特許異議申立
2025-700560
インバータ装置
- 審判番号
- 2025-700560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-137385
- 登録番号
- 7594382
- 請求日
- 2025年05月27日
- 審決日
- 2026年01月23日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サンデン株式会社
- 【権利者代理人】雨笠 敬
- 【異議申立人】弁理士法人大手門国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P1652.113-YAA(H02M) / P1652.121-YAA(H02M) / P1652.537-YAA(H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7594382号発明「インバータ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7594382号の特許請求の範囲の記載を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7594382号の請求項1~2、4~6に係る特許を維持する。
特許第7594382号の請求項3に係る特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7594382号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年8月17日に出願され、令和6年11月26日にその特許権の設定登録がされ、同年12月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年5月27日付けで特許異議申立人 弁理士法人 大手門国際特許事務所(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
その後、令和7年8月26日付けで当審より取消理由通知がなされ、これに対し、特許権者は同年10月8日付けの訂正請求書により訂正請求を行ったものである。
その後訂正請求書及び訂正特許請求の範囲の副本を申立人に送付したところ、同年12月3日に申立人から意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出された。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年10月8日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」といい、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正事項1は、次の訂正事項1-1及び1-2を含む。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、」
と記載されているのを、
「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、」
(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」
と記載されているのを、
「ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」
と記載されているのを、
「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記制御装置は、ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、及び、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミング、のうちの何れかのタイミングのみを同期させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のインバータ装置。」と記載されているのを、
「前記制御装置は、ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、及び、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミング、のうちの何れかのタイミングのみを同期させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ装置。」に訂正する。 請求項4の記載を引用する請求項5及び請求項6も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「前記特定の一相の上下アームスイッチング素子は、電動圧縮機で最も低温となる箇所と熱交換関係に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載のインバータ装置。」
と記載されているのを、
「前記特定の一相の上下アームスイッチング素子は、電動圧縮機で最も低温となる箇所と熱交換関係に配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4及び請求項5のうちの何れかに記載のインバータ装置。」
に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6について、請求項3~6は、請求項1又は請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1及び請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1は、本件訂正前に「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミング」であったものを、「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミング」と訂正するものであり、「同期させる」「タイミング」に関し、具体的に限定するとともに明瞭でない記載を正すことを目的とするものといえる。
また、訂正事項1-2は、本件訂正前に、「前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」であったものを、「ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」と訂正するものであり、「相電圧の変化」による「打ち消す」ことに関し、具体的に限定するとともに明瞭でない記載を正すことを目的とするものといえる。
したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
イ 実質拡張変更について
訂正事項1は、上記アのとおり、訂正前の請求項1に係る特許における、「同期させる」「タイミング」、及び、「相電圧の変化」で「打ち消す」ことに関し、具体的に限定するとともに明瞭でない記載を正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、 特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に違反するものではない。
ウ 新規事項の追加について
訂正事項1に関し、本件特許明細書段落【0065】、【0068】~【0070】、【0086】及び【0088】、並びに図4及び図5には、次のとおりの記載が認められる。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【0065】
実施例のPWM信号生成部36は、線間変調演算部34が出力する二相変調電圧指令値であるU相電圧指令値Uと、V相電圧指令値Vと、W相電圧指令値Wに補正を加えて二相変調のU相電圧指令補正値Cu、V相電圧指令補正値Cv、W相電圧指令補正値Cwとし、各相の上下アームスイッチング素子18A~18Fのスイッチングタイミングを同期させ、モータ8に印加される相電圧Vu、Vv、Vwの変化を、他の相電圧の変化で打ち消すことで、中性点電位Vcの変動を抑制する制御を実行する。」
「【0068】
図4の枠Z3部分の位相では図5に拡大して示す如く、線間変調演算部34は常時ON/OFF状態を変調させるU相の上アームスイッチング素子18AがONし、残りのV相とW相は下アームスイッチング素子18E、18FがONした状態からスイッチングの規定区間を開始している。また、W相の上アームスイッチング素子18CはOFF、下アームスイッチング素子18FはONした状態に固定している。
【0069】
この状態でPWM信号生成部36は、図5の例ではU相電圧Vuが立ち下がるタイミングとV相電圧Vvが立ち上がるタイミングを同期させるようにV相電圧指令補正値Cvを生成する(図5の44°付近の位相t1と51°付近の位相t2を参照)。これにより、各位相t1、t2における中性点電位Vcの変動はキャンセルされている。尚、中性点電位Vcの変動幅は、-3~-1の2となる(図4、図5)。
【0070】
但し、U相電圧Vuが立ち上がるタイミングとV相電圧Vvが立ち下がるタイミングは同期させない(図5の49.5°付近の位相と57°付近の位相を参照)。尚、U相電圧Vuが立ち下がるタイミングとV相電圧Vvが立ち上がるタイミングを同期させず、U相電圧Vuが立ち上がるタイミングとV相電圧Vvが立ち下がるタイミングを同期させてもよい。」
「【0086】
それに加えて本発明では、制御装置21がON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、モータ8に印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消すようにしたので、スイッチング素子18A~18Fのスイッチングタイミングによりモータ8の中性点電位の変動をより一層抑制し、コモンモードノイズの発生を著しく抑制することが可能となる。」
「【0088】
この場合、実施例の制御装置21は、ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の上アームスイッチング素子がONし、他方の下アームスイッチング素子がONした状態からスイッチングの規定区間を開始するようにしたので、相電圧の変化を他の相電圧の変化で円滑に打ち消すことができるようになる。」
「図4
[図:0001434173000001.jpg]
」
「図5
[図:0001434173000002.jpg]
」
上記記載(特に下線部。)より、願書に添付された明細書及び図面には、「U相電圧Vuが立ち下がるタイミングとV相電圧Vvが立ち上がるタイミングを同期させることにより、各位相t1、t2における中性点電位Vcの変動はキャンセルされ(【0069】)、U相電圧Vuが立ち上がるタイミングとV相電圧Vvが立ち下がるタイミングを同期させて中性点電位Vcの変動をキャンセルしてもよい(【0070】)こと」、及び、「モータ8に印加される相電圧Vu、Vv、Vwの変化を、他の相電圧の変化で打ち消すことで、中性点電位Vcの変動を抑制すること(【0065】)、モータ8に印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消すようにしたのでモータ8の中性点電位の変動をより一層抑制し、コモンモードノイズの発生を著しく抑制することが可能となること(【0086】)、及び、相電圧の変化を他の相電圧の変化で円滑に打ち消すことができること(【0088】)」が記載されているといえる。
よって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2のいずれも願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。
したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に違反するものではない。
エ 独立特許要件について
本件異議申立においては、訂正前の請求項1~3について特許異議申立てがされているところ、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2に関して、請求項1に関する訂正事項1と同様の訂正を目的とするものであって、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
イ 実質拡張変更、新規事項の追加、独立特許要件について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に関する訂正事項1と同等の訂正を行うものであり、上記(1)イ~エに示したとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにあたらず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項及び5項に適合する。
また、本件異議申立においては、訂正前の請求項1~3について特許異議申立てがされているところ、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質拡張変更、新規事項の追加、独立特許要件について
訂正事項3は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにあたらず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項及び5項に適合する。
