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特許異議申立

2024-700689

焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法

審判番号
2024-700689
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-071406
登録番号
7421829
請求日
2024年07月22日
審決日
2025年06月20日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】NiKKiFron株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
  • 【異議申立人】尾崎 真実
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 関根 洋之
  • 審判官 河原 正
分類
P1651.113-YAA(B29B) / P1651.121-YAA(B29B) / P1651.537-YAA(B29B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7421829号発明「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7421829号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3について訂正することを認める。 特許第7421829号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第7421829号の請求項1~3に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2023-71406号)は、令和5年 4月25を出願日とする特許出願であって、令和 6年 1月17日にその特許権の設定の登録がされ、令和6年 1月25日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。 令和6年 7月22日 :特許異議申立人 尾崎 真実(以下「異議申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て(異議申立人が証拠として提出した甲第1号証を「甲1」と略し、甲第2号証等も同様とする。) 令和6年10月15日付け:取消理由通知書 令和6年11月25日 :面接記録(面接日:令和6年11月25日) 令和6年12月10日 :応対記録(初回応対:令和6年12月 4日) 令和6年12月18日 :応対記録(初回応対:令和6年12月11日) 令和6年12月20日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和6年12月20日 :意見書(特許権者)の提出 令和7年 1月21日付け:手続補正指令書(方式) 令和7年 2月25日 :手続補正書(方式)(令和6年12月20日提出の訂正請求書の補正)の提出 令和7年 4月14日 :意見書(異議申立人)の提出 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨及び訂正の内容 (1) 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7421829号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める、というものである。 (2) 訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。 ア 請求項1~2からなる一群の請求項に係る訂正の内容 (ア) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み、」とあるのを、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (イ) 訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0006】に「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み、」とあるのを、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重董比率が30%以下の場合を除く)、」に訂正する。 イ 請求項3からなる一群の請求項に係る訂正の内容 (ア) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、」とあるのを、「第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)、」に訂正する。 (イ) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に「を用いて前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の外表面に前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉を付着させた混合体を生成する混合体生成工程と、」とあるのを、「を用いて前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている混合体を生成する混合体生成工程と、」に訂正する。 (ウ) 訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0010】に「第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、」とあるのを、「第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)、」に訂正する。 (エ) 訂正事項6 願書に添付した明細書の段落【0010】に「を用いて前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の外表面に前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉を付着させた混合体を生成する混合体生成工程と、」とあるのを、「を用いて前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている混合体を生成する混合体生成工程と、」に訂正する。 (3) 訂正要件の判断 ア 請求項1~2からなる一群の請求項に係る訂正について (ア) 訂正事項1について a 訂正の目的 訂正事項1による請求項1の訂正は、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」が除かれた、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体」に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 新規事項の追加の有無 前記aで述べた「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」を請求項1から除くことによって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、訂正事項1による請求項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記a及びbに照らせば、訂正事項1による請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 請求項2についても同様である。 e 小括 よって、訂正事項1による請求項1の訂正は、訂正要件を満たす。 (イ) 訂正事項2について a 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、訂正事項1による訂正により請求項1の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0006】の記載を請求項1の記載に整合させる訂正である。 そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の追加の有無 前記aのとおりであるから、訂正事項2による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記aのとおりであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 小括 よって、訂正事項2による訂正は、訂正要件を満たす。 ア 請求項3からなる一群の請求項に係る訂正について (ア) 訂正事項3について、 a 訂正事項3による請求項3の訂正は、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」が除かれた、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法」に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 新規事項の追加の有無 前記aのとおりであるから、訂正事項3による請求項3の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記a及びbに照らせば、訂正事項3による請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 小括 よって、訂正事項3による請求項3の訂正は、訂正要件を満たす。 (イ) 訂正事項4について a 訂正の目的 訂正事項4による請求項3の訂正は、請求項3の「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の外表面と「バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の付着の程度が明確でなかったところ、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」が「前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」に「突き刺さっている」として付着の程度を明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の追加の有無 訂正事項4による請求項3の訂正は、本件特許明細書等の【0018】の「リサイクル粉10とバージン粉20を撹拌装置で混合させることにより焼成前の軟らかいバージン粉20にリサイクル粉10が突き刺さることになる。