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特許異議申立

2023-700325

複合フィルム、積層フィルムおよびそれを用いた積層体

審判番号
2023-700325
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-522267外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7153255
請求日
2023年03月29日
審決日
2023年06月27日
公報発行日
2023年07月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7153255号発明「複合フィルム、積層フィルムおよびそれを用いた積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7153255号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7153255号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和4年4月8日(優先権主張令和3年5月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和4年10月5日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年3月29日に特許異議申立人加藤真弥(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許 特許第7153255号の請求項1~9の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくともベース層(A)とヒートシール層(B)の2層を有する複合フィルムであって、 前記ベース層(A)は、融点が140℃以上のプロピレン・ランダム共重合体(a1)100質量部に、190℃におけるメルトフローレートが10g/10分未満である高密度ポリエチレン(a2)1~10質量部を混合した樹脂組成物からなり、 前記ヒートシール層(B)は、プロピレン・ランダム共重合体(b1)100質量部に、190℃におけるメルトフローレートが10g/10分未満である高密度ポリエチレン(b2)1~20質量部を混合した樹脂組成物からなり、 ヒートシール層(B)の樹脂組成物はJIS K 7121(1987)における示差走査熱量測定による補外融解開始温度 (Tim)が110℃以下、かつ、融点が120℃以上130℃以下である、複合フィルム。 【請求項2】 前記ベース層(A)のプロピレン・ランダム共重合体(a1)が、エチレン・プロピレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、および、エチレン・プロピレン・1-ブテン3元共重合体からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1に記載の複合フィルム。 【請求項3】 前記ヒートシール層(B)のプロピレン・ランダム共重合体(b1)が、 エチレン・プロピレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、および、エチレン・プロピレン・1-ブテン3元共重合体からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1に記載の複合フィルム。 【請求項4】 複合フィルムに、ドライラミネート法で接着剤を用いて厚さ20μm以上の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、複合フィルムのヒートシール層(B)面同士を重ねて120℃で片面加熱してヒートシールしたときのヒートシール強度が6N/15mm以上である、請求項1に記載の複合フィルム。 【請求項5】 請求項1に記載の複合フィルムのベース層(A)の表面に、特定の機能を付与する機能付与層を設けた、積層フィルム。 【請求項6】 前記特定の機能が、ガスバリア性、遮光性、光沢性、濡れ性、易接着性、易印刷性からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項5に記載の積層フィルム。 【請求項7】 23℃、湿度0%での酸素透過率が50cc/(m2・24h・atm)以下である、請求項5に記載の積層フィルム。 【請求項8】 請求項5に記載の積層フィルムと他基材とが積層されてなり、前記機能付与層が前記他基材側になるように積層された積層体。 【請求項9】 前記他基材が、立体規則性90~98%のポリプロピレン樹脂を用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項8に記載の積層体。」 第3 申立理由の概要 申立人は、主たる証拠として以下に示す甲第1号証及び従たる証拠として甲第2~4号証を提出し、請求項1~9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] 甲第1号証:特開平10-237188号公報 甲第2号証:特開平9-143294号公報 甲第3号証:国際公開第2012/014965号 甲第4号証:特開2003-25425号公報 (以下、甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。) 