特許異議申立
2023-700057
電子レンジ調理用調味料
- 審判番号
- 2023-700057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-214280
- 登録番号
- 7105357
- 請求日
- 2023年01月19日
- 審決日
- 2023年05月26日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キッコーマン株式会社
- 【権利者代理人】須藤 晃伸
- 【権利者代理人】須藤 阿佐子
- 【権利者代理人】榛葉 貴宏
- 【権利者代理人】鈴木 恵理子
- 【異議申立人】根本 学
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 山口 大志
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条、特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7105357号発明「電子レンジ調理用調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7105357号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7105357号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、令和3年12月28日を出願日とする出願(特願2021-214280号)に係るものであって、令和4年7月13日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和4年7月22日である。)。
その後、令和5年1月19日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である根本学(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
畜肉類または魚介類である固形食材を電子レンジ加熱調理するための液状調味料であって、
(1)25℃における粘度が100~9000cpであり、
(2)pHが4.4以下であり、
(3)糖質を5重量%以上含み、かつ、
(4)塩分濃度が3.0重量%以上であり、
一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む、ことを特徴とする電子レンジ調理用調味料。
【請求項2】
固形食材を液面浸漬した状態で電子レンジ加熱調理するための液状調味料である、請求項1に記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項3】
前記畜肉類または魚介類が、調味料無添加でレンジ加熱調理した肉の中間荷重(50%歪)が3.3N以上である、請求項1または2に記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項4】
肉をしっとり柔らかく仕上げるための調味料である、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項5】
前記畜肉類が鶏むね肉、鶏ささみ、豚肉、または牛赤身肉、前記魚介類がブリ、鮭、マグロ、エビ、タコ、イカ、またはアサリである、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項6】
前記具材が香味野菜を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項7】
包装容器に充填封入された液状調味料である、請求項1ないし6のいずれかに記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項8】
前記包装容器が電子レンジ加熱対応包材の包装容器である、請求項7に記載の電子レンジ調理用調味料。
【請求項9】
加熱用容器内で液状調味料により畜肉類または魚介類である固形食材を電子レンジ加熱調理する方法であって、液状調味料は、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子レンジ調理用調味料であることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記加熱用容器は、前記液状調味料が充填封入された電子レンジ加熱対応包材の包装容器である、請求項9に記載の方法。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の請求項1~10に係る特許は、下記1及び2のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第10号証(以下、単に「甲1」等という。下記3を参照。)である。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~10は、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。
2 申立理由2(サポート要件)
本件発明1~10については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条4号に該当する。
3 証拠方法
・甲1 特開2021-97624号公報
・甲2 特開2015-130811号公報
・甲3 「ポリ袋でレンチンおかず 電子レンジでこんなにおいしい!」、株式会社主婦の友社、2021年6月30日、26頁、62頁、77頁
・甲4 楽天レシピ、「梅でさっぱり超回復♪レンジで簡単豚の生姜焼き レシピ・作り方」、[online]、2020年9月8日、[令和5年1月17日検索]、インターネット
<https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1780037022>
・甲5 もぐうぇる、「【管理栄養士監修】みりん大さじ1に含まれる糖質量は?種類による違いは?」、[online]、2020年9月18日、[令和4年12月17日検索]、インターネット
