特許異議申立
2023-700713
シーラントフィルム、包装袋用積層フィルム、パウチ包装袋およびパウチ包装体
- 審判番号
- 2023-700713
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-537286外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7211521
- 請求日
- 2023年07月11日
- 審決日
- 2023年12月15日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.539-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7211521号発明「シーラントフィルム、包装袋用積層フィルム、パウチ包装袋およびパウチ包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7211521号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7211521号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2020年7月31日を国際出願日(優先権主張 2019年8月2日、日本(JP))とする特願2021-537286号であって、令和5年1月16日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年1月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、この特許に対し、令和5年7月11日に申立人 加藤 真弥(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)を行った。
第2 本件特許発明
特許第7211521号の請求項1ないし6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」といい、これらをあわせて「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するシーラントフィルムであって、
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下であり、
前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であり、
前記ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超えることを特徴とするシーラントフィルム。
【請求項2】
前記シール層の厚みが50~190μmであることを特徴とする請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシーラントフィルムと、基材フィルムとを有することを特徴とする包装袋用積層フィルム。
【請求項4】
厚みが70~300μmであることを特徴とする請求項3に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の包装袋用積層フィルムによって構成されていることを特徴とするパウチ包装袋。
【請求項6】
請求項5に記載のパウチ包装袋内に内容物が充填されてなることを特徴とするパウチ包装体。」
第3 申立理由の概要
1 特許異議申立理由の要旨
申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5、6は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲第2号証を主引用例とする進歩性)
本件特許発明1ないし6は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし6についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的理由は以下のとおり。
ア 本件特許発明1では、「前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり」と規定されているところ、本件明細書の実施例1~10([表1]~[表3]等参照)では、使用された直鎖状低密度ポリエチレンがLLDPE(1)~(5)であり、コモノマー(α-オレフィン)がいずれも1-ヘキセンであり、実施例1~10の直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6のα-オレフィンとの共重合体を開示するのみであり、直鎖状低密度ポリエチレンがエチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体であることの技術的裏付けが明細書等に開示されていない。
イ 本件特許発明1では、「当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3」と規定されているところ、本件明細書の比較例3に使用された直鎖状低密度ポリエチレンであるLLDPE(7)の密度が0.93g/cm3」であるのに対し、実施例1~10に使用された直鎖状低密度ポリエチレンであるLLDPE(1)~(5)の密度の最大値は0.926g/cm3であり([表1]~[表3]等参照)、比較例3の直鎖状低密度ポリエチレンの密度0.93g/cm3に近似する0.929g/cm3が直鎖状低密度ポリエチレンの密度の上限値となることの技術的裏付けが明細書等に開示されているとは言い難く、臨界的意義を見出すことができない。
ウ 本件特許発明1では、「前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であり」と規定されているところ、本件明細書の実施例1~10に使用された低密度ポリエチレンであるLDPE(10)の含有割合の最小値は10質量%であり([表1]~[表3]等参照)、低密度ポリエチレンの含有割合の下限値が1質量%であることの技術的裏付けが明細書等に開示されておらず、臨界的意義を見出すことができない。
エ 本件特許発明1では、「前記ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超える」と規定されているところ、本件明細書の比較例7に使用された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE(1))の含有割合が70質量%であるのに対し、実施例1~10に使用された直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合の最小値は73質量%であり、直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合の下限値を「70質量%を超える」と規定することの技術的裏付けが明細書等に開示されておらず、臨界的意義を見出すことができない。
2 証拠方法
申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。
・甲第1号証:特開2013-155343号
・甲第2号証:特開平8-269270号
以下、甲各号証の番号に応じて、「甲第1号証」等を「甲1」等という。
第4 当審の判断
当審は、申立人がした申立ての理由によっては、本件特許発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)証拠等の記載
ア 甲1の記載事項等
(ア)甲1の記載事項
甲1には、「ポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルム」について、以下の記載がされている。なお、下線については当審において付与した。
「【請求項1】
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン 20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン 15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン 15~65質量%、並びに
(d)添加剤 0~20質量%、 からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%であることを特徴とする、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする、包装材用シーラントフィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層共押出フィルムであり、 該フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物の配合量は、多層フィルム全体に対して40質量%以上であることを特徴とする、包装材用シーラントフィルム。」
「【0001】
本発明は、植物由来のポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルムに関し、更に詳しくは、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、高いバイオマス度を示すフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルムに関する。」
「【0022】
植物由来のLLDPEの製造方法としては、慣用の方法にしたがって、サトウキビ、トウモロコシ、サツマイモ等の植物から得られる糖液や澱粉を、酵母等の微生物により発酵させてバイオエタノールを製造し、これを触媒存在下で加熱し、分子内脱水反応等によりエチレン、並びにα-オレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン等)を得る。次いで、これらをモノマーとして用いて、石油由来のLLDPEの製造と同様にして、慣用の触媒の存在下で重合させることにより、植物由来のLLDPEを製造することができる。コモノマー種である上記α-オレフィンとしては、場合により、石油由来のものを用いることもできる。
重合方法としては、低圧法、スラリー法、溶液法、気相重合法等の重合方法が挙げられる。」
「【0028】
