2023-700090
印刷用メタルマスク
- 審判番号
- 2023-700090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-215540外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7125534
- 請求日
- 2023年01月30日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】竹田東京プロセスサービス株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【異議申立人】角田 朗
- 分類
- P1651.536-ZAA(B41N) / P1651.537-ZAA(B41N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第184条の4第1項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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特許第7125534号の請求項1乃至4に係る特許についての出願は、令和3年12月17日に出願され、令和4年8月16日にその特許権の設定登録がされ、同年8月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和5年1月30日に特許異議申立人角田朗(以下「特許異議申立人」という。)により請求項1乃至4に対して特許異議の申立てがされ、同年4月25日付けで取消理由が通知され、同年7月6日に特許権者より訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年8月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
また、特許異議申立人は、同年12月13日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第7125534号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至4について訂正することを求める。」とするものである。なお、訂正請求書の「6請求の趣旨」の「訂正後の1~4」の記載は、「訂正後の請求項1乃至4」の誤記と善解する。
また、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」といい、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(訂正事項の項番は、当審で付した。下線は当審で付した。以下同様。)。
(1)一群の請求項1乃至3に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「金属製の平板であるマスク母材と、前記マスク母材の片側の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で形成された複数の印刷用開口と、前記マスク母材の反対側の面内に、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成された複数のメッシュ開口と、を備え、前記印刷用開口は前記メッシュ開口と連結して貫通孔を形成し、前記メッシュ開口は、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されており、前記マスク母材は、第一金属層と第二金属層が一体的に形成された二層構造をなし、前記第二金属層に前記印刷用開口が形成され、前記第一金属層に前記メッシュ開口が形成され、前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている、ことを特徴とする、印刷用メタルマスク。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を、
「前記メッシュ開口は、略四辺形状である、ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷用メタルマスク。」に訂正する。
エ 訂正事項4
明細書の段落【0013】を、
「【0013】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、金属製の平板であるマスク母材と、前記マスク母材の片側の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で形成された複数の印刷用開口と、前記マスク母材の反対側の面内に、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成された複数のメッシュ開口と、を備え、前記印刷用開口は前記メッシュ開口と連結して貫通孔を形成し、前記メッシュ開口は、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されており、前記マスク母材は、第一金属層と第二金属層が一体的に形成された二層構造をなし、前記第二金属層に前記印刷用開口が形成され、前記第一金属層に前記メッシュ開口が形成され、前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている、ことを特徴とする、印刷用メタルマスクである。請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の印刷用メタルマスクであって、前記メッシュ開口は、略四辺形状である、ことを特徴とする。」に訂正する。
オ 訂正事項5
明細書の段落【0014】乃至【0016】を、
「【0014】請求項1、3の発明によれば、メッシュ開口を有する印刷用メタルマスクにおいて、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口の方が、周辺部に対応するメッシュ開口よりも開口率が高いため、導電性ペースト等印刷時に、より多くの導電性ペースト等が吐出され、これにより印刷パターンの内側が落ち込むサドル現象を抑制することが可能となり、導電性ペースト等で形成されたパターンの物性(光の透過率や電気電導性)を安定させることが可能となる。【0015】また、メッシュ開口の一部または全部を略同形状としているため、メッシュ開口の設計と導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。【0016】また、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口の方が、周辺部に対応するものよりも厚く形成されているため、導電性ペースト等の吐出量が周辺部に比較して多くなり、さらにサドル現象を抑制することに効果がある。」に訂正する。
カ 訂正事項6
明細書の段落【0056】を、
「【0056】さらに、第一金属層M1は、メッシュ開口13bの部分が、メッシュ開口13aに対応する部分に比べて、厚く形成されてもよい。これにより、メッシュ開口13bからの導電性ペースト等の吐出量が比較的多くなり、さらにサドル現象を抑制することが可能となる。」に訂正する。
(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
イ 訂正事項4
上記(1)の「エ 訂正事項4」を参照。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)一群の請求項1乃至3に係る訂正について
ア 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1乃至3について、請求項2、3は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至3に対応する訂正後の請求項1乃至3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