バージン粉20に突き刺さったリサイクル粉10は、バージン粉20の粘着性によって両者の付着状態が維持されているものと推測される。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、訂正事項4による請求項3の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記a及びbに照らせば、訂正事項4による請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 小括 したがって、訂正事項4による請求項3の訂正は、訂正要件を満たす。 (イ) 訂正事項5について a 訂正の目的 訂正事項5による訂正は、訂正事項3による訂正により請求項3の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0010】の記載を請求項3の記載に整合させる訂正である。 そうすると、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。 b 新規事項の追加の有無 前記aのとおりであるから、訂正事項5による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記aのとおりであるから、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 小括 よって、訂正事項5による訂正は、訂正要件を満たす。 (イ) 訂正事項6について a 訂正の目的 訂正事項6による訂正は、訂正事項4による訂正により請求項3の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0010】の記載を請求項3の記載に整合させる訂正である。 そうすると、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。 b 新規事項の追加の有無 前記aのとおりであるから、訂正事項6による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記aのとおりであるから、訂正事項6による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 d 小括 よって、訂正事項6による訂正は、訂正要件を満たす。 4 まとめ 本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」とい、請求項2以降についても同様とする。また、総称して、「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)、 前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法は、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法以上であって、 前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き剌さっていることを特徴とする焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体。 【請求項2】 請求項1記載の焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体により成形されたプレス成形品を焼成してなることを特徴とするリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体。 【請求項3】 第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重最比率が30%以下の場合を除く)、を用いて前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている混合体を生成する混合体生成工程と、 前記混合体生成工程により生成された前記混合体を成形金型に投入する混合体投入工程と、 前記成形金型を所要型締力で型締めしてプレス成形品を形成するプレス工程と、 前記プレス工程により形成された前記プレス成形品を焼成する焼成工程と、をそれぞれ実行することを特徴とする焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法。」 第4 取消理由通知書に記載した取消しの理由 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る特許に対して、令和6年10月15日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消しの理由の概要は、次のとおりである。 「●理由1(新規性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条1項3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 ●理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (引用例等一覧) 甲1:特開2015-108126号公報 甲2:特開平5-262892号公報 ●理由3(明確性要件) 本件特許の請求項3に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないから、請求項3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」 第5 当合議体の判断 1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)についての合議体の判断 (1) 甲1の記載及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載 甲1は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであって、そこには以下の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得ることを特徴とするフッ素樹脂のリサイクル方法。 【請求項2】 前記フッ素樹脂がPTFE樹脂である請求項1記載のフッ素樹脂のリサイクル方法。 ・・・略・・・ 【請求項4】 前記加熱済みフッ素樹脂粉砕物の平均粒径は、100μm以下である請求項1~3何れか1項に記載のフッ素樹脂のリサイクル方法。 【請求項5】 前記成形法が高圧フリーシンター法であり、通常の予備成形圧力よりも高い150~200MPaの予備成形条件で予備成形品を得た後、通常の焼成温度条件で焼成して混合系フッ素樹脂成形品を得る請求項1~4何れか1項に記載のフッ素樹脂のリサイクル方法。 【請求項6】 前記成形法がホットプレス法であり、通常の予備圧力条件で予備成形品を得た後、焼成し、その後に溶融状態からプレスしながら冷却して混合系フッ素樹脂成形品を得る請求項1~4何れか1項に記載のフッ素樹脂のリサイクル方法。」 (イ) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、フッ素樹脂のリサイクル方法に係わり、更に詳しくは加熱済みPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂成形品の廃材を未加熱PTFE樹脂と混合して再原料化し、特定の成形法にて加熱成形することによって、未加熱PTFE樹脂のみからなるものと同等若しくは近似の機械的物性の成形品を得ることが可能なフッ素樹脂のリサイクル方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来から、加熱済みPTFE樹脂成形品の機械加工過程で大量に発生する切削屑・端屑などの廃材の処理が問題となっている。経験的に、未加熱PTFE樹脂に対して加熱済みPTFE樹脂廃材が30%程度発生している。PTFE樹脂は、溶融時の粘度が高いことから、熱溶融流動性を利用した廃材のリサイクルが不可能である。また、PTFE樹脂廃材を粉末化して成形用原料として再利用すると成形品の機械的物性が著しく低下してしまう。そのため、従来は加熱済みPTFE樹脂廃材の殆どが産業廃棄物として廃棄処理されていた。 【0003】 そこで、特許文献1では、加熱済の非溶融加工性フッ素樹脂(廃材)を、予め未加熱の非溶融加工性フッ素樹脂(未使用原料)の微細体よりも最大直線長さが大きい形状の微細体若しくはそれらの形状を含む微細体に変形化処理して再生原料とし、その後、未使用原料に混合して再生原料とし、従来通りの成形加工法、例えばフリーシンター法、フリーベーキング法、ホットコイニング法、ホットモールディング法及びアイソスタティックモールディング法等で成形して成形品を得ることにより、引張り強度を未使用原料のみからなる成形品の65%以上にすることが可能なリサイクル方法が開示されている。また、特許文献1では、フッ素樹脂廃材を未加熱でフイブリル化性の非溶融加工性フッ素樹脂(未使用原料)に混合する場合には、フッ素樹脂廃材を、予め未加熱の非溶融加工性フッ素樹脂の微細体よりも最大直線長さが及びアスペクト比が大きい形状の微細体に変形化処理して再生原料とするというものである。ここで、廃材由来の再生原料粉末40重量%と未使用原料粉末60重量%を混合することで、未加熱PTFE樹脂と同等若しくは近似の機械的物性を持つ成形品が得られている。 【0004】 しかしながら、特許文献1の方法では、加熱済みPTFE樹脂成形品の粉砕物に変形処理を施す必要があり、コストが高くなることから実用的でなかった。粉砕物に処理を施すことなく、未加熱PTFE樹脂と同等若しくは近似の機械的物性を持つ成形品を得ることが課題である。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2006-070233号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、加熱済みPTFE樹脂成形品の機械加工過程で大量に発生する切削屑・端屑などの廃材から変形化処理を施すことなく再生原料とし、それを未加熱PTFE樹脂と混合し、特定の成形法にて加熱成形することによって、未加熱PTFE樹脂のみからなるものと同等若しくは近似の機械的物性の成形品を得ることが可能なフッ素樹脂のリサイクル方法を提供する点にある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、前述の課題解決のために、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得ることを特徴とするフッ素樹脂のリサイクル方法を構成した(請求項1)。 ・・・略・・・ 【0010】 そして、前記加熱済みフッ素樹脂粉砕物の平均粒径は、100μm以下であるとより好ましい(請求項4)。 