このような特定の物性を有する石油由来のLDPEを、樹脂組成物中に、15~65質量%、より好ましくは15~50質量%配合することにより、植物由来樹脂の配合により生じる、製膜化後のフィルムの手切れ性の低下を防ぐことができる。」
「【0033】
慣用の方法にしたがい、触媒の選択や共重合時のコモノマー濃度を調節すること等により、得られる樹脂の密度を、所望の値となるように制御することができる。また、触媒の選択や共重合時の水素濃度を調節すること等により、得られる樹脂のMFRを、所望の値となるように制御することができる。
【0034】
本発明において使用される石油由来のLLDPEは、密度0.914~0.937kg/m3、より好ましくは0.916~0.930kg/m3、MFR0.9~3.0g/10分、より好ましくは0.9~2.7g/10分の物性を有する。
【0035】
このような特定の物性を有する石油由来のLLDPEを、樹脂組成物中に、15~65質量%、より好ましくは15~60質量%配合することにより、植物由来樹脂の配合により生じる、製膜化後のフィルムの耐衝撃性の低下を防ぐことができる。
【0036】
石油由来のLLDPEの配合量が15質量%より少ないと、製膜化後のフィルムは、耐衝撃性に劣り、衝撃による破袋が生じ易く、重量袋のシーラントに適用することはできない。逆に65質量%より多いと、手切れ性の低下を引き起こす。
【0037】
また、石油由来のLLDPEの密度及びMFRが上記範囲外であると、耐衝撃性低下の防止効果が得られない。・・・」
「【0042】
本発明の一態様において、単層構成のシーラントフィルムは、上記の本発明の樹脂組成物を溶融し、これをインフレーション成形またはT-ダイ成形等の溶融押出成形法によって製膜することができる。
また、包装材を構成する基材フィルム上に、溶融した上記樹脂組成物を押出コーティングすることによって、製膜と同時に基材フィルム上への積層を行ってもよい。」
「【0044】
本発明のシーラントフィルムは、任意の膜厚であってよいが、詰め替えパウチ等の包装材のシーラントとして、好適には、80~160μm、より好ましくは100~130μmの膜厚で製造する。」
「【0062】
本発明のシーラントフィルムは、高いバイオマス度を示しながらも、優れた手切れ性及び耐衝撃性を有するため、特に、詰め替え用のシャンプーやリンス、食品等を密封包装する詰め替えパウチのシーラントフィルムとして好適に使用することができる。」
「【実施例】
【0068】
[実施例1]
植物由来のLLDPE(ブラスケム(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)50質量%、石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)25質量%、及び石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)25質量%をブレンドし、溶融混練して、本発明の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形し、厚み120μmのシーラントフィルムを製膜した。フィルム全体のバイオマス度は43.5%であった。
【0069】
得られたシーラントフィルムを、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)とドライラミネートして積層体を得、これを用いて、外形寸法:高さ220mm×幅140mm、底部の折り込み部の高さ40mm、シール幅5mmのスタンディングパウチを製造した。また、底部は舟底型のシールパターンでヒートシールした。」
(イ)甲1に記載された発明
甲1の記載について、特に実施例1(【0068】)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「植物由来のLLDPE(ブラスケム(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)50質量%、石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)25質量%、及び石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)25質量%をブレンドし、溶融混練することにより得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形し、厚み120μmに製膜されたシーラントフィルム。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)」は、「1-ヘキセン」の炭素数が6であることから、本件特許発明1における「エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下」である「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当する。
また、甲1発明の「石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)」は、本件特許発明1の「低密度ポリエチレン」に相当する。
さらに、甲1発明における「石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)25質量%」は、樹脂組成物100重量%中に「25重量%」含有されるものであるから、本件特許発明1における「ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であ」ることを満たす。
加えて、本件明細書の【0026】には、「本発明のシーラントフィルムは、・・・シール層からのみからなる単層構造のものであっても・・・よい。」と記載されているから、甲1発明における、「LLDPE」と「LDPE」を「ブレンドし、溶融混練することにより得られた樹脂組成物を、・・・成形し、厚み120μmに製膜されたシーラントフィルム」は、本件特許発明1の「ポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するシーラントフィルム」に相当する。
なお、甲1発明においては、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンとして、「ブラスケム(BraskemS.A.)社製SLL118」を用いているが、この「ブラスケム(BraskemS.A.)社製SLL118」は、炭素数が4のα-オレフィンを用いて製造したものであるから(例えば、特開2015-189160号公報の【0024】等参照。)、甲1発明における(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、本件特許発明1「直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体)」に相当する成分であるとはいえない。
そうすると、両発明は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。
<一致点>
「直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するシーラントフィルムであって、前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であることを特徴とするシーラントフィルム。」
<相違点1>
ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が本件特許発明1では「70質量%を超える」のに対して、甲1発明では「25質量%」である点
上記<相違点1>について検討する。
(ア) 甲1には、「・・・(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン 15~65質量%・・・」(【請求項1】)、「このような特定の物性を有する石油由来のLDPEを、樹脂組成物中に、15~65質量%、より好ましくは15~50質量%配合することにより、植物由来樹脂の配合により生じる、製膜化後のフィルムの手切れ性の低下を防ぐことができる。」(【0028】)と記載されており、甲1には、直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が70質量%を超えることについては記載されていない。
よって、<相違点1>は、実質的な相違点である。
ついで、<相違点1>の容易想到性について、さらに検討する。
甲1の【0036】には、「石油由来のLLDPEの配合量が15質量%より少ないと、製膜化後のフィルムは、耐衝撃性に劣り、衝撃による破袋が生じ易く、重量袋のシーラントに適用することはできない。逆に65質量%より多いと、手切れ性の低下を引き起こす。」と記載されており、石油由来のLLDPEが25質量%である甲1発明において、直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合を「70質量%を超える」ようにする動機付けはない。
よって、甲1発明において、<相違点1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ) したがって、本件特許発明1は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易になし得たものでもない。
イ 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記アで検討したのと同様に、本件特許発明2ないし6は、甲1に記載された発明であるとも、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、甲1について下記のように認定し、本件特許発明の新規性及び進歩性を否定している。
