特許異議申立
2025-700775
防水部品及びそれを備えた電子機器、インサート成形体を用いる防水方法ならびに電子機器の防水方法
- 審判番号
- 2025-700775
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-102489
- 登録番号
- 7636976
- 請求日
- 2025年07月30日
- 審決日
- 2025年12月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社クラレ
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 植前 充司
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.121-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7636976号発明「防水部品及びそれを備えた電子機器、インサート成形体を用いる防水方法ならびに電子機器の防水方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7636976号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7636976号(以下「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願(特願2021-102489号)は、令和3年6月21日の出願であって、令和7年2月18日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和7年7月30日に特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項(請求項1~20)に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~20に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である防水部品であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、ポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)、下記式(I)又は下記式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部であり、前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である、防水部品。
【化1】
[図:0001431159000001.jpg]
【化2】
[図:0001431159000002.jpg]
[式(I)及び式(II)中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素数が1~16の直鎖又は分鎖のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を示す。R1とR2及びR4とR5は互いに結合して環を形成してもよい。R3は、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐鎖のアルキレン基、炭素数が6~10のアリーレン基、炭素数が7~20のアルキルアリーレン基、炭素数が3~10のシクロアルキレン基、炭素数が7~10のアラルキレン基、又は炭素数が7~20のアリールアルキレン基を示す。Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛を示す。mは、1~4の整数である。nは、1~4の整数である。xは、1~4の整数である。式(II)において、m、x、nは、mx=2nの関係式を満たす。]
【請求項2】
前記ポリオレフィン(C1)が、マレイン酸変性、酸化、及び極性モノマー変性のうち少なくとも1種の変性処理がなされたポリオレフィンである、請求項1に記載の防水部品。
【請求項3】
前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)が、炭素数15以上の長鎖脂肪酸化合物である、請求項1又は2に記載の防水部品。
【請求項4】
前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)が、炭素数15以上の長鎖脂肪酸化合物であって、エステル化、マレイン酸変性及びケン化のうち少なくとも1種の変性処理がなされた長鎖脂肪酸系化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の防水部品。
【請求項5】
前記亜リン酸塩(E)が、亜リン酸アルミニウム又は亜リン酸水素アルミニウムである、請求項1~4のいずれかに記載の防水部品。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)の融点が280℃以上である、請求項1~5のいずれかに記載の防水部品。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド及び主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の防水部品。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ジアミン単位の50~100モル%が炭素数4~18の脂肪族ジアミン単位であるポリアミドである、請求項1~7のいずれかに記載の防水部品。
【請求項9】
前記無機強化材(B)が、ガラス繊維、ミルドファイバー、ワラストナイト、マイカ、ガラスフレイク及びガラスビーズからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれかに記載の防水部品。
【請求項10】
前記無機強化材(B)が、円形断面及び非円形断面を有するガラス繊維から選ばれる少なくとも1種であり、前記非円形断面を有するガラス繊維の断面の外周長さが、前記非円形断面と同じ断面積の前記円形断面を有するガラス繊維の外周長さに対して、1.05~1.8倍である、請求項1~9のいずれかに記載の防水部品。
【請求項11】
表面実装工程に適用される用途に使用される、請求項1~10のいずれかに記載の防水部品。
【請求項12】
外部接続端子である、請求項1~11のいずれかに記載の防水部品。
【請求項13】
スイッチである、請求項1~11のいずれかに記載の防水部品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の防水部品を備えた電子機器。
【請求項15】
携帯電子機器である、請求項14に記載の電子機器。
【請求項16】
熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、ポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)、下記式(I)又は下記式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部であり、前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である熱可塑性樹脂組成物を用いる、
前記熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体を用いる電子機器の防水方法。
【化3】
[図:0001431159000003.jpg]
【化4】
[図:0001431159000004.jpg]
[式(I)及び式(II)中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素数が1~16の直鎖又は分鎖のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を示す。R1とR2及びR4とR5は互いに結合して環を形成してもよい。R3は、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐鎖のアルキレン基、炭素数が6~10のアリーレン基、炭素数が7~20のアルキルアリーレン基、炭素数が3~10のシクロアルキレン基、炭素数が7~10のアラルキレン基、又は炭素数が7~20のアリールアルキレン基を示す。Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛を示す。mは、1~4の整数である。nは、1~4の整数である。xは、1~4の整数である。式(II)において、m、x、nは、mx=2nの関係式を満たす。]
【請求項17】
熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、及びポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)、下記式(I)又は下記式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部であり、前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である熱可塑性樹脂組成物を用いる、
