチSWHをオフし、3相分の下アームスイッチSWLをオンする全相短絡制御(以下、ASC制御)が実施され、 ASC制御としては、全相の下アームスイッチSWLに代えて全相の上アームスイッチSWHをオンし、全相の下アームスイッチSWLをオフする制御であってもよい、 電力変換器の制御回路。」 (3)甲1第5発明 前記(1)ナの【0092】の記載によれば、甲1に記載の第5実施形態は、第2実施形態に「監視マイコン100」を付加し、第2実施形態の「マイコン50」を「制御マイコン50」と言い換えたものである。 また、前記(1)ツの【0058】の記載によれば、第2実施形態の主要部は、【図2】、【図3】すなわち、第1実施形態(甲1発明)と共通している。 そうすると、甲1発明と、前記(1)のツないしヌの特に下線部に着目すれば、甲1には、第5実施形態として次の発明(以下、「甲1第5発明」という。)が記載されていると認められる。 「 回転電機の各相の巻線に電気的に接続された上下アームのスイッチを有する電力変換器の制御回路であって、 制御システムは、回転電機10、インバータ20及び制御回路30を備え、 回転電機10の各相巻線11には、インバータ20を介して、蓄電池21が接続され、 インバータ20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備え、各相において、上、下アームスイッチSWH、SWLの接続点には、巻線11の第1端が接続され、 制御回路30は、回転電機10の制御量をその目標値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対するスイッチング指令を生成する制御マイコン50を備え、 制御回路30は、制御マイコン50に加え、電源部に相当する低圧電源回路40と、複合IC60と、制御マイコン50に異常が生じているか否かを監視する機能を有している監視マイコン100を備え、 複合IC60は、電源制御部61、電源監視部62及び電源生成部63を備え、 電源生成部63は、低圧直流電源24から入力された電圧を複合IC60内で使用する電圧レベルに変換して出力し、 低圧電源回路40は、低圧直流電源24の出力電圧を降圧する機能を有し、 制御回路30は、第1絶縁伝達部80、駆動回路部90、絶縁電源91、異常検知部92及び第2絶縁伝達部93を備え、 絶縁電源91は、低圧直流電源24を電力供給源として、駆動回路部90を構成する駆動回路に電力を供給し、 駆動回路部90は、インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対応して備えられ、絶縁電源91から給電されて駆動し、 複合IC60は、スイッチ制御部70、状態判定部64及び過電圧検知部65を備え、 スイッチ制御部70は、マイコン50から出力されたスイッチング指令を第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達させ、 スイッチ制御部70は、低圧電源回路40の第2出力電圧V2rが供給されることにより駆動されるアーム制御部73、上アームSD部74、下アームSD部75及び下アームASC部76を備え、 第1絶縁伝達部80は、第1ロースイッチ72Laと、第1ロースイッチ72Laに並列接続された第2ロースイッチ72Lbと、第1切替スイッチ83H、上アーム駆動部84H、第2切替スイッチ83L及び下アーム駆動部84Lを備え、 上アーム駆動部84Hは、オン指令が入力されていると判定した場合、第1切替スイッチ83Hをオンし、これにより、上アームフォトダイオード82Hに通電され、制御マイコン50のスイッチング指令が第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達され、 下アーム駆動部84Lは、下アームSD部75からオン指令が入力されていると判定した場合、第2切替スイッチ83Lをオンし、これにより、下アームフォトダイオード82Lに通電され、制御マイコン50のスイッチング指令が第1絶縁伝達部80を介して駆動回路部90に伝達され、 アーム制御部73は、状態判定部64から強制スイッチ指令が入力されていないと判定した場合、上アームSD部74及び下アームSD部75に対してオン指令を出力し、下アームASC部76に対してオフ指令を出力し、 一方、アーム制御部73は、状態判定部64からの強制スイッチ指令がシャットダウン指令であると判定した場合、上アームSD部74、下アームSD部75及び下アームASC部76に対してオフ指令を出力し、 一方、アーム制御部73は、状態判定部64からの強制スイッチ指令がASC指令であると判定した場合、上アームSD部74に対してオフ指令を出力し、下アームSD部75及び下アームASC部76に対してオン指令を出力し、 監視マイコン100には、低圧電源回路40の第2出力電圧V2rが供給され、 監視マイコン100により実行される処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行され、 ステップS30では、制御マイコン50に異常が生じているか否かを判定し、 ステップS30において異常が生じていると判定した場合には、ステップS31に進み、ASC制御の実行が必要な状況であるか否かを判定し、例えば、巻線11に逆起電圧が発生する場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧よりも高くなっているか否かを判定し、 ステップS31においてASC制御の実行が必要な状況でないと判定した場合には、ステップS33に進み、状態判定部64に対して第2スイッチ停止指令を出力し、 ステップS31においてASC制御の実行が必要な状況であると判定した場合には、ステップS32に進み、安全状態判定部66に対してASC指令を出力し、安全状態判定部66は、入力されたASC指令を状態判定部64に対して出力し、 異常検知部92は、上、下アームスイッチSWH、SWL及び駆動回路部90の少なくとも1つに異常(以下、スイッチ側異常)が生じたと判定した場合、第2絶縁伝達部93を介して状態判定部64に異常信号を伝達し、 複合IC60は、安全状態判定部66を備え、安全状態判定部66により実行される処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行され、 ステップS10では、電源電圧VDCが判定電圧Vgmthを超えているか否かを判定し、この処理は、回生が実施されるか否かを判定するための処理であり、 ステップS10において否定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧以下となって回生が実施されないと判定し、ステップS11に進み、ステップS11では、ステップS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をシャットダウン指令にすることが安全状態であると判定し、 一方、ステップS10において肯定判定した場合には、逆起電圧が発生した場合における巻線11の線間電圧が蓄電池21の端子電圧よりも高くなって回生が実施されると判定し、ステップS12に進み、ステップS12では、ステプS20において異常が発生していると判定される場合において、状態判定部64から出力される強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であると判定し、 ステップS11、S12における安全状態判定部66による判定結果は、状態判定部64に入力され、 状態判定部64により実行される処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行され、 ステップS20では、異常検知部92からのスイッチ側異常の通知、マイコン50からのスイッチ停止指令の入力、及び過電圧検知部65からの過電圧異常の通知のうち、少なくとも1つの事象が生じたか否かを判定し、 ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であるとの判定結果が安全状態判定部66から入力されているとの条件と、マイコン50からASC無効化指令が入力されていないとの条件とが成立しているか否かを判定し、 ステップS22において否定判定、すなわち、シャットダウン指令にすることが安全状態であるとの判定結果が入力されているとの条件、及びASC無効化指令が入力されているとの条件のうち、少なくとも一方の条件が成立していると判定した場合には、ステップS23に進み、ステップS23では、強制スイッチ指令としてのシャットダウン指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力し、3相全ての上、下アームスイッチSWH、SWLをオフするシャットダウン制御が実施され、 ステップS22において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、強制スイッチ指令としてのASC指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力し、3相分の上アームスイッチSWHをオフし、3相分の下アームスイッチSWLをオンする全相短絡制御(以下、ASC制御)が実施され、 ASC制御としては、全相の下アームスイッチSWLに代えて全相の上アームスイッチSWHをオンし、全相の下アームスイッチSWLをオフする制御であってもよい、 電力変換器の制御回路。」 2 甲第2号証について 甲2には、次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は電力変換装置に関する。」 「[0013] モータージェネレータ192,194は回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置(INV1、INV2)140,142によって制御され、これによりモータージェネレータ192,194の駆動制御が行われる。インバータ装置140,142にはバッテリ(BAT)136が電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との間で電力の授受が行われる。」 