第4 当審の判断 1 甲1~4に記載された事項・発明 (1)甲1 ア 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。(ア)「【0009】 【発明の実施の形態】本発明に使用されるポリオレフィン系無延伸フィルムに使用される樹脂とは、エチレン含有量が0~6重量%とプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1の共重合体である。中でもプロピレン、ブテン-1、オクテン-1との共重合体の単体でも混合物でも三元共重合体例えばプロピレンとブテン-1でもよい。」 (イ)「【0012】ポリオレフィン系無延伸フィルムは、単膜でもよいが、好ましくは高融点ポリオレフィン系樹脂(A層)、低融点ポリオレフィン系樹脂(B層)とがA/Bの順に2層積層してもよい。A層とB層との樹脂の融点差は、5℃以上が好ましい。好ましくは8℃以上である。融点差が5℃未満である場合には、得られた金属蒸着フィルムをヒートシールする際、ヒートシール部の蒸着膜の変質や割れが生じ、ガスバリア性が悪化するので好ましくない。従って、A層には融点が145℃以上、好ましくは150℃以上の高融点ポリプロピレン系樹脂を用い、B層には融点が140℃以下の低融点ポリオレフィン系樹脂を用いた場合、ヒートシールしたときの該ヒートシール部でのガスバリア性が悪化しないので好ましい。また、高融点ポリオレフィン系樹脂(A層)と、A層樹脂と低融点ポリオレフィン系樹脂との混合樹脂からなる層(B層)と、低融点ポリオレフィン系樹脂(C層)とをA/B/Cの順に3層積層してもよい。前述の構成ではB層が、後述の構成ではB層+C層がヒートシール層として機能を果たす。」 (ウ)「【0024】また、ポリオレフィン系樹脂に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLD-PE)、エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-nブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を1種または2種以上を添加することもできる。」 (エ)「【0043】(12)メルトフローインデックス(MFI) JIS K- 6758のポリプロピレン試験方法(230℃、21. 168N)で測定した値を示した。」 (オ)「【0045】(14)ヒートシール性 厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、武田薬品社製ポリウレタン系接着剤(主剤“タケラック”A-971/硬化剤“タケネート”A-3=9/1をコーティングバーを用いて、厚み約4μm塗工して、蒸着無延伸フィルムの蒸着面と貼り合わせた後、40℃2日エージングして硬化させた。その後該貼り合わせたフィルムの蒸着無延伸フィルムのひ蒸着面どうしを重ね合わせて、ヒートシラーの両面加熱法にてシール温度115℃、シール圧力98kPa、シール時間1秒の条件でヒートシールを行った。このヒートシールしたサンプルを幅15mmに切り出して、オリエンテック社製UCT-100型“テンシロン”を用いて、引張速度300mm/分でシール面を90度剥離したときに要した力が、1. 3N/cm以上のものを○、0. 65N/cm以下のものを×、その中間のものを△として評価した。」 (カ)「【0048】実施例1 本発明のポリオレフィン系無延伸フィルムの蒸着(A)層のに(原文ママ)樹脂として、メソペンタッド分率(mmmm)が99. 1%の高結晶性ポリプロプレン樹脂(II=99%、MFI=5. 5g/10分、融点=163℃)単体を用い、押出ホッパーを窒素雰囲気にした一軸押出機に供給し、270℃の温度で溶融させた。次にポリオレフィン系無延伸フィルムのヒートシール(B)層として、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(エチレン共重合量=2重量%、ブタジエン-1共重合量=5重量%、MFI=3. 6g/10分、融点=141℃)95重量%と高密度ポリエチレン(HD-PE)(MFI=4.5g/10分、融点=130℃、密度=0. 936g/cm3 )5重量%に真球シリカ粒子(粒径=2μm)を0. 1重量部添加混合して、押出ホッパーを窒素雰囲気にした二軸押出機に供給し、240℃の温度で溶融混練りしてガット状に溶融押出して、水槽中にガットを通して冷却後、チップカッターにて3~5mmの長さに切断してチップを得た。次に該チップを80℃の温度で8時間乾燥した後に、押出ホッパーを窒素雰囲気にした、別の一軸押出機に供給して、260℃の温度で溶融させ、それぞれの濾過フィルターを経た後、2層成形口金にてA層/B層となるように口金内で合流させてシート状に押出して、該シートを80℃の温度に加熱した金属ドラムに巻き付けて冷却し、厚み25μmのポリオレフィン系無延伸フィルムを得た。この時のA層/B層の厚み構成比は5/20μmであった。」 (キ)「【0052】実施例4 実施例1のA層樹脂として、実施例1でB層に用いたエチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(エチレン共重合量=2重量%、ブタジエン-1共重合量=5重量%、MFI=3. 6g/10分、融点=141℃)95重量%と高密度ポリエチレン(HD- PE)(MFI=4. 5g/10分、融点=130℃、密度=0. 936g/cm3 )の樹脂組成に、真球シリカ粒子(粒径=2μm)を0. 1重量部添加し、混合チップ化した樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、厚み25μmのポリオレフィン系無延伸フィルムおよび蒸着無延伸フィルムを得た。」 (ク)「【0061】 【表1】 [図:0001399422000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 以上より、特に実施例1、実施例4に着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリオレフィン系樹脂(A層)、ポリオレフィン系樹脂(B層)とがA/Bの順に2層積層し、 A層樹脂として、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(エチレン共重合量=2重量%、ブタジエン- 1共重合量=5重量%、MFI=3. 6g/10分、融点=141℃)95重量%と高密度ポリエチレン(HD-PE)(MFI=4. 5g/10分、融点=130℃、密度=0. 936g/cm3 )の樹脂組成に、真球シリカ粒子(粒径=2μm)を0. 1重量部添加し、混合チップ化した樹脂を用い、 ヒートシール(B)層として、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(エチレン共重合量=2重量%、ブタジエン-1共重合量=5重量%、MFI=3. 6g/10分、融点=141℃)95重量%と高密度ポリエチレン(HD- PE)(MFI=4.5g/10分、融点=130℃、密度=0. 936g/cm3 )5重量%に真球シリカ粒子(粒径=2μm)を0. 1重量部添加混合して得たチップを用い、 メルトフローインデックス(MFI)は230℃、21.168Nで測定した値である、ポリオレフィン系無延伸フィルム。」 (2)甲2 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0005】 【発明の実施の形態】本発明のポリプロピレンランダム共重合体(以下r-CPPと略称する)とは、実質的にアイソタクチック構造のプロピレンとα-オレフィンとの共重合体である。共重合するα-オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等があげられ、エチレン、ブテン-1が特に好ましい。α-オレフィンモノマーの共重合量としては3~15重量%の範囲が好ましく、エチレンモノマーの場合は2~6重量%、ブテン-1モノマーの場合は3~10重量%の範囲が好ましい。具体的な実施対応としては、エチレン-プロピレン共重合体(以下EPCと略称する)、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体(以下EPBCと略称する)、プロピレン-ブテン-1共重合体(以下BPCと略称する)などが挙げられる。未延伸ポリプロピレンフイルムは、製袋加工時に非蒸着面をヒートシール層として用いるため、r-CPPの融点はヒートシール強度の観点から125~145℃の範囲が好ましい。またr-CPPのメルトフローインデックス(MFI)は1~15g/10分の範囲が押出製膜性が良好で好ましく、より好ましくは2~10g/10分である。 【0006】次に本発明のフイルム組成の高密度ポリエチレン(以下HDPEと略称する)とは、密度が0.93以上、好ましくは0.94以上であり、さらに融点は125℃以上、好ましくは130℃以上のものである。HDPEの混合量は1~15重量%、好ましくは3~10重量%の範囲である。HDPE添加の目的はフイルムの結晶化度を上げてヤング率を高くし、二次加工性を向上させることであり、混合量が1重量%未満では、フイルムのヤング率が上がらず、スリットやラミネート時に皺が入ったり、フイルムが伸びて蒸着層にクラックが入るなどしてガスバリア性が悪化し、また二次加工性も悪化する。また15重量%を超えると、フイルムが白化して光線透過率の低下や製袋時のヒートシール強度が悪化するので好ましくない。」 「【0031】(11)ヒートシール性 厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフイルムに、武田薬品製ポリウレタン系接着剤(主剤“タケラック”A-971/硬化剤“タケネート”A-3=9/1)をコーティングバーを用いて、厚さ約4μm塗工して、金属酸化物蒸着未延伸ポリプロピレンフイルムの蒸着面と貼り合わせた後、40℃×2日エージングして硬化させた。その後該張り合わせたフイルムの未延伸ポリプロピレンフイルムの非蒸着面どうしを重ね合わせて、ヒートシーラの片面加熱法にて、シール温度115℃、シール圧力1kg/cm2 、シール時間2秒の条件でヒートシールを行った。