特許異議申立
2023-700085
排便記録システム、排便記録方法および排便記録プログラム
- 審判番号
- 2023-700085
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-141138
- 登録番号
- 7107338
- 請求日
- 2023年01月27日
- 審決日
- 2023年05月12日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】末久 真弘
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 居島 一仁
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.121-Y (E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7107338号発明「排便記録システム、排便記録方法および排便記録プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7107338号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7107338号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年8月24日に出願され(優先権主張 令和元年8月30日)、令和4年7月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行され、令和5年1月27日に特許異議申立人 末久 真弘(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1~9の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
トイレルーム内に設置された便器と、
前記便器を使用する使用者を特定する使用者特定装置と、
前記便器内に排出された大便を検知する検知装置と、
前記検知装置による検知結果から大便の性状を判定する判定装置と、
前記検知装置による検知の日時を示す時間情報を取得する計時装置と、
前記大便の性状および前記時間情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する記録装置と、
前記記録装置を有し、前記大便の性状および前記時間情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして前記記録装置に記録させる情報処理装置と、
前記記録装置に記録された前記個人データに基づく前記大便に関する情報を表示する表示装置と、
を有し、
前記記録装置は、履歴情報DBを有し、
前記表示装置は、検知されなかった排便に関する情報を入力する入力装置として機能し、
前記履歴情報DBは、ユーザID、日時、性状、対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ、
前記情報処理装置は、介護者の要求に基づいて、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便の性状および前記時間情報を示す履歴情報を抽出可能であり、
前記表示装置は、抽出された前記履歴情報を表示可能である、排便記録システム。
【請求項2】
前記判定装置は、
前記大便の性状を、軟便、正常便、硬便に対応する少なくとも3種類の結果に分けて自動で判定することが可能であり、
前記表示装置は、
前記大便の性状の判定結果に応じて前記個人データの表示を異ならせる
ことを特徴とする請求項1に記載の排便記録システム。
【請求項3】
前記表示装置は、
現在の時刻を表示することが可能であり、前記現在の時刻において、特定された前記使用者が排泄を行う可能性を示す情報を表示する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排便記録システム。
【請求項4】
前記表示装置は、
特定された前記使用者によって排泄され得る前記大便の性状を示す情報を表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の排便記録システム。
【請求項5】
前記入力装置は、
使用者による便失禁に関する便失禁情報を入力可能であり、
前記記録装置は、
前記便失禁情報を、特定された前記使用者と関連付けて前記個人データとして記録する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の排便記録システム。
【請求項6】
前記入力装置は、
使用者による下剤または下痢止めの服用に関する薬剤情報を入力可能であり、
前記記録装置は、
前記薬剤情報を、特定された前記使用者と関連付けて前記個人データとして記録する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の排便記録システム。
【請求項7】
前記判定装置は、
前記検知装置による検知結果から大便の大きさを判定し、
前記記録装置は、
前記大便の大きさおよび前記時間情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の排便記録システム。
【請求項8】
トイレルーム内に設置された便器を使用する使用者を特定する使用者特定工程と、
前記便器内に排出された大便を検知する検知工程と、
前記検知工程による検知結果から大便の性状を判定する判定工程と、
前記検知工程による検知の日時を示す時間情報を取得する計時工程と、
前記大便の性状および前記時間情報を、前記使用者特定工程によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する記録工程と、