<https://mogwell.karadashift.jp/80247>
・甲6 「電子レンジでワザありおかず」、NHK出版、2013年4月20日、44~45頁
・甲7 料理科学の森、「肉を柔らかくする方法○2」、[online]、2019年2月5日、[令和4年11月1日検索]、インターネット
<https://ryourikagakunomori.jp/2019/02/05/肉を柔らかくする方法○2/>
・甲8 東京ガス ウチコト、「【安いお肉を柔らかくする方法】ほんのひと手間でお肉がもっと美味しく!」、[online]、2016年10月11日、[令和4年11月1日検索]、インターネット
<https://tg-uchi.jp/topics/2748>
・甲9 独立行政法人国民生活センター、「食品加熱時の突沸に注意」、[online]、2014年12月16日、インターネット
<https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20141204_1.html>
・甲10 「食肉加工ハンドブック」、株式会社光琳、昭和60年5月15日、262~273頁、282~309頁
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(請求項1~4、【0002】~【0015】、【0027】~【0035】、【0042】~【0048】、【0061】~【0090】、表1~8)によれば、特に、試験例2(【0071】~【0077】、表3、表4)における評価サンプル13に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「水35.0重量%、糖類20.0重量%、醤油10.0重量%、酒8.0重量%、食塩4.0重量%、油3.0重量%、増粘剤(ガム、加工澱粉)2.0重量%、食酢1.0重量%、香辛料0.2重量%、その他(ニンニク、生姜、エキス等)11.8重量%、リンゴ酸1.0重量%、トレハロース4.0重量%を混合した後、85℃に達温させてから冷却して作製した、pH3.5である調味料(ソース)であって、
当該調味料(ソース)100gを市販のマイクロ波加熱対応パウチ(ライオン株式会社製「リード プチ圧力調理バッグ」)に充填し、これらに鶏ムネ肉(生肉)からカットした食肉片(厚さ:約2cm、1個当たりの重量:約20g)を、総量で200g入れて、数十秒間揉み込んでから10分間静置した後、市販の電子レンジを使用してマイクロ波加熱に供することにより(出力:600W、照射時間:4分30秒間)、鶏肉の加熱肉を得るために用いられる、調味料(ソース)。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「調味料(ソース)」は、「水35.0重量%」、「醤油10.0重量%」、「酒8.0重量%」、「食酢1.0重量%」を含む「ソース」である調味料であり、液状であることは明らかであるから、本件発明1における「液状調味料」に相当する。
また、甲1発明における「総量で200g」の「鶏ムネ肉(生肉)からカットした食肉片(厚さ:約2cm、1個当たりの重量:約20g)」は、本件発明1における「畜肉類または魚介類である固形食材」に相当する。
そして、甲1発明における「調味料(ソース)」は、上記「総量で200g」の「鶏ムネ肉(生肉)からカットした食肉片(厚さ:約2cm、1個当たりの重量:約20g)」を、「市販の電子レンジを使用してマイクロ波加熱に供することにより(出力:600W、照射時間:4分30秒間)、鶏肉の加熱肉を得るために用いられる」ものであるから、本件発明1における「畜肉類または魚介類である固形食材を電子レンジ加熱調理するための液状調味料」である「電子レンジ調理用調味料」に相当するといえる。
(イ)甲1発明において、調味料(ソース)が「pH3.5」であることは、本件発明1において、液状調味料の「pHが4.4以下」であることに相当する。
甲1発明において、調味料(ソース)が「糖類20.0重量%」及び「トレハロース4.0重量%」(二糖(甲1【0013】))を含むことは、本件発明1において、液状調味料が「糖質を5重量%以上」含むことに相当する。
甲1発明において、調味料(ソース)が「醤油10.0重量%」(塩分を含むことは明らかである。)及び「食塩4.0重量%」を含むことは、本件発明1において、液状調味料の「塩分濃度が 3.0重量%以上」であることに相当する。
(ウ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「畜肉類または魚介類である固形食材を電子レンジ加熱調理するための液状調味料であって、
(2)pHが4.4以下であり、
(3)糖質を5重量%以上含み、かつ、
(4)塩分濃度が3.0重量%以上である、
電子レンジ調理用調味料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1
液状調味料の「25℃における粘度」が、本件発明1では、「100~9000cp」であるのに対して、甲1発明では、「100~9000cp」であるかどうか不明である点。
・相違点2
本件発明1では、「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む」のに対して、甲1発明では、「香辛料0.2重量%」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)11.8重量%」を含むものの、当該「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の「一辺」が「1mm以上」であるかどうか不明であり、また、そのような「一辺1mm以上の」「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」を「1重量%以上含む」かどうか不明である点。
イ 相違点2の検討