「[0015] また、この一実施形態のHEV110では、バッテリ136の電力を用いて第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させ、モータージェネレータ192の動力のみで車両を駆動することができる。さらに、この一実施形態のHEV110では、エンジン120の動力あるいは車輪からの動力により第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを発電ユニットとして作動させ、バッテリ136を充電することができる。」 「[0022] インバータ装置140はインバータ回路12、ドライバ回路基板17、コントローラ回路基板18、バックアップ電源600を備えている。ドライバ回路基板17にはインバータ回路12を駆動するためのドライバ回路21とドライバ回路21に電力を供給するドライバ電源603が設けられている。 [0023] コントローラ回路基板18には上位コントローラ454からの指令に従い、インバータ装置140の制御を行うコントローラ回路604と12V系電源19からの電力供給回路を開閉するスイッチ605、606が設けられている。スイッチ605は常時閉、スイッチ606は常時開タイプの開閉器である。本実施形態では機械的な開閉器を図示しているが、トランジスタやMOSFETを使用した半導体スイッチでも実現可能である。 [0024] バックアップ電源600はバッテリ136および電圧平滑用のキャパシタ500に対して並列に接続され、高電圧電源であるバッテリ136またはキャパシタ500の入力電圧を一次側入力として絶縁かつ降圧された二次側直流電圧を出力する。バックアップ電源600は、例えば絶縁トランスを用いた絶縁型スイッチング電源で構成されている。バックアップ電源600は絶縁降圧型の電源回路であれば、その方式に制約は受けない。 [0025] インバータ回路12は3相ブリッジ構成のパワー半導体素子により構成されており各々2つのパワー半導体素子から成る上下アーム直列回路123U、123V、123WがU相、V相およびW相に対応して設けられている。上下アーム直列回路123U、123V、123Wは、それぞれ正極ラインPと負極ラインNに電気的に接続される。」 「[0027] インバータ回路12に設けられた各パワー半導体素子はドライバ回路21によって駆動制御される。ドライバ回路基板17上には、3相ブリッジ構成の各パワー半導体素子を駆動制御するための6相分のドライバ回路21が設けられている。各ドライバ回路21には絶縁された電源がドライバ電源603によって供給される。詳細は後述するが、ドライバ電源603には12V系電源19から電力が供給される第1のルートと、高電圧電源であるバッテリ136をバックアップ電源600にて絶縁かつ降圧して供給する第2のルートが設けられている。コントローラ回路基板18も同様に12V系電源19からの第1のルートとバックアップ電源600からの第2のルートを備えている。なお、電気自動車用の 場合、バッテリ136は、電圧200V~400Vのバッテリが使用される。」 「[0030] コントローラ回路604は、パワー半導体素子のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ25を備えている。マイクロコンピュータ25は、目標トルク値に基づいてモータージェネレータ192のd軸およびq軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸、q軸の電流指令値と電流センサの検出結果に基づくd軸、q軸の電流値との差分に基づいてd軸、q軸の電圧指令値を演算する。そして、演算されたd軸、q軸の電圧指令値を検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換し、さらに、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号Mとしてドライバ回路21に出力する。 [0031] バックアップ電源600の二次側出力電圧は12V系電源19の電源ラインと、それぞれダイオード601、602を介して接続される。バックアップ電源600の二次側出力電圧はあらかじめ12V系電源19の出力電圧よりも低く設定され、ダイオード601は12V系電源19の出力電圧をカットオフしている。その結果、ドライバ電源603とコントローラ回路604への電力供給は通常12V系電源19から行われ、バックアップ電源600からは行われない。バックアップ電源600の動作電圧は30Vからバッテリ136の最大電圧まで、もしくは30Vからモータージェネレータ192の最大誘起電圧まで動作可能としている。 [0032] 12V系電源19が故障等により喪失し、12V系電源19の出力電圧がバックアップ電源600の二次側出力電圧より低下すると、ダイオード602はカットオフしダイオード601が導通状態となる。このとき、ドライバ電源603とコントローラ回路604の電圧検出回路24及びマイクロコンピュータ25にバックアップ電源600から電力が供給される。 [0033] 電圧検出回路24は、負極ラインNに対する正極ラインPの電圧を検出し、マイクロコンピュータ25へ出力する。マイクロコンピュータ25は、検出された電圧に応じてスイッチ605、606の開閉を制御すると共に、上述したPWM信号を生成する。電圧検出回路24及びマイクロコンピュータ25には、スイッチ605が閉じられた通常の状態では12V系電源19の出力電圧が供給される。電圧検出回路24及びマイクロコンピュータ25は、インバータ装置140を安全に動作または停止させる必要最低限の回路である。12V系電源19が故障等により喪失した場合にも、バックアップ電源600から電源が供給されるので、インバータ装置140を安全に動作または停止させることが可能となり信頼性の高い装置が実現できる。」 3 甲第3号証について (1)甲第3号証の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本開示は、インバータ制御回路に関する。」 「【0005】 そこで、本開示は、専用のマイコンを追加せずに、低圧系電源の異常時にも特定のスイッチング素子をオンさせることができるインバータ制御回路の提供を目的とする。」 「【0012】 モータ駆動システム1は、図1に示すように、高圧バッテリ10、電動車両用インバータ装置12、走行用モータ40、及び、インバータ制御装置50を備える。 【0013】 高圧バッテリ10は、蓄電して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリ10は、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。但し、高圧バッテリ10は、いわゆるマイルドハイブリッド自動車で用いられる、より定格電圧の低いバッテリ(例えば36V)であってもよい。 【0014】 電動車両用インバータ装置12は、平滑コンデンサCと、インバータ30とを含む。 【0015】 平滑コンデンサCは、インバータ30に並列に接続される。平滑コンデンサCは、スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間に接続される。 【0016】 インバータ30は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームは、直列接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2を含み、V相アームは、直列接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4を含み、W相アームは、直列接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。尚、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。尚、インバータ30の高電位側とは、図1のポイントNを低電位側として、図1のポイントP側を指す。 【0017】 走行用モータ40は、3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中点で共通接続されている。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。尚、以下の説明において、「上段」とは、中点M1、M2、M3よりも高電位側を指し、「下段」とは、中点M1、M2、M3よりも低電位側を指す。」 「【0021】 [実施例1] 図2は、実施例1によるインバータ制御装置50の構成の一例を示す図である。図2には、インバータ制御装置50と共に、制御対象であるインバータ30が示されると共に、高圧バッテリ10、電流センサ42、レゾルバ44、及び車両ECU(Electronic Control Unit)60が示されている。図2において、ラインLは、低圧系と高圧系とを区切るラインであり、ラインLよりも高圧バッテリ10側は“高圧系(高圧)”であり、その逆側が“低圧系(低圧)”である。 【0022】 電流センサ42は、走行用モータ40の各相に流れる電流を検出する。レゾルバ44は、走行用モータ40の回転角度を検出する。車両ECU60は、例えば要求駆動力に応じた制御目標値をインバータ制御装置50に与える。インバータ制御装置50は、制御目標値が実現されるように、電流センサ42及びレゾルバ44からの情報に基づいて、インバータ30を制御する。インバータ30の制御方法は、任意である。例えば、通常時、インバータ制御装置50は、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2を互いに逆相にオン/オフさせ、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4を互いに逆相にオン/オフさせ、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6を互いに逆相にオン/オフさせる。 【0023】 インバータ制御装置50は、図2に示すように、通信回路501と、マイクロコンピューター(マイコン)502とを含む。 