前記大便の性状および前記時間情報を、前記使用者特定工程によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録装置に記録させる情報処理工程と、
前記記録工程に記録された前記個人データに基づく前記大便に関する情報を表示する表示工程と、
を含み、
前記記録装置は、履歴情報DBを有し、
前記表示工程を行う表示装置は、検知されなかった排便に関する情報を入力する入力装置として機能し、
前記履歴情報DBは、ユーザID、日時、性状、対応する便の性状が前記検知工程での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ、
前記情報処理工程は、介護者の要求に基づいて、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便の性状および前記時間情報を示す履歴情報を抽出可能であり、
前記表示工程は、抽出された前記履歴情報を表示可能である、排便記録方法。
【請求項9】
トイレルーム内に設置された便器内に排出された大便が検知装置により検知された検知結果から大便の性状を判定する判定手順と、
前記検知装置による検知の日時を示す時間情報を取得する計時手順と、
前記大便の性状および前記時間情報を、前記便器を使用する使用者を特定する使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する記録手順と、
前記大便の性状および前記時間情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録装置に記録させる情報処理手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記記録装置は、履歴情報DBを有し、
表示装置は、検知されなかった排便に関する情報を入力する入力装置として機能し、
前記履歴情報DBは、ユーザID、日時、性状、対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ、
前記情報処理手順は、介護者の要求に基づいて、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便の性状および前記時間情報を示す履歴情報を抽出可能であり、抽出した前記履歴情報を前記表示装置に表示可能である、排便記録プログラム。」
第3 申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各証拠を提出している。
取消理由1:進歩性(特許法29条2項)
本件発明1~9は、甲第1の1~10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
<証拠>
甲第1号証の1:ニーズ・シーズ連携協調協議会、「介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会設置事業報告書」、平成30年3月
甲第1号証の2:厚生労働省,「福祉・介護 介護ロボットの開発・普及の促進」、[令和5年1月26日出力],インターネット
<URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634.html>
甲第2号証:日経ヘルス2015年3月号
甲第3号証:特開2002-259645号公報
甲第4号証:特開2007-286912号公報
甲第5号証:特開2000-140044号公報
甲第6号証:特開平7-114596号公報
甲第7号証:特開2019-74328号公報
甲第8号証:特開2016-145809号公報
甲第9号証:特開2017-137707号公報
甲第10号証:特開2018-146244号公報
以下、各甲号証を「甲1」等と略すことがある。
第4 証拠の記載
1 甲1の1
(1) 甲1の1の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲1の1には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体が付与した。以下同様である。)。
ア 27頁
「3. 課題解決に向けた機器の提案
3.1 仮想ロボット等のラフスケッチ
本連携協調協議会で提案するロボット等の開発コンセプトの提案機器名を「排泄物モニタリングロボット」とした。以下に提案機器の使用場面を想定したラフスケッチを示す。
[図:0001398303000001.jpg]
排泄物モニタリングロボットは、被介護者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状、また排泄行為の完了を観察し、自動で記録する。また、血便等の排泄物の異常、また弄便行為等が検知された場合は、介護者に通知する。
当該機器は、便器内の排泄物検知を行うセンサ、トイレ外ドアの個人認証を行う顔認証センサ、また各センサが検知した排泄に関する情報を表示するタブレットからなる。
3.1.1 機能
ロボットが持つ具体的な機能を以下に示す。
・トイレの外ドアに設置してあるセンサにより顔認証での個別識別を行う
・利用者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状を観察し、自動で記録する
・血便、便の性状等の状態を、ロボットが一定の基準で経時的な変化を踏まえて状態を識別し、異常が検知された場合は、被介護者、介護者に知らせる
・行為の完了を観察し、介護者に知らせる
・異常が検知された場合は画像に残す
・トイレに行ったが排泄がない場合の記録を行う
・便器に手等の排泄物以外のものが入った場合に検知しアラートする」
イ 31頁3~最終行
「4.3 当該機器導入による介護現場の変化
当該機器を使用する介護現場としては、複数の被介護者が同一のトイレを使用する、****等の介護施設を想定している。また、被介護者としてはトイレにて排泄ができる高齢者を想定している。