このヒートシールしたサンプルを幅2cmに切り出して、引張試験機(東洋測器製)を用いて300mm/分の速度でシール面を90度剥離するときに要した力が、300g/cm以上のものを○、200g/cm以下のものを×、その中間のものを△として評価した。」 「【0034】実施例1~4、比較例1~4 本発明の樹脂として、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(エチレン共重合量=2重量%、ブテン-1共重合量=5重量%、MFI=3.6g/10分、融点=141℃)と、高密度ポリエチレン(HDPE)(MFI=4.5g/10分、融点=130℃、密度=0.937)と、滑剤として酸化珪素(SiO2 、粒径=2μm)を用い、表1に示した割合に混合して二軸押出機に供給し、240℃の温度でガット状に溶融押出して水槽で冷却後、チップカッタにて3~5mmにカットして、各組成のチップを得た。次に該チップを一軸押出機に供給し、260℃の温度で溶融させ濾過フィルターをとおしてスリット状口金でシート状に押出し、該シートを50℃の温度に加熱した金属ドラムに巻き付けて冷却して厚さ25μmの未延伸フイルムを得た。得られたフイルムに蒸着を施す表面を空気中で40W・min/m2 の処理条件でコロナ放電処理を施し、フイルムの濡れ張力を45mN/mにしてロール状に巻取った。その時のフイルム温度は35℃であり、24時間放置して結晶化度を上げた後小幅にスリットした。このときのフイルム品質を評価して表1に示した。次に該小幅にスリットフイルムをフイルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にセットし、1.33×10-2 Paの高真空にした後に、-20℃の冷却金属ドラムを介して走行させた。この時、アルミニウム金属を加熱蒸発させながら、蒸発蒸気箇所に酸素ガスを供給し、アルミニウムを酸化させながら走行フイルム面に凝集堆積させ、不完全酸化アルミニウムの蒸着層を付設して巻取った。この時のアルミニウムの蒸発量と供給酸素ガス量の比率を変更して、不完全酸化アルミニウム蒸着フイルムの光線透過率を変更した。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧にもどして、巻取った蒸着フイルムをスリットして40℃の温度で3日エージングした後に各フイルムの品質を評価し、フイルムの特性を表1に示した。次に得られた金属酸化物未延伸ポリプロピレンフイルムの二次加工性を評価し、その特性を特性を表1に示した。実施例1~4の本発明の範囲の金属酸化物蒸着未延伸ポリプロピレンフイルムは、ガスバリア性、透明性に優れ、またヤング率が高く、滑り性に優れているので二次加工性にも優れたフイルムであった。しかし本発明の範囲をはずれた比較例1~4のフイルムは、ガスバリア性、透明性、ヒートシール性、二次加工性のいずれかに劣ったフイルムであった。 【0035】 [図:0001399422000002.jpg] 」 (3)甲3 甲3には、次の事項が記載されている。 「[0031] (B-1)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体あるいは、エチレンの単独重合体である。ここでエチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンが好適に用いられる。また、透明性や柔軟性などの観点からエチレン-α-オレフィンランダム共重合体が好適に用いられる。エチレンと共重合するα-オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。」 「[0038] (B-2)プロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体あるいは、プロピレンの単独重合体である。但し、これらの共重合形式(ランダム、ブロックなど)、分岐、分岐度分布や立体構造には特に制限がなく、イソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックあるいはこれらの混在した構造の重合体でもかまわない。共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-ペンテン-1、1-オクテン等の炭素数4~12のα-オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からプロピレンと共重合するα-オレフィンとしては、エチレンや1-ブテンが好適に用いられる。また、透明性や柔軟性などの観点からプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体が好適に用いられる。プロピレンと共重合する単量体は1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。」 