【0011】 具体的には、前記成形法が高圧フリーシンター法であり、通常の予備成形圧力よりも高い150~200MPaの予備成形条件で予備成形品を得た後、通常の焼成温度条件で焼成して混合系フッ素樹脂成形品を得るのである(請求項5)。 【0012】 あるいは、前記成形法がホットプレス法であり、通常の予備圧力条件で予備成形品を得た後、焼成し、その後に溶融状態からプレスしながら冷却して混合系フッ素樹脂成形品を得るのである(請求項6)。 ・・・略・・・ 【発明の効果】 【0014】 以上にしてなる本発明のフッ素樹脂のリサイクル方法は、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得るので、加熱済みPTFE樹脂成形品の機械加工過程で大量に発生する切削屑・端屑などの廃材から変形化処理を施すことなく再生原料として利用することができ、産業廃棄物の発生量を極力抑制できるばかりでなく、リサイクルによる省資源化に寄与し、ひいては省エネルギー、温暖化ガス排出抑制に寄与するのである。 【0015】 特に、前記成形法が高圧フリーシンター法であり、通常の予備成形圧力よりも高い150~200MPaの予備成形条件で予備成形品を得た後、通常の焼成温度条件で焼成して混合系フッ素樹脂成形品を得る、あるいは前記成形法がホットプレス法であり、通常の予備圧力条件で予備成形品を得た後、焼成し、その後に溶融状態からプレスしながら冷却して混合系フッ素樹脂成形品を得ることにより、未加熱PTFE樹脂のみからなるものと同等若しくは近似の機械的物性の成形品を得ることができるのである。ここで、高圧フリーシンター法において、通常より高い予備成形圧力で成形することにより、粉砕粒子同士の密着度が高まり、成形品の機械的物性が向上すると推測できる。また、ホットプレス法により、フッ素樹脂の溶融温度以上で加熱し、加圧したまま冷却することにより、粉砕粒子同士の密着度が高まり、成形品の機械的物性が向上すると推測できる。 【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】高圧フリーシンター法を用いた成形法を示す概念図である。 ・・・略・・・ 【図3】ホットプレス法を用いた成形法を示す概念図である。 ・・・略・・・ 【発明を実施するための形態】 【0017】 本発明のフッ素樹脂のリサイクル方法は、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得ることを特徴としている。 【0018】 ここで、本発明の「未加熱フッ素樹脂」とは、焼成していない未使用のフッ素樹脂原料を意味し、例えば、市販の重合上がり(いわゆる、バージン)の成形用の非溶融フッ素樹脂を用いることが可能である。 【0019】 また、「非溶融フッ素樹脂」とは、融点以上に加熱されても、溶融流動性を示さず、溶融流動性によらない成形加工法に使用されるものであり、代表的にはPTFE樹脂があるが、それ以外でも、溶融流動性によらない成形加工法によるフッ素樹脂は、本発明の対象とすることが可能である。 ・・・略・・・ 【0021】 加熱済みフッ素樹脂廃材から再生原料粉末を得るには、公知の粉砕方法で廃材を粉砕する。例えば、加熱済みフッ素樹脂廃材を予め適宜な方法で小さなサイズに粗粉砕した後、冷凍粉砕装置で平均粒径100μm以下に微粉砕する。ここで、平均粒径100μmより大きいと未加熱フッ素樹脂の粒径よりも大きくなって機械的物性が大幅に低下するので好ましくない。 【0022】 通常のフリーシンター法は、成形用の未加熱フッ素樹脂粉末を常温の金型に均一に充填し、予備成形圧力が例えば10~30MPa等により圧縮成形して予備成形品を形成し、この予備成形品を熱風循環炉等で樹脂の融点以上(例えば360℃)で一定時間(例えば、4~10時間)焼成し、冷却によって加工用素材(切削用素材であるビレット)を形成して、それを機械加工して所望形状の成形品に仕上げる成形加工法である。 【0023】 本発明における加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末は、特に変形化処理を行わず、単に所定の粒度に微粉砕したものである。そして、再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得るのである。ここで、再生原料粉末が30重量%を超えると、十分な機械的物性が得られなくなる。 【0024】 本発明に係る高圧フリーシンター法は、通常の予備成形圧力よりも高い150~200MPaの予備成形条件で予備成形品を得た後、通常の焼成温度条件で焼成して混合系フッ素樹脂成形品を得る成形法である。また、本発明に係るホットプレス法は、通常の予備圧力条件で予備成形品を得た後、通常の焼成温度よりも高い370~380℃の焼成条件で焼成し、焼成後に溶融状態からプレスしながら冷却して混合系フッ素樹脂成形品を得る成形法である。本発明に係るホットプレス法において、通常の焼成温度よりも高い370~380℃の焼成条件で焼成する理由は、加熱炉内で加熱した金型をプレス機にセットするまでに通常の焼成温度360℃を下回らないようにするためであり、溶融状態で加圧し冷却保持することが特徴である。 【0025】 <未加熱PTFE樹脂粉末(未使用原料粉末)> 本実施形態で使用した未加熱(未焼成)PTFE樹脂は、テフロン7J(三井デュポンクロロケミカル社製)であり、平均粒径は約50μmである。 【0026】 <加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)の調製> 上記の未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を金型に充填し、常温で50MPaにて予備成形したものを、360℃で5時間焼成し、成形品(φ90mm×150mm)を作製した。この成形品を旋盤による機械加工してできた厚さ0.1mm程度のテープ状加工屑を冷凍粉砕して、平均粒径が約35μmの再生原料粉末を作製した。 【0027】 <混合系PTFE樹脂原料粉末の調製> 上記未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を70重量%、加熱済みPTFE樹脂粉末を30重量%の量的比率にてミキサーで2分間混合して、混合系PTFE樹脂原料粉末を調製した。 【実施例1】 【0028】 <高圧フリーシンター法> 図1は、本発明で採用した高圧フリーシンター法の概要を示している。先ず、常温の金型1に前述の混合系PTFE樹脂原料粉末を充填し、予備成形圧力200MPa、圧力保持時間5分間で予備成形品(φ50mm×60mm)を得る。この予備成形品2を脱型後、フリーの状態で熱風循環炉3にて360℃、5時間焼成する。それから、焼成後の成形品を打ち抜きにて引張試験用ダンベル試験片を作製した。 【0029】 比較試験のため、本発明の未加熱PTFE樹脂粉末70重量%、加熱済みPTFE樹脂粉末30重量%の混合系PTFE樹脂原料粉末の他に、未加熱PTFE樹脂粉末(未使用原料粉末)100%、加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)100%からなる原料粉末を用意した。そして、それぞれの原料粉末を用いて通常のフリーシンター法(予備成形圧力50MPa、5分間(常温))と、本発明の高圧フリーシンター法(予備成形圧力150MPa、5分間(常温))と、本発明の高圧フリーシンター法(予備成形圧力200MPa、5分間(常温))とで予備成形品を作製し、その後の焼成条件は通常の360℃、5時間と共通である。つまり、次の9種類の試験片(1-1)~(1-9)を作製した。 【0031】 <機械的物性の試験方法> (1)比重測定 ・測定法:水中置換法 (2)DSC測定 ・装置:DSC6220(SII社製) ・昇温速度:5℃/分 ・融点:1strun(昇温)の吸熱ピーク温度 ・融解熱量:1strun(昇温)の融解開始温度から終了温度までのDSC曲線の積分値 (3)引張測定 ・試験片:各成形品から機械加工にて厚さ2.5mmの円板を作製し、円板からマイクロダンベル(全長40mm、平行部寸法20mm×4.5mm)を作製した。 ・試験速度:200mm/分 ・・・略・・・ 【0033】 【表1】 表1 高圧フリーシンター法による成形 [図:0001426819000001.jpg] 【0034】 この結果より、本発明に係る高圧フリーシンター法(試験片(1-5):予備成形圧力150MPa、試験片(1-6):予備成形圧力200MPa)を採用した再生成形品(再生原料30%)の機械的物性は、未使用原料を用いた成形品(試験片(1-1):予備成形圧力50MPa)の機械的物性と同等若しくは近似していることが分かった。試験片(1-4)の再生原料粉末30%、通常のフリーシンター法(50MPa)の再生成形品の場合、伸び-引張応力曲線の傾向が本発明の高圧フリーシンター法(試験片(1-5)、試験片(1-6))の再生成形品と略同じであるが、引張最大応力と引張破断伸びにおいて若干劣っていることがわかる。比重測定より、再生原料粉末は予備成形圧力が大きくなることで高密度化することが分かり、その結果、予備成形圧力が大きくなると粒子同士の密着度が向上し、焼成中の緩和が小さくなると考えられる。また、引張測定により、予備成形圧力が大きくなることで、引張最大応力、引張破断伸びが向上することが分かり、予備成形圧力が大きくなることでより緻密化したためと考えられる。 【実施例2】 【0035】 <ホットプレス法> 図3は、本発明で採用したホットプレス法の概要を示している。先ず、常温の金型1に前述の混合系PTFE樹脂原料粉末を充填し、予備成形圧力30MPa、圧力保持時間5分間で予備成形品(φ93mm×φ52mm×60mm)を得る。金型1に予備成形品2を入れたままの状態で、熱風循環炉3にて380℃、5時間焼成する。それから、金型1をプレス機にセットして予備成形品2が溶融状態で30MPaの圧力で本成形しながら冷却し、金型内の温度が200℃以下になるまで約1時間加圧し続ける。成形品を脱型後、成形時の歪みをとるためアニール処理(200℃で6時間)を行う。その後、成形品の打ち抜きにて引張試験用ダンベル試験片を作製した。 【0036】 比較試験のため、本発明の未加熱PTFE樹脂粉末70重量%、加熱済みPTFE樹脂粉末30重量%の混合系PTFE樹脂原料粉末の他に、未加熱PTFE樹脂粉末(未使用原料粉末)100%、加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)100%からなる原料粉末を用意した。 【0037】 そして、これらの原料粉末を用いて前述のホットプレス法を用いて成形品を得た。また、比較のためこれら原料粉末を用いて予備成形圧力50MPaの通常のフリーシンター法による成形品も用いた。つまり、次の6種類の試験片(2-1)~(2-6)を作製した。 