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特許異議申立

2023-701292

空気入りタイヤ

審判番号
2023-701292
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-569797
登録番号
7287583
請求日
2023年12月06日
審決日
2024年08月23日
公報発行日
2024年11月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ゴム工業株式会社
  • 【権利者代理人】住友 慎太郎
  • 【権利者代理人】浦 重剛
  • 【権利者代理人】苗村 潤
  • 【権利者代理人】石原 幸信
  • 【権利者代理人】市田 哲
  • 【異議申立人】村川 明美
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 天野 宏樹
  • 審判官 植前 充司
分類
P1652.113-YAA(B60C) / P1652.121-YAA(B60C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7287583号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7287583号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4-13〕について訂正することを認める。 特許第7287583号の請求項1、2及び4ないし13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7287583号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)11月17日(優先権主張 令和2年12月15日)を国際出願日とする出願であって、令和5年5月29日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和5年12月6日に特許異議申立人 村川 明美(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1、2及び4ないし13)がされ、令和6年2月9日付けで取消理由が通知され、同年4月10日に特許権者 住友ゴム工業株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされ、同年同月18日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年5月22日に特許異議申立人より意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正請求における請求の趣旨は、「特許第7287583号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、4~13について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) (1) 訂正事項 特許請求の範囲の請求項1に「前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が20以下である」と記載されているのを、「前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が8以上20以下である」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし13も同様に訂正する。 (2) 一群の請求項について 訂正前の請求項1及び4ないし13について、請求項4ないし13はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1及び4ないし13に対応する訂正後の請求項1及び4ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項に係る請求項1の訂正は、サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と導電性糸の1%時伸長応力(N)の和において、訂正前は「20以下」であったものを「8以上20以下」と下限を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし13も同様である。 なお、この点に関し、特許異議申立人は令和6年5月22日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、「表1及び表2の実施例1~9、14~17は、サイドウォールゴムの複素弾性率が「8」であることを記載するものの、それに1%時伸張応力の値を加えたものが「8以上」(1%時伸張応力が「0」である場合を含む)であることは記載していない」ため、「この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とは言えない」旨主張する(意見書第3頁)。 しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明は、訂正前において、サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が「20以下」と特定されていたところ、その下限として「8以上」と特定されたものであるから、もともと特定されていた数値範囲を単に減縮したものにすぎないし、また、当該訂正により、新たな技術的事項を導入するものでもない。 