「[0042] 本発明に用いられるプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体あるいは、プロピレンの単独重合体(B-2)の具体例としては、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体やプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体などが挙げられ、具体的な商品としては、三井化学(株)製の商品名「ノティオ(NOTIO)」、住友化学(株)商品名「タフセレン(TAFFCELLEN)」、(株)プライムポリマー(株)製の商品名「プライムTPO(PRIME TPO)」等が市販され、前記条件(b)を満たすものが用いられる。」 「[0046] 本発明に用いられるオレフィン系重合体(B)は、条件(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される補外結晶融解開始温度(JIS K7121)が100℃以上を満足することが必要である。好ましくは、補外結晶融解開始温度が102℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。該補外結晶融解開始温度が100℃以上であることにより、得られる太陽電池封止材の耐熱性が十分に得られる為好ましい。一方、該補外結晶融解開始温度の上限値は、太陽電池素子(セル)の熱劣化や太陽電池モジュール作製時のラミネート温度を考慮すると150℃程度である。本発明においては、太陽電池モジュールを作製する際の温度を低温化でき、太陽電池素子(セル)を熱劣化させにくいことから、補外結晶融解開始温度は130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがさらに好ましい。すなわち、該補外結晶融解開始温度は、100~150℃であることが好ましく、100~130℃であることがより好ましく、102~125℃であることが更に好ましい。」 (4)甲4 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0027】本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのメソペンタッド分率(mmmm)は、90~99.5%であることが好ましく、94~99.5%であることがより好ましい。ここで、mmmmとは、ポリプロピレンのにおけるアイソタクチックの立体構造を直接反映する指標である。mmmmを90~99.5%とすることで、寸法安定性に優れ、耐熱性、剛性、防湿性、耐薬品性などが著しく向上したフィルムを安定製造することができるので、印刷、コーティング、蒸着、製袋、ラミネート加工などのフィルム加工工程において、高い二次加工性を有するフィルムを提供することができる。mmmmが90%未満であると、フィルムとしたときの腰が低下し、熱収縮率が大きくなる傾向にあるため、印刷やコーティングや蒸着や製袋およびラミネート加工などの二次加工性が低下することがあり、水蒸気透過率も高くなることがある。mmmmが99.5%を超えると、製膜性が低下することがある。mmmmは、さらに好ましくは95~99%、最も好ましくは96~98.5%である。」 2 本件発明1について (1)甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・甲1発明の「エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)」は、本件発明1の「プロピレン・ランダム共重合体」に相当し、以下同様に、 「高密度ポリエチレン(HD-PE)」は、「高密度ポリエチレン」に、相当する。 ・甲1では、段落【0012】に、「A層」及び「B層」として、ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系無延伸フィルム)を用いること、また、段落【0009】には、ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系無延伸フィルム)としては「エチレン含有量が・・・三元共重合体例えばプロピレンとブテン-1でもよい」ことが記載されている。また、A層は、蒸着が施されるものである(段落【0049】、【0052】)。すると、甲1発明においてエチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)を含む「A層」及び「B層」は、本件発明1の「ベース層(A)」及び「ヒートシール層(B)」にそれぞれ相当する。 ・甲1発明のエチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)は、融点=141℃であることから、本件発明1の「融点が140℃以上のプロピレン・ランダム共重合体(a1)」に相当する。 ・甲1発明のA層樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)と高密度ポリエチレン(HD-PE)を混合した樹脂であり、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)が95重量%であることから、高密度ポリエチレン(HD-PE)は約5重量%含まれているといえる。