特許異議申立
2023-700105
半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法
- 審判番号
- 2023-700105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-205387
- 登録番号
- 7112179
- 請求日
- 2023年02月02日
- 審決日
- 2023年09月26日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ドライト国際特許事務所
- 【異議申立人】星 正美
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1652.113-YAA(C01B) / P1652.121-YAA(C01B) / P1652.537-YAA(C01B) / P1652.851-YAA(C01B) / P1652.857-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7112179号発明「半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7112179号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
特許第7112179号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7112179号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年10月19日を出願日とするものであって、令和4年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月3日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年2月2日に、請求項1に係る特許について、特許異議申立人 星 正美(以下、「申立人」という。)により、甲第1~7号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年4月25日付で当審より取消理由が通知され、同年7月5日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年8月10日に申立人より意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出さたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年7月5日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7112179号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末。」と記載されているのを、
「ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末(ただし、半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、場合を除く。[測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。)。」に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲でフロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体封止材用球状シリカ質粉末。」と記載されているのを、
「半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られず、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であり、
BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下であり、
粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲でフロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末。」に訂正する。
(3) 一群の請求項について
訂正前の請求項1の記載を請求項2が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~2は一群の請求項であり、訂正事項1及び2に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~2を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「半導体封止材用球状シリカ質粉末」から、「半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である場合 [測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。」を「除く」ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用する従属請求項であったものを、請求項1との引用関係を解消して独立請求項とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 独立特許要件について
ア 請求項1について
本件特許異議の申立ては本件訂正前の請求項1についてされているので、訂正事項1に係る本件訂正後の請求項1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 請求項2について
本件訂正前の請求項2については特許異議の申立てがされていないが、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、同条同項ただし書第1号、第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものではないから、訂正事項2に係る本件訂正後の請求項2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(このうち請求項1に係る発明を、「本件発明1」という。)。
「【請求項1】
半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られず、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であり、
BET法により測定した比表面積が 2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末(ただし、半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、場合を除く。[測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。)。
【請求項2】
半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られず、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であり、
BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下であり、
粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲でフロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末。
【請求項3】
XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られず、BET法により測定した比表面積が1.0[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法であって、
レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下である結晶破砕シリカ質粉末を用意する用意工程と、
前記結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出して球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する溶射工程とを備え、
前記溶射工程では、
前記結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とする
ことを特徴とする半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法。
【請求項4】
前記溶射工程では、
理論酸素量に対する使用助燃ガス中の酸素量の比率が100[%]である
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法。
【請求項5】
前記溶射工程では、
前記結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25.8[MJ/kg]以上とする
ことを特徴とする請求項3または4に記載の半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法。」
第4 特許異議申立理由の概要
1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
(1) 本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(2) 本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(3) 本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
本件発明1は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
本件特許に係る発明の課題は、流動性に優れる「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を提供することにある。
そして、粉体はその粒径が小さくなるほど流動性が低下するものであるのに、本件発明1においては、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の「メジアン径D50が50[μm]以下」であることしか特定されておらず、粒径の下限値が特定されていないから、本件発明1は、優れた流動性を有しない、すなわち、本件特許に係る発明の課題を解決できない「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を含むので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
3 証拠方法
甲第1号証:国際公開第02/26626号
甲第2号証:樋口昌史ら,「非晶質シリカの焼結に伴う結晶化と相転移におけるアルカリ金属酸化物の影響」,Journal of the Ceramic Society of Japan,1997年,Vol.105,No.5,p.385-390
甲第3号証:特開2005-139295号公報
甲第4号証:特開2008-248004号公報
甲第5号証:大柳康ら,「充てん材分散溶融高分子系の流動性に関する研究」,日本レオロジー学会誌,1975年,Vol.3,p.64-70
甲第6号証:特開2003-110065号公報
甲第7号証:特開平2-247236号公報
第5 取消理由の概要
1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項所定の規定に違反してされたものである。
第6 取消理由及び特許異議申立理由についての当審の判断
事案に鑑み、前記第5の取消理由及び第4の特許異議の申立て理由についてまとめて検討する。
1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
(1) 甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、以下のa~cの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
a 「請求の範囲
1. 以下の項目を満足する平均粒径が 0.1~20μmの非孔性球状シリ力:
(a) 最大粒径が平均粒径の4倍以下
(b) 非孔性球状シリカとビスフエノールA型液状エポキシ樹脂を質量比で70:30混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの粘度値をη1、2.5rpmの粘度値をη2とした場合、η1/η2<1.0。」
