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特許異議申立

2023-700080

空間充填材および空間充填構造体、ならびにそれらの使用方法

審判番号
2023-700080
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-505571
登録番号
7129550
請求日
2023年01月25日
審決日
2023年05月01日
公報発行日
2023年05月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】杉本 修司
  • 【権利者代理人】堤 健郎
  • 【権利者代理人】小林 由佳
  • 【権利者代理人】中田 健一
  • 【権利者代理人】中尾 真二
  • 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 三上 晶子
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-Y (B29B) / P1651.121-Y (B29B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7129550号発明「空間充填材および空間充填構造体、ならびにそれらの使用方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7129550号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7129550号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)1月28日(優先権主張 平成31年3月13日)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月24日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年9月1日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対して、令和5年1月25日に特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし19)がされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1ないし19に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 膨張材としての強化繊維と、樹脂とで構成され、前記強化繊維同士が複数の交点を有し、少なくともその交点の一部が樹脂で接着された空間充填材であり、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上であり、所定の空間内で加熱時の膨張応力で少なくとも厚み方向に充填する空間充填材。 【請求項2】 請求項1に記載の空間充填材であって、前記強化繊維および前記樹脂の合計体積のうちの前記樹脂の体積比率が15~95vol%である、空間充填材。 【請求項3】 請求項1または2に記載の空間充填材であって、前記強化繊維が屈曲しており、前記樹脂の軟化により強化繊維の屈曲が解放されることで膨張する、空間充填材。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか一項に記載の空間充填材であって、厚み方向において定荷重下での膨張率が105%以上である、空間充填材。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の空間充填材であって、厚み方向に対して直交する方向への膨張による寸法変化率が-10~10%である、空間充填材。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか一項に記載の空間充填材であって、前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である、空間充填材。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一項に記載の空間充填材であって、前記強化繊維の繊維長が3~100mmである、空間充填材。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか一項に記載の空間充填材であって、前記強化繊維が絶縁性繊維である、空間充填材。 【請求項9】 請求項1~8のいずれか一項に記載の空間充填材であって、空隙率が3~75%である、空間充填材。 【請求項10】 請求項1~9のいずれか一項に記載の空間充填材であって、所定の空間内で被固定材を固定させるために用いられる、空間充填材。 【請求項11】 請求項10に記載の空間充填材と、その少なくとも一部に接して一体化された被固定材とを備える、空間充填構造体。 【請求項12】 請求項11に記載の空間充填構造体であって、前記被固定材が前記空間充填材で挟まれている、空間充填構造体。 【請求項13】 請求項1~10のいずれか一項に記載の空間充填材を使用する方法であって、前記空間充填材を、前記樹脂の軟化温度以上で加熱することにより所定の空間内で前記空間充填材を膨張させる工程を含む、使用方法。 【請求項14】 請求項13に記載の使用方法であって、所定の空間に前記空間充填材を挿入する工程を含む、使用方法。 【請求項15】 請求項1~10のいずれか一項に記載の空間充填材または請求項11もしくは12に記載の空間充填構造体を使用する方法であって、前記空間充填材または前記空間充填構造体を、前記樹脂の軟化温度以上で加熱することにより所定の空間において前記空間充填材を膨張させて、被固定材を固定する工程を含む、使用方法。 【請求項16】 請求項15に記載の使用方法であって、所定の空間に、前記空間充填材および/または前記被固定材、または前記空間充填構造体を挿入する工程を含む、使用方法。 【請求項17】 請求項13~16のいずれか一項に記載の使用方法であって、膨張後の空間充填材の空隙率が30~95%である、使用方法。 