特許異議申立
2024-700268
照明装置
- 審判番号
- 2024-700268
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-173720
- 登録番号
- 7349634
- 請求日
- 2024年03月25日
- 審決日
- 2025年11月27日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】杉山 賢哉
- 【異議申立人代理人】石川 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.113-YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S) / P1651.537-YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7349634号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7349634号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、〔2、7〕について訂正することを認める。
特許第7349634号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7349634号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和元年9月25日の出願であって、令和5年9月14日に特許権の設定登録がされ、同年9月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1~11に係る特許に対して、特許異議申立人 杉山 賢哉(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 3月25日 特許異議の申立て
同年 5月29日 申立人による特許異議申立書の補正
同年 7月11日付け 審尋
同年 8月 1日 申立人による回答書の提出
同年10月17日付け 取消理由通知
同年12月12日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和7年 2月28日 申立人による意見書の提出
同年 4月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 6月27日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、令和6年12月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、令和7年6月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
また、令和7年6月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求に関し、同年7月14日付けで、訂正請求があった旨の通知を申立人に対して行い、期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正による訂正の適否
1.本件訂正の内容について
令和7年6月27日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、令和7年6月27日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、7について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線部が訂正箇所。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「 発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する第2出射面と
を備え、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されていることを特徴とする照明装置。
0.7×F≦D≦1.3×F …(1)
0.9×F≦D≦1.1×F …(2)
0.95×F≦D≦1.05×F …(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。」と記載されているのを、
「 発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する第2出射面と
を備え、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されており、
前記第1レンズにおいて、前記第1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされることを特徴とする照明装置。
0.7×F≦D≦1.3×F …(1)
0.9×F≦D≦1.1×F …(2)
0.95×F≦D≦1.05×F …(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「 発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されていることを特徴とする照明装置。
0.003×L≦T …(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。」と記載されているのを、
「 発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されており、
前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされることを特徴とする照明装置。
0.003×L≦T …(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。」に訂正する(請求項2を引用する請求項7についても同様に訂正する。)。
2.一群の請求項について
訂正前の請求項2、7について、訂正前の請求項7は、訂正前の請求項2を直接的に引用しており、訂正事項2によって訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2、7に対応する訂正後の請求項2、7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3.訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「照明装置」が備える「第1レンズ」に関し、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」という事項を付加することで、「第1レンズ」をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」という事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の「第2反射面25は、第1出射面22の下端部から図面左斜め下方およびX方向に広がるように形成されている。第2反射面25は、第1入射口21から第1レンズ2に入射した光を、第1出射面22側に反射させる。また、第2反射面25は、第1反射面24によって反射された光を第1出射面22側に反射させる。」との記載(段落【0018】。下線は当審合議体が付したもの。以下、同じ。)、及び「第1レンズ2では、発光素子1から図面下側に向かって出射された光は、第2反射面25によって反射され、第1出射面22から図面上側に向かって出射される。このため、第2反射面25によって、第1出射面22から図面下側に向かって出射される光がカットされる。」との記載(段落【0020】)に照らせば、本件特許明細書等に記載されている事項といえる。したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