b 「技術分野
本発明は非孔性球状シリカ及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、IC封止用樹脂組成物の充填材、・・・光学ガラスの原料用途等に適するトリウム含有量が極めて低位にある非孔性球状シリカを製造する方法に関する。特に、フリップチップのアンダーフィル用フィラーとして、樹脂混合時の流動性、狭い隙間への浸透性に極めて優れた非孔性球状シリカ及びその製造方法に関する。」(1ページ5行~11行)
c 「<実施例1>
1>球状シリカゲル粒子の調製
1-1)エマルションの調製
水ガラスとしてJIS3号水ガラスを水で希釈し、Si02分を15%に調整したもの、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール400」、日本石油化学工業製)、乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP-O10」、花王製)を使用した。水ガラス、アイソゾール400、レオドールSP-O10をそれぞれ20kg、7.5kg、0.18kg秤量した。各原料を混合し、攪拌機で粗攪拌した後、乳化機を用いて2980rmpの回転数で乳化させ、乳化液415gを採取した。
1-2)球状シリカゲルの凝固・不純物抽出・洗浄処理
28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加した。添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続けた。次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離した。
オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄した。洗浄は0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返した。ヌッチェを用いて、脱水し、球状シリカゲルを得た。
2>球状シリ力ゲルの乾燥・解砕・焼成工程
得られた球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリ力粒子を得た。この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μmスクリーンで解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成した。
焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cuなどの遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であった。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。得られたシリ力粒子の平均粒径は1.3μm、最大粒径は3μmであり、真比重は2.19であった。BET法で測定した比表面積は2.7m2/gで理論値の1.3倍であった。また、電子顕微鏡写真より真球度が0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリ力粒子で、表面の平滑性も良好であった。」(16ページ25行~17ページ27行)
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には「非孔性球状シリ力」が記載されており、当該「非孔性球状シリ力」は、以下の項目を満足し、平均粒径が0.1~20μmのものである。
(a) 最大粒径が平均粒径の4倍以下
(b) 非孔性球状シリカとビスフエノールA型液状エポキシ樹脂を質量比で70:30混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの粘度値をη1、2.5rpmの粘度値をη2とした場合、η1/η2<1.0。
また、前記(ア)bの記載によれば、前記「非孔性球状シリ力」は、IC封止用樹脂組成物の充填材の原料用途等に適するものであって、前記(ア)cの記載によれば、水ガラスとしてJIS3号水ガラスを水で希釈し、Si02分を15%に調整したもの、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール400」、日本石油化学工業製)、乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP-O10」、花王製)を使用して、水ガラス、アイソゾール400、レオドールSP-O10をそれぞれ20kg、7.5kg、0.18kg秤量し、各原料を混合し、攪拌機で粗攪拌した後、乳化機を用いて2980rmpの回転数で乳化させ、乳化液415gを採取し、28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加し、添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続け、次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持し、この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離し、次に、オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄し、洗浄は0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返し、ヌッチェを用いて、脱水し、球状シリカゲルを得たものである。
更に、得られた球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリ力粒子を得て、この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μmスクリーンで解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cuなどの遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であり、得られたシリ力粒子の平均粒径は1.3μm、最大粒径は3μmであり、真比重は2.19であり、BET法で測定した比表面積は2.7m2/gであり、また、電子顕微鏡写真より真球度が0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリ力粒子で、表面の平滑性も良好であったものである。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、
「以下の項目を満足し、平均粒径が0.1~20μmのものである非孔性球状シリ力であって、
(a) 最大粒径が平均粒径の4倍以下
(b) 非孔性球状シリカとビスフエノールA型液状エポキシ樹脂を質量比で70:30混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの粘度値をη1、2.5rpmの粘度値をη2とした場合、η1/η2<1.0
前記非孔性球状シリ力は、IC封止用樹脂組成物の充填材の原料用途等に適するものであり、水ガラスとしてJIS3号水ガラスを水で希釈し、Si02分を15%に調整したもの、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール400」、日本石油化学工業製)、乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP-O10」、花王製)を使用して、水ガラス、アイソゾール400、レオドールSP-O10をそれぞれ20kg、7.5kg、0.18kg秤量し、各原料を混合し、攪拌機で粗攪拌した後、乳化機を用いて2980rmpの回転数で乳化させ、乳化液415gを採取し、28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加し、添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続け、次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持し、この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離し、
次に、オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄し、洗浄は0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返し、ヌッチェを用いて、脱水し、球状シリカゲルを得た後、
得られた球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリ力粒子を得て、この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μmスクリーンで解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cuなどの遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であり、
得られたシリ力粒子の平均粒径は1.3μm、最大粒径は3μmであり、真比重は2.19であり、BET法で測定した比表面積は2.7m2/gであり、また、電子顕微鏡写真より真球度が0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリ力粒子で、表面の平滑性も良好であったものである、非孔性球状シリ力。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の(ア)~(ウ)の記載がある。
(ア) 「1.緒言
シリカ(SiO2)は,構造的に柔軟性があり熱力学的に準安定な状態で存在できることから,多くの結晶相及び状態を有している1)~3).・・・しかし材料として加工・熱処理する際,相転移といった基本的性質に変化が起き,既知の知見内で予測できないことが生じる.そのため,従来よりシリカの結晶化や相転移挙動及びその物性への影響について数多く研究されてきた3)~11).
・・・
そこで本研究は,シリカ材料作製温度である600~1200℃の温度範囲についてシリカの相転移挙動を詳しく追跡した.シリカ原料は高純度で均一な非晶質の単分散球状シリカ粒子を調製して用いた.球状シリカは形状が均一で相転移が起きにくいので,これをシリカ原料とすれば添加物による影響を明らかにすることができる.本報告では,合成した非晶質の球状シリカにアルカリ金属酸化物を系統的に加えて焼成処理を行い,この添加による結晶化と相転移への影響を検討した.」(385ページ左欄1行~下から7行)
(イ) 「2.実験
2.1 単分散球状シリカの調製と焼成処理
シリカ原料である非晶質の単分散球状シリカ粒子は,金属アルコキシドの加水分解によって調製した.・・・使用した試薬は市販品で,オルトケイ酸テトラエチル(TEOS),エタノール及びアンモニア水(いずれも和光純薬工業製,特級)であり,試薬は脱水,精製等の前処理を行った.TEOSの加水分解の条件はTEOS濃度:0.1mol/l,NH3濃度:2.0mol/l,H2O/TEOS=75(モル比)であり,溶媒はエタノールを用いた.合成温度は25℃,合成時間は3hとした.合成した球状シリカは遠心分離し,エタノールで十分に洗浄を繰り返した後120℃で一昼夜乾燥し,更に真空乾燥を施した.
得られた球状シリカ原料に,アルカリ金属の炭酸塩を0.5~7.0mass%(酸化物換算)の割合でそれぞれ添加し,めのう乳鉢で十分に混合した.なお,アルカリ金属炭酸塩は加熱等によって分解し,酸化物の状態でシリカに作用すると考えられるため,本論文では,アルカリ金属酸化物として記述した.
各混合粉末試料は一軸方向加圧で仮成形した後,ラバープレス法にて100MPa下で等軸圧粉成形し,直径8mm×厚さ8mmのペレット状の成形体を得た.この成形体を石英ガラス製試料皿上に置き,シリコニット製電気炉で焼成し室温にて放冷した.焼成条件は,大気圧下,焼成温度600~1200℃,焼成時間6hである.
2.2 シリカ粒子の分析方法
焼成処理によって得られたシリカ焼成体は,粉末状にしてX線回折装置(XRD;Philips製,X’Pert)を用いSANDMAN検索法でシリカ結晶相の同定を行った.」(385ページ左欄下から6行~右欄下から10行)
(ウ) 「3.結果及び考察
3.1 アルカリ金属酸化物を添加した球状シリカの結晶化と相転移
各種アルカリ金属酸化物を添加した球状シリカ焼成体の結晶相をXRDにより同定した.同定結果をまとめて図1に示す.高温状態でのシリカ結晶相を高温X線回折装置を用いて検討した結果,高温下で測定し同定したシリカ結晶相と,電気炉で所定時間焼成し室温まで放冷してXRDにより同定したシリカ結晶相はほぼ一致した.図1で決定したシリカ結晶相は試料の冷却による影響をほとんど受けないことを確認した.