【請求項18】 請求項13~17のいずれか一項に記載の使用方法であって、膨張後の空間充填材が連続した多孔質構造を有する、使用方法。 【請求項19】 請求項13~18のいずれか一項に記載の使用方法であって、膨張後の空間充填材の密度が0.1~1.5g/cm3である、使用方法。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 令和5年1月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし9、13、14及び17ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9、13、14及び17ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/117187号 甲第2号証:特開2009-228952号公報 甲第3号証:特開平5-23406号公報 (以下、順に「甲1」のようにいう。) 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 当審の判断 当審は、以下に述べるように、上記申立理由1ないし2にはいずれも理由がないと判断する。 1 甲1に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項 甲1には、「複合構造体の製造方法及び一体化複合構造体の製造方法」に関し、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] 第1の部材と、第2の部材である構造体とが一体化された、複合構造体の製造方法であって、 前記第1の部材からなる型に、樹脂と強化繊維とを有する構造体前駆体を配置する配置工程と、 前記構造体前駆体の貯蔵弾性率(G’)が1.2×108Pa未満となる温度以上に前記構造体前駆体を加熱する加熱工程と、 加熱により前記構造体前駆体を膨張させて、第2の部材である構造体として第1の部材に密着させて複合構造体を得る賦形工程と、 前記複合構造体を冷却する冷却工程と、 を有し、 前記第1の部材は、前記加熱工程の温度において曲げ弾性率が5GPa以上であり、 前記第2の部材である構造体は、樹脂と強化繊維と空隙とからなる、複合構造体の製造方法。 [請求項2] 前記賦形工程以降に、加圧により前記複合構造体を成形する成形工程を有する、請求項1に記載の複合構造体の製造方法。 [請求項3] 前記賦形工程以降に、局部的に加圧を行い、前記複合構造体を変形させる変形工程を備える、請求項1又は2に記載の複合構造体の製造方法。 [請求項4] 前記変形工程において、変形させる箇所の少なくとも一部を加熱する、請求項3に記載の複合構造体の製造方法。 [請求項5] 前記第1の部材の線膨張係数が50×10-6/℃以下である、請求項1~4のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 [請求項6] 前記第1の部材が、繊維強化熱硬化性樹脂部材、繊維強化熱可塑性樹脂部材、金属部材、及びセラミック部材からなる群より選択される部材である、請求項1~5のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 [請求項7] 前記第1の部材の厚みが0.1mm以上である、請求項1~6のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 [請求項8] 前記第2の部材である構造体が、以下の(1)~(3)を満たす、請求項1~7のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 (1)前記樹脂の体積含有率が、2.5~85体積% (2)前記強化繊維の体積含有率が、0.5~55体積% (3)前記空隙の体積含有率が、10~97体積% [請求項9] 前記構造体前駆体が、以下の(4)~(6)を満たす、請求項1~8のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 (4)前記樹脂の体積含有率が、2.5~95体積% (5)前記強化繊維の体積含有率が、0.5~85体積% (6)前記空隙の体積含有率が、0~30体積% [請求項10] 前記第2の部材である構造体の密度(ρ)が、0.9g/cm3以下である、請求項1~9のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 [請求項11] 前記第2の部材である構造体中の強化繊維が不連続であり、略モノフィラメント状かつランダムに分散してなる、請求項1~10のいずれかに記載の複合構造体の製造方法。 [請求項12] 請求項1~11のいずれかに記載の製造方法によって得られた複合構造体の表面の少なくとも一部に、さらに他の部材を一体化する一体化複合構造体の製造方法。」 ・「[0010] 本発明に係る製造方法で得られた複合構造体2について、簡単に説明する。図1は、本発明に係る製造方法で得られる複合構造体2の模式図(断面)である。複合構造体2は、第1の部材であるパイプ3と、第2の部材であるコア8とから構成されている。コア8は、樹脂4と強化繊維5と空隙6とからなる構造体であり、パイプ3内にコア8が密着して一体化されている。本発明に係る製造方法では、第1の部材であるパイプ3は型として機能し、樹脂4と強化繊維5とを有する構造体前駆体をパイプ3内に配置し、構造体前駆体の貯蔵弾性率が1.2×108Pa未満となる温度以上に加熱し、構造体前駆体を膨張させ、パイプ3に密着させた後、冷却することにより、複合構造体を製造することができる。」 ・「[0025] <第2の部材(構造体)> 本発明の製造方法に用いる第2の部材である構造体は、樹脂と強化繊維と空隙からなっている。 [0026] 本発明における1つの形態において、構造体中の樹脂は、少なくとも1種類以上の熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。