そして、訂正事項1は、上記のとおり、「照明装置」が備える「第1レンズ」をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2における「照明装置」が備える「第1レンズ」に関し、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」という事項を付加するものである。よって、上記(1)と同様に、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、上記(1)と同様に、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
4.訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」等といい、総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する第2出射面と
を備え、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されており、
前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされることを特徴とする照明装置。
0.7×F≦D≦1.3×F …(1)
0.9×F≦D≦1.1×F …(2)
0.95×F≦D≦1.05×F …(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。
【請求項2】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されており、
前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされることを特徴とする照明装置。
0.003×L≦T …(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。
【請求項3】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(5)~(7)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されていることを特徴とする照明装置。
T≦0.1×F …(5)
T≦0.05×F …(6)
T≦0.02×F …(7)
ただし、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離であり、Fは、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離である。
【請求項4】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第1出射面は、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率とが異なるように形成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズであることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
表面がウェーブ状に形成され、かつ、前記第2出射光を受けて、前記第2出射光を拡散する拡散板をさらに備えることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項記載の照明装置において、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する第2出射面と
を備え、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されていることを特徴とする照明装置。
0.7×F≦D≦1.3×F …(1)
0.9×F≦D≦1.1×F …(2)
0.95×F≦D≦1.05×F …(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか1項記載の照明装置において、
前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されていることを特徴とする照明装置。
0.003×L≦T …(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。
【請求項9】
請求項4~6のいずれか1項記載の照明装置において、
前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(5)~(7)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されていることを特徴とする照明装置。
T≦0.1×F …(5)
T≦0.05×F …(6)
T≦0.02×F …(7)
ただし、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離であり、Fは、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離である。
【請求項10】
請求項5または6記載の照明装置において、
前記第1出射面は、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率とが異なるように形成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項6記載の照明装置において、
前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズであることを特徴とする照明装置。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1、2及び7に係る特許に対して、当審合議体が令和7年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
理由1.(新規性)本件特許の請求項1、2及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項1、2及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<刊行物>
甲第1号証:特開2014-10428号公報
甲第2号証:特開2007-72339号公報
甲第3号証:小瀬輝次、ほか4名、「光工学ハンドブック」、初版、株式会社朝倉書店、1986年2月20日、p.428~430
甲第4号証:高野栄一、「レンズデザインガイド」、株式会社写真工業出版社、1993年3月20日、p.21
なお、甲第1号証~甲第3号証は、申立人が特許異議申立書と共に提出した証拠であり、甲第4号証は、令和6年8月1日の回答書と共に提出された証拠である。また、「甲第1号証」~「甲第4号証」を、以下、「甲1」~「甲4」という。
<取消理由の対象請求項と刊行物との関係>
・理由1、2
・請求項1、2、7
・甲1又は甲2(傍証として甲3、甲4)
第5 取消理由(決定の予告)に対する当審の判断
1.甲号証の記載事項、甲号証に記載された発明
(1)甲1について