甲1では、【0022】に、「・・・分子内脱水反応等によりエチレン、並びにα-オレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン等)を得る。次いで、これらをモノマーとして用いて、石油由来のLLDPEの製造と同様にして、慣用の触媒の存在下で重合させることにより、植物由来のLLDPEを製造することができる。」と記載されるように、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンが「エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体」よりなることが開示されている。また、【0068】に「植物由来のLLDPE(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)50質量%」と記載されるように、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンが「密度が0.910~0.929g/cm3」、「メルトフローレートが2.5g/10min以下」であることが開示されている。そうすると、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンと(c)非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンとは、合わせて「直鎖状低密度ポリエチレン」とみなすことが可能であり、直鎖状低密度ポリエチレンの配合割合が70質量%を超えることが起こり得る、と主張する。
しかしながら、甲1の【0022】の「α-オレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン等)」は、1-ブテンは炭素数4であり、1-ヘキセンは炭素数6であるし、上記(2)(イ)で述べたとおり、【0068】における「ブラスケム(BraskemS.A.)社製SLL118」は、炭素数が4のα-オレフィンを用いて製造したものである。したがって、甲1発明における(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、「エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体」よりなることが開示されているとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第1項に該当し、また第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)、申立理由3(甲2を主引例とする進歩性)について
申立理由2、3は、甲2を主引例とするものであるから、申立理由2、3を合わせて検討する。
(1)証拠等の記載
ア 甲2の記載事項等
(ア)甲2の記載事項
甲2には、「複合フィルム用ポリエチレン組成物および複合フィルム」について、以下の記載がされている。なお、下線については当審において付与した。
「【請求項1】(A)溶融指数(MFR)が1~50g/10分であり、
密度0.880~0.930g/cm3 であり、
平均分子量分布(Mw/Mn)が1.5~4.0である、
エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体99~30重量%と、(B)溶融指数(MFR)が1~70g/10分であり、
密度が0.915~0.935g/cm3 である高圧法低密度ポリエチレン1~70重量%とからなり、(1) 溶融指数(MFR)が1~30g/10分であり、(2) 密度が0.881~0.930g/cm3 であり、(3) 溶融張力(MT)が0.5~10gであることを特徴とする複合フィルム用ポリエチレン組成物。」
「【請求項5】基材と、基材上に押出コーテイングされたポリエチレン組成物層とからなる複合フィルムであり、前記ポリエチレン組成物が、
(A)溶融指数(MFR)が1~50g/10分であり、密度0.880~0.930g/cm3 であり、かつ平均分子量分布(Mw/Mn)が1.5~4.0である、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体99~30重量%と、
(B)溶融指数(MFR)が1~70g/10分であり、密度が0.915~0.935g/cm3 である高圧法低密度ポリエチレン1~70重量%とからなり、(1) 溶融指数(MFR)が1~30g/10分であり、(2) 密度が0.881~0.930g/cm3 であり、かつ(3) 溶融張力(MT)が0.5~10gであることを特徴とする複合フィルム。」
「【0001】
【発明の技術分野】 本発明は、複合フィルム用ポリエチレン組成物および複合フィルムに関し、さらに詳しくは、特に成膜性が良好で、しかもフィルムとしたときのヒートシール強度、ホットタック性、低温ヒートシール性に優れた複合フィルム用ポリエチレン組成物およびこの組成物を基材上に押出コーティングした複合フィルムに関する。」
「【0017】まず本発明で用いられる各成分を示す。
(A)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体
本発明で用いられるエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体(以下エチレン・α-オレフィンランダム共重合体という)を、エチレンとともに形成している炭素数4~10のα-オレフィンとしては、具体的には1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよびこれらの組合せが挙げられる。これらのうちでも、炭素数6~8のα -オレフィンが好ましく、特に4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンが好ましい。
【0018】エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)としては、具体的にエチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン共重合体が好ましい。
【0019】本発明で用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)の溶融指数(MFR)は、1~50g/10分好ましくは5~40g/10分さらに好ましくは7~20g/10分である。
【0020】このようなMFRのエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)からは、ヒートシール強度、流動特性(押出加工性)に優れたポリエチレン組成物を形成することができる。なお溶融指数は、ASTM D1238Eに準拠して、測定温度190℃、荷重2160gの条件下で測定した値である。
【0021】エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)の密度は、0.880~0.930g/cm3 好ましくは0.890~0.925g/cm3 である。このような密度のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)からは、ホットタック性およびヒートシール強度に優れ、べたつき、ブロッキングなどを生じにくいポリエチレン組成物を形成することができる。
【0022】この密度は、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)のエチレンとα-オレフィンとの共重合割合に大きく依存しており、炭素数4~10のα-オレフィンから導かれる単位の割合が0.5~15モル%であることが望ましく、さらには1.0~10モル%であることが望ましい。なお上記の密度は、ASTM D1505に準拠して測定した値である。」
「【0070】複合フィルム用ポリエチレン組成物
本発明に係る複合フィルム用ポリエチレン組成物は、上記のようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)と、高圧法低密度ポリエチレン(B)とから形成されるが、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)を、99~30重量%好ましくは98~50重量%より好ましくは95~60重量%の量で、 高圧法ポリエチレン(B)を、1~70重量%好ましくは2~50重量%さらに好ましくは5~40の量で含有している。」
「【0073】このような本発明に係るポリエチレン組成物は、高速延展性に優れ、ネックインが小さく成膜性に優れており、かつヒートシール強度、ホットッタック性にも優れており、複合フィルムのシーラントとして好適である。」
「【0076】複合フィルム
本発明に係る複合フィルムは、基材と、上記のようなポリエチレン組成物層とからなり、基材上にポリエチレン組成物を押出コーティングすることにより得られる。このようにして形成された複合フィルムでは、上記のポリエチレン組成物層は、通常シーラント層として機能する。」
「【0086】このような複合フィルム用ポリエチレン組成物を有する本発明に係る複合フィルムは、各種包装袋たとえば液体スープ、漬物、糸こんにゃくなどの水物包装袋、みそ、ジャムなどのペースト状物包装袋、砂糖、小麦粉、ふりかけなどの粉末物包装袋、医薬錠剤、顆粒包装袋用途に好適であり、このような用途ではポリエチレン組成物はシーラント層としての役割を果している。」
「【0088】
【表1】
[図:0001405831000001.jpg]
「【0096】
【実施例1】シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むジルコノセンと有機アルミニウムオキシ化合物と有機アルミニウムとからなるメタロセン系触媒を用いて得られたMFR:10.3g/10分、密度:0.910g/cm3 、融点:100℃、Mw/Mn:2.2のエチレン・1-ヘキセンランダム共重合体(LL-Iと略す)90重量部と、MFR:7.0g/10分、密度:0.917g/cm3 の高圧法低密度ポリエチレン(LD-1と略す)10重量部とを、押出機で溶融混合して混合組成物を得た。
【0097】厚み15μmの二軸延伸ナイロン層上へ、イソシアネート系アンカーコート剤を塗布した上に、上記LD-1を20μmの厚みでコーティングして基材層としての二軸延伸ナイロンフィルムを作成した。
【0098】前記混合組成物を65mmφの押出機(設定温度:300℃)で溶融後、幅500mmのT-ダイより、二軸延伸ナイロンフィルム上に、30μm厚で押出コーティングした結果、ネックインは82mm(片耳)、押出コーティング速度300m/分まで溶融膜の耳切れおよび膜ゆれ(サージング)が生じず、厚薄むらのない均一膜厚を有する良好な複合フィルムが得られた。
【0099】得られた複合フィルムの性能試験を行った結果を表2に示す。
【0100】