熱可塑性樹脂としては、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)」等の結晶性樹脂、「スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」等の非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系樹脂、及びアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体及び変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂を例示できる。中でも、得られる構造体の軽量性の観点からはポリオレフィンが望ましく、強度の観点からはポリアミドが望ましく、表面外観の観点からはポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が望ましく、耐熱性の観点からはポリアリーレンスルフィドが望ましく、連続使用温度の観点からはポリエーテルエーテルケトンが望ましく、さらに耐薬品性の観点からはフッ素系樹脂が望ましく用いられる。」 ・「[0030] 強化繊維としては、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属繊維、PAN系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス等の絶縁性繊維、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレン等の有機繊維、シリコンカーバイト、シリコンナイトライド等の無機繊維を例示できる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理の他に、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理等がある。また、これらの繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維が望ましく用いられる。また、得られる第2の部材である構造体の経済性を高める観点からは、ガラス繊維が望ましく用いられ、とりわけ力学特性と経済性とのバランスから炭素繊維とガラス繊維とを併用することが望ましい。さらに、得られる構造体の衝撃吸収性や賦形性を高める観点からは、アラミド繊維が望ましく用いられ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性とのバランスから炭素繊維とアラミド繊維とを併用することが望ましい。また、得られる構造体の導電性を高める観点からは、ニッケルや銅やイッテルビウム等の金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率等の力学的特性に優れるPAN系の炭素繊維をより望ましく用いることができる。」 ・「[0074] <使用した材料> 評価に用いた材料を以下に示す。 [材料1] ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、及び表面酸化処理を行い、総単糸数12,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維である強化繊維の特性は次に示す通りであった。 単繊維径:7μm 単位長さ当たりの質量:1.6g/m 比重:1.8 引張強度:4600MPa 引張弾性率:220GPa 得られた強化繊維1をカートリッジカッターで6mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液と上記チョップド炭素繊維とを用いて図3に示す抄紙基材の製造装置を用いて、抄紙基材を製造した。製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30°)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維及び分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽は、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備え、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を0.05質量%としておこなった。抄紙した炭素繊維基材は200℃の乾燥炉で30分間乾燥した。得られた炭素繊維基材の幅は500mm、長さは500mm、目付は100g/m2であった。 樹脂として、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)80重量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20重量%とからなる目付100g/m2のシートを作製した。得られた炭素繊維基材と樹脂シートを樹脂シート/炭素繊維基材/樹脂シートとなるように積層して積層体を得た。得られた積層体を2枚の金属板の間に挟み、熱盤温度が230℃のプレス機において面圧3MPaで金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止め、熱盤温度が100℃のプレス機において面圧3MPaで加圧・冷却を行った。5分後、プレス機の加圧を止め、構造体前駆体となる厚み0.28mm、強化繊維体積含有率20%の材料1を得た。前記測定方法で測定した構造体前駆体の貯蔵弾性率(G’)は、1.5×106Paであった。」 ・「[0077] (実施例1) 第1の部材として、内径30mm、長さ300mm、厚み3mmのアルミニウム合金製のパイプを準備した。第2の部材の構造体前駆体として、材料1より長さ300mm、幅850mmの大きさに切り出して準備した。図4に示すように、得られた構造体前駆体7を巻き状体にしてパイプ3内に配置した。次いで、雰囲気温度を230℃に設定した熱風乾燥機内に入れ、樹脂(材料1で使用するポリプロピレン樹脂)を溶融状態とした。同様の構成を用い、事前検討において、構造体前駆体7の中心部の温度が構造体前駆体7の中心部に挿入した温度計で設定温度近傍まで上昇する時間を測定し、成形条件に反映させた。このとき樹脂が溶融した箇所から徐々に膨張が始まり、パイプ3内が、図1に示すように樹脂4と、強化繊維5と、空隙6からなるコア8(第2の部材)で満たされた。