特許異議申立
2025-700851
電力調整システム
- 審判番号
- 2025-700851
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-066900
- 登録番号
- 7640844
- 請求日
- 2025年08月28日
- 審決日
- 2026年05月27日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】古部 次郎
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 行武 哲太郎
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.113-YAA(H02J) / P1651.121-YAA(H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7640844号発明「電力調整システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7640844号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7640844号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7640844号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和3年4月12日の出願であって、令和7年2月26日にその特許権の設定登録がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~10)に係る特許に対し、令和7年8月28日に特許異議申立人 角田 朗(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立てからの手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 7年 8月28日 特許異議申立書
11月12日付け 取消理由通知書
令和 8年 1月13日 訂正請求書
意見書(特許権者)
1月23日付け 手続補正指令書(方式)(特許権者宛て)
2月20日 手続補正書(方式)(特許権者)
3月 4日付け 通知書(特許異議申立人宛て)
なお、令和8年1月13日の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これによる訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否の判断
1 本件訂正の内容は以下のとおりである。(下線は変更箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
を備える電力調整システム。」と記載されているのを、
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、
前記機器による前記調整を制御する制御手段と、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段と、
を備える電力調整システム。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に
「 前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力することを特徴とする請求項2記載の電力調整システム。」と記載されているのを、
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、
前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力することを特徴とする、電力調整システム。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に
「 前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められていることを特徴とする請求項9記載の電力調整システム。」と記載されているのを、
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、
前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められ、
前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められていることを特徴とする、電力調整システム。」に訂正する。
2 本件訂正の適否の判断
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1~10は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項をなす。
そして、本件訂正は、前記一群の請求項についての訂正であるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
(2)独立特許要件について
全請求項に対して特許異議申立がされているので、いずれの請求項に係る発明についても、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項(いわゆる独立特許要件)は適用されない。
(3)その他の要件について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1に係る発明を特定する事項である「電力調整システム」について、「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器」と「前記機器による前記調整を制御する制御手段」とを「備える」ことを限定し、さらに「出力手段」に関し、「出力手段」が出力する「情報」について、「前記電力調整システムによる」ものを、当該電力システムが備える「前記機器による」ものに限定し、当該「出力」は、「管理システムからの指示がない場合であっても」出力するものに限定し、さらに「管理システム」について、「前記電力調整システムにおける皮相電力を管理する」ものを、当該「皮相電力」「の調整を前記制御手段に指示する」ものに限定するものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
(イ)新規事項追加の有無について
本件特許の明細書には以下の記載がある。(下線は強調のため当審にて付与したものであり、以降同様である。)
a「【0007】
以下、添付図面を参照して実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る電力調整システム1の一例を示した図である。
電力調整システム1は、皮相電力を調整するシステムである。
電力調整システム1には、電力系統10と、複数の電力消費施設20と、制御サーバ30と、管理サーバ40とが設けられている。」
b「【0013】
…(略)…
なお、送電線12、供給側配電線14、受給側配電線17、および需要家側配電線19は、何れも、電力が搬送される電力搬送線路として捉えられる。また、送電線12、供給側配電線14、受給側配電線17、および需要家側配電線19を特に区別することなく説明する場合、単に「電線」と称することがある。」
c「【0018】
電力消費施設20は、需要家側配電線19を通じて発電所11から供給された電力を受給して消費する施設である。各電力消費施設20には、複数のヒートポンプシステム(HPS:Heat Pump System)21と、負荷22とが設けられている。…(略)…」
d「【0021】
…(略)…
HPS21は、制御サーバ30から電線における皮相電力の調整の指示をされると、この指示に応じて電線に電流を供給することで、この電線における皮相電力を調整する。
…(略)…」
e「【0027】
管理システムの一例としての管理サーバ40は、電線における皮相電力を管理する。より具体的には、管理サーバ40は、制御サーバ30に対して電線における皮相電力の調整を指示し、電線における皮相電力をHPS21に調整させることにより、電線における皮相電力を管理する。」
f「【0038】
図4は、制御サーバ30の機能構成を示した図である。
制御サーバ30には、取得部301と、記憶部302と、必要量算出部303と、可能量算出部304と、申告決定部305と、情報作成部306と、送信部307と、調整制御部308とが設けられている。」
g「【0042】
…(略)…ここで、HPS21による調整が可能な皮相電力に関する情報を、以下では、調整情報と称する。…(略)…」
h「【0044】
制御手段の一例としての調整制御部308は、電線における皮相電力のHPS21による調整を制御する。調整制御部308は、電線における皮相電力の調整を管理サーバ40から指示されると、対象の電線における皮相電力を調整するためにこの電線に供給する電力を算出する。また、調整制御部308は、算出した電力に基づいて、対象の電線の調整に用いるHPS21を決定するとともに、決定したHPS21から供給させる電力を算出する。また、調整制御部308は、複数のHPS21を対象の電線の調整に用いることを決定した場合、決定したHPS21ごとに、HPS21から供給させる電力を算出する。さらに、調整制御部308は、算出した結果が示された情報を対象のHPS21に送信するとともにこのHPS21に調整を指示することで、電線における皮相電力をHPS21に調整させる。」
i「【0093】
以上の通り、本実施形態では、可能量算出部304は、容量情報および供給情報から調整可能量を算出する。また、申告決定部305は、可能量算出部304に算出された調整可能量から、調整情報を管理サーバ40に申告するか否かを決定する。さらに、調整情報を管理サーバ40に申告することが決定された場合、送信部307は、調整情報を管理サーバ40に送信する。言い換えると、本実施形態では、送信部307は、容量情報および供給情報から特定されるHPS21の調整の能力について定められた条件を満たす場合に、調整情報を、管理サーバ40に出力する。ここで、HPS21の調整の能力について定められた条件としては、関係条件、変化条件、割合条件等が挙げられる。
この場合、調整情報を管理サーバ40に送信することの管理サーバ40からの指示がない場合であっても、調整情報が管理サーバ40に送信されるため、調整情報を管理システムのユーザに認識させることができる。」
以上の記載によると、「電力調整システム1には」「複数の電力消費施設20と、制御サーバ30と」「が設けられて」おり(【0007】)、「各電力消費施設20には、複数のヒートポンプシステム(HPS:Heat Pump System)21」「が設けられて」(【0018】)いる。ここで、「HPS21は」「電線における皮相電力を調整する」もの(【0021】)であり、また「電線」とは「電力搬送線路として捉えられる」「送電線12、供給側配電線14、受給側配電線17、および需要家側配電線19」を「称」しているもの(【0013】)であることも鑑みれば、「HPS21」は、請求項1で特定されている「電力調整システム」が「備える」「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器」に対応するものと認められる。
また、「制御サーバ30には」「送信部307と、調整制御部308とが設けられて」おり(【0038】)、「制御手段の一例としての調整制御部308は、電線における皮相電力のHPS21による調整を制御する」もの(【0044】)であることを鑑みれば、「調整制御部308」は、請求項1で特定されている「電力調整システム」が「備える」「前記機器による前記調整を制御する制御手段」に対応するものと認められる。
さらに、「送信部307は、容量情報および供給情報から特定されるHPS21の調整の能力について定められた条件を満たす場合に、調整情報を、管理サーバ40に出力」し「この場合、調整情報を管理サーバ40に送信することの管理サーバ40からの指示がない場合であっても、調整情報が管理サーバ40に送信される」もの(【0093】)であり、ここで「管理システムの一例としての管理サーバ40は、電線における皮相電力を管理する」もの(【0027】)であること、また、「HPS21による調整が可能な皮相電力に関する情報を」「調整情報と称する」もの(【0042】であることも鑑みれば、「送信部307」は、請求項1で特定されている「電力調整システム」が「備える」「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段」に対応するものと認められる。
よって、訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、前記(ア)のとおり、発明特定事項に限定を加えるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかである。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2を引用していた請求項7を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法120条の5第2項ただし書4号)を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無について
訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのみを目的とする訂正であるから、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのみを目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、請求項9を引用していた請求項10を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法120条の5第2項ただし書4号)を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無について
訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのみを目的とする訂正であるから、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのみを目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかである。
3 本件訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを認める。
第3 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件訂正後の本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲により訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のために、「本件発明1」、「本件発明7」及び「本件発明10」については分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。また、同じ文言からなる発明特定事項については、同じ符号を付した。
【請求項1】(本件発明1)
1A 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
1B 前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、
1C 前記機器による前記調整を制御する制御手段と、
1D 前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
1E 前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段と、
1A’ を備える電力調整システム。
【請求項2】(本件発明2)
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力することを特徴とする請求項1記載の電力調整システム。
【請求項3】(本件発明3)
前記条件は、前記能力の変化について定められていることを特徴とする請求項1または2記載の電力調整システム。
【請求項4】(本件発明4)
前記変化は、最後に前記条件を満たした際の前記能力からの変化であることを特徴とする請求項3記載の電力調整システム。