以下、事案に鑑み、いわゆる独立特許要件は、最後にまとめて判断する。
イ 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第一金属層」の厚さを、訂正前の請求項2の発明特定事項により限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第一金属層」の厚さを、訂正前の請求項2の発明特定事項により限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第一金属層」の厚さを、訂正前の請求項2の発明特定事項により限定するものであるから、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項2を削除することに伴い、訂正前の請求項3が引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項2を削除することに伴い、訂正前の請求項3が引用する請求項から請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項2を削除することに伴い、訂正前の請求項3が引用する請求項から請求項2を削除するものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
オ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「第一金属層」の厚さを、訂正前の請求項2の発明特定事項により限定し、訂正事項2により訂正前の請求項2を削除し、訂正事項7により訂正前の請求項4を削除することに伴い、訂正前の請求項1乃至4を説明する明細書の段落【0013】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項1乃至4を説明する明細書の段落【0013】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項1乃至4を説明する明細書の段落【0013】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(エ)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項4は、訂正前の請求項1乃至4を説明する明細書の段落【0013】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであるから、一群の請求項1乃至3に関係する訂正である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
カ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「第一金属層」の厚さを、訂正前の請求項2の発明特定事項により限定し、訂正事項2により訂正前の請求項2を削除することに伴い、訂正前の請求項1乃至3を説明する明細書の段落【0014】乃至【0016】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5は、訂正前の請求項1乃至3を説明する明細書の段落【0014】乃至【0016】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、訂正前の請求項1乃至3を説明する明細書の段落【0014】乃至【0016】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(エ)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項5は、訂正前の請求項1乃至3を説明する明細書の段落【0014】乃至【0016】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであるから、一群の請求項1乃至3に関係する訂正である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
キ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0056】には、「第一金属層M1は、メッシュ開口13bの部分が、メッシュ開口13bに対応する部分に比べて、厚く形成されてもよい。」と記載されているところ、当該記載は、「メッシュ開口13b」同士を比較するものであるから、日本語として意味不明である。
他方、訂正前の明細書の段落【0013】には、「前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている」と記載され、同段落【0016】にも、「印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口の方が、周辺部に対応するものよりも厚く形成されている」ことが記載されている。
そして、訂正前の明細書の段落【0026】には、「メッシュ開口13は、印刷用開口12の内側のメッシュ開口13bが周辺部のメッシュ開口13aより、開口率が高くなるように形成されている。」と記載されており、訂正前の明細書には、「内側」の「メッシュ開口」は、「メッシュ開口13b」であり、「周辺部」の「メッシュ開口」は、「メッシュ開口13a」であることが記載されている。
そうすると、訂正前の明細書には、「第一金属層」は、メッシュ開口の印刷パターンの内側に対応する部分(「メッシュ開口13b」)が、周辺部に対応する部分(「メッシュ開口13a」)に比べて厚く形成されていることが記載されているといえる。
してみると、上記の通り、訂正前の明細書の段落【0056】の上記記載は、日本語として意味不明であるところ、当該記載は、「第一金属層M1は、メッシュ開口13bの部分が、メッシュ開口13aに対応する部分に比べて、厚く形成されてもよい。」の誤記であることは明らかである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、誤記を訂正したものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)で述べたように、訂正前の明細書には、「第一金属層」は、メッシュ開口の印刷パターンの内側に対応する部分(「メッシュ開口13b」)が、周辺部に対応する部分(「メッシュ開口13a」)に比べて厚く形成されていることが記載されているといえるから、訂正事項6は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(エ)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項6は、訂正前の請求項2を説明する明細書の段落【0056】の誤記を訂正するものであるから、一群の請求項1乃至3に関係する訂正である。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
(2)請求項4に係る訂正について
ア 訂正事項7について
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
イ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
上記(1)オ(ア)と同様に、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(1)オ(イ)と同様に、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)オ(ウ)と同様に、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(エ)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項4は、訂正前の請求項1乃至4を説明する明細書の段落【0013】の記載を、訂正後の請求項1及び3の記載に整合させるものであるから、請求項4に関係する訂正である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否か