【実施例2】実施例1においてLLDPE(LL-1)とLD-1との混合比を80/20に変えた以外は、実施例1と同様にして複合フィルムを得た。結果を表2に示す。
【0101】
【実施例3】実施例1においてLLDPE(LL-1)とLD-1との混合比を70/30に変えた以外は、実施例1と同様にして複合フィルムを得た。結果を表2に示す。
【0102】
【実施例4】実施例1においてLLDPE(LL-1)を、MFR:15.4g/10分、密度:0.900g/cm3 、融点:90℃、Mw/Mn:2.7のエチレン・1-ヘキセンランダム共重合体(LL-2と略す)に変えた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを得た。結果を表2に示す。
【0103】
【実施例5】実施例4においてLLDPE(LL-2)とLD-1との混合比を70/30に変えた以外は、実施例4と同様にして複合フィルムを得た。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
[図:0001405831000002.jpg]
【0105】
【実施例6】実施例2においてLLDPE(LL-1)を、MFR:9.5g/10分、密度:0.897g/cm3 、融点:88℃、Mw/Mn:2.3のエチレン・1-オクテンランダム共重合体(LL-3と略す)に変えた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを得た。結果を表3に示す。
【0106】
【実施例7】実施例2においてLLDPE(LL-1)を、MFR:10.0g/10分、密度:0.896kg/cm2 、融点:87℃、Mw/Mn:2.5のエチレン・1-ブテンランダム共重合体(LL-4と略す)に変えた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを得た。結果を表3に示す。
【0107】
【実施例8】実施例2においてLLDPE(LL-1)を、MFR:14.2g/10分、密度:0.910g/cm3 、融点:101℃、Mw/Mn:2.6のエチレン・4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体(LL-5と略す)に変えた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを得た。結果を表3に示す。
【0108】
【実施例9】実施例2においてLDPE(LD-1)を、MFR:5.0g/10分、密度:0.920g/cm3 のLDPE(LD-2と略す)に変えた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを得た。結果を表3に示す。
【0109】
【実施例10】実施例4においてLDPE(LD-1)をLD-2に変えた以外は、実施例4と同様にして複合フィルムを得た。結果を表3に示す。
【0110】
【表3】
[図:0001405831000003.jpg]
」
(イ)甲2に記載された発明
甲2の記載について、特に実施例1(【0096】~【0098】、表2)に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
「シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むジルコノセンと有機アルミニウムオキシ化合物と有機アルミニウムとからなるメタロセン系触媒を用いて得られたMFR:10.3g/10分、密度:0.910g/cm3 、融点:100℃、Mw/Mn:2.2のエチレン・1-ヘキセンランダム共重合体(LL-1と略す)90重量部と、MFR:7.0g/10分、密度:0.917g/cm3 の高圧法低密度ポリエチレン(LD-1と略す)10重量部とを、押出機で溶融混合して混合組成物を得た後、厚み15μmの二軸延伸ナイロン層上へ、イソシアネート系アンカーコート剤を塗布した上に、上記LD-1を20μmの厚みでコーティングして基材層としての二軸延伸ナイロンフィルムを作成し、前記混合組成物を65mmφの押出機(設定温度:300℃)で溶融後、幅500mmのT-ダイより、二軸延伸ナイロンフィルム上に、30μm厚で押出コーティングした結果得られた、ネックインは82mm(片耳)、押出コーティング速度300m/分まで溶融膜の耳切れおよび膜ゆれ(サージング)が生じず、厚薄むらのない均一膜厚を有する良好な複合フィルム。」(以下、「甲2発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むジルコノセンと有機アルミニウムオキシ化合物と有機アルミニウムとからなるメタロセン系触媒を用いて得られたMFR:10.3g/10分、密度:0.910g/cm3 、融点:100℃、Mw/Mn:2.2のエチレン・1-ヘキセンランダム共重合体(LL-1と略す)」は、「1-ヘキセン」の炭素数が6であることから、本件特許発明1の「直鎖状低密度ポリエチレン」とは、「エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 」である「直鎖状低密度ポリエチレン」である限りにおいて一致する。
また、甲2発明の「MFR:7.0g/10分、密度:0.917g/cm3 の高圧法低密度ポリエチレン(LD-1と略す)」は、本件特許発明1の「低密度ポリエチレン」に相当する。
さらに、甲2発明における「エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体」は混合組成物100重量部に対して「90重量部」を含有するものであるから、本件特許発明1における「ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超える」ことを満たす。
加えて、甲2発明における「高圧法低密度ポリエチレン」は混合組成物100重量部に対して「10重量部」を含有するものであるから、本件特許発明1における「ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であ」ることを満たす。
そして、甲2の【0073】、【0076】には、甲2発明における複合フィルム用ポリエチレン組成物はシーラント層として機能することが記載されているから、甲2発明の「エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体」と、「高圧法低密度ポリエチレン」とを「押出機で溶融混合して混合組成物を得た後、・・・前記混合組成物を65mmφの押出機(設定温度:300℃)で溶融後、幅500mmのT-ダイより、二軸延伸ナイロンフィルム上に、30μm厚で押出コーティングした結果得られた・・・複合フィルム」は、本件特許発明1の「ポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するフィルム」に相当する。
そうすると、両発明は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。
<一致点>
「直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するフィルムであって、前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超えることを特徴とするフィルム。」
<相違点2>
ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが、本件特許発明1では「2.5g/10min以下であ」るのに対し、甲2発明では「10.3g/10分」である点
<相違点3>
フィルムについて、本件特許発明1は、「シーラント」フィルムであるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点
そこで、上記<相違点2>について検討する。
甲2発明における「直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレート」について、直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートの範囲を「2.5g/10min以下」とすることは記載されていないから、<相違点2>は、実質的な相違点である。
ついで、<相違点2>の容易想到性について、さらに検討する。
甲2の【0019】~【0020】には、「本発明で用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)の溶融指数(MFR)は、1~50g/10分好ましくは5~40g/10分さらに好ましくは7~20g/10分である。このようなMFRのエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(A)からは、ヒートシール強度、流動特性(押出加工性)に優れたポリエチレン組成物を形成することができる。」と記載されている。また、甲2の表1には、直鎖状低密度ポリエチレンとして、LL-1~LL-8が示されているが、そのMFRは9.5~16.1g/10分である。
よって、直鎖状低密度ポリエチレンのMFRが10.3g/10分である甲2発明において、好ましい範囲や実施例で採用されているMFRの値に替えて、敢えて「2.5g/10min以下」にする動機付けはない。
また、甲1の【0034】には、「・・・石油由来のLLDPEは、密度0.914~0.937kg/m3、より好ましくは0.916~0.930kg/m3、MFR0.9~3.0g/10分、より好ましくは0.9~2.7g/10分の物性を有する。」、【0037】には、「・・・石油由来のLLDPEの密度及びMFRが上記範囲外であると、耐衝撃性低下の防止効果が得られない。」、【0068】には、「石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)25質量%」との記載がある。しかしながら、甲1に記載の好ましいMFRの範囲とすることで耐衝撃性を向上させるという知見に触れたとしても、上述の通り、甲2は、ヒートシール強度、流動特性(押出加工性)の観点でMFRを調整しているものであるから(甲2の【0020】参照)、甲2発明において、甲1の上記記載に基づきLLDPEのMFRの値を「2.5g/10min以下」とする動機付けがあるともいえない。
