特許異議申立
2025-700493
ポリイミド、ポリイミド組成物、接着剤フィルム、積層体、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板
- 審判番号
- 2025-700493
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-064080
- 登録番号
- 7578408
- 請求日
- 2025年05月02日
- 審決日
- 2026年06月04日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
- 【権利者代理人】渡邊 和浩
- 【権利者代理人】田治米 登
- 【権利者代理人】田治米 惠子
- 【権利者代理人】弁理士法人田治米国際特許事務所
- 【異議申立人】田中 理紗
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 越本 秀幸
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1652.121-YAA(C08G) / P1652.537-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7578408号発明「ポリイミド、ポリイミド組成物、接着剤フィルム、積層体、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7578408号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4、5、〔6、21~32〕、〔7、33~44〕、〔8~20〕について訂正することを認める。
特許第7578408号の請求項1~4、6、7、9~44に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7578408号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年3月31日に出願された特願2020-64080号であって、令和6年10月28日にその特許権の設定登録(請求項の数20)がされ、同年11月6日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許の請求項1~4、6、7、9~20に係る特許に対して、令和7年5月2日に田中 理紗(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続は以下のとおりである。
令和7年 9月30日付け 取消理由通知
同年11月25日 意見書の提出(特許権者)
同年12月23日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和8年 2月20日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 3月 5日付け 手続補正指令(方式)
同年 同月13日 手続補正書(方式)の提出
同年 同月23日付け 訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
同年 4月24日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正の請求の趣旨
令和8年2月20日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7578408号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4、5、6、7、8、9~20、21~32、33~44について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(2)訂正事項
ア 訂正事項1
訂正前の請求項4に
「 下記の成分(A)及び(B);
(A)請求項1に記載のポリイミド、及び
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であるポリイミド組成物。」
と記載されているのを独立形式に改め、
「 下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、及び
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であるポリイミド組成物。」
に訂正する。
イ 訂正事項2
訂正前の請求項5に
「前記成分(A)のポリイミドが分子中にケトン基を有するポリイミドであり、さらに、下記成分(C);
(C)前記ケトン基と求核付加反応する官能基を有する架橋剤、
を含有する請求項4に記載のポリイミド組成物。」
と記載されているのを独立形式に改め、
「下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、及び
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが分子中にケトン基を有するポリイミドであり、かつ、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であり、
さらに、下記成分(C);
(C)前記ケトン基と求核付加反応する官能基を有する架橋剤、
を含有するポリイミド組成物。」
に訂正する。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項6に
「請求項1に記載のポリイミドを含有することを特徴とする接着剤フィルム。」
と記載されているのを独立形式に改めるとともに、接着剤フィルムの誘電正接に関する発明特定事項を追加し、
「テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であるポリイミドを含有するとともに、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される周波数10GHzでの誘電正接が0.0024以下、かつ、周波数20GHzでの誘電正接が0.0018以下であることを特徴とする接着剤フィルム。」
に訂正する。
エ 訂正事項4
訂正前の請求項7に
「下記の成分(A)及び(B);
(A)請求項1に記載のポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内である接着剤フィルム。」
と記載されているのを独立形式に改め、
「 下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上である接着剤フィルム。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
訂正前の請求項8に
「 下記の成分(A’)及び(B);
(A’)請求項1に記載のポリイミドであって分子中にケトン基を有するものと、該ケトン基に対し求核付加反応する官能基を有する架橋剤と、の反応により架橋構造を形成している架橋ポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A’)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内である接着剤フィルム。」
と記載されているのを独立形式に改め、
「 下記の成分(A’)及び(B);
(A’)ポリイミドであって分子中にケトン基を有するものと、該ケトン基に対し求核付加反応する官能基を有する架橋剤と、の反応により架橋構造を形成している架橋ポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A’)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記ポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上である接着剤フィルム。」
に訂正する。
なお、請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~20も同様に訂正する。
カ 訂正事項6
訂正前の請求項9に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
に訂正する。
キ 訂正事項7
訂正前の請求項10に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
に訂正する。
ク 訂正事項8
訂正前の請求項11に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
に訂正する。
ケ 訂正事項9
訂正前の請求項12に
「 前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところを、
「 前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
に訂正する。
なお、請求項12の記載を直接引用する請求項16も同様に訂正する。
コ 訂正事項10
訂正前の請求項13に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
に訂正する。
なお、請求項13の記載を直接引用する請求項16も同様に訂正する。
サ 訂正事項11
訂正前の請求項14に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
に訂正する。
なお、請求項14の記載を直接引用する請求項16も同様に訂正する。
シ 訂正事項12
訂正前の請求項15に
「前記接着剤層が請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところを、
「前記接着剤層が請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
に訂正する。
なお、請求項15の記載を直接引用する請求項16も同様に訂正する。
ス 訂正事項13
訂正前の請求項17に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
に訂正する。
セ 訂正事項14
訂正前の請求項18に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
に訂正する。
ソ 訂正事項15
訂正前の請求項19に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
に訂正する。
タ 訂正事項16
訂正前の請求項20に
「 前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
とあるところを、
「 前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
に訂正する。
チ 訂正事項17
訂正前の請求項9に
「 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
と記載し、新たに請求項21とする。
ツ 訂正事項18
訂正前の請求項10に
「 カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
と記載し、新たに請求項22とする。
テ 訂正事項19
訂正前の請求項11に
「 接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
と記載し、新たに請求項23とする。