以下に、介護現場における活用場面と導入による効果を示す。
■場面1:施設の共有トイレを被介護者が利用する
[図:0001398303000002.jpg]
・トイレのドアに外側に設置された顔認証カメラにより被介護者を特定する。
・排泄物を検知するセンサ(カメラ)は便座の内側に配置されており、見た目は通常のトイレと変わらないため、被介護者のカメラに対する抵抗感は低い。
・ロボットが排尿排便の有無、色、量、形状を記録するため、介護者の業務負担が軽減される。」
ウ 32頁6~最終行
「■場面3:ロボットが被介護者の排泄物の異常を知らせる
[図:0001398303000003.jpg]
・ロボットが排泄物の異常を検知し介護者に知らせることで、介護者はより早期に被介護者の体調変化を察知することができるようになる。
・介護者は必要に応じ、被介護者に医療機関受診等の声掛けをすることで、体調悪化等の不測の事態を防ぐことができる。」
エ 図面から看取できる事項
(ア) 前記アの図面から看取できる事項
前記ア~ウの記載を踏まえると前記アの図面から次の事項が看取できる。
「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示されていること」
(2) 甲1に記載された発明
前記(1)において摘記した記載事項及び図面の内容を総合すると、甲1の1には次の3つの発明(以下、それぞれを「甲1発明」、「甲1方法発明」、「甲1プログラム発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「複数の被介護者が同一のトイレを使用する介護施設に用いる排泄物モニタリングロボットであって、
トイレの外ドアの個人認証を行う顔認証センサ、
便器内の排泄物検知を行うセンサ、
各センサが検知した排泄に関する情報を表示するタブレットからなり、
トイレの外ドアに設置してあるセンサにより顔認証での個別識別を行い、
被介護者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状、また排泄行為の完了を観察し、自動で記録し、
排泄物を検知するセンサ(カメラ)は便座の内側に配置され、
タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され、
ロボットが排尿排便の有無、色、量、形状を記録するため、介護者の業務負担が軽減される
排泄物モニタリングロボット」
<甲1方法発明>
「甲1発明の排泄物モニタリングロボットを動作させる方法」
<甲1プログラム発明>
「甲1発明の排泄物モニタリングロボットを動作させるプログラム」
2 甲2
(1) 甲2の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 43頁本文
「実際に、自らの排便状況を記録するアプリ「ウンログ」の利用者のデータを分析すると、記録し続けただけで排便状況が良くなっていることも分かった。」
イ 44頁上部見出し
「スマホで簡単に記録できるアプリも登場」
ウ 44頁の「ウンログ」に関する説明の左欄
「排便で健康を管理するアプリ。便を擬人化したキャラクターで日々の排便の量や色、頻度などをゲーム感覚で記録していく。」
エ 44頁の「ウンログ」に関する説明の中欄
「入力画面では、・・・形や量などを「コロコロ」「並盛り」といった項目で記録する。」
オ 44頁本文
「12年にリリースされた「ウンログ」は20万ダウンロードを達成。」
(2) 甲2に記載された技術的事項について
上記(1)を総合すると、甲2には次の技術的事項(以下、「甲2技術的事項」という。)が記載されている。
<甲2技術的事項>
「便で健康を管理するアプリにおいて、日々の排便の量や色、頻度などをゲーム感覚で記録すること。」
3 甲3
(1) 甲3の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 段落【0010】
「【0010】以下、各システム、機能について説明する。図2は、出退勤システムの構成を示す図である。出退勤システム10は、例えば会社の入場口3等に設置され、カードリーダー11と記憶装置12および通信装置13から構成されている。入場の際には、個人M1が携帯するカード媒体(出退勤システムの場合、「社員証」とも言える。)2をカードリーダー11に挿入すると、カード媒体2に記録されている情報、特に個人を特定するID番号をカードリーダー11が読み込みをする。同時に計時装置から入場時刻を採取する。この際、入場可能なID番号は記憶装置12に登録されているので入場の可能性も判断する。退場可能性については通常は判断しないが、退場時刻の記録を得るためにカード媒体2の読み取りを行う。非接触型ICカードの場合は、カードリーダー11にかざすことだけにより読み取りがされる。カードリーダー11が読み込んだ情報は記憶装置12に送られ、読み取りの都度逐次に、または蓄積して1日または週などの単位で通信装置13を用いて管理用サーバー40へ送信する。本システムの場合、紙媒体へ打刻するだけの出退勤システムは除かれるものとする。」
イ 段落【0015】
「【0015】図4は、出退勤時刻データ修正・確認機能を示す図である。出退勤時刻データ修正・確認機能30の装置構成は、ネットワーク管理システムと同一である。当該機能は、ネットワーク管理システム20により管理用サーバー(またはサーバー機能、以下同じ。)40へのアクセスが認められた際、またはアクセスが管理用サーバー40にて認められた場合、1日の最初または週単位などでアクセスをした勤務者の最近の出退勤時刻データを当該勤務者の端末に送信し、ディスプレイに表示させる。アクセス情報に限らず、システムへのログイン情報によって表示されるものであっても良い。ディスプレイ画面で表示される内容は図4の枠内の表示のようになる。この画面上で勤務者は、マウスを操作して修正ボタン31を操作し時刻の修正を行うことになる。修正がない場合は、確認ボタン32のみをクリックすれば良い。出退勤時刻データ修正・確認機能はネットワーク管理機能と別個の機能ではなく、このようにネットワーク管理機能の立ち上げに伴って協動してはたらく機能とするのが、日常の作業を定常的に行うことができる点で好ましい。」