ア.甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、ライン照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面欠陥検査装置や画像読み取り装置等で使用されるラインカメラは、2次元カメラに比べて解像度が高く、被写体や撮像系を移動する系と組み合わせて、高解像度の2次元画像を得ることができる。このようなラインカメラには、一般的に、撮影時に被写体を照らすためのライン照明装置が装備されている。例えば液晶用ガラス欠陥検査装置の場合、ラインカメラの撮像範囲は1×300mm程度の非常に細長い領域であるため、ライン照明装置は、5×300mm程度の範囲を照明できればよい。」
「【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図4に、本発明の第1の実施の形態のライン照明装置を示す。
図1および図2(a)に示すように、ライン照明装置10は、複数の発光ダイオード11と複数の開口数変換レンズ12とシリンドリカルレンズ13とを有している。
【0019】
各発光ダイオード11は、所定の間隔を開けて直線状に配置されている。各発光ダイオード11は、その配列方向に対して垂直の同じ方向に向かって光を出射可能に配置されている。また、発光ダイオード11の底辺は、配列方向と平行である。
【0020】
各開口数変換レンズ12は、それぞれ各発光ダイオード11に対応して配置されている。各開口数変換レンズ12は、正の屈折力を有し、面12aの側を発光ダイオード11に向けて、発光ダイオード11との間隔が焦点距離より短くなるよう配置されている。これにより、各開口数変換レンズ12は、発光ダイオード11の出射光の開口数を小さくするよう構成されている。
【0021】
シリンドリカルレンズ13は、1方向にのみ正の屈折力を有している。シリンドリカルレンズ13は、各発光ダイオード11との間に各開口数変換レンズ12を挟むよう、各開口数変換レンズ12の面12bの側に配置されている。シリンドリカルレンズ13は、その面13aの側を各開口数変換レンズ12に向けて、発光ダイオード11と開口数変換レンズ12とから成る各組の配列方向と平行を成すよう配置されている。これにより、シリンドリカルレンズ13は、各開口数変換レンズ12を通過した各発光ダイオード11からの出射光が、配列方向に対して平行な直線状に集光されるよう構成されている。
【0022】
図1に示す具体的な一例では、各発光ダイオード11は、寸法L=1mm角である。また、各開口数変換レンズ12は、入射開口数0.7(入射効率:約50%)であり、出射開口数1の発光ダイオード11の光を開口数0.2程度の光に変換可能になっている。シリンドリカルレンズ13は、出射面13bから照射面14までの距離が100mmの位置に配置されている。また、光学系のY方向の結像倍率が5倍である。
【0023】
また、各開口数変換レンズ12の面12aの曲率半径r1(mm)および面12bの曲率半径r2(mm)、シリンドリカルレンズ13の面13aのY方向の曲率半径r3(mm)および面13bのY方向の曲率半径r4(mm)、光軸における発光ダイオード11と開口数変換レンズ12との間隔d0(mm)、開口数変換レンズ12の中心厚d1(mm)、光軸における開口数変換レンズ12とシリンドリカルレンズ13との間隔d2(mm)、シリンドリカルレンズ13の中心厚d3(mm)、光軸におけるシリンドリカルレンズ13と照射面14との間隔d4(mm)、開口数変換レンズ12の屈折率n1、シリンドリカルレンズ13の屈折率n2、開口数変換レンズ12のアッベ数ν1、シリンドリカルレンズ13のアッベ数ν2、開口数変換レンズ12の面12bの円錐定数k2、シリンドリカルレンズ13の面13bの円錐定数k4を、以下に示す。
【0024】
d0=3
r1=-16 d1=8 n1=1.492 ν1=57.44
r2=-6.3 d2=22.3 k2=-0.19
r3=77.1 d3=10 n2=1.492 ν2=57.44
r4=-20.1 d4=100 k4=-1.26」
「【図2】
[図:0001433048000001.jpg]
」
イ.甲1の認定事項
甲1の段落【0019】、【0021】の記載及び図2(a)からみて、ライン照明装置(段落【0002】)について次のことが認められる。
(ア)発光ダイオード11は所定間隔を空けて直線状に配置されており、その発光ダイオード11からの出射光が、発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成されたライン照明装置であること。
また、甲1の段落【0018】~【0021】の記載及び図2(a)からみて、ライン照明装置の開口数変換レンズ12及びシリンドリカルレンズ13について、次のことが認められる。
(イ)開口数変換レンズ12は、発光ダイオード11から出射された光を受けて、出射光(以下「第1出射光」という。)を出射すること。開口数変換レンズ12の前記第1出射光を出射する面12bが、前記発光ダイオード11の光軸方向に突出する凸形状に形成されていること。
(ウ)シリンドリカルレンズ13は、1方向にのみ正の屈折力を有し、前記第1出射光を受けて、出射光(以下「第2出射光」という。)を出射すること。シリンドリカルレンズ13は、前記第1出射光を受ける面13aと、前記第2出射光を出射する面13bを備えており、前記面13bは、前記面13aと対向する位置に設けられていること。
ウ.甲1に記載された発明
上記イ.及び段落【0023】~【0024】に記載されたデータから、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「所定間隔を空けて直線状に配置された発光ダイオード11からの出射光が、前記発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成された、ライン照明装置であって、
前記発光ダイオード11と、
前記発光ダイオード11から出射された光を受けて、第1出射光を出射する開口数変換レンズ12と、
1方向にのみ正の屈折力を有し、前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射するシリンドリカルレンズ13と
を備え、
前記開口数変換レンズ12は、前記第1出射光を出射する面12bが、前記発光ダイオード11の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記シリンドリカルレンズ13は、
前記第1出射光を受ける面13aと、
前記面13aと対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する面13bと
を備え、
前記開口数変換レンズ12と前記シリンドリカルレンズ13は、以下に示されるデータである、ライン照明装置。
開口数変換レンズ12の面12bの曲率半径r2=-6.3(mm)
光軸における開口数変換レンズ12とシリンドリカルレンズ13との間隔d2=22.3(mm)
シリンドリカルレンズ13の面13aのY方向の曲率半径r3=77.1(mm)
シリンドリカルレンズ13の面13bのY方向の曲率半径r4=-20.1(mm)
シリンドリカルレンズ13の中心厚d3=10(mm)
シリンドリカルレンズ13の屈折率n2=1.492」
(2)甲2について
ア.甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0007】
本発明は、光源からの光束の有効利用を図り、被照明体を高い照度で照明し、かつコンパクトな集光光学系およびその集光光学系を用いた光源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の集光光学系は、
(1) 光源側から順に、光線の進行方向に沿って、第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面、第2透過屈折面を同軸に配置したことを特徴とする。
(2) (1)において、前記第1透過屈折面と前記第1反射面とが同一面上にあり、前記第2透過屈折面と前記第2反射面とが同一面上にあることを特徴とする。