【請求項5】(本件発明5)
前記変化は、前記能力の低下であることを特徴とする請求項3記載の電力調整システム。
【請求項6】(本件発明6)
前記条件は、前記変化の程度について定められていることを特徴とする請求項3記載の電力調整システム。
【請求項7】(本件発明7)
1A 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
1D 前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
7A 前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
7B 各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
7C 前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、
7D を有し、
7E 前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
7F 前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、
7G 前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力することを特徴とする、
1A’’ 電力調整システム。
【請求項8】(本件発明8)
前記特定条件は、前記複数の機器の何れかが前記電力搬送線路における皮相電力の調整に用いられることであることを特徴とする請求項7記載の電力調整システム。
【請求項9】(本件発明9)
前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められていることを特徴とする請求項2記載の電力調整システム。
【請求項10】(本件発明10)
1A 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
1D 前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
7A 前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
7B 各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
7C 前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、
7D を有し、
7E 前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
7F 前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、
10A 前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められ、前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められていることを特徴とする、
1A’’ 電力調整システム。
第4 証拠方法及び申立理由
特許異議申立人は、特許異議申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、請求項1~10に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 特開2016-182021号公報
甲2 特開平9-322404号公報
甲3 特開2006-304403号公報
2 申立理由
特許異議申立書に記載された申立理由の概要は、以下の申立理由1及び2のとおりである。
(1)申立理由1(新規性欠如)
ア 申立理由1-1
請求項1及び3に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、請求項1及び3に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(ア)及び(オ))
イ 申立理由1-2
請求項1、2、7、8に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、請求項1、2、7、8に係るに係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(イ)、(エ)、(コ)及び(シ))
(2)申立理由2(進歩性欠如)
ア 申立理由2-1
請求項1~9に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(ア)、(ウ)、(オ)~(ケ)、(サ)及び(ス))
請求項7~10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(ケ)、(サ)、(ス)及び(ソ))
請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(オ))
請求項4~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(カ)~(ク))
イ 申立理由2-2
請求項1、2、7~9に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、7~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(イ)、(エ)、(コ)、(シ)及び(セ))
請求項1及び2に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)(特許異議申立書の3(4)ウ(イ)及び(エ))
第5 取消理由通知書で通知した取消理由の概要
当審より、令和7年11月12日付け取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 理由1(新規性欠如)
(1)請求項1~3及び9に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~3及び9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項1、2及び9に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2及び9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
2 理由2(進歩性欠如)
(1)請求項1~6及び9に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項1、2及び9に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第6 取消理由通知書で通知した取消理由についての当審の判断
1 甲1を主たる引用文献とした理由の検討
甲1を主たる引用文献とした理由(前記第5、1(1)及び2(1))について検討する。
(1)本件発明1について
ア 甲1の記載と甲1発明
甲1の記載は以下(ア)のとおりである。また、当該記載に基づいて甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)を以下(イ)のとおり認定する。
(ア)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
a「【0026】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の無効電力協調制御装置50および電力制御システム1の構成について説明する。
まず、第1実施形態の電力制御システム1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態の電力制御システム1を適用した分散型発電システムの構成の一例を示す図である。本発明では、分散型発電システムから発電源(PV)を除いたものを、電力制御システム1と呼ぶ。
【0027】
電力制御システム1において、変電所に設置された配電用変圧器10には、高圧配電線11が接続されている。高圧配電線11は、電圧レベルが例えば3300V~6600Vの高圧系統の配電線である。なお、配電用変圧器10には、複数本の高圧配電線11が接続されていてもよい。
高圧配電線11には、接続箇所(自端)における電圧および位相を計測する計測装置12が複数個(図1に示す例では3個)接続されている。なお、計測装置12は、接続箇所(自端)における電流および位相を計測するものであってもよいし、接続箇所(自端)における電圧、電流、および位相を計測するものであってもよい。
【0028】
また、高圧配電線11には、変圧器30を介して当該高圧配電線11よりも低圧の低圧配電線31が接続されている。低圧配電線31は、電圧レベルが例えば100V~200Vの低圧系統の配電線である。なお、本実施形態では、高圧配電線11に2本の低圧配電線31が接続されているが、高圧配電線11に接続される低圧配電線31の本数は、3本以上であってもよい。また、高圧配電線11に接続されている各低圧配電線31の電圧レベルは、全て同じであってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。
低圧配電線31には、電圧制御機器としての太陽光発電用パワーコンディショナ(PV-PCS)32が接続されている。なお、図面(図1等)では図示を省略したが、配電線には負荷等が接続されている。
【0029】
PV-PCS32には、無効電力協調制御装置50と、発電源(PV)と、が接続されている。無効電力協調制御装置50は、例えばPV-PCS32と一体的にまたは併設することができる。無効電力協調制御装置50は、例えばネットワークケーブル33を介して通信ネットワークNに接続されている。
PV-PCS32は、発電源(PV)が発電した直流電力を交流電力に変換するインバーター機能の他に、低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の制御量を調整する、具体的には当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有している。
【0030】
PV-PCS32には、当該PV-PCS32の制御目標である目標電圧範囲が予め記憶されている。PV-PCS32は、自端の電圧値が当該目標電圧範囲内に収まるように無効電力出力を調整する。
具体的には、PV-PCS32は、例えば所定周期毎に計測した電圧計測値が目標電圧範囲内にあるか否かを判定し、目標電圧範囲内にない(逸脱している)と判定した場合には、目標電圧範囲内に電圧が維持されるように無効電力を出力することで電圧の制御を行う。」
b「【0033】
無効電力協調制御装置50は、当該無効電力協調制御装置50と接続するPV-PCS32(以下「自箇所PV-PCS32」という。)からの電圧計測値の収集、編集、および監視等を行う。また、無効電力協調制御装置50は、目標電圧変更依頼を行う機能を有する。
ここで、収集は、自箇所PV-PCS32が計測した自端の電圧値を、例えば一定周期毎に当該自箇所PV-PCS32から取得すること等である。編集は、収集した電圧計測値をもとに、例えば一定期間の電圧移動平均値を算出すること等である。監視は、電圧変動を監視すること等である。また、目標電圧変更依頼は、最新の電圧移動平均値が許容電圧範囲(後述)から逸脱したときに発行される。
具体的には、無効電力協調制御装置50は、電圧監視部51、演算処理部52、目標電圧変更指令部53、記憶部54、および通信部55を備えている。
【0034】
電圧監視部51は、自箇所PV-PCS32で計測された電圧(V)を監視しており、電圧計測値を、例えば一定周期毎に取得して演算処理部52に送出する。
また、電圧監視部51は、自箇所PV-PCS32から、当該自箇所PV-PCS32の現在の有効電力や、当該自箇所PV-PCS32の現在の無効電力などを取得して、演算処理部52に送出する。
【0035】
演算処理部52は、各種の演算処理を実行する。
具体的には、演算処理部52は、電圧監視部51から出力された電圧計測値を、例えば一定期間、記憶部54に保存する。
また、演算処理部52は、電圧監視部51から最新の電圧計測値を取得する度に、記憶部54に既に保存されている過去の電圧計測値および最新の電圧計測値を用いて電圧移動平均値を算出し、この電圧移動平均値を、例えば一定期間、記憶部54に保存する。
ここで、記憶部54には、許容電圧範囲が予め記憶されている。許容電圧範囲は、電気事業法等で規定された自箇所PV-PCS32の規定電圧範囲(例えば100Vの受電の場合、95V~107Vの範囲)内であって、当該規定電圧範囲よりも狭い範囲である。なお、許容電圧範囲は、時間的に可変に設定され得る。
【0036】
また、演算処理部52は、最新の電圧移動平均値が、記憶部54に予め記憶されている許容電圧範囲から逸脱したときに、目標電圧変更依頼情報を生成する。演算処理部52は、この目標電圧変更依頼情報を、予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信する。
目標電圧変更依頼情報は、電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され、例えば、電圧移動平均値が許容電圧範囲を上回った場合、電圧を下げる依頼を発行する。なお、許容電圧範囲逸脱の判定に電圧移動平均値を使用する理由は、秒単位の髭状の電圧変化による無用な目標電圧変更依頼情報の発行を避けるためである。
【0037】
また、演算処理部52は、他の無効電力協調制御装置50から目標電圧変更依頼情報を受信したときに、当該目標電圧変更依頼情報に含まれる電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向とに基づいて目標電圧変更指令を生成し、これを目標電圧変更指令部53に出力する。目標電圧変更指令部53は、この指令を自箇所PV-PCS32に出力する。自箇所PV-PCS32は、目標電圧変更指令部53からの目標電圧変更指令に応じて、当該自箇所PV-PCS32に記憶されている目標電圧範囲を変更する。」
c「【0045】
そして、電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱した場合(ステップS4;No)、演算処理部52は、目標電圧変更依頼情報を発行するために、まず、自箇所PV-PCS32の力率(85%)制約と、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の有効電力と、に基づいて、具体的には式(1)によって、自箇所PV-PCS32が出力可能な最大無効電力を算出する(ステップS5)。
最大無効電力=(√(1-0.852)/0.85)×現在の有効電力…(1)
【0046】
次いで、演算処理部52は、ステップS5で算出した最大無効電力と、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の無効電力と、に基づいて、具体的には式(2)によって、自箇所PV-PCS32の現在の無効電力余力を算出する(ステップS6)。
無効電力余力=最大無効電力-現在の無効電力…(2)」
d「【0073】
<変形例1>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
第1実施形態では、電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱した場合に、目標電圧変更依頼情報を発行するように構成したが、目標電圧変更依頼情報を発行するタイミングは、自箇所PV-PCS32が無効電力を調整可能な状態である間であれば適宜任意に変更可能である。
例えば、自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合に、目標電圧変更依頼情報を発行するように構成することも可能である。すなわち、無効電力協調制御装置50は、図3に示す目標電圧変更依頼発行処理に代えて、図6に示す目標電圧変更依頼発行処理を実行するように構成することも可能である。」
e 図1
[図:0001438291000001.jpg]
(イ)甲1発明の認定
前記(ア)の記載に基づき、以下bのとおり、甲1発明を認定する。その際、以下aを踏まえ、変形例1に基づいて認定する。
a 変形例1に基づく認定