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)まず、相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1には、甲1発明に係る調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の大きさについては、何ら記載されていない。
b また、甲1発明に係る調味料(ソース)は、当該調味料(ソース)を充填したマイクロ波加熱対応パウチに鶏ムネ肉(生肉)を入れて電子レンジを使用してマイクロ波加熱に供することにより、鶏肉の加熱肉を得るために用いられるものであるところ、このような甲1発明に係る調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」について、その一辺が1mm以上であることが、本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。
c そうすると、甲1発明においては、調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の「一辺」が「1mm以上」であるかどうか不明であり、また、そのような「一辺1mm以上の」「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」を「1重量%以上含む」かどうかも不明である。
d 以上によれば、相違点2は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点2の容易想到性について検討する。
a(a)上記(ア)a、bで述べたとおり、甲1には、甲1発明に係る調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の大きさについては、何ら記載されておらず、また、上記「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の一辺が1mm以上であることが、本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。
また、甲2~10にも、上記(ア)bで述べたのと同様の用途に用いられる液状調味料に関し、当該液状調味料に含まれる香辛料やニンニク、生姜等の大きさについては、何ら記載がない。
(b)この点、本件明細書には、液状調味料中に「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含」ませることにより、加熱調理時に固形食材と具材を同時に投入する場合に比べ、肉や魚の生臭さをより抑えられるだけでなく、具材の風味が全体になじみ、具材が食材に絡むことで加熱調理品の味にメリハリがつき、咀嚼した後にも風味の余韻が残りやすく、味の持続性が高まることが記載されている(【0014】、【0022】)。
また、本件明細書の試験3(【0059】~【0062】、表5、表6)においては、具材として4mmカットした長ねぎを用いた試験調味料28が記載されており、具材無添加のものよりも、鶏臭さ、味浸み、照りの評価が向上するとともに、加熱時に調味液が吹きこぼれしにくいことが記載されている(【0059】、【0062】)。
本件明細書の上記記載を踏まえると、本件発明1において、液状調味料中に「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含」ませることには、一定程度の技術的意義があるものと理解できる。
(c)上記(a)で指摘した各証拠の記載のほか、上記(b)で述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、甲1発明において、調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の一辺を1mm以上とした上で、そのような一辺1mm以上の「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」を1重量%以上含むものとする動機付けがあるとはいえない。
b また、甲1~10には、「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む」液状調味料が記載されているとはいえない。
特に、甲1~4に記載される液状調味料は、(a)当該液状調味料に含まれる「具材」の大きさが不明であるか(甲1発明、甲1【0032】、【0033】、【0045】。甲3の77頁)、(b)肉類を電子レンジで加熱調理する段階で、当該液状調味料に肉類と「具材」を投入するか(甲2の請求項1、【0024】、【0025】)、(c)肉類を電子レンジで加熱調理する段階で、容器に肉類と「具材」と当該液状調味料を投入するか(甲3の26頁、62頁、77頁。甲4)、のいずれかにすぎない。
また、甲6に記載される調味料は、そもそも液状調味料とはいい難いものであり、仮に液状調味料であると解することができたとしても、当該液状調味料に含まれる「具材」の大きさは不明である。
そうすると、上記a(b)で述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、甲1発明において、調味料(ソース)に含まれる「香辛料」や「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」のほかに、さらに、「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む」ものとする動機付けがあるということもできない。
c 仮に、甲1発明において、「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む」ものとすることが動機付けられることがあったとしても、本件発明1は、上記a(b)で述べたとおりの、当業者が予測することができない効果を奏するものである。
この点、申立人は、本件発明1における「一辺1mm以上」の数値範囲には臨界的意義がないと主張するが、具材の種類や大きさによって程度に差はあるとしても、一定程度は上記の効果を奏するものといえる。