(3) 第1反射面と第2反射面を有する一つの光学部材であり、前記第1反射面は部分的に第1透過屈折面を有し、前記第2反射面は部分的に第2透過屈折面を有し、前記第1透過屈折面と前記第2透過屈折面を略同軸上に配置したことを特徴とする。
(4) 第1反射面と第2反射面を有する一つの光学部材であり、前記第1反射面は部分的に第1透過屈折面を有し、前記第2反射面は部分的に第2透過屈折面を有し、前記第1透過屈折面は光源の輝点の近傍に配置され、前記光源の輝点からの低発散角の光は前記第1透過屈折面と前記第2透過屈折面を通り、前記光源の輝点からの高発散角の光は前記第1透過屈折面、前記第2反射面、前記第1反射面、前記第2透過屈折面の順に通り、前記光源の輝点の像を前記第2透過屈折面付近に投影することを特徴とする。
【0009】
上記(1)~(4)の構成をとることで、光源から発せられた狭発散角の光は、第1透過屈折面、第2透過屈折面を通り、集光させるのに難しい広発散角の光は、第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面、第2透過屈折面の順で通ることにより集光させることが可能になる。
(5) (1)、(3)、(4)において、以下の条件式を満足することを特徴とする。」
「(第6実施例)
第6実施例のレンズデータを以下に示す。
【0053】
(光源) d0=0.1
r1=∞ d1=14.583 n'=1.51633(S-BSL7)
r2=-20 d2=12.117
r3=35 d3=11.9 n''=1.51633(S-BSL7)
r4=-13(非球面)
C4=-5.4664723×10-5、C6=3.7186886×10-7、C8=-4.6483608×10-9、
C10=1.8×10-11、C12=-1.5×10-13
α1=3、β1=2.25π、α2=5、β2=6.25π、Φ=25
(1)r2/(n'/(-1/d0-(1-n')/r1)-d1/n')=2.05
(2)(1/r1+1/r2)×r2=1
(3)β2/β1=2.8
(4)d12/β1=23.6
(5)Φ2/β1=22.1
本実施例は、第1~5実施例が本発明の集光光学系によってライトガイドに光を入射させるのとは異なり、他のレンズと組み合わせて手術用顕微鏡の照明光学系を構成した例である。
【0054】
図6は本実施例の照明光学系の断面図を示す。照明光学系Sは、集光光学系Tの射出側にレンズKを配置して構成されている。上記のレンズデータ中、r3はレンズKの入射側面R3の曲率半径、r4はレンズKの射出側面R4の曲率半径、d2は集光光学系の第2反射面R2(第2透過屈折面T2)とレンズKの入射側面R3との間隔、d3はレンズKの肉厚、n''はレンズKの媒質のd線に対する屈折率である。
【0055】
レンズKの射出側面R4は非球面である。
【0056】
LED光源Lから発した光は集光光学系Tに入射し、第1~5実施例と同様の経路を通り第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射しレンズKの作用によって配光角を変えて射出する。
【0057】
図13は本実施例の照明光学系を適用した手術用顕微鏡の光学系を示す。図13(A)は正面図、図13(B)は側面図である。
【0058】
観察物体O'を照明光学系Sと反射鏡とによって照明し、対物レンズOB、ズームレンズZB、結像レンズBI、接眼レンズOCを介して観察者が観察する。本実施例では反射鏡がレンズKの出射側に配置されているが、レンズTとレンズKとの間に配置してもよい。
【0059】
本実施例は他の実施例に示したライトガイドのような伝達手段を用いないので、光量の損失なく観察物体O'を照明することが可能となる。
【0060】
なお、本実施例ではLED光源を使用しているため、キセノン等の高輝度光源に比べ非常に暗い。したがって本実施例を適用する手術用顕微鏡としては、目視で観察する光学顕微鏡よりも物体像を撮像して電子画像を表示する電子画像顕微鏡が適している。」
「【図6】
[図:0001433048000002.jpg]
」
イ.甲2の認定事項
甲2の第6実施例である手術用顕微鏡の照明光学系について、そのレンズTが「集光光学系」である(段落【0054】)。そして、その集光光学系に関する段落【0007】~【0009】の記載、並びに照明光学系に関する段落【0056】の記載及び図6を踏まえれば、甲2の第6実施例である手術用顕微鏡の照明光学系について次のことがいえる。
(ア)LED光源Lから出射された光を受けて、集光光学系のレンズTに入射し、当該レンズTの第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面の順で光を通らせて、第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射し、当該レンズKの作用によって配光角を変えて略平行光として射出する手術用顕微鏡の照明光学系であること。
また、甲2の第6実施例について、段落【0053】~【0060】の記載及び図6からみて、手術用顕微鏡の照明光学系のレンズTとレンズKについて、次のことが認められる。
(イ)レンズTは、LED光源Lから出射した光を受けて、出射光(以下「第1出射光」という。)を出射すること。レンズTの前記第1出射光を出射する第2透過屈折面T2が、LED光源Lの光軸方向に突出する凸形状に形成されていること。
(ウ)レンズKは、前記第1出射光を受けて、出射光(以下「第2出射光」という。)を出射すること。レンズKは、前記第1出射光を受ける入射側面R3、前記第2出射光を出射する出射側面R4を備えており、前記出射側面R4は、前記入射側面R3と対向する位置に設けられていること。
(エ)第6実施例のレンズTの第2透過屈折面T2の曲率半径について、第2透過屈折面T2と第2反射面R2とは同一面上にあること(【0038】)、第2反射面R2の曲率半径はr2であること(【0035】)を踏まえると、段落【0053】に記載されたr2=-20が第2透過屈折面T2の曲率半径であること。
ウ.甲2に記載された発明
上記イ.及び段落【0053】~【0054】に記載されたレンズデータから、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「LED光源Lから出射された光を受けて、集光光学系のレンズTに入射し、当該レンズTの第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面の順で光を通らせて、第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射し、当該レンズKの作用によって配光角を変えて略平行光として射出する手術用顕微鏡の照明光学系であって、
前記LED光源Lと、
前記LED光源Lから出射された光を受けて、第1出射光を出射する前記レンズTと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する前記レンズKと
を備え、
前記レンズTは、前記第1出射光を出射する前記第2透過屈折面T2が、前記LED光源Lの光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記レンズKは、
前記第1出射光を受ける入射側面R3と、
前記入射側面R3と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する出射側面R4と
を備え、
以下に示されるレンズデータである、手術用顕微鏡の照明光学系。
レンズTの第2透過屈折面T2の曲率半径r2=-20
第2透過屈折面T2とレンズKの入射側面R3との間隔d2=12.117
レンズKの入射側面R3の曲率半径r3=35
レンズKの出射側面R4の曲率半径r4=-13
レンズKの肉厚d3=11.9
レンズKの屈曲率n’’=1.51633」