ト 訂正事項20
訂正前の請求項12に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、
を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項24とする。
ナ 訂正事項21
訂正前の請求項13に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、
前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項25とする。
ニ 訂正事項22
特許請求の範囲の請求項14に
「 第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからな
ることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項26とする。
ヌ 訂正事項23
訂正前の請求項15に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項27とする。
ネ 訂正事項24
訂正前の請求項16に
「 請求項12から15のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。」
とあるところ、引用する請求項12~15のうち、請求項6を引用するものについて
「 請求項24から27のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。」
と記載し、新たに請求項28とする。
ノ 訂正事項25
訂正前の請求項17に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項29とする。
ハ 訂正事項26
訂正前の請求項18に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからな
ることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項30とする。
ヒ 訂正事項27
訂正前の請求項19に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項31とする。
フ 訂正事項28
訂正前の請求項20に
「 積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
とあるところ、請求項6を引用するものについて
「 積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
と記載し、新たに請求項32とする。
ヘ 訂正事項29
訂正前の請求項9に
「 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。」
と記載し、新たに請求項33とする。
ホ 訂正事項30
訂正前の請求項10に
「 カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。」
と記載し、新たに請求項34とする。
マ 訂正事項31
訂正前の請求項11に
「 接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。」
と記載し、新たに請求項35とする。
ミ 訂正事項32
訂正前の請求項12に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項36とする。
ム 訂正事項33
訂正前の請求項13に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項37とする。
メ 訂正事項34
訂正前の請求項14に
「 第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項38とする。
モ 訂正事項35
訂正前の請求項15に
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。」
と記載し、新たに請求項39とする。
ヤ 訂正事項36
訂正前の請求項16に
「 請求項12から15のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。」
とあるところ、引用する請求項12~15のうち、請求項7を引用するものについて
「 請求項36から39のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。」
と記載し、新たに請求項40とする。
ユ 訂正事項37
訂正前の請求項17に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項41とする。
ヨ 訂正事項38
訂正前の請求項18に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項42とする。
ワ 訂正事項39
訂正前の請求項19に
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。」
と記載し、新たに請求項43とする。
ヲ 訂正事項40
訂正前の請求項20に
「 積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項6から8のいずれか1項に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
とあるところ、請求項7を引用するものについて
「 積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
と記載し、新たに請求項44とする。
(3)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項4、5において、請求項5は請求項4を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項4、5に対応する訂正後の請求項4、5は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
同様に、訂正前の請求項6~20において、請求項9~20は、それぞれ直接又は間接的に請求項6~8を引用しているものであって、訂正事項3~5によってそれぞれ記載が訂正される請求項6~8に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6~20に対応する訂正後の請求項6、7、8~20、21~32、33~44は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(4)別の訂正単位とする求めについて
訂正後の請求項4、5、6、7、8、9~20、21~32、33~44については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位することを求めている。
しかしながら、請求項9~20は、請求項8を直接又は間接的に引用しているから、訂正後の請求項9~20を別の訂正単位として扱うことはできず、訂正後の請求項8及び9~20を別の訂正単位として認める。
同様に、請求項21~32は、請求項6を直接又は間接的に引用しているから、訂正後の請求項21~32を別の訂正単位として扱うことはできず、訂正後の請求項6及び21~32を別の訂正単位として認める。
さらに、請求項33~44は、請求項7を直接又は間接的に引用しているから、訂正後の請求項33~44を別の訂正単位として扱うことはできず、訂正後の請求項7及び33~44を別の訂正単位として認める。
そして、訂正後の請求項4、5については、別の訂正単位とする求めを認める。
したがって、上記別の訂正単位とする求めのうち、訂正後の請求項4、5、〔6、21-32〕、〔7、33-44〕、〔8-20〕について、別の訂正単位とする求めを認める。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記アに記載したとおり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項5が、請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用するものであるところ、請求項1及び請求項4を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、上記アに記載したとおり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項3は、訂正前の請求項6が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
(イ)訂正事項3のうち「23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される周波数10GHzでの誘電正接が0.0024以下、かつ、周波数20GHzでの誘電正接が0.0018以下である」とする訂正は、接着剤フィルムの物性である誘電正接に関する発明特定事項の追加によって特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
<上記ア(ア)について>
訂正事項3は、上記ア(ア)に記載したとおり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
<上記ア(イ)について>
訂正事項3は、訂正前の請求項6に係る接着剤フィルムの発明を「23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される周波数10GHzでの誘電正接が0.0024以下、かつ、周波数20GHzでの誘電正接が0.0018以下である」との発明特定事項によって限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
そして、当該発明特定事項は、本件特許の明細書【0111】及び【0112】の記載並びに【0179】及び【表1】の実施例における誘電正接の値を根拠として、誘電正接を特定するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正後の請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項21~32についても同様である。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項7が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、上記アに記載したとおり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正後の請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項33~44についても同様である。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項8が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、上記アに記載したとおり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正後の請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~20についても同様である。
