特許異議申立
2023-701177
ポリプロピレン系延伸フィルムおよび包装用袋
- 審判番号
- 2023-701177
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-084917
- 登録番号
- 7269787
- 請求日
- 2023年11月07日
- 審決日
- 2024年01月31日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】グンゼ株式会社
- 【権利者代理人】藤原 賢司
- 【権利者代理人】北原 悠樹
- 【権利者代理人】清水 尚人
- 【異議申立人】加藤 真弥
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7269787号発明「ポリプロピレン系延伸フィルムおよび包装用袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7269787号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7269787号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成31年4月26日の出願であって、令和5年4月26日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年5月9日発行)がされ、その後、その特許について、令和5年11月7日に特許異議申立人加藤真弥(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、それらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され、ヒートシール性を有する表面層、プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物で形成される基材層、および前記基材層を挟んで前記表面層と対向する側の面にシール層を有するポリプロピレン系延伸フィルムであって、表面層の表面転移温度が100℃以上であることを特徴とする、ポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項2】
表面層を形成するオレフィン系共重合体がプロピレン系ランダム共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項3】
前記プロピレン系ランダム共重合体の融点が、120℃~150℃の範囲内である、請求項2に記載のポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項4】
表面層/基材層/シール層の三層構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系延伸フィルムを用いて製造されることを特徴とする、包装用袋。」
第3 申立ての理由
申立人は、甲第1号証及び甲第2号証(以下「甲1」、「甲2」という。)を提出して、次の1.~4.の理由を申立てている。
甲1:特開2007-253349号公報
甲2:特開2016-215439号公報
1.甲1を主引用例とする新規性・進歩性
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
あるいは、甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.甲2を主引用例とする新規性・進歩性
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
あるいは、甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.サポート要件
本件発明1では、表面層がプロピレン-エチレンランダム共重合体100重量%の場合に表面転移温度が100℃以上であれば本件発明の課題を解決し得るということができるものの、それ以外の本件発明1に係るいかなる樹脂組成物の場合であっても、表面転移温度が100℃以上であれば本件発明の課題を解決し得ると当業者が認識できるとはいえないから、本件発明1の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張又は一般化することはできない。本件発明1を引用する発明も同様である。
よって、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
4.明確性要件
本件発明1におけるオレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成された表面層に関して、「ヒートシール性を有する」ことが具体的にどのような状態を意味するのか明確とはいえない。
よって、本件発明1及び本件発明1を引用する請求項4、5に係る発明は明確でない。
第4 当審の判断
事案に鑑み、明確性要件、サポート要件より検討する。
1.明確性要件について
請求項1において、「表面層」は、「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され 、ヒートシール性を有する」と特定されている。
「ヒートシール」は、包装用袋に用いる樹脂フィルムの技術分野において、樹脂フィルムを加熱溶着することを意味することは明らかであるから、請求項1の「ヒートシール性を有する」との事項は、「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され」た「表面層」が、加熱溶着できることを意味し、明確である。
よって、申立人の明確性要件に係る申立理由には、理由がない。
2.サポート要件について