(3)甲3について
甲3には、次の事項が記載されている。なお、枠囲いは申立人が付与したものである。
「
[図:0001433048000003.jpg]
」
(430ページ)
(4)甲4について
ア.甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。なお、枠囲いは申立人が付与したものである。
「
[図:0001433048000004.jpg]
」
(21ページ)
イ.甲4の認定事項
(ア)上記ア.には、厚肉レンズの主要点の計算を行うプログラムが記載されていると認められる。
(イ)上記ア.の左上の記載から、入力R1、R2、D、N及び出力BFの意味は、以下のとおりと認められる。
R1:第1面曲率半径
R2:第2面曲率半径
D :軸上厚さ
N :屈曲率
BF:バックフォーカス
(ウ)上記アのプログラムの90行~140行から、入力R1、R2、D、Nに基づいて出力BFは次のような計算手順で求められると認められる。
DN=D×(N-1)/N
C1=1/R1
C2=1/R2
P=(N-1)×(C1-C2+C1×C2×DN)
F=1/P
BF=F×(1-C1×DN)
2.対比・判断
2-1.甲1を主たる引用例とした場合
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
後者の「所定間隔を空けて直線状に配置された発光ダイオード11からの出射光が、前記発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成された、ライン照明装置」は前者の「照明装置」に相当する。
そして、後者の「発光ダイオード11」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「開口数変換レンズ12」は「第1レンズ」に、「面12b」は「第1出射面」に、「シリンドリカルレンズ13」は「第2レンズ」に、「面13a」は「第2入射面」に、「面13b」は「第2出射面」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
・一致点
「照明装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する
第2出射面と
を備える照明装置。」
・相違点
<相違点1>本件発明1は、「前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されている」として、
「0.7×F≦D≦1.3×F…(1)
0.9×F≦D≦1.1×F…(2)
0.95×F≦D≦1.05×F…(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
<相違点2>本件発明1は、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」ものであるのに対し、甲1発明は、「開口数変換レンズ12」がそのように特定されていない点。
イ.判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1には、所定方向に照射される光を反射面によってカットすることに関する記載も示唆もなく、甲1発明において、「開口数変換レンズ12」に、第1出射光を出射する面12bの下端部から広がる反射面を設けて、所定方向に照射させる光をカットするという事項を採用する動機付けはない。
また、ライン照明装置において、一つめのレンズに、その出射面の下端部から広がる反射面を設け、所定方向に照射される光をカットするという事項は、甲2~4にも記載されていないし、かかる事項が周知技術であるといえるような証拠は示されていない。
したがって、甲1発明に基いて、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2について
ア.対比
本件発明2と甲1発明を対比する。
後者の「所定間隔を空けて直線状に配置された発光ダイオード11からの出射光が、前記発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成された、ライン照明装置」は前者の「照明装置」に相当する。
そして、後者の「発光ダイオード11」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「開口数変換レンズ12」は「第1レンズ」に、「面12b」は「第1出射面」に、「シリンドリカルレンズ13」は「第2レンズ」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
・一致点
「照明装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されている照明装置。」
・相違点
<相違点3>本件発明2は、「前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されている」として、
「0.003×L≦T…(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
<相違点4>本件発明2は、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」ものであるのに対し、甲1発明は、「開口数変換レンズ12」が、そのように特定されていない点。
イ.判断
事案に鑑み、まず、相違点4ついて検討すると、上記(1)イと同様に、相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、上記相違点4に係る本件発明2の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明7について
請求項2を引用する本件発明7については、上記(2)と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2-2.甲2を主たる引用例とした場合
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
後者の「LED光源Lから出射された光を受けて、集光光学系のレンズTに入射し、当該レンズTの第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面の順で光を通らせて、第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射し、当該レンズKの作用によって配光角を変えて略平行光として射出する手術用顕微鏡の照明光学系」は前者の「照明装置」に相当する。
また、後者の「LED光源L」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「レンズT」は「第1レンズ」に、「第2透過屈折面T2」は「第1出射面」に、「レンズK」は「第2レンズ」に、「入射側面R3」は「第2入射面」に、「出射側面R4」は「第2出射面」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
・一致点
「照明装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており、
前記第2レンズは、
前記第1出射光を受ける第2入射面と、
前記第2入射面と対向する位置に設けられており、前記第2出射光を出射する第2出射面と
を備える照明装置。」
・相違点
<相違点5>本件発明1は、「前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されている」として、
「0.7×F≦D≦1.3×F…(1)
0.9×F≦D≦1.1×F…(2)
0.95×F≦D≦1.05×F…(3)