また、本件異議申立においては、訂正前の請求項1~3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4及び5について
ア 訂正の目的について
訂正事項4及び5は、訂正前の請求項4及び6について、引用する請求項の一部を削除することを目的とするものであるから、訂正事項4及び5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
イ 実質拡張変更、新規事項の追加について
訂正事項4及び5は、請求項3の削除にともない、引用する請求項を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにあたらず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項及び5項に適合する。
ウ 独立特許要件について
本件異議申立においては、訂正前の請求項1~3について特許異議申立てがされているところ、訂正前の請求項4及び6に係る訂正事項4及び5に関して、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項のいわゆる独立特許要件が課される。
訂正事項4及び5は、請求項の一部を削除するものであって、申立人が主張する異議申立理由は該当せず、新たな取消理由も発見しないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の規定に違反するものとはいえない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~3は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、訂正事項4及び5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合し、同条7項の規定に違反するものとはいえない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
特許第7594382号の請求項1~2、4~6に係る特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明2」、「本件特許発明4」~「本件特許発明6」などという。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1~2、4~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、各構成要件の前に付した、「1A」~「6A」の記号は、各構成要件を区別するために当審で付したものであり、それぞれ「構成要件1A」~「構成要件6A」などという。)
1 本件特許発明1
1A 上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置を備えたインバータ装置において、
1B 前記制御装置は、
1C 前記モータの各相に印加する電圧を生成するための三相変調電圧指令値を演算し、出力する相電圧指令演算部と、
1D 前記三相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部と、
1E 前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部を有し、
1F 特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ、残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、
1G ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消すこと
1H を特徴とするインバータ装置。
2 本件特許発明2
2A 上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置を備えたインバータ装置において、
2B 前記制御装置は、
2C 前記モータの各相に印加する電圧を生成するための三相変調電圧指令値を演算し、出力する相電圧指令演算部と、
2D 前記三相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部と、
2E 前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部を有し、
2F 前記線間変調演算部は、特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ、残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させる前記二相変調電圧指令値を出力すると共に、
2G 前記PWM信号生成部は、前記線間変調演算部が出力した前記二相変調電圧指令値を補正することにより、
2H ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消すこと
2I を特徴とするインバータ装置。
3 本件特許発明4
4A 前記制御装置は、ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、及び、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミング、のうちの何れかのタイミングのみを同期させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ装置。
4 本件特許発明5
5A 前記制御装置は、スイッチング時のサージ電圧が大きい方の前記タイミングを選択して同期させることを特徴とする請求項4に記載のインバータ装置。
5 本件特許発明6
6A 前記特定の一相の上下アームスイッチング素子は、電動圧縮機で最も低温となる箇所と熱交換関係に配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4及び請求項5のうちの何れかに記載のインバータ装置。
第4 異議申立理由の概要
1 異議申立理由
(1)異議申立理由1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性欠如)について
本件特許発明1~3は、下記2に示す甲第1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
また、本件特許発明1~3は、下記2に示す甲第1号証に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号の規定により取り消されるべきである。