すると、甲1発明の「A層樹脂」は、本件発明1の「前記ベース層(A)は、融点が140℃以上のプロピレン・ランダム共重合体(a1)100質量部に、190℃におけるメルトフローレートが10g/10分未満である高密度ポリエチレン(a2)1~10質量部を混合した樹脂組成物からな」ることと、「前記ベース層(A)は、融点が140℃以上のプロピレン・ランダム共重合体(a1)100質量部に、高密度ポリエチレン(a2)1~10質量部を混合した樹脂組成物からな」る限りで一致する。 ・甲1発明の「B層樹脂」は、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)と高密度ポリエチレン(HD-PE)を混合した樹脂であることから、本件発明1の「前記ヒートシール層(B)は、プロピレン・ランダム共重合体(b1)100質量部に、190℃におけるメルトフローレートが10g/10分未満である高密度ポリエチレン(b2)1~20質量部を混合した樹脂組成物からな」ることと、「前記ヒートシール層(B)は、プロピレン・ランダム共重合体(b1)100質量部に、高密度ポリエチレン(b2)1~20質量部を混合した樹脂組成物からな」る限りで一致する。 ・甲1発明の「ポリオレフィン系無延伸フィルム」はA層樹脂とB層樹脂が積層されていることから、本件発明1の「複合フィルム」に相当する。 以上のことから、本件発明1と、甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「少なくともベース層(A)とヒートシール層(B)の2層を有する複合フィルムであって、 前記ベース層(A)は、融点が140℃以上のプロピレン・ランダム共重合体(a1)100質量部に、高密度ポリエチレン(a2)1~10質量部を混合した樹脂組成物からなり、 前記ヒートシール層(B)は、プロピレン・ランダム共重合体(b1)100質量部に、高密度ポリエチレン(b2)1~20質量部を混合した樹脂組成物からなる、複合フィルム。」 [相違点1] 本件発明1は高密度ポリエチレン(a2)、(b2)の190℃におけるメルトフローレートが10g/10分未満であるのに対し、甲1発明の高密度ポリエチレン(HD-PE)は230℃におけるMFI=4.5g/10分である点。 [相違点2] 本件発明1はヒートシール層(B)の樹脂組成物はJIS K 7121(1987)における示差走査熱量測定による補外融解開始温度 (Tim)が110℃以下であるのに対し、甲1発明では、補外融解開始温度(Tim)について明らかでない点。 [相違点3] 本件発明1はヒートシール層(B)の樹脂組成物は融点が120℃以上130℃以下であるのに対し、甲1発明のB層樹脂は融点が141℃である点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点3から検討する。 ア 甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とするためには、B層樹脂として、融点が120℃以上130℃以下の樹脂組成物を新たに採用する必要がある。 しかしながら、甲1発明(実施例4)は、A層樹脂とB層樹脂として、どちらも同じエチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)と高密度ポリエチレン(HD-PE)を混合した樹脂を採用したものであり、甲1において、実施例4は所望の特性を備えるものである(段落【0059】参照)。 すると、既に所望の特性を備えている甲1発明(実施例4)において、A層樹脂とB層樹脂のうち、一方のB層樹脂のみ、混合する樹脂の種類や組成割合を変更する動機付けがない。 イ なお、申立人は「補外融解開始温度や融点を適宜調整してヒートシール性を高めることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない」と主張する(異議申立書第8ページ第4行~第5行)。 しかしながら、申立人から提出された他の証拠(甲2~4)をみても、B層樹脂の補外融解開始温度を110℃以下、かつ、融点が120℃以上130℃以下とすることを示唆するものではなく、これらの数値範囲とすることが、当業者の通常の創作能力の発揮であるとはいえない。 さらに、甲1には、実施例として、A層樹脂には、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)(実施例4)と高結晶性ポリプロピレン樹脂(実施例1、2)を使用することが、B層樹脂には、エチレン-プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体(EPBC)を使用することが記載されているのみであり、それ以外の樹脂を採用する動機付けがない。 ウ 以上のとおりであるから、相違点1~2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2で検討したのと同じ理由により、本件発明2~9は、甲1~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件発明1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、申立人が提出した特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700325

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