本件発明の解決しようとする課題は、本件特許の発明の詳細な説明の記載によれば、「製袋後の袋同士の疑似接着を抑制することができる新規な包装用ポリプロピレン系延伸フィルムを提供すること」(【0005】)である。
この課題について、本件特許の発明の詳細な説明には、「本発明フィルムの表面層に当該プローブを接触させ、当該プローブを昇温加熱していくと、表面層の接触点において膨張が始まり、ディフレクションが変化し、ある温度に達すると、当該接触点の膨張部分が軟化すると共にプローブの進入が起こり、ディフレクション変化が大きくなるので、それを検出し、そのディフレクションが大きく変化した時点の温度を測定する。」(【0048】)ことにより得た「表面転移温度」を、本件発明1では、「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され」た「表面層」が「100℃以上であること」により解決するとしている。
ここで、表面層は、「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され」るものであるところ、オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物であるプロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた実施例1は、表面転移温度が109℃で、疑似接着回避性の評価が「不良なし」であったのに対し、同じくプロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた比較例1では、表面転移温度が98℃で疑似接着回避性の評価が「不良あり」との結果を得たことから、当業者であれば、表面層がオレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成されるものについて、表面転移温度が100℃以上の樹脂を選択すれば、少なくとも、表面転移温度が100℃未満のものよりも、疑似接着回避性が高い性能になると認識できるといえる。
そうすると、「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され」る「表面層」の「表面転移温度が100℃以上であること」を特定する本件発明1~5は、本件発明の課題を解決し得ると当業者が認識するものである。
よって、申立人のサポート要件に係る申立理由には、理由がない。
3.甲1を主引用例とする新規性・進歩性について
(1)甲1に記載された発明
甲1の実施例2の、(C)層/(A)層/(B)層の3層構成の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムについて、次の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「NMRペンタッド分率95%、密度0.91g/cm3、MFR3.3g/10分、融点163℃のプロピレン単独重合体100重量部に対して、メタロセン触媒を用いて重合した、ブテン含有量5重量%の非晶性プロピレン-ブテン共重合体2.4重量部および防曇剤1.6重量部(ステアリルモノグリセライド0.25重量部、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート1.23重量部、ステアリルジエタノールアミン0.12重量部、合計1.6重量部)混合した混合樹脂により(A)層、
エチレン含有量3重量%、ブテン含有量6重量%、密度0.91g/cm3、MFR5.5g/10分、融点140℃のプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体を90重量%と密度0.88g/cm3、MFR3.0g/10分、融点75℃の、炭素数8のオクテン-1を共重合成分とする直鎖状低密度ポリエチレン10重量%とを混合した混合物100重量部に対して、平均粒径2.5μmのPMMA微粒子を0.4重量部混合した混合樹脂により(B)層、
エチレン含有量4重量%、密度0.91g/cm3、MFR7.0g/10分、融点140℃のプロピレン-エチレンランダム共重合体100重量部に対して、平均粒径2.5μmのPMMA微粒子を0.1重量部混合した混合樹脂により(C)層とし、
(C)層/(A)層/(B)層の順で、各層の厚みは(C)層/(A)層/(B)層=2μm/21μm/2μmとした、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「NMRペンタッド分率95%、密度0.91g/cm3、MFR3.3g/10分、融点163℃のプロピレン単独重合体100重量部に対して、メタロセン触媒を用いて重合した、ブテン含有量5重量%の非晶性プロピレン-ブテン共重合体2.4重量部および防曇剤1.6重量部(ステアリルモノグリセライド0.25重量部、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート1.23重量部、ステアリルジエタノールアミン0.12重量部、合計1.6重量部)混合した混合樹脂」による「(A)層」は、本件発明1の「プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物で形成される基材層」に相当する。
甲1発明の「エチレン含有量3重量%、ブテン含有量6重量%、密度0.91g/cm3、MFR5.5g/10分、融点140℃のプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体を90重量%と密度0.88g/cm3、MFR3.0g/10分、融点75℃の、炭素数8のオクテン-1を共重合成分とする直鎖状低密度ポリエチレン10重量%とを混合した混合物100重量部に対して、平均粒径2.5μmのPMMA微粒子を0.4重量部混合した混合樹脂」による「(B)層」は、本件発明1の「シール層」に相当する。
