特許異議申立
2024-700050
光照射装置
- 審判番号
- 2024-700050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-526844
- 登録番号
- 7313555
- 請求日
- 2024年01月24日
- 審決日
- 2024年07月04日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】西教 圭一郎
- 【異議申立人】杉山 賢哉
- 【異議申立人代理人】石川 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 北中 忠
- 分類
- P1651.113-YAA(F21V) / P1651.121-YAA(F21V) / P1651.16 -YAA(F21V) / P1651.537-YAA(F21V)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7313555号発明「光照射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7313555号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7313555号の請求項2~5に係る特許を維持する。
特許第7313555号の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7313555号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)1月7日(優先権主張 令和3年1月22日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月13日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月24日に特許掲載公報が発行された。その特許についての異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 1月24日 :特許異議申立人 杉山賢哉(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月 9日付け:取消理由通知
同年 6月14日受付:特許権者による訂正請求書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつ前記第3側壁部から前記第4側壁部にわたって延びている、請求項1に記載の光照射装置。」との記載を、
「 複数の発光素子を含む光源部と、
前記光源部に熱的に結合されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに向けて送風する送風部と、
前記光源部、前記送風部および前記ヒートシンクが収容され、前記ヒートシンクに隣接して排気口が設けられるとともに、前記送風部の近くに吸気口が設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材と、を備え、
前記筐体は、
前記光源部による光の出射方向に面し、光出射窓が設けられた底面部と、
前記底面部に対向して位置し、前記吸気口を有し、前記送風部が近くに配置された上面部と、
前記排気口を有し、前記底面部および前記上面部に接合された第1側壁部と、
前記底面部の第1縁辺部と前記底面部の前記第1縁辺部に対向する前記上面部の第2縁辺部とにわたって延びている第2側壁部と、
前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第3側壁部と、
前記第3側壁部に対向して位置し、前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第4側壁部と、を含み、
前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつ前記第3側壁部から前記第4側壁部にわたって延びている、光照射装置。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の「請求項1または2に記載の」を「請求項2に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」を「請求項2または3に記載の」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1~4のいずれか1項に記載の」を「請求項2~4のいずれか1項に記載の」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項1を削除する訂正が、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかである。
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であったところ、これを引用しないものとし、独立形式へ改めるものであって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。そして、他の請求項を引用する記載を独立形式に改める訂正が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかである。
