2023-700125
ゲル化用組成物
- 審判番号
- 2023-700125
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-508295外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7114253
- 請求日
- 2023年02月07日
- 審決日
- 2023年05月01日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ニュートリー株式会社
- 【権利者代理人】間山 世津子
- 【権利者代理人】野村 健一
- 【異議申立人】渡辺 伸子
- 分類
- P1651.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第7114253号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2016年(平成28年)3月17日(優先権主張 平成27年3月24日)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月29日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年8月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年2月7日に特許異議申立人 渡辺 伸子(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし8)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】加熱調理してから、冷却した後、食事の前に100℃以上の熱風で再加熱して、形状を保持した状態で、咀嚼及び/又は嚥下機能の低下した者に提供されるゲル状食品を製造するためのゲル化用組成物であって、前記ゲル化用組成物が脱アシル型ジェランガムを含有する前記ゲル化用組成物。【請求項2】再加熱が、食品の中心温度で75℃以上、加熱時間が1分間以上またはこれと同等以上という条件で行われる請求項1記載のゲル化用組成物。続きを表示(全16行)【請求項3】さらに、カルシウム塩を含有する請求項1又は2記載のゲル化用組成物。【請求項4】さらに、分散剤を含有する請求項1~3のいずれかに記載のゲル化用組成物。【請求項5】分散剤がデキストリンである請求項4記載のゲル化用組成物。【請求項6】さらに、pH調節剤及び/又はゲル化遅延剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載のゲル化用組成物。【請求項7】pH調節剤及び/又はゲル化遅延剤が、クエン酸三ナトリウムである請求項6記載のゲル化用組成物。【請求項8】加熱調理してから、冷却した後、食事の前に100℃以上の熱風で再加熱して、形状を保持した状態で、咀嚼及び/又は嚥下機能の低下した者に提供されるゲル状食品を製造する方法であって、請求項1~7のいずれかに記載のゲル化用組成物を食品に含有させることを含む前記方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、特許異議申立理由はその理由がないものと判断する。
1 主な証拠の記載事項等
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(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「ゲル状食品及びその製造方法」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】 煮汁を含む平均粒径1mm以下の微粒子状又はペースト状の食材原料をゲル化剤によりゲル化させてなることを特徴とする、ゲル状食品。【請求項2】 食材原料は、硬質食材及び/又は弾性食材を含んでなることを特徴とする、請求項1記載のゲル状食品。【請求項3】 ゲル化剤として、ジェランガムをゲル化直前の総重量に対し0.4乃至2.0%含有してなることを特徴とする、請求項1又は2記載のゲル状食品。【請求項4】 ゲル化剤として、カードランをゲル化直前の総重量に対し0.2乃至0.7%含有してなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つの項に記載のゲル状食品。【請求項5】 ゲル状食品は、さらに、冷凍耐性のある澱粉をゲル化直前の総重量に対し0.2乃至2.0%含有してなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つの項に記載のゲル状食品。【請求項6】 煮汁を含む平均粒径1mm以下の微粒子状又はペースト状の食材原料を加熱調理し、溶解させた後、冷却してゲル化させることを特徴とする、ゲル状食品の製造方法。【請求項7】 食材原料を加熱調理した後、煮汁を含む食材原料を平均粒径1mm以下に粉砕し、冷却してゲル化させることを特徴とする、ゲル状食品の製造方法。」
「【0001】【発明の属する技術分野】本願発明は、食材由来の物性を改善し、特に咀嚼機能の弱い者には適さないとされてきた硬い食べ物や弾力性に富む食べ物を柔らかく、嚥下困難者であっても容易に喫食できるようにしたゲル状食品及びその製造方法に関する。」
「【0013】本願発明は、食材由来の物性、特に硬さや弾力性などを改善し、凍結・解凍時の離水を抑え、柔らかく、咀嚼機能の弱い高齢者や幼児は勿論のこと、咀嚼困難者や嚥下困難者であっても食べ易く、かつ外観も良好で盛り付け性の高いゲル状食品及びその製造方法を提供するものである。」
「【0014】【課題を解決するための手段】本願発明者らは、咀嚼機能の弱い者であっても容易に食べることができ、かつ外観も良好な盛り付け性の高い食品を探求し、鋭意研究を進め、種々の方法を試みたところ、切断・粉砕して微粒子状又はペースト状にした食材をゲル化すると、上述の目的が達成されるという見解に至り、本願発明を完成した。【0015】即ち、本願発明のゲル状食品は、煮汁を含む平均粒径1mm以下の微粒子状又はペースト状の食材原料を、ゲル化剤によりゲル化させてなる。【0016】この発明の好適形態においては、前記食材原料は、硬質食材及び/又は弾性食材を含んでなる。前記ゲル化剤として、ジェランガムをゲル化直前の総重量に対し、0.4乃至2.0%含有してなり、カードランをゲル化直前の総重量に対し、0.2乃至0.7%含有してなる。前記ゲル状食品は、さらに、冷凍耐性のある澱粉をゲル化直前の総重量に対し、0.2乃至2.0%含有してなる。【0017】本願発明のゲル状食品の製造方法は、煮汁を含む平均粒径1mm以下の微粒子状又はペースト状の食材原料を加熱調理し、溶解させた後、冷却してゲル化させて、ゲル状食品を得る方法である。また、食材原料を加熱調理した後、煮汁を含む食材原料を平均粒径1mm以下に粉砕し、冷却してゲル化させて、ゲル状食品を得る方法である。」