【0024】 インバータ制御装置50は、図2に示すように、更に、絶縁電源510~515と、IGBT駆動IC(Integrated Circuit)520~525とを含む。尚、絶縁電源510~515は、例えばトランスを介して高圧側と低圧側とが絶縁され、IGBT駆動IC520~525は、例えばフォットカップラを介して高圧側と低圧側とが絶縁されている。 【0025】 インバータ制御装置50は、図2に示すように、更に、U相上段駆動回路530、U相下段駆動回路531、V相上段駆動回路532、V相下段駆動回路533、W相上段駆動回路534、及びW相下段駆動回路535(以下、これら全体や一部の複数を指すときは、「駆動回路530~535」等と称する)を含む。また、インバータ制御装置50は、図2に示すように、更に、電源起動回路540と、バックアップ電源回路550とを含む。」 「【0028】 マイコン502は、低圧バッテリ8に接続される。尚、低圧バッテリ8は、高圧バッテリ10よりも定格電圧が低いバッテリであり、例えば定格電圧が12Vである。マイコン502には、低圧バッテリ8に起因した低圧系電源(例えばいわゆる+B)に基づいてマイコン電源(例えば電源電圧が5V)を生成するマイコン電源回路503が接続される。マイコン502は、マイコン電源に基づいて動作する。マイコン502は、インバータ30の各スイッチング素子Q1~Q6に対するオン/オフ指令を、各IGBT駆動IC520~525に与える。 【0029】 絶縁電源510~515は、IGBT駆動IC520~525に対してそれぞれ設けられる。絶縁電源510~515は、低圧バッテリ8に起因した低圧系電源が接続される。尚、図2に示す例では、絶縁電源510~515は、低圧バッテリ8に直接的に接続されているが、電源生成回路(図示せず)を介して接続されてもよい。絶縁電源510~515は、それぞれ、低圧系電源に基づいて、IGBT駆動電源を生成する。IGBT駆動電源は、電源電圧が例えば15Vである。 【0030】 IGBT駆動IC520~525は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられる。IGBT駆動IC520~525は、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作する。IGBT駆動IC520~525は、それぞれ、マイコン502から与えられるオン/オフ指令に基づいて、対応する駆動回路530~535に駆動信号(Hi/Lo)を与える。 【0031】 駆動回路530~535は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられる。駆動回路530~535は、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作する。駆動回路530~535は、それぞれ、対応するスイッチング素子Q1~Q6のゲートに接続される駆動ライン(図3参照)を含む。W相下段駆動回路535の例は後述する。」 「【0033】 バックアップ電源回路550は、図2に示すように、高圧バッテリ10に接続される。また、バックアップ電源回路550は、図2に示すように、各相の下段の駆動回路(即ちU相下段駆動回路531、V相下段駆動回路533、及びW相下段駆動回路535)に接続される。バックアップ電源回路550は、電源起動回路540により起動され、バックアップ電源を生成する。バックアップ電源の電源電圧は、例えば、IGBT駆動電源電圧と同程度であってよい。バックアップ電源回路550は、動作時、高圧バッテリ10に基づいて、U相下段駆動回路531、V相下段駆動回路533、及びW相下段駆動回路535を介して、下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオンさせる。バックアップ電源回路550の詳細は後述する。」 「【0039】 IGBT駆動IC525は、W相下段に係る絶縁電源515からのIGBT駆動電源電圧が正常値(15V)よりも有意に低い低圧保護電圧範囲であって、予め規定された低圧保護電圧範囲内になったときに、スイッチング素子Q6をオフさせる低電圧保護機能を備える。これは、他のIGBT駆動IC520~524についても同様である。例えば、IGBT駆動IC524は、V相下段に係る絶縁電源513からのIGBT駆動電源電圧が正常値(15V)よりも有意に低い低圧保護電圧範囲内になったときに、スイッチング素子Q4をオフさせる低電圧保護機能を備える。 【0040】 図4は、IGBT駆動IC525の動作の説明図であり、IGBT駆動電源電圧の各範囲に応じた動作の表図である。尚、図4に示す動作は、他のIGBT駆動IC520~524についても、対応する絶縁電源が異なるだけで、実質的に同様である。 【0041】 図4に示すように、IGBT駆動電源電圧が正常範囲11V~20Vのとき、IGBT駆動IC525は、正常動作となる。IGBT駆動電源電圧が正常範囲よりも低い低圧保護電圧範囲4V~11Vのとき、IGBT駆動IC525は、低電圧保護機能を働かせる。具体的には、図4に示す各端子の出力となる。尚、図4において、「Z」は、ハイインピーダンスを意味し、「L出力」は、駆動信号(Lo)を発生する状態と同じ状態を意味する。IGBT駆動電源電圧が低圧保護電圧範囲よりも低いとき、即ち4Vよりも低いとき、IGBT駆動IC525は、図4に示すように、動作停止となる。」 「【0043】 電源起動回路540は、上述のように、W相下段に係る絶縁電源515からのIGBT駆動電源電圧が所定閾値よりも低くなった場合に、バックアップ電源回路550を起動させる。図5に示す例では、電源起動回路540は、MOSFET542を含む。MOSFET542のゲートには、W相下段に係る絶縁電源515からのIGBT駆動電源電圧が印加される。バックアップ電源回路550を起動させる閾値である上述の所定閾値は、MOSFET542の閾値電圧に応じて定まる。換言すると、所定閾値が低圧保護電圧範囲よりも低くなるようなMOSFET542が用いられる。MOSFET542の閾値電圧は、例えば1.4~3.0Vの範囲内で設定されてよい。」 「【0049】 図7は、インバータ制御装置50における動作例を示す図である。図7には、上から順に、低圧系電源(+B)の電源電圧の変化態様、マイコン電源(正常時5V)の電源電圧の変化態様、IGBT駆動電源(正常時15V)の電源電圧の変化態様、バックアップ電源の電源電圧の変化態様、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5のゲート電圧の変化態様、及び各相下段のIGBTであるスイッチング素子Q2、Q4、Q6のゲート電圧の変化態様のそれぞれの時系列が示される。尚、図7では、スイッチング素子Q1、Q3、Q5の各ゲート電圧の変化態様は、纏めて示されており、実際にはそれぞれ同一ではなく、互いに対して位相ずれがある。これは、スイッチング素子Q2、Q4、Q6のゲート電圧についても同様である。 【0050】 …省略… 【0051】 時刻t0にて低圧系電源に異常が発生すると、それに伴って、図7に示すように、低圧系電源に基づくマイコン電源及びIGBT駆動電源もそれぞれの電源電圧が正常値から下降し始める。 【0052】 時刻t11にて、IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲の上限値V1(11V)を下回ると、IGBT駆動IC520~525の低電圧保護機能が機能し始める。尚、IGBT駆動IC520~525の低電圧保護機能が働き始めるタイミングは厳密に同時でない場合もあり得る(IGBT駆動IC520~525の消費電力の相違等に起因する)。これに伴い、各スイッチング素子Q1~Q6が全てオフされる。時刻t12にて、IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲の下限値V2(4V)を下回ると、低電圧保護機能が停止し、IGBT駆動電源に基づくIGBT駆動IC520~525が停止状態となる(図4参照)。 【0053】 そして、時刻t21にて、IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲よりも低い所定閾値V3(3V程度)よりも低くなり、電源起動回路540のMOSFET542がオフする(即ち起動指令が生成される)。これに伴い、時刻t21にて、バックアップ電源回路550が起動し、バックアップ電源の電源電圧が上昇する。時刻t22にて、バックアップ電源の電源電圧が正常値(例えば15V)に達する。これに伴い、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオンされる。これにより、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5が全てオフし、且つ、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6が全てオンする状態が形成される。以下では、かかる状態を、「アクティブショート回路状態」と称する。アクティブショート回路状態が形成されると、走行用モータ40と基準電位(グランド電位)の間に、走行用モータ40の回生時の電流を還流させることができ、その結果、インバータ30の高電位側の電位が過剰に高くなる過電圧(以下、単に「過電圧」と称する)を低減できる。」 「【0082】 例えば、上述した実施例1乃至実施例3では、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオフさせ、且つ、各相下段のスイッチング 素子Q2、Q4、Q6を全てオンさせることで、過電圧を低減しているが、これに限られない。即ち、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオンさせ、且つ、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオフさせることで、過電圧を低減してもよい。