してみると、訂正事項に係る請求項の訂正は、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」のものであるといえるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4-13〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1、4-13〕について訂正を認めるので、本件特許の請求項1、2及び4ないし13に係る発明(以下、請求項の順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、令和6年4月10日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び4ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 カーカスを有する空気入りタイヤであって、 前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、 前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、 前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が108Ω/cm以下であり、 前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、 前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、 前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が8以上20以下である、 空気入りタイヤ。 【請求項2】 カーカスを有する空気入りタイヤであって、 前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、 前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、 前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が108Ω/cm以下であり、 前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、 前記カーカスプライは、並列された複数のカーカスコードを含み、 前記導電性糸の1%伸張時の応力は、前記カーカスコードの1%伸長時の応力よりも小さい、 空気入りタイヤ。 【請求項4】 前導電性糸は、2%伸張時の応力が25N以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 前記導電性糸は、前記カーカスプライの外面に配されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 前記導電性糸は、金属フィラメント又は炭素繊維を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 前記金属フィラメントは、ステンレス鋼を含む、請求項6に記載の空気入りタイヤ。 【請求項8】 前記導電性糸は、導電性繊維と非導電性繊維と含む複合糸である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項9】 前記非導電性繊維は、ポリエステル又はポリアミドを含む、請求項8に記載の空気入りタイヤ。 【請求項10】 前記複合糸は、前記非導電性繊維を重量比で50%以上含んでいる、請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。 【請求項11】 前記導電性糸の直径は、0.03~1.00mmである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項12】 前記導電性糸は、破断時の伸びが5%~20%である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項13】 前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、 前記サイドウォールゴムの複素弾性率は、3.2~8.0MPaである、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。」 第4 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1、2及び4ないし13に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1、2及び4ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠方法 ・甲第1号証:国際公開第2017/122821号 ・甲第2号証:特開2013-82403号公報 ・甲第3号証:特開2004-130859号公報 ・甲第4号証:ベカルト社カタログ、「Bekinox○R(合議体注:「○R」は○の中にRの字が入った記号を表す。以下同様。)BK」、2012年6月発行 ・甲第5号証:ベカルト社カタログ、「Bekinox○RVS」、2017年8月発行 証拠の表記については、おおむね特許異議申立書の記載に従った。 第5 令和6年2月9日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要 請求項1及び4ないし13に係る特許に対して、当審が令和6年2月9日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、下記取消理由2には、申立理由のうち請求項1及び4ないし13に係る部分が包含される。 1 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び4ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1及び4ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下のとおり、当審は、令和6年2月9日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)及び申立理由は、いずれもその理由がないものと判断する。 なお、取消理由及び申立理由はいずれも、同じ文献を主たる証拠とするものであるため、以下まとめて検討する。 1 主な証拠の記載事項等 (1) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「空気入りタイヤ」に関し、次の記載がある。 「[0001] 本発明は空気入りタイヤに関し、詳しくは、導電性を改良した空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関する。」 