訂正事項3~5は、訂正事項1によって、請求項1を削除することに伴い、請求項1を引用することができなくなったことから、請求項1を引用しないものとするものである。そうすると、訂正事項3~5は、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、訂正事項3~5は、複数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項3~5が請求項1を含む複数項を引用していたところ、請求項1を引用しないものとする訂正が、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項2~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明5」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
複数の発光素子を含む光源部と、
前記光源部に熱的に結合されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに向けて送風する送風部と、
前記光源部、前記送風部および前記ヒートシンクが収容され、前記ヒートシンクに隣接して排気口が設けられるとともに、前記送風部の近くに吸気口が設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材と、を備え、
前記筐体は、
前記光源部による光の出射方向に面し、光出射窓が設けられた底面部と、
前記底面部に対向して位置し、前記吸気口を有し、前記送風部が近くに配置された上面部と、
前記排気口を有し、前記底面部および前記上面部に接合された第1側壁部と、
前記底面部の第1縁辺部と前記底面部の前記第1縁辺部に対向する前記上面部の第2縁辺部とにわたって延びている第2側壁部と、
前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第3側壁部と、
前記第3側壁部に対向して位置し、前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第4側壁部と、を含み、
前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつ前記第3側壁部から前記第4側壁部にわたって延びている、光照射装置。
【請求項3】
前記第2側壁部に設けられた、前記送風部から前記送風空間に送風される気流を前記ヒートシンクヘ導く案内部材を、さらに含んでいる、請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第2側壁部に沿って設けられた、前記光源部および前記送風部を動作させる駆動基板を、さらに含んでいる、請求項2または3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記送風部は、回転する羽根の中心軸の方向が前記ヒートシンクに向かって延びている軸流ファンを含んでいる、請求項2~4のいずれか1項に記載の光照射装置。」
第4 取消理由通知の概要
取消理由通知で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項1、5
・引用文献等 甲第1号証及び甲第2号証
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2018-206591号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2015-149415号公報(以下「甲2」という。)
第5 当審の判断
1 取消理由通知書で通知した取消理由について
本件訂正により、請求項1は削除され、取消理由のない請求項2に限定された。
また、請求項5は、請求項2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものである。
そうすると、上記取消理由通知書で通知した取消理由は解消した。
2 取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由について
2-1 新規性・進歩性に関する特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由の概要
取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1、3、5に係る発明は、甲1に記載された発明である。
本件特許の請求項3に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)判断
本件訂正により、請求項1は削除された。
また、請求項3、5は、請求項2の発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである。
そうすると、上記(1)の特許異議申立理由は、理由がない。
2-2 拡大先願に関する特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由の概要
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の優先日前の日本語特許出願であって、その優先日後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその優先日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである(同法第184条の13参照)。
甲第3号証:PCT/JP2020/038287号(国際公開第2021/070931号)(以下「甲3」という。)
(2)甲3について
ア 甲3の認定事項
(ア)段落[0029]の「筐体100は、・・・冷却ファン300が配置される第1空間α・・・を備え」との記載から、冷却ファン300も筐体100内部に備えるものと認められ、段落[0025]の記載も踏まえると、光照射装置1は、筐体100内部に、光源ユニット200と冷却ファン300と放熱部材400を備えるものと認められる。