変形例1について記載する段落【0073】には、「第1実施形態では、電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱した場合に、目標電圧変更依頼情報を発行するように構成したが、目標電圧変更依頼情報を発行するタイミングは、自箇所PV-PCS32が無効電力を調整可能な状態である間であれば適宜任意に変更可能」と記載されている。
よって、甲1発明を変形例1に基づいて認定するに際し、「目標電圧変更依頼情報を発行するタイミング」以外については、第1実施形態に基づいて認定する。
b 甲1発明の認定
なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を1a~1a’に分説し、「構成1a」のようにして参照する。
1a 電力制御システム1において、(【0027】)
1b 高圧配電線11に2本の低圧配電線31が接続されており、低圧配電線31には電圧制御機器としての太陽光発電用パワーコンディショナ(PV-PCS)32が接続されており、(【0028】)
1c PV-PCS32には、無効電力協調制御装置50と、発電源(PV)と、が接続されており、(【0029】)
1c1 低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有しており、(【0029】)
1c2 当該PV-PCS32の制御目標である目標電圧範囲が予め記憶されており、自端の電圧値が当該目標電圧範囲内に収まるように無効電力出力を調整するものであり、(【0030】)
1d 無効電力協調制御装置50は、当該無効電力協調制御装置50と接続するPV-PCS32(以下「自箇所PV-PCS32」という。)からの電圧計測値の収集、編集、および監視等を行い、また、目標電圧変更依頼を行う機能を有し、ここで、収集は、自箇所PV-PCS32が計測した自端の電圧値を、例えば一定周期毎に当該自箇所PV-PCS32から取得すること等であり、電圧監視部51、演算処理部52、目標電圧変更指令部53、記憶部54および通信部55を備えており、(【0033】)
1d1 電圧監視部51は、自箇所PV-PCS32から、当該自箇所PV-PCS32の現在の有効電力や、当該自箇所PV-PCS32の現在の無効電力などを取得して、演算処理部52に送出し、(【0034】)
1d2 演算処理部52は、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の有効電力に基づいて自箇所PV-PCS32が出力可能な最大無効電力を算出し、(【0045】)
1d3 演算処理部52は、最大無効電力と、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の無効電力と、に基づいて、自箇所PV-PCS32の現在の無効電力余力を算出し、(【0046】)
1d4 自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合に、目標電圧変更依頼情報を発行するように構成され、(【0073】)
1d5 演算処理部52は、この目標電圧変更依頼情報を、予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信し、(【0036】)
1d6 目標電圧変更依頼情報は、電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され、(【0036】)
1d7 演算処理部52は、他の無効電力協調制御装置50から目標電圧変更依頼情報を受信したときに、当該目標電圧変更依頼情報に含まれる電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向とに基づいて目標電圧変更指令を生成し、これを目標電圧変更指令部53に出力し、(【0037】)
1d8 目標電圧変更指令部53は、この指令を自箇所PV-PCS32に出力し、自箇所PV-PCS32は、目標電圧変更指令部53からの目標電圧変更指令に応じて、当該自箇所PV-PCS32に記憶されている目標電圧範囲を変更する(【0037】)
1a’ 電力制御システム1。
イ 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Aについて
発明特定事項1Aは、「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、」というものである。
甲1発明の「電力制御システム1」(構成1a)は、「PV-PCS32」(構成1c)が「当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有して」いるもの(構成1c1)であり、電力を調整していることは明らかであるから、本件発明1の「電力調整システム」に相当する。
甲1発明の「低圧配電線31」(構成1b)は、「電力」を「搬送」するものであることは当然であり、本件発明1の「電力搬送線路」に相当する。
また、甲1発明では「電力制御システム1において」(構成1a)「PV-PCS32」(構成1c)は、「低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有して」いるもの(構成1c1)である。ここで、本件発明1の「皮相電力を調整する」ことに関し、本件特許の明細書には、「電線における皮相電力に関するパラメータのHPS21による調整の手法の他の一例を説明する。電線に無効電力が生じている場合において、HPS21が電線に電流を供給することにより、電線における無効電力を低減する。」(【0020】)と記載されており、無効電力を調整することは「皮相電力を調整する」ことの一例と解される。
よって、本件発明1の「電力調整システム」と甲1発明の「電力制御システム1」は、いずれも「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであ」る点で一致する。
(イ)発明特定事項1Bについて
発明特定事項1Bは、「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、」というものである。
甲1発明の「低圧配電線31」(構成1b)が本件発明1の「電力搬送線路」に相当するのは、前記(ア)のとおりである。
甲1発明の「PV-PCS32」(構成1c)は、本件発明1の「機器」に相当する。
そして前記(ア)のとおり、甲1発明の「PV-PCS32」(構成1c)は、「低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有して」いるもの(構成1c1)であり、無効電力を調整することが本件発明1の「皮相電力を調整する」ことの一例と解されることは、前記(ア)のとおりであることも鑑みれば、当該調整は、本件発明1の「調整」に相当する。
よって、本件発明1の「機器」と甲1発明の「PV-PCS32」は、いずれも「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器」である点で一致する。
(ウ)発明特定事項1Cについて
発明特定事項1Cは、「前記機器による前記調整を制御する制御手段と、」というものである。
甲1発明の「PV-PCS32」が本件発明1の「機器」に相当することは、前記(イ)のとおりである。
また、甲1発明の「PV-PCS32」が「低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整すること」における当該調整が本件発明1の「調整」に相当することも、前記(イ)のとおりである。ここで、「PV-PCS32」は、「制御目標である目標電圧範囲が予め記憶されており、自端の電圧値が当該目標電圧範囲内に収まるように無効電力出力を調整するもの」(構成1c2)である。
そして、甲1発明の「無効電力協調制御装置50」が「備えて」いる「演算処理部52」及び「目標電圧変更司令部53」(構成1d)について、「演算処理部52は、他の無効電力協調制御装置50から目標電圧変更依頼情報を受信したときに、当該目標電圧変更依頼情報に含まれる電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向とに基づいて目標電圧変更指令を生成し、これを目標電圧変更指令部53に出力」するもの(構成1d7)であり、また、「目標電圧変更指令部53は、この指令を自箇所PV-PCS32に出力し、自箇所PV-PCS32は、目標電圧変更指令部53からの目標電圧変更指令に応じて、当該自箇所PV-PCS32に記憶されている目標電圧範囲を変更する」もの(構成1d8)である。ゆえに、甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、「自箇所PV-PCS32」の「無効電力出力を調整する」ことを制御しているといえるものであり、甲1発明の「無効電力協調制御装置50」(構成1c)は、本件発明1の「制御手段」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1の「制御手段」と甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、いずれも「前記機器による前記調整を制御する制御手段」である点で一致する。
(エ)発明特定事項1Dについて
発明特定事項1Dは、「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、」というものである。
甲1発明の「電力制御システム1」が本件発明1の「電力調整システム」に相当することは、前記(ア)のとおりである。
甲1発明の「現在の有効電力」及び「現在の無効電力」(構成1d1)は、「電力制御システム1」の中における電力に関する情報であるから、本件発明1の「システム情報」に相当する。
甲1発明は「電力制御システム1において」(構成1a)「無効電力協調制御装置50」が「備えて」いる「電圧監視部51」(構成1d)「は、自箇所PV-PCS32から、当該自箇所PV-PCS32の現在の有効電力や、当該自箇所PV-PCS32の現在の無効電力などを取得して」いる(構成1d1)から、取得手段を有していることは明らかである。
よって、本件発明1と甲1発明は、いずれも「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を有する点で一致する。
(オ)発明特定事項1Eについて
発明特定事項1Eは、「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段と、」というものである。
以下a~dのとおり検討する。
a 対比済の構成について
甲1発明の「現在の有効電力」及び「現在の無効電力」が本件発明1の「システム情報」に相当することは、前記(エ)のとおりである。
甲1発明の「PV-PCS32」が「低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整すること」における当該調整が本件発明1の「調整」に相当することは、前記(イ)のとおりである
甲1発明の「PV-PCS32」が本件発明1の「機器」に相当することは、前記(イ)のとおりである。
甲1発明の「無効電力協調制御装置50」が本件発明1の「制御手段」に相当することは、前記(ウ)のとおりである。
b 「調整の能力」について
甲1発明において、「100×無効電力余力/最大無効電力」である「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合」(構成1d4)は、「現在の無効電力余力」が「最大無効電力と、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の無効電力と、に基づいて、」「算出」されるもの(構成1d3)であることも踏まえれば、調整の余力を示していることは明らかである。よって、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)」は、本件発明1の「前記調整の能力」に相当する。
c 「管理システム」について
甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、「電力制御システム1において」(構成1a)「当該無効電力協調制御装置50と接続するPV-PCS32(以下「自箇所PV-PCS32」という。)からの電圧計測値の収集、編集、および監視等を行い、また、目標電圧変更依頼を行う機能を有」するもの(構成1d)である。また、「目標電圧変更依頼」は、「この目標電圧変更依頼情報を、予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」すること(構成1d5)で行うものである。そして、この「無効電力協調制御装置50」の動作は、「他の無効電力協調制御装置50」(構成1d5)においても同様であると認められる。
してみると、「他の無効電力協調制御装置50」についても、「無効電力協調制御装置50」に対して「目標電圧変更依頼を行う」際には、「この目標電圧変更依頼情報を、予め定められた」「無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」するものと認められる。これは、本願発明でいう「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する」に相当するものであり、ゆえに、甲1発明の「他の無効電力協調制御装置50」は、本件発明1の「管理システム」に相当する。
d 発明特定事項1E全体の対比
以上のa~cを踏まえ、対比を行う。
甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)」(構成1d4)における「無効電力余力」及び「最大無効電力」は、「電圧監視部51」において「自箇所PV-PCS32から、当該自箇所PV-PCS32の現在の有効電力や、当該自箇所PV-PCS32の現在の無効電力などを取得して、演算処理部52に送出し」(構成1d1)、「演算処理部52」において「電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の有効電力に基づいて自箇所PV-PCS32が出力可能な最大無効電力を算出し」(構成1d2)、また「最大無効電力と、電圧監視部51が取得した自箇所PV-PCS32の現在の無効電力と、に基づいて、自箇所PV-PCS32の現在の無効電力余力を算出」すること(構成1d3)で得られるものである。すなわち、「無効電力余力」及び「最大無効電力」は、「現在の有効電力」及び「現在の無効電力」(構成1d1)から特定されるものである。ゆえに、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合」(構成1d4)は、本件発明1の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。また、「通信部55」(構成1d)は、情報を「予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」するもの(構成1d5)であるから、情報の内容を別にすれば、本件発明1の「出力手段」に相当する。
一方、甲1発明において、当該「場合に」「発行」され、「予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」する「目標電圧変更依頼情報」(構成1d4及び1d5)とは、「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され」るもの(構成1d6)であり、これは「自箇所PV-PCS」による調整が可能な皮相電力に関する情報ではない。ゆえに、甲1発明の「通信部55」が出力する情報とは、当該情報(「自箇所PV-PCS」による調整が可能な皮相電力に関する情報)ではない。また、当該情報を出力しない以上、当該情報を出力するタイミングも何ら特定されるものではない。
よって、本件発明1の「出力手段」と甲1発明の「通信部55」は、いずれも「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、」「当該管理システムに」「情報を出力する出力手段」である点で一致する。