ただし、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、Dは前記第1出射面の頂点から前記主平面までの距離であり、Fは前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離とする。」のに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点6>本件発明1は、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」ものであるのに対し、甲2発明は、「レンズT」がそのように特定されていない点。
イ.判断
事案に鑑み、相違点6について検討する。
相違点6は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明ではない。
そして、甲2には、所定方向に照射される光を反射面でカットすることに関する記載も示唆もなく、甲2発明において、「レンズT」に、第2透過屈折面T2の下端部から広がる反射面を設けて、所定方向に照射させる光をカットするという事項を採用する動機付けはない。
さらに、手術用顕微鏡の照明光学系において、一つめのレンズに、その出射面の下端部から広がる反射面を設け、所定方向に照射される光をカットするという事項は、甲1、3、4にも記載されていないし、かかる事項が周知技術であるといえるような証拠は示されていない。
したがって、甲2発明に基いて、上記相違点6に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
以上のとおりであるから、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2について
ア.対比
本件発明2と甲2発明を対比する。
後者の「LED光源Lから出射された光を受けて、集光光学系のレンズTに入射し、当該レンズTの第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面の順で光を通らせて、第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射し、当該レンズKの作用によって配光角を変えて略平行光として射出する手術用顕微鏡の照明光学系」は前者の「照明装置」に相当する。
また、後者の「LED光源L」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「レンズT」は「第1レンズ」に、「第2透過屈折面T2」は「第1出射面」に、「レンズK」は「第2レンズ」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
・一致点
「照明装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を受けて、第1出射光を出射する第1レンズと、
前記第1出射光を受けて、第2出射光を出射する第2レンズと
を備え、
前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されている照明装置。」
・相違点
<相違点7>本件発明2は、「前記第1レンズは、以下の式(4)を満たすように形成されている」として、
「0.003×L≦T…(4)
ただし、Lは前記第1出射面の上下方向の長さであり、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離である。」のに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点8>本件発明2は、「前記第1レンズにおいて、前記1出射面の下端部から斜め下方に広がるように形成された第2反射面によって、所定方向に照射される光がカットされる」ものであるのに対し、甲2発明は、「レンズT」が、そのように特定されていない点。
イ.判断
事案に鑑み、まず、相違点8について検討すると、上記(1)イと同様に、相違点8は実質的な相違点であるから、本件発明2は甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、上記相違点8に係る本件発明2の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
したがって、相違点7について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明7について
請求項2を引用する本件発明7については、上記(2)と同様に、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2-3. まとめ
上記2-1.及び2-2.から明らかなとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1、2、7に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1.申立理由の概要
当審合議体が令和7年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立理由の概要は以下のとおり。
理由1.(新規性)本件特許の請求項5、7、8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項3、5、7、8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
<刊行物>
・本件発明3に対して、甲1(傍証として甲3、甲4)
・本件発明5、7、8に対して、甲1又は甲2(傍証として甲3、甲4)
理由3.(サポート要件)本件特許の請求項1~11の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2.当審の判断
(1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
ア 甲1発明を主たる引用例とした場合
本件発明7については、請求項2~6を引用しており、このうち請求項2を引用するものについては、上記第5の2-1.(3)のとおりである。請求項3~6のうち請求項4及び6は、甲1に基いた異議申立てはされていないので、以下では、請求項3又は5を引用する本件発明7について新規性、進歩性の検討を行う。
また、請求項3~6を引用する本件発明8についても同様に、請求項4及び6は、甲1に基いた異議申立てはされていないので、以下では、請求項3又は5を引用する本件発明8について、新規性、進歩性の検討を行う。
(ア)本件発明3
本件発明3と甲1発明を対比する。
後者の「所定間隔を空けて直線状に配置された発光ダイオード11からの出射光が、前記発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成された、ライン照明装置」は前者の「照明装置」に相当する。
そして、後者の「発光ダイオード11」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「開口数変換レンズ12」は「第1レンズ」に、「面12b」は「第1出射面」に、「シリンドリカルレンズ13」は「第2レンズ」に、「面13a」は「第2入射面」に、「面13b」は「第2出射面」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点9>
本件発明3は、「前記第1レンズおよび前記第2レンズが以下の式(5)~(7)の少なくともいずれか一つを満たすように配置されている」とし、
「T≦0.1×F …(5)
T≦0.05×F …(6)
T≦0.02×F …(7)
ただし、Tは前記光軸方向において前記第1出射面の端から頂点までの距離であり、Fは、前記第2入射面の頂点と前記第2出射面の頂点との中点を通り、前記光軸方向と垂直をなす平面を主平面としたとき、前記第2レンズの焦点から前記主平面までの距離である。」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