したがって、甲2発明において、<相違点2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明でもないし、また、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記アで検討したのと同様に、本件特許発明2ないし6は、甲2に記載された発明であるとも、また、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、甲2について下記のように解釈し、本件特許発明の新規性及び進歩性を否定している。
すなわち、甲2では、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体が、MFR1~50g/分であり([請求項1]、段落[0019][0020]等参照)、密度0.880~0.930g/cm3であり([請求項1]、段落[0021][0022]等参照)、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体である([請求項1]、段落[0017]等参照)ことが記載されている。そうすると、甲2のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体は、本件特許発明1の直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下である)と一致する、と主張する。
しかしながら、上記(2)で述べたとおり、甲2のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体のMFRの範囲として、【0019】~【0020】に「1~50g/分」の範囲が形式的には記載されているものの、実施例で示されるMFRの範囲は、「9.5~16.1g/10分」であり、【0019】~【0020】に記載される好ましい範囲も「5~40g/10分」であるから、実質的にMFRが「2.5g/10min以下」という範囲が記載されているとはいえない。
また、上記(2)で述べたとおり、甲2発明において、好ましい範囲や実施例で採用されているMFRの値に替えて、敢えて「2.5g/10min以下」にする動機付けはない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由2、3についてのむすび
そうすると、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第1項に該当し、また第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、申立理由2、3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0003】
従来、パウチ包装袋を構成するシーラントフィルムとしては、ヒートシール性や耐衝撃性等の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、またはこれらの混合物よりなるものが提案されている(特許文献1乃至特許文献4参照)。しかしながら、このようなシーラントフィルムを用いてパウチ包装袋を構成する場合において、大容量化やフィルムの薄肉化を図ると、要求される耐落下性またはパウチ剛性を得ることが困難であることが判明した。・・・」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、耐落下性およびパウチ剛性に優れたパウチ包装袋が得られるシーラントフィルムおよび包装袋用積層フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、耐落下性およびパウチ剛性に優れたパウチ包装袋およびパウチ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシーラントフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するシーラントフィルムであって、前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であることを特徴とする。
【0007】
本発明のシーラントフィルムにおいては、前記シール層の厚みが50~190μmであることが好ましい。
【0008】
本発明の包装袋用積層フィルムは、上記のシーラントフィルムと、基材フィルムとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の包装袋用積層フィルムにおいては、厚みが70~300μmであることが好ましい。
【0010】
本発明のパウチ包装袋は、上記の包装袋用積層フィルムによって構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のパウチ包装体は、上記のパウチ包装袋内に内容物が充填されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシーラントフィルムによれば、特定の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有してなり、当該低密度ポリエチレンが特定の割合で含有されているため、高い耐衝撃性が得られると共に高い剛性が得られる。従って、本発明のシーラントフィルムを用いてパウチ包装袋を構成することにより、耐落下性およびパウチ剛性(自立性等)に優れたパウチ包装袋およびパウチ包装体が得られる。」
「【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[シーラントフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、特定の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するものである。
【0015】
シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物において、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなるものである。炭素数が6~10のα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、これらは単独でまたは組み合わせて用いることができる。α-オレフィンの炭素数が5以下、例えばα-オレフィンが1-ブテンである直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。
【0016】
また、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.910~0.929g/cm3 、好ましくは0.915~0.926g/cm3 のものである。直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910g/cm3 未満である場合には、当該シーラントフィルムは剛性が低いものとなり、そのため、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。一方、直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.929g/cm3 を超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。
【0017】
また、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、JIS K7210に準拠(温度190℃,荷重2.16kg)して測定されたメルトフローレート(MFR)が2.5g/10min以下、好ましくは0.8~2.2g/10minのものである。直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10minを超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。
【0018】
また、特定の直鎖状低密度ポリエチレンとしては、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒や、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒等により重合した共重合体を用いることができるが、分子量分布が狭く低分子量成分の少ないことから、シングルサイト触媒により重合した共重合体を用いることが好ましい。
【0019】
シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物において、特定の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは75質量%以上である。特定の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%未満である場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなりやすく、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となることがある。
【0020】
シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物において、低密度ポリエチレンとしては、特に限定されず、ラジカル重合開始剤を用いて高圧下にエチレンをラジカル重合して得られる重合体を用いることができる。また、低密度ポリエチレンは、エチレンに少量の他のモノマーを共重合して得られる共重合体であってもよい。
【0021】
また、低密度ポリエチレンは、密度が0.916~0.928g/cm3 であるものが好ましく、JIS K7210に準拠(温度190℃,荷重2.16kg)して測定されたメルトフローレート(MFR)が0.2~5.0g/10minのものであることが好ましい。
【0022】
シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物において、低密度ポリエチレンの含有割合は、1~29質量%とされ、好ましくは5~27質量%、より好ましくは10~25質量%である。低密度ポリエチレンの含有割合が1質量%未満である場合には、当該シーラントフィルムは剛性が低いものとなり、そのため、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。一方、低密度ポリエチレンの含有割合が29質量%を超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。
【0023】
シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物においては、本発明の目的を阻害しない範囲において、特定の直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン以外の樹脂が含有されていてもよい。
また、シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物には、滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤などの種々の添加剤が含有されていてもよい。 【0024】 また、シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物においては、環境への配慮の点から特定の直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの一部または全部として、バイオポリエチレン、再生ポリエチレンを用いることが好ましい。バイオポリエチレンとしては、サトウキビなどの植物由来のエチレンを重合して得られる低密度ポリエチレン、サトウキビなどの植物由来のエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。再生ポリエチレンとしては、JIS Q 14021(2000年)に準拠したプレコンシューマ材料、ポストコンシューマ材料などを挙げることができる。」
【実施例】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施例に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例および比較例において使用した特定の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE(1)~LLDPE(5))、その他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE(6)~LLDPE(9))および低密度ポリエチレン(LDPE(10))は、下記表1に示す特性を有するものである。
【0037】
【表1】
[図:0001405831000004.jpg]
【0038】
〈実施例1〉
LLDPE(1)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を、単軸押出機に供給して溶融混練し、該単軸押出機に連結したTダイフィルム成形装置から押し出した。さらに、押し出された溶融樹脂を、冷却ロールにキャストして冷却することにより、厚みが120μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
以上において、単軸押出機のシリンダーの温度は200℃、Tダイヘッドの温度は210℃、冷却ロールの温度は60℃である。
また、単軸押出機とTダイとの連結部において樹脂温度を測定したところ、204~210℃であった。
【0039】
〈実施例2〉
シール層の厚みを110μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0040】
〈実施例3〉
LLDPE(2)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが120μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0041】
〈実施例4〉
シール層の厚みを110μmに変更したこと以外は実施例3と同様にして小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0042】
〈実施例5〉
LLDPE(3)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0043】
〈実施例6〉
LLDPE(4)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0044】
〈実施例7〉
シール層の厚みを120μmに変更したこと以外は実施例6と同様にして小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0045】
〈実施例8〉
LLDPE(1)90質量%およびLDPE(10)10質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0046】
〈実施例9〉
LLDPE(1)75質量%およびLDPE(10)25質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0047】
〈比較例1〉
LLDPE(6)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが120μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0048】
〈比較例2〉
シール層の厚みを110μmに変更したこと以外は比較例1と同様にして小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0049】
〈比較例3〉
LLDPE(7)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0050】
〈比較例4〉
LLDPE(8)80質量%およびLDPE(10)20質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが120μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0051】
〈比較例5〉
シール層の厚みを110μmに変更したこと以外は比較例4と同様にして小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0052】
〈比較例6〉
LLDPE(1)を押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0053】
〈比較例7〉
LLDPE(1)70質量%およびLDPE(10)30質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが110μmのシール層のみよりなる小容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。
【0054】
[シーラントフィルムの評価]
実施例1~9および比較例1~7で得られたシーラントフィルムについて、下記の方法により、インパクト値およびスティフネス値を測定し、各シーラントフィルムを使用して小容量パウチ包装袋を構成した場合における耐落下性およびパウチ剛性を下記の基準により評価した。以上、結果を下記表2に示す。
【0055】
インパクト値:
各シーラントフィルムを100mm×100mmの大きさに切り取り、これを試験片とした。この試験片を測定前に5℃の恒温室に24時間静置した。その後、この試験片について、5℃の恒温室に設置したフィルムインパクトテスター(東洋精機製)を用いて、破壊に要するエネルギーを測定した。ここで、フィルムインパクトテスターにおける衝撃頭球面と容量は1/2インチ×30kg・cmである。
スティフネス値:
各シーラントフィルムについて、ループスティフネステスター(東洋精機製作所社製)を用いて、下記の測定条件でスティフネス値を測定した。ここで、測定は、各シーラントフィルムにおける製膜時の流れ方向(MD)および幅方向(TD)についてそれぞれ5回行い、合計10回の測定値の平均値を当該シーラントフィルムのスティフネス値とした。(測定条件)
試料の寸法:ループ長さ=100mm、幅=30mm
押し込み距離:0mm
【0056】
耐落下性の評価基準:
インパクト値が1.4J以上のシーラントフィルムを○、インパクト値が1.4J未満のシーラントフィルムを×として評価した。
パウチ剛性の評価基準:
スティフネス値が30mN以上のシーラントフィルムを○、スティフネス値が30mN未満のシーラントフィルムを×として評価した。
【0057】
【表2】
[図:0001405831000005.jpg]
【0058】
表2の結果から明らかなように、実施例1~9に係るシーラントフィルムによれば、インパクト値およびスティフネス値の両方が高い値を示していることから、優れた耐落下性およびパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが可能であることが理解される。
これに対して、比較例1~2に係るシーラントフィルムにおいては、密度が低い直鎖状低密度ポリエチレンを使用しており、スティフネス値が低い値を示していることから、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例3に係るシーラントフィルムにおいては、MFRが高くて密度が高い直鎖状低密度ポリエチレンを使用しており、インパクト値が低い値を示していることから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例4~5に係るシーラントフィルムにおいては、直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンと1-ブテンとの共重合体であり、インパクト値が低い値を示していることから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例5に係るシーラントフィルムにおいては、低密度ポリエチレンが含有されておらず、スティフネス値が低い値を示していることから、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例7に係るシーラントフィルムにおいては、低密度ポリエチレンの含有割合が大きく、インパクト値が低い値を示していることから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。