但し、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオンさせる方が、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオンさせるよりも、基準電位が一定となるので、回路規模を小さくできる点で有利である。即ち、各相上段のスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオンさせ且つ各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオフさせる場合は、各相の基準電位(図1のポイントM1、M2、M3の電位)が異なり得るので、それに伴いバックアップ電源回路を各相に対してそれぞれ設ける必要が生じうる。この点、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオフさせ且つ各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオンさせる場合(即ち上述した実施例1乃至実施例3の場合)、バックアップ電源回路550が1つで済む点で有利である。」 「【図1】 [図:0001411278000010.jpg] 」 (2)甲3発明 甲3の【0001】、【0005】及び【0012】の記載を参酌すれば、甲3における「インバータ制御装置50」は、「制御回路」として実装されているところ、甲3には、「モータ駆動システム1」における「インバータ制御装置50」(制御回路)の発明が記載されていると認められる。 よって、上記(1)の特に下線部に着目すれば、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「 モータ駆動システム1におけるインバータ制御装置50(制御回路)であって、 モータ駆動システム1は、高圧バッテリ10、電動車両用インバータ装置12、走行用モータ40、及び、インバータ制御装置50を備え、 電動車両用インバータ装置12は、平滑コンデンサCと、インバータ30とを含み、 インバータ30は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含み、U相アームは、直列接続されたスイッチング素子Q1、Q2を含み、V相アームは、直列接続されたスイッチング素子Q3、Q4を含み、W相アームは、直列接続されたスイッチング素子Q5、Q6を含み、また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置され、 走行用モータ40は、3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中点で共通接続され、U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続され、以下の説明において、「上段」とは、中点M1、M2、M3よりも高電位側を指し、「下段」とは、中点M1、M2、M3よりも低電位側を指し、 インバータ制御装置50は、通信回路501と、マイクロコンピューター(マイコン)502と、絶縁電源510~515と、IGBT駆動IC520~525と、U相上段駆動回路530、U相下段駆動回路531、V相上段駆動回路532、V相下段駆動回路533、W相上段駆動回路534、及びW相下段駆動回路535と、電源起動回路540と、バックアップ電源回路550とを含み、 絶縁電源510~515は、例えばトランスを介して高圧側と低圧側とが絶縁され、IGBT駆動IC520~525は、例えばフォットカップラを介して高圧側と低圧側とが絶縁されており、 マイコン502には、低圧バッテリ8に起因した低圧系電源(例えばいわゆる+B)に基づいてマイコン電源(例えば電源電圧が5V)を生成するマイコン電源回路503が接続され、マイコン502は、マイコン電源に基づいて動作し、マイコン502は、インバータ30の各スイッチング素子Q1~Q6に対するオン/オフ指令を、各IGBT駆動IC520~525に与え、 絶縁電源510~515は、IGBT駆動IC520~525に対してそれぞれ設けられ、低圧バッテリ8に直接的に接続され、それぞれ、低圧系電源に基づいて、IGBT駆動電源を生成し、 IGBT駆動IC520~525は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられ、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作し、それぞれ、マイコン502から与えられるオン/オフ指令に基づいて、対応する駆動回路530~535に駆動信号(Hi/Lo)を与え、 駆動回路530~535は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられ、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作し、それぞれ、対応するスイッチング素子Q1~Q6のゲートに接続される駆動ラインを含み、 バックアップ電源回路550は、高圧バッテリ10に接続され、各相の下段の駆動回路(即ちU相下段駆動回路531、V相下段駆動回路533、及びW相下段駆動回路535)に接続され、 IGBT駆動IC525は、W相下段に係る絶縁電源515からのIGBT駆動電源電圧が正常値(15V)よりも有意に低い低圧保護電圧範囲であって、予め規定された低圧保護電圧範囲内になったときに、スイッチング素子Q6をオフさせる低電圧保護機能を備え、これは、他のIGBT駆動IC520~524についても同様であり、 IGBT駆動IC525の動作(他のIGBT駆動IC520~524についても、対応する絶縁電源が異なるだけで、実質的に同様である。)は、IGBT駆動電源電圧が正常範囲よりも低い低圧保護電圧範囲4V~11Vのとき、IGBT駆動IC525は、低電圧保護機能を働かせ、動作停止となり、 電源起動回路540は、W相下段に係る絶縁電源515からのIGBT駆動電源電圧が所定閾値よりも低くなった場合に、バックアップ電源回路550を起動させ、 インバータ制御装置50における動作例において、 IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲の上限値V1(11V)を下回ると、IGBT駆動IC520~525の低電圧保護機能が機能し各スイッチング素子Q1~Q6が全てオフされ、IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲の下限値V2(4V)を下回ると、低電圧保護機能が停止し、IGBT駆動電源に基づくIGBT駆動IC520~525が停止状態となり、 IGBT駆動電源が、低圧保護電圧範囲よりも低い所定閾値V3(3V程度)よりも低くなり、電源起動回路540のMOSFET542がオフする(即ち起動指令が生成される)と、バックアップ電源回路550が起動し、バックアップ電源の電源電圧が上昇し、バックアップ電源の電源電圧が正常値(例えば15V)に達すると、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオンされ、これにより、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5が全てオフし、且つ、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6が全てオンする状態(以下では、かかる状態を、「アクティブショート回路状態」と称する。)が形成され、アクティブショート回路状態が形成されると、走行用モータ40と基準電位(グランド電位)の間に、走行用モータ40の回生時の電流を還流させることができ、その結果、インバータ30の高電位側の電位が過剰に高くなる過電圧(以下、単に「過電圧」と称する)を低減でき、 各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオンさせ、且つ、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオフさせることで、過電圧を低減してもよい、 インバータ制御装置50(制御回路)。」 4 甲第4号証について 甲第4号証には、以下の事項が記載されていると認められる。(括弧の中は、甲4の記載箇所を示す。) 「 一相分の上アームを構成するスイッチング素子を駆動する第1の駆動回路と、前記一相分の下アームを構成するスイッチング素子を駆動する第2の駆動回路と、前記第1、第2の駆動回路に対する制御信号を生成する第1の制御回路と、を有する電力変換装置において、 前記第1、第2の駆動回路に電源をそれぞれ供給する第1、第2の電源回路と、 前記第1、第2の電源回路のうちの一方に電源を供給する高圧電源と、 前記第1、第2の電源回路のうちの他方に電源を供給する低圧電源と、([0028]) 前記高圧電源を電力供給源とする制御回路用補助電源と、([0053]) 前記第1、第2の駆動回路の電源電圧の異常を検出して異常検出信号を出力する異常検出手段と、前記異常検出信号を前記第1の制御回路に伝送する異常信号伝送回路と、を備え、 前記第1の制御回路は、前記異常検出信号による異常原因に応じて生成した制御信号を、制御信号伝送回路を介して前記第1または第2の駆動回路に伝送し、上アームまたは下アームを構成するスイッチング素子をオンさせるものであり、([0029]) さらに、前記制御回路用補助電源及び前記低圧電源の両方から電源が供給され、かつ、異常発生時に、前記第1または第2の駆動回路に対する制御信号を生成して前記制御信号伝送回路を介し前記第1または第2の駆動回路に伝送する第2の制御回路を備え、([0030]、[0053]) 前記第1の制御回路は、前記低圧電源を電源供給元とする低圧側電源生成回路により生成された電源によって動作可能であると共に、前記低圧側電源生成回路への供給電圧または前記第1の制御回路への供給電圧もしくは前記第1の制御回路自身の異常を検出して生成した異常検出信号を、前記第2の制御回路に出力するものであり、([0031]) 前記第1の制御回路からの異常検出信号が入力された前記第2の制御回路は、当該異常検出信号に基づいて異常を認識した場合に、前記高圧電源を電源供給元とする前記第1または第2の電源回路を介して対応する駆動回路により対応する上アームまたは下アームのスイッチング素子をオンさせて短絡モードを実現するための制御信号を生成するものである、([0032]、[0033]、[0063]) 電力変換装置。」 