ウ 段落【0021】
「【0021】<出退勤時刻データ修正・確認機能>出退勤時刻データ修正・確認機能30と管理用サーバー40とではデータは双方向性である。すなわち、管理用サーバーに一旦蓄積された出退勤時刻データが最初のネットワークアクセス時にディスプレイに必ず表示される。勤務者のアクセスによりアクセスした者が特定するので、管理用サーバーは当該勤務者のディスプレイに出退勤時刻データを表示する。この表示は最近のもの、特に出退勤システムまたはゲートシステムから得られたそのままの状態で、未通知、未修正、未承認のものが表示される。これにより各勤務者に対しては修正を促すことになる。各勤務者は、表示内容を確認し、業務の都合により、社外の目的地に直行/直帰などがあった場合には修正を行い、上長または管理者に承認を要求する。数値等の修正はキーボード等により行う。上長または管理者が承認した場合のみ管理用サーバー40にある個人の出退勤時刻データが修正されるものとする。」
(2) 甲3に記載された技術的事項について
上記(1)を総合すると、甲3には次の技術的事項(以下、「甲3技術的事項」という。)が記載されている。
<甲3技術的事項>
「カードリーダー11が読み込んだ情報が記憶装置12に送られ、読み取りの都度逐次に、または蓄積して1日または週などの単位で通信装置13を用いて管理用サーバー40へ送信する出退勤システム10に用い、管理用サーバー40とでデータは双方向性である出退勤時刻データ修正・確認機能30において、
各勤務者は、表示内容を確認し、業務の都合により、社外の目的地に直行/直帰などがあった場合には修正を行うこと。」
4 甲4
(1) 甲4の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲4には、以下の事項が記載されている。
ア 段落【0018】
「【0018】
そして、勤務者は、日次の勤務時間を勤務表に入力するために、まず情報端末5(例えば情報端末5N)を操作して、図4に示す勤務表ログイン画面を情報端末5のモニタ画面に表示させ、テキストボックスTB1,TB2に各勤務者に割り付けられたユーザID、パスワードを入力し、ログインボタンB1を押下(マウスによるクリック操作等)することで、入力したユーザIDとパスワードとをネットワークNWを介して勤怠管理端末6へ送信する。勤怠管理端末6のID記憶部6hは、勤務者の氏名、ユーザID、パスワード、認証ID等を対応付けたID情報テーブルを予め格納しており、勤怠管理端末6のログイン判定部6fは、ID記憶部6hに格納されたID情報テーブルを参照して情報端末5から受信したユーザIDとパスワードの照合を行い、受信した[ユーザID,パスワード]と格納している[ユーザID,パスワード]とが一致すればログインを許可して、データ出力部6gから勤務表一覧画面の情報データを情報端末5に送信し、当該情報端末5には、図5に示す「月次勤務表」の項目を有する勤務表一覧画面が表示される。」
イ 段落【0025】
「【0025】
このようにして、勤務者は、自己申告で出社時刻Ti1、退社時刻To1を勤務表に入力し、月間入力が終了した時点で管理者に月次申請を行う。管理者は上記同様に情報端末5(例えば情報端末51)を操作してログインし、承認権限のある勤務者に対して、各勤務者が作成した勤務表(図6参照)を見て承認を行う。この月次申請処理を行う際に、本勤怠管理端末6では、各勤務者が自己申告した出社時刻Ti1、退社時刻To1に不正値がないかどうかを検知する機能を有しており、管理者は、情報端末5を操作することで、対象勤務者の対象期間内(例えば対象月)における不正値を検索することができる。」
(2) 甲4に記載された技術的事項について
上記(1)を総合すると、甲4には次の技術的事項(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されている。
<甲4技術的事項>
「勤務者が、日次の勤務時間を勤務表に入力するために、情報端末5(例えば情報端末5N)を操作して、自己申告で出社時刻Ti1、退社時刻To1を勤務表に入力すること。」
5 甲5
(1) 甲5の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲5には、以下の事項が記載されている。
ア 【特許請求の範囲】
「【請求項1】 医療機関の看護を受ける患者の健康管理に関する情報を格納し管理するための情報管理手段と、
前記患者やその看護を行う看護者の近傍に配置され、前記患者自ら入力して前記患者の健康管理に関する情報を前記情報管理手段に格納すると共に、前記患者やその看護者の操作によって前記情報管理手段の前記患者の健康管理に関する情報を表示するための入力表示手段とを備えることを特徴とする看護支援装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】 前記患者の健康管理に関する情報には、前記患者の服薬に関する服薬履歴情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の看護支援装置。
【請求項5】 前記患者の健康管理に関する情報には、前記患者の排便に関する排便情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の看護支援装置。」
イ 段落【0009】~【0012】