(2)異議申立理由2(明確性要件違反)について
本件特許発明2~3は、明細書および図面の記載ならびに出願時の技術常識を考慮したとしても明確ではないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、同法113条4号の規定により取消されるべきである。
2 証拠方法
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:
特開平10-23760号公報
第5 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和7年8月26日付けで当審より通知された取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件違反)について
特許請求の範囲の請求項1及び2には、「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」との事項が記載されているところ、具体的にどのようなことを意味するものか、不明確である。(以下、「取消理由1-1」という。)
また、特許請求の範囲の請求項3には、「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の上アームスイッチング素子がONし、他方の下アームスイッチング素子がONした状態からスイッチングの規定区間を開始する」との事項が記載されているところ、特に、「規定区間」が具体的にどのようなことを意味するものか、不明確である。(以下、「取消理由1-2」という。)
したがって、本件特許発明1~3はいずれも不明確である。
2 取消理由についての当審の判断
(1)取消理由1について
ア 取消理由1-1について
本件訂正の訂正事項1及び2により、本件訂正前の「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」は、「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」と訂正されたので、取消理由通知において指摘した取消理由1-1は解消した。
イ 取消理由1-2について
本件訂正により、特許請求の範囲の請求項3は削除されたので、取消理由通知において指摘した取消理由1-2は解消した。
(2)むすび
以上検討のとおり、取消理由通知において指摘した取消理由は、訂正事項1及び2を含む本件訂正によりいずれも解消された。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 異議申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)について
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証(特開平10-23760号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電圧形PWM変換器の制御方法に係わり、特に、電圧形PWM変換器で駆動され、交流電動機に印加されるパルス幅変調されたインバータ出力電圧の中性点電位の変動を抑制して、インバータ出力電圧のコモンモードの電位変動をなくすことで、誘導電動機の電機子巻線と回転子との間の浮遊静電容量を介して流れる軸電流を抑制した電圧形PWMインバータの制御方法に関する。」
イ 「【0032】
次に、本発明の第2の実施例を図5により説明する。図5において、1は交流電源、2はダイオード整流器、3は平滑コンデンサを示し、5は電圧形PWM変換器、6は前記電圧形PWM変換器5により駆動される誘導電動機を表わす。また、7は前記電圧形PWM変換器5の制御回路を表わし、PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算する。ゲートパルス分配部8では、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生する。ここで、電圧形PWM変換器は、3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転する。このとき電圧形PWM変換器5は、3相のゲート信号のうち2相分の電圧をPWM電圧として誘導電動機6に供給する。このときのゲートパルス制御信号S1,S2の動作波形を図6に示す。図6において、vr は電圧形PWM変換器5の出力電圧指令、vy はPWM信号を生成するための搬送波信号を表す。ここで、動作をわかりやすくするため、vr に対するvy の周波数を通常、用いられる周波数より低くして記述している。
【0033】
出力電圧指令vr と搬送波信号vy を比較することにより、vr >vy で1、vr <vy で-1、となるゲート制御信号S1が得られる。このS1に対し、補数の関係となる信号としてゲート制御信号S2 を得る。いま、電圧形PWM変換器のうちw相を欠相して誘導電動機を駆動する場合、ゲート制御信号S1 により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2 により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとする。このとき、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させる。v相についても同様な関係が成り立つように、ゲートパルス信号を発生させる。これにより、直列多重PWM変換器の動作の場合と同様な動作で、S1 が1のとき、電圧形PWM変換器のu相出力電圧EuはVdc/2に、S2 が-1のとき、Euは-Vdc/2に、それぞれ変化する。一方、v相はu相に対してゲート制御信号が補数の関係となるように制御するため、誘導電動機の中性点電位変動は常に零となるように制御できる。ここで、電圧形PWM変換器で駆動する誘導電動機の欠相させる相を運転条件に応じて順次切り替えることにより、誘導電動機の3相巻線に対して偏ることなく電流を流しながら、2相運転を実行できる。」
ウ 「図5
[図:0001434173000003.jpg]
」
エ 「図6
[図:0001434173000004.jpg]
」
(2)甲1発明
ア 上記(1)アの「電圧形PWM変換器で駆動され、交流電動機に印加されるパルス幅変調されたインバータ出力電圧の中性点電位の変動を抑制して、インバータ出力電圧のコモンモードの電位変動をなくすことで、誘導電動機の電機子巻線と回転子との間の浮遊静電容量を介して流れる軸電流を抑制した電圧形PWMインバータ」との記載から、甲1には、“電圧形PWM変換器で駆動され、交流電動機に印加されるパルス幅変調されたインバータ出力電圧の中性点電位の変動を抑制して、インバータ出力電圧のコモンモードの電位変動をなくすことで、誘導電動機の電機子巻線と回転子との間の浮遊静電容量を介して流れる軸電流を抑制した電圧形PWMインバータ”が記載されているといえる。