5 甲第5号証について 甲第5号証には、以下の事項が記載されていると認められる。(括弧の中は、甲5の記載箇所を示す。) 「 バッテリー16からの直流高電圧を3相交流の電圧に変換してモータ10に印加し、モータ10を駆動するインバータ装置11であって、(【0008】) 3相ブリッジ構成を成すパワー半導体モジュール12と、 バッテリー16から供給される高電圧HVDCにより動作するドライバ回路基板17であって、3相ブリッジ構成を構成する電力用半導体スイッチング素子の各々に対応する6相分のドライバ回路21と、ドライバ電源回路23と、アイソレータ31と、補助コントローラ30と、電圧変換回路32と、整流素子33、34とが設けられたドライバ回路基板17と、 バッテリー16とは別に設けられた電源19から供給される低電圧VBにより動作し、ドライバ回路21に制御パルスを送出するモータコントローラ18とを備え、(【0009】~【0012】、【0022】、【図1】) 電圧変換回路32は、低圧電源19から供給される低電圧VBを、ドライバ電源回路23の動作に必要な電圧V3に変換し、低電圧VBとは絶縁してドライバ電源回路23に供給し、(【0023】) 整流素子33と整流素子34とが存在することで、ドライバ電源回路23への入力電圧VDinは、高電圧HVDCと電圧V3とのいずれか高い方の電圧となり、(【0024】) 補助コントローラ30は、モータコントローラ18が停止したか否かを判定し、(【0031】) モータコントローラ18が停止していた場合、補助コントローラ30は、電圧変換回路32の出力電圧V3が異常か否かを判定し、(【0032】) 出力電圧V3が異常であると判定した場合、補助コントローラ30は、高電圧HVDCが100Vを下回っているか否かを判定し、下回っていた場合には下アーム29をオフにし、上回っていた場合には下アーム29をオンにする、(【0034】) インバータ装置11。」 6 甲第6号証について 甲第6号証には、以下の事項が記載されていると認められる。(括弧の中は、甲6の記載箇所を示す。) 「 直流電源回路の高電位電源線と低電位電源線との間に還流ダイオードを有する上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子の直列回路を接続して構成される永久磁石モータ駆動用のインバータ回路に対して、前記上アームスイッチング素子をオン・オフさせる上アーム駆動回路と、前記下アームスイッチング素子をオン・オフさせる下アーム駆動回路と、この下アーム駆動回路に直流電圧を供給する下アーム駆動電源と、この下アーム駆動電源から前記下アームスイッチング素子のオン・オフに基づき前記上アーム駆動回路に直流電圧を供給するためのチャージポンプ方式の上アーム駆動電源と、前記両駆動回路にオン・オフ駆動信号を出力する制御手段とを備えたインバータ回路の駆動装置において、 前記制御手段は、前記永久磁石モータの駆動前に、前記下アーム駆動回路に対して、前記永久磁石モータの回転数に応じたデューティ比を有するオン・オフ駆動信号を出力することにより、前記上アーム駆動電源を初期充電することを特徴とするインバータ回路の駆動装置。」(【請求項1】) 「本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、永久磁石モータの運転開始前にその永久磁石モータが回転している場合であっても、直流電源回路に過電圧を生ずることなくチャージポンプ方式の上アーム駆動電源を初期充電することができるインバータ回路の駆動装置を提供することにある。」(【0005】) 7 甲第7号証について 甲第7号証には、以下の事項が記載されていると認められる。(括弧の中は、甲7の記載箇所を示す。) 「 駆動用回路電源と、上アームおよび下アームを有するトーテムポール型出力段と、前記上アームを駆動するための上アーム駆動回路および前記下アームを駆動するための下アーム駆動回路を有するプリドライブ回路と、上アーム駆動用昇圧電源回路およびVCC電源を昇圧して出力する下アーム駆動用昇圧電源回路を有するVCC昇圧電源回路とを備えたことを特徴とする駆動回路。」(【請求項1】) 「【発明の属する技術分野】本発明は、駆動回路に関し、さらに詳しくは、バッテリー等の電源電圧変動が大きい電源にて、負荷を駆動するための駆動回路に関する。」(【0001】) 第7 当審取消理由2についての判断 当審取消理由2は、本件訂正をもって取り下げられたとみなされた、令和5年8月7日に提出された訂正請求書に係る訂正後の特許請求の範囲の記載についてのものであり、かつ、本件訂正後の特許請求の範囲には、取消理由2-1及び2-2により指摘した不備は存在していない。 よって、当審取消理由2により通知した取消理由によっては、本件請求項6ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 第8 当審取消理由1についての判断 1 取消理由1-1(新規性)について (1)対比 本件特許発明9と甲3発明とを対比する。なお、本件特許発明9における括弧内の記号は参考情報にすぎないので、本件特許発明9の構成を、括弧内の記号に対応するものに限定して解釈しない。(他の本件特許発明についても同様。) ア 構成要件9Aについて 甲3発明の「高圧バッテリ10」、「走行用モータ40」、「U、V、W相の3つのコイル」、「スイッチング素子Q1~Q6」はそれぞれ、構成要件9Aの「第1電源(30)」、「多相の回転電機(10)」、「前記回転電機の各相の巻線(11)」、「上下アームのスイッチ(SWH、SWL)」に相当する。 また、甲3発明において、「インバータ30」は、「U、V、W相の3つのコイル」と「高圧バッテリ10」と電気的に接続されたものであり「インバータ」は電力変換器といい得るものであるから、構成要件9Aの「前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)」に相当する。 また、甲3発明の「モータ駆動システム1」は、「高圧バッテリ10」と「走行用モータ40」と「インバータ30」とを備えているから、構成要件9Aの「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステム」に相当する。 また、甲3発明において、「インバータ制御装置50(制御回路)」は、文字どおり「インバータ」を制御する装置(回路)であるところ、「電力変換器の制御回路」といい得るものであり、かつ「インバータ」を含む「モータ駆動システム1」に適用されているといえる。 以上より、甲3発明の「インバータ制御装置50(制御回路)」は、構成要件9Aの「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)」に相当する。 イ 構成要件9Bについて 甲3発明の「低圧バッテリ8」は、「インバータ制御装置50(制御回路)」に含まれる「マイコン502」、「絶縁電源510~515」、「IGBT駆動IC520~525」に接続されて電源を供給するものであり、また、甲3発明の「バックアップ電源回路550」は、「インバータ制御装置50(制御回路)」に含まれる「各相の下段の駆動回路」(U相下段駆動回路531、V相下段駆動回路533及びW相下段駆動回路535)に接続されて電源を供給するものであるところ、「低圧バッテリ8」と「バックアップ電源回路550」はいずれも「インバータ制御装置50」の電力供給源となっている。 よって、甲3発明の「低圧バッテリ8」、「バックアップ電源回路550」はそれぞれ構成要件9Bの「第2電源(31)」、「第3電源(63)」に相当し、甲3発明は、構成要件9Bの「前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ」に相当する構成を備えているといえる。 ウ 構成要件9Cについて 甲3発明の「IGBT駆動IC520~525」は、「IGBT駆動電源電圧」が、正常値より低い、予め規定された低圧保護電圧範囲内になったときに、スイッチング素子Q1~Q6をオフさせる低電圧保護機能を備えているところ、「IGBT駆動電源電圧」が正常値より低いという異常が発生しているか否かを判定しているといえる。 同様に、甲3発明の「電源起動回路540」は、「IGBT駆動電源(電圧)」が低圧保護電圧範囲より低い所定閾値V3(3V程度)よりも低くなり、電源起動回路540のMOSFET542がオフする(即ち起動指令が生成される)と、バックアップ電源回路550を起動させるものであるから、「IGBT駆動電源(電圧)」が低圧保護電圧範囲より低い所定閾値V3(3V程度)よりも低いという異常が発生しているか否かを判定しているといえる。 よって、甲3発明の「IGBT駆動IC520~525」と「電源起動回路540」は、構成要件9Cの「前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部」に相当する。 エ 構成要件9Dについて 甲3発明において、「IGBT駆動電源電圧」が、正常値より低い、予め規定された低圧保護電圧範囲内になったときに、「IGBT駆動IC520~525」が、「IGBT駆動電源」すなわち「低圧バッテリ8」で生成された電力を用いて「スイッチング素子Q1~Q6」をオフさせ、「IGBT駆動電源電圧」が、低圧保護電圧範囲より低い所定閾値V3よりも低くなると、「電源起動回路540」が「バックアップ電源回路550」を起動させることにより「バックアップ電源回路550」から供給される電力を用いて各相下段のIGBTであるスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオンすることにより、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5が全てオフする状態、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6が全てオンする状態(アクティブショート回路状態)を形成している。 