2023-700150
発泡断熱紙容器用紙基材、発泡断熱紙容器用シートおよび発泡断熱紙容器
- 審判番号
- 2023-700150
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-176238外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7117090
- 請求日
- 2023年02月10日
- 審決日
- 2023年04月11日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】渋谷 都
- 分類
- P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
特許第7117090号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成29年9月13日の出願であって、令和4年8月3日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月12日に特許掲載公報が発行され、令和5年2月10日に、その特許に対し、渋谷都(以下「申立人」という。)により請求項1~8に対して本件特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】紙基材の両面に、片面あたり、形成量0.05~0.5g/m2および前記紙基材への浸透厚さが5~35μmであるポリビニルアルコール層を有する発泡断熱紙容器用紙基材。【請求項2】前記紙基材が、パルプ層と、澱粉層とを交互に重ねた多層材であることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。続きを表示(全20行)【請求項3】前記多層材の両側の最外層が前記パルプ層であることを特徴とする請求項2に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。【請求項4】前記パルプ層が、カチオン化澱粉を含んでいることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。【請求項5】紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有する発泡断熱紙容器用シートであって、前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との間に、形成量0.05~0.5g/m2および前記紙基材への浸透厚さが5~35μmであるポリビニルアルコール層を有するとともに、前記ポリビニルアルコール層は前記紙基材のもう一方の面にも形成されていることを特徴とする発泡断熱紙容器用シート。【請求項6】前記熱可塑性樹脂層の厚さが30~80μmであることを特徴とする請求項5に記載の発泡断熱紙容器用シート。【請求項7】前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン層であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の発泡断熱紙容器用シート。【請求項8】胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器であって、前記発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有し、前記紙基材と前記発泡樹脂層との間に、形成量0.05~0.5g/m2および前記紙基材への浸透厚さが5~35μmであるポリビニルアルコール層を有するとともに、前記ポリビニルアルコール層は前記紙基材のもう一方の面にも形成されていることを特徴とする発泡断熱紙容器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、以下の甲第1号証及び甲第2号証を示し、提出した本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概略次の申立ての理由を述べている。
<明確性>
本件発明1、5、8は、「紙基材への浸透厚さが5~35μm」であるとの特定事項を有している。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、「紙基材への浸透厚さ」の定義が不明であり、上記「紙基材への浸透厚さ」の測定方法も開示されていないため、「紙基材への浸透厚さ」との記載が明確であるとはいえない。
したがって、本件発明1、本件発明1を引用する本件発明2~4、本件発明5、本件発明5を引用する本件発明6、7、本件発明8に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
<証拠方法>
以下「甲第1号証」を「甲1」のようにいう。他も同じ。
第4 当審の判断
1 請求項1には、「ポリビニルアルコール層」について、「紙基材の両面に、片面あたり、形成量0.05~0.5g/m2および前記紙基材への浸透厚さが5~35μmである」と記載されている。
また、請求項5、8には、「形成量0.05~0.5g/m2および前記紙基材への浸透厚さが5~35μmであるポリビニルアルコール層を有するとともに、前記ポリビニルアルコール層は前記紙基材のもう一方の面にも形成されている」と記載されている。
これらの記載より、本件発明は、「ポリビニルアルコール」が「紙基材」の両面に片面あたり、「形成量0.05~0.5g/m2」で、「紙基材」への「浸透厚さ」は「5~35μm」であると理解でき、文言上不明確なところはない。