(イ)段落[0023]の「筐体100は、底面に紫外光が出射されるガラス製の窓部105を備えている。」との記載、段落[0025]の「光源ユニット200と、・・・を筐体100内部に備えている。」との記載、及び図3から、底面は光源ユニット200による光の出射方向に面しているものと認められる。
(ウ)段落[0023]の筐体100が箱形であるとの記載、図1~3等を踏まえると、筐体100は、同段落に記載された上面、底面、左側面のほか、右側面、前面、背面(以下の参考図参照)を有すると認められ、また、底面が、上面に対向して位置すること、左側面が、底面及び上面に接合されること、右側面が、底面の第1縁辺部と底面の第1縁辺部に対向する上面の第2縁辺部とにわたって延びていること、前面が、底面、上面および左側面に接合されること、背面が前面に対向して位置し、底面、上面及び右側面に接合されるものと認められる。
【参考図】甲3の図1、図2に当審で加筆
[図:0001415305000001.jpg]
(エ)段落[0029]の「筐体100内の空間をX軸方向に区画し、放熱部材400、LED駆動回路500及び冷却ファン300が配置される第1空間αと、第1空間αに隣接する第2空間βと、を形成する仕切板110」との記載及び図3から、仕切板110は、冷却ファン300から放熱部材400にわたって延び、かつ左側面から右側面にわたって延びているものと認められる。
イ 甲3に記載された発明
以上を踏まえると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、かっこ内には主な参照先を示す。
「複数のLED素子210を備える光源ユニット200と([0026])、
光源ユニット200を放熱板410の一端面上に固定した放熱部材400と([0026])、
Z軸方向の冷却風を発生させ、冷却風を前記放熱部材400の放熱フィン420の間に供給する冷却ファン300と([0034])、
光源ユニット200と冷却ファン300と放熱部材400を内部に備えた筐体100であって(上記ア(ア))、筐体100の上面には、吸気口103が形成され、吸気口103に対応して冷却ファン300が配置され、筐体100の左側面には排気口101が形成された筐体100と([0023])、
筐体100内の空間をX軸方向に区画し、放熱部材400及び冷却ファン300が配置される第1空間αと、第1空間αに隣接する第2空間βと、を形成する仕切板110を備え、仕切板110には、放熱フィン420の基端部側が第2空間βに露出するように、第1空間αと第2空間βを連通する連通孔120が形成され([0029])、第2空間βによって冷却風の向きを変更し、筐体100の左側面に設けられた排気口101から排気するように構成することで、搬送方向に近接する記録ヘッド等に向けて高温の空気が排気されないようにし([0035])、
筐体100は、
光源ユニット200による光の出射方向に面し(上記ア(イ))、紫外光が出射される窓部105を備えた底面と([0023])、
底面に対向して位置し(上記ア(ウ))、吸気口103が形成され、冷却ファン300が吸気口103に対応して設けられた上面と([0023])、
排気口101が形成され([0023])、底面及び上面に接合された左側面と(上記ア(ウ))、
底面の第1縁辺部と底面の第1縁辺部に対向する上面の第2縁辺部とにわたって延びている右側面と(上記ア(ウ))、
底面、上面および左側面に接合された前面と(上記ア(ウ))、
前面に対向して位置し、底面、上面及び右側面に接合された背面と(上記ア(ウ))、を含み、
仕切板110は、冷却ファン300から放熱部材400にわたって延び、かつ左側面から右側面にわたって延びている(上記ア(エ))、光照射装置1。」
(3)対比・判断
ア 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲3発明とを対比する。
・後者の「LED素子」は、前者の「発光素子」に相当し、以下同様に「光源ユニット200」は「光源部」に、「放熱部材400」は「ヒートシンク」に、「冷却ファン300」は「送風部」に、「排気口101」は「排気口」に、「吸気口103」は「吸気口」に、「筐体100」は「筐体」に、「仕切板」は「仕切り部材」に、「窓部105」は「光出射窓」に、「底面」は「底面部」に、「上面」は「上面部」に、「左側面」は「第1側壁部」に、「右側面」は「第2側壁部」に、「前面」は「第3側壁部」に、「背面」は「第4側壁部」に、「光照射装置1」は「光照射装置」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると、さらに次のことがいえる。
・後者の「複数のLED素子210を備える光源ユニット200」は、前者の「複数の発光素子を含む光源部」に相当する。
・後者の「光源ユニット200を放熱板410の一端面上に固定した放熱部材400」は、前者の「前記光源部に熱的に結合されたヒートシンク」に相当する。
・後者の「Z軸方向の冷却風を発生させ、冷却風を前記放熱部材400の放熱フィン420の間に供給する冷却ファン300」は、前者の「前記ヒートシンクに向けて送風する送風部」に相当する。
・後者の「光源ユニット200と冷却ファン300と放熱部材400を内部に備えた筐体100であって、筐体100の上面には、吸気口103が形成され、吸気口103に対応して冷却ファン300が配置され、筐体100の左側面には排気口101が形成された筐体100」は、前者の「前記光源部、前記送風部および前記ヒートシンクが収容され、前記ヒートシンクに隣接して排気口が設けられるとともに、前記送風部の近くに吸気口が設けられた筐体」と、「前記光源部、前記送風部および前記ヒートシンクが収容され、排気口が設けられるとともに、前記送風部の近くに吸気口が設けられた筐体」の点で共通する。
・後者の「放熱部材400及び冷却ファン300が配置される第1空間α」は、前者の「送風空間」に相当し、後者の「第2空間β」は、筐体100内の空間をX軸方向に区画して形成された第1空間α及び第2空間βの、第1空間α以外の空間であるから、前者の「送風空間を除く残余空間」に相当する。