一方、「出力手段」が「出力する」「情報」とは、本件発明1においては、「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」であるのに対し、甲1発明においては「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され」る「目標電圧変更依頼情報」である点で相違する。また、本件発明1において「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」は、「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても」「出力する」のに対し、甲1発明においてはそのような情報を出力しない以上、当該情報を出力するタイミングも何ら特定されない点で相違する。
(カ)発明特定事項1A’について
発明特定事項1A’は、「を備える電力調整システム。」というものである。これは、「電力調整システム」が、発明特定事項1A~1E「を備える」ことを特定するものである。
そして、発明特定事項1A~1Eについては、前記(ア)~(オ)のとおりである。
ウ 一致点及び相違点について
前記イによれば、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(ア)一致点
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、
前記機器による前記調整を制御する制御手段と、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、当該管理システムに情報を出力する出力手段と、
を備える電力調整システム。」
(イ)相違点
「出力手段」が「出力する」「情報」とは、本件発明1においては、「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」であるのに対し、甲1発明においては「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され」る「目標電圧変更依頼情報」である点。また、本件発明1において「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」は、「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても」「出力する」のに対し、甲1発明においてはそのような情報を出力しない以上、当該情報を出力するタイミングも何ら特定されない点。(発明特定事項1E)
エ 相違点についての判断
本件発明1の「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」と、甲1発明の「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され」る「目標電圧変更依頼情報」は、全く異なる概念であることを鑑みれば、前記ウ(イ)の相違点は、実質的な相違点であるといえるため、本件発明1は、甲1発明と同一であるということはできない。
また、「出力手段」が「出力する」「情報」を、「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」とすることは、甲2及び3のいずれにも、記載も示唆もされていない。よって、相違点は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明ではないから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件発明1は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(2)本件発明2~6及び9について
本件発明2~6及び9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明2~6及び9と甲1発明との間には、前記(1)ウ(イ)に示した相違点がある。
そして、当該相違点についての判断は、前記(1)エのとおりである。ゆえに、前記(1)オ同様、本件発明2、3及び9についても甲1発明ではないから、請求項2、3及び9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。また、本件発明2~6及び9は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項2~6及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
2 甲2を主たる引用文献とした理由の検討
甲2を主たる引用文献とした理由(前記第5、1(2)及び2(2))について検討する。
(1)本件発明1について
ア 甲2の記載と甲2発明
甲2の記載は以下(ア)のとおりである。また、当該記載に基づいて甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)を以下(イ)のとおり認定する。
(ア)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
a「【0030】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係わる制御装置が制御の対象とする配電系統の要部の構成例を概略的に示したものである。同図において、SSは配電用変電所に設置された配電用変圧器、Bは変圧器SSの二次側に接続された母線、F1 ,F2 ,…は母線Bに接続されたフィーダ(高圧配電線)である。図示してないが、フィーダF1 ,F2 ,…にはそれぞれ変圧器を介して図示しない低圧配電線が接続されている。
【0031】1は配電系統を統括する中央装置で、この中央装置1は配電用変電所に設けられている。本発明においては、フィーダF1 ,F2 ,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うためにローカル装置2が各フィーダに対して少くとも1つ設けられている。各フィーダにはまた、ローカル装置2から離れた少くとも1つの箇所に設定された検出点でフィーダの3相の電圧及び電流を検出する電圧・電流検出装置3が設けられている。
【0032】また中央装置1と各ローカル装置2及び電圧・電流検出装置3との間で通信を行わせるために通信線4が設けられている。中央装置1側には、各ローカル装置2及び電圧・電流検出装置3から中央装置1に送信されてくるデータの受信と中央装置1から各ローカル装置2へのデータの送信とを行なうデータ送受信装置5が設けられている。
【0033】各ローカル装置2は、電圧調整器及び無効電力調整器を含むローカル機器2Aと、ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流をそれぞれ検出する内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cと、ローカル機器2Aを構成する電圧調整器及び無効電力調整器を制御する機器制御装置2Dと、電圧調整器及び無効電力調整器の制御目標値の設定と中央装置1との間の通信とを行う通信・制御目標設定装置2Eとを備えている。内部電圧センサ2Bは例えば計器用変圧器からなり、内部電流センサ2Cは変流器からなっている。」
b「【0035】通信・制御目標設定装置2Eは、内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cがそれぞれ検出した電圧情報及び電流情報とローカル装置の状態を示す状態情報とを通信線4に送出して中央装置1に送信する送信手段と、中央装置1から送信されてくる信号を受信する受信手段とを備えた通信装置と、対応するフィーダの電圧及び無効電力のそれぞれの制御目標値である電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を設定する制御目標設定装置とにより構成される。
【0036】機器制御装置2Dは、対応するフィーダの各部の電圧及び無効電力をそれぞれ制御目標設定装置が設定した電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に保つように電圧調整器及び無効電力調整器を制御する。」
c「【0038】中央装置1には、データ送受信装置5が受信した信号に含まれる配電系統各部の電圧情報及び電流情報から各電圧情報及び電流情報の検出点(各ローカル装置2の設置箇所及び電圧・電流検出装置3の設置箇所)における有効電力及び無効電力を演算する有効・無効電力演算手段と、演算された有効電力及び無効電力と短期予測負荷変動と各ローカル装置から送信された信号に含まれる状態情報とから各フィーダの各部での電圧の変動幅を設定値以下に保つために必要な各ローカル装置内の電圧調整器の制御目標値及び各ローカル装置の設置個所での無効電力を設定値以下に保つために必要な無効電力調整器の制御目標値をそれぞれ電圧マクロ目標値及び無効電力マクロ目標値として決定するマクロ目標値決定手段と、電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含むマクロ指令をデータ送受信装置5と通信線4とを通して各ローカル装置2に送信するマクロ指令発生手段とを設けておく。これらの手段は、コンピュータを用いて所定のプログラムを実行させることにより実現される。」
d「【0071】各ローカル装置においては、先ず図4のステップ1において、中央装置1から送信されたマクロ指令を受信したか否かを判定する。その結果、マクロ指令を受信したと判定された場合には、次いでステップ2において受信したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対するローカル装置の調整量を算出し、ステップ3に進む。ステップ3において、算出したローカル装置の調整量と現状のローカル装置の残調整量を比較し、マクロ指令による制御目標値に対して対応できるか否かを判定する。その結果、ローカル装置の残調整量で対応できると判定した場合には、ステップ5に進み、動作時間(現時点から実際に動作を行なわせるまでの時間)の設定があるか否かを判定する。これは、マクロ指令の予測に基づいて算出した制御目標値の場合は動作時間(現時点より未来の時間)が含まれているからである。動作時間の設定がない場合には、ステップ6において、マクロ指令に含まれる制御目標値を採用し、ステップ7に進む。」
e「【0074】またステップ3においてマクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、ステップ4においてマクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信し、ステップ5へ進む。
【0075】ステップ5において、マクロ指令に制御目標値として動作させる動作時間の設定があると判定された場合には、ステップ13に進み、マクロ指令に含まれる動作時間になるまでタイマを動作させる。次いでステップ12に進んで既目標値を継続し、さらにステップ7へ進む。
【0076】ステップ7においては、ステップ6及び12で設定した制御目標値に対して、機器制御装置2Dに電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を与える。機器制御装置2Dは、フィーダの電圧を電圧制御目標値に保ち、無効電力を無効電力制御目標値に保つように、電圧調整器及び無効電力調整器を制御する。次いで、ステップ8において、制御後の電圧制御目標値及び無効電力目標値に対する現調整量を取得し、ステップ9に進む。ステップ9において、選定したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対する、ローカル装置の現調整量と、制御後のローカル装置の残調整量とを比較し、ローカル装置が持つ全調整量に対して残調整量に裕度があるか否かを判定する。その結果、ローカル装置の残調整量に裕度があると判定された場合には、ステップ1に戻る。また、残調整量に裕度がないと判定された場合には、ステップ10に進み、ステップ10において、中央装置に残調整量に裕度がないことを状態情報の1つとして送信し、ステップ1に進む。」
f 図1
[図:0001438291000002.jpg]
(イ)甲2発明の認定
前記(ア)の記載に基づき、以下のとおり、甲2発明を認定する。なお、後の参照の便宜のため、甲2発明を2a~2a’に分説し、「構成2a」のようにして参照する。
2a 制御装置が制御の対象とする配電系統であって、(【0030】)
2b フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うためにローカル装置2が各フィーダに対して少くとも1つ設けられており、(【0031】)
2c 各ローカル装置2は、電圧調整器及び無効電力調整器を含むローカル機器2Aと、ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流をそれぞれ検出する内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cと、ローカル機器2Aを構成する電圧調整器及び無効電力調整器を制御する機器制御装置2Dと、電圧調整器及び無効電力調整器の制御目標値の設定と中央装置1との間の通信とを行う通信・制御目標設定装置2Eとを備え、(【0033】)
2d 通信・制御目標設定装置2Eは、内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cがそれぞれ検出した電圧情報及び電流情報とローカル装置の状態を示す状態情報とを通信線4に送出して中央装置1に送信する送信手段を備えた通信装置により構成され、(【0035】)
2e 中央装置1には、データ送受信装置5が受信した信号に含まれる配電系統各部の電圧情報及び電流情報から各電圧情報及び電流情報の検出点(各ローカル装置2の設置箇所及び電圧・電流検出装置3の設置箇所)における有効電力及び無効電力を演算する有効・無効電力演算手段と、演算された有効電力及び無効電力と短期予測負荷変動と各ローカル装置から送信された信号に含まれる状態情報とから各フィーダの各部での電圧の変動幅を設定値以下に保つために必要な各ローカル装置内の電圧調整器の制御目標値及び各ローカル装置の設置個所での無効電力を設定値以下に保つために必要な無効電力調整器の制御目標値をそれぞれ電圧マクロ目標値及び無効電力マクロ目標値として決定するマクロ目標値決定手段と、電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含むマクロ指令をデータ送受信装置5と通信線4とを通して各ローカル装置2に送信するマクロ指令発生手段が設けられ、(【0038】)
2f 各ローカル装置においては、中央装置1から送信されたマクロ指令を受信したか否かを判定し、マクロ指令を受信したと判定された場合には受信したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対するローカル装置の調整量を算出し、マクロ指令による制御目標値に対して対応できるか否かを判定し、(【0071】)
2f1 ローカル装置の残調整量で対応できると判定した場合には、動作時間の設定があるか否か判定し、動作時間の設定がない場合には、マクロ指令に含まれる制御目標値を採用し、(【0071】)、
2f11 制御目標値に対して、機器制御装置2Dに電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を与え、機器制御装置2Dは、フィーダの電圧を電圧制御目標値に保ち、無効電力を無効電力制御目標値に保つように、電圧調整器及び無効電力調整器を制御し、(【0076】)
2f2 マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、マクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信する、(【0074】)
2a’ 配電系統。(【0030】)
イ 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Aについて
発明特定事項1Aは、「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、」というものである。
甲2発明の「配電系統」(構成2a)は、「無効電力の調整とを行うためにローカル装置2」が「設けられて」いるもの(構成2b)であり、本件発明1の「電力調整システム」に相当する。
甲2発明の「フィーダ」(構成2b)は、「電力」を「搬送」するものであることは当然であり、本件発明1の「電力搬送線路」に相当する。
また、甲2発明において「配電系統」(構成2a)の「各ローカル装置2は、電圧調整器及び無効電力調整器を含むローカル機器2A」「を備え」ている(構成2c)。ここで、無効電力を調整することが本件発明1の「皮相電力を調整する」ことの一例と解されることは、前記1(1)イ(ア)のとおりである。