その後、パイプ3を乾燥機から取り出し、冷却を行い、複合構造体を得た。物性や条件等は表1に示す。」 ・「[表1] [図:0001397239000001.jpg] 」 ・「[図1] [図:0001397239000002.jpg] 」 ・「[図3] [図:0001397239000003.jpg] 」 ・「[図4] [図:0001397239000004.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を主に[材料1]の構造体前駆体に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。 <甲1構造体前駆体発明> 「炭素繊維基材と、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)80重量%と酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20重量%とからなる樹脂シートを、樹脂シート/炭素繊維基材/樹脂シートとなるように積層して積層体を得、得られた積層体を2枚の金属板の間に挟み、熱盤温度が230℃のプレス機において面圧3MPaで金属板と共に加圧・加熱を行い、5分後、プレス機の加圧を止め、熱盤温度が100℃のプレス機において面圧3MPaで加圧・冷却を行って得られた構造体前駆体であって、前記構造体前駆体は、第1の部材内に配置された後、加熱により樹脂が溶融し膨張することで、第2の部材である構造体として第1の部材に密着して複合構造体となるものであり、前記第2の部材である構造体は、樹脂と、強化繊維と、空隙からなる、構造体前駆体。」 <甲1方法発明> 「甲1構造体前駆体発明を、第1の部材内に配置した後、加熱により樹脂が溶融し膨張することで、第2の部材である構造体として第1の部材に密着させて、複合構造体を得る、甲1構造体前駆体発明の使用方法であって、前記第2の部材である構造体は、樹脂と、強化繊維と、空隙からなる、方法。」 2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1構造体前駆体発明とを対比する。 甲1構造体前駆体発明の「炭素繊維基材」は、本件発明1の「強化繊維」に相当し、甲1構造体前駆体発明の「樹脂シート」は、本件発明1の「樹脂」に相当すること、及び、甲1構造体前駆体発明は「加熱により樹脂が溶融し膨張する」ものであることから、甲1構造体前駆体発明は、本件発明1の「膨張材としての強化繊維と、樹脂とで構成され」との特定事項を満たす。 甲1構造体前駆体発明の「樹脂シート」は、「未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)80重量%と酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20重量%」とからなるものであるから、甲1構造体前駆体発明は、本件発明1の「前記樹脂が熱可塑性樹脂であり」との特定事項を満たす。 甲1構造体前駆体発明は、「第1の部材内に配置された後、加熱により樹脂が溶融し膨張することで、第2の部材である構造体として第1の部材に密着して複合構造体となるもの」であるから、甲1構造体前駆体発明は、本件発明1の「所定の空間内で加熱時の膨張応力で少なくとも厚み方向に充填する」との特定事項を満たす。 甲1構造体前駆体発明の「構造体前駆体」は、「第1の部材内に配置され」るものであるから、本件発明1の「空間充填材」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「膨張材としての強化繊維と、樹脂とで構成された空間充填材であり、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、所定の空間内で加熱時の膨張応力で少なくとも厚み方向に充填する空間充填材。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 「空間充填材」に関し、本件発明1は「前記強化繊維同士が複数の交点を有し、少なくともその交点の一部が樹脂で接着された」と特定するのに対し、甲1構造体前駆体発明においては、このような特定がない点。 <相違点2> 「熱可塑性樹脂」に関し、本件発明1は「熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上」であるのに対し、甲1構造体前駆体発明は、「熱可塑性樹脂」が、「未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)80重量%と酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20重量%とからなる」ポリプロピレン樹脂である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 甲1には、甲1構造体前駆体発明が上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有すると認められるような記載はないし、甲1及び他の証拠をみても、甲1構造体前駆体発明が該発明特定事項を有する蓋然性が高いともいえない。 したがって、上記相違点2は実質的な相違点である。 また、甲1及び他の証拠には、甲1構造体前駆体発明において、熱可塑性樹脂としてガラス転移温度が100℃以上のものを使用する動機付けとなる記載はないから、甲1構造体前駆体発明において熱可塑性樹脂としてガラス転移温度が100℃以上のものを使用することは当業者にとって容易でない。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1の[0026]に、甲1発明において配合される樹脂は熱可塑性樹脂を含むことが望ましいことが記載されるとともに、ガラス転移温度が100℃以上である「液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリカーボネート等、ポリイミド、ポリアミドイミド等」(以下、「樹脂群A」という。)