【0059】
〈実施例10〉
(1)シーラントフィルムの製造
LLDPE(5)73質量%およびLDPE(10)27質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが150μmのシール層のみよりなる大容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。このシーラントフィルムを「フィルムF1」とする。
【0060】
(2)パウチ包装体用積層フィルムの作製
得られたフィルムF1の一面にコロナ処理を施した。このフィルムF1の処理面とアルミ蒸着延伸PETフィルム(厚み:15μm)の非蒸着面とを、接着剤(主剤:ポリエステル系、硬化剤:ポリイソシアネート系)を用いてドライラミネーションによって貼り合わせることにより、中間積層フィルムを得た。
得られた中間積層フィルムの蒸着面と延伸ナイロンフィルム(厚み:15μm)の一面とを接着剤(主剤:ポリエステル系、硬化剤:ポリイソシアネート系)を用いてドライラミネーションによって貼り合わせることにより、パウチ包装袋用積層フィルム(a)を作製した。
【0061】
また、得られたフィルムF1の一面にコロナ処理を施し、このフィルムF1の処理面と延伸ナイロンフィルム(厚み:25μm)の一面とを、接着剤(主剤:ポリエステル系、硬化剤:ポリイソシアネート系)を用いてドライラミネーションによって貼り合わせることにより、パウチ包装袋用積層フィルム(b)を作製した。
【0062】
(3)大容量パウチ包装袋(スタンディングパウチ)の作製
パウチ包装袋用積層フィルム(a)を胴部材として、パウチ包装袋用積層フィルム(b)を底部材としてそれぞれ用い、図1に示す形態のパウチ包装袋(スタンディングパウチ)1を製造した。このパウチ包装袋1は、幅160mm、高さ270mm、底部折り返し高さが45mm、サイドシール2(短辺)の長さが225mm、開口部3の長さが115mm、サイドシール2の幅が5mmで、内容量が800mLのものである。また、パウチ包装袋1には、スクリュー栓6を有するスパウト5(質量2.3g)が取り付けられており、このスパウト5の取り付け位置は、底部からの高さhが245mmとなる位置である。
【0063】
(4)パウチ包装体の作製
作製したパウチ包装袋1の開口部3から800mLの水を充填した後、開口部3をシールすることにより、パウチ包装体を作製した。
【0064】
〈比較例8〉
LLDPE(9)71質量%およびLDPE(10)29質量%を混合し、得られた混合物を実施例1と同様にして押出成形することにより、厚みが150μmのシール層のみよりなる大容量パウチ包装袋用のシーラントフィルムを製造した。このシーラントフィルムを「フィルムF2」とする。
フィルムF1の代わりにフィルムF2を用いたこと以外は実施例10と同様にして、パウチ包装体用積層フィルム、パウチ包装袋およびパウチ包装体を作製した。
【0065】
[シーラントフィルムの評価]
実施例10および比較例8で得られたシーラントフィルムについて、上記の方法により、インパクト値およびスティフネス値を測定し、各シーラントフィルムを使用して大容量パウチ包装袋を構成した場合における耐落下性およびパウチ剛性を下記の基準により評価した。
【0066】
耐落下性の評価基準:
インパクト値が1.8J以上のシーラントフィルムを○、インパクト値が1.8J未満のシーラントフィルムを×として評価した。
パウチ剛性の評価基準:
スティフネス値が110mN以上のシーラントフィルムを○、スティフネス値が110mN未満のシーラントフィルムを×として評価した。
以上、結果を下記表3に示す。
【0067】
[パウチ包装体の自立性評価]
実施例10および比較例8で得られたパウチ包装体について、以下のようにして自立性の評価を行った。
パウチ包装袋のスパウトのスクリュー栓を外し、充填された水100mLを排出した後、パウチ包装袋の内部に存在する空気を十分に排出した。次いで、スクリュー栓を取り付けた後、水100mL排出後のパウチ包装体を水平な台上に直立の状態で載置した。そして、図2に示すように、パウチ包装体10を側方から見たとき、垂直方向に伸びる仮想線Vに対するサイドシール2の上部2aの傾き角θを測定した。このような操作を4回(水の総排出量が400mL)繰り返して行った。
以上、結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
[図:0001405831000006.jpg]
【0069】
表3の結果から明らかなように、実施例10に係るシーラントフィルムによれば、比較例8に係るシーラントフィルムに比べて、インパクト値およびスティフネス値の両方が高い値を示していることから、大容量のパウチ包装袋を構成する場合でも、優れた耐落下性およびパウチ剛性を得ることが可能であることが理解される。
また、実施例10に係るパウチ包装体によれば、比較例8に係るパウチ包装体に比較して、内容物を多量に排出しても、サイドシール上部の傾き角が小さく、従って、大容量であっても優れた自立性が得られることが確認された。」
(4)サポート要件の判断
ア 本件特許発明の課題
本件特許発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】等より見て、「耐落下性およびパウチ剛性に優れたパウチ包装袋が得られるシーラントフィルムおよび包装袋用積層フィルムを提供すること」である。
イ 検討
(ア)発明の詳細な説明について
a 本件特許発明1に係るシーラントフィルムは、特定の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するものであり、シール層を構成するポリエチレン樹脂組成物において、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなるものである。ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0015】には、「炭素数が6~10のα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、これらは単独でまたは組み合わせて用いることができる。α-オレフィンの炭素数が5以下、例えばα-オレフィンが1-ブテンである直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。」と記載されており、直鎖状低密度ポリエチレンをエチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンとの共重合体とすることにより、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることができることが示されている。
b また、本件特許発明1に係るシーラントフィルムにおける、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.910~0.929g/cm3 のものである。ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0016】には、「直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910g/cm3 未満である場合には、当該シーラントフィルムは剛性が低いものとなり、そのため、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。一方、直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.929g/cm3 を超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。」と記載されており、直鎖状低密度ポリエチレンの密度を上記範囲とすることにより、高いパウチ剛性及び高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。
c そして、本件特許発明1に係るシーラントフィルムにおける、特定の直鎖状低密度ポリエチレンは、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10min以下のものである。ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0017】には、「直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10minを超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。」と記載されており、直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートを上記範囲とすることにより、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。
d 加えて、本件特許発明1に係るシール層を構成するポリエチレン樹脂組成物は、特定の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が、70質量%を超えるものである。ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0019】には、「特定の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%未満である場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなりやすく、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となることがある。」と記載されており、直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合を上記範囲とすることにより、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。