「[0008] そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、タイヤのゴム部材の低ロス化を図った場合でも、タイヤ耐久性等の他性能や製造工程に悪影響を及ぼすことなく、電気抵抗を低下させることができる空気入りタイヤを提供することにある。」 「[0009] 本発明者らは鋭意検討した結果、タイヤ内部に、導電性繊維と非導電性繊維とを含む複合繊維を配設することで、タイヤの導電性を改善できることを見出した。また、本発明者らは、タイヤ内部における導電パスを確保するためには、この複合繊維を、カーカスプライの少なくとも一方の表面に露出させるとともに、ゴムチェーファーに所定のカーボンブラックを配合することが重要となることを見出して、本発明を完成するに至った。なお、本願における複合繊維とは、複数の異なる種類の繊維からなる繊維を指す。」 「[0015] さらにまた、本発明においては、前記導電性繊維が、金属含有繊維、カーボン含有繊維および金属酸化物含有繊維のうちのいずれか1種以上を含むことが好ましく、前記非導電性繊維が、綿、ナイロン、ポリエステルおよびポリプロピレンのうちのいずれか1種以上を含むことも好ましい。さらにまた、本発明において、前記複合繊維の破断伸びEbは、好適には5%以上であり、前記複合繊維の抵抗値は、好適には1.0×107Ω/cm以下である。さらにまた、本発明においては、前記ゴムチェーファーが、ゴム成分100質量部に対し、カーボンナノチューブを0.5~4質量部にて含有することが好ましい。」 「[0022] 図1,7に、本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向片側断面図を示す。図示する空気入りタイヤは、一対のビード部11と、一対のビード部11からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12間に跨って延びて接地部を形成するトレッド部13とからなる。また、図示するタイヤは、一対のビード部11間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも1枚、例えば1~3枚、図示する例では1枚のカーカスプライからなるカーカス1を骨格とし、そのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1枚、例えば1~4枚、特には2~4枚、図示する例では2枚のベルト層2と、を備えている。さらに、ビード部のタイヤ幅方向外表面には、ゴムチェーファー4が配設されている。さらにまた、ベルト層2のタイヤ半径方向外側には、クッションゴム13C、および、踏面部を形成するトレッドゴム13Gが、順次配設されている。図1と図7とは、ベルト層2のタイヤ幅方向外端部に、ベルトアンダークッション14が配設されているかいないかという点を除き、同じ実施形態を示している。 [0023] 本発明においては、少なくともビード部11からクッションゴム13Cまたはベルト層2のタイヤ幅方向外端部に配設されたベルトアンダークッション14に接する位置まで、導電性繊維と非導電性繊維とを含む複合繊維3が配設されている点が重要である。この複合繊維3は、カーカス1の、タイヤ外側および内側のうちの少なくとも一方の表面に露出するように配設されている。このように複合繊維3を配設したことで、タイヤ内部における導電パスを確保することができ、タイヤの電気抵抗を低下させることができる。」 「[0029] また、本発明において、複合繊維3は導電性繊維とともに非導電性繊維を含むので、従来の金属繊維やカーボンファイバーとは異なり、ある程度の伸びを確保することができることから、タイヤ製造工程における応力負荷時や車両走行時における歪入力時にも破断することがない。また、本発明において、複合繊維3はカーカスプライ等の骨格部材に代えて配置するものではないため、タイヤ耐久性を損なう等の問題も生じない。よって、本発明によれば、他性能や製造工程に悪影響を及ぼすことなく電気抵抗を低下させることができるので、タイヤゴム部材を低ロス化することにより低燃費化を図っても、電気抵抗の上昇による不具合を生じない空気入りタイヤを実現することができる。 [0030] 本発明に用いる複合繊維3は、導電性繊維と非導電性繊維とを含むものであればよい。具体的には例えば、導電性繊維としては、金属含有繊維、カーボン含有繊維、および、金属酸化物含有繊維などを挙げることができ、これらのうちのいずれか1種以上を用いることができる。ここで、本発明において金属含有繊維とは、金属含有量が5~100質量%である繊維をいい、金属および金属酸化物としては、例えば、ステンレス、スチール、アルミ、銅およびこれらの酸化物等が挙げられる。また、非導電性繊維としては、綿、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、および、ポリプロピレンなどの有機物を挙げることができ、これらのうちのいずれか1種以上を用いることができる。これらの導電性繊維と非導電性繊維とからなる複合繊維は、良好な伸びを有し、密着性にも優れることから、好ましい。 [0031] 本発明に用いる複合繊維3における導電性繊維と非導電性繊維との比率としては、特に制限されないが、好適には、非導電性繊維を50質量%以上、例えば、80~98質量%含有するものとする。非導電性繊維を上記比率で含むことで、複合繊維3の伸びを良好に確保することができ、好ましい。 [0032] 本発明における複合繊維3としては、具体的には例えば、べカルトジャパン(株)製のベキノックス(Bekinox、登録商標)や、クラレトレーディング(株)製のクラカーボ(登録商標)KC-500R、KC-793R等を用いることができる。 [0033] また、複合繊維3の繊度としては、エア抜き性と導電性、耐久性を両立させる観点から、20~1000dtexとすることが好ましく、より好ましくは150~600dtexとする。 [0034] 複合繊維3としては、破断伸びEbが、5%以上であれば製造時における破断を抑制することができるため好ましく、6%以上であれば、タイヤ使用時の異常入力時にも破断しにくいため、より好ましい。破断伸びEbは、例えば、5~15%とすることができる。