前記熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体の防水のための使用。
【化5】
[図:0001431159000005.jpg]
【化6】
[図:0001431159000006.jpg]
[式(I)及び式(II)中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素数が1~16の直鎖又は分鎖のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を示す。R1とR2及びR4とR5は互いに結合して環を形成してもよい。R3は、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐鎖のアルキレン基、炭素数が6~10のアリーレン基、炭素数が7~20のアルキルアリーレン基、炭素数が3~10のシクロアルキレン基、炭素数が7~10のアラルキレン基、又は炭素数が7~20のアリールアルキレン基を示す。Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛を示す。mは、1~4の整数である。nは、1~4の整数である。xは、1~4の整数である。式(II)において、m、x、nは、mx=2nの関係式を満たす。]
【請求項18】
請求項1~11のいずれかに記載の防水部品を外部接続端子として用いる、電子機器の防水方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれかに記載の防水部品をスイッチとして用いる、電子機器の防水方法。
【請求項20】
熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、及びポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)、下記式(I)又は下記式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部であり、前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である熱可塑性樹脂組成物と、金属部品とをインサート成形する、防水部品の製造方法。
【化7】
[図:0001431159000007.jpg]
【化8】
[図:0001431159000008.jpg]
[式(I)及び式(II)中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素数が1~16の直鎖又は分鎖のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を示す。R1とR2及びR4とR5は互いに結合して環を形成してもよい。R3は、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐鎖のアルキレン基、炭素数が6~10のアリーレン基、炭素数が7~20のアルキルアリーレン基、炭素数が3~10のシクロアルキレン基、炭素数が7~10のアラルキレン基、又は炭素数が7~20のアリールアルキレン基を示す。Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛を示す。mは、1~4の整数である。nは、1~4の整数である。xは、1~4の整数である。式(II)において、m、x、nは、mx=2nの関係式を満たす。]」
第3 申立理由の概要及び証拠方法
特許異議申立人が主張する特許異議の申立理由、及び、特許異議申立人が提出した証拠方法は、概略以下のとおりである。
1 申立理由
(進歩性欠如)
本件特許発明1~20は、下記甲第1号証~甲第11号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明1~20に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 特許異議申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:特開2013-249363号公報
甲第2号証:国際公開第2020/153330号
甲第3号証:特開2017-2146号公報
甲第4号証:特表2016-509114号公報
甲第5号証:特開2010-274456号公報
甲第6号証:国際公開第2009/151099号
甲第7号証:特開2020-23607号公報
甲第8号証:特開2021-167384号公報
甲第9号証:国際公開第2008/126381号
甲第10号証:特開2014-231603号公報
甲第11号証:“Eガラスファイバ:チョップドストランド”,[online],日本電気硝子株式会社,[取得日2025年7月28日],取得先<https://www.neg.co.jp/products/e-chopped-strand/index.html?utm_source=chatgpt.com>
以下、甲号証に付された番号を使って、それぞれ、「甲1」などという。
第4 当合議体の判断
1 甲1を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に記載されたポリアミド樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である、防水性の樹脂金属複合体の発明(甲1の【請求項1】~【請求項3】、【請求項7】、【0116】等を参照のこと。以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ゴム質重合体(B)0.1~4重量部、ならびに、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、および、芳香族ジカルボキシ単位(R)から選ばれる少なくとも1種の構造単位と3官能以上の有機残基(S)とを含み、かつ、Sの含有量が樹状ポリエステルを構成する全構成単位中7.5~50モル%の範囲にある、溶融液晶性を示す樹状ポリエステル樹脂(C)0.01~10重量部を配合してなり、前記ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、さらに無機充填材0.1~200重量部を配合してなり、前記ゴム質重合体(B)がオレフィン系樹脂を含む、ポリアミド樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である、防水性の樹脂金属複合体。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
(一致点)
「熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である防水部品であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、ポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)を含む、防水部品。」
(相違点1-1)
本件特許発明1は、「熱可塑性樹脂組成物が」「下記式(I)又は下記式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)」(当合議体注:式(I)又は下記式(II)の記載は省略する。以下同じ。)を含み、「前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、」「前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えるのか明らかでない点。
(相違点1-2)
本件特許発明1は、「前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部」であるのに対し、甲1発明は、「ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、さらに無機充填材0.1~200重量部を配合してなり」、「ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、」「オレフィン系樹脂を含む」「ゴム質重合体(B)0.1~4重量部」を配合している点。
ウ 判断
上記相違点1-1について検討する。
「熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である防水部品において、熱可塑性樹脂100質量部に対して、式(I)又は式(II)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩の含有量を25~40質量部、亜リン酸塩の含有量を2~15質量部とする」という、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成は、特許異議申立人が提出した甲2~甲11のいずれにも記載も示唆もされていないし、同構成が周知技術又は技術常識であることを示す他の証拠も発見できない。また、甲1には、リン系難燃剤の種類および配合量について記載されていないため、甲1発明において、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とする動機付けはないというべきである。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書90~92頁において、