よって、本件発明1の「電力調整システム」と甲2発明の「配電系統」は、いずれも「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであ」る点で一致する。
(イ)発明特定事項1Bについて
発明特定事項1Bは、「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、」というものである。
甲2発明の「フィーダ」(構成2b)が本件発明1の「電力搬送線路」に相当することは、前記(ア)のとおりである。
また、甲2発明の「ローカル機器2A」(構成2c)は、本件発明1の「機器」に相当する。
そして、甲2発明において「ローカル装置2」は、「フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うために」「各フィーダに対して少くとも1つ設けられており」(構成2b)、また前記(ア)のとおり、「各ローカル装置2は、電圧調整器及び無効電力調整器を含むローカル機器2A」「を備え」ている(構成2c)ものである。さらに、無効電力を調整することが本件発明1の「皮相電力を調整する」ことの一例と解されることは、前記1(1)イ(ア)のとおりであることも鑑みれば、当該調整は、本件発明1の「調整」に相当する。
よって、本件発明1の「機器」と甲2発明の「ローカル機器2A」は、いずれも「前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器」である点で一致する。
(ウ)発明特定事項1Cについて
発明特定事項1Cは、「前記機器による前記調整を制御する制御手段と、」というものである。
甲2発明の「ローカル機器2A」が本件発明1の「機器」に相当することは、前記(イ)のとおりである。
また、甲2発明において、「ローカル装置2」が「フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行う」ことにおける当該調整が本件発明1の「調整」に相当することも、前記(イ)のとおりである。
そして、甲2発明の「機器制御装置2D」は、「ローカル機器2Aを構成する電圧調整器及び無効電力調整器を制御する」ものであるから、甲2発明の「機器制御装置2D」は、本件発明1の「制御手段」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1の「制御手段」と甲2発明の「機器制御装置2D」は、いずれも「前記機器による前記調整を制御する制御手段」である点で一致する。
(エ)発明特定事項1Dについて
発明特定事項1Dは、「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、」というものである。
甲2発明の「配電系統」が本件発明1の「電力調整システム」に相当することは、前記(ア)のとおりである。
甲2発明の「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流」(構成2c)は、「配電系統」の中における「電圧及び電流」という情報であるから、本件発明1の「システム情報」に相当する。
甲2発明において「配電系統」(構成2a)の「各ローカル装置2は、」「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流をそれぞれ検出する内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cと」「を備え」ている(構成2c)。ゆえに、甲2発明は、「内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2C」は「検出」していることから、取得手段を有していることは明らかである。
よって、本件発明1と甲2発明は、いずれも「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を有している点で一致する。
(オ)発明特定事項1Eについて
発明特定事項1Eは、「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段と、」というものである。
以下a~dのとおり検討する。
a 対比済の構成について
甲2発明の「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流」が本件発明1の「システム情報」に相当することは、前記(エ)のとおりである。
甲2発明において、「ローカル装置2」が「フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行う」ことにおける当該調整が本件発明1の「調整」に相当することも、前記(イ)のとおりである。
甲2発明の「ローカル機器2A」が本件発明1の「機器」に相当することは、前記(イ)のとおりである。
甲2発明の「機器制御装置2D」が本件発明1の「制御手段」に相当することは、前記(ウ)のとおりである。
b 「調整の能力」について
甲2発明の「ローカル装置の残調整量」(構成2f1)とは、「ローカル装置」の「調整」可能な「量」の「残」りであり、本件発明1の「前記調整の能力」に相当する。
c 「管理システム」について
甲2発明の「中央装置1」は、「電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含むマクロ指令をデータ送受信装置5と通信線4とを通して各ローカル装置2に送信するマクロ指令発生手段が設けられ」ている(構成2e)。また、「各ローカル装置においては、中央装置1から送信されたマクロ指令を受信したか否かを判定し、マクロ指令を受信したと判定された場合には受信したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対するローカル装置の調整量を算出し、マクロ指令による制御目標値に対して対応できるか否かを判定し」(構成2f)、「ローカル装置の残調整量で対応できると判定した場合には、動作時間の設定があるか否か判定し、動作時間の設定がない場合には、マクロ指令に含まれる制御目標値を採用し」(構成2f1)、「制御目標値に対して、機器制御装置2Dに電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を与え、機器制御装置2Dは、フィーダの電圧を電圧制御目標値に保ち、無効電力を無効電力制御目標値に保つように、電圧調整器及び無効電力調整器を制御」するもの(構成2f11)である。さらに、「各ローカル装置2」が「備え」る「機器制御装置2D」は、「ローカル機器2Aを構成する電圧調整器及び無効電力調整器を制御する」もの(構成2c)である。
してみると、甲2発明の「電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含むマクロ指令をデータ送受信装置5と通信線4とを通して各ローカル装置2に送信する」は、本件発明1の「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する」に相当するものであり、ゆえに、甲2発明の「中央装置1」は、本件発明1の「管理システム」に相当する。
d 発明特定事項1E全体の対比
以上のa~cを踏まえ、対比を行う。
甲2発明において、「マクロ指令」は「電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含む」ものであり、ここで「電圧マクロ目標値及び無効電力マクロ目標値」は「演算された有効電力及び無効電力と短期予測負荷変動と各ローカル装置から送信された信号に含まれる状態情報とから各フィーダの各部での電圧の変動幅を設定値以下に保つために必要な各ローカル装置内の電圧調整器の制御目標値及び各ローカル装置の設置個所での無効電力を設定値以下に保つために必要な無効電力調整器の制御目標値」であり、ここで「有効電力及び無効電力」は、「中央装置1」の「データ送受信装置5が受信した信号に含まれる配電系統各部の電圧情報及び電流情報から各電圧情報及び電流情報の検出点(各ローカル装置2の設置箇所及び電圧・電流検出装置3の設置箇所)における」ものを「演算」したものである(構成2e)。さらに、「各ローカル装置2」が「備え」る「通信・制御目標設定装置2E」(構成2c)は、「内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cがそれぞれ検出した電圧情報及び電流情報とローカル装置の状態を示す状態情報とを通信線4に送出して中央装置1に送信する」もの(構成2d)であり、ここで「内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2C」は、「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流をそれぞれ検出する」もの(構成2c)である。以上を総合すると、「マクロ指令」は「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流」によって定められているものであることは明らかである。また、「マクロ指令」は、「中央装置1」から「各ローカル装置2に送信」され、「各ローカル装置においては、中央装置1から送信されたマクロ指令を受信したか否かを判定」するもの(構成2f)である。ゆえに、甲2発明の「各ローカル装置において」(構成2f)「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合」(構成2f1)とは、本件発明1の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。
また、「各ローカル装置2は、電圧調整器及び無効電力調整器を含むローカル機器2A」「を備え」ている(構成2c)ものであり、「内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2C」は「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流をそれぞれ検出する」もの(構成2c)である。さらに、前記(ア)のとおり、無効電力を調整することが本件発明1の「皮相電力を調整する」ことの一例と解されるものである。ゆえに、甲2発明の「内部電圧センサ2B及び内部電流センサ2Cがそれぞれ検出した電圧情報及び電流情報とローカル装置の状態を示す状態情報」は、本件発明1の「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」に相当するものであり、また甲2発明の「通信・制御目標設定装置2E」は、本件発明1の「出力手段」に相当する。
一方、甲2発明において「状態情報」の「中央装置」への「送信」については、「各ローカル装置においては、中央装置1から送信されたマクロ指令を受信したか否かを判定し、マクロ指令を受信したと判定された場合には受信したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対するローカル装置の調整量を算出し、マクロ指令による制御目標値に対して対応できるか否かを判定し」(構成2f)、「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には」「マクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信する」もの(構成2f2)である。すなわち、「状態情報」の「中央装置」への「送信」は、「各ローカル装置」における「マクロ指令」の受信によるものであり、「中央装置」からの指示がない場合に出力されるものではない。
よって、本件発明1の「出力手段」と甲2発明の「通信・制御目標設定装置2E」は、いずれも「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」について「当該管理システムに当該情報を出力する出力手段」である点で一致する。
一方、「出力手段」が「出力する」「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」は、本件発明1においては、「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても」「出力する」のに対し、甲2発明の「状態情報」の「中央装置」への「送信」は、「各ローカル装置」における「マクロ指令」の受信によるものである点で相違する。
(カ)発明特定事項1A’について
発明特定事項1A’は、「を備える電力調整システム。」というものである。これは、「電力調整システム」が、発明特定事項1A~1E「を備える」ことを特定するものである。
そして、発明特定事項1A~1Eについては、前記(ア)~(オ)のとおりである。
ウ 一致点及び相違点について
前記イによれば、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(ア)一致点
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力搬送線路における皮相電力を調整する機器と、
前記機器による前記調整を制御する制御手段と、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報について、当該管理システムに当該情報を出力する出力手段
を備える電力調整システム。」
(イ)相違点
「出力手段」が「出力する」「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報」は、本件発明1においては、「前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても」「出力する」のに対し、甲2発明の「状態情報」の「中央装置」への「送信」は、「各ローカル装置」における「マクロ指令」の受信によるものである点。(発明特定事項1E)
エ 相違点についての判断
本件発明1の「前記機器による前記調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記皮相電力の調整を前記制御手段に指示する管理システムに出力することの、当該管理システムからの指示がない場合であっても、当該管理システムに当該情報を出力する」ことと、甲2発明の「各ローカル装置」における「マクロ指令」の受信によって「状態情報」を「中央装置」へ「送信」することでは、動作の態様が全く異なるものであることを鑑みれば、前記ウ(イ)の相違点は、実質的な相違点であるといえるため、本件発明1は、甲2発明と同一であるということはできない。
また、「状態情報」を「中央装置」へ「送信」することを、「マクロ指令」の受信」によらずに行うことは、甲1及び3のいずれにも、記載も示唆もされていない。よって、相違点は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は甲2発明ではないから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件発明1は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(2)本件発明2及び9について
本件発明2及び9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明2及び9と甲2発明との間には、前記(1)ウ(イ)に示した相違点がある。
そして、当該相違点についての判断は、前記(1)エのとおりである。ゆえに、前記(1)オ同様、本件発明2及び9についても甲2発明ではないから、請求項2及び9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。また、本件発明2及び9は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項2及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由によって、請求項1~6及び9に係る特許を取り消すことはできない。
第7 申立理由についての当審の判断
1 申立理由1-1及び2-1について
(1)本件発明1~6及び9について
前記第6、1(1)オ及び(2)のとおり、本件発明1及び3は、甲1発明ではないから、請求項1及び3に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件発明1~6及び9は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1~6及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(2)本件発明7について