無添加の球状シリカ焼成体を焼成した場合では,600~1200℃,6hの焼成を施しても結晶相は認められず,X線的に非晶質を示した.」(386ページ左欄1行~13行)
ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア) 甲第3号証には、以下のa~cの記載がある。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1~2μm、BET比表面積が2~20m2/gであり、以下の方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2であることを特徴とする金属酸化物粉末。
[測定方法]
水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃にまでに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合OH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。
・・・
【請求項5】
請求項1~3記載のいずれかの金属酸化物粉末を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
金属酸化物粉末よりも平均粒径が粗い母体金属酸化物粉末を更に含有してなる請求項5記載の樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料。」
b 「【0013】
さらに、本発明は、上記金属酸化物粉末を含有してなることを特徴とする樹脂組成物であり、更には、この樹脂組成物において、上記金属酸化物粉末よりも平均粒径が粗い球状シリカ粉末及び/又は球状アルミナ粉末などの母体金属酸化物粉末を更に含有してなる樹脂組成物からなる半導体封止材料である。
・・・
【0022】
本発明における金属酸化物粉末は、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、カルシア等の金属酸化物粉末であり、それらの粉末を単独で用いても二種類以上混合したものでもかまわない。とくに、半導体チップと半導体封止材料との熱膨張率を近づけるという点、半田耐熱性、耐湿性、金型の低摩耗性という観点において、球状シリカ、球状アルミナが好ましく、中でも結晶質シリカを高温で溶融する方法ないしは合成法で製造された非晶質シリカが最適である。非晶質シリカの非晶質率は、粉末X線回折装置、例えば「モデルMini Flex」(RIGAKU社製)を用い、CuKα線の2θが26°~27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができる。すなわち、結晶質シリカは、26.7°に主ピークが存在するが、非晶質シリカではピークは存在しない。非晶質シリカと結晶質シリカが混在していると、結晶質シリカの割合に応じた26.7°のピーク高さが得られるので、結晶質シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶質シリカ混在比(試料のX線回折強度/結晶質シリカのX線回折強度)を算出し、式、非晶質率(%)=(1-結晶質シリカ混在比)×100から非晶質率を求めることができる。
・・・
【0031】
本発明の半導体封止材料は、上記本発明の樹脂組成物に、金属酸化物粉末よりも平均粒径が粗い母体金属酸化物粉末を更に配合されたものである。母体金属酸化物粉末としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、カルシア等の金属酸化物粉末が用いられるが、好ましくは球状シリカ粉末及び/又は球状アルミナ粉末である。」
c 「【0040】
実施例1~4 比較例1~8
可燃性ガス供給管からLPG、助燃性ガス供給管から酸素を供給して高温火炎が形成されてなる反応容器内に、金属シリコン粉末(平均粒径12μm)をイオン交換水に分散させて調製された濃度80質量%のスラリーを、スラリーポンプを用い金属粉末供給管から表1に示す割合で供給した。外周バーナーからも同様にLPGと酸素とを供給し、可燃性ガス供給管と外周バーナーとの合計LPG量を表1のようにした。また、酸素供給量は、金属シリコン粉末とLPGの完全燃焼に必要な量の1.1倍量とした。
【0041】
バッグフィルターで捕集された非晶質球状シリカ粉末について、平均粒径、比表面積、水分を上記に従い測定した。それらの結果を表1に示す。球形度については、いずれの非晶質球状シリカ粉末も0.90以上であり、非晶質率についても全てほぼ100%であった。
【0042】
得られた微小非晶質球状シリカ粉末の半導体封止材料の充填材としての特性を評価するため、微小非晶質球状シリカ粉末10部(質量部、以下同じ)、母体球状非晶質シリカ粉末80部に対し、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)-3,3’、5,5’-テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂4.2部、フェノール樹脂4.3部、トリフェニルホスフィン0.2部、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、カーボンブラック0.3部、カルナバワックス0.5部を加え、ヘンシェルミキサーにてドライブレンドした後、得られた配合物を同方向噛み合い二軸押出混練機(スクリュー径D=25mm、ニーディングディスク長10Dmm、パドル回転数150rpm、吐出量5kg/h、ヒーター温度105~110℃)で加熱混練した。吐出物を冷却プレス機にて冷却した後、粉砕して半導体封止材料を得た。得られた材料の(1)流動性・成形性、(2)耐はんだクラック性(信頼性)および(3)機械的強度を次に示す方法に従って評価した。それらの評価結果を表1に示す。
・・・
【0046】
【表1】
[図:0001404801000001.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には「金属酸化物粉末」が記載されており、当該「金属酸化物粉末」は、平均粒径が0.1~2μm、BET比表面積が2~20m2/gであり、以下の方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2であるものである。
[測定方法]
水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃にまでに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合OH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。
また、前記(ア)cに記載された実施例4に注目すると、前記「金属酸化物粉末」は、可燃性ガス供給管からLPG、助燃性ガス供給管から酸素を供給して高温火炎が形成されてなる反応容器内に、金属シリコン粉末(平均粒径12μm)をイオン交換水に分散させて調製された濃度80質量%のスラリーを、スラリーポンプを用い金属粉末供給管から金属粉末-水スラリー供給量が12(L/Hr)、金属品末供給量Bが18(kg/Hr)の割合で供給し、外周バーナーからも同様にLPGと酸素とを供給し、可燃性ガス供給管と外周バーナーとの合計LPG量を、80(Nm3/Hr)とし、また、酸素供給量は、金属シリコン粉末とLPGの完全燃焼に必要な量の1.1倍量である、455(Nm3/Hr)としたものである。
そして、バッグフィルターで捕集された非晶質球状シリカ粉末について、平均粒径、比表面積、水分を測定すると、平均粒径が1.5(μm)、BET比表面積が3.1(m2/g)、孤立OH基濃度が7(個/nm2)、水素結合OH基濃度が2(個/nm2)、孤立OH基率が78(%)であり、球形度が0.90以上であり、非晶質率がほぼ100%であったものであり、得られた微小非晶質球状シリカ粉末は半導体封止材料の充填材として使用されるものであり、前記(ア)bの記載によれば、非晶質シリカの非晶質率は、粉末X線回折装置を用い、CuKα線の2θが26°~27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができるものであり、非晶質シリカと結晶質シリカが混在していると、結晶質シリカの割合に応じた26.7°のピーク高さが得られるので、結晶質シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶質シリカ混在比(試料のX線回折強度/結晶質シリカのX線回折強度)を算出し、式、非晶質率(%)=(1-結晶質シリカ混在比)×100から非晶質率を求めることができるものである。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲第3号証には、
「平均粒径が0.1~2μm、BET比表面積が2~20m2/gであり、以下の方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、金属酸化物粉末であって、
[測定方法]
水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃にまでに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合OH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。
前記金属酸化物粉末は、可燃性ガス供給管からLPG、助燃性ガス供給管から酸素を供給して高温火炎が形成されてなる反応容器内に、金属シリコン粉末(平均粒径12μm)をイオン交換水に分散させて調製された濃度80質量%のスラリーを、スラリーポンプを用い金属粉末供給管から金属粉末-水スラリー供給量が12(L/Hr)、金属品末供給量Bが18(kg/Hr)の割合で供給し、外周バーナーからも同様にLPGと酸素とを供給し、可燃性ガス供給管と外周バーナーとの合計LPG量を、80(Nm3/Hr)とし、また、酸素供給量は、金属シリコン粉末とLPGの完全燃焼に必要な量の1.1倍量である、455(Nm3/Hr)としたものであり、