【0038】 ・試験片(2-1):未使用原料粉末100%、通常のフリーシンター法(50MPa) ・試験片(2-2):未使用原料粉末100%、ホットプレス法 ・試験片(2-3):再生原料粉末30%、未使用原料粉末70%、通常のフリーシンター法(50MPa) ・試験片(2-4):再生原料粉末30%、未使用原料粉末70%、ホットプレス法 ・試験片(2-5):再生原料粉末100%、通常のフリーシンター法(50MPa) ・試験片(2-6):再生原料粉末100%、ホットプレス法 【0039】 尚、試験片(2-1)は試験片(1-1)と同一、試験片(2-3)は試験片(1-4)と同一、試験片(2-5)は試験片(1-7)と同一である。また、機械的物性の試験方法と試験片の形状は前記同様である。 ・・・略・・・ 【0040】 【表2】 表2 ホットプレス法による成形 [図:0001426819000002.jpg] 【0041】 この結果より、本発明に係るホットプレス法を採用した再生成形品の機械的物性は、未使用原料を用いた成形品の機械的物性と同等若しくは近似していることが分かった。比重測定より、再生原料粉末は高温でホットプレスすることで高密度化することが分かり、これは溶融状態で加圧されることで緩和が起こらず、顕著に緻密化したためであると考えられる。また、引張測定により、高温でホットプレスすることで引張破断伸びが向上することが分かり、これは溶融状態で加圧されることでより緻密化したためと考えられる。」 (ウ)「【図1】 [図:0001426819000003.jpg] 」 (エ) 「【図3】 [図:0001426819000004.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 (ア) 甲1発明 甲1の【請求項1】~【請求項5】、【0001】(技術分野)、【0006】(課題)、【0017】~【0019】、【0021】、【0023】、【0025】~【0034】及び【図1】等の記載から理解される、 【実施例1】(【0028】~【0034】)で採用した<高圧フリーシンター法>において使用される、<混合系PTFE樹脂原料粉末の調製>(【0025】~【0027】)に記載の調整方法によりで調製された、次の「混合系PTFE樹脂原料粉末」の発明を、「甲1発明」という。 「 未加熱PTFE樹脂粉末(未使用原料粉末)として、平均粒径が50μmのテフロン7J(三井デュポンフロロケミカル社製)である、未加熱(未焼成)PTFE樹脂を使用し、(【0025】) 上記未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を金型に充填し、常温で50MPaにて予備成形したものを、360℃で5時間焼成し、成形品(φ90mm×150mm)を作製し、この成形品を旋盤による機械加工してできた厚さ0.1mm程度のテープ状加工屑を冷凍粉砕して、平均粒径が約35μmの再生原料粉末を作製して、加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)を調製し、(【0026】) 上記未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を70重量%、上記加熱済みPTFE樹脂粉末を30重量%の量的比率にてミキサーで2分間混合して、調製した、混合系PTFE樹脂原料粉末。(【0027】)」 (当合議体注:【0025】における「テフロン7J(三井デュポンクロロケミカル社製)」との記載は、「テフロン7J(三井デュポンフロロケミカル社製)」の誤記と認められる。また、引用発明の認定の根拠となった記載の段落番号を、参考のため記載している。)。 (イ) 甲1成形品発明 甲1の【請求項1】~【請求項5】、【0001】、【0006】、【0017】~【0019】、【0021】、【0023】、【0025】~【0034】(実施例1等)及び【図1】等の記載から理解される、「常温の金型1に」甲1発明の「混合系PTFE樹脂原料粉末を充填し、予備成形圧力200MPa、圧力保持時間5分間で予備成形品2(φ50mm×60mm)を得」て、「この予備成形品2を脱型後、フリーの状態で熱風循環炉3にて360℃、5時間焼成し」てなる「成形品」(【0028】)の発明を、「甲1成形品発明」という。 (当合議体注:甲1成形品発明においては、【0028】の「予備成形品」及び「予備成形品2」との記載を、「予備成形品2」に表記を統一している。) (ウ) 甲1フッ素樹脂リサイクル方法発明 甲1の【請求項1】~【請求項5】、【0001】、【0006】、【0017】~【0019】、【0021】、【0023】、【0025】~【0034】(実施例1等)及び【図1】等の記載から理解される、「未加熱PTFE樹脂粉末(未使用原料粉末)として、平均粒径が50μmのテフロン7J(三井デュポンフロロケミカル社製)である、未加熱(未焼成)PTFE樹脂を使用し、(【0025】) 上記未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を金型に充填し、常温で50MPaにて予備成形したものを、360℃で5時間焼成し、成形品(φ90mm×150mm)を作製し、この成形品を旋盤による機械加工してできた厚さ0.1mm程度のテープ状加工屑を冷凍粉砕して、平均粒径が約35μmの再生原料粉末を作製して、加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)を調製し、(【0026】) 上記未加熱PTFE樹脂粉末(テフロン7J)を70重量%、上記加熱済みPTFE樹脂粉末を30重量%の量的比率にてミキサーで2分間混合して、混合系PTFE樹脂原料粉末を調製し(【0027】)」、 「常温の金型1に」「混合系PTFE樹脂原料粉末を充填し、予備成形圧力200MPa、圧力保持時間5分間で予備成形品2(φ50mm×60mm)を得」て、「この予備成形品2を脱型後、フリーの状態で熱風循環炉3にて360℃、5時間焼成」して、「成形品」を得る(【0028】)、「フッ素樹脂のリサイクル方法」(【請求項1】、【0001】、【0006】等)の発明を、「甲1フッ素樹脂リサイクル方法発明」という。 (2) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と、甲1発明を対比する。 (ア) バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉 a 甲1発明の「未加熱PTFE樹脂粉末」は、「未使用」、「未焼成」の「PTFE樹脂」(「テフロン7J(三井デュポンフロロケミカル社製)」)からなる「粉末」である。 b ここで、三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J」は、PTFEモールディングパウダーであり、また、PTFEモールディングパウダーは懸濁重合法によって製造されたものを指すことは、当業者の技術常識である。 例えば、特開2003-239932号公報の【0027】の「(5)PTFE[PTFE-1]:三井・デュポンフロロケミカル社製;テフロン7J(モールディングパウダー)」、 特開2022-140773号公報の【0005】の「懸濁重合法により製造されたPTFEは、モールディングパウダーと呼ばれ」、 甲2の【0009】の「PTFE樹脂は特に限定されず、主に圧縮成形に用いられるテトラフルオロエチレンの懸濁重合によって得られるモールディングパウダー」、【0015】の「PTFEモールディングパウダー(三井デュポンフロロケミカル製、“テフロン”7-J)」、 特開2022-175901号公報の【0039】の「PTFE(モールディング)(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製、テフロン(登録商標)PTFE モールディングパウダー 7-J、懸濁重合品、・・・)」等の記載を参照(当合議体注:下線は合議体が付したものである。以下同様。)。 c 上記aとbより、甲1発明の「未加熱PTFE樹脂粉末」は、「未焼成」、「未使用」、すなわちバージン材からなる、懸濁重合法によって製造された、「PTFE樹脂」の「粉末」といえるから、本件特許発明1の「バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」に相当する。 (イ) 焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉 a 甲1発明の「加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)」は、上記(ア)の(懸濁重合法によって製造された)「未加熱PTFE樹脂粉末」を「予備成形」、「焼成」して「作製し」た「成形品」を「機械加工してできた」「テープ状加工屑を冷凍粉砕して」「作製し」た「粉末」である。 b 上記aより、甲1発明の「加熱済みPTFE樹脂粉末(再生原料粉末)」は、本件特許発明1の「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」に相当する。 (ウ) 混合体 a 甲1発明の「混合系PTFE樹脂原料粉末」は、「平均粒径が約35μm」の「加熱済みPTFE樹脂粉末」を「30重量%」、「平均粒径が50μm」の「未加熱PTFE樹脂粉末」を「70重量%」で「混合して、調製した」ものである。 b 上記(ア)、(イ)及び上記aより、甲1発明の「混合系PTFE樹脂原料粉末」は、本件特許発明1の、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の」とされる、「混合体」に相当する。 そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み」との構成を具備する。 しかしながら、甲1発明は、「加熱済みPTFE樹脂粉末」と「未加熱PTFE樹脂粉末」(70重量%)の重量比率より、「加熱済みPTFE樹脂粉末」の重量比率が30%であるから、本件特許発明1から「除く」とされる「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」に該当する。そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)」との構成を満たさない(すなわち、この点は相違点となる。)。 c 上記(ア)、(イ)及び上記aより、甲1発明は、本件特許発明1の「前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法は、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法以上であって」との構成を具備する。 (エ) 一致点及び相違点 本件特許発明1と、甲1発明は、 「 焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み、 前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法は、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法以上である、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体。」