ア 甲1の記載と甲1発明
甲1の記載及び甲1発明については、前記第6、1(1)アのとおりである。
イ 本件発明7と甲1発明との対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Aについて
前記第6、1(1)イ(ア)同様、本件発明7の「電力調整システム」と甲1発明の「電力制御システム1」は、いずれも「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであ」る点で一致する。
(イ)発明特定事項1Dについて
前記第6、1(1)イ(エ)同様、本件発明7と甲1発明は、いずれも「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を有する点で一致する。
(ウ)発明特定事項7Aについて
発明特定事項7Aは、「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、」というものである。
以下a~dのとおり検討する。
a 対比済の構成について
甲1発明の「現在の有効電力」及び「現在の無効電力」が本件発明7の「システム情報」に相当することは、前記第6、1(1)イ(エ)同様である。
甲1発明の「電力制御システム1」が本件発明7の「電力調整システム」に相当することは、前記第6、1(1)イ(ア)同様である。
甲1発明の「低圧配電線31」が本件発明7の「電力搬送線路」に相当することは、前記第6、1(1)イ(ア)同様である。
b 「調整の能力」について
前記第6、1(1)イ(オ)b同様、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)」は、本件発明7の「前記調整の能力」に相当する。
c 「管理システム」について
甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、「電力制御システム1において」(構成1a)「当該無効電力協調制御装置50と接続するPV-PCS32(以下「自箇所PV-PCS32」という。)からの電圧計測値の収集、編集、および監視等を行い、また、目標電圧変更依頼を行う機能を有」するもの(構成1d)であるから、「電力制御システム1」の管理を行っていることは明らかである。これは、「他の無効電力協調制御装置50」(構成1d5)についても同様である。
よって、甲1発明の「他の無効電力協調制御装置50」は、本件発明7の「管理システム」に相当する。
d 発明特定事項7A全体の対比
以上のa~cを踏まえ、対比を行う。
前記第6、1(1)イ(オ)d同様、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合」(構成1d4)は、本件発明7の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。
そして、当該「場合に」「発行」される「目標電圧変更依頼情報」(構成1d4)は、「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報」(構成1d6)であるから、「電力制御システム1」による調整が可能な皮相電力に関する情報であることは明らかであり、本件発明7の「情報」に相当する。また、「無効電力協調制御装置50」が「備えて」いる「演算処理部52」(構成1d)「は、この目標電圧変更依頼情報を、予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」するもの(構成1d5)である。
さらに、「通信部55」(構成1d)は、「目標電圧変更依頼情報を」「予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」するもの(構成1d5)であるから、本件発明7の「出力手段」に相当する。
よって、本件発明7の「出力手段」と甲1発明の「通信部」は、いずれも「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段」である点で一致する。
(エ)発明特定事項7Bについて
発明特定事項7Bは、「各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、」というものである。
甲1発明の「低圧配電線31」は「高圧配電線11に2本」「接続されて」いるものであり、「低圧配電線31には電圧制御機器としての」「PV-PCS」「32が接続されて」いるもの(構成1b)である。そして、図1も参酌すれば、「PV-PCS32」は複数存在し、それぞれが「低圧配電線31のその接続箇所(自端)における電圧および電流を計測し、当該PV-PCS32の無効電力出力を調整することによって、低圧配電線31の電圧変動(例えば電圧上昇)を抑制する機能を有して」いるもの(構成1c1)であることは明らかである。その余については、前記第6、1(1)イ(イ)を参照。
よって、本件発明7の「機器」と甲1発明の「PV-PCS32」は、いずれも「各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器」である点で一致する。
(オ)発明特定事項7Cについて
発明特定事項7Cは、「前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、」というものである。
甲1発明において「PV-PCS32」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記第6、1(1)イ(ウ)を参照。
よって、本件発明7の「制御手段」と甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、いずれも「前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段」である点で一致する。
(カ)発明特定事項7Dについて
発明特定事項7Dは、「を有し、」というものである。これは、「電力調整システム」(発明特定事項1A)が、発明特定事項1D及び7A~7C「を有」することを特定するものである。
そして、発明特定事項7D及び7A~7Cについては、前記(ア)~(オ)のとおりである。
(キ)発明特定事項7Eについて
発明特定事項7Eは、「前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、」というものである。
甲1発明において「PV-PCS32」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記(ウ)dを参照。
よって、本件発明7と甲1発明は、いずれも「前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ」ている点で一致する。
(ク)発明特定事項7Fについて
発明特定事項7Fは、「前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、」というものである。
甲1発明において「PV-PCS32」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記(ウ)dを参照。
よって、本件発明7と甲1発明は、いずれも「前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力」する点で一致する。
(ケ)発明特定事項7Gについて
発明特定事項7Gは、「前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力することを特徴とする、」というものである。
甲1発明の「通信部55」が「目標電圧変更依頼情報を」「予め定められた他の無効電力協調制御装置50に通信部55および通信ネットワークNを介して送信」するものであり、本件発明7の「出力手段」に相当することは、前記(ウ)dのとおりである。そして、甲1発明において、「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下」との条件を満たした場合には、当該「送信」をすることも前記(ウ)dのとおりである。
しかし、甲1発明において、当該条件とは異なる条件であって「PV-PCS32」について定められた特定条件を満たす場合、「PV-PCS32」の能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても、当該「送信」を行うといった特定はされない。
よって、本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うのに対し、甲1発明の「通信部55」においては、そのように特定されない点で相違する。
(コ)発明特定事項1A’’について
発明特定事項1A’’は、「電力調整システム。」というものである。
そして、「電力調整システム。」については、前記(ア)のとおりである。
ウ 一致点及び相違点について
前記イによれば、本件発明7と甲1発明との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(ア)一致点
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、
を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力することを特徴とする、電力調整システム。」
(イ)相違点
本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うのに対し、甲1発明においては、そのように特定されない点。(発明特定事項7G)
エ 相違点についての判断
(ア)当審の判断
本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うものであり、これは「出力手段」に実質的な場合分けを付加するものである。ゆえに、前記ウ(イ)の相違点は、実質的な相違点であるといえる。
そして、「出力手段」に、このような場合分けを付加することは、甲2及び3のいずれにも、記載も示唆もされていない。よって、相違点は、甲1発明及び甲2又は3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
(イ)特許異議申立人の主張についての判断
特許異議申立書での特許異議申立人の主張及びそれに対する当審の判断は以下のとおりである。
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)ウ(ケ))において、相違点と関連して、以下のとおり主張している。
「甲1発明では、新たな目標電圧上限値が規定電圧上限値以下の場合(ステップS18;Yes)、演算処理部52は新たな目標電圧範囲を設定するよう自箇所PV-PCS32に指示する(段落0062、図4)。この図4のステップS18が本件特許発明7の「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合」に相当する。甲1発明の図4のステップS12がNoであっても、ステップS18がYesになると、目標電圧範囲の変更指示をする(段落0060-0062、図4)。これは、本件特許発明7の「前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力する」に相当する。」
b 特許異議申立人の主張についての検討
(a)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。
「【0057】
次に、目標電圧変更依頼を受けた無効電力協調制御装置50の目標電圧変更動作について説明する。
図4は、目標電圧変更依頼を受けた無効電力協調制御装置50による目標電圧変更処理の一例を示すフローチャートである。
なお、以下の処理は、依頼を受けた無効電力協調制御装置50のみならず、依頼を発行した無効電力協調制御装置50自身も行う。依頼を受けた無効電力協調制御装置50および依頼を発行した無効電力協調制御装置50は、自箇所PV-PCS32に目標電圧範囲を変更するよう指示し、各無効電力協調制御装置50について予め定められた電圧協調制御有効時間(例えば1時間)、目標電圧範囲を固定する。
【0058】
まず、演算処理部52は、通信部55が、目標電圧変更依頼情報を他の無効電力協調制御装置50から受信すると(ステップS11)、当該目標電圧変更依頼情報の内容が電圧を下げる依頼であるか否かを判別する(ステップS12)。
【0059】
電圧を下げる依頼を受けた場合(ステップS12;Yes)、演算処理部52は、新たな目標電圧範囲を決定する(ステップS13)。具体的には、最新の電圧移動平均値を含めてその時点で記憶部54に保存されている複数の電圧移動平均値のうち最大の電圧移動平均値を選択し、最大の電圧移動平均値から電圧変更依頼量を差し引いた値を新たな目標電圧上限値(目標電圧範囲の上限値)とする。このとき、目標電圧範囲の幅を一定に保持するために、新たな目標電圧下限値(目標電圧範囲の下限値)は、例えば新たな目標電圧上限値から不感帯の2倍を差し引いた値とする。
ここで、演算処理部52は、最新の電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱していない(下回っていない)際には、最大の電圧移動平均値から電圧変更依頼量を差し引いた値を新たな目標電圧上限値とする一方で、最新の電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱している(下回っている)際には、その逸脱量と電圧変更依頼量とを比較し、逸脱量の方が大きい場合、最大の電圧移動平均値から逸脱量を差し引いた値を新たな目標電圧上限値とし、電圧変更依頼量の方が大きい場合、最大の電圧移動平均値から電圧変更依頼量を差し引いた値を新たな目標電圧上限値とする。
【0060】
ただし、このように定めた新たな目標電圧下限値が、規定電圧下限値(規定電圧範囲の下限値)を下回る場合(ステップS14;No)、演算処理部52は、目標電圧範囲の変更指示を行わず、依頼を破棄する(ステップS16)。一方、新たな目標電圧下限値が、規定電圧下限値以上の場合(ステップS14;Yes)、演算処理部52は、ステップS13で決定した新たな目標電圧範囲を設定するよう、自箇所PV-PCS32に指示する(ステップS15)。
なお、ステップS14で、新たな目標電圧下限値と規定電圧下限値とを比較するようにしたが、規定電圧下限値に代えて、許容電圧下限値(許容電圧範囲の下限値)を用いてもよい。すなわち、ステップS14で、新たな目標電圧下限値と許容電圧下限値とを比較して、新たな目標電圧下限値が許容電圧下限値を下回る場合に、目標電圧範囲の変更指示を行わずに依頼を破棄し、新たな目標電圧下限値が許容電圧下限値以上の場合に、目標電圧範囲の変更指示を行うようにしてもよい。
【0061】
また、電圧を上げる依頼を受けた場合(ステップS12;No)、演算処理部52は、新たな目標電圧範囲を決定する(ステップS17)。具体的には、最新の電圧移動平均値を含めてその時点で記憶部54に保存されている複数の電圧移動平均値のうち最小の電圧移動平均値を選択し、最小の電圧移動平均値に電圧変更依頼量を加えた値を新たな目標電圧下限値とする。このとき、目標電圧範囲の幅を一定に保持するために、新たな目標電圧上限値は、例えば新たな目標電圧下限値に不感帯の2倍を加えた値とする。
ここで、演算処理部52は、最新の電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱していない(上回っていない)際には、最小の電圧移動平均値に電圧変更依頼量を加えた値を新たな目標電圧下限値とする一方で、最新の電圧移動平均値が許容電圧範囲を逸脱している(上回っている)際には、その逸脱量と電圧変更依頼量とを比較し、逸脱量の方が大きい場合、最小の電圧移動平均値に逸脱量を加えた値を新たな目標電圧下限値とし、電圧変更依頼量の方が大きい場合、最小の電圧移動平均値に電圧変更依頼量を加えた値を新たな目標電圧下限値とする。
【0062】
ただし、このように定めた新たな目標電圧上限値が、規定電圧上限値(規定電圧範囲の上限値)を上回る場合(ステップS18;No)、演算処理部52は、目標電圧範囲の変更指示を行わず、依頼を破棄する(ステップS16)。一方、新たな目標電圧上限値が、規定電圧上限値以下の場合(ステップS18;Yes)、演算処理部52は、ステップS17で決定した新たな目標電圧範囲を設定するよう、自箇所PV-PCS32に指示する(ステップS15)。