「【0009】図1は、本発明の好ましい実施形態としての看護支援システム1の一例を示すブロック図である。看護支援システム1(看護支援装置)は、例えば病院等の医療機関に係わる情報(以下、医療情報という)を管理するクライアント・サーバ型の情報管理システムの一種であり、ここでは患者の看護を行う医師や看護婦(看護士を含む)等の医療関係者(以下、看護者と呼ぶ)を支援するためのシステムである。上述の医療情報の一例としては、例えば患者の食事に関する食事履歴情報、薬の服用に関する薬服用履歴情報、排便に関する排便情報、体温に関する体温情報、血圧に関する血圧情報、脈拍に関する脈拍情報、睡眠に関する睡眠情報、運動量に関する運動量情報若しくは入浴に関する入浴情報等又はこれらの組み合わせに係わる患者の健康管理情報に関するものである。具体的には、例えば以下のような患者側の報告と、この報告に基づく看護側の参照とが行われる。患者側では、看護支援システム1に対して、例えば薬の服用報告(時刻、服用した種類と量等)、間食報告(時刻、種類、量等)、食事報告(時刻、種類、量、食べ残し等)、排便報告(時刻、種類、形態、量等)、体温計測(時刻、体温)等を報告する。看護側では、看護支援システム1から、例えば薬の服用履歴、時系列の間食履歴、間食の種類、時系列の食事履歴、偏食情報、時系列の排便履歴、下痢情報、時系列の体温情報等を参照することができる。
【0010】看護支援システム1は、情報管理手段としてのサーバコンピュータ23(以下、サーバという)、例えばクライアント25としての看護用端末装置28(入力表示手段)及び患者用端末26(入力表示手段)を有し、それぞれネットワーク37(通信媒体)によって接続されている。サーバ23は、例えば医療情報(情報)を格納するためのデータベース29(情報格納手段)及び、例えば標準ユーザインターフェース情報の一例としてのHTML(HyperTextMarkupLanguage)形式等の標準フォーマット形式のUI(UserInterface)データ(図示せず)を有する。UIデータ35は、例えば所定の基本ソフトウェア(OS:OperatingSystem)を有する看護用端末装置28や患者用端末26にインストールされた閲覧手段としての閲覧ソフトウェア(以下、ブラウザ27という)が読み込み可能な標準フォーマット形式のデータである。UIデータは、後述する所定の処理を行うための機能が記述されている。
・・・(中略)・・・
【0012】次に、患者用端末装置26について説明する。ここでは、患者用端末装置26の機能の概要について説明し、患者用端末装置26の構成例については後述する。患者用端末装置26は、搭載するブラウザ27がサーバ23のUIデータを読み込むように設定されている。ブラウザ27がUIデータを読み込むと、図4の患者用端末装置26の表示部44には、例えば体温入力メニュー48、薬入力メニュー50、食事入力52、体温グラフメニュー54、薬用法メニュー56及び食事メニュー58が表示される。UIデータには、このような表示を行うデータの他に、これらのメニュー48、50、52、54、56、58のさらに詳細な情報を入力や参照等を行うための画面を表示するためのデータを有している。患者用端末装置26は、例えば患者の近傍に設けられており、図1のサーバ23のデータベース29に対して情報を入力したり、サーバ23のデータベース29の情報を検索し所望の情報を取得するための端末装置である。患者用端末装置26は、例えば図4のようにブラウザ27がインストールされている。」
ウ 段落【0023】
「【0023】図4は、図1の患者用端末装置26の構成例を示す分解斜視図である。患者用端末装置26は、例えばコンピュータ又はそれに準ずる機能を有する端末装置であり、タッチパネル46、表示部44、制御部40及び通信部42を有し、所定の閲覧ソフトウェア(閲覧手段)としてのブラウザ27が動作する環境(例えばOSや通信環境)が設定された状態で閲覧ソフトウェアがインストールされている。」
(2) 甲5に記載された技術的事項について
上記(1)を総合すると、甲5には次の技術的事項(以下、「甲5技術的事項」という。)が記載されている。
<甲5技術的事項>
「病院等の医療機関に係わる情報を管理するクライアント・サーバ型の情報管理システムの一種である看護支援システム1において、患者用端末装置26は、サーバ23のデータベース29に対して情報を入力したり、サーバ23のデータベース29の情報を検索し所望の情報を取得するための端末装置であり、患者側では、看護支援システム1に対して、排便報告(時刻、種類、形態、量等)等を報告し、看護側では、看護支援システム1から、時系列の排便履歴等を参照することができること。」
6 甲8
(1) 甲8の記載事項
本件特許の優先権主張の日前に発行された甲8には、以下の事項が記載されている。
ア 段落【0121】
「【0121】
また、測定開始準備工程S2において、データ解析装置60は、図7に示すように、表示装置の二段目に、例えば、「前回別の場所で排便しましたか?」といった、前回の排便がこの装置が設置されているトイレにおいて行われたか否かに関する質問と、その回答の選択肢「はい(今朝)」、「はい(昨日午後)」、「はい(昨日午前)」、「一昨日以前」、「いいえ」を表示する。被験者がこの質問に回答することにより、データ解析装置60の入力装置64に被験者の排便履歴情報が入力される。このような被験者の前回の排便行動からの経過時間に関する排便履歴情報はリモコン8に内蔵された記憶装置(被験者情報記憶装置)に記憶され、この被験者情報記憶装置には、予め登録されている被験者の体重、年齢、性別等に関する被験者情報も記憶されている。また、排便履歴情報は、サーバー12に送信され、サーバー12のデータベースに記録される。」
イ 【図7】
「
[図:0001398303000004.jpg]
」
(2) 甲8に記載された技術的事項について
上記(1)を総合すると、甲8には次の技術的事項(以下、「甲8技術的事項」という。)が記載されている。
<甲8技術的事項>