の構成で一致し、以下の点で相違、あるいは一応相違する。 (相違点1-1) 本件特許発明1においては、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)」とされているのに対して、甲1発明では、その「除く」とされる「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」に該当する点。 (相違点1-2) 本件特許発明1においては、「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている」のに対して、甲1発明においては、そのようになっているかどうか不明である点。 イ 判断 (ア) 新規性について 相違点1-1は、実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。 (イ) 進歩性について 事案に鑑み、相違点1-1について検討する。 a 甲1でいう「本発明」は、「加熱済みPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂成形品の廃材を未加熱PTFE樹脂と混合して再原料化し、特定の成形法にて加熱成形することによって、未加熱PTFE樹脂のみからなるものと同等若しくは近似の機械的物性の成形品を得ることが可能なフッ素樹脂のリサイクル方法に関する」(【0001】)ものであり、 従来、「PTFE樹脂廃材を粉末化して成形用原料として再利用すると成形品の機械的物性が著しく低下してしまう」ため、「加熱済みPTFE樹脂廃材の殆どが産業廃棄物として廃棄処理されていた」(【0002】)ところ、 特許文献1(特開2006-70233号公報)に、「加熱済の非溶融加工性フッ素樹脂(廃材)を、予め未加熱の非溶融加工性フッ素樹脂(未使用原料)の微細体よりも最大直線長さが大きい形状の微細体若しくはそれらの形状を含む微細体に変形化処理して再生原料とし、その後、未使用原料に混合して再生原料とし、従来通りの成形加工法、例えばフリーシンター法・・・略・・・等で成形して成形品を得ることにより、引張り強度を未使用原料のみからなる成形品の65%以上にすることが可能なリサイクル方法」、 「フッ素樹脂廃材を未加熱でフイブリル化性の非溶融加工性フッ素樹脂(未使用原料)に混合する場合には、フッ素樹脂廃材を、予め未加熱の非溶融加工性フッ素樹脂の微細体よりも最大直線長さが及びアスペクト比が大きい形状の微細体に変形化処理して再生原料とする」、 「廃材由来の再生原料粉末40重量%と未使用原料粉末60重量%を混合することで、未加熱PTFE樹脂と同等若しくは近似の機械的物性を持つ成形品が得られ」ることが開示されているが(【0003】)、 「特許文献1の方法では、加熱済みPTFE樹脂成形品の粉砕物に変形処理を施す必要があり、コストが高くなることから実用的でなかった」、「粉砕物に処理を施すことなく、未加熱PTFE樹脂と同等若しくは近似の機械的物性を持つ成形品を得ることが課題である」(【0004】)ことに鑑みなされたものであって、 コスト、実用性の観点から、「加熱済みPTFE樹脂成形品の機械加工過程で大量に発生する切削屑・端屑などの廃材から変形化処理を施すことなく再生原料とし、それを未加熱PTFE樹脂と混合し、特定の成形法にて加熱成形することによって、未加熱PTFE樹脂のみからなるものと同等若しくは近似の機械的物性の成形品を得ることが可能なフッ素樹脂のリサイクル方法を提供する」(【0006】)ことを、発明が解決する課題とし、 当該課題解決のために、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下(但し、0重量%は含まず)と、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上を混合して混合系フッ素樹脂原料とし、この混合系フッ素樹脂原料を用いて通常の成形条件よりも予備成形圧力が高圧力の成形条件の成形法又は溶融状態のまま加圧し冷却する成形条件の成形法によって混合系フッ素樹脂成形品を得ることを特徴とするフッ素樹脂のリサイクル方法を構成したものである(【0007】【課題を解決するための手段】)。 そうすると、甲1でいう本発明のフッ素樹脂のリサイクル方法においては、混合系フッ素樹脂原料においては、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末30重量%以下とし、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%以上とすることは、上記課題を解決するための必須の構成と理解できる(【請求項1】、【0014】(【発明の効果】)及び【発明を実施するための形態】の【0017】、【0023】等の記載からも理解できることである。)。 b 加えて、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末について、甲1の【0021】には、「加熱済みフッ素樹脂廃材から再生原料粉末を得るには、公知の粉砕方法で廃材を粉砕する。例えば、加熱済みフッ素樹脂廃材を予め適宜な方法で小さなサイズに粗粉砕した後、冷凍粉砕装置で平均粒径100μm以下に微粉砕する。ここで、平均粒径100μmより大きいと未加熱フッ素樹脂の粒径よりも大きくなって機械的物性が大幅に低下するので好ましくない。」こと、【0023】には、「特に変形化処理を行わず、単に所定の粒度に微粉砕したものであること。」、「再生原料粉末が30重量%を超えると、十分な機械的物性が得られなくなる。」ことが記載されている。 そして、甲1には、甲1でいう本発明を具体化した実施例1として、甲1発明の「平均粒径が約35μm」の「加熱済みPTFE樹脂粉末」を「30重量%」、「平均粒径が50μm」の「未加熱PTFE樹脂粉末」を「70重量%」とした「混合系PTFE樹脂原料粉末」を用い、高圧フリーシンター法を採用した試験片(1-5)及び試験片(1-6)が、未使用原料を用いた成形品(試験片(1-1))の機械的物性と同等若しくは近似する機械的物性を示す(【0033】【表1】、【0034】)こと、 実施例2として、甲1発明の「混合系PTFE樹脂原料粉末」を用い、ホットプレス法を採用した試験片(2-4)が、未使用原料を用いた成形品(試験片(2-2))の機械的物性と同等若しくは近似する機械的物性を示す(【0040】【表2】、【0041】)ことが記載されている。 c 上記a及びbより、甲1でいう本発明の「フッ素樹脂のリサイクル方法」に用いられる「混合系フッ素樹脂原料」においても、加熱済みフッ素樹脂粉砕物からなる再生原料粉末を30重量%以下とし、未加熱フッ素樹脂粉末70重量%を以上とすることは、(課題を解決するための)必須の構成であり、再生原料粉末が30重量%を超えると成形品の十分な機械的物性が得られなくなると理解できる。 そうしてみると、甲1発明の「混合系PTFE樹脂原料粉末」は、「加熱済みPTFE樹脂粉末」(再生原料粉末)を「30重量%」としたものであるところ、甲1の記載に接した当業者が、「加熱済みPTFE樹脂粉末」の混合割合(重量%)を、上限の30重量%を超えた混合割合に設定しようと考えることはないから、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 d 令和7年 4月14日提出の意見書における異議申立人の主張について (a) 同意見書の2~4頁において、異議申立人は、 (A)(令和6年12月20日提出の意見書の特許権者の主張に対して、)再生原料粉末の重量比率が30%超の例が示されていないことから、「引用文献1においては、再生原料粉末の重量比率が30%超においては十分な機械的強度が確保できないことが認められる。」とは必ずしも言えない、 (B)本件明細書の図8で質量割合がリサイクル粉:バージン粉=10~40:90~60の例の平均引張強度が示されているが、リサイクル品の割合が多くなると強度が低下するという傾向があるだけで、30%超の場合に強度が顕著に向上するという結果は認められず、むしろ、30%超の例(第2実施形態)は30%以下の例(第1、第3、第4実施形態)よりも強度が劣っている、さらに、30%超の例(第2実施形態)の表面状態は第1実施形態の表面状態と同程度であると説明されていることから(本件明細書の[0023])、30%超の例と30%以下の例とで外観に違いはないと推測される、 そうであれば、30%超の例は、30%以下の例と比較して、外観は同程度で、強度は劣っており、30%超の例が30%以下の例よりも優れている点は存在しないことになり、よって、意見書で主張された有利な効果は認められない、すなわち、本件訂正発明1において、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率」に格別の技術的意義が無いことは明らかである、 (C)そして、30%以下の例は甲1に記載された発明に、30%超の例は本件訂正発明1にそれぞれ該当するため、本件訂正発明1は、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率」が相違していたとしても、甲1に記載された発明と同等品を規定しているだけに過ぎない、加えて、甲1で開示された30%の例と、本件訂正発明1で特定されている30%超とは極めて近接しているため、当業者が本件訂正発明1で含まれる30.1%を選択することは容易であるし、30%の例と30.1%の例とに物としての違いはないと考えられる、 (D)甲1で先行技術文献として記載された特開2006-070233号公報(参考資料1)の[0018]では、未加熱の成形用溶融フッ素樹脂(バージン粉に相当)と、加熱済の非溶融フッ素樹脂(リサイクル粉に相当)との量的比率が記載されており、訂正特許発明1の重量比率は、ここで記載された範囲と重複する、すなわち、訂正特許発明1の重量比率は、本件の出願時において既に十分に検討された範囲であり、この範囲を選択することに何ら困難性はなく、上記のとおり、この範囲を選択することによる有利な効果は認められない、 と主張する。 (b) しかしながら、甲1の記載(【0023】等)に接した当業者であれば、再生原料粉末が30重量%を超えると十分な機械的物性が得られなくなると理解することから、甲1発明において、「加熱済みPTFE樹脂粉末」(再生原料粉末)の重量比率として、30重量%(上限)を超えた混合割合に設定することがないことは、上記a~cで述べたとおりである。 してみると、同意見書における異議申立人の主張(A)~(D)を採用することはできない。 e したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない (ウ) 小括 本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。 