イ 上記(1)ウ(図5)より、ダイオード整流器2から延びる2つの電源線であって、u相、v相、w相それぞれに共通する電源線を看取でき、当該電源線はそれぞれ、“上アーム電源ライン”及び“下アーム電源ライン”といい得る。
ウ 上記(1)ウ(図5)より、u相、v相、w相それぞれに2つのスイッチング素子が直列に接続されていることを看取でき、そのそれぞれのスイッチング素子は、“各相毎に直列接続された上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子”といい得る。
エ 上記(1)ウ(図5)より、上記ウの認定を踏まえると、上下アームスイッチング素子の接続点は、誘導電動機6の各相に接続されていることを看取でき、このことは、“各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力として誘導電動機6に印加”しているといえる。
オ 上記(1)イの「図5において、1は交流電源、2はダイオード整流器、3は平滑コンデンサを示し、5は電圧形PWM変換器、6は前記電圧形PWM変換器5により駆動される誘導電動機」との記載及び同(1)ウ(図5)より、甲1には、“交流電源、ダイオード整流器2、平滑コンデンサ3、電圧形PWM変換器5、前記電圧形PWM変換器5により駆動される誘導電動機6”が記載されているといえる。
カ 上記(1)イの「7は前記電圧形PWM変換器5の制御回路を表わし、PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算する。ゲートパルス分配部8では、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生する」との記載から、甲1には“前記電圧形PWM変換器5の制御回路7は、PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算し、ゲートパルス分配部8は、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生”することが記載されているといえる。
キ 上記(1)イの「電圧形PWM変換器は、3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転する。このとき電圧形PWM変換器5は、3相のゲート信号のうち2相分の電圧をPWM電圧として誘導電動機6に供給する」との記載から、甲1には、“電圧形PWM変換器は、3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転し、3相のゲート信号のうち2相分の電圧をPWM電圧として誘導電動機6に供給”することが記載されているといえる。
ク 上記(1)イの「ゲートパルス制御信号S1,S2の動作波形を図6に示す。図6において、vr は電圧形PWM変換器5の出力電圧指令、vy はPWM信号を生成するための搬送波信号を表す」との記載、及び、(1)エ(図6)から、甲1には、“電圧形PWM変換器5の出力電圧指令vr 、PWM信号を生成するための搬送波信号vy に基づいて、ゲートパルス制御信号S1,S2が生成され”ることが記載されているといえる。
ケ 上記(1)イの「出力電圧指令vr と搬送波信号vy を比較することにより、vr >vy で1、vr <vy で-1、となるゲート制御信号S1が得られる。このS1に対し、補数の関係となる信号としてゲート制御信号S2 を得る」との記載から甲1には、“出力電圧指令vr と搬送波信号vy を比較することにより、vr >vy で1、vr <vy で-1、となるゲート制御信号S1が得られ、このS1に対し、補数の関係となる信号としてゲート制御信号S2 を得”ることが記載されているといえる。
コ 上記(1)イの「電圧形PWM変換器のうちw相を欠相して誘導電動機を駆動する場合、ゲート制御信号S1 により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2 により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとする。このとき、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させる。v相についても同様な関係が成り立つ」との記載から、甲1には、“電圧形PWM変換器のうちw相を欠相して誘導電動機を駆動する場合、ゲート制御信号S1 により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2 により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立”つことが記載されているといえる。
サ 上記(1)イの「S1 が1のとき、電圧形PWM変換器のu相出力電圧EuはVdc/2に、S2 が-1のとき、Euは-Vdc/2に、それぞれ変化する。一方、v相はu相に対してゲート制御信号が補数の関係となるように制御するため、誘導電動機の中性点電位変動は常に零となるように制御できる…(中略)…電圧形PWM変換器で駆動する誘導電動機の欠相させる相を運転条件に応じて順次切り替えることにより、誘導電動機の3相巻線に対して偏ることなく電流を流しながら、2相運転を実行できる」との記載から、甲1には、“S1 が1のとき、電圧形PWM変換器のu相出力電圧EuはVdc/2に、S2 が-1のとき、Euは-Vdc/2に、それぞれ変化し、v相はu相に対してゲート制御信号が補数の関係となるように制御するため、誘導電動機の中性点電位変動は常に零となるように制御できるとともに、電圧形PWM変換器で駆動する誘導電動機の欠相させる相を運転条件に応じて順次切り替えることにより、誘導電動機の3相巻線に対して偏ることなく電流を流しながら、2相運転を実行できる”ことが記載されているといえる。
シ 以上、ア~サから、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「電圧形PWM変換器で駆動され、交流電動機に印加されるパルス幅変調されたインバータ出力電圧の中性点電位の変動を抑制して、インバータ出力電圧のコモンモードの電位変動をなくすことで、誘導電動機の電機子巻線と回転子との間の浮遊静電容量を介して流れる軸電流を抑制した電圧形PWMインバータであって、
上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力として誘導電動機6に印加する電圧形PWM変換器5とを備えると共に、