この理解は、当該「浸透厚さ」について、発明の詳細な説明の「本実施形態に係る所定のポリビニルアルコール層は、形成量を紙基材の片面あたり、固形分で0.05~0.5g/m 2の範囲としている。」(【0040】)、「ポリビニルアルコールを紙基材に塗工すると、ポリビニルアルコールは紙基材の表面から内部に向けて浸透する。そして、ポリビニルアルコールを乾燥させることによって固化し、ポリビニルアルコール層が形成される。本実施形態では、紙基材に浸透して固化したポリビニルアルコールもポリビニルアルコール層の一部とみなす。そして、本実施形態では、所定のポリビニルアルコール層について、ポリビニルアルコール層の紙基材への浸透厚さを5~35μmの範囲としている。」(【0042】)、「[実施例1]・・・ロッドコーターによりポリビニルアルコール(PVA)(日本酢ビ・ポバール株式会社製、製品名:JM17、けん化度96.5モル%)を片面あたり固形分で0.08g/m 2(両面で0.16g/m 2)となるように塗工、乾燥して、実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。」(【0097】)、「[実施例2]実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をブレードコーターで行った。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは5.0μmであった。」(【0100】)、「[実施例3]実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの紙基材への浸透厚さが10.0μmであった。」(【0101】)、「[実施例4]実施例4の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をブレードコーターで行った。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは15.0μmであった。」(【0102】)、「[実施例5]実施例5の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をブレードコーターで行った。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは25.0μmであった。」(【0103】)、「[実施例6]実施例6の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をゲートロールサイズプレスで行った。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは30.0μmであった。」(【0104】)、「[実施例7]実施例7の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの紙基材への浸透厚さが35.0μmであった。」(【0105】)との記載と整合するものである。
したがって、本件発明1、5、8は明確である。
本件発明1を引用する本件発明2~4、本件発明5を引用する本件発明6、7についても同様である。
2 申立人の主張について
(1)申立人は以下のように主張している。
甲1及び甲2によると、測定方法によって観察する状態等が異なることになるから、同一の試料の測定であっても、測定方法によって、PVAの分布状態は異なったものとして観測される。
例えば、ヨウ素の付加を液相で行う場合には、ヨウ素溶液への浸漬条件によって、用紙が膨潤し用紙中に存在するPVAの本来の分布状態を観察できない等の不具合が生じることとなる。また、気相で行う場合には、その処理時間によって結果が異なる。
してみると、紙基材への浸透厚さの定義が不明であり、また、その定義が明確であるとする技術常識もなく、さらに、その具体的な測定方法も開示されておらず、浸透厚さを確認、測定する複数の方法が存在することからすれば、「紙基材への浸透厚さが5~35μm」なる記載が明確な記載とはいえない。
(2)上記(1)について、以下に検討する。
ポリビニルアルコールの浸透厚さについて、甲1には、「紙製品を詳細に観察,分析でさる手法として電子顕微鏡による分析法[4-6]があるが,PVAについてはその構成元素である炭素,酸素,水素が,紙の構成元素と同一であるため紙層と区別することができなかった.」(第84ページ右欄第8行から第12行)、PVAをヨウ素溶液によって染色する方法においては「用紙を構成している繊維がPVA発色液の水分を吸収し膨潤する可能性があり,必要以上に浸漬すると紙層構造が変化するため,用紙中に存在するPVAの本来の分布状態を観察することができない.」(第85ページ左欄第5行から第8行)と記載されている。また、甲2には、厚紙表面にPVAを塗布した場合、「ヨウ素染色法によってサイズ処理状態を適正に評価することは困難である。」(【0003】)、飛行時間型二次イオン質量分布装置(TOF-SIMS)法について「特徴的なシグナル強度が弱いため、TOF-SIMS法によるサイズ処理状態の評価も困難である。」(【0003】)、「水酸基を有する化合物としてポリビニルアルコールを用い、これにトリフルオロ無水酢酸を反応させ、X線光電子分光法(ESCA)により分析を行っている方法」(【0004】)においては「セルロース等とポリビニルアルコールとが区別されずに検出される。」(【0005】)と記載されている。
しかしながら、これらの記載は、各測定方法における検出の困難さを示すに過ぎず、測定方法の違いにより「浸透厚さ」が異なることをいうものではない。
よって、申立人の主張は、採用できない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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