また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と、甲1成形品発明とを対比すると、両者は、下記の点で少なくとも相違する。 (相違点2-1) 「混合体」が、本件特許発明2においては、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、を含み(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)」とされているのに対して、甲1成形品発明においては、その「除く」とされる「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」に該当する点。 イ 判断 (ア) 相違点2-1については、相違点1-1と同様な相違点であり、相違点2-1についての判断は上記(2)イ(ア)及び(イ)で述べたとおりである。 (イ) 小括 本件特許発明2は、甲1に記載された発明であるということはできない。また、本件特許発明2は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4) 本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と、甲1フッ素樹脂リサイクル方法発明とを対比すると、両者は、下記の点で少なくとも相違する。 (相違点3-1) 「混合体」が、本件特許発明3においては、「(ただし、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合を除く)」とされているのに対して、甲1フッ素樹脂リサイクル方法発明においては、その「除く」とされる「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率が30%以下の場合」に該当する点。 イ 判断 (ア) 相違点3-1については、相違点1-1と同様な相違点であり、相違点3-1についての判断は上記(2)イ(ア)及び(イ)で述べたとおりである。 (イ) 小括 本件特許発明3は、甲1に記載された発明であるということはできない。また、本件特許発明3は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 理由3(明確性要件)についての合議体の判断 本件訂正請求の訂正事項4による請求項3の訂正により、請求項3の記載が、「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている混合体を生成する混合体生成工程」に訂正された結果、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の外表面」と「バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の付着の程度が明確になった。 してみると、本件特許発明3が明確でないということはできないから、本件特許発明3は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。 第6 令和6年10月15日付けの取消理由通知書において採用しなかった異議申立理由について 1 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について (1) 異議申立人の主張 異議申立人は、特許異議申立書8頁「エ サポート要件」(及び令和7年4月14日提出の意見書4~5頁「(2)サポート要件」)において、 本件特許発明1~3では、「前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉が前記バージン材懸燭重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉に突き刺さっている」と記載されている、 しかしながら、突き刺さった状態であることについて、本件明細書の【0018】で「リサイクル粉10はバージン粉20よりも硬く、リサイクル粉10とバージン粉20を撹拌装置で混合させることにより焼成前の軟らかいバージン粉20にリサイクル粉10が突き刺さることになる。」と記載されているだけで、実施形態における混合体の顕微鏡写真で突き剌さった状態であることは確認できないし(図3,6,9,12)、突き刺さった状態であることを立証する他の実験データ等も示されていない、 したがって、本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものを超えて特許を請求するものである、と主張している。 (2) サポート要件についての合議体の判断 ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるべきである。 イ 判断 上記アの判断基準に基づいて、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かについて、以下検討する。 (ア) 本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の【0002】~【0005】の記載からみて、本件特許発明は、 「近年においては、焼成後フッ素樹脂粉をバージン材フッ素樹脂と所要重量比率で混合させた後に加圧成形するフッ素樹脂のリサイクル方法が」「提案されている」(【0002】)が、 従来の「リサイクル技術では、リサイクル成形品材料における焼成後フッ素樹脂粉(使用済み材料)の使用比率を高めると、リサイクル成形品の外観や引張強度に代表される機械的強度の低減が顕著になるため」、「フッ素樹脂のリサイクル方法は、いわゆる使用済み材料である焼成後フッ素樹脂粉の重量比率が30%以下」となっていたこと、 「近年においては、フッ素樹脂材料となる鉱物資源の保護や、フッ素樹脂製品の廃棄量を減らし、他製品の材料の一部としてではなく、フッ素樹脂製品として再利用(水平リサイクル)される量を増やすため、必要にして十分な機械強度が確保されるリサイクル成形品におけるフッ素樹脂粉の重量比率の更なる向上が期待されている。」こと(【0004】)に鑑みなされたものであって、 本件特許発明が解決しようとする課題(目的)は、 「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂のリサイクル成形品における焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率を高めても、良好な外観と必要にして十分な機械的強度(引張強度)を有するリサイクル成形品が実用性のある成形方法で製造可能な焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体を提供する」こと、 「良好な外観と必要にして十分な機械的強度(引張強度)を有するリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体を提供する」こと、及び、 「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の有効利用を可能にする焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法を提供する」こと(【0005】)、 であると認められる。 (イ) 特許請求の範囲に記載された発明について 本件特許発明1~3は、「第3」で述べたとおりの発明特定事項を具備する。 (ウ) 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か a 発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 (a) 「【0015】 (第1実施形態) 本実施形態においては、第1所定平均粒径寸法が40μmに調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、第1所定平均粒径寸法よりも大きい第2所定平均粒径寸法が50μmに調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉を用いた焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法を説明する。以下、本明細書においては、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のことを『リサイクル粉』と称し、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のことを『バージン粉』と称する。 ・・・略・・・ 【0016】 ・・・略・・・リサイクル粉10の粒の大きさのばらつきは少なく、表面は平滑面が占める割合が高い。・・・略・・・バージン粉20の粒の大きさは、リサイクル粉10の粒の大きさのばらつきに比較してばらつきが多く、表面は毛羽立ち部分が占める割合が高い。 ・・・略・・・ 【0018】 本実施形態における混合体30は、リサイクル粉10の外表面を覆うようにバージン粉20が付着した状態になっている。リサイクル粉10はバージン粉20を焼成したものを微細化したものである。したがって、リサイクル粉10はバージン粉20よりも硬く、リサイクル粉10とバージン粉20を撹拌装置で混合させることにより焼成前の軟らかいバージン粉20にリサイクル粉10が突き刺さることになる。バージン粉20に突き刺さったリサイクル粉10は、バージン粉20の粘着性によって両者の付着状態が維持されているものと推測される。本実施形態の混合体30においては、バージン粉20の割合が高いこともあり、混合体30の外表面のほとんどは、バージン粉20が露出した状態になっている。 【0019】 図3に示すような、リサイクル粉10の外表面がバージン粉20によって覆われた状態の混合体30を図示しない成形金型に投入する(混合体投入工程)。次に、成形金型をバージン粉のみを成形するときと同レベルの型締め力(30MPa)で型締めして図示しないプレス成形品を生成する(プレス工程)。・・・略・・・このプレス成形品をバージン粉20の溶融温度以上(ここでは、摂氏370度)で焼成する(焼成工程)ことで、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40が得られた。図4は本実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の表面状態の顕微鏡写真である。図4Aは拡大率100倍の顕微鏡写真であり、図4Bは拡大率500倍の顕微鏡写真である。なお、図5はバージン粉20のみからなる新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42における表面状態の顕微鏡写真である。・・・略・・・図5Aは拡大率100倍の顕微鏡写真であり、図5Bは拡大率500倍の顕微鏡写真である。 