交流電源、ダイオード整流器2、平滑コンデンサ3、電圧形PWM変換器5、前記電圧形PWM変換器5により駆動される誘導電動機6を備え、
前記電圧形PWM変換器5の制御回路7は、PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算し、ゲートパルス分配部8は、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生し、
電圧形PWM変換器は、3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転し、3相のゲート信号のうち2相分の電圧をPWM電圧として誘導電動機6に供給し、
電圧形PWM変換器5の出力電圧指令vr、PWM信号を生成するための搬送波信号vyに基づいて、ゲートパルス制御信号S1,S2が生成され出力電圧指令vr と搬送波信号vy を比較することにより、vr >vy で1、vr <vy で-1、となるゲート制御信号S1が得られ、このS1に対し、補数の関係となる信号としてゲート制御信号S2 を得、
電圧形PWM変換器のうちw相を欠相して誘導電動機を駆動する場合、ゲート制御信号S1により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立ち、
S1 が1のとき、電圧形PWM変換器のu相出力電圧EuはVdc/2に、S2 が-1のとき、Euは-Vdc/2に、それぞれ変化し、v相はu相に対してゲート制御信号が補数の関係となるように制御するため、誘導電動機の中性点電位変動は常に零となるように制御できるとともに、電圧形PWM変換器で駆動する誘導電動機の欠相させる相を運転条件に応じて順次切り替えることにより、誘導電動機の3相巻線に対して偏ることなく電流を流しながら、2相運転を実行できる
電圧形PWMインバータ。」
(3)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 「上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置を備えたインバータ装置」(構成要件1A、1H)について
甲1発明の「上アーム電源ライン」、「下アーム電源ライン」、「上アームスイッチング素子」、「下アームスイッチング素子」、「各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧」、「三相交流出力」、「誘導電動機6」、「電圧形PWM変換器5」及び「電圧形PWMインバータ」は、それぞれ本件特許発明1の「上アーム電源ライン」、「下アーム電源ライン」、「上アームスイッチング素子」、「下アームスイッチング素子」、「各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧」、「三相交流出力」、「モータ」、「インバータ回路」及び「インバータ装置」に相当するから、甲1発明の「上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力として誘導電動機6に印加する電圧形PWM変換器5とを備え」る「電圧形PWMインバータ」は、本件特許発明1の「上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、…(中略)…を備えたインバータ装置」に相当する。
甲1発明の「前記電圧形PWM変換器5の制御回路7」は、「PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算し、ゲートパルス分配部8は、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生」するものであるから、甲1発明の「該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置」に相当する。
したがって、甲1発明の「上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力として誘導電動機6に印加する電圧形PWM変換器5とを備え」、「PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算し、ゲートパルス分配部8は、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生」する「前記電圧形PWM変換器5の制御回路7」を有する「電圧形PWMインバータ」は、本件特許発明1の「上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置を備えたインバータ装置」に相当するといえる。
イ 「前記制御装置は、」(構成要件1B)構成要件1C~1E「を有し」について
下記ウ~オに示すとおり、甲1発明の「電圧形PWM変換器5の制御回路7」と本件特許発明1の「制御装置」とは、下記の点(相違点1、2)を除き、“変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部と、前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部”を有する点で共通する。
ウ 「前記モータの各相に印加する電圧を生成するための三相変調電圧指令値を演算し、出力する相電圧指令演算部」(構成要件1C)について
甲1発明は、本件特許発明1の「前記モータの各相に印加する電圧を生成するための三相変調電圧指令値を演算し、出力する相電圧指令演算部」(構成要件1C)に相当する構成を有しない。(相違点1)
エ 「前記三相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部」(構成要件1D)について
甲1発明の「w相」と「u相」及び「v相」は、それぞれ本件特許発明1の「上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させ」られる「インバータ回路の一相」と「他の二相」に相当する。
甲1発明の「前記電圧形PWM変換器5の制御回路7」によって演算される「PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2」は、本件特許発明1の「他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値」に相当する。
甲1発明の「電圧形PWM変換器5の出力電圧指令vr」と、本件特許発明1の「三相変調電圧指令値」とは、“変調電圧指令値”である点で一致する。