(6)訂正事項6~16
ア 訂正の目的について
訂正事項6~16は、訂正前の請求項9~15、17~20が請求項1の記載を引用する請求項6~8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1及び請求項6、7との間の引用関係を解消して、訂正後の請求項8のみを引用する記載に改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項6~16は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6~16は、引用する請求項の数を減少するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(7)訂正事項17~23、25~28
ア 訂正の目的について
訂正事項17~23、25~28は、訂正前の請求項9~15、17~20が請求項1の記載を引用する請求項6~8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1及び請求項7、8との間の引用関係を解消して、訂正後の請求項6を引用する新たな請求項21~27、29~32とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項17~23、25~28は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項17~23、25~28は、引用する請求項の数を減少するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(8)訂正事項24
ア 訂正の目的について
訂正事項24は、訂正前の請求項16が、請求項1の記載を引用する請求項6~8のいずれかの記載を引用する請求項12~15のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1及び請求項7、8との間の引用関係を解消して、訂正後の請求項6を引用する請求項24~27のいずれかを引用する新たな請求項28とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項24は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項24は、引用する請求項の数を減少するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(9)訂正事項29~35、37~40
ア 訂正の目的について
訂正事項29~35、37~40は、訂正前の請求項9~15、17~20が請求項1の記載を引用する請求項6~8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1及び請求項6、8との間の引用関係を解消して、訂正後の請求項7を引用する新たな請求項33~39、41~44とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項29~35、37~40は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項29~35、37~40は、引用する請求項の数を減少するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(10)訂正事項36
ア 訂正の目的について
訂正事項36は、訂正前の請求項16が、請求項1の記載を引用する請求項6~8のいずれかの記載を引用する請求項12~15のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1及び請求項6、8との間の引用関係を解消して、訂正後の請求項7を引用する請求項36~39のいずれかを引用する新たな請求項40とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項36は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項36は、引用する請求項の数を減少するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
上記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~4、6、7、9~20に係る特許に対して申立てられたものであるから、これらに対応する訂正後の請求項1~4、6、7、9~20に係る発明及び訂正前の請求項6、7を引用する訂正後の請求項21~44には独立特許要件は課されない。
また、訂正前の請求項5、8に係る発明についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する訂正であるため、訂正後の請求項5、8に係る発明には同法同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4、5、〔6、21~32〕、〔7、33~44〕、〔8~20〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~44に係る発明(以下「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~44に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
また、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であることを特徴とするポリイミド。
【請求項2】
前記ダイマージアミン組成物のゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定におけるクロマトグラムの面積パーセントで、前記(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントが3%以下である請求項1に記載のポリイミド。
【請求項3】
前記クロマトグラムの面積パーセントで、前記(b)成分及び前記(c)成分の合計が、4%以下である請求項2に記載のポリイミド。
【請求項4】
下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、及び
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であるポリイミド組成物。
【請求項5】
下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、及び
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが分子中にケトン基を有するポリイミドであり、かつ、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であり、
さらに、下記成分(C);
(C)前記ケトン基と求核付加反応する官能基を有する架橋剤、
を含有するポリイミド組成物。
【請求項6】
テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であるポリイミドを含有するとともに、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される周波数10GHzでの誘電正接が0.0024以下、かつ、周波数20GHzでの誘電正接が0.0018以下であることを特徴とする接着剤フィルム。
【請求項7】
下記の成分(A)及び(B);
(A)ポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記成分(A)のポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上である接着剤フィルム。
【請求項8】
下記の成分(A’)及び(B);
(A’)ポリイミドであって分子中にケトン基を有するものと、該ケトン基に対し求核付加反応する官能基を有する架橋剤と、の反応により架橋構造を形成している架橋ポリイミド、
及び、
(B)有機ホスフィン酸の金属塩、
を含有するとともに、前記(A’)成分に対する前記(B)成分の重量比が10~70重量%の範囲内であり、
前記ポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件a~d;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上である接着剤フィルム。
【請求項9】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。
【請求項10】
カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項11】
接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。
【請求項12】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項13】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、
前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項14】
第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項15】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。
【請求項17】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項18】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項19】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項20】
積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項8に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。
【請求項21】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。
【請求項22】
カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項23】
接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。
【請求項24】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項25】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項26】
第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項27】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項28】
請求項24から27のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。