バッグフィルターで捕集された非晶質球状シリカ粉末について、平均粒径、比表面積、水分を測定すると、平均粒径が1.5(μm)、BET比表面積が3.1(m2/g)、孤立OH基濃度が7(個/nm2)、水素結合OH基濃度が2(個/nm2)、孤立OH基率が78(%)であり、球形度が0.90以上であり、非晶質率がほぼ100%であったものであり、
得られた微小非晶質球状シリカ粉末は、半導体封止材料の充填材として使用されるものであり、
非晶質シリカの非晶質率は、粉末X線回折装置を用い、CuKα線の2θが26°~27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができるものであり、非晶質シリカと結晶質シリカが混在していると、結晶質シリカの割合に応じた26.7°のピーク高さが得られるので、結晶質シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶質シリカ混在比(試料のX線回折強度/結晶質シリカのX線回折強度)を算出し、式、非晶質率(%)=(1-結晶質シリカ混在比)×100から非晶質率を求めることができる、金属酸化物粉末。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
エ 甲第4号証の記載事項及び甲第4号証に記載された発明
(ア) 甲第4号証には、以下のa~cの記載がある。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、
該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であることを特徴とする樹脂組成物添加用無機粉末。
・・・
【請求項7】
BET法により測定した比表面積が1.5~3.5m2/gである請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物添加用無機粉末。」
b「【0001】
本発明は、無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するための樹脂組成物添加用無機粉末及びその無機粉末を用いた樹脂組成物に関する。」
c「【0048】
〈試験試料の調製〉
天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得た。火炎投入前の粒度分布、火炎条件、分級操作、配合により表1及び2に示す粒度分布になるように調製し各試験例の試験試料(樹脂組成物添加用無機粉末)とした。いずれのシリカ粉末についても結晶化率は1%未満(非晶質率は99%以上)であり、平均円形度は0.9以上であった。
・・・
【0053】
【表1】
[図:0001404801000002.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第4号証には「樹脂組成物添加用無機粉末」が記載されており、当該「樹脂組成物添加用無機粉末」は、体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であり、BET法により測定した比表面積が1.5~3.5m2/gであるものである。
また、前記(ア)bの記載によれば、前記「樹脂組成物添加用無機粉末」は、無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するためのものであって、前記(ア)cに記載された試験例1に注目すると、前記「樹脂組成物添加用無機粉末」は、天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得たものであり、火炎投入前の粒度分布、火炎条件、分級操作、配合により、極大値Aが50.2(μm)、極大値Bが19.8(μm)、極大値Cが0.2(μm)、平均粒径が22.1(μm)、比表面積が2.5(m2/g)、15μm以上70μm以下の粒子の平均円形度が0.970になるように調製して試験試料(樹脂組成物添加用無機粉末)としたものであり、結晶化率が1%未満(非晶質率は99%以上)であったものである。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲第4号証には、
「体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、
該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であり、
BET法により測定した比表面積が1.5~3.5m2/gである、樹脂組成物添加用無機粉末であって、
前記樹脂組成物添加用無機粉末は、無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するためのものであり、
天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得たものであり、火炎投入前の粒度分布、火炎条件、分級操作、配合により、極大値Aが50.2(μm)、極大値Bが19.8(μm)、極大値Cが0.2(μm)、平均粒径が22.1(μm)、比表面積が2.5(m2/g)、15μm以上70μm以下の粒子の平均円形度が0.970になるように調製して試験試料(樹脂組成物添加用無機粉末)としたものであり、結晶化率が1%未満(非晶質率は99%以上)である、樹脂組成物添加用無機粉末。」の発明(以下、「甲4発明1」という。)が記載されているといえる。
(エ) 同様に、前記(ア)cに記載された試験例3に注目すると、甲第4号証には、
「体積基準の粒度分布に2以上の極大値をもち、
該極大値のうちの1つである第1極大値が0.1μm以上2μm以下であり、
該第1極大値以外の1つである第2極大値が20μm以上70μm以下であり、
全体を基準とした体積平均粒径並びにd50が6μm以上50μm未満であり、
15μm以上70μm以下の粒径をもつ粒子の平均円形度が0.950以上であり、
BET法により測定した比表面積が1.5~3.5m2/gである、樹脂組成物添加用無機粉末であって、
前記樹脂組成物添加用無機粉末は、無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するためのものであり、
天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得たものであり、火炎投入前の粒度分布、火炎条件、分級操作、配合により、極大値Aが55.1(μm)、極大値Bが21.7(μm)、極大値Cが0.2(μm)、平均粒径が35.2(μm)、比表面積が2.3(m2/g)、15μm以上70μm以下の粒子の平均円形度が0.970になるように調製して試験試料(樹脂組成物添加用無機粉末)としたものであり、結晶化率が1%未満(非晶質率は99%以上)である、樹脂組成物添加用無機粉末。」の発明(以下、「甲4発明2」という。)が記載されているといえる。
(2) 甲第1号証を主引用例とした場合について
ア 対比・判断
(ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における、「IC封止用樹脂組成物の充填材の原料用途等に適する」「非孔性球状シリ力」は、本件発明1における「半導体封止材用球状シリカ質粉末」に相当し、甲1発明において、「BET法で測定した比表面積」が「2.7m2/g」であることは、本件発明1において、「BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である」ことを満たす。
すると、本件発明1と甲1発明とは、
「半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である、半導体封止材用球状シリカ質粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。
・相違点2:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「得られたシリ力粒子の平均粒径は1.3μm、最大粒径は3μm」である点。
・相違点3:本件発明1は、「(ただし、半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、場合を除く。[測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。)」との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点。
(イ) 始めに、甲1発明が、前記(ア)の相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するか否かについて検討すると、甲第1号証には、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないことは記載も示唆もされていない。
そこで、前記相違点1について、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法の観点から検討すると、本件発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法について、本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0020】
(2)半導体封止材用球状シリカ質粉末の製造方法
本発明における半導体封止材用球状シリカ質粉末は下記の製造方法により製造し得る。この場合、先ず始めに結晶破砕シリカ質粉末を原料として用意する(用意工程)。結晶破砕シリカ質粉末は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下とする。
【0021】
このようなメジアン径D50の結晶破砕シリカ質粉末の製造方法は特に限定しないが、一例として天然に存在する結晶質シリカをボールミル等で粉砕することにより製造する。
・・・
【0023】