ここで、複合繊維3の破断伸びEbは、23℃において、JISK6251:2010に規定の「切断時伸び」の測定方法に準拠して測定することができる。 [0035] また、複合繊維3の抵抗値は、好適には1.0×107Ω/cm以下であり、より好適には1.0×103Ω/cm以下、さらに好適には10~1.0×103Ω/cmである。導電パスを確実に確保する観点から、複合繊維3の抵抗値は上記範囲であることが好ましい。 [0036] 本発明において複合繊維3は、少なくともビード部11からクッションゴム13Cまたはベルトアンダークッション14に接する位置まで配設することが必要であり、好ましくは、図示するように、ビード部11からトレッド部13までにわたって配設する。クッションゴム13Cおよびベルトアンダークッション14には、通常、導電性ゴムを使用するため、少なくともビード部11からクッションゴム13Cまたはベルトアンダークッション14に接する位置まで複合繊維3を配設すれば、導電パスを確保することができるが、クッションゴム13Cからトレッド踏面部までの導電パスは、通常タイヤ赤道線CLの近傍に設けられる、導電性ゴム部5により確保するため、導電パスを短くする観点からは、複合繊維3をビード部11からトレッド部13までにわたって配設することが好ましい。ここで、本発明においてクッションゴム13Cは、少なくともタイヤ赤道線CL上において、トレッドゴム13Gとベルト層2のコーティングゴム(キャップ層を設ける場合はキャップ層のコーティングゴム)との間に配置されるゴム部材であり、通常、タイヤショルダー部付近まで延在しており、トレッドゴム13G、および、配設形態によってはサイドウォールゴムにも覆われるため、タイヤ外表面には露出しないゴム部材である。また、ベルトアンダークッション14とは、ベルト層2のタイヤ幅方向外端部に配設された導電ゴム部材であり、図示するように、クッションゴム13Cに接して、そのタイヤ半径方向内側に位置する。ベルトアンダークッション14は、より詳しくは、複数層のベルト層およびベルトコードの被覆ゴムを含むベルト部材のタイヤ幅方向外端部周辺において、少なくとも1層のベルト層、特にはすべてのベルト層よりもタイヤ半径方向内側、かつ、カーカス1よりもタイヤ半径方向外側に配置される導電ゴム部材である。ベルトアンダークッション14を設けることで、配置した部位のクッション性を向上させることができる。」 「[0046] さらにまた、複合繊維3は、図2(b)の変形例として、図2(e)に示すようにカーカスに対し巻き付けられているものとすることもできる。図3,4に、図2(e)に対応する、本発明の空気入りタイヤの他の例を示す幅方向片側断面図を示す。この場合、成形前のカーカストリート21に対し複合繊維3を、その幅方向に沿って、つまり、カーカスプライコードと同じ方向に、部分的に巻き付けている。図3に示す例では、複合繊維3が、カーカス1に対し、クッションゴム13Cまたはベルトアンダークッションのタイヤ幅方向の一方側の端部に接する位置から、ビード部11を経由して、カーカス1のタイヤ内側を通り、クッションゴム13Cまたはベルトアンダークッションのタイヤ幅方向の他方側の端部まで巻き付けられている。また、図4に示す例では、カーカス1を、一対のビード部11間に延在する本体部1Aと、一対のビード部11にそれぞれ埋設されたビードコア6の周りにタイヤ内側から外側に折り返され巻き上げられた折返し部1Bとからなるものとしたとき、複合繊維3が、カーカス1に対し、一方側の折返し部1Bのタイヤ幅方向外側であってゴムチェーファー4と接する位置から、折返し部1Bのタイヤ幅方向内側および本体部1Aのタイヤ幅方向外側を経由して、カーカス1のタイヤ外側を通り、さらに、他方側の本体部1Aのタイヤ幅方向外側および折返し部1Bのタイヤ幅方向内側を経由して、折返し部1Bのタイヤ幅方向外側であってゴムチェーファー4と接する位置まで、巻き付けられている。これによっても、カーカス1の折返し部1Bにおいて、タイヤや部材のサイズにかかわらず、ゴムチェーファー4側に複合繊維3が確実に露出するものとなり、導電パスを確実に確保することができる。」 「実施例 [0079] 以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。 タイヤサイズ195/65R15にて、一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在する1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、そのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された2枚のベルト層を備え、ビード部のタイヤ幅方向外表面にゴムチェーファーが配設されている空気入りタイヤを製造した。 [0080] このタイヤには、ビード部からトレッド部までにわたって、カーカスの、タイヤ外側および内側の両表面に露出するように、ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコードを配設した。ブリーダーコードは、タイヤ周方向に対し90°をなす角度で、縫込みピッチ20mmにて、カーカスに縫い込むようにして配置した。また、ゴムチェーファーには、下記の表中に示す配合ゴムを適用した。 [0081] 得られた各供試タイヤについて、電気抵抗値を評価した。その結果を、下記の表中に示す。 ・・・ [0088] [表1] [図:0001416475000001.jpg] *1-1)カーボンブラック(FEF),窒素吸着比表面積40m2/g *1-2)カーボンブラック(GPF),窒素吸着比表面積35m2/g *1-3)カーボンナノチューブ(CNT) *1-4)カーボンブラック(ケッチェンブラック),窒素吸着比表面積800m2/g、ケッチェンブラックEC300J、LION社製 *1-5)カーボンブラック(HAF),窒素吸着比表面積78m2/g [0089] 上記表中に示すように、導電性繊維と非導電性繊維とを含む複合繊維を、ビード部からクッションゴムに接する位置まで、カーカスの少なくとも一方の表面に露出するように配設するとともに、ゴムチェーファーに、所定のカーボンブラックを含有させた各実施例の供試タイヤにおいては、低ロス化を図りつつ、かつ、タイヤ耐久性等の他性能に悪影響を及ぼすことなく、タイヤの電気抵抗が低下していることが確かめられた。 [0090]〔実施例2-1~2-4および比較例2-1~2-5:タイヤ用ゴム組成物の調製〕 下記表2に示す各配合処方をバンバリーミキサーで常法により混練して各タイヤ用ゴム組成物を調製した。 得られた各タイヤ用ゴム組成物について、下記各方法により、ロス特性(tanδ)、貯蔵弾性率(E’)について評価した。 得られた各タイヤ用ゴム組成物を下記カーカスプライコードを有するカーカスプライのコーティングゴムとして用いて、図1に示す構造を有するサイズ195/65R15の空気入りタイヤ(試験用タイヤ)を作製した。 (カーカスプライコード) コード角度:90度(タイヤ周方向を0度とする。)、コード材料:PET [0091] このタイヤには、ビード部からトレッド部までにわたって、カーカスの、タイヤ外側および内側の両表面に露出するように、ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコードを配設した。ブリーダーコードは、タイヤ周方向に対し90°をなす角度で、縫込みピッチ20mmにて、カーカスに縫い込むようにして配置した。また、ゴムチェーファーには、上記表1に示す実施例1-3の配合ゴムを適用した。 [0092] 得られた各試験用タイヤについて、実施例1-1等と同様にして、電気抵抗、耐久性能(BFドラム試験)、および、低ロス性能(RRCドラム)について測定評価した。耐久性能、および、低ロス性能については、いずれも比較例2-1を基準として評価した。 これらの結果を下記表2に示す。 ・・・ [表2] [図:0001416475000002.jpg] [0095] 上記表2中の*2-1~*2-11は下記のとおりである。 *2-1:RSS#3 *2-2:SBR、JSR社製 *2-3:窒素吸着比表面積(N2SA:35m2/g)、N660、旭カーボン社製 *2-4:窒素吸着比表面積(N2SA:78m2/g)、N330、旭カーボン社製 *2-5:カーボンナノチューブ(CNT) *2-6:窒素吸着比表面積(N2SA:800m2/g)ケッチェンブラックEC300J、LION社製 *2-7:シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET=200m2/g) *2-8:シランカップリング剤:デグッサ社製「Si69」 *2-9:プロセスオイル(TDAE)、新日本石油化学社製 *2-10:MBTS(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド) *2-11:BBS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド) [0096] 上記表2の結果から明らかなように、実施例2-1~2-4のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤは、比較例2-1~2-5のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに較べて、電気抵抗の上昇を抑制し、タイヤの転がり抵抗の低減と、耐久性に優れることが確認できた。」 「[請求項1] 一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された少なくとも一枚のベルト層を備え、前記ビード部のタイヤ幅方向外表面にゴムチェーファーが配設されている空気入りタイヤにおいて、 前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に、クッションゴム、および、踏面部を形成するトレッドゴムが順次配設されており、少なくとも前記ビード部から該クッションゴムまたは前記ベルト層のタイヤ幅方向外端部に配設されたベルトアンダークッションに接する位置まで、前記カーカスの、タイヤ外側および内側のうちの少なくとも一方の表面に露出するように、導電性繊維と非導電性繊維とを含む複合繊維が配設されるとともに、前記ゴムチェーファーが、窒素吸着比表面積30~43m2/gのカーボンブラックを含有することを特徴とする空気入りタイヤ。 [請求項2] 前記ゴムチェーファーが再生ゴムを含有する請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項3] 前記ゴムチェーファーが、ゴム成分100質量部に対し、前記カーボンブラックを64~73質量部にて含有する請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項4] 前記ゴムチェーファーのゴム成分100質量部に対し、前記再生ゴムが3~10質量部含まれている請求項2記載の空気入りタイヤ。 [請求項5] 前記複合繊維が、前記カーカスの、タイヤ外側および内側の両表面に露出するように配設されている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項6] 前記複合繊維の、タイヤ外側に露出した部分と、タイヤ内側に露出した部分とが、少なくとも1箇所以上で導通している請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項7] 前記非導電性繊維が有機物であって、前記複合繊維が該非導電性繊維を50質量%以上含有する請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項8] 前記複合繊維が、前記カーカスに縫い込まれている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項9] 前記複合繊維の縫込みピッチが2~40mmである請求項8記載の空気入りタイヤ。 [請求項10] 前記複合繊維が、前記カーカスに対し巻き付けられている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項11] 前記複合繊維が、前記カーカスに対し、前記クッションゴムまたは前記ベルトアンダークッションのタイヤ幅方向の一方側の端部に接する位置から、前記ビード部を経由して、該カーカスのタイヤ内側を通り、該クッションゴムまたは該ベルトアンダークッションのタイヤ幅方向の他方側の端部まで巻き付けられている請求項10記載の空気入りタイヤ。 [請求項12] 前記ビード部のタイヤ幅方向外表面にゴムチェーファーが配設されており、前記カーカスが、前記一対のビード部間に延在する本体部と、該一対のビード部にそれぞれ埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返され巻き上げられた折返し部とからなり、前記複合繊維が、該カーカスに対し、一方側の該折返し部のタイヤ幅方向外側であって前記ゴムチェーファーと接する位置から、該折返し部のタイヤ幅方向内側および該本体部のタイヤ幅方向外側を経由して、該カーカスのタイヤ外側を通り、他方側の該折返し部のタイヤ幅方向外側であって前記ゴムチェーファーと接する位置まで巻き付けられている請求項10記載の空気入りタイヤ。 [請求項13] 前記複合繊維が、前記カーカスに対し螺旋状に巻き付けられている請求項10記載の空気入りタイヤ。 [請求項14] 前記複合繊維の巻付けピッチが1~12回/mである請求項10記載の空気入りタイヤ。 [請求項15] 前記複合繊維が、タイヤ周方向において打込み数0.04本/5cm以上で配置されている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項16] 少なくとも前記ビード部から前記クッションゴムまたは前記ベルトアンダークッションに接する位置まで、ブリーダーコードが配設されてなり、かつ、前記複合繊維が、該ブリーダーコードのうち3~100質量%に代えて配設されている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項17] 前記複合繊維の繊度が20~1000dtexである請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項18] 前記複合繊維が、タイヤ周方向に対し30~150°をなす角度で配設されている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項19] 前記複合繊維が、タイヤ周方向に対し50~130°をなす角度で配設されている請求項18記載の空気入りタイヤ。 [請求項20] 前記導電性繊維が、金属含有繊維、カーボン含有繊維および金属酸化物含有繊維のうちのいずれか1種以上を含む請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項21] 前記非導電性繊維が、綿、ナイロン、ポリエステルおよびポリプロピレンのうちのいずれか1種以上を含む請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項22] 前記複合繊維の破断伸びEbが、5%以上である請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項23] 前記複合繊維の抵抗値が、1.0×107Ω/cm以下である請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項24] 前記ゴムチェーファーが、ゴム成分100質量部に対し、カーボンナノチューブを0.5~4質量部にて含有する請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項25] 前記カーカスプライのプライコーティングゴム、前記ベルト層のベルトコーティングゴム、該カーカスプライ間のスキージーゴム、前記クッションゴム、前記ベルトアンダークッション、および、前記一対のビード部にそれぞれ埋設されたビードコアのタイヤ半径方向外側に配置されたビードフィラーゴムのうち、少なくとも一部材に、スチレンブタジエンゴムを20~40質量部、天然ゴムを60~80質量部含むゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)30~43m2/gのカーボンブラックを35~50質量部と、オイルを5質量部以下配合してなるタイヤ用ゴム組成物が用いられている請求項1記載の空気入りタイヤ。 [請求項26] 前記タイヤ用ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対し、ケッチェンブラックおよびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種を0.1~6質量部含む請求項25記載の空気入りタイヤ。 [請求項27] 前記タイヤ用ゴム組成物が、充填材のうち2~15質量%にて、ケッチェンブラックおよびカーボンナノチューブの少なくとも1種を含む請求項26記載の空気入りタイヤ。 [請求項28] 前記タイヤ用ゴム組成物における、スチレンブタジエンゴムの配合量をA質量部、天然ゴムの配合量をB質量部としたとき、 スチレンブタジエンゴムA質量部に対し、前記タイヤ用ゴム組成物に含まれる窒素吸着比表面積(N2SA)30~43m2/gのカーボンブラックをA*100/(A+B)(質量%)にて配合したゴム組成物をゴム組成物X、 天然ゴムB質量部に対し、前記タイヤ用ゴム組成物に含まれる窒素吸着比表面積(N2SA)30~43m2/gのカーボンブラックをB*100/(A+B)(質量%)にて配合したゴム組成物をゴム組成物Y、 前記タイヤ用ゴム組成物をゴム組成物Zとした場合に、 前記ゴム組成物X、Y、Zの50%伸長時のモジュラスを各々Mdx,Mdy,Mdz(MPa)とすると、Mdx,Mdy,Mdzが下記式(I)を満たす請求項25記載の空気入りタイヤ。 0.9×{Mdx*A/(A+B)+Mdy*B/(A+B)}≧Mdz……(I)」 「 [図:0001416475000003.jpg] [図:0001416475000004.jpg] [図:0001416475000005.jpg] [図:0001416475000006.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載、特に、実施例1-1ないし実施例1-4及び比較例1-1([0079]ないし[0088][表1])の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。 