甲1発明の「エチレン含有量4重量%、密度0.91g/cm3、MFR7.0g/10分、融点140℃のプロピレン-エチレンランダム共重合体100重量部に対して、平均粒径2.5μmのPMMA微粒子を0.1重量部混合した混合樹脂」による「(C)層」は、ヒートシールする際に「(B)層を内側として半折するのが好ましい。」(甲1の【0051】)とされることからすると、基材の(A)層を挟んで(B)層と反対側の外側に位置するものであり、本件発明1の「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され、ヒートシール性を有する表面層」に相当する。
甲1発明の「二軸延伸ポリプロピレン系フィルム」は、本件発明1の「ポリプロピレン系延伸フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は、次のとおりである。
《一致点1》
オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され、ヒートシール性を有する表面層、プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物で形成される基材層、および前記基材層を挟んで前記表面層と対向する側の面にシール層を有するポリプロピレン系延伸フィルム。
《相違点1》
本件発明1が、「表面層の表面転移温度が100℃以上である」のに対し、甲1発明は、そうであるか不明である点。
イ 判断
(ア)甲1には、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの外面となる層である「(C)層」について、表面転移温度が100℃以上であるとは記載も示唆もされていない。
この点について、申立人は、「本件実施例と甲1実施例とは加工条件とともに表面層の樹脂の物性もほぼ一致するものであるから、甲1実施例の表面層の表面転移温度が本件実施例の表面層の表面転移温度と同程度となる蓋然性が極めて高い。」(特許異議申立書7頁)旨主張する。
しかし、本件実施例1の表面層と甲1の実施例2の(C)層とでは、層中の樹脂組成物について、本件実施例1がPP-1:プロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR:5.0g/10分、融点:132℃、密度:900kg/m3)100重量%であるのに対し、甲1の実施例2はプロピレン-エチレンランダム共重合体100重量部に平均粒径2.5μmのPMMA微粒子を0.1重量部混合した混合樹脂であって、本件実施例1と甲1の実施例2の樹脂組成物は異なるものであり、また、加工条件と樹脂のMFR、融点及び密度の物性がほぼ同じであれば、表面層の表面転移温度が同程度になるという技術常識もないから、甲1の実施例2の(C)層の表面転移温度が本件実施例1と同程度となる根拠はない。
よって、上記相違点1は実質的なものであり、本件発明1は、甲1発明ではない。
(イ)甲1発明は、「優れた透明性、剛性および防曇性を損なうことなく、高速下での溶断シール安定性の向上した二軸延伸ポリプロピレン系フィルムおよび該フィルムから得られる包装袋を見出すこと」(甲1の【0006】)を解決しようとする課題とするものであって、本件発明1のように、「製袋後の袋同士の疑似接着を抑制することができる新規な包装用ポリプロピレン系延伸フィルムを提供すること」ではないから、この課題の解決のために、「表面層の表面転移温度が100℃以上」とする動機付けはない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
本件発明1は、上記(2)イ(ア)で述べたように、甲1発明ではなく、また、上記(2)イ(イ)で述べたように、甲1発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~5も、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.甲2を主引用例とする新規性・進歩性について
(1)甲2に記載された発明
甲2の実施例1の、A層/B層/C層の3層構成のポリプロピレン系延伸フィルムについて、次の「甲2発明」が記載されていると認められる。
「PP-1(プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン成分:5モル%、曲げ弾性率:1,000MPa、MFR:7.0g/10分、密度:900kg/m3)、99.82重量%)とAB剤1(アンチブロッキング剤、二酸化ケイ素(平均粒子径:3μm)、0.18重量%)の樹脂組成物によるA層、
PP-4(プロピレン単独重合体、メソペンタッド分率=91%、MFR:3.0g/10分、密度:900kg/m3)、99.0重量%)と、防曇剤1(ステアリルモノグリセライド、0.3重量%)、防曇剤2(ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、0.1重量%)、防曇剤3(ステアリルジエタノールアミン、0.1重量%)、および滑剤(エルカ酸アミド、0.5重量%)の樹脂組成物によるB層、
PP-5(プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン成分:5モル%、曲げ弾性率:860MPa、MFR:7.5g/10分、密度:900kg/m3)、99.9重量%)とAB剤2(アンチブロッキング剤、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、平均粒子径:2μm)、0.1重量%)の樹脂組成物によるC層とし、