ここで、甲3発明においては、「IGBT駆動電源電圧」が正常値よりも低いという異常時に対処するために、「IGBT駆動IC520~525」と「電源起動回路540」とが協働して「アクティブショート回路状態」とする制御を実施しているといえるため、これらは「異常時制御部」といい得るものである。 また、甲3発明において、「アクティブショート回路状態」とする制御は、構成要件9Dの「短絡制御」に相当する。 また、甲3発明において、「各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6」、「各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5」はそれぞれ、構成要件9Dの「上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチ」、「他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチ」に相当する。(なお、甲3発明は、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てオンさせ、且つ、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てオフさせることで、過電圧を低減してもよい」との構成を備えているところ、オンするスイッチング素子とオフするスイッチング素子が逆である態様も含む。) さらに、甲3発明において、「アクティブショート回路状態」とするために、「IGBT駆動IC520~525」は、「IGBT駆動電源」すなわち「低圧バッテリ8」で生成された電力を用いて「スイッチング素子Q1~Q6」をオフ状態に駆動制御し、「電源起動回路540」は、「バックアップ電源回路550」で生成された電力を用いて「各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6」をオン状態に駆動制御しているところ、「低圧バッテリ8」と「バックアップ電源回路550」のうちの少なくとも一方で生成された電力を用いている。 よって、甲3発明の「IGBT駆動IC520~525」と「電源起動回路540」は、構成要件9Dの「前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部」にも相当する。 オ 構成要件9E及び9Fについて 甲3発明の「IGBT駆動IC520~525は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられ、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作し」及び「駆動回路530~535は、スイッチング素子Q1~Q6に対してそれぞれ設けられ、それぞれ、対応する絶縁電源510~515に接続され、対応する絶縁電源510~515からのIGBT駆動電源に基づいて動作し」との構成によれば、「絶縁電源510、512及び514」は、各相上段のスイッチング素子(Q1、Q3、Q5)の駆動電源であり、「絶縁電源511、513及び515」は各相下段のスイッッチング素子(Q2、Q4、Q6)の駆動電源と認められる。 また、甲3発明において、「絶縁電源510~515」は、「低圧バッテリ8に直接的に接続され」ているところ、「低圧バッテリ8」を電力供給源とするものといえる。 よって、甲3発明の「絶縁電源510、512及び514」と構成要件9Eの「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)」とは、「前記第2電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)」である点で共通し、甲3発明の「絶縁電源511、513及び515」と構成要件9Fの「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」とは、「前記第2電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」である点で共通する。 カ 構成要件Lについて 甲3発明において、「バックアップ電源回路550」は「高圧バッテリ10」に接続されているところ、「高圧バッテリ10」から電力が供給されることにより電力を生成しているといえる。 よって、甲3発明は、構成要件Lの「前記第3電源は、前記第1電源から電力が供給されることにより電力を生成する」に相当する構成を備えている。 (2)一致点、相違点 以上から、本願特許発明9と甲3発明とは、以下の点において一致ないし相違する。 ○一致点 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ、 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、 前記第2電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)と、 前記第2電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)と、 を備え、 前記第3電源は、前記第1電源から電力が供給されることにより電力を生成する電力変換器の制御回路。 ○相違点 共通点である「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」がそれぞれ、本件特許発明9においては、「前記第2電源」のみならず「前記第3電源」をも電力供給源とするものであるのに対し、甲3発明の「絶縁電源510、512及び514」及び「絶縁電源511、513及び515」は、本件特許発明9の「第2電源」に対応する「低圧バッテリ8」を電力供給源とするものの、本件特許発明9の「第3電源」に対応する「バックアップ電源回路550」をも電力供給源とすることを具体的に特定していない点。 (3)相違点についての判断 上記(1)エで述べたように、甲3発明は、異常時に(「IGBT駆動電源電圧」が、正常値より低い、予め規定された低圧保護電圧範囲内になったときに)、「IGBT駆動IC520~525」が、「IGBT駆動電源」すなわち「低圧バッテリ8」で生成された電力を用いて「スイッチング素子Q1~Q6」をオフさせ、IGBT駆動電源電圧が低圧保護電圧範囲より低い所定閾値V3よりも低くなると、「電源起動回路540」が「バックアップ電源回路550」を起動させることにより「バックアップ電源回路550」から供給される電力を用いて各相下段のIGBTであるスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオンすることにより、各相上段のIGBTであるスイッチング素子Q1、Q3、Q5が全てオフする状態、各相下段のスイッチング素子Q2、Q4、Q6が全てオンする状態(アクティブショート回路状態)を形成することにより上記異常に対処するものであり、そのために、「バックアップ電源回路550」は、「各相の下段の駆動回路(即ちU相下段駆動回路531、V相下段駆動回路533、及びW相下段駆動回路535)」のみに接続されていると認められる。 上記した「バックアップ電源回路550」の技術的意義を参酌すれば、当該「バックアップ電源回路550」が、上下アームのスイッチング素子に電力を供給するための「絶縁電源510~515」の電力供給源であることが甲3に開示されているとはいえず、そのことが、本願出願時の技術常識から自明であるともいえない。 よって、上記相違点は、形式的なものではなく実質的なものであるところ、本件特許発明9は、甲3に記載されたものとはいえない。 2 取消理由1-2(進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 以下、本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)構成要件Aについて 甲1発明の「蓄電池21」、「各相巻線11」、「上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWL」はそれぞれ、構成要件Aの「第1電源(30)」、「回転電機10の各相の巻線(11)」、「上下アームのスイッチ(SWH,SWL)」に相当する。 また、甲1発明の「回転電機10」は「各相巻線11」を有することから、構成要件Aの「多相の回転電機(10)」に相当する。 甲1発明の「インバータ20」は、「上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWL」を有した電力変換器であり、また、当該「上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWL」を介して「巻線11」が接続され、「各相巻線11」には「インバータ20」を介して「蓄電池21」が接続されている電力変換器であるところ、構成要件Aの「前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)」に相当する。 甲1発明の「制御システム」は、「回転電機10、インバータ20及び制御回路30」を備え、また、「蓄電池21」を備えていることも自明であるところ、構成要件Aの「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステム」に相当する。 また、甲1発明の「制御回路30」は、「制御システム」に備えられている以上、当該「制御システム」適用されている「電力変換器の制御回路」といえる。 よって、甲1発明の「制御回路30」は、構成要件Aの「第1電源(30)と、多相の回転電機(10)と、前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)」に相当する。 (イ)構成要件Bについて 甲1発明において、「低圧直流電源24」は、「電源生成部63」を介して、当該「制御回路30」が備える「複合IC60」等に電力を供給する電源であるところ、構成要件Bの「前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)」とは、「前記制御回路の電力供給源となる電源」である点において共通する。 