上記相違点9について検討する。
甲1には、開口数変換レンズ12の光軸方向における面12bの端から頂点までの距離と、シリンドリカルレンズ13の焦点からシリンドリカルレンズ13の主平面までの距離との関係を調整することに関する記載も示唆もなく、甲1発明において、各レンズを上記相違点9に係る本件発明3の発明特定事項のように調整することの動機付けはない。
また、ライン照明装置において、1つめのレンズの光軸方向における出射面の端から頂点までの距離と、2つめのシリンドリカルレンズの焦点から2つめのシリンドリカルレンズの主平面までの距離との関係を相違点9に係る本件発明3の発明特定事項のようにすることは、甲2~4にも記載されていないし、かかる事項が周知技術であるといえるような証拠は示されていない。
したがって、甲1発明に基いて、上記相違点9に係る本件発明3の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、次のとおり主張する。
「本件明細書【0040】によれば、構成Iにより、「第1レンズ2の作成時における、第1出射面22の歪みを抑制する」こと、つまり樹脂成形時のヒケによる出射面22の歪みを抑制できる、としている。しかしながら、樹脂成形の分野において、使用する樹脂を踏まえた上で、ヒケの発生を考慮した寸法、形状とすることは常套手段である。また条件式(5)~(7)を満たすこと(つまり、TとFとの関係を規定すること)に顕著な作用効果が認められるわけでもなく、また条件式(5)~(7)の数値に臨界的意義があるわけでもない。」(第26頁第4~12行)
しかしながら、レンズの作成時のヒケの発生を考慮した寸法、形状とする上で、いろいろな要件がある中から、特に、1つめのレンズの光軸方向における出射面の端から頂点までの距離と、2つめのレンズの焦点から2つめのレンズの主平面までの距離との関係に着目し、この関係を調整することが、常套手段ないし周知技術であるという証拠は示されていない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(イ)本件発明5
本件発明5と甲1発明を対比する。
後者の「所定間隔を空けて直線状に配置された発光ダイオード11からの出射光が、前記発光ダイオード11の配列方向に対して平行な直線状に集光されるように構成された、ライン照明装置」は前者の「照明装置」に相当する。
そして、後者の「発光ダイオード11」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「開口数変換レンズ12」は「第1レンズ」に、「面12b」は「第1出射面」に、「シリンドリカルレンズ13」は「第2レンズ」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点10>
本件発明5は、「前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズである」のに対し、甲1発明の「シリンドリカルレンズ13」は「1方向にのみ正の屈折力を有」するものである点。
上記相違点10について検討する。
まず、上記相違点10は実質的な相違点であるから、本件発明5は甲1発明ではない。
そして、甲1には、シリンドリカルレンズ13に上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率を持たせることに関する記載も示唆もなく、甲1発明において、シリンドリカルレンズ13を上記相違点10に係る本件発明5の発明特定事項のようにすることの動機付けはない。むしろ、甲1発明のシリンドリカルレンズ13は「1方向にのみ正の屈折力を有」するものであり、かかるレンズに上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率を持たせることには、阻害要因があるといえる。
また、ライン照明装置において、シリンドリカルレンズに上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率を持たせるという事項は、甲2~4にも記載されていないし、かかる事項が周知技術であるといえるような証拠は示されていない。
したがって、甲1発明に基いて、上記相違点10に係る本件発明5の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、本件発明5の発明特定事項について、「K.前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズであることを特徴とする」(第14頁第20~22行)と文節しつつ、「さらに、図1、図2(a)(下図)を参照すると、本件特許発明の構成A-E、G、Kに相当する構成が開示されていると認められる。」(第19頁第12~13行)と主張している。また、特許異議申立書の「4 申立ての理由」、「(1)申立ての理由の要約」において、「K.シリンドリカルレンズ13は、光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているシリンドリカルレンズである点(【0021】、図1)。」(第7頁右欄第25~31行)と主張している。
しかしながら、シリンドリカルレンズ13は「1方向にのみ正の屈折力を有している」ものであり、そもそも「当該上下方向および光軸方向と垂直をなす方向」には曲率を有していない。よって、シリンドリカルレンズ13が光軸方向から見たときの上下方向の曲率と「当該上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率」が異なるという発明特定事項が甲1に開示されているという上記申立人の主張は採用できない。
また、当該発明特定事項に想到することが当業者にとって容易でないことは、上述のとおりである。
(ウ)本件発明7
請求項3を引用する本件発明7については上記(ア)と同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項5を引用する本件発明7については上記(イ)と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)本件発明8
請求項3を引用する本件発明8については上記(ア)と同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項5を引用する本件発明8については上記(イ)と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 甲2発明を主たる引用例とした場合
本件発明7については、請求項2~6を引用しており、このうち請求項2を引用するものについては、上記第5の2-2.(3)のとおりである。請求項3~6のうち請求項3、4及び6は、甲2に基いた異議申立てはされていないので、以下では、請求項5を引用する本件発明7について新規性、進歩性の検討を行う。
また、請求項3~6を引用する本件発明8についても同様に、請求項3、4及び6は、甲2に基いた異議申立てはされていないので、以下では、請求項5を引用する本件発明8について、新規性、進歩性の検討を行う。
(ア)本件発明5
本件発明5と甲2発明を対比する。
後者の「LED光源Lから出射された光を受けて、集光光学系のレンズTに入射し、当該レンズTの第1透過屈折面、第2反射面、第1反射面の順で光を通らせて、第2透過屈折面T2付近に結像されてLED光源の輝点像を形成した後、レンズKに入射し、当該レンズKの作用によって配光角を変えて略平行光として射出する手術用顕微鏡の照明光学系」は前者の「照明装置」に相当する。