【請求項29】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項30】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項31】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項32】
積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項6に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。
【請求項33】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする積層体。
【請求項34】
カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項35】
接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。
【請求項36】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項37】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項38】
第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項39】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項40】
請求項36から39のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。
【請求項41】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項42】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項43】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項44】
積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項7に記載の接着剤フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。」
第4 特許異議申立書に記載した申立理由と当審において通知した取消理由
1 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)
請求項1~4、6、7、9~20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第11号証に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~4、6、7、9~20係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
請求項1~4、6、7、9~20に係る発明についての特許は、以下の点で特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件明細書において、本件発明の課題を解決できるポリイミドは、実施例で用いられたケトン基を有するベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用い、得られたポリイミドにドデカン二酸ジヒドラジドを反応させて架橋させたものであるところ、ポリマーにおいて架橋することでポリマー鎖の結合が強固になり、得られるフィルムの強度や耐久性が向上すること、及び誘電特性はポリマー分子の極性が直接関係する物理量であるので、架橋剤がもたらす特定の分子構造が誘電特性に影響を与え、架橋剤の種類及び使用量により誘電特性が変わることは、当業者の技術常識であるから、芳香族カルボン酸のケトン基を特定量の特定のジヒドラジドで架橋させたポリイミド以外のポリイミドにおいて、実施例の特定の架橋ポリイミドと同様に本件発明の効果を奏することを推認することができない。
(3)申立理由3(明確性)
請求項2、3に係る発明についての特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件発明1は、ダイマージアミン組成物中の(a)成分は97.9重量%以上であり、本件発明2は、クロマトグラムの面積パーセントにおいて(b)成分は3%以下であり、本件発明3は、(b)成分と(c)成分の合計が4%以下であることから、本件発明2及び3におけるダイマージアミン組成物は、各成分の合計量が100%を超える組成を含んでおり、発明の技術的範囲を確定することができない。
2 申立人が提出した証拠方法
(1)申立書に添付した証拠方法
甲第1号証:特開2019-119731号公報
甲第2号証:特開2018-41961号公報
甲第3号証:特開2019-172989号公報
甲第4号証:特開2018-174286号公報
甲第5号証:特開平11-228694号公報
甲第6号証:特開平10-45910号公報
甲第7号証:特開2015-127370号公報
甲第8号証:特開2019-67929号公報
甲第9号証:特開2018-170417号公報
甲第10号証:特開2009-241326号公報
甲第11号証:特開2013-1730号公報
甲第12号証:大野大典、「電子材料向け熱硬化性樹脂の開発動向」、2017年、ネットワークポリマー Vol.38 No.6、277-284頁
甲第13号証:佐瀬茂雄他、「フェノール変性シアネートエステル樹脂の架橋構造と誘電特性」、2001年、ネットワークポリマー Vol.22 No.4、2-9頁
(2)令和8年4月24日提出の意見書に添付した証拠方法
甲第14号証:Ririka Sawada et al.、Thermal, Optical, and Dielectric Properties of Bio-based Polyimides Derived from an Isosorbide-containing Dianhydride and Diamines with Long Alkyl Chains、Journal of Photopolymer Science and Technology、2024年11月5日、Vol.37, No.5、P.507-516
甲第15号証:Aluminum Diethylphosphinate Flame Retardant(Mflam LX-15): A Down-to-Earth Look、LIWEI CHEMICAL社ホームページ(https://www.china-phosphate.com/knowledge/information/aluminum-diethylphosphinate-flame-retardant-mflam-lx-15-chemical-buy-supplier-manufacturer-factory-price.html)、出力日:令和8年4月22日
以下「甲第1号証」等を、番号にしたがって、「甲1」等という。
3 取消理由の概要
当審において令和7年12月23日付けで通知した取消理由通知書(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
請求項1~3、6、9~20に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(サポート要件)
請求項1~4、6、7、9~20に係る発明についての特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件明細書の実施例には、ポリイミドを形成するためのテトラカルボン酸無水物としてケトン基を有する3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とドデカン二酸ジヒドラジドからなる架橋剤を用いることで、架橋構造を形成したポリイミドのものしか記載されていないところ、ポリマーにおいて架橋することでポリマー鎖の結合が強固になり、得られるフィルムの強度や耐久性が向上すること、及び誘電特性はポリマー分子の極性が直接関係する物理量であるので、架橋剤がもたらす特定の分子構造が誘電特性に影響を与え、架橋剤の種類及び使用量により誘電特性が変わることは、本件特許出願時の技術常識であるから、低い誘電正接という課題は、ポリイミドを形成するためのテトラカルボン酸無水物としてケトン基を有する3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とドデカン二酸ジヒドラジドからなる架橋剤を用いたポリイミドの場合に確認されているだけであって、それ以外のポリイミドにおいて、本件発明の課題を同様に解決できるとは認められない。
第5 当審の判断
当審合議体は、取消理由1、2及び申立理由1~3によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 取消理由1及び申立理由1について
取消理由1と申立理由1は甲1を主引例とする進歩性についてのものであるので、併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び発明
ア 甲1には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物であって、
1H-NMRにより定量される脂肪族二重結合が、1級アミノメチル基(NH2CH2-)におけるCH2基(-CH2-)1モルに対して1.0モル%以下であることを特徴とするダイマージアミン組成物。
【請求項2】
前記ダイマージアミン組成物に対するゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定によるクロマトグラムの面積パーセントで、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
における前記成分(c)が2%以下である請求項1に記載のダイマージアミン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイマージアミン組成物の製造方法であって、
ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを含有する原料ダイマージアミン組成物に対して、脂肪族二重結合の含有量を低減する処理を行うことにより、前記ダイマージアミン組成物を得ることを特徴とする、ダイマージアミン組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリイミドをフィルム化してなる樹脂フィルムであって、
前記ポリイミドが、テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、請求項1又は2に記載のダイマージアミン組成物を40モル%以上含有するジアミン成分と、を反応させてなるものであり、かつ、
厚みが30μmであるとき、以下のi)~iii)の条件;
i)波長400nmの光の透過率が70%以上であること、
ii)YI値が5以下であること、
iii)全光線透過率(T.T.)が90%以上であること
を満たすことを特徴とする樹脂フィルム。」
「【0003】
また、電子機器の高機能化の更なる進展により、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。そのため、今後はFPCにおいても、伝送損失の低減が重要となる。高周波化に対応するFPCや接着剤が求められる。