次いで、これら結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出させて球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造する(溶射工程)。この溶射工程では、例えば、噴出面に火炎孔と原料供給孔とを備えた球状粒子製造用バーナーを用いる。
【0024】
溶射工程では、球状粒子製造用バーナーにおいて火炎孔から火炎が噴出し、原料供給孔から当該火炎中に結晶破砕シリカ質粉末が噴出されることで、当該結晶破砕シリカ質粉末が火炎により溶融され、球状化した半導体封止材用球状シリカ質粉末が生成される。球状粒子製造用バーナーは、可燃ガスと助燃ガスとを火炎孔から噴射し、これらガスにより火炎を形成している。
・・・
【0026】
これに加えて、この溶射工程では、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]が、25[MJ/kg]以上であることが望ましい。結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることで、製造された半導体封止材用球状シリカ質粉末の結晶化度を0.0[%]とすることができる。ここで、熱量とは、結晶破砕シリカ質粉末を火炎により溶かすために投入した熱量であり、投入した可燃ガスが完全燃焼した際に発生する理論熱量の値である。
【0027】
結晶破砕シリカ質粉末の供給量は、球状粒子製造用バーナーの原料供給孔から噴出する量である。
【0028】
以上のような製造方法によって、XRD法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、さらにレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の半導体封止材用球状シリカ質粉末や、さらにはBET法により測定した比表面積が1.0[m2/g]以上4.0[m2/g]以下、フロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である半導体封止材用球状シリカ質粉末を製造できる。」
前記記載によれば、本件発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」は、始めに結晶破砕シリカ質粉末を原料として用意する用意工程と、これら結晶破砕シリカ質粉末を火炎中に噴出させて球状化した「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を製造する溶射工程を有する製造方法により製造されるものであり、前記用意工程では、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の結晶破砕シリカ質粉末を用意するものであり、このようなメジアン径D50の結晶破砕シリカ質粉末の製造方法は、一例として天然に存在する結晶質シリカをボールミル等で粉砕することにより製造するものであり、次に、前記溶射工程において、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることで、XRD法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、さらにレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の「半導体封止材用球状シリカ質粉末」や、さらにはBET法により測定した比表面積が1.0[m2/g]以上4.0[m2/g]以下、フロー式粒子像分析法により測定した平均円形度が0.90以上である「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を製造できるものである(以下、前記製造方法を「本件製造方法」という。)。
これに対して、甲1発明に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法は、「水ガラスとしてJIS3号水ガラスを水で希釈し、Si02分を15%に調整したもの、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール400」、日本石油化学工業製)、乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP-O10」、花王製)を使用して、水ガラス、アイソゾール400、レオドールSP-O10をそれぞれ20kg、7.5kg、0.18kg秤量し、各原料を混合し、攪拌機で粗攪拌した後、乳化機を用いて2980rmpの回転数で乳化させ、乳化液415gを採取し、28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加し、添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続け、次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持し、この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離し、次に、オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄し、洗浄は0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返し、ヌッチェを用いて、脱水し、球状シリカゲルを得た後、得られた球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリ力粒子を得て、この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μmスクリーンで解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成」するものである(以下、前記製造方法を「甲1製造方法」という。)。
ここで、前記本件製造方法と前記甲1製造方法とを対比すると、前記甲1製造方法は、前記本件製造方法における用意工程及び溶射工程に相当する工程を有しないから、前記本件製造方法と前記甲1製造方法は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造工程が合致しない。
そして、本件製造方法とは製造工程が合致しない甲1製造方法で製造された「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との前記相違点1に係る発明特定事項を有しているということはできないし、このことを裏付ける証拠もない。
したがって、製造方法の観点から検討しても、甲1発明が、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するということはできない。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲1発明に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するということはできないから、前記相違点1は実質的な相違点であるので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるということはできない。
(エ) 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないものとすることを開示した証拠はないから、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人の主張について
(ア) 特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
甲第1号証の実施例ではゾルゲル法により製造したシリカゲル粒子に、何らの添加物を加えることなく、該粒子を1150℃で6時間焼成して球状シリカ粒子を得ている一方、甲第2号証によれば、無添加の球状シリカ成形体を焼成した場合でも、600℃~1200℃、6時間の焼成を施しても、結晶相は認められず、X線的に非晶質を示したことが記載されているから、甲第1号証に記載された球状シリカ粒子は非晶質と推認できるので、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(12ページ16行~13ページ19行)。
(イ) そこで、前記(ア)の主張について検討する。
a 前記(1)イ(ア)の記載によれば、甲第2号証には、シリカ材料作製温度である600~1200℃の温度範囲についてシリカの相転移挙動を詳しく追跡するために、高純度で均一な合成した非晶質の単分散球状シリカ粒子に、アルカリ金属酸化物を系統的に加えて焼成処理を行い、この添加による結晶化と相転移への影響を検討した結果が記載されており、前記(1)イ(イ)の記載によれば、前記非晶質の単分散球状シリカ粒子は、金属アルコキシドの加水分解による製造方法によって調製したものである。
すなわち、前記製造方法において使用した試薬は市販品で、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、エタノール及びアンモニア水(いずれも和光純薬工業製、特級)であり、試薬は脱水、精製等の前処理を行い、TEOSの加水分解の条件はTEOS濃度:0.1mol/l、NH3濃度:2.0mol/l、H2O/TEOS=75(モル比)であり、溶媒はエタノールを用いたものであり、合成温度は25℃、合成時間は3hとし、合成した球状シリカは遠心分離し、エタノールで十分に洗浄を繰り返した後120℃で一昼夜乾燥し、更に真空乾燥を施したものである(以下、前記製造方法を「甲2製造方法」という。)。
そして、得られた球状シリカ原料に、アルカリ金属の炭酸塩を0.5~7.0mass%(酸化物換算)の割合でそれぞれ添加し、めのう乳鉢で十分に混合し、各粉末混合試料は一軸方向加圧で仮成形した後、ラバープレス法にて100MPa下で等軸圧粉成形し、直径8mm×厚さ8mmのペレット状の成形体を得た後、この成形体を石英ガラス製試料皿上に置き、シリコニット製電気炉で焼成し室温にて放冷したものであり、焼成条件は、大気圧下、焼成温度600~1200℃、焼成時間6hとし、焼成処理によって得られたシリカ焼成体を、粉末状にしてX線回折装置(XRD;Philips製,X’Pert)を用いSANDMAN検索法でシリカ結晶相の同定を行ったものである。