「【0031】本願発明のゲル状食品は、しかるべき殺菌工程で殺菌しても良いし、冷凍して凍結させても良い。また、食する際にはそのまま自然解凍させても良いが、煮沸や電子レンジなどにより加熱した方が美味しく食べられる。」
「【0039】(実施例2) タケノコの煮物5mm角にカットしたタケノコ400gに、しょうゆ45g、みりん35g、酒20g、砂糖14g、鰹節粉末2g、水250gを加え、加熱調理した。沸騰したところで乾燥ワカメ粉末4gを加え、さらにゲル化剤としてジェランガム製剤(ジェランガム濃度37%)(大日本製薬株式会社製、ゲルメイトKB)15g、カードラン製剤(カードラン含量99%)(武田薬品工業株式会社製、カードラン)4g、市販の冷凍耐性のある澱粉17gを予め水150gに分散したもの加えて良く混合、加熱し完全に溶解させた。その後、熱湯を加えて内容物重量を1000gに合わせた後、ミキサーにて完全に粉砕し、煮汁を含む平均粒径1mm以下の食材原料を含有したゲル化直前の混合物2aを得た。【0040】この混合物2aを容器に小分けした後、容器の開放部分をフィルムでシールし、冷却して本願発明となるゲル状食品2を得た。【0041】ゲル状食品2は冷凍しても離水せず、その後解凍しても離水しなかった。なお、ゲル状食品2を冷凍保存し、その後電子レンジにて加熱調理したものはタケノコの煮物の風味で、加熱により煮崩れることなく、物性は柔らかいゲル状になっていた。」
(2) 甲第1号証に記載された発明
上記(1)の記載、特に実施例2の記載を中心に整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「5mm角にカットしたタケノコ400gに、しょうゆ45g、みりん35g、酒20g、砂糖14g、鰹節粉末2g、水250gを加え、加熱調理し、沸騰したところで乾燥ワカメ粉末4gを加え、さらにゲル化剤としてジェランガム製剤(ジェランガム濃度37%)(大日本製薬株式会社製、ゲルメイトKB)15g、カードラン製剤(カードラン含量99%)(武田薬品工業株式会社製、カードラン)4g、市販の冷凍耐性のある澱粉17gを予め水150gに分散したもの加えて良く混合、加熱し完全に溶解させ、その後、熱湯を加えて内容物重量を1000gに合わせた後、ミキサーにて完全に粉砕し、煮汁を含む平均粒径1mm以下の食材原料を含有したゲル化直前の混合物を得、この混合物を容器に小分けした後、容器の開放部分をフィルムでシールし、冷却してゲル状食品を得るための、ゲル化剤としてのジェランガム製剤(ジェランガム濃度37%)(大日本製薬株式会社製、ゲルメイトKB)。」(以下、「甲1発明」という。)
2 対比・判断
(1) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ゲル化剤としてジェランガム製剤(ジェランガム濃度37%)(大日本製薬株式会社製、ゲルメイトKB)15g、カードラン製剤(カードラン含量99%)(武田薬品工業株式会社製、カードラン)4g、市販の冷凍耐性のある澱粉17gを予め水150gに分散したもの」は、本件特許発明1の「ゲル化用組成物」に相当する。
また、甲1発明の「ゲル化剤としてジェランガム製剤(ジェランガム濃度37%)(大日本製薬株式会社製、ゲルメイトKB)15g、カードラン製剤(カードラン含量99%)(武田薬品工業株式会社製、カードラン)4g、市販の冷凍耐性のある澱粉17gを予め水150gに分散したもの」はゲル状食品を得るためのものであるから、本件特許発明1の「ゲル状食品を製造するためのゲル化用組成物」に相当する。
そして、甲1発明は熱湯を加えて粉砕しゲル化直前の混合物を得、冷却してゲル状食品としたものであって、電子レンジで加熱調理されるもの(【0041】)であって、「咀嚼機能の弱い高齢者や幼児は勿論のこと、咀嚼困難者や嚥下困難者であっても食べ易く、かつ外観も良好で盛り付け性の高い」(【0013】)ゲル化食品に用いられるものであるから、本件特許発明1の「加熱調理してから、冷却した後、食事の前に100℃以上の熱風で再加熱して、形状を保持した状態で、咀嚼及び/又は嚥下機能の低下した者に提供されるゲル状食品を製造するため」との特定事項のうち、「加熱調理してから、冷却した後、食事の前に再加熱して、形状を保持した状態で、咀嚼及び/又は嚥下機能の低下した者に提供されるゲル状食品を製造するため」との限りにおいて一致する。
してみると、両者は、
「加熱調理してから、冷却した後、食事の前に再加熱して、形状を保持した状態で、咀嚼及び/又は嚥下機能の低下した者に提供されるゲル状食品を製造するためのゲル化用組成物である前記ゲル化用組成物。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
ゲル状食品の再加熱に関し、本件特許発明1は「100℃以上の熱風で再加熱」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点2
ゲル化用組成物に含まれるジェランガムに関し、本件特許発明1は「脱アシル型」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点について検討する。
甲第1号証には、電子レンジにおける再加熱の記載(【0042】)はあるものの、熱風で再加熱することを示唆する記載はない。
なお、特許異議申立人はこの点について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載されている「クックチル」は、甲第2号証ないし甲第4号証の記載にあるように周知である旨主張するが、本件特許発明1は、「100℃以上の熱風で加熱」した場合においても形状を保持することを目的とするものであり、その効果については、何れの証拠の記載からも導くことができない。
また、効果について、特許異議申立人は、甲第5号証を引用しつつ、その温度条件から予測性がある旨主張するが、甲第5号証に記載された事項は「100℃以上の熱風で加熱」した際の効果を想起させるものではないから、当該主張は採用できない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものではない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(1)の検討のとおり、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし8も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由についてのまとめ
上記2のとおりであるから、申立理由は、その理由がない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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