【0004】
ところで、ポリイミドを主成分とする接着層に関する技術として、ダイマージアミンを含むジアミン成分を原料とするポリイミドと、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物と、を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂を、カバーレイフィルム等の接着剤層に適用することが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、ジアミン成分としてダイマージアミンを用いるポリイミドと、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と、架橋剤とを併用した樹脂組成物を、銅張積層板に適用することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ダイマー酸は、例えば大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸及びこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等を原料に用いてディールス-アルダー反応させて得られる二量体化脂肪酸である(例えば、特許文献3)。ダイマー酸を含む多塩基酸化合物は、原料の脂肪酸や三量体以上の脂肪酸の混合物として得られることが知られている。そのため、市販されているダイマージアミンは、実際には、ジアミン成分以外に、その原料である脂肪酸に由来するモノアミン、トリアミンなどを含有する混合物である。なお、このような混合物の状態のものを、本発明では「ダイマージアミン組成物」と表現することがある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジアミン成分として市販のダイマージアミンを使用してポリイミドの樹脂フィルムを製造する場合、フィルムの透明性が低下したり、着色が生じたりする、という問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、ダイマージアミンを使用しながら、透明性が高く、着色の程度が低い樹脂フィルムを提供することである。」
「【0018】
本実施の形態のダイマージアミン組成物は、下記の成分(a)を含有するとともに、成分(b)及び(c)の量が制御されていることが好ましい。
成分(a)は、ダイマージアミンである。成分(a)のダイマージアミンは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。
【0019】
本実施の形態のダイマージアミン組成物は、原料ダイマージアミン組成物に対する分子蒸留等の精製方法によって、(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものであることがよい。成分(a)のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマージアミン組成物のすべて(100重量%)が、成分(a)のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。
【0020】
成分(b)は、炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物である。炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物は、ダイマー酸の原料に由来する炭素数10~20の範囲内にある一塩基性不飽和脂肪酸、及びダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数21~40の範囲内にある一塩基酸化合物の混合物である。モノアミン化合物は、これらの一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。」
「【0022】
成分(c)は、炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物である(但し、前記ダイマージアミンを除く)。炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物は、ダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数41~80の範囲内にある三塩基酸化合物を主成分とする多塩基酸化合物である。また、炭素数41~80のダイマー酸以外の重合脂肪酸を含んでもよい。アミン化合物は、これらの多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。」
「【0026】
ダイマージアミン組成物は、GPC測定によって得られるクロマトグラムの面積パーセントで、成分(c)が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下がよい。このような範囲にすることで、ダイマージアミン組成物中の脂肪族二重結合を効果的に低減できる。なお、成分(c)は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0027】
また、成分(b)のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の低下を抑制することができ、更にテトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分の仕込みのモル比の範囲を広げることができる。なお、成分(b)は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0028】
また、成分(b)及び(c)の合計が4%以下、好ましくは4%未満がよい。成分(b)及び(c)の合計を4%以下とすることで、ダイマージアミン組成物中の脂肪族二重結合を効果的に低減できるとともに、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。」
「【0030】
二重結合低減処理前の原料ダイマージアミン組成物は、市販品での入手が可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。
【0031】
[ポリイミドの製造]
次に、本実施の形態のダイマージアミン組成物を用いるポリイミドの製造方法について説明する。ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させて得られる前駆体のポリアミド酸をイミド化することによって得られる。
【0032】
ポリイミドの製造に使用可能なテトラカルボン酸無水物としては、例えば、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、4,4’- (ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート、2,2‘-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の酸二無水物が挙げられる。これらの中でも、透明性が高く、着色の程度が低いポリイミドを製造する観点から、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート、2,2‘-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの酸二無水物が好ましい。また、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を使用する場合は、分子骨格に存在するケトン基と、上記の成分(b)又は(c)のアミノ基が反応してC=N結合を形成する場合があり、高分子量体のポリイミドが容易に得られるので好ましい。
【0033】
ジアミン成分としては、その一部分又は全部として本実施の形態のダイマージアミン組成物を使用できる。本実施の形態のダイマージアミン組成物を、全ジアミン成分に対し、40モル%以上、好ましくは60~100モル%使用することによって、ポリイミドから得られる樹脂フィルムの透明性を高め、着色の程度を低下させ、視認性を改善することができる。さらに、保存安定性や回路配線間への充填性も改善することができる。全ジアミン成分に対するダイマージアミン組成物の量が40モル%未満では、樹脂フィルムの透明性を高める効果が十分に得られず、さらに、保存安定性や回路配線間への充填性を改善する効果も十分に得られない。」
「【0038】
ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~200,000の範囲内が好ましく、この範囲内であれば、ポリイミドの重量平均分子量の制御が容易となる。また、例えばFPC用の接着剤として適用する場合、ポリイミドの重量平均分子量は、40,000~150,000の範囲内がより好ましい。ポリイミドの重量平均分子量が40,000未満である場合、フロー耐性が悪化する傾向となる。一方、ポリイミドの重量平均分子量が150,000を超えると、過度に粘度が増加して溶剤に不溶になり、塗工作業の際に接着層の厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0039】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムは、テトラカルボン酸無水物成分と、全ジアミン成分に対し、本実施の形態のダイマージアミン組成物を40モル%以上、好ましくは60~100モル%含有するジアミン成分と、を反応させてなるポリイミドから形成された樹脂フィルムである。本実施の形態の樹脂フィルムは、厚みが30μmであるとき、以下のi)~iii)の条件を満たす。」
「【0043】
本実施の形態の樹脂フィルムの形態は、特に限定されるものではなく、フィルム(シート)であってもよく、例えば、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの基材に積層された状態であってもよい。
【0044】
また、樹脂フィルムの厚みは、使用目的に応じて適宜設定できるが、例えばFPCの接着剤層に適用する場合は、接着性を確保するため、好ましくは1~100μmの範囲内、より好ましくは5~50μmの範囲とすることができる。」
「【0046】
本実施の形態の樹脂フィルムは、保存安定性や回路配線間への充填性が改善されているため、例えば電子機器などにおける絶縁樹脂層、接着層、保護層など各種の用途に利用可能である。ダイマージアミンの重要な特性として、ポリイミドに低弾性率、柔軟性、接着性を付与できることや、ポリイミドの誘電特性の改善(低誘電率化、低誘電正接化)が挙げられるが、ダイマージアミン組成物として、脂肪族二重結合の量が低減されたものを使用しても、これらの特性はほとんど影響を受けないことが確認されている。従って、本実施の形態の樹脂フィルムは、例えばFPC等の回路基板、カバーレイフィルム等における接着剤層や、多層回路基板におけるボンディングシートなどの用途に好ましく使用できる。
また、本実施の形態の樹脂シートは、透明性に優れており、かつ、低弾性率であり残留応力を抑制できるため、例えば、有機EL、液晶等の画像表示装置におけるタッチパネル材料、TFT基板材料、透明電極基板材料、薄膜太陽電池等の受光デバイスなどとしての利用も可能である。
【0047】
[金属張積層板]