更に、前記(1)イ(ウ)の記載によれば、各種アルカリ金属酸化物を添加した球状シリカ焼成体の結晶相をXRDにより同定した結果、無添加の球状シリカ焼成体を焼成した場合では、600~1200℃、6hの焼成を施しても結晶相は認められず、X線的に非晶質を示したものである。
b 前記aによれば、甲第2号証には、甲2製造方法により調製した、高純度で均一な、もともと非晶質の単分散球状シリカ粒子に、アルカリ金属酸化物を添加することなく、600~1200℃、6hの焼成を施しても、結晶相は認められず、X線的に非晶質を示したことが記載されているにすぎない。
そして、前記甲1製造方法が、前記甲2製造方法と合致するものでもないし、前記甲1製造方法により、甲第2号証に記載されたような、高純度で均一な非晶質の単分散球状シリカ粒子が製造されることを裏付ける証拠もない。
そうすると、甲第2号証に、もともと非晶質の単分散球状シリカ粒子に、アルカリ金属酸化物を添加することなく、600~1200℃、6hの焼成を施しても、非晶質のまま変わらないことが示されているとしても、このことから、甲1発明に係る「半導体封止材用球状シリカ粉末」が非晶質と推認できるものではないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立人の前記(ア)の主張は採用できない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、前記第4の1(1)の特許異議の申立て理由は理由がない。
(3) 甲第3号証を主引用例とした場合について
ア 対比・判断
(ア) 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における、「半導体封止材料の充填材として使用される」「微小非晶質球状シリカ粉末」は、本件発明1における「半導体封止材用球状シリカ質粉末」に相当し、甲3発明において、「BET比表面積が3.1(m2/g)」であることは、本件発明1において、「BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である」ことを満たす。
すると、本件発明1と甲3発明とは、
「半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である、半導体封止材用球状シリカ質粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との発明特定事項を有するのに対して、甲3発明は、「非晶質率がほぼ100%」である点。
・相違点2’:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲3発明は、「平均粒径が1.5(μm)」である点。
・相違点3’:本件発明1は、「(ただし、半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、場合を除く。[測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。)」との発明特定事項を有するのに対して、甲3発明は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「平均粒径が0.1~2μm、BET比表面積が2~20m2/gであり、以下の方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、金属酸化物粉末」「[測定方法] 水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃にまでに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合OH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。」である点。
(イ) 事案に鑑み、始めに、前記(ア)の相違点3’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、そもそも、甲3発明は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2であって、測定方法が、水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出するものを必須の要件(以下、「甲3要件」という。)とするものである。
そして、前記甲3要件を有する「半導体封止材用球状シリカ質粉末」は、前記相違点3’において除かれているものにほかならないから、甲3発明が、前記相違点3’に係る本件発明1の発明特定事項を有しないことは明らかである。
すると、前記相違点3’は実質的な相違点であるので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲3発明であるということはできない。
(ウ) 次に、前記相違点3’の容易想到性について検討すると、甲3発明において、必須の要件である前記甲3要件を除くものとすることはそもそも想定されないから、甲3発明において前記相違点3’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得ることではないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人の主張について
(ア) 特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
甲第3号証に記載の「非晶質率ほぼ100%」は、非晶質シリカとなるピークがほぼ存在しないこととなるから、甲3発明は、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との本件発明1の発明特定事項を満たす。
また、本件特許明細書の段落【0026】の記載(前記(2)ア(イ))によれば、本件発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法は、溶射工程において、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることで、製造された「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の結晶化度を0.0[%]とすることができるのであるが、甲3発明における原料粉末の供給量あたりの熱量は440[MJ/kg]であり、溶射工程において、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることを満たすから、甲3発明における結晶化度は実質的に0%と推認できるので、本件発明1の前記発明特定事項は、甲3発明に対して相違点とはならない。
したがって、本件発明1は甲3発明であるか、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(13ページ20行~15ページ20行)。
(イ) そこで、前記(ア)の主張について検討すると、甲3発明が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との本件発明1の発明特定事項を満たすか否かにかかわらず、前記相違点3’が実質的な相違点であり、前記相違点3’が容易想到でないことに変わりはないから、本件発明1は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、前記(ア)の主張は採用できない。
(ウ) 申立人意見書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
甲第3号証には、特許請求の範囲の請求項6に、甲第3号証の請求項1に記載された金属酸化物粉末(以下、申立人意見書に倣って「甲3粉末」という。)に加え、甲3粉末よりも平均粒径が粗い母体金属酸化物粉末を更に併用するものが記載されており、このような発明も甲第3号証に記載された発明の範囲のものであるから、本件発明1において甲3粉末を除外したところで、本件発明1は甲第3号証に記載された発明と重なる部分がなお存在するので、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、甲3粉末よりも平均粒径が粗い母体金属酸化物粉末を更に併用する場合、99%が甲3粉末であれば、実質的に甲3粉末と同じであり、作用効果も実質的に同じはずであるから、本件発明1は、なお甲3粉末と実質的に同一の「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を含むので、進歩性が欠如するものである(2ページ8行~4ページ9行)。
(エ) そこで、前記(ウ)の主張について検討すると、甲第3号証の特許請求の範囲の請求項5及び6の記載は、前記(1)ウ(ア)aに記載したとおりである。
そして、前記記載によれば、前記請求項6には、甲3粉末を含有する樹脂組成物に、前記甲3粉末よりも平均粒径が粗い母体金属酸化物粉末を更に含有する半導体封止材料が記載されているといえるが、前記請求項6は、半導体封止材料の樹脂組成物に、前記甲3粉末に加えて前記母体金属酸化物粉末が含まれることを開示するものにすぎず、そもそも、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を開示するものとはいえない。
また、前記(1)ウ(ア)b、c(段落【0042】)の記載をみても、甲第3号証には、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が開示されているわけではないから、本件発明1に甲第3号証に記載された発明と重なる部分がなお存在するといえるものではないので、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