「甲第1号証には、リン系難燃剤の種類および配合量は明記されていない。
そこで、甲第3号証および甲第4号証を参照する。
・・・(中略)・・・
すなわち、難燃性ポリアミド樹脂組成物の技術分野において、電気・電子分野等において、優れた難燃性を付与するために、
・(A)ポリアミド樹脂25~80質量%に対して、(B)ホスフィン酸塩類3~30質量%、(C)亜リン酸塩1~15質量%を配合すること、および、
・1~96質量%の一つまたは二つ以上の熱可塑性ポリアミドに対して、2~25質量%の式(I)のジアルキルホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマー、1~20質量%の亜リン酸の塩を配合すること、
は周知であった。
したがって、当業者は、これら周知技術を参照することにより、甲1発明において、所定量のホスフィン酸塩および亜リン酸塩を配合して、構成要件1E、1F、1I、1Jを具備させることについて、何ら困難ではない。」
と主張する。
しかしながら、甲3及び甲4の記載事項から認定される「これらの周知技術」がどのような技術であるのかが不明である。また、甲3及び甲4の記載を見ても、「前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、」「前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部」及び「前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部」をともに含有させるとの、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成は記載されていないため、甲3及び甲4の記載事項から同構成が周知であったということもできない。
したがって、上記主張は採用できない。
エ 小括
上記ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2~15、18及び19について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~15、18及び19は、いずれも、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~15、18及び19は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~15、18及び19も、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明16、17及び20について
本件特許発明16、17及び20について検討するに、実質的には、本件特許発明16は本件特許発明1を用いる電子機器の防水方法であり、本件特許発明17は本件特許発明1の防水のための使用であり、本件特許発明20は本件特許発明1の製造方法である。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明16、17及び20も、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲2を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、実施例14に係る難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形した成形品の発明(甲2の[0050]~[0058]、[0049]等を参照のこと。以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリアミド66(A)42質量部、変性SEBS(C)1.7質量部、ジメチルホスフィン酸アルミニウム(E-1)12質量部、亜燐酸アルミニウム(E-2)3質量部、ガラス繊維(F)40質量部を含む、難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形した成形品。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
(一致点)
「熱可塑性樹脂組成物を成形した部品であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)、無機強化材(B)、下記式(I)又は下記式(II)(当合議体注:式(I)又は下記式(II)の記載は省略する。)で表される少なくとも1種のホスフィン酸塩(D)、及び亜リン酸塩(E)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、前記無機強化材(B)の含有量が8~130質量部であり、前記ホスフィン酸塩(D)の含有量が25~40質量部、前記亜リン酸塩(E)の含有量が2~15質量部である、熱可塑性樹脂組成物を成形した部品。」
(相違点2-1)
本件特許発明1は、「熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である防水部品」であるのに対し、甲2発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形した成形品である点。
(相違点2-2)
本件特許発明1は、「ポリオレフィン(C1)および/又は長鎖脂肪酸系化合物(C2)」を含み、「前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、」「前記ポリオレフィン(C1)および/又は前記長鎖脂肪酸系化合物(C2)の含有量が0.3~40質量部」であるのに対し、甲2発明は、そのような構成を備えるのか明らかでない点。
ウ 判断
上記相違点2-1について検討する。
甲2の[0049]には「本発明のポリアミド樹脂組成物は、高度の難燃性と高耐衝撃性を両立させた成形品を成形することができるため、電気・電子部品、自動車部品、建築部材など各種用途に幅広く利用することができる。具体的な用途としては、遮断器や開閉器の筐体、パソコンなどの電機、電子機器筐体や自動車の電装部品などに好適かつ有用である」と記載されているが、当該記載を含む甲2の記載から、甲2発明の「成形品」が本件特許発明1のような「熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体」であるということはできない。
また、甲2には、インサート成形体の熱可塑性樹脂組成物と金属部品との接合面における防水性について記載も示唆されておらず、甲2発明の「成形品」を「熱可塑性樹脂組成物及び金属部品からなるインサート成形体である防水部品」とする動機付けはないというべきである。
そうすると、電気製品用途に使用される樹脂組成物において金属密着性を高めることが周知の課題である(甲5~甲7参照)としても、甲2発明において、上記相違点2-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
エ 小括
上記ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2~15、18及び19について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~15、18及び19は、いずれも、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~15、18及び19は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~15、18及び19も、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明16、17及び20について
本件特許発明16、17及び20について検討するに、実質的には、本件特許発明16は本件特許発明1を用いる電子機器の防水方法であり、本件特許発明17は本件特許発明1の防水のための使用であり、本件特許発明20は本件特許発明1の製造方法である。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明16、17及び20も、甲1~甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~20に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものではない。
第5 むすび
請求項1~20に係る特許は、いずれも、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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