「データ解析装置60において、前回の排便がこの装置が設置されているトイレにおいて行われたか否かに関する質問と、その回答の選択肢を表示し、被験者がこの質問に回答することにより、データ解析装置60の入力装置64に被験者の排便履歴情報が入力され、このような被験者の前回の排便行動からの経過時間に関する排便履歴情報はリモコン8に内蔵された記憶装置(被験者情報記憶装置)に記憶され、この被験者情報記憶装置には、予め登録されている被験者の体重、年齢、性別等に関する被験者情報も記憶され、排便履歴情報は、サーバー12に送信され、サーバー12のデータベースに記録されること。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1) 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「トイレ」は、「外ドア」を有することから部屋であることは自明であるから、本件特許発明1の「トイレルーム」に相当する。
そして、甲1発明の「便器」は、「トイレ」内に設置されていることが自明であるから、本件特許発明1の「トイレルームに設置された便器」に相当する。
イ 甲1発明の「トイレの外ドアの個人認証を行う顔認証センサ」は、トイレを利用する人を「顔認証での個別識別を行」うものであるから、本件特許発明1の「前記便器を使用する使用者を特定する使用者特定装置」に相当する。
ウ 甲1発明の「便器内の排泄物検知を行うセンサ」は、「排便の有無」も記録するためのものであるから、本件特許発明1の「前記便器内に排出された大便を検知する検知装置」に相当する。
エ 甲1発明は、「複数の被介護者が同一のトイレを使用する介護施設に用いる」ものであって「排尿排便の有無、色、量、形状を記録」するものであり、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るものであるから、「センサ」により「個人識別」された被介護者と「排尿排便の有無、色、量、形状を記録」を関連付けて個人データとして記録すること及びそのための処理を行うことは自明である。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「前記大便に関する情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する記録装置」及び「前記記録装置を有し、前記大便に関する情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして前記記録装置に記録させる情報処理装置」を有する点で共通する。
オ 甲1発明の「タブレット」は、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るから、本件特許発明1の「前記記録装置に記録された前記個人データに基づく前記大便に関する情報を表示する表示装置」に相当する。
カ 甲1発明は、「排尿排便の有無、色、量、形状を記録」し、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るから、測定したとき毎の履歴情報を蓄積するDBを有することは自明である。
そうすると、本件特許発明と甲1発明は、「前記記録装置は、履歴情報DBを有」し、「前記履歴情報DBは、ユーザIDといった項目が含まれ」る点で共通する。
キ 前記エ~カを踏まえると、甲1発明は、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るから、本件特許発明1と甲1発明は、「前記情報処理装置は、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便に関する情報を示す履歴情報を抽出可能であり、
前記表示装置は、抽出された前記履歴情報を表示可能である」点で共通する。
ク 甲1発明の「排泄物モニタリングロボット」は、「トイレの外ドアの個人認証を行う顔認証センサ」、「便器内の排泄物検知を行うセンサ」、「各センサが検知した排泄に関する情報を表示するタブレット」からなる「排尿排便の有無、色、量、形状を記録」するシステムとして機能するものであるから、本件特許発明1の「排便記録システム」に相当する。
以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点1~4で相違する。
<一致点>
「トイレルーム内に設置された便器と、
前記便器を使用する使用者を特定する使用者特定装置と、
前記便器内に排出された大便を検知する検知装置と、
前記大便に関する情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして記録する記録装置と、
前記記録装置を有し、前記大便に関する情報を、前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして前記記録装置に記録させる情報処理装置と、
前記記録装置に記録された前記個人データに基づく前記大便に関する情報を表示する表示装置と、
を有し、
前記記録装置は、履歴情報DBを有し、
前記履歴情報DBは、ユーザIDといった項目が含まれ、
前記情報処理装置は、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便に関する情報を示す履歴情報を抽出可能であり、
前記表示装置は、抽出された前記履歴情報を表示可能である、排便記録システム。」
<相違点1>
本件特許発明1は、「前記検知装置による検知結果から大便の性状を判定する判定装置」を有し、「情報処理装置」が、「前記大便の性状を」、「前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして前記記録装置に記録させる」ものであり、「履歴情報DB」は「性状」「といった項目が含まれ」るのに対し、甲1発明は、「被介護者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状、また排泄行為の完了を観察」するものであるのに対し、「便器内の排泄物検知を行うセンサ」から得られた「検知結果から大便の性状を判定」したり、その結果を記録するものであるかが不明である点。