よって、甲1発明と構成要件Bの「前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる第2電源(31)及び第3電源(63)が備えられ」とは、「前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる電源が備えられ」との構成を備える点において共通する。 (ウ)構成要件Cについて 甲1発明において、「制御回路30」の「複合IC60」が備える「状態判定部64」は、「ステップS20」において、「異常検知部92からのスイッチ側異常の通知、マイコン50からのスイッチ停止指令の入力、及び過電圧検知部65からの過電圧異常の通知のうち、少なくとも1つの事象が生じたか否かを判定」するものであり、また、甲1発明の「ステップS20において異常が発生していると判定される場合」との構成からして、「ステップS20」において「判定」の対象となる「事象」は「制御システム」に「異常が発生している」か否かを示す事象であると解される。 そうすると、甲1発明の「状態判定部64」は、構成要件Cの「前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部」に相当する。 (エ)構成要件Dについて 甲1発明の「状態判定部64」は、「ステップS20」において異常が発生していると判定した場合、「ステップS22」において「強制スイッチ指令をASC指令にすることが安全状態であるとの判定結果が安全状態判定部66から入力されているとの条件と、マイコン50からASC無効化指令が入力されていないとの条件とが成立しているか否かを判定」し、肯定判定した場合には、「ステップS24」において、「強制スイッチ指令としてのASC指令を上、下アーム制御部71H、71Lに対して出力し、3相分の上アームスイッチSWHをオフし、3相分の下アームスイッチSWLをオンする全相短絡制御(ASC制御)」を異常時の制御を行う異常時制御部として実施するものといえる。 また、「状態判定部64」は「複合IC60」が備えるものであって、「複合IC60」の電源は「低圧直流電源24」であるので、「状態判定部64」による「全相短絡制御(ASC制御)」は、「低圧直流電源24」で生成された電力を用いているといえる。 また、甲1発明において、「スイッチ」を「オン」したり「オフ」したりする際には、当該「スイッチ」を「オン状態」に又は「オフ状態」に「駆動制御」しているといえ、また、甲1発明の「3相分の下アームスイッチSWL」、「3相分の上アームスイッチSWH」、「全相短絡制御(ASC制御)」はそれぞれ、構成要件Dの「上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチ」、「他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチ」、「短絡制御」に相当する。 よって、上記イを参酌すれば、甲1発明の「状態判定部64」と、構成要件Dの「前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部」とは、「前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記電源で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部」である点において共通する。 (オ)構成要件E及びFについて 甲1発明において、「制御回路30」が備える「絶縁電源91」は、「低圧直流電源24を電力供給源として、駆動回路部90を構成する駆動回路に電力を供給」するものであり、また、「駆動回路」は、「インバータ20の各スイッチSWH、SWLに対応して備えられ、絶縁電源91から給電されて駆動」するものであるところ、「絶縁電源91」は、「低圧直流電源24」を電力供給源とし、「各スイッチSWH、SWL」を駆動するための電源(駆動電源)といい得るものである。 また、甲1発明の「スイッチSWH」、「SWL」はそれぞれ、構成要件Eの「上アームの前記スイッチ」、構成要件Fの「下アームの前記スイッチ」に相当する。 以上と、上記(イ)を参酌すると、甲1発明の「絶縁電源91」と、構成要件Eの「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)」及び構成要件Fの「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」とは、「前記電源を動力供給源とし、上下アームの前記スイッチの駆動電源となるアーム駆動電源」である点において共通する。 イ 一致点、相違点 前記アより、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。 ○一致点 第1電源(30)と、 多相の回転電機(10)と、 前記回転電機の各相の巻線(11)及び前記第1電源に電気的に接続され、上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を有する電力変換器(15)と、を備えるシステムに適用される電力変換器の制御回路(50)において、 前記システムには、前記制御回路の電力供給源となる電源が備えられ、 前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、 前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合、前記電源で生成された電力を用いて、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオン状態に駆動制御し、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフ状態に駆動制御する短絡制御を行う異常時制御部と、 前記電源を動力供給源とし、上下アームの前記スイッチの駆動電源となるアーム駆動電源と、を備える電力変換器の制御回路。 ○相違点 <相違点1> 本件特許発明1において、「制御回路(30)」の電力供給源となるのが「第2電源(31)及び第3電源(63)」との2つの電源であるのに対し、甲1発明において、「制御回路30」の電力供給源となるのが「低圧電流電源24」との1つの電源である点。 <相違点2> 「前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合」に「短絡制御」を行うにあたり、本件特許発明1における「異常制御部」は、「前記第2電源及び前記第3電源の少なくとも一方」で生成された電力を用いるのに対し、甲1発明における「状態判定部64」は「低圧電流電源24」で生成された電力を用いる点。 <相違点3> 上下アームのスイッチの駆動電源となるものが、本件特許発明1においては、「上アームの前記スイッチの駆動電源となる上アーム駆動電源(90)」と「下アームの前記スイッチの駆動電源となる下アーム駆動電源(91)」であるのに対し、甲1発明において、「絶縁電源91」のみである点。 <相違点4> 上下アームのスイッチの駆動電源の電力供給源に関し、本件特許発明1における「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」の電力供給源は、「前記第2電源及び前記第3電源」であるのに対し、甲1発明における「絶縁電源91」の電力供給源は「低圧電流電源24」である点。 ウ 相違点についての判断 相違点4に係る本件特許発明1の構成は、相違点1に係る本件特許発明1の構成(「前記第2電源及び前記第3電源」)と、相違点3に係る本件特許発明1の構成(「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」)とを前提としているところ、相違点1、相違点3及び相違点4についてまとめて検討する。 まず、電力変換器に限らず、電気機器において、特に電源の異常時に備えて予備の電源を設けておくことは特に文献を挙げるまでもなく本願出願時における技術常識であり、また、電力変換器においても、甲2に記載されているように、電力変換器の制御回路に電力を供給する電源を2つ設け、一方の電源に対し、他方の電源をバックアップとし、異常が発生した場合に少なくとも一方から電力を供給することは、本願出願前における周知技術と認められる。 また、電力変換器に限らず、システムを構成する複数の装置ごとに電源を設けることは特に文献を挙げるまでもなく本願出願時における技術常識であり、また、電力変換器においても、甲3発明にあるように、上アームスイッチと下アームスイッチの各々に対して個別の絶縁電源を設けることは、本願出願時における周知技術と認められる。 しかしながら、相違点4に係る本件特許発明1の構成に至るためには、甲1発明に、甲2に係る周知技術を適用し、その上で、甲3発明に係る周知技術を適用する必要があるが、そのような複数の段階を経て相違点4に係る本件特許発明1の構成を想到することが当業者にとって容易であったとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者が、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1の構成をすべて含む発明であるから、本件特許発明1と同様に、当業者が、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件特許発明6について 本件特許発明6に係る構成要件6E及び構成要件6Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一である。 よって、本件特許発明6は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件特許発明7及び8について 本件特許発明7に係る構成要件7E及び構成要件7Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一である。 また、本件特許発明8は、本件特許発明7の構成をすべて含む発明である。 