金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層と、を有する。このような金属張積層板において、絶縁樹脂層は、単層又は複数層のポリイミド層を有する。そして、ポリイミド層の少なくとも1層(好ましくは接着層)が、本実施の形態の樹脂フィルムと同様の構成を有していればよく、好ましくは、絶縁樹脂層と金属層との接着性を高めるため、絶縁樹脂層における金属層に接する接着層が、本実施の形態の樹脂フィルムと同様の構成を有することがよい。金属張積層板における金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する回路基板における配線層の材質も金属層と同様である。金属張積層板の好ましい具体例としては、例えば銅張積層板(CCL)などを挙げることができる。」
「【0051】
[回路基板]
回路基板は、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層上に形成された配線層と、を有する。本実施の形態の回路基板において、絶縁樹脂層は、単層又は複数層のポリイミド層を有することができる。この場合、ポリイミド層の少なくとも1層(好ましくは接着層)が、本実施の形態の樹脂フィルムと同様の構成を有していればよい。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるため、絶縁樹脂層における配線層に接する接着層が、本実施の形態の樹脂フィルムと同様の構成を有することが好ましい。」
「【0055】
[GPC及びクロマトグラムの面積パーセントの算出]
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);」
「【0061】
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。なお、成分(b)、成分(c)の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
【0062】
[DDA1~5]
DDA1:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a);96.1重量%、成分(b):2.4%、成分(c);1.5%)
DDA2:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a);97.8重量%、成分(b):0.3%、成分(c);1.9%)
DDA3:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a);98.5重量%、成分(b):0.2%、成分(c);1.3%)
DDA4:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a);98.8重量%、成分(b):0.2%、成分(c);1.0%)
DDA5:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a);98.9重量%、成分(b):0.2%、成分(c);0.9%)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
なお、蒸留精製は、減圧蒸留で行った。
【0063】
DDA1~5の脂肪族二重結合割合及び芳香環割合と、光透過率(400nm透過率)及びb*及びYIを算出すると以下の表1に示す通りとなる。
【0064】
【表1】
[図:0001439195000001.jpg]
【0065】
[実施例1]
1000mlのセパラブルフラスコに、56.22gのBTDA(0.174モル)、93.78gのDDA1(0.176モル)、210gのNMP及び140gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、140gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分;30重量%、重量平均分子量;63,300)を調製した。得られたポリイミド溶液1を離型処理されたPETフィルムの片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、樹脂フィルム1(厚さ;22μm)を調製した。樹脂フィルム1の厚み、光透過率(400nm透過率)、b*、YI、全光線透過率(T.T.)、HAZE(濁度)を表2に示す。
【0066】
[実施例2~5]
表1に示すDDAを使用した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液2~5を調製した。ポリイミド溶液2~5を用いて得られた樹脂フィルム2~5の厚み、光透過率(400nm透過率)、b*、YI、全光線透過率(T.T.)、HAZE(濁度)を表2に示す。
【0067】
【表2】
[図:0001439195000002.jpg]
【0068】
[DDA6~8]
DDA6:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075(成分(a);97.0重量%、成分(b):0.7%、成分(c);2.3%)DDA7:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075(成分(a);95.8重量%、成分(b):0.2%、成分(c);4.0%)DDA8:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075(成分(a);97.3重量%、成分(b):0.2%、成分(c);2.5%)
【0069】
DDA6~8の脂肪族二重結合割合及び芳香環割合と、光透過率(400nm透過率)及びb*及びYIを算出すると、表3に示す通りとなる。
【0070】
【表3】
[図:0001439195000003.jpg]
【0071】
[比較例1~3]
表3に示すDDA6~8を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液6~8を調製した。ポリイミド溶液6~8を用いて得られた樹脂フィルム6~8の厚み、光透過率(400nm透過率)、b*、YI、全光線透過率(T.T.)、HAZE(濁度)を表4に示す。
【0072】
【表4】
[図:0001439195000004.jpg]
【0073】
表1及び表2と、表3及び表4との比較から、実施例1~5では、脂肪族二重結合の割合が低減されたダイマージアミン組成物を使用することによって、透明性が高く、着色の程度が低く、視認性が良好なポリイミド製の樹脂フィルムが得られることが確認された。一方、脂肪族二重結合の割合を制御していないジアミン成分を使用した比較例1~3では、原料自体のYI値が低いにもかかわらず、実施例1~5に比べて、樹脂フィルムの透明性が低く、着色が濃くなって、視認性に劣る結果となった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、【0065】に「実施例1」として、DDA1とBTDAとからポリアミド酸溶液を得、更にイミド化してポリイミド溶液1を得たのち、離型処理されたPETフィルム上に塗布、乾燥して樹脂フィルム1を調製していることが記載されており、【0066】に「表1に示すDDAを使用した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液2~5を調製した。」と記載されていることから、「実施例5」として、表1中のDDA5を用い、同様にポリイミド溶液5、樹脂フィルム5を製造することが記載されているといえる。
また、実施例に用いられる各成分については、【0055】、【0061】、【0062】に記載されている。
甲1の実施例5は、ポリイミド溶液5を製造しているから、その溶液中のポリイミドに着目すると、甲1には次の発明が記載されているといえる。
「1000mlのセパラブルフラスコに、56.22gのBTDA(0.174モル)、93.78gのDDA5(0.176モル)、210gのNMP及び140gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して調製したポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、140gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液5に含まれるポリイミド。
上記略号及び成分(a)~(c)は以下の化合物を示し、成分(b)、成分(c)の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA5:クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(成分(a):98.9重量%、成分(b):0.2%、成分(c):0.9%)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く)」(以下「甲1ポリイミド発明」という。)
(2)甲2に記載された事項
甲2には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(1)接着面の十点平均粗さ(Rz)が0.1~1.5μmの銅箔と、
(2)芳香族テトラカルボン酸無水物(a1)及びダイマージアミン(a2)を含む反応成分(α)の反応物である酸無水物基末端ポリイミド(A)、架橋剤(B)、並びに有機溶剤(C)を含む接着剤(2’)の熱硬化物である厚み2~5μmの接着層と、
(3)100℃~200℃における熱膨張係数が4~30ppm/℃の絶縁フィルムとを含む、フレキシブルプリント配線板用銅張積層板。」
「【0007】
本発明が解決しようとする課題は、Rzが1.5μm以下の低粗度銅箔を用いた場合であっても薄膜の接着層によって優れた接着性(銅箔の引き剥がし強さ(N/mm))を発揮し、かつ誘電率及び誘電正接が低い新規な銅張積層板の提供にある。」
「【0036】
(A)成分の数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう。以下、同様。)は特に限定されない。(A)成分の数平均分子量の上限の例は、50000、45000、40000、35000、30000、25000、20000、15000、10000、6000等が挙げられ、下限の例は、45000、40000、35000、30000、25000、20000、15000、10000、6000、5000等が挙げられる。(A)成分の数平均分子量の上限及び下限の値は上記値に限定されない。(A)成分の数平均分子量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、接着性、耐熱接着性、フローコントロール性及び低誘電特性のバランスより、(A)成分の数平均分子量が5000~50000程度が好ましい。
【0037】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう。以下、同様。)は特に限定されない。(A)成分の重量平均分子量(Mw)の上限の例は、150000、125000、100000、75000、50000、25000、15000等が挙げられ、下限の例は、125000、100000、75000、50000、25000、15000、10000等が挙げられる。(A)成分の重量平均分子量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、接着性、耐熱接着性、フローコントロール性及び低誘電特性のバランスより、(A)成分の重量平均分子量が、10000~150000程度が好ましい。