これら各層を、A層/B層/C層の順に積層し、各層の厚みはA層/B層/C層=2μm/15μm/3μmである、ポリプロピレン系延伸フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「PP-1(プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン成分:5モル%、曲げ弾性率:1,000MPa、MFR:7.0g/10分、密度:900kg/m3)、99.82重量%)とAB剤1(アンチブロッキング剤、二酸化ケイ素(平均粒子径:3μm)、0.18重量%)の樹脂組成物によるA層」は、「青果物等の包装用袋を製造した場合、内側となる層、すなわち内容物と接触する層に相当する。A層はヒートシール性を有し、A層同士は互いに熱で融着することができる。」(甲2の【0012】)とされることから、本件発明1の「シール層」に相当する。
甲2発明の「PP-4(プロピレン単独重合体、メソペンタッド分率=91%、MFR:3.0g/10分、密度:900kg/m3)、99.0重量%)と、防曇剤1(ステアリルモノグリセライド、0.3重量%)、防曇剤2(ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、0.1重量%)、防曇剤3(ステアリルジエタノールアミン、0.1重量%)、および滑剤(エルカ酸アミド、0.5重量%)の樹脂組成物によるB層」は、「第三の重合体樹脂層(C層)がある場合、そのC層とA層との間に位置し中間層ということができる。」(同【0022】)とされることから、本件発明1の「プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物で形成される基材層」に相当する。
甲2発明の「PP-5(プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン成分:5モル%、曲げ弾性率:860MPa、MFR:7.5g/10分、密度:900kg/m3)、99.9重量%)とAB剤2(アンチブロッキング剤、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、平均粒子径:2μm)、0.1重量%)の樹脂組成物によるC層」は、「通常、表面層を形成し、B層を挟んでA層と対向して形成される。一般には、本発明フィルムはC層を有することが好ましい。C層もA層と同様にシール性を有する。」(同【0036】)とされることから、本件発明1の「オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され、ヒートシール性を有する表面層」に相当する。
甲2発明の「ポリプロピレン系延伸フィルム」は、本件発明1の「ポリプロピレン系延伸フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明の一致点と相違点は、次のとおりである。
《一致点2》
オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物で形成され、ヒートシール性を有する表面層、プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物で形成される基材層、および前記基材層を挟んで前記表面層と対向する側の面にシール層を有するポリプロピレン系延伸フィルム。
《相違点2》
本件発明1が、「表面層の表面転移温度が100℃以上である」のに対し、甲2発明は、そうであるか不明である点。
イ 判断
(ア)甲2には、ポリプロピレン系延伸フィルムの表面層であるC層について、表面転移温度が100℃以上であるとは記載も示唆もされていない。
この点について、申立人は、「本件実施例と甲2実施例とは加工条件とともに表面層の樹脂の物性が一致するものであるから、甲2実施例の表面層の表面転移温度が本件実施例の表面層の表面転移温度と同程度となるといえる。」(特許異議申立書9頁)旨主張する。
本件実施例1の表面層と甲2の実施例1のC層とでは、層中の樹脂組成物について、本件実施例1がPP-1:プロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR:5.0g/10分、融点:132℃、密度:900kg/m3)100重量%であるのに対し、甲2の実施例1はPP-5(プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン成分:5モル%、曲げ弾性率:860MPa、MFR:7.5g/10分、密度:900kg/m3)、99.9重量%)とAB剤2(アンチブロッキング剤、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、平均粒子径:2μm)、0.1重量%)であって、本件実施例1と甲1の実施例2の樹脂組成物は異なるものであり、また、加工条件と樹脂のMFR及び密度の物性がほぼ同じであれば、表面層の表面転移温度が同程度になるという技術常識もないから、甲2の実施例1のC層の表面転移温度が本件実施例1と同程度となる根拠はない。
よって、上記相違点2は実質的なものであり、本件発明1は、甲2発明ではない。
(イ)甲2発明は、「防曇性能と高滑性能との両方を兼ね備えた新規な包装用ポリプロピレン系延伸フィルムを提供すること」(甲2の【0006】)を解決しようとする課題とするものであって、本件発明1のように、「製袋後の袋同士の疑似接着を抑制することができる新規な包装用ポリプロピレン系延伸フィルムを提供すること」ではないから、この課題の解決のために、「表面層の表面転移温度が100℃以上」とする動機付けはない。
よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
本件発明1は、上記(2)イ(ア)で述べたように、甲2発明ではなく、また、上記(2)イ(イ)で述べたように、甲2発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~5も、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701177