また、後者の「LED光源L」は前者の「発光素子」に相当し、以下同様に、「レンズT」は「第1レンズ」に、「第2透過屈折面T2」は「第1出射面」に、「レンズK」は「第2レンズ」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点11>
本件発明5は、「前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズである」のに対し、甲2発明の「レンズK」は、そのように特定されているか明らかでない点。
上記相違点11について検討する。
まず、上記相違点11は実質的な相違点であるから、本件発明5は甲2発明ではない。
そして、甲2には、レンズKをアナモルフィックレンズにすることに関する記載も示唆もなく、甲2発明において、レンズKを上記相違点11に係る本件発明5の発明特定事項のようにすることの動機付けはない。
また、手術用顕微鏡の照明光学系において、2つめのレンズをアナモルフィックレンズにするという事項は、甲1、3、4にも記載されていないし、かかる事項が周知技術であるといえるような証拠は示されていない。
したがって、甲2発明に基いて、上記相違点11に係る本件発明5の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、本件発明5の発明特定事項について、「K.前記第2レンズは、前記光軸方向から見たときの上下方向の曲率と、当該上下方向および前記光軸方向と垂直をなす方向の曲率が異なるように形成されているアナモルフィックレンズであることを特徴とする」(第14頁第20~22行)と文節しつつ、甲2について「さらに、図6(下図)を参照すると、本件特許発明の構成A-E、G、Kに相当する構成が開示されていると認められる。」(第23頁第5~6行)と主張している。
しかしながら、甲2の図6は、一つの断面図に過ぎず、図6のみから、その断面方向と垂直をなす方向の曲率を把握することはできず、図6に発明特定事項「K」が記載されているということはできない。
よって、レンズKが光軸方向から見たときの上下方向の曲率と「当該上下方向および光軸方向と垂直をなす方向の曲率」が異なるという発明特定事項が甲2に開示されているという上記申立人の主張は採用できない。
また、当該発明特定事項に想到することが当業者にとって容易でないことは、上述のとおりである。
(イ)本件発明7
請求項5を引用する本件発明7については上記(ア)と同様に、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)本件発明8
請求項5を引用する本件発明8については上記(ア)と同様に甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)のまとめ
上記ア及びイから明らかなとおり、申立理由の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)により、本件発明3、5、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
(2)理由3(サポート要件)について
本件発明が解決しようとする課題は、カットオフ機能を有する照明装置において、「第1レンズの製造時間を短縮するために、第1レンズを急激に冷却すると、第1レンズの出射面が凹状になりやすい」(段落【0005】)ところ、「第1レンズの出射面が凹状となり、第2レンズの出射面に上部に加工Rが付与された場合、発光素子から第1レンズの出射面に入射された光は、第1レンズの凹レンズ効果により、第1レンズの出射面において上側に屈折され、第2レンズの出射面に形成された加工Rにより、第2レンズの出射面においてさらに上側に屈折され」、「このため、第2レンズの出射面から上方に向けて光が照射されることとなり、迷光が発生することとなる」(段落【0007】)ことに鑑み、「カットオフ機能を有する照明装置において、コストを抑えつつ、迷光の発生を抑えることができる照明装置を提供すること」(段落【0008】)である。
上記課題を解決する手段として、本件特許明細書等には、「前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されている」こと(段落【0009】)、「第1レンズ2の第1出射面22が凸状となるように、第1レンズ2が作成」されること(段落【0030】)が記載されている。
そして、本件発明1~11は、いずれも、「前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成され」るという発明特定事項を有しており、上記課題解決手段が反映されたものとなっている。
したがって、本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
なお、申立人は、特許異議申立書において、次のとおり主張する。
「しかしながら、この課題解決手段について、本件の各独立請求項1~6では、単に「前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成されており」(構成D)と記載されているのみであり、迷光が発生する原因とされる、「第2レンズのレンズ加工部」との関係については何ら規定されていない。
また、構成Dによって(つまり、第1出射面を凸形状にすることによって)迷光を抑えることができるのは、第1出射面22aが平面である場合の出射光R1がレンズ加工部34に入射しないことが前提であることから(【0028】-【0031】、図3参照)、「第1レンズと第2レンズの位置関係」や「第2レンズにおけるレンズ加工部の位置」も不可欠な要素と考えられところ、これらについても各独立請求項1~6では何ら規定されていない。」(第29頁第4~12行;下線は当審合議体が付したもの。)
当該主張について検討すると、「前記第1レンズは、前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成され」るという課題解決手段に関し、本件特許明細書等には、「図3は従来の照明装置の側面図を示す。図3では、第1レンズ2aは、成形加工で作成されているため、第1出射面22aが凹状となっている。また、出射光R1は、第1出射面22aが平面である場合の出射光であり、出射光R2は、実際の出射光である。」(段落【0028】)、「このとき、第1出射面22は凸状に形成されているため、図3の出射光R2よりも図面上側に向かって屈折される。これにより、出射光R3は、第2レンズ3のレンズ加工部34に入射されないように、第2出射面32に入射される。すなわち、第1出射面22を凸状に形成することで、出射光R3が迷光とならない。」(段落【0031】)との記載がある。
この記載から、「前記第1出射光を出射する第1出射面が、前記発光素子の光軸方向に突出する凸形状に形成され」るという課題解決手段の作用は、従来よりも第1出射面から出射光を迷光が発生しづらい側へと向けることであるといえる。そして、申立人が主張する「第1レンズと第2レンズの位置関係」、「第2レンズにおけるレンズ加工部の位置」という要件は、迷光の発生にも影響を与え得る要因の一つではあるかもしれないが、これらの申立人が主張する要件に関わらず、上記課題解決手段は、従来よりも第1出射面から出射光を迷光が発生しづらい側へと向けるという作用を果すところ、申立人が主張する要件は、上記課題解決手段がその作用を果たす上で必要不可欠な要件とまではいえない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
以上のとおり、申立理由の理由3(サポート要件)により、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~11に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700268