更に、仮に、甲第3号証に、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が開示されているとしても、以下の理由により、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
すなわち、前記甲3粉末は、甲第3号証の特許請求の範囲の請求項1で特定された要件を有する粉末であるから、前記甲3要件(前記ア(イ))を有する粉末といえるものである。
すると、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」もまた、前記甲3要件を有する粉末といえるのであるが、前記(ア)イによれば、本件発明1においては、前記甲3要件を有する「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が除かれているのであるから、当然、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」も除かれていると解されるので、本件発明1に、甲第3号証に記載された発明と重なる部分がなお存在するとはいえない。
また、前記(1)ウ(ア)c(段落【0042】)の記載によれば、甲第3号証に記載された実施例においては、微小非晶質球状シリカ粉末10質量部と、母体球状非晶質シリカ粉末80質量部を併用することが開示されており、前記微小非晶質球状シリカ粉末及び前記母体球状非晶質シリカ粉末は、それぞれ、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末に相当するから、前記実施例においては、前記甲3粉末10質量部と、前記母体金属酸化物粉末80質量部を併用することが想定されているのであり、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を併用するにあたって、99%を前記甲3粉末とすることが想定されるものではない。
更に、甲第3号証には、前記母体金属酸化物粉末の結晶質成分の割合、メジアン径D50及びBET法により測定した比表面積が記載されていないから、前記甲3粉末に更に前記母体金属酸化物粉末を加えたとき、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の結晶質成分の割合、メジアン径D50及びBET法により測定した比表面積を予測することは極めて困難であるので、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、実質的に前記甲3粉末と同じであり、作用効果も実質的に同じであるということはできない。
これらのことからみれば、仮に、甲第3号証に、前記甲3粉末及び前記母体金属酸化物粉末を含む「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が開示されているとしても、係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、本件発明1の発明特定事項を有するものとはいえないから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないので、前記(ウ)の主張も採用できない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、前記第5の1の取消理由及び前記第4の1(2)の特許異議の申立て理由も理由がない。
(3) 甲第4号証を主引用例とした場合について
ア 対比・判断
(ア) 本件発明1と甲4発明1とを対比すると、甲4発明1における、「無機粉末を分散し半導体封止材などに用いることが可能な樹脂組成物に用いられる無機粉末として添加するための」「非晶質シリカ粉末」は、本件発明1における「半導体封止材用球状シリカ質粉末」に相当し、甲4発明1において、「BET法により測定した比表面積」が「2.5(m2/g)」であることは、本件発明1において、「BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である」ことを満たす。
すると、本件発明1と甲4発明1とは、
「半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、
BET法により測定した比表面積が2.28[m2/g]以上4.0[m2/g]以下である、半導体封止材用球状シリカ質粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1”:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との発明特定事項を有するのに対して、甲4発明1は、「結晶化率」が「1%未満(非晶質率は99%以上)」である点。
・相違点2”:本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲4発明1は、「平均粒径が22.1(μm)」である点。
・相違点3”:本件発明1は、「(ただし、半導体封止材用球状シリカ質粉末が、平均粒径が0.1~2μmであり、かつBET比表面積が2~20m2/gであり、かつ以下の測定方法で測定された粒子表面の孤立OH基の濃度が3~8個/nm2である、場合を除く。[測定方法]水分気化装置に試料を入れ、加熱昇温しながら発生した水分をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したときに、温度200℃までに発生した水分を「物理的吸着水」、200℃をこえ550℃までに発生した水分を「水素結合OH基由来の水分」、550℃をこえ900℃までに発生した水分を「孤立OH基由来の水分」、と定義し、測定された水分量とBET比表面積値とから、それぞれ「水素結合のOH基」と「孤立OH基」の濃度を算出する。)」との発明特定事項を有するのに対して、甲4発明1は、前記発明特定事項を有しない点。
(イ) 始めに、甲4発明1が、前記相違点1”に係る本件発明1の発明特定事項を有するか否かについて検討すると、甲4発明1における「結晶化率(非晶質率)」は、どのようにして算出されるものであるのかが不明であり、前記「結晶化率」が「1%未満」(「非晶質率」が「99%以上」)であるとしても、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積」や「結晶質成分のピーク」の有無が明らかになるものではないから、甲4発明1において、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないということはできない。
(ウ) また、前記相違点1”について、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法の観点から検討すると、本件製造方法は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の結晶破砕シリカ質粉末を原料とするものであることは前記(2)ア(イ)に記載したとおりである。
一方、甲4発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の製造方法は、「天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得た」ものであり、「天然ケイ石」を粉砕したものを原料とするものであるが、前記「天然ケイ石」を粉砕したものが、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下の結晶破砕シリカ質粉末であるということはできないから、本件発明1と甲4発明1とは、そもそも原料が合致しているとはいえない。
そして、本件発明1とは原料が合致しない甲4発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないということはできない。
また、本件発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」は、溶射工程において、結晶破砕シリカ質粉末の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]を25[MJ/kg]以上とすることで、製造された「半導体封止材用球状シリカ質粉末」の結晶化度を0.0[%]とすることができることは、前記(2)ア(イ)に記載したとおりである。
一方、甲4発明1は、「天然ケイ石を粉砕した後、高温火炎中に搬送気体と共に投入するいわゆる溶融法にて非晶質シリカ粉末を得た」ものであるが、このときの「天然ケイ石」の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]は明らかでない。
そして、「天然ケイ石」の供給量[kg/h]当たりの熱量[MJ/h]が明らかでない甲4発明1に係る「半導体封止材用球状シリカ質粉末」が、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないということもできない。
これらのことからみれば、製造方法の観点から検討しても、甲4発明1が、前記相違点1”に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとはいえない。
(エ) 前記(イ)及び(ウ)によれば、前記相違点1”は実質的な相違点であるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲4発明1であるということはできないのであり、甲4発明2について検討しても事情は同じである。
(オ) 次に、前記相違点1”の容易想到性について検討すると、前記(2)ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲4発明1において、前記相違点1”に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、甲4発明2について検討しても事情は同じである。
イ 申立人の主張について
(ア) 特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