<相違点2>
本件特許発明1は、「前記検知装置による検知の日時を示す時間情報を取得する計時装置」を有し、「情報処理装置」が、「前記時間情報を」、「前記使用者特定装置によって特定された前記使用者と関連付けて個人データとして前記記録装置に記録させる」ものであり、「履歴情報DB」は「日時」「といった項目が含まれ」るのに対し、甲1発明は、「被介護者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状、また排泄行為の完了を観察」し、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るものであるが、測定された「日時」を取得したり、記録するものであるかが不明である点。
<相違点3>
本件特許発明1は、「前記情報処理装置は、介護者の要求に基づいて、前記履歴情報DBから使用者の過去の大便の性状および前記時間情報を示す履歴情報を抽出可能であ」るのに対し、甲1発明は、「タブレットの表示画面には、被介護者の氏名とともに、尿及び便の有無と形が測定したとき毎に一覧表示され」るものであるが、介護者の要求に基づいて表示できるような処理がされるか不明であり、処理される項目に、前記相違点1,2に示したように「大便の性状」及び「日時」が含まれるか不明である点。
<相違点4>
本件特許発明1は、「前記表示装置は、検知されなかった排便に関する情報を入力する入力装置として機能し」、「前記履歴情報DB」は、「対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ」るのに対し、甲1発明の「タブレット」は「検知されなかった排便に関する情報を入力する入力装置として機能」することが特定されておらず、その結果をDBに記録することも特定されていない点。
(2) 検討・判断
事案に鑑み相違点4から検討する。
ア 甲号証に記載された技術的事項について
(ア) 甲2には、「便で健康を管理するアプリにおいて、日々の排便の量や色、頻度などをゲーム感覚で記録すること」が記載(前記第4の2(2)の甲2技術的事項参照)されているが、「便で健康を管理するアプリ」は、「日々の排便の量や色、頻度など」を記録するのはアプリを操作する者であり、排便に関する情報を検知するセンサとともに用い、「検知されなかった排便に関する情報」を入力するものではなく、そのような用途について示唆する記載もない。
(イ) 甲3には、出退勤システムの出退勤時刻データを修正する技術が記載(前記第4の3(2)の甲3技術的事項参照)され、甲4には、勤務者が、日次の勤務時間を勤務表に入力する技術(前記第4の4(2)の甲4技術的事項参照)が記載されているが、ともに出退勤システムのデータ入力に関する技術分野に属する技術であって、前記相違点4に係る本件特許発明1の構成の技術に関連するセンサで測定して記録する特定のデータを、センサが測定(検知)できないときの情報を端末でも入力可能とする技術を開示も示唆をするものでない。
(ウ) 甲5には、「病院等の医療機関に係わる情報を管理するクライアント・サーバ型の情報管理システムの一種である看護支援システム1において、患者用端末装置26は、サーバ23のデータベース29に対して情報を入力したり、サーバ23のデータベース29の情報を検索し所望の情報を取得するための端末装置であり、患者側では、看護支援システム1に対して、排便報告(時刻、種類、形態、量等)等を報告し、看護側では、看護支援システム1から、時系列の排便履歴等を参照することができること」が記載(前記第4の5(2)の甲5技術的事項参照)されているが、排便に関する情報を検知するセンサとともに用い、「検知されなかった排便に関する情報」を入力するものではなく、そのような用途について示唆する記載もない。
(エ) 甲8には、「データ解析装置60において、前回の排便がこの装置が設置されているトイレにおいて行われたか否かに関する質問と、その回答の選択肢を表示し、被験者がこの質問に回答することにより、データ解析装置60の入力装置64に被験者の排便履歴情報が入力され、このような被験者の前回の排便行動からの経過時間に関する排便履歴情報はリモコン8に内蔵された記憶装置(被験者情報記憶装置)に記憶され、この被験者情報記憶装置には、予め登録されている被験者の体重、年齢、性別等に関する被験者情報も記憶され、排便履歴情報は、サーバー12に送信され、サーバー12のデータベースに記録されること」(前記第4の6(2)の甲8技術的事項参照)が記載されているが、排便に関する情報を検知するセンサとともに用い、「検知されなかった排便に関する情報」を入力するものではなく、そのような用途について示唆する記載もない。
イ 判断
(ア) 動機付けについて
甲1発明は、「被介護者の排泄物について、排泄の有無、回数、色、量、形状、また排泄行為の完了を観察し、自動で記録」するものであり、これにより、「ロボットが排尿排便の有無、色、量、形状を記録するため、介護者の業務負担が軽減される」ものである。そうすると、甲1発明において、介護者がタブレットを用いて「排尿排便の有無、色、量、形状を記録」する技術を導入することは、介護者の負担を増加させることに繋がるものであるから、阻害要因があるといえる。
また、前記アに示したとおり、甲2、3~5及び8には、排便に関する情報を検知するセンサとともに用い、「検知されなかった排便に関する情報」を入力する技術を示すものではなく、そのような用途について示唆する記載もない。そのため、甲1発明の「タブレット」に入力する手段を備えることが技術常識であったとしても、甲2、5及び8に記載された端末を用いて排便に関する情報を入力できる技術を、排便に関する情報を検知するセンサを有する甲1発明と組み合わせる動機があるとはいえない。