なお、ステップS18で、新たな目標電圧上限値と規定電圧上限値とを比較するようにしたが、規定電圧上限値に代えて、許容電圧上限値(許容電圧範囲の上限値)を用いてもよい。すなわち、ステップS18で、新たな目標電圧上限値と許容電圧上限値とを比較して、新たな目標電圧上限値が許容電圧上限値を上回る場合に、目標電圧範囲の変更指示を行わずに依頼を破棄し、新たな目標電圧上限値が許容電圧上限値以下の場合に、目標電圧範囲の変更指示を行うようにしてもよい。」
(b)当審の判断
当審は、甲1発明の「目標電圧範囲の変更指示をする」が、本件発明7の「前記情報を出力する」に相当することを論旨とする異議申立人の主張を採用することはできないと判断する。
前記(a)によれば、甲1には、「目標電圧変更依頼を受けた無効電力協調制御装置50」(【0057】)は、「目標電圧変更依頼情報を他の無効電力協調制御装置50から受信すると」「当該目標電圧変更依頼情報の内容が電圧を下げる依頼であるか否かを判別」し(【0058】)、「電圧を下げる依頼を受けた場合(ステップS12;Yes)」は「新たな目標電圧範囲を決定」し(【0059】)、一方で、「電圧を上げる依頼を受けた場合(ステップS12;No)は「新たな目標電圧範囲を決定」「(ステップS17)」し(【0061】)、「新たな目標電圧上限値が、規定電圧上限値以下の場合(ステップS18;Yes)、演算処理部52は、ステップS17で決定した新たな目標電圧範囲を設定するよう、自箇所PV-PCS32に指示する」することが記載されている。
ここで、「ステップS18;Yes」の際に「指示する」こととは、「自箇所PV-PCS32に」「ステップS17で決定した新たな目標電圧範囲を設定する」ことであり、これは「他の無効電力協調制御装置50に」「送信」される(構成1d5)「電圧変更依頼量と電圧変更依頼方向(電圧の上げ方向または下げ方向)とに関する情報で構成され」ている「目標電圧変更依頼情報」(構成1d6、本件発明7の「情報」に相当(前記(2)イ(ウ)dのとおり))とは異なるものである。
c 小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明7は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3)本件発明8について
本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明8と甲1との間には、前記(2)ウ(イ)に示した相違点がある。
そして、当該相違点についての判断は、前記(2)エのとおりである。ゆえに、前記(2)オ同様、本件発明8は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(4)本件発明10について
ア 甲1の記載と甲1発明
甲1の記載及び甲1発明については、前記第6、1(1)アのとおりである。
イ 本件発明10と甲1発明との対比
本件発明10と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Aについて
前記第6、1(1)イ(ア)同様、本件発明10の「電力調整システム」と甲1発明の「電力制御システム1」は、いずれも「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであ」る点で一致する。
(イ)発明特定事項1Dについて
前記第6、1(1)イ(エ)同様、本件発明10と甲1発明は、いずれも「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を有する点で一致する。
(ウ)発明特定事項7Aについて
前記(2)イ(ウ)同様、本件発明10の「出力手段」と甲1発明の「演算処理部52」が「目標電圧変更依頼情報を」「他の無効電力協調制御装置50に」「送信」することは、いずれも「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段」である点で一致する。
(エ)発明特定事項7Bについて
前記(2)イ(エ)同様、本件発明10の「複数の機器」と甲1発明の「PV-PCS32」は、いずれも「各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器」である点で一致する。
(オ)発明特定事項7Cについて
前記(2)イ(オ)同様、本件発明10の「制御手段」と甲1発明の「無効電力協調制御装置50」は、いずれも「前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段」である点で一致する。
(カ)発明特定事項7Dについて
前記(2)イ(カ)同様である。
(キ)発明特定事項7Eについて
前記(2)イ(キ)同様、本件発明10と甲1発明は、いずれも「前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ」ている点で一致する。
(ク)発明特定事項7Fについて
前記(2)イ(ク)同様、本件発明10と甲1発明は、いずれも「前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力」する点で一致する。
(ケ)発明特定事項10Aについて
発明特定事項10Aは、「前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められ、前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められていることを特徴とする、」というものである。
前記第6、1(1)イ(ア)同様、甲1発明の「低圧配電線31」は、本件発明10の「電力搬送線路」に相当する。
前記第6、1(1)イ(イ)同様、甲1発明の「PV-PCS32」は、本件発明10の「機器」に相当する。
甲1発明において「PV-PCS32」(構成1b)は複数存在することは前記1(2)イ(エ)のとおりであり、また、「高圧配電線11に2本の低圧配電線31が接続されて」いる(構成1b)から、「低圧配電線31」は複数存在するものである。
そして、前記第6、1(1)イ(オ)d同様、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合」(構成1d4)は、本件発明10の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当するものであり、これは複数の「PV-PCS32」の能力と複数の「低圧配電線31」のうちの特定の「低圧配電線31」との関係について定められているものである。
一方、甲1発明において、当該条件を、複数の「低圧配電線31」のうちの「低圧配電線31」と、複数の「PV-PCS32」からなる「PV-PCS32」群の能力との関係ついて定め、当該複数の「低圧配電線31」のうちの「低圧配電線31」と、複数の「PV-PCS32」からなり当該「PV-PCS32」群と同一ではない「PV-PCS32」群である「PV-PCS32」群の能力との関係について定めることは特定されない。
よって、本件発明10と甲1発明は、いずれも「前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められ」ている点で一致する。
一方、本件発明10において「前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められ」ているのに対し、甲1発明においてはそのように特定されない点で相違する。
(コ)発明特定事項1A’’について
前記(2)イ(コ)同様である。
ウ 一致点及び相違点について
前記イによれば、本件発明10と甲1発明との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(ア)一致点
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、
を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、
前記条件は、前記複数の機器の前記能力と複数の電力搬送線路のうちの特定の電力搬送線路との関係について定められていることを特徴とする、電力調整システム。」
(イ)相違点
本件発明10において「前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められ」ているのに対し、甲1発明においてはそのように特定されない点。(発明特定事項10A)
エ 相違点についての判断
(ア)当審の判断
本件発明10において「前記条件は、前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路と、複数の機器からなる第1機器群の前記能力との関係について定められ、当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路と、複数の機器からなり当該第1機器群と同一ではない機器群である第2機器群の前記能力との関係について定められ」ているものとすることは、「条件」に実質的な条件を付加するものである。ゆえに、前記ウ(イ)の相違点は、実質的な相違点であるといえる。
そして、「条件」に、さらにこのような条件を付加することは、甲2及び3のいずれにも、記載も示唆もされていない。よって、相違点は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
(イ)特許異議申立人の主張についての判断
特許異議申立書での特許異議申立人の主張及びそれに対する当審の判断は以下のとおりである。
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)ウ(ソ))において、相違点と関連して、以下のとおり主張している。
「甲1発明には「なお、配電用変圧器10には、複数本の高圧配電線11が接続されていてもよい。」と記載されている(段落0027)。従って、高圧配電線11が複数本あることは明らかである。甲1発明の複数の高圧配電線11の1つが本件特許発明10の「前記複数の電力搬送線路のうちの第1電力搬送線路」に相当し、他の1つが「当該複数の電力搬送線路のうちの第2電力搬送線路」に相当する。
甲1発明には、高圧配電線11に変圧器30を介して高圧配電線11よりも低圧の低圧配電線31が接続され、低圧配電線31に電圧制御機器としての太陽光発電用パワーコンディショナ(PV-PCS)32が接続されていることが記載されている(段落0028、図1)。これから、高圧配電線11(第1電力搬送線路に相当)とPV-PCS32(複数の機器からなる第1機器群に相当)の能力との関係が開示されている。この関係を条件に用いることは当業者が容易に想到し得るものである。第2電力搬送線路と第2機器群の能力との関係についても同様である。
また、甲2発明では、フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うためにローカル装置2が各フィーダに対して少くとも1つ設けられている(段落0030-0032及び図1)。フィーダF1が本件特許発明10の「第1電力搬送線路」に相当し、フィーダF2が本件特許発明10の「第2電力搬送線路」に相当する。フィーダF1に対応するローカル装置2、フィーダF2に対応するローカル装置2の構成が開示されている。電力搬送線路と複数の機器が対応していることから、それらの関係について定められた条件とすることは当業者が容易に想到し得るものである。」
b 特許異議申立人の主張についての検討
(a)甲1発明について
前記第6、1(1)イ(オ)d同様、甲1発明の「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合」(構成1d4)は、本件発明10の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。
しかしながら、「自箇所PV-PCS32の最大無効電力に対する自箇所PV-PCS32の無効電力余力の割合(=100×無効電力余力/最大無効電力)が所定値以下になった場合」を、「低圧配電線31」と複数の「PV-PCS32」からなる機器群の能力との関係について定め、さらに、「低圧配電線31」と当該機器群とは同一ではない複数の「PV-PCS32」からなる機器群の能力との関係について定めることは、甲1に記載も示唆もされていない。
(b)甲2発明について
前記第6、2(1)ア(オ)dのとおり、甲2発明の「各ローカル装置において」(構成2f)「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合」(構成2f1)とは、本件発明10の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。
しかしながら、「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合」を、「フィーダ」と複数の「各ローカル装置」からなる機器群の能力との関係について定め、さらに、「フィーダ」と当該機器群とは同一ではない複数の「各ローカル装置」からなる機器群の能力との関係について定めることは、甲2に記載も示唆もされていない。
(c)小括
以上(a)及び(b)のとおり、異議申立人が主張する容易想到性に関する構成は、甲1及び甲2のいずれにも記載も示唆もされていないため、いずれからも容易に想到し得たものであるということはできない。
c 小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明10は、甲1発明、及び、甲2又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
2 申立理由1-2及び2-2について
(1)本件発明1、2及び9について
前記第6、2(1)オ及び(2)のとおり、本件発明1、2及び9は、甲2発明ではないから、請求項1、2及び9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件発明1、2及び9は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1、2及び9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(2)本件発明7について
ア 甲2の記載と甲2発明
甲2の記載及び甲2発明については、前記第6、2(1)アのとおりである。
イ 本件発明7と甲2発明との対比
本件発明7と甲2発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Aについて
前記第6、2(1)イ(ア)同様、本件発明7の「電力調整システム」と甲2発明の「配電系統」は、いずれも「電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであ」る点で一致する。
(イ)発明特定事項1Dについて
前記第6、2(1)イ(エ)同様、本件発明7と甲2発明は、いずれも「前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を有している点で一致する。
(ウ)発明特定事項7Aについて
発明特定事項7Aは、「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、」というものである。
以下a~dのとおり検討する。
a 対比済の構成について
甲2発明の「ローカル機器(電圧調整器及び無効電力調整器)2Aの設置箇所の近傍に設定された検出点で対応するフィーダの電圧及び電流」が本件発明7の「システム情報」に相当することは、前記第6、2(1)イ(エ)同様である
甲2発明の「配電系統」が本件発明7の「電力調整システム」に相当することは、前記第6、2(1)イ(ア)同様である
甲2発明の「フィーダ」が本件発明7の「電力搬送線路」に相当することは、前記第6、2(1)イ(ア)同様のとおりである。
b 「調整の能力」について
前記第6、2(1)イ(オ)b同様、甲2発明の「ローカル装置の残調整量」(構成2f1)とは、「ローカル装置」の「調整」可能な「量」の「残」りであり、本件発明7の「前記調整の能力」に相当する。
c 「管理システム」について
甲2発明の「中央装置1」は「電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値とを含むマクロ指令をデータ送受信装置5と通信線4とを通して各ローカル装置2に送信するマクロ指令発生手段が設けられ」ている(構成2e)から、マクロ指令によりローカル装置2を管理していることは明らかである。