そして、甲1発明の「電圧形PWM変換器5の制御回路7」及び「ゲートパルス分配部8」は、「出力電圧指令vr」に基づいて、「w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立」つよう制御するものであるから、上記アの認定を踏まえると、本件特許発明1の「二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部」に相当するものといえる。
したがって、甲1発明の「前記電圧形PWM変換器5の制御回路7は、PWM変換器5に対するゲート制御信号S1,S2を演算し、ゲートパルス分配部8は、ゲート制御信号S1、S2を入力し、電圧形PWM変換器5に対するゲートパルス信号(gup,gun),(gvp,gvn),(gwp,gwn)を発生し、」「ゲート制御信号S1により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立」つことと、本件特許発明1の「前記三相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部」とは、下記の点(相違点2)を除き、“変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部”の点で共通するといえる。
オ 「前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部」(構成要件1E)について
甲1発明において、「電圧形PWM変換器5の出力電圧指令vr、PWM信号を生成するための搬送波信号vyに基づいて」生成される、「ゲートパルス制御信号S1,S2」は、本件特許発明1の「PWM信号」に相当する。
上記エの認定を踏まえると、「電圧形PWM変換器5の制御回路7」は、「二相変調電圧指令値」に基づいてPWM信号を生成しているといえるから、甲1発明の「電圧形PWM変換器5の制御回路7」は、本件特許発明1の「前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部」に相当するといえる。
カ 「特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ、残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、」(構成要件1F)及び「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消すこと」(構成要件1G)について
甲1発明は、「3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転」する際、例えば「電圧形PWM変換器のうちw相を欠相して誘導電動機を駆動する場合」は、「w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立」つものであることから、常時ON/OFF状態を変調させる相は存在しない。
したがって、甲1発明は、本件特許発明1の「特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ、残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させる」との構成を有するものとはいえない。(相違点3)
また、甲1発明の「ゲートパルス制御信号S1,S2」は、それぞれ「ゲート制御信号S1…このS1に対し、補数の関係となる信号としてゲート制御信号S2 を得」ていて、「S1 が1のとき、電圧形PWM変換器のu相出力電圧EuはVdc/2に、S2 が-1のとき、Euは-Vdc/2に、それぞれ変化し、v相はu相に対してゲート制御信号が補数の関係となるように制御するため、誘導電動機の中性点電位変動は常に零となるように制御できる」ものではあるものの、当該「ゲートパルス制御信号S1,S2」は、直接u相とv相の立ち上がりと立ち下がりのタイミングに関係するものとはいえないから、甲1発明は、本件特許発明1の「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」との構成を有するとはいえない。(相違点3)
キ 一致点および相違点について
上記ア~カの対比から、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点および相違点を有するものといえる。
〈一致点〉
1A 上アーム電源ライン及び下アーム電源ライン間に、各相毎に上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を直列接続し、これら各相の上下アームスイッチング素子の接続点における相電圧を三相交流出力としてモータに印加するインバータ回路と、該インバータ回路の前記各相の上下アームスイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置を備えたインバータ装置において、
1B 前記制御装置は、
1D’変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路の一相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、他の二相の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を変調させる二相変調電圧指令値を演算する線間変調演算部と、
1E 前記二相変調電圧指令値に基づき、前記インバータ回路をPWM制御するPWM信号を生成するPWM信号生成部を有する
1H インバータ装置。
〈相違点1〉
本件特許発明1が、「前記モータの各相に印加する電圧を生成するための三相変調電圧指令値を演算し、出力する相電圧指令演算部」を有するのに対し、甲1発明はそのことが特定されていない点。
〈相違点2〉
本件特許発明1の「線間変調演算部」が、「前記三相変調電圧指令値に基づ」くのに対し、甲1発明の「電圧形PWM変換器5の制御回路7」及び「ゲートパルス分配部8」は、三相変調電圧指令値に基づくことが特定されていない点。
〈相違点3〉
本件特許発明1が、「特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ、残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させると共に、ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」ものであるのに対し、甲1発明はそのことが特定されていない点。
(4)判断
事案に鑑み、相違点3について先に検討する。