そうすると、後者の「筐体100内の空間をX軸方向に区画し、放熱部材400及び冷却ファン300が配置される第1空間αと、第1空間αに隣接する第2空間βと、を形成する仕切板110」は、前者の「前記筐体内に設けられた、前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材」に相当する。
・後者の「光源ユニット200による光の出射方向に面し、紫外光が出射される窓部105を備えた底面」は、前者の「前記光源部による光の出射方向に面し、光出射窓が設けられた底面部」に相当し、
後者の「底面に対向して位置し、吸気口103が形成され、冷却ファン300が吸気口103に対応して設けられた上面」は、前者の「前記底面部に対向して位置し前記吸気口を有し、前記送風部が近くに配置された上面部」に相当し、
後者の「排気口101が形成され、底面及び上面に接合された左側面」は、前者の「前記排気口を有し、前記底面部および前記上面部に接合された第1側壁部」に相当し、
後者の「底面の第1縁辺部と底面の第1縁辺部に対向する上面の第2縁辺部とにわたって延びている右側面」は、前者の「前記底面部の第1縁辺部と前記底面部の前記第1縁辺部に対向する前記上面部の第2縁辺部とにわたって延びている第2側壁部」に相当し、
後者の「底面、上面および左側面に接合された前面」は、前者の「前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第3側壁部」に相当し、
後者の「前面に対向して位置し、底面、上面及び右側面に接合された背面」は、前者の「前記第3側壁部に対向して位置し、前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第4側壁部」に相当する。
・後者の「仕切板110は、冷却ファン300から放熱部材400にわたって延び、かつ左側面から右側面にわたって延びている」構成は、前者の「前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつ前記第3側壁部から前記第4側壁部にわたって延びている」構成と、「前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつある側壁部からそれと対向する側壁部にわたって延びている」点で共通する。
以上を総合すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「 複数の発光素子を含む光源部と、
前記光源部に熱的に結合されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに向けて送風する送風部と、
前記光源部、前記送風部および前記ヒートシンクが収容され、排気口が設けられるとともに、前記送風部の近くに吸気口が設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材と、を備え、
前記筐体は、
前記光源部による光の出射方向に面し、光出射窓が設けられた底面部と、
前記底面部に対向して位置し前記吸気口を有し、前記送風部が近くに配置された上面部と、
前記排気口を有し、前記底面部および前記上面部に接合された第1側壁部と、
前記底面部の第1縁辺部と前記底面部の前記第1縁辺部に対向する前記上面部の第2縁辺部とにわたって延びている第2側壁部と、
前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第3側壁部と、
前記第3側壁部に対向して位置し、前記底面部、前記上面部および前記第2側壁部に接合された第4側壁部と、を含み、
前記仕切り部材は、前記送風部から前記ヒートシンクにわたって延び、かつある側壁部からそれと対向する側壁部にわたって延びている、光照射装置。」
[相違点]
・相違点1
排気口について、本件発明2は、「前記ヒートシンクに隣接して」設けられるのに対し、甲3発明では、「仕切板110には、放熱フィン420の基端部側が第2空間βに露出するように、第1空間αと第2空間βを連通する連通孔120が形成され、第2空間βによって冷却風の向きを変更し、筐体100の左側面に設けられた排気口101から排気するように構成」されている点。
・相違点2
仕切り部材について、本件発明2は、「前記第3側壁部から前記第4側壁部にわたって」延びているのに対し、甲3発明では、左側面から右側面、すなわち第1側壁部から第2側壁部にわたって延びている点。
(イ)判断
・相違点1について
甲3発明は、冷却風が放熱部材400から第2空間βを経由して排気口101から排気されるものであり、このような放熱部材400(ヒートシンク)と、排気口101(排気口)との間に、第2空間βが介在している構成が、排気口101が放熱部材400に、実質的に「隣接する」ものであるとはいえない。
また、甲3発明は、当該構成とすることで、搬送方向に近接する記録ヘッド等に向けて高温の空気が排気されないようにするものであるから、第2空間βをなくして、放熱部材400(ヒートシンク)と、排気口101(排気口)とを隣接させるものとすることが、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
・相違点2について
甲3発明において、仕切板110は、これによって第2空間βを形成し、筐体100の左側面に設けられた排気口101から排気するように構成することで、搬送方向に近接する記録ヘッド等に向けて高温の空気が排気されないようにするものである。仮に、これを前面(第3側壁部)から背面(第4側壁部)にわたって延びるものとすると、このような冷却風の流れを形成できないこととなるから、相違点2に係る本件発明2の構成とすることが、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲3発明と同一ではなく、また、実質同一でもない。