よって、甲2発明の「中央装置1」は、本件発明7の「管理システム」に相当する。
d 発明特定事項1C全体の対比
以上のa~cを踏まえ、対比を行う。
前記第6、2(1)イ(オ)d同様、甲2発明の「各ローカル装置において」(構成2f)「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合」(構成2f1)とは、本件発明7の「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。
そして、甲2発明の「各ローカル装置においては」(構成2f)、「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、マクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信する」もの(構成2f2)であり、ここで、「マクロ目標値を採用できないことの理由」は、「マクロ目標値」とは「電圧マクロ目標値と無効電力マクロ目標値」であること(構成2e)も踏まえれば、「配電系統」による調整可能な皮相電力に関する情報であることは明らかであり、本件発明7の「情報」に相当する。また、甲2発明の当該「中央装置に送信する」は、本件発明7の「出力手段」に相当する。
よって、本件発明7の「出力手段」と甲2発明の当該「中央装置に送信する」ことは、いずれも「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段」である点で一致する。
(エ)発明特定事項7Bについて
発明特定事項7Bは、「各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、」というものである。
前記第6、2(1)イ(イ)同様、甲2発明の「ローカル機器2A」(構成2c)は、本件発明7の「機器」に相当する。
甲2発明の「ローカル機器2A」は、「各ローカル装置2」が「備え」るもの(構成2c)であり、「ローカル装置2」は「フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うために」「各フィーダに対して少くとも1つ設けられて」いるもの(構成2b)である。ゆえに、「ローカル機器2A」は複数存在し、また、「ローカル機器2A」を「備え」る各々の「ローカル装置2」は、「フィーダF1,F2,…のそれぞれの電圧調整と無効電力の調整とを行うために」「各フィーダに対して少くとも1つ設けられて」いるもの(構成2b)である。その余については、前記第6、2(1)イ(イ)を参照。
よって、本件発明7の「複数の機器」と甲2発明の「ローカル機器2A」は、いずれも「各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器」である点で一致する。
(オ)発明特定事項7Cについて
発明特定事項7Cは、「前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、」というものである。
甲2発明において「ローカル機器2A」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記第6、2(1)イ(ウ)を参照。
よって、本件発明7の「制御手段」と甲2発明の「機器制御装置2D」は、いずれも「前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段」である点で一致する。
(カ)発明特定事項7Dについて
発明特定事項7Dは、「を有し、」というものである。これは、「電力調整システム」(発明特定事項1A)が、発明特定事項1D及び7A~7C「を有」することを特定するものである。
そして、発明特定事項7D及び7A~7Cについては、前記(ア)~(オ)のとおりである。
(キ)発明特定事項7Eについて
発明特定事項7Eは、「前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、」というものである。
甲2発明において「ローカル機器2A」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記(ウ)dを参照。
よって、本件発明7と甲2発明は、いずれも「前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ」ている点で一致する。
(ク)発明特定事項7Fについて
発明特定事項7Fは、「前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力し、」というものである。
甲2発明において「ローカル機器2A」が複数存在することは前記(エ)のとおりである。その余については、前記(ウ)dを参照。
よって、本件発明7と甲2発明は、いずれも「前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力」する点で一致する。
(ケ)発明特定事項7Gについて
発明特定事項7Gは、「前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力することを特徴とする、」というものである。
甲2発明の「中央装置に送信する」(構成2f2)ことが本件発明7の「出力手段」に相当することは、前記(ウ)dのとおりである。
甲2発明において、「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、マクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信する」もの(構成2f2)であることは、前記(ウ)dのとおりである。しかし、甲2発明において、これとは異なる条件であっても、「ローカル機器2A」について定められた特定条件を満たす場合に、「ローカル機器2A」の能力について定められた当該条件を満たさない場合に、当該「送信」を行うといった特定はされない。
よって、本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うのに対し、甲2発明においては、そのように特定されない点で相違する。
(コ)発明特定事項1A’’について
発明特定事項1A’’は、「電力調整システム。」というものである。
そして、「電力調整システム。」については、前記(ア)のとおりである。
ウ 一致点及び相違点について
前記イによれば、本件発明7と甲2発明との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(ア)一致点
「 電力が搬送される電力搬送線路における皮相電力を調整する電力調整システムであって、
前記電力調整システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、
前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合に、前記電力調整システムによる当該調整が可能な皮相電力に関する情報を、前記電力搬送線路における皮相電力を管理する管理システムに出力する出力手段と、
各々が前記電力搬送線路における皮相電力を調整する複数の機器と、
前記複数の機器による前記調整を制御する制御手段と、
を有し、
前記条件は、前記複数の機器による前記調整の能力について定められ、
前記出力手段は、前記条件を満たす場合に、前記複数の機器による前記調整が可能な皮相電力に関する前記情報を前記管理システムに出力することを特徴とする、電力調整システム。」
(イ)相違点
本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うのに対し、甲2発明においては、そのように特定されない点。(発明特定事項7G)
エ 相違点についての判断
(ア)当審の判断
本件発明7の「出力手段」は、「前記情報の出力」を「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても」行うものであり、これは「出力手段」に実質的な場合分けを付加するものである。ゆえに、前記ウ(イ)の相違点は、実質的な相違点であるといえるため、本件発明7は、甲2発明と同一であるということはできない。
また、「出力手段」に、このような場合分けを付加することは、甲1及び3のいずれにも、記載も示唆もされていない。よって、相違点は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
(イ)特許異議申立人の主張についての判断
特許異議申立書での特許異議申立人の主張及びそれに対する当審の判断は以下のとおりである。
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)ウ(コ))において、相違点と関連して、以下のとおり主張している。
「 上述の通り甲2発明の図4のステップ3の「ローカル装置の残調整量で対応できないと判定した場合」は構成要件1Cの「前記システム情報から特定される前記調整の能力について定められた条件を満たす場合」に相当する。さらに、甲2発明では、残調整量に裕度がないと判定された場合には、中央装置に残調整量に裕度がないことを状態情報の1つとして送信する(段落0076、図4のステップ9,10)。ローカル装置(機器)の調整の能力に基づいて判定しているため、甲2発明の図4のステップ9は本件特許発明7の「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件」に相当する。
甲2発明の図4のステップ9は「現目標値に対して調整量に裕度があるか?」という判定であり、これがNOの場合に状態情報を送信する。ステップ9の判定の仕方が「現目標値に対して調整量に裕度がないか?」であればYESで送信することになる。この判定の「裕度があるか?」「裕度がないか?」の違いには技術的な作用効果もなく、「裕度があるか?」を「裕度がないか?」にすることに特段の技術的困難性はなく設計事項であり当業者にとって容易である。さらに、甲2発明の作用効果「中央装置の負担を軽減してそのシステム構成の簡素化を図ることができ、中央装置の設備のコストの低減を図ることができる。」(段落0078)から図4のステップ9で現目標値に対して調整量に裕度があると判定した場合に送信することも当業者にとって容易である。
従って、甲2発明の「残調整量に裕度がないと判定された場合」は本件特許発明7の「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合」に相当する。
甲2発明の図4のステップ3がYESであっても、ステップ9がNOになると、状態情報を送信する(0076、図4)。これは、本件特許発明7の「前記出力手段は、前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合、当該複数の機器の前記能力について定められた当該条件を満たさない場合であっても前記情報を出力する」に相当する。」
b 特許異議申立人の主張についての検討
(a)甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
「【0074】またステップ3においてマクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、ステップ4においてマクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信し、ステップ5へ進む。
【0075】ステップ5において、マクロ指令に制御目標値として動作させる動作時間の設定があると判定された場合には、ステップ13に進み、マクロ指令に含まれる動作時間になるまでタイマを動作させる。次いでステップ12に進んで既目標値を継続し、さらにステップ7へ進む。
【0076】ステップ7においては、ステップ6及び12で設定した制御目標値に対して、機器制御装置2Dに電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を与える。機器制御装置2Dは、フィーダの電圧を電圧制御目標値に保ち、無効電力を無効電力制御目標値に保つように、電圧調整器及び無効電力調整器を制御する。次いで、ステップ8において、制御後の電圧制御目標値及び無効電力目標値に対する現調整量を取得し、ステップ9に進む。ステップ9において、選定したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対する、ローカル装置の現調整量と、制御後のローカル装置の残調整量とを比較し、ローカル装置が持つ全調整量に対して残調整量に裕度があるか否かを判定する。その結果、ローカル装置の残調整量に裕度があると判定された場合には、ステップ1に戻る。また、残調整量に裕度がないと判定された場合には、ステップ10に進み、ステップ10において、中央装置に残調整量に裕度がないことを状態情報の1つとして送信し、ステップ1に進む。」
(b)当審の判断
当審は、甲2発明の「状態情報を送信する」が、本件発明7の「前記情報を出力する」に相当することを論旨とする異議申立人の主張を採用することはできないと判断する。
前記(a)によれば、甲2には、「マクロ指令による制御目標値に対して、ローカル装置の残調整量で対応できないと判定された場合には、マクロ目標値を採用できないことの理由をローカル装置の状態情報の1つとして中央装置に送信」し(構成2f2、【0074】)、「制御目標値に対して、機器制御装置2Dに電圧制御目標値及び無効電力制御目標値を与え」、「機器制御装置2Dは、フィーダの電圧を電圧制御目標値に保ち、無効電力を無効電力制御目標値に保つように、電圧調整器及び無効電力調整器を制御」し、「制御後の電圧制御目標値及び無効電力目標値に対する現調整量を取得し」、「ステップ9において、選定したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対する、ローカル装置の現調整量と、制御後のローカル装置の残調整量とを比較し、ローカル装置が持つ全調整量に対して残調整量に裕度があるか否かを判定」し「残調整量に裕度がないと判定された場合には」「中央装置に残調整量に裕度がないことを状態情報の1つとして送信」すること(【0076】)が記載されている。
ここで、甲2に記載されている「ステップ9において、選定したマクロ指令に含まれる電圧制御目標値及び無効電力制御目標値に対する、ローカル装置の現調整量と、制御後のローカル装置の残調整量とを比較し、ローカル装置が持つ全調整量に対して残調整量に裕度があるか否かを判定」し「残調整量に裕度がないと判定された場合」とは、本件発明7の「前記条件とは異なる条件であって前記複数の機器について定められた特定条件を満たす場合」に相当する。しかしながら、この場合、送信されるものは、「中央装置に残調整量に裕度がないことを状態情報の1つとし」たものであり、これは、「マクロ目標値を採用できないことの理由」(構成2f2、本件発明7の「情報」に相当(前記(2)イ(ウ)dのとおり))とは異なるものである。
c 小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明7は甲2発明ではないから、請求項7に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件発明7は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3)本件発明8について
本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明8と甲2発明との間には、前記(2)ウ(イ)に示した相違点がある。
そして、当該相違点についての判断は、前記(2)エのとおりである。ゆえに、前記(2)オ同様、本件発明8についても甲2発明ではないから、請求項8に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるということはできない。また、本件発明8は、甲2発明、及び、甲1又は3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された申立理由によって、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
前記第2のとおり、本件訂正を認める。
そして、前記第6及び第7によれば、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700851