d 以上によれば、甲1発明において、調味料(ソース)に含まれる「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」の一辺を1mm以上とした上で、そのような一辺1mm以上の「香辛料」及び「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」を1重量%以上含むものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
また、甲1発明において、調味料(ソース)に含まれる「香辛料」や「その他(ニンニク、生姜、エキス等)」のほかに、さらに、「一辺1mm以上の野菜、香辛料、ゴマ及び茸類からなる群から選ばれる少なくとも1種の具材を1重量%以上含む」ものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~10についても同様に、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~10は、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)
(1)本件明細書の記載(【0002】~【0008】)によれば、本件発明1が解決しようとする課題は、「加熱によりパサツキやすい食材を、前処理を要することなくしっとり柔らかく、かつ味浸み良く調理することができる、電子レンジ調理用の液状調味料を提供すること」であると認められる。
本件明細書の記載(【0010】~【0017】、【0022】、【0025】、【0026】、【0028】、【0030】、【0041】~【0100】、表1~22)によれば、上記課題は、畜肉類または魚介類である固形食材を電子レンジ加熱調理するための液状調味料において、「25℃における粘度」を「100~9000cp」とし、「pH」を「4.4以下」とし、「糖質」を「5重量%以上」とし、「塩分濃度」を「3.0重量%以上」とすることによって、解決できることが理解できる。
以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記の各条件を満たす本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって、本件発明1については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~10についても同様である。
(2)申立人は、
ア 本件明細書の試験4における試験調味料50及び51について、水あめとデキストリンの量を増やせば、「肉のしっとりさ」、「肉の柔らかさ」、「肉のきめ細かさ」、「味浸み」の評価が、本件発明の効果を発揮するとされる最低ラインの「すべて8」を下回る可能性があるため、当業者は、「25℃における粘度が100~9000cpであり」、「pHが4.4以下であり」、「糖質を5重量%以上含み」、「塩分濃度が3.0重量%以上であり」との4つの数値限定のみを満たす全ての範囲で、課題を解決できるとは認識できない、
イ 本件明細書の試験6における試験調味料82について、塩分を3%まで増加させて、本件発明1の範囲にしたときに、表9の結果を参照すると、「鶏臭さ」の評価が×のままである蓋然性が高いから、課題を解決できない、
ウ 本件明細書の試験6における試験調味料82について、塩分を3%まで増加させ、pHを4.4まで上昇させて、本件発明1の範囲にしたときに、表2の結果を参照すると、「肉のしっとりさ」、「肉の柔らかさ」、「肉のきめ細かさ」、「味浸み」の評価が、合格ラインである「8、8、8、8」を下回る可能性があるため、課題を解決できない、
エ 本件明細書の試験6における試験調味料84について、pHを4.4にして、本件発明1の範囲にしたときに、表2の結果を参照すると、「肉のきめ細かさ」の評価を8以上、「鶏臭さ」の×を○に向上できるか不明であり、課題を解決できるとは認識できない、
オ 本件明細書の試験7における試験調味料122について、本件発明1の数値限定を満たしているが、「肉のしっとりさ」、「肉の柔らかさ」、「肉のきめ細かさ」、「味浸み」の評価は全て6で△であり、「鶏臭さ」と「照り」の評価はいずれも×であるから、本件発明の効果が得られておらず、課題を解決できるとは認識できない、
と主張する。
(3)ア しかしながら、上記(2)イ、エの主張については、「鶏臭さ」と「肉のきめ細かさ」は、本件発明が解決しようとする課題とは異なる評価項目であるから、申立人の主張は前提において失当であり、採用できない。
イ また、上記(2)ア、ウの主張については、実際に所定のラインを下回ることを示す具体的な根拠が見当たらないから、採用できない。
ウ さらに、上記(2)オの主張については、以下のとおり、採用できない。
すなわち、本件明細書には、試験調味料122が「本発明の実施例」であり、試験調味料121が「比較例」であることが記載されている(【0078】)。
そして、表14の結果によれば、粘度が「113」cpである試験調味料122のほうが、粘度が「9」cpである試験調味料121よりも、優れた結果が得られており、このような結果を踏まえ、「粘度が100cp以上であることが重要であり、170~5500cpの範囲で好ましいことが確認された。」(【0078】)と記載されていることから、本件明細書の試験7では、試験調味料122は、一定程度の効果が得られる「本発明の実施例」と認識しているものと解される。
ここで、本件発明が解決しようとする課題は、「加熱によりパサツキやすい食材を、前処理を要することなくしっとり柔らかく、かつ味浸み良く調理することができる、電子レンジ調理用の液状調味料を提供すること」であるから、その程度はともかく、「加熱によりパサツキやすい食材を、前処理を要することなくしっとり柔らかく、かつ味浸み良く調理することができ」たのであれば、当業者は上記課題を解決できると認識できるものと解される。
よって、上記(2)オの主張は、採用できない。
(4)したがって、申立理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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