よって、本件特許発明7及び8は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (5)本件特許発明9について 本件特許発明9に係る構成要件9E及び構成要件9Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一である。 よって、本件特許発明9は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、当審取消理由1により通知した取消理由によっては、本件請求項1、2及び6ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 第9 当審取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由1(明確性要件)について 本件特許発明1ないし5において、「第2電源」と「第3電源」は、その両方が、請求項1の「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」、並びに、請求項5の「第1電力生成部(65)」及び「第2電力生成部(67)」の「電力供給源」であることがその文言上明確である。 申立人は、本件特許発明1ないし5は、「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)、並びに、「第1電力生成部(65)」及び「第2電力生成部(67)」については、任意のタイミングにおいて「第2電源」及び「第3電源」の両方を、ともに(或いは同時に)電力供給源とする、という本件特許明細書に記載されていない態様を含むため明確ではない旨主張するが、本件特許発明1ないし5は、「第2電源」及び「第3電源」が電力を供給するタイミング等を具体的に特定していないため、「第2電源」及び「第3電源」を「電力供給源」とするいかなる態様をも含み、「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)、並びに、「第1電力生成部(65)」及び「第2電力生成部(67)」については、任意のタイミングにおいて「第2電源」及び「第3電源」の両方を、ともに(或いは同時に)電力供給源とする場合を含むことも明確である。加えて、申立人は、本件特許発明1ないし5が、本件特許明細書に記載されていない態様を含むことが、発明が明確でないことの根拠となる理由を具体的に述べていない。また、そのような態様の範囲まで拡張して請求項に記載することができない理由について言及していないため、申立人が、実質的にサポート要件(特許法第36条第6項第1号)違反であることまで主張しているとも認められない。 したがって、本件特許発明1ないし5は、本件特許明細書および図面の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 2 申立理由3(進歩性)について 申立理由3(進歩性)のうち、本件特許発明6及び9についての甲1及び甲2、又は、甲1、甲2及び甲3に基づく進歩性の有無については、上記第8の2(取消理由1-2(進歩性)について)において実質的に判断済みである。 (1)甲1と周知技術に基づく進歩性について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、その一致点及び相違点は、上記第8の2(1)イで述べたとおりである。 甲2、甲4及び甲5の記載事項から、電力変換器において、制御回路に電力を供給する電源を2つ設け、異常が発生した場合に、2つの電源のうちバックアップ電源の方から電力を供給することは、本願出願時における周知技術(以下、「周知技術1」という。)といえる。 同様に、甲3、甲4、甲6及び甲7の記載事項から、電力変換器において、上アームと下アームの各スイッチに対して、駆動回路とその駆動電源を有する構成は、本願出願時における周知技術(以下、「周知技術2」という。)といえる。 しかしながら、上記相違点4に係る本件特許発明1の構成、すなわち、「上アーム駆動電源(90)」及び「下アーム駆動電源(91)」の電力供給源を、「第2電源及び前記第3電源」の2つの電源とする構成は、甲2ないし甲7の記載事項から本願出願時における周知技術とはいえない。 また、周知技術1及び周知技術2の両方の根拠となっている甲4は、「前記第1、第2の駆動回路に電源をそれぞれ供給する第1、第2の電源回路」、「前記第1、第2の電源回路のうちの一方に電源を供給する高圧電源」及び「前記第1、第2の電源回路のうちの他方に電源を供給する低圧電源」という構成を備えることにより、上アームの駆動回路と下アームの駆動回路の各々に電力を供給する2つの電源回路の電力供給源をあえて異なるように構成されていることに鑑みれば、周知技術1と周知技術2とを単純に組み合わせて相違点4に係る本件特許発明1の構成を想到することが当業者にとって自明ないし容易とはいえない。 したがって、本件特許発明1は、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 イ 本件特許発明6について 本件特許発明6に係る構成要件6E及び構成要件6Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一である。 よって、本件特許発明6は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 ウ 本件特許発明9について 本件特許発明9に係る構成要件9E及び構成要件9Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一である。 よって、本件特許発明9は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明することができたものとはいえない。 (2)甲1第5発明に基づく進歩性について 甲1第5発明は、本件特許発明7の「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記上アーム駆動部に電力を出力する上アーム駆動電源(90)」(構成要件7E)及び「前記第2電源及び前記第3電源を電力供給源とし、前記下アーム駆動部に電力を出力する下アーム駆動電源(91)」(構成要件7F)に相当する構成を備えない。 そして、本件特許発明7に係る構成要件7E及び構成要件7Fはそれぞれ、本件特許発明1に係る構成要件E及び構成要件F、すなわち、上記相違点4に係る本件特許発明1と同一であり、本件特許発明8は、本件特許発明7の構成をすべて含む発明である。 よって、本件特許発明7及び8は、甲1第5発明を参酌したとしても、上述した理由と同様の理由により、当業者が、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基いて、甲第1号証に記載の発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基いて、又は、甲第1号証に記載された発明と周知技術(甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項)に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 第10 申立人の主張について 申立人意見書の第4ページに記載した[補足1]は、要するに、周知技術1と周知技術2とのそれぞれが本願出願時における周知技術であることを述べるにとどまり、周知技術1と周知技術2とを組み合わせて甲第1号証に記載された発明に適用し得ることの理由について何ら述べていない。 そして、周知技術1と周知技術2の両方の根拠とされている甲4の記載事項からして、周知技術1と周知技術2とを組み合わせて甲第1号証に記載された発明に適用し得ることが当業者にとって自明又は容易とはいえないことは上述したとおりである。 申立人意見書の第5ページに記載した[補足2]は、要するに、「相電圧基準で動作する上段の駆動回路へ電源供給するための回路」及び「低圧系のAND基準で動作する下段の駆動回路へ電源供給するための回路」が周知の技術であることを主張するにとどまり、上記相違点4に係る本件特許発明1の構成とは無関係である。 申立人はほかにも縷々主張するがいずれも上記相違点4に係る本件特許発明1の構成を甲第1号証に記載した発明に適用することの根拠を具体的に説明するものではないので採用することができない。 第11 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700326

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    同じ当事者: 小山 卓志、株式会社デンソー、田中 貞嗣
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    同じ当事者: 小山 卓志、田中 貞嗣
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    同じ当事者: 小山 卓志、田中 貞嗣
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    共通の審決分類: 113・H02M、121・H02M、537・H02M
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    共通の審決分類: 113・H02M、121・H02M、537・H02M
  • 2023-700913異議申立 / 2024-04-25 / 訂正認容直流電力供給システム
    共通の審決分類: 113・H02M、121・H02M、537・H02M
  • 2023-701364異議申立 / 2024-03-29 / 維持電力変換装置及び冷凍装置
    共通の審決分類: 113・H02M、121・H02M、537・H02M
  • 2023-701273異議申立 / 2024-02-27 / 維持ノイズ低減回路、電力変換装置及び冷凍装置
    共通の審決分類: 113・H02M、121・H02M、537・H02M

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