相違点3のうち、特に「特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ」る点に関しては、甲1発明は、「3相の誘導電動機6を1相だけ欠相させた状態で運転」するとともに、「w相を欠相して誘導電動機を駆動する場合、ゲート制御信号S1により、u相のゲートパルス信号(gup,gun)を、ゲート制御信号S2により、v相のゲートパルス信号(gvp,gvn)を生成し、w相のゲートパルス信号(gwp,gwn)は常にOFFとし、u相については、ゲート制御信号S1 が1のときにgup=ON,gun=OFFとし、ゲート制御信号S1 が-1のときにgup=OFF,gun=ONとなるようにゲートパルス信号を発生させ、v相についても同様な関係が成り立」つものであり、さらに、「電圧形PWM変換器で駆動する誘導電動機の欠相させる相を運転条件に応じて順次切り替えることにより、誘導電動機の3相巻線に対して偏ることなく電流を流しながら、2相運転を実行できる」ものでもあることから、当該「欠相させる相」は、「順次切り替え」られることとなり、たとえ、一時的に例えば「w相を欠相」させて、「残りの二相のうちの一方の前記上下アームスイッチング素子のON/OFF状態を固定させ」たとしても、「順次切り替え」られることによって、当該「w相」のON/OFF状態は固定されなくなることから、甲1発明は、本件特許発明1の「特定の一相の前記上下アームスイッチング素子は常時ON/OFF状態を変調させ」る状態は生じ得ないものといえる。
そうすると、当然に、甲1発明は、「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」ことはないから、本件特許出願時における技術常識を参酌しても、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。
したがって、申立人が主張する異議申立理由1及び証拠によっては、本件特許発明1を取り消すことはできない。
同様の構成を有する、本件特許発明2についても、同様である。
2 異議申立理由2(明確性要件違反)について
本件特許発明2は、本件訂正の訂正事項2により、訂正前の請求項2に記載された「ON/OFF状態を変調させる前記二相の上下アームスイッチング素子のスイッチングタイミングを同期させ、前記モータに印加される相電圧の変化を、他の相電圧の変化で打ち消す」との記載を、「ON/OFF状態を変調させる前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング、若しくは、前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミングを同期させ、ON/OFF状態を変調させて前記モータに印加される前記二相のうちの一方の相電圧の変化を、他方の相電圧の変化で打ち消す」と具体的に特定するよう訂正したことにより、「前記線間変調演算部が出力した前記二相変調電圧指令値を補正することにより、…(中略)…打ち消す」点について不明確とはいえなくなったので、異議申立理由2のうち、請求項2に関する申立理由は解消した。
したがって、申立人が主張する異議申立理由2によっては、本件特許発明2を取り消すことはできない。
また、請求項3は、本件訂正により削除されたから、申立人が主張する異議申立理由2が対象とする請求項は存在しなくなった。
第7 異議申立人の意見書における主張について
申立人は、申立人意見書において、本件訂正後の請求項1に係る発明は、「「(a)一方の相電圧が立ち下がるタイミングと他方の相電圧が立ち上がるタイミング、及び、(b)一方の相電圧が立ち上がるタイミングと他方の相電圧が立ち下がるタイミング、の両方が同期する」制御パターンを含み得る」ことをもって、訂正事項1は願書に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「明細書等」という。)に新規事項を追加するものであること(以下、「主張1」という。)、及び、仮に訂正事項1が明細書等に新規事項を追加するものでないとしても、甲1に記載された発明と同一であり、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであること(以下、「主張2」という。)を主張しているので、以下に当審の判断を示す。
1 主張1(新規事項の追加)について
上記第2の3(1)ウに示したとおり、訂正事項1は、明細書等に新規事項を追加するものとはいえない。加えて、本件訂正後の請求項1の記載は、「前記二相のうちの一方の相電圧の立ち下がりと他方の相電圧の立ち上がりのタイミング」と「前記一方の相電圧の立ち上がりと前記他方の相電圧の立ち下がりのタイミング」との両方を同期させる場合を含むとは具体的に特定しておらず、本件特許明細書の記載を参酌すればそのように限定して解釈することはむしろ排除されている。さらに、請求項1に係る本件訂正(訂正事項1)は、請求項1について減縮を目的としている以上、訂正後の請求項1に係る発明が、いわゆる新規事項を含むものである場合、より上位概念である訂正前の請求項1に係る発明は、少なくともサポート要件違反に該当することとなるが、申立人は、異議申立書において、サポート要件違反を申し立てていない。以上から、申立人が主張する主張1については採用できない。
2 主張2(甲1に基づく新規性及び進歩性欠如)について
上記第6の1に示したとおり、本件特許発明1及び2と甲1発明とは、相違点1~3の点で相違するから、甲1に記載された発明と同一とはいえない。
また、本件特許発明1及び2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、申立人が主張する主張2についても採用できない。
3 むすび
以上検討したとおり、申立人意見書による申立人の主張はいずれも採用されない。
第8 むすび
以上検討したとおり、本件特許発明1及び2に係る特許は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、申立人が主張する異議申立理由1及び証拠によっては、本件特許発明を取り消すことはできない。
また、本件特許発明2は、不明確とはいえず、本件特許発明2に係る本件特許は、特許法36条6項2号の規定に違反してなされたものとはいえない。
したがって、申立人が主張する異議申立理由2は、理由が無い。
また、他に請求項1~2、4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項3は削除されたから、請求項3に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しなくなったので、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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