【0038】
(A)成分の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。(A)成分の分子量分布(Mw/Mn)の上限の例は、3.0、2.5、2.0、1.6等が挙げられ、下限の例は、2.5、2.0、1.6、1.5等が挙げられる。(A)成分の分子量分布の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、(A)成分の分子量分布(Mw/Mn)は1.5~3.0程度が好ましい。」
(3)本件発明1について
ア 本件発明1の技術的意義
本件明細書の【0081】~【0083】には、重量平均分子量(Mw)を25,000~100,000の範囲内にすることによって、フィルムにしたときの引き裂き強度及び接着強度を向上させ得るとともに、ワニスの保存安定性を高くすることができること、数平均分子量(Mn)を15,000~32,000の範囲内にすることによって、ポリイミド分子鎖における高極性の末端の増加を抑え、比誘電率及び誘電正接の上昇を抑制することができること、Mw/Mnの比を1.8以上とすることによって、Mnが同程度であっても、分散度が高いほど高分子量体の頻度が多くなることから、分子の絡み合いによる運動抑制が高まり、低誘電正接化、引き裂き強度の向上などが図られること、上記比が3.4以下とすることによって、ある程度の分散度を確保しつつMnとのバランスを図ることにより、ポリイミド分子鎖における高極性の末端の増加を抑え、比誘電率及び誘電正接の上昇を抑制することができると記載されている。さらに、本件明細書の実施例をみると、Mw、Mn及びMw/Mnの全てを満たす実施例1~5では、誘電正接について、5GHzでは0.0025~0.0028、10GHzでは0.0021~0.0024、20GHzでは0.0015~0.0018である一方、Mw、Mn及びMw/Mnの全てを満たさない参考例1と、Mn及びMw/Mnを満たさない参考例2では、誘電正接について、5GHzでは0.0030、0.0031、10GHzでは0.0025、0.0027、20GHzでは0.0019、0.0020となっており、上記実施例1~5が、上記参考例1、2よりも、低い誘電正接であることが確認されている。
これらの上記記載を総合すると、ポリイミドの誘電正接を低下させるためには、ポリイミドのMwの数値範囲を固定させた上で、Mn、Mn/Mwを設定する、すなわちポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnの全てを満たすことで、ポリイミドの誘電正接が低下するという技術的意義を有することがいえる。
ここで、一般的にポリマーにおいて架橋することでポリマー鎖の結合が強固になり、得られるフィルムの強度や耐久性が向上すること、及び、架橋剤がもたらす特定の分子構造が誘電特性に影響を与え、架橋剤の種類及び使用量により誘電特性が大きく変わることは、本件特許の出願前からの技術常識(甲12の278頁左欄7行~右欄10行、甲13の3.2 フェノール変性シアネートエステル樹脂硬化物の誘電特性、図3~4を参照)であるところ、本件明細書の実施例では、この架橋に関し、甲12、甲13とは異なり、ポリイミドを形成するためのテトラカルボン酸無水物としてケトン基を有する3,3‘,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とドデカン二酸ジヒドラジドからなる架橋剤を用いたものであって、上記技術常識が、本件発明にどの程度影響を与えるのか把握できない。
しかも、特許権者が令和8年2月20日提出の意見書に添付して提出した乙第1号証(以下「乙1」という。)によると、本件明細書の実施例で用いられた架橋剤であるN-12(ドデカン二酸ジヒドラジド)の有無により得られるポリイミドの誘電正接に有意な差が認められず、さらに架橋剤の含有量をポリイミドの固形分100重量部に対して、3.5重量部~12重量部の範囲で変化させても、同様に有意な差が認められなかったことが証明されている。
そうすると、上記した架橋剤による影響についての技術常識はポリマー分野における一般論としては認められるものの、本件発明1のポリイミドに対する影響は小さく、それに対して、ポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnを特定の範囲にすることによる影響が大きいといえる。
したがって、本件発明1は、ポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnについて、
「b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;」
という特定事項を満たすことで、ポリイミドの誘電正接が低下するという技術的意義を有すると認められる。
イ 対比
本件発明1と甲1ポリイミド発明を対比する。
甲1ポリイミド発明の「BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物」、「ダイマージアミン」はそれぞれ、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物成分」、ジアミン成分に相当し、甲1ポリイミド発明の「ポリイミド」は、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミド」であるといえる。
さらに、甲1ポリイミド発明の「DDA5」は「成分(a):98.9重量%、成分(b):0.2%、成分(c):0.9%」であり、「成分(a)~(c)は
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);」であるから、本件発明1の「ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上である」を満たすから、甲1ポリイミド発明の「DDA5」は本件発明1の「ダイマージアミン組成物」に相当する。
また、甲1ポリイミド発明の「ポリイミド」の「DDA5」の成分(a)であるダイマージアミンは、甲1の【0018】に記載の「成分(a)のダイマージアミンは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換されてなるジアミンを意味する」から、本件発明1の「ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミン」に相当する。そして、甲1ポリイミド発明の「ポリイミド」は、その製造方法(【0065】)からみて、ジアミン成分を含むのは「DDA5」のみであるので、ポリイミドの全ジアミン残基に対し、ダイマージアミン組成物である「DDA5」に由来するジアミン残基は100モル%である。
そうすると、甲1ポリイミド発明は、本件発明1の「a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること」を満たすことは明らかである。
したがって、両者は
「テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、下記の条件;
a)全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を40モル%以上含有すること;
を満たすとともに、
前記ダイマージアミン組成物が、下記成分(a)~(c);
(a)ダイマージアミン;
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
について、前記(a)成分の含有量が、前記ダイマージアミン組成物に対し、97.9重量%以上であることを特徴とするポリイミド。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「ポリイミド」について、本件発明1においては、
「b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること;
c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること;
d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること;」
を特定するものに対し、甲1ポリイミド発明においては、上記事項が特定されていない点
ウ 相違点1についての判断
甲2の【請求項1】、【0036】~【0038】には、誘電率及び誘電正接が低いフレキシブルプリント配線板用銅張積層板の接着層として用いられる、芳香族テトラカルボン酸無水物とダイマージアミンとから合成されるポリイミドについて、接着性や低誘電特性のバランスの観点から、Mnは5000~50000程度が好ましく、Mwは10000~150000程度が好ましいこと、また、Mw/Mnは1.5~3.0程度が好ましいことが記載されている。また、甲3の【請求項1】、【0101】には、芳香族テトラカルボン酸無水物、並びにカルボキシル基含有ジアミン及びダイマージアミンを含むジアミン、を含むモノマー群の反応物である、ポリイミドについて、誘電特性、溶剤可溶性、柔軟性の観点から重量平均分子量は5000~50000が好ましく、数平均分子量は2000~40000が好ましいことが記載されている。
しかしながら、甲1ポリイミド発明は、Mw、Mn、Mw/Mnについて特定されておらず、甲1の【0038】には、ポリイミドの重量平均分子量(Mw)に関し10000~200000の範囲が好ましいと記載されているのみであることから、甲1ポリイミド発明において、低誘電特性を考慮して、甲2に記載された数値範囲を採用する動機付けがあるとしても、上記アで説示した本件発明1の技術的意義を考慮すると、Mw、Mn、Mw/Mnの数値範囲について、b)Mwが25,000~100,000、c)Mnが15,000~32,000、d)Mw/Mnが1.8~3.4の全てを同時に充足することまでの動機付けがあるとはいえないから、相違点1に係る特定事項とすることは、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
エ 申立人の主張について
申立人は令和8年4月24日提出の意見書において、以下(i)~(iii)の点を挙げて、本件発明は、甲1と甲2から、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する。
(i)架橋剤の配合に関し、特許権者は乙1を提出して、本件発明では架橋剤の配合は誘電正接に影響しないと主張しているが、これは本件明細書の記載に基づかない新たな主張であって、採用することはできない点(意見書第5頁第27行目~第6頁第4行)
(ii)未架橋であっても架橋ポリマーと誘電特性は何ら変わらないとする乙1の実験結果は、当業者に技術常識に反するものであって信頼に足るものであるかは疑わしく、さらに架橋の有無や架橋の程度により脆弱性がほとんど変化しないというも不可解であるため、採用すべきではない点(意見書第6頁第14行~第23行)
(iii)仮に乙1の実験結果が得られたとしても、それは乙1の特定のポリイミドの場合の結果であって、例えばMnが15,000のように小さいポリイミドや、Mw/Mnが3.4のように大きいポリイミドであっても、乙1と同様の結果となると推認することはできない点(意見書第7頁第7行~第26行)
以下、上記(i)~(iii)について順に検討する。
(ア)(i)について