(イ) 本件特許発明1の「取得態様」について
仮に、甲1発明の「タブレット」に入力する手段を備えることが技術常識であることにより、甲1発明の「タブレット」に甲2、5、8に記載されたような端末を用いて排便に関する情報を入力できる技術を適用し得たとしても、本件特許発明1の「前記履歴情報DB」に「対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ」るようにする技術は、いずれの甲号証に記載も示唆もされておらず、そのようなことが技術常識ともいえない。
(ウ) その他の甲号証について
甲6には、便失禁を入力可能な、介護管理システムの携帯入力装置が記載(段落【0030】、【0031】、【0090】参照)され、甲7には、利用者が腰掛式便器に排泄した排泄物から得られる生体情報として、排泄物の大きさや色の情報(データ)画像センサにより取得する技術が記載(段落【0034】、【0069】参照)され、甲9及び10には、大便の性状(大便の性状とは、硬さ(軟らかさ)である。)を推定又は判定することが記載(甲9の段落【0025】、【0026】及び甲10の段落【0032】、【0033】参照)されているものであり、甲6、7、9及び10を検討しても、上記の判断を左右するものではない。
(エ) 本件特許発明1の判断のまとめ
したがって、甲1発明に対し、甲2~10に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえず、仮に甲2発明に甲1、3~10に記載された技術を適用したとしても、前記相違点4に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
(3) 請求人の主張
申立人は申立書で次の主張をしている。
「履歴情報DBの情報の取得態様が複数ある場合に、取得された情報とともに取得態様といった項目が履歴情報DBに含まれることは、当業者であれば容易に想到し得る設計事項である。
したがって、甲1発明1において、「K.前記履歴情報DBは、ユーザID、日時、性状、対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ(る)」ようにすることは、当業者が容易に想到するものである。
また、甲8発明では、記憶装置は、検知された排便履歴情報と、入力装置への入力により取得された排便履歴情報とを記憶する。
検知された排便履歴情報と、入力装置への入力により取得された排便履歴情報とを記憶する際に、排便履歴情報と共に排便履歴情報の取得態様を記録することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
したがって、甲1発明1に甲8発明を適用して、「K.前記履歴情報DBは、ユーザID、日時、性状、対応する便の性状が前記検知装置での検知により取得されたか、前記表示装置への入力により取得されたかを示す取得態様といった項目が含まれ(る)」ようにすることは、当業者が容易に想到するものである。」(申立書47頁5行~21行)
しかしながら、甲1発明と甲2~10に記載された技術的事項を組み合わせることについては、前記(2)で判断したとおりであり、甲8のデータ解析装置は、排便に関する情報を検知するセンサとともに用い、「検知されなかった排便に関する情報」を入力するものではなく、そのような用途について示唆する記載もない以上、データベースに各種の項目を設定する自体は当業者が適宜なし得る技術であるものの、排便に関する情報を検知するセンサとともに用いることを前提として、「取得態様」という項目を設定することが記載や示唆されるものとはいえない。
よって、申立人の主張は前記(2)の判断を左右するものではない。
(4) 本件特許発明1についてのまとめ
相違点1~3を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件特許発明2~7
本件特許発明2~7のそれぞれは、本件特許発明1で特定された事項を限定したものであるから、本件特許発明2~7のそれぞれと甲1発明を対比すると、少なくとも前記1(1)の相違点4で相違するものである。
よって、前記1(2)と同様の理由により、本件特許発明2~7のそれぞれは、甲1発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件特許発明8
本件特許発明8と甲1方法発明を対比すると、少なくとも前記1(1)の相違点4と同様な点で相違するものである。
よって、前記1(2)と同様の理由により、本件特許発明8は、甲1方法発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件特許発明9
本件特許発明9と甲1プログラム発明を対比すると、少なくとも前記1(1)の相違点4と同様な点で相違するものである。
よって、前記1(2)と同様の理由により、本件特許発明9は、甲1プログラム発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 小括
本件特許発明1~7は、甲1発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件特許発明8は、甲1方法発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件特許発明9は、甲1プログラム発明及び甲2~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
第6 むすび
したがって、申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~9に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700085