が好適な熱可塑性樹脂として例示されているから、甲1において、熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度が100℃以上である液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリカーボネート等、ポリイミド、ポリアミドイミドであることが開示されており、本件発明1は新規性及び進歩性がない旨主張する。 しかしながら、甲1の[0026]の記載には、熱可塑性樹脂として、申立人が上記主張にて指摘する樹脂群Aに加えて、甲1構造体前駆体発明の熱可塑性樹脂であるポリプロピレン等の、ガラス転移温度が100℃以下のものも多数例示されている。そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1において、熱可塑性樹脂として、樹脂群Aが、ポリプロピレン等の甲1に記載されている他の熱可塑性樹脂よりもとりわけ好ましいとする記載はない。 そうすると、甲1において、熱可塑性樹脂として、甲1に記載の多数の熱可塑性樹脂の例示の中から特に樹脂群Aを使用することについて、その記載や、その動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記の主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は甲1構造体前駆体発明であるとはいえないし、甲1構造体前駆体発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明2ないし12について 本件発明2ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件発明2ないし12は、本件発明1と同様に、甲1構造体前駆体発明であるとはいえないし、甲1構造体前駆体発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件発明13について 本件発明13は本件発明1ないし10のいずれかを使用する方法の発明であり、甲1方法発明は甲1構造体前駆体発明を使用する方法の発明である。 そして、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1ないし10は、甲1構造体前駆体発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明13も甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明14について 本件発明14は、請求項13を引用して特定するものであり、本件発明13の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件発明14は、本件発明13と同様に、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明15について 本件発明15は本件発明1ないし12のいずれかを使用する方法の発明であり、甲1方法発明は甲1構造体前駆体発明を使用する方法の発明である。 そして、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1ないし12は、甲1構造体前駆体発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明15も甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本件発明16ないし19について 本件発明16ないし19は請求項13又は請求項15を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明13又は本件発明15の発明特定事項を全て有するものである。 したがって、本件発明16ないし19は、本件発明13又は本件発明15と同様に、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 特許異議申立人による甲1発明の認定について 特許異議申立人は、特許異議申立書第35頁に記載のとおり甲1発明を認定し、かかる認定に基づいて、甲1発明は、甲1の図1に相当する構成、及び、加熱により膨張するとの構成を備えている旨主張する。 そこで、上記主張について検討する。 甲1における図1は、甲1の「複合構造体」における「第2の部材である構造体」の構造を図示するものである。そうすると、甲1において、図1に相当する構成を有する発明を認定するのであれば、次のような「甲1構造体発明」を認定することとなる。 <甲1構造体発明> 「炭素繊維基材と、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)80重量%と酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20重量%とからなる樹脂シートを、樹脂シート/炭素繊維基材/樹脂シートとなるように積層して積層体を得、得られた積層体を2枚の金属板の間に挟み、熱盤温度が230℃のプレス機において面圧3MPaで金属板と共に加圧・加熱を行い、5分後、プレス機の加圧を止め、熱盤温度が100℃のプレス機において面圧3MPaで加圧・冷却を行って得られた構造体前駆体を、第1の部材内に配置した後加熱し、加熱により樹脂が溶融し膨張することで、第2の部材である構造体として第1の部材に密着させられて複合構造体となる構造体であって、樹脂と、強化繊維と、空隙からなる、図1に示す構造を有する構造体。」 そして、甲1構造体発明は、加熱により「構造体前駆体」が溶融し膨張した後に図1に示す構造となったものであって、「図1に示す構造を有する構造体」は加熱されて膨張するものではないから、甲1構造体発明は、加熱により膨張するとの構成を備えているとはいえない。 してみると、甲1から、特許異議申立人の主張するような、甲1の図1に相当する構成を備えており、かつ、加熱により膨張するとの構成を備えている甲1発明を認定することはできない。 よって、上記主張を採用することはできない。 第5 むすび したがって、特許異議申立人の主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700080

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