【0020】 ・・・略・・・両者の表面の触感を官能検査により確認したところ、両者の間にはほとんど触感の差が感じられなかった。以上のような外観の差が生じる原因として次のようなことが考えられる。すなわち、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の焼成前の混合体30には、リサイクル粉10の外表面を覆うようにしてバージン粉20が付着し、リサイクル粉10が内部に閉じ込められた状態で互いに隣り合うバージン粉20が溶融して一体化したものと考えられる。 【0021】 本実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40・・・略・・・切り出し、引張試験(試験方法:JISK7137-2)を行ったところ、・・・略・・・平均引張強度は36.4MPaであった。これは同条件で製作した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の平均引張強度である40MPaの91.0%に相当する引張強度であり、実用上十分な引張強度(機械的強度)を有していることが確認できた。」 ここで、図4及び図5は、以下のものである。 【図4】 [図:0001426819000005.jpg] 図4A [図:0001426819000006.jpg] 図4B 【図5】 [図:0001426819000007.jpg] 図5A [図:0001426819000008.jpg] 図5B (b) 「【0022】 (第2実施形態) 本実施形態においては、第1実施形態で使用したリサイクル粉10とバージン粉20の混合比率を40:60にして、第1実施形態と同じ方法でリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40を得ている。・・・略・・・本実施形態における混合体30は、第1実施形態における混合体30に比較すると、1粒あたりのリサイクル粉10に対するバージン粉20の付着量は減少しているものの、リサイクル粉10の外表面には複数のバージン粉20が付着した状態になっている。 【0023】 図7は、図6に示す本実施形態における混合体を第1実施形態と同一手順および同一条件で焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法を実施して得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体の表面状態の顕微鏡写真である。図7Aは拡大率100倍の顕微鏡写真であり、図7Bは拡大率500倍の顕微鏡写真である。図7と図4を比較すると、本実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の表面状態は第1実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の表面状態と同程度であるといえる。 【0024】 第2実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40についても第1実施形態と同様に3つのテストピースを切り出し、第1実施形態と同一条件で引張試験を行ったところ、3つのテストピースの平均引張強度は27.8MPaであった(図8参照)。これは第1実施形態のテストピースの平均引張強度の76.4%であり、同条件で製作した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42における平均引張強度の69.5%であった。」 ここで、図7は、以下のものである。 【図7】 [図:0001426819000009.jpg] 図7A [図:0001426819000010.jpg] 図7B (c) 「【0025】 (第3実施形態) 本実施形態においては、リサイクル粉:バージン粉の質量割合を20:80にして、第1実施形態および第2実施形態と同一手順および同一条件で得られた混合体30を用いている。・・・略・・・平均引張強度は34.3MPaであった(図8参照)。これは第1実施形態のテストピースの平均引張強度の94.2%であり、同条件で製作した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42における平均引張強度の85.8%であった。 【0026】 (第4実施形態) 本実施形態においては、リサイクル粉:バージン粉の質量割合を30:70にして、第1実施形態ないし第3実施形態と同一手順および同一条件で得られた混合体30を用いている。・・・略・・・平均引張強度は31.5MPaであった(図8参照)。これは第1実施形態のテストピースの平均引張強度の86.5%であり、同条件で製作した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42における平均引張強度の78.8%であった。 【0027】 出願人が確認したところ、第1実施形態ないし第4実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40においては、表面状態や色合いに大きな差はみられなかった。しかしながら、図8に示すように、リサイクル粉10の混合比率が高まるにつれて、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の平均引張強度の低下率は徐々に増大している。とはいえ、リサイクル粉10の混合比率が40%のリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の平均引張強度は、新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の引張強度の半分を大幅に上回る(69.5%)強度を有しており、フッ素樹脂焼成体の実用領域において十分な強度を有しているといえる。このように、リサイクル粉10と、リサイクル粉10の平均粒径よりも大きい平均粒径に調製されたバージン粉20とを混合してリサイクル粉10の外表面にバージン粉20を付着させた混合体30は、リサイクル粉10を有効に利用することができることが分かった。そして、第1実施形態ないし第4実施形態における混合体30を用いて成形したリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40は、リサイクル粉10の有効利用に貢献することができる。」 ここで、図8は、以下のものである。 【図8】 [図:0001426819000011.jpg] (d) 「【0028】 (第5実施形態) 本実施形態は、第1実施形態におけるリサイクル粉10の平均粒径寸法を25μmにしたものであり・・・略・・・。図9から明らかなように、リサイクル粉10の外表面はバージン粉20によって覆われた状態になっている。バージン粉20の比率が高いため、バージン粉20どうしが隣接した状態になっている。本実施形態における混合体30を用い、第1実施形態と同一の手順および条件で生成したリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の顕微鏡写真を図10に示す。図10Aは拡大率100倍の顕微鏡写真であり、図10Bは拡大率500倍の顕微鏡写真である。 【0029】 図10から明らかなように、本実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40は、第1実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40に対し、表面状態および色合いが良好であり、バージン粉20のみで製造した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の表面状態および色合いに近いといえる。・・・略・・・本実施形態のリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の平均引張強度は、32.2MPaであり(図11参照)、新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の引張強度の80.5%であった。この結果より、実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40は、実用上十分な引張強度を有しており、強度と外観の両方に対する要求度が高い場所への使用に適しているといえる。」 【0030】 (第6実施形態) 本実施形態は、第2実施形態におけるリサイクル粉10の平均粒径寸法を25μmにしたものであり、リサイクル粉10の平均粒径寸法以外の条件は、第2実施形態と共通である。・・・略・・・本実施形態における混合体30は、第5実施形態における混合体30に比較すると、1粒あたりのリサイクル粉10に対するバージン粉20の付着量は減少しているものの、リサイクル粉10の外表面には複数のバージン粉20が付着した状態になっている。 【0031】 本実施形態における混合体30を用い、第5実施形態と同一の手順および条件で生成したリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の顕微鏡写真を図13に示す。図13Aは拡大率100倍の顕微鏡写真であり、図13Bは拡大率500倍の顕微鏡写真である。本実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の表面状態は、第2実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の表面状態よりも肌理が揃っており均質であるといえる。・・・略・・・平均引張強度は23.0MPaとなり(図11参照)、これは第5実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の引張強度の71.4%であって、新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の引張強度の57.5%であった。 【0032】 (第7実施形態) 本実施形態は、第3実施形態におけるリサイクル粉10の平均粒径寸法を25μmにしたものであり、リサイクル粉10の平均粒径寸法以外の条件は、第3実施形態と共通である。・・・略・・・平均引張強度は29.3MPaとなり(図11参照)、これは第5実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の引張強度の91.0%であって、新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の引張強度の73.3%になった。 【0033】 (第8実施形態) 本実施形態は、第4実施形態におけるリサイクル粉10の平均粒径寸法を25μmにしたものであり、リサイクル粉10の平均粒径寸法以外の条件は、第4実施形態と共通である。