e さらに、本件特許発明1に係る低密度ポリエチレンの含有割合は、1~29質量%である。ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0022】には、「低密度ポリエチレンの含有割合が1質量%未満である場合には、当該シーラントフィルムは剛性が低いものとなり、そのため、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。一方、低密度ポリエチレンの含有割合が29質量%を超える場合には、当該シーラントフィルムは耐衝撃性が低いものとなり、そのため、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることが困難となる。」と記載されており、低密度ポリエチレンの含有割合を上記範囲とすることにより、高いパウチ剛性及び高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。
(イ)実施例について
本件特許明細書の実施例を見ると、実施例1~10は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE(1)~LLDPE(5)、エチレンと炭素数が6のα-オレフィンとの共重合体よりなり、密度が0.915~0.926g/cm3 、メルトフローレートが0.8~2.2g/10min)を73~90質量%、および低密度ポリエチレン(密度が0.919g/cm3 、メルトフローレートが2.2g/10min)を10~27質量%の割合で混合し、得られた混合物を押出成形することにより、製造されたパウチ包装袋用のシーラントフィルムであって、その耐落下性およびパウチ剛性の評価結果が、インパクト値が1.4~2.0Jかつスティフネス値が36~143mNであることが記載されている。
そうすると、実施例1~10のパウチ包装袋用シーラントフィルムは、高いパウチ剛性及び高い耐落下性を有することが理解できる。
これに対し、比較例1~2に係るシーラントフィルムにおいては、密度が低い(0.903g/cm3 )直鎖状低密度ポリエチレンを使用しており、スティフネス値が低い値(27mN、20mN)を示していることから、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例3に係るシーラントフィルムにおいては、MFRが高く(3.2g/10min)て密度が高い(0.93g/cm3 )直鎖状低密度ポリエチレンを使用しており、インパクト値が低い値を示している(1.2J)ことから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例4~5に係るシーラントフィルムにおいては、直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンと1-ブテンとの共重合体であり、インパクト値が低い値を示している(1.2J、1.1J)ことから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例6に係るシーラントフィルムにおいては、低密度ポリエチレンが含有されておらず、スティフネス値が低い値を示している(28mN)ことから、高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例7に係るシーラントフィルムにおいては、低密度ポリエチレンの含有割合が大きく(30質量%)、また直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が少なく(70質量%)、インパクト値が低い値を示している(1.3J)ことから、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である。また、比較例9に係るシーラントフィルムにおいては、直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンと1-ブテンとの共重合体であり、インパクト値及びスティフネス値が低い値を示している(1,7J、98mN)ことから、高い耐落下性及び高いパウチ剛性を有するパウチ包装袋を構成することが困難である(本件特許明細書の【0058】参照)。
そうすると、実施例・比較例の対比から、「前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超えること」により、耐落下性およびパウチ剛性に優れたパウチ包装袋が得られるシーラントフィルム提供することができ、当該結果は、上記(ア)の発明の詳細な説明の記載を裏付けるものとなっている。
(ウ)まとめ
上記(ア)及び(イ)の検討をふまえると、当業者は、「直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有するポリエチレン樹脂組成物よりなるシール層を有するシーラントフィルム」において、「前記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が6~10のα-オレフィンとの共重合体よりなり、当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910~0.929g/cm3 、当該直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートが2.5g/10min以下であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記低密度ポリエチレンの含有割合が1~29質量%であり、前記ポリエチレン樹脂組成物における前記直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超えること」により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。
(5)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、上記(ア)ないし(エ)の主張をしているので、以下検討する。
(ア)について
上記(4)のイ(ア)aで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0015】には、直鎖状低密度ポリエチレンをエチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンとの共重合体とすることにより、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得ることができることが示されている。比較例4、5は、炭素数が4の「短鎖」のα-オレフィンとの共重合体を使用したもので、当該比較例はインパクト値が低いものとなっている。実施例には、炭素数が6のα-オレフィンとの共重合体を開示するのみであるが、比較例・実施例の対比から、炭素数が7~10の「長鎖」のα-オレフィンを用いた場合にも、炭素数が6のα-オレフィンと同様の性質を示す蓋然性が高く、実施例とは全く異なる耐衝撃性の評価になるとは考えにくい。また、申立人は、炭素数が7~10のα-オレフィンを用いた場合には、高い耐衝撃性が得られるという効果を奏しないことを立証しているわけではない。
よって、申立人の主張する主張(ア)は採用できない。
(イ)について
上記(4)のイ(ア)bで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0016】には、直鎖状低密度ポリエチレンの密度を0.910~0.929g/cm3 の範囲とすることにより、高いパウチ剛性及び高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。また、上記(4)のイ(イ)で述べた通り、比較例3に係るシーラントフィルムにおいては、密度に加えてMFRも高い直鎖状低密度ポリエチレンを使用しており、インパクト値が低い値を示す比較例であるから、比較例3の直鎖状低密度ポリエチレンの密度は0.93g/cm3と本件特許発明1の直鎖状低密度ポリエチレンの密度0.929g/cm3 を境にして、臨界的意義があるものといえる。加えて、申立人は、比較例3の直鎖状低密度ポリエチレンの密度0.93g/cm3に近似する0.929g/cm3が直鎖状低密度ポリエチレンの密度の上限値となることの技術的裏付けが明細書等に開示されてないことを具体的証拠をもって立証しているわけではない。
よって、申立人の主張する主張(イ)は採用できない。
(ウ)について
上記(4)のイ(ア)eで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0022】には、低密度ポリエチレンの含有割合を1~29質量%の範囲とすることにより、高いパウチ剛性及び高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。また、申立人は、低密度ポリエチレンの含有割合の下限値が1質量%である場合に本件特許発明の課題を解決できないことを立証しているわけでもない。
よって、申立人の主張する主張(ウ)は採用できない。
(エ)について
上記(4)のイ(ア)dで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0019】には、直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超えることにより、高い耐落下性を有するパウチ包装袋を得られることが示されている。また、上記(4)のイ(イ)でも述べたように、LLDPE(1)が70質量%である比較例7は、LLDPE(1)が70質量%を超える実施例2、8、9と比較して直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が少なく、インパクト値が低い値を示していることから、耐落下性に劣ることが示されている。加えて、申立人は、直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合が70質量%を超える場合に本件特許発明の課題を解決できないことを立証しているわけでもない。
よって、申立人の主張する主張(エ)は採用できない。
(6)申立理由4についてのむすび
そうすると、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては取り消すことはできない。
第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700713