「一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在する1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、そのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された2枚のベルト層を備え、ビード部のタイヤ幅方向外表面にゴムチェーファーが配設されている空気入りタイヤであって、 上記タイヤは、ビード部からトレッド部までにわたって、カーカスの、タイヤ外側および内側の両表面に露出するように、ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコードを配設し、 ブリーダーコードは、タイヤ周方向に対し90°をなす角度で、縫込みピッチ20mmにて、カーカスに縫い込むようにして配置したものであって、 ゴムチェーファーには、表1中に示す配合ゴムを適用した、 空気入りタイヤ。」(以下、「甲1発明」という。なお、表1の記載は省略する。) (2) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「空気入りラジアルタイヤ」に関し、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ビード部に、短繊維補強ゴム層とコード補強層とを設けることにより、乗り心地性の低下を抑えつつ操縦安定性を向上した空気入りラジアルタイヤに関する。」 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 そこで本発明は、ビード部に、短繊維補強ゴム層とコード補強層とを組み合わせて用いることを基本として、短繊維補強層のみの使用、或いはコード補強層のみの使用では実現が困難であった高レベルにおける操縦安定性の向上を、乗り心地性の低下を最低限にとどめながら達成することができ、特に高性能タイヤとして好適に採用しうる空気入りラジアルタイヤの提供を目的としている。」 「【0007】 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスプライを具えるカーカスと、前記ビードコアの半径方向外周面からタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびるビードエーペックスゴムとを具える空気入りラジアルタイヤであって、 前記ビード部に、前記ビードエーペックスゴムのタイヤ軸方向外側面に沿ってタイヤ周方向に配される短繊維補強ゴム層と、 この短繊維補強ゴム層にタイヤ軸方向外側で少なくとも一部が重なってタイヤ周方向に配され、かつ補強コードをタイヤ周方向に対して10~45°の角度αで配列したコード補強層とを設けるとともに、 前記短繊維補強ゴム層は、ゴム100重量部に対して短繊維を10~30重量部配合した短繊維配合ゴム材からなり、かつこの短繊維をタイヤ周方向に配向したことを特徴としている。 【0008】 又請求項2の発明では、短繊維補強ゴム層は、ビードコアの前記外周面の高さ近傍から半径方向外方にのび、かつその外端のビードベースラインからの高さHrを、前記ビードエーペックスゴムの半径方向外端の高さHbの30~90%とするとともに、 前記コード補強層は、前記短繊維補強ゴム層の内端を半径方向外方に越える高さ位置から半径方向外方にのび、かつその外端の高さHcを、短繊維補強ゴム層の前記外端の高さHrの120~300%としたことを特徴としている。 【0009】 又請求項3の発明では、前記補強コードはスチールコードであることを特徴としている。 【0010】 又請求項4の発明では、前記短繊維補強ゴム層は、その厚さが0.3~2.0mmであることを特徴としている。 【0011】 又請求項5の発明では、前記短繊維は、平均繊維長さLを20μm~5000μm、かつ該平均繊維長さLと繊維径Dとのアスペクト比L/Dを10~500としたことを特徴としている。 【0012】 又請求項6の発明では、前記短繊維補強ゴム層は、タイヤ周方向の複素弾性率Ea*を、ビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より大、かつ半径方向の複素弾性率Eb*をビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より小とするとともに、前記複素弾性率Ea*とEb*との比Ea*/Eb*を10~30としたことを特徴としている。」 「【0018】 次に、前記ビードエーペックスゴム8は、前記プライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間を通ってタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびる断面三角形状をなす。本例では、高性能タイヤとして必要なタイヤ剛性を確保するため、その半径方向外端のビードベースラインBLからの高さHbを、タイヤ断面高さHTの0.25~0.5倍の範囲に設定している。なおビードエーペックスゴム8には、複素弾性率E*が35~60Mpaと、サイドウォールゴム(通常、複素弾性率は2.5~6Mpa)に比して高弾性のゴムが使用される。」 (3) 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、「Bekinox○RBK Highly electrical conductive spun yarn for anti-static textiles」に関し、次の記載がある。 「 [図:0001416475000007.jpg] [図:0001416475000008.jpg] 」 (4) 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、「Bekinox○RVS Stainless steel fibers for the anti-static textile industry」に関し、次の記載がある。 「 [図:0001416475000009.jpg] [図:0001416475000010.jpg] 」 2 対比・判断 (1) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の空気入りタイヤは、「一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在する1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格」とするものであるから、本件特許発明1の「カーカスを有する空気入りタイヤであって、前記カーカスは、 一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、」との特定事項を満たす。 