・・・略・・・平均引張強度は26.3MPaとなり(図11参照)、これは第5実施形態におけるリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の引張強度の81.7%であって、新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の引張強度の65.8%になった。 【0034】 出願人が確認したところ、第5実施形態ないし第8実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の間においては、表面状態および色合いには大きな差はみられないが、いずれも第1実施形態ないし第4実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40よりは表面状態および色合いが良好(バージン粉20のみで焼成した新品懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体42の状態に近い)である。また、図11に示すように、リサイクル粉10の混合比率が高まるにつれて、リサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の平均引張強度の低下率は徐々に増大していることがいえる。 【0035】 以上の第1実施形態ないし第8実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の引張強度は、リサイクル粉10の混合比率が同じ場合、平均粒径寸法の大きいリサイクル粉10を用いたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の方が高くなっている。これは、リサイクル粉10がバージン粉20のフィラー(骨材)として作用する際においては、フィラー(骨材)としてのリサイクル粉10の粒の大きさは、バージン粉20の平均粒径寸法に対してある程度の大きさを有することが好ましいものと推測される。また、以上の第1実施形態ないし第8実施形態で得られたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40の外観状態は、リサイクル粉10の混合比率が同じ場合、バージン粉20の平均粒径寸法に対しリサイクル粉10の平均粒径寸法が小さい方がより良い外観状態を呈している。これは、リサイクル粉10が細かい方がバージン粉20によって確実に覆われた状態で焼成することができるためと推測される。これらのことから、引張強度(機械的強度)が重要視される使用箇所においては、リサイクル粉10の平均粒径を大きくすることが好ましく、外観状態が重要視される使用箇所においては、リサイクル粉10の平均粒径を小さくすることが好ましいことが分かった。 【0036】 以上に本発明にかかる焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉(リサイクル粉10)とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉(バージン粉20)の混合体30、これを用いたリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉のリサイクル方法を採用することにより、従来はリサイクルが困難であった焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の再利用が可能になり、焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の廃棄量を大幅に削減し、鉱物資源の保護および廃棄費用の低減が可能になった。また、混合体30およびリサイクル懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂焼成体40におけるリサイクル粉10の重量比率を40%に高めることができ、リサイクル粉10の使用率(リサイクル率)を高めることができた。 【0037】 ・・・略・・・出願人による簡易実験を行った結果、バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法(第2所定平均粒径寸法)が焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法(第1所定平均粒径寸法)と同一であった場合でも、上記第1実施形態ないし第4実施形態および第5実施形態ないし第8実施形態と同様の傾向があることが確認されている。」 ここで、図10、図11及び図13は、以下のものである。 【図10】 [図:0001426819000012.jpg] 図10A [図:0001426819000013.jpg] 図10B 【図11】 [図:0001426819000014.jpg] 【図13】 [図:0001426819000015.jpg] 図13A [図:0001426819000016.jpg] 図13A b 発明の課題を解決できると認識できる範囲 (a) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0016】及び【0018】の記載、特にリサイクル粉及びバージン粉の性質及び混合体の製造方法の記載(下線部参照)からみて、撹拌装置により攪拌、混合(あるいは攪拌、混合を調整)することにより得られた混合体においては、(平均粒径寸法の小さな)リサイクル粉が、(平均粒径寸法の大きな)バージン粉に突き刺さって(付着して)いる状態のものが(少なくとも)存在すると理解される。 (b) そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の第1実施形態~第8実施形態の各記載、特に混合体におけるリサイクル粉及びバージン粉の平均粒径寸法、質量割合、リサイクル粉外表面へのバージン粉の付着、焼成体の引張強度及び焼成体の外観状態についての記載(下線部参照)からみて、混合体において、リサイクル粉の外表面に、リサイクル粉の平均粒径寸法以上のバージン粉が、付着(あるいは、リサイクル粉がバージン粉に突き刺さって付着)していれば、上記(ア)で述べた、本件特許発明の「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の重量比率を高めても、良好な外観と必要にして十分な機械的強度(引張強度)を有するリサイクル成形品が実用性のある成形方法で製造可能な焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉とバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の混合体を提供する」との課題が解決できると認識できる。 (c) してみると、上記(a)及び(b)より、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が出願時の技術常識に照らし上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 同様な理由により、本件特許発明2及び本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が出願時の技術常識に照らし上記(ア)で述べた発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 2 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について (1) 異議申立人の主張 異議申立人は、特許異議申立書8頁「オ 明確性」において、 本件特許発明1~3では、平均粒径寸法について記載されている、 平均粒径は、同じ粒子を測定する楊合であっても、測定方法によって、また、個数、長さ、面積、体積等のいずれの平均であるかによって異なる値を示すものであるところ、本件明細書では平均粒径寸法の詳細について何ら記載されていないため、その意味を多義的に解釈しうることとなる、 したがって、本件特許発明1~3は明確でない、と主張する。 (2) 明確性要件についての合議体の判断 ア 明確性要件の判断基準 特許法第36条第6項第2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 上記観点から、本件特許発明1~3が明確であるか否かについて以下検討する イ 判断 (ア) 特許請求の範囲の請求項1及び請求項3には、それぞれ「前記バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法は、前記焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉の平均粒径寸法以上であって、」及び「第1所定平均粒径寸法に調製された焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉と、前記第1所定平均粒径寸法以上の平均粒径寸法である第2所定平均粒径寸法に調製されたバージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」との記載があるところ、請求項1及び請求項3には、「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の「(第1)平均粒径寸法」及び「バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の「(第1)平均粒径寸法」の測定方法は特定されていない。 (イ) しかしながら、請求項1には、第1及び第2の平均粒径寸法の値自体が特定されているわけではない。そうすると、請求項1に係る発明は、「バージン材懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の「(第2)平均粒径寸法」が「焼成後懸濁重合法由来四フッ化エチレン樹脂粉」の「(第1)平均粒径寸法」「以上」との大小関係を満たしさえすればよく、請求項1において平均粒径寸法の測定方法は特定されなくてもよいものと理解される。 同様な記載を有する請求項3についても同様である。 (ウ) してみると、請求項1、請求項3あるいは発明の詳細な説明に「平均粒径寸法」の測定方法の記載がないからといって、特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、ということはできない。 以上のとおりであるから、本件特許発明1及び本件特許発明3は明確である。請求項1の記載を引用して記載される本件特許発明2についても同様である。 したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700689

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