イ 本件発明4、5について
本件発明4、5は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、上記アでの検討したのと同様に、本件発明4、5は、甲3発明ではないし、甲3発明と実質同一のものでもない。
2-3 記載要件に関する特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由の概要
記載要件に関して、申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
ア サポート要件
本件特許発明の課題は「安定した気流が得られ、冷却性能を十分発揮することができる光照射装置」を提供することであると解され(段落【0009】)、本件特許明細書を参酌する限り(段落【0018】)、送風空間9が一定の距離(風の流れ方向に沿った距離)を有しているからこそ、安定した気流を得て冷却性能を向上させられるのであって、例えば(極論すれば)、サイズが小さい送風部をフィンとの距離をほぼゼロにすると、本件特許発明の目的は達成できない。
これに対し、請求項1では「送風空間」の記載が存在するものの、その距離(又は長さ)についてなんら定義されていない。そうすると、請求項1には送風空間の長さがほぼゼロのものまで含まれており、この場合「安定した気流が得られ、冷却性能を十分発揮することができる光照射装置」を提供するという本件特許発明の課題を解決することができないのは明らかである。
請求項2~5においても「送風空間の長さ」について何ら定義されていないため、同様の理由により、サポート要件を満たしていない。
イ 明確性要件
請求項1の「送風空間」の外縁が不明確である。送風空間は、「送風部」及び「ヒートシンク」の間の空間であると定義されているが、3次元空間に配置される2つの有体物の「間の空間」がどのように定まるのか不明である。
また、「送風空間」の境目がどこにあるか不明確である。送風空間は「送風部」が一端をなし、「ヒートシンク」が他端部をなすような空間であることを定義しているが、送風部は空気をその内部に通す構造上、送風部の吸気側と排気側を貫通する空間を有している。この貫通する空間の送風空間の関係(境界)が不明確である。
ヒートシンクについても、ヒートシンクのフィンの間に存在する空間はヒートシンクの外部であるのか内部であるのか不明であり、ヒートシンクのどの部分が送風空間の境目となるのかを定めることができない。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2~5は、明確性要件を満たしていない。
(2)判断
ア サポート要件について
本件特許明細書の段落【0025】には、次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。
「【0025】
本開示の光照射装置によれば、仕切り部材によって送風部とヒートシンクとの間の送風空間が筐体の内部空間において残余空間から仕切られるので、前記従来技術のように容積の大きいヒートシンクをサイズの小さい送風部の送風によって冷却する場合であっても、ヒートシンクを通過して熱輸送に関与する風量を効率よく増やすことができ、熱の輸送効率を向上させることができる。そのため、ヒートシンクに接触して温度上昇する直前の低温の風をヒートシンクに安定して送風することができ、これによって熱の輸送効率が向上するので、光源部に対して良好な冷却性能を得ることができる。」
上記記載によれば、仕切り部材によって送風空間が残余空間から仕切られるので、ヒートシンクに安定して送風することができ、良好な冷却性能を得ることができるものとしている。そして、請求項2では、仕切り部材について「前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材」と特定されており、上記安定して送風し、良好な冷却性能を得るための構成が特定されている。そうすると、請求項2に記載された発明は、発明が解決しようとする課題を解決するものであり、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明は、送風空間の距離(長さ)が特定されておらず、本件特許発明の課題を解決することができないと主張するが、段落【0025】の記載によれば、送風空間の距離を特定することを要するものとはいえないから、これを採用することはできない。
イ 明確性要件について
請求項2の「前記筐体の内部空間を、前記送風部および前記ヒートシンクの間の送風空間と前記送風空間を除く残余空間とに仕切る仕切り部材」との特定から、送風空間は、送風部およびヒートシンクの間の空間であり、仕切り部材で仕切られた筐体の内部空間のうち、送風部とヒートシンクの間の空間として理解でき、発明は明確である。
申立人は、特許異議申立書において、送風部の吸気側と排気側を貫通する空間のどこが境界になるか不明確であり、ヒートシンクのフィンの間の空間がヒートシンクの外部であるか内部であるか不明確であると主張する。申立人の上記主張は、送風部やヒートシンクの内部のうちの一部分が送風空間であることを前提としたものと解されるが、請求項2には、送風部の内部やヒートシンクの内部に送風空間が存在するとする記載もないから、申立人の主張は、その前提において誤りであり、これを採用することはできない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件特許の請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1に係る特許については、本件訂正請求により削除されたから、請求項1に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700050