本件特許についての特許異議の申立て事件では、訂正前の全ての請求項1乃至4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1乃至4に係る訂正事項1、2、6、7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正の適否のまとめ
上記3のとおり、本件訂正請求による訂正事項1乃至7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正を認める。
第3 本件訂正特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明4」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】金属製の平板であるマスク母材と、前記マスク母材の片側の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で形成された複数の印刷用開口と、前記マスク母材の反対側の面内に、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成された複数のメッシュ開口と、を備え、続きを表示(全17行)前記印刷用開口は前記メッシュ開口と連結して貫通孔を形成し、前記メッシュ開口は、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されており、前記マスク母材は、第一金属層と第二金属層が一体的に形成された二層構造をなし、前記第二金属層に前記印刷用開口が形成され、前記第一金属層に前記メッシュ開口が形成され、前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている、ことを特徴とする、印刷用メタルマスク。【請求項2】(削除)【請求項3】前記メッシュ開口は、略四辺形状である、ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷用メタルマスク。【請求項4】(削除)」
第4 令和5年4月25日付け取消理由通知及び同年8月15日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
令和5年4月25日付け取消理由通知及び同年8月15日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由は、以下の通りである。
取消理由1.(拡大先願)本件特許の請求項1及び3、4に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に国際公開がされた下記の特許出願の特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、本件特許の請求項1及び3、4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである(同法第184条の13参照。)。
・請求項 1、3
・引用文献等 甲1
・請求項 4
・引用文献等 甲1、6
<引用文献等一覧>
取消理由2.(進歩性)本件特許の請求項1及び3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項1及び3
・引用文献等甲2乃至5
・請求項4
・引用文献等甲2乃至6
<引用文献等一覧>
取消理由3.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項2の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由4.(実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
1 取消理由1(拡大先願)について
本件訂正により、本件訂正特許発明1及び3は、取消理由1の対象外であった本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなった。
そうすると、本件訂正特許発明1及び3は、取消理由1の対象外となったと解せるから、取消理由1は解消した。
2 取消理由2(進歩性)について
本件訂正により、本件訂正特許発明1及び3は、取消理由2の対象外であった本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなった。
そうすると、本件訂正特許発明1及び3は、取消理由2の対象外となったと解せるから、取消理由1は解消した。
3 取消理由3(サポート要件)について
(1)本件訂正特許発明1及び3について
本件訂正により、本件訂正特許発明1及び3は、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなった。
本件訂正前の請求項1及び3は、取消理由3の対象外であったところ、上記の通り、本件訂正特許発明1及び3は、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなったから、本件訂正特許発明1及び3には、取消理由3があると解せる。
しかし、令和5年8月15日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、この取消理由3によって取り消すべきものである。
(2)小括
本件訂正特許発明1及び3は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 取消理由4(実施可能要件)について
(1)本件訂正特許発明1及び3について
本件訂正により、本件訂正特許発明1及び3は、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなった。
本件訂正前の請求項1及び3は、取消理由4の対象外であったところ、上記の通り、本件訂正特許発明1及び3は、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を有することとなったから、本件訂正特許発明1及び3には、取消理由4があると解せる。
しかし、令和5年8月15日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、この取消理由4によって取り消すべきものである。
(2)小括
本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正特許発明1及び3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないため、本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 むすび
本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件訂正後の請求項1及び3に係る特許は、訂正後の明細書の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1及び3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項2、4は、本件訂正によって削除された。これにより、申立人による請求項2、4に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、同法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、上記の結論のとおり決定する。
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2023-700090