架橋剤の配合に関し、本件明細書の【0086】には「架橋構造の形成によって、耐熱性を向上させることができる」と記載されており、架橋構造と誘電特性との相関関係は記載されていないところ、乙1は上記相関関係を釈明するためのものであり、特許権者が出願当初の明細書等に記載されていた事項が正しくかつ妥当なものであることを釈明又は立証するためのものであるので、採用できるものである。
(イ)(ii)について
一般論として、ポリマーにおいて架橋することでポリマーの誘電特性に影響を与えることが、本件特許出願時の技術常識であったとしても、上記ウで説示したように、ポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnが、低誘電特性に影響を与えることも本件特許出願時の技術常識であるように、様々な要因が誘電正接へ影響するものであるから、一つの技術常識に反することを理由に、乙1の実験結果が採用できないとまではいえない。また、脆弱性についても同様に採用できないとまではいえない。
(ウ)(iii)について
上記(イ)で説示したように、ポリイミドの誘電正接は様々な要因が影響することから、本件発明1の特定のポリイミドが、乙1と同様の結果となると推認できないとまではいえない。
以上によれば、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~4、6、7、9~44について
本件発明2~4、6、7、9~44は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~4、6、7、9~44と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1において相違する。
そうすると、上記(3)ウで説示したのと同様の理由により、本件発明2~4、6、7、9~44は、甲1に記載された発明及び甲1、2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、申立人は令和8年4月24日提出の意見書(第10頁~第12頁)において、令和7年11月14日付けの実験成績証明書の有機ホスフィン酸の金属塩を添加したことによる光学的特性の悪化について、科学的な知見と矛盾するものであって妥当とはいえない旨主張するが、当該主張は、上述の判断に影響するものではない。
(5)取消理由1(進歩性)のまとめ
よって、本件発明1~4、6、7、9~44は、甲1に記載された発明及び甲1、2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由1によっては本件発明1~4、6、7、9~44に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2及び申立理由2について
取消理由2及び申立理由2はサポート要件についてのものであるので、併せて検討する。
その際、検討対象の請求項は、上記第2で説示したとおり、申立対象である訂正前の請求項1~4、6、7、9~20に係る発明に対応する本件発明1~4、6、7、9~44である。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0008】の記載からみて、「ダイマー酸由来のジアミンを原料とし、高周波信号の伝送損失を効果的に低減することを可能としながら、樹脂フィルムの脆弱化を抑制できるポリイミドを提供すること」であると認められる。
(3)本件発明1~4、6、7、9~44について
本件明細書【0009】、【0010】の「ダイマー酸由来のジアミンとして精製されているダイマージアミン組成物を用い、ポリイミドの重量平均分子量及び数平均分子量を所定の範囲内に制御することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。」と記載され、この分子量について【0010】には「b)重量平均分子量(Mw)が25,000~100,000の範囲内であること。c)数平均分子量(Mn)が15,000~32,000の範囲内であること。d)前記Mwと前記Mnの比(Mw/Mn)が1.8~3.4の範囲内にあること。」が記載されていることから、上記b)、c)及びd)を満たすことで、上記(2)の課題を解決できることが記載されている。
そして、本件明細書の実施例を参酌すると、上記b)、c)及びd)の全てを満たす実施例1~5では、誘電正接について、5GHzでは0.0025~0.0028、10GHzでは0.0021~0.0024、20GHzでは0.0015~0.0018である一方、上記b)、c)及びd)の全てを満たさない参考例1と、上記c)及びd)を満たさない参考例2では、誘電正接について、5GHzでは0.0030、0.0031、10GHzでは0.0025、0.0027、20GHzでは0.0019、0.0020となっており、上記実施例1~5が、上記参考例1、2よりも、低い誘電正接であることが確認できる。
ここで、一般論として、誘電特性はポリマー分子の極性が直接関係する物理量であるので、架橋剤がもたらす特定の分子構造が誘電特性に影響を与え、架橋剤の種類及び使用量により誘電特性が大きく変わることも、本件特許出願時の技術常識であるといえる。
さらに、甲2の【請求項1】、【0036】~【0038】には、誘電率及び誘電正接が低いフレキシブルプリント配線板用銅張積層板の接着層として用いられる、芳香族テトラカルボン酸無水物とダイマージアミンとから合成されるポリイミドについて、接着性や低誘電特性のバランスの観点から、Mnは5000~50000程度が好ましく、Mwは10000~150000程度が好ましいこと、また、Mw/Mnは1.5~3.0程度が好ましいことが記載されている。また、甲3の【請求項1】、【0101】には、芳香族テトラカルボン酸無水物、並びにカルボキシル基含有ジアミン及びダイマージアミンを含むジアミン、を含むモノマー群の反応物である、ポリイミドについて、誘電特性、溶剤可溶性、柔軟性の観点から重量平均分子量は5000~50000が好ましく、数平均分子量は2000~40000が好ましいことが記載されていることから、ポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnは、低誘電特性に影響を与えることが、本件特許出願時の技術常識であるといえる。
そうすると、一般論としてポリマーの架橋が誘電特性に影響を与えるとしても、ポリイミドのMw、Mn、Mw/Mnも誘電特性に影響を与えることを考慮すると、様々な要因が誘電正接へ影響することがいえるから、本件発明1の特定のポリイミドにおいて、架橋剤を配合しなかったとしても、上記(2)の課題を解決することができないとはいえず、実際に乙1では、架橋剤を配合せずとも、上記(2)の課題を解決できていることから、本件発明1のポリイミドが上記(2)の課題を解決できないとまではいえない。
また、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2~4、6、7、9~44においても同様である。
(4)申立人の主張について
申立人は令和8年4月24日提出の意見書において、以下(i)~(iii)の点を挙げて、本件発明は、サポート要件を満たしていない旨を主張する。
(i)架橋剤の配合により、ポリマーの誘電特性や強度が変化しないというのは、出願人はその認識であったのだとしても、当業者の技術常識とは異なる知見であるから、本件明細書に記載すべき事項であって、かかる記載を欠いた本件明細書及び技術常識に基づき、当業者が架橋の有無により誘電特性等が変化しないことを推認することはできない点(意見書第9頁第10行~第14行)
(ii)上記(i)は本件明細書の記載に基づかない新たな主張なのであるから、新たな主張を裏付けるための、本件明細書の記載外の乙1に基づき、本件発明が本件明細書にサポートされているとは判断することができない点(意見書第9頁第15行~第17行)
(iii)本件明細書の実施例に示された、特定の分子量及び分子量分布を有する、b)~d)の特定の組合せのたった5つのポリイミドに基づき、本件発明1の条件b)~d)の全範囲において本件発明1の効果を推認することができない点(意見書第9頁第22行~第26行)
以下、上記(i)~(iii)について順に検討する。
(ア)(i)について
上記1(3)エ(イ)で説示したように、乙1は採用できるものであるため、架橋の有無により誘電特性等が変化しないことを推認できないとはいえない。
(イ)(ii)について
上記1(3)エ(イ)で説示したように、乙1は採用できるものであるため、当該乙1に基づき判断することは妥当である。
(ウ)(iii)について
上記(3)で説示したとおりである。
以上によれば、申立人の上記主張は採用できない。
(5)取消理由2(サポート要件)のまとめ
よって、本件発明請求項1~4、6、7、9~44に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、取消理由2及び申立理由2によっては本件発明1~4、6、7、9~44に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由通知において採用しなかった申立理由3について
(1)申立理由3の概要
申立理由3は、上記第3(3)のとおりである。以下、再掲する。
本件発明1は、ダイマージアミン組成物中の(a)成分は97.9重量%以上であり、本件発明2は、クロマトグラムの面積パーセントにおいて(b)成分は3%以下であり、本件発明3は、(b)成分と(c)成分の合計が4%以下であることから、本件発明2及び3におけるダイマージアミン組成物は、各成分の合計量が100%を超える組成を含んでおり、発明の技術的範囲を確定することができない。
(2)本件発明2、3について
本件発明2は本件発明1を引用するものであって、本件発明1ではダイマージアミン組成物中の(a)成分が97.9重量%以上であることが特定されており、本件発明2ではゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定におけるクロマトグラムの面積パーセントで(b)成分が3%以下であることが特定されている。
そうすると、本件発明2は、(a)成分が97.9重量%以上(その他の成分の総計が2.1重量%以下)のダイマージアミン組成物において、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定すると、その結果がクロマトグラムの面積パーセントで(b)成分が3%以下であると特定するだけであるので、「(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントが3%以下である」との記載は明確であり、発明の範囲は明確である。
本件発明3の「前記(b)成分及び前記(c)成分の合計が、4%以下」という特定事項についても同様である。
また、本件発明2、3に、その他の不明確な点を見いだせない。
(3)申立理由3のまとめ
よって、本件発明2、3は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するから、申立理由3によっては本件発明2、3に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1~4、6、7、9~44に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4、6、7、9~44に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700493