甲第4号証の段落【0048】(前記(1)エ(ア)c)には、試験例で調製したシリカ粉末の結晶化率は1%未満であったことが記載されているから、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ない、との本件発明1の発明特定事項は、甲4発明1、甲4発明2に対して相違点とはならないので、本件発明1は甲4発明1、甲4発明2であるか、甲4発明1、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(15ページ21行~16ページ14行)。
(イ) ところが、甲4発明1における「結晶化率」が「1%未満」(「非晶質率」が「99%以上」)であるとしても、甲4発明1において、「XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られ」ないということはできないこと、更に、甲4発明2について検討しても事情は同じであることは、前記ア(イ)に記載したとおりであから、申立人の前記(ア)の主張は採用できない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、前記第4の1(3)の特許異議の申立て理由も理由がない。
(4) まとめ
したがって、特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての取消理由及び特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1) サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 一般的なサポート要件の判断基準に沿った検討
ア 始めに、前記(1)のサポート要件の判断手法にのっとって検討すると、本件特許明細書には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体封止材として用いる樹脂には、例えば球状シリカ質粉末をフィラーとして充填することで流動性の向上が図られている。このような球状シリカ質粉末の製造方法としては、シリカ質原料粉末を高温の火炎中に噴出させ、溶融させて微細球状シリカ質粉末を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示した製造方法により製造された従来の球状シリカには、結晶性シリカを含有しているが、この結晶性シリカについては、国際癌研究機関(IARC)において発癌性があるとの報告もなされている。そのため、従来の球状シリカは、半導体封止材の流動性向上を図るため粒径を小さくすると、その分、大気中に浮遊し易くなることから健康被害の懸念も高くなり、その取り扱いに注意が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、流動性に優れ、かつ従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法を提供することを目的とする。」
(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体封止材用球状シリカ質粉末は、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度が0.0[%]であり、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であることを特徴とする。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明による半導体封止材用球状シリカ質粉末と、その製造方法とによれば、半導体封止材の流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を提供できる。
・・・
【0019】
なお、結晶化度は、XRD法により得られたピークを解析し、当該ピークの面積によって結晶質成分と非晶質成分とを定量し、結晶質成分の面積が0.05%未満、または結晶質成分のピークがみられないとき、結晶化度が0.0[%]としている。ここでは、一例としてX線回折装置「RINT1500」(株式会社RIGAKU社製)を用いた測定結果を示す。」
イ 前記ア(ア)の記載によれば、本件特許に係る発明は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」に関するものであって、近年、半導体封止材として用いる樹脂には、球状シリカ質粉末をフィラーとして充填することで流動性の向上が図られており、このような球状シリカ質粉末の製造方法としては、シリカ質原料粉末を高温の火炎中に噴出させ、溶融させて微細球状シリカ質粉末を製造する方法が知られているのであるが、従来の球状シリカは、結晶性シリカを含有しており、この結晶性シリカについては、国際癌研究機関(IARC)において発癌性があるとの報告もなされているため、従来の球状シリカは、半導体封止材の流動性向上を図るため粒径を小さくすると、その分、大気中に浮遊し易くなることから健康被害の懸念も高くなり、その取り扱いに注意が必要となる、という課題(以下、「本件課題」という。)を有するものである。
ウ そして、前記ア(イ)の記載によれば、本件特許に係る発明は、XRD(X-ray diffraction)法により測定した結晶化度を0.0[%]とし、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下とすることで、半導体封止材の流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を提供できるものであり、ここで、結晶化度は、XRD法により得られたピークを解析し、当該ピークの面積によって結晶質成分と非晶質成分とを定量し、結晶質成分の面積が0.05%未満、または結晶質成分のピークがみられないとき、結晶化度を0.0[%]とするものである。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を、XRD法により得られたピークを解析し、当該ピークの面積によって結晶質成分と非晶質成分とを定量し、結晶質成分の面積が0.05%未満、または結晶質成分のピークがみられないものとし、更にレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50を50[μm]以下とすることで、半導体封止材の流動性を向上させることができ、さらに結晶性シリカによる健康被害の懸念もなく、従来よりも取り扱い易い半導体封止材用球状シリカ質粉末を提供することができ、本件課題を解決できることを理解することができる。
そして、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」を、XRD法により得られたピークを解析し、当該ピークの面積によって結晶質成分と非晶質成分とを定量し、結晶質成分の面積が0.05%未満、または結晶質成分のピークがみられないものとし、更にレーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50を50[μm]以下とすることは、本件発明1の、「半導体封止材用球状シリカ質粉末であって、XRD(X-ray diffraction)法により得られた結晶質成分のピークの面積が0.05%未満である、または結晶質成分のピークが見られず、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法により測定したメジアン径D50が50[μm]以下であ」る、との発明特定事項にほかならない。
オ 前記エによれば、当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解できるのであって、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえる。
(3) 特許異議申立理由について
申立人の前記第3の2の主張について検討すると、本件発明1は、「半導体封止材用球状シリカ質粉末」に係るものであるから、その粒径の下限値は、半導体封止材の流動性を損なわない範囲で通常用いられる範囲のものと解される。
また、前記(2)ア(ア)(段落【0002】、【0004】)の記載によれば、従来、半導体封止材として用いる樹脂には、微細球状シリカ質粉末をフィラーとして充填することで流動性の向上が図られていたのであり、半導体封止材の流動性向上を図るため、球状シリカの粒径を小さくしていたのであるが、本件発明は、そのように球状シリカの粒径を小さくすると、大気中に浮遊しやすくなることから健康被害の懸念も高くなり、その取り扱いに注意が必要となる、という本件課題を解決するものである。
すると、本件課題は、球状シリカの粒径を小さくして、半導体封止材の流動性向上を図ることを前提として、更に健康被害に関する本件課題を解決するものといえるから、本件発明1において、球状シリカの粒径を、半導体封止材の流動性を損なうほどに小さくすることは、そもそも想定されないものである。
これらのことからみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1における球状シリカの粒径が、半導体封止材の流動性を損なうほどに小さいものまで包含するとは理解しないから、本件発明1において「シリカ粉末」の粒径の下限値が特定されていないとしても、優れた流動性を有せず、本件課題を解決できない「半導体封止材用球状シリカ粉末」を含むものとはいえないので、申立人の前記主張は採用できない。
(4) 小括
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するので、前記第4の2の特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)についての特許異議の申立て理由は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立て理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700105