また、甲1発明の空気入りタイヤは、「ビード部からトレッド部までにわたって、カーカスの、タイヤ外側および内側の両表面に露出するように、ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコードを配設」したものであるところ、ここで、「ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコード」は、甲第1号証の[0029]ないし[0032]の記載によると、導電性繊維と非導電性繊維とからなる複合繊維であるから、本件特許発明1の「前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、」との特定事項を満たす。 さらに、甲1発明の空気入りタイヤが、本件特許発明1の「前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、」との特定事項を満たすことも明らかである(必要ならば、甲第1号証の図1の符号12を参照のこと。)。 してみると、両者は、 「カーカスを有する空気入りタイヤであって、 前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、 前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、 前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含む、 空気入りタイヤ。」 で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点1-1) 導電性糸に関し、本件特許発明1は「前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が108Ω/cm以下であり、前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 (相違点1-2) 空気入りタイヤに関し、本件特許発明1は、「前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が8以上20以下である、」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑みて、相違点1-1について検討する。 甲1発明では「ベキノックス(Bekaert社製、Bekinox(登録商標))よりなるブリーダーコード」を用いているところ、甲1発明で用いている「ベキノックスよりなるブリーダーコード」は、いかなる性状のものであるのか、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても不明である。 なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、「甲第1号証の段落0032に記載のBekinoxが、甲第4号証に記載のBekinox 50/1 polyesterまたはBekinox 50/2 polyesterに代表されるBekinoxに相当することは当業者にとって自明である」(意見書第2頁)旨主張する。 しかしながら、甲第1号証には「Bekinox」の製品の型番について何ら記載されていないこと、甲第4号証及び甲第5号証の記載を見ても、Bekinoxの商標が付されている製品は特許異議申立人が主張する製品の他にも様々なものが存在することからすると、甲1発明の「ベキノックス」と称される「ブリーダーコード」は、どの型番のものであるか特定することができない。 してみると、「Bekinox」の性状が不明ということであるから、相違点1-1は実質的な相違点であると言わざるを得ない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明ではない。 また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において、導電性糸の1%伸張時の応力を調整する動機付けもないから、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記(1)の場合と同様の相当関係がとれるから、本件特許発明2と甲1発明とは、少なくとも、次の点で相違する。 (相違点2) 導電性糸に関し、本件特許発明2は「前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が108Ω/cm以下であり、前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 上記相違点2について検討する。 相違点2は、相違点1-1と同旨であり、上記(1)と同様に判断される。 したがって、本件特許発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件特許発明4ないし13について 本件特許発明4ないし13はいずれも、本件特許発明1又は2の全ての発明特定事項を有するものである。 そして、上記(1)及び(2)のとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、また、本件特許発明1及び2は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明4ないし13も、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消理由及び申立理由についてのまとめ 上記2のとおりであるから、取消理由及び申立理由の理由によって、本件特許発明1、2及び4ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701292

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