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特許異議申立

2022-700941

容器詰組成物及び柑橘類の果汁の香味の改善方法

審判番号
2022-700941
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-565775
登録番号
7059454
請求日
2022年09月27日
審決日
2023年09月28日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】キッコーマン株式会社
  • 【権利者代理人】森本 敏明
  • 【異議申立人】松永 健太郎
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 淺野 美奈
  • 審判官 三上 晶子
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7059454号発明「容器詰組成物及び柑橘類の果汁の香味の改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7059454号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。 特許第7059454号の請求項1、2、5ないし16に係る特許を維持する。 特許第7059454号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7059454号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)3月26日(優先権主張 2020年(令和2年)3月26日)を国際出願日とする特願2021-565775号に係るものであって、令和4年4月15日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月27日に特許異議申立人 松永 健太郎(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、令和5年1月30日付けで取消理由が通知されたところ、同年3月24日に特許権者 キッコーマン株式会社より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされ、同年4月26日に訂正請求書の手続補正書が提出され、同年5月12日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年6月14日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求における請求の趣旨は、「特許第7059454号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9、10について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の適否についての判断 (1) 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、容器詰組成物であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化1】 [図:0001404765000001.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記容器詰組成物。」 と記載されているのを、 「柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、加熱殺菌した容器詰組成物であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化1】 [図:0001404765000002.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記加熱殺菌した容器詰組成物。」 に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2、5ないし9も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記組成物は、容器詰調味用組成物である、請求項1に記載の組成物。」 と記載されているのを、 「前記組成物は、加熱殺菌した容器詰調味用組成物である、請求項1に記載の組成物。」 に訂正する。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項5ないし9も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記柑橘類は、少なくとも1種のテルペン類を含有する香酸柑橘類である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。」 と記載されているのを、 「前記柑橘類は、少なくとも1種のテルペン類を含有する香酸柑橘類である、請求項1又は2に記載の組成物。」 に訂正する。 請求項5の記載を直接引用して特定する請求項6も同様に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に、 「前記組成物は、さらに砂糖、水、しょうゆ、酢及びグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。」 と記載されているのを、 「前記組成物は、さらに砂糖、水、しょうゆ、酢及びグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1、2、5及び6のいずれか1項に記載の組成物。」 に訂正する。 請求項7の記載を直接引用して特定する請求項8及び9も同様に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを原料として含む、加工飲食品。」 と記載されているのを、 「請求項1、2及び5~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを原料として含む、加工飲食品。」 に訂正する。 請求項8の記載を直接引用して特定する請求項9も同様に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に、 「請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを混合することにより、加工飲食品を得る工程を含む、加工飲食品の製造方法。」 と記載されているのを、 「請求項1、2及び5~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを混合することにより、加工飲食品を得る工程を含む、加工飲食品の製造方法。」 に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10に、 「柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、容器詰加工飲食品であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化2】 [図:0001404765000003.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記容器詰加工飲食品。」 と記載されているのを、 「柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、加熱殺菌した容器詰加工飲食品であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化2】 [図:0001404765000004.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記加熱殺菌した容器詰加工飲食品。」 に訂正する。 コ 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし9について、請求項2ないし9は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、容器詰組成物について、「加熱殺菌した」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0045】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び5ないし9についても同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、容器詰調味用組成物について、「加熱殺菌した」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許の明細書の【0045】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項5ないし9についても同様である。 ウ 訂正事項3及び4について 訂正事項3及び4に係る請求項3及び4の訂正は、請求項3及び4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3及び4に係る請求項3及び4の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 エ 訂正事項5ないし8について 訂正事項5ないし8に係る請求項5、7ないし9の訂正はいずれも、訂正事項3および4によって請求項3及び4が削除されたことに伴い、引用先請求項のうち請求項3及び4を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項5ないし8に係る請求項5、7ないし9の訂正はいずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 オ 訂正事項9について 訂正事項9に係る請求項10の訂正は、容器詰加工飲食品について、「加熱殺菌した」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項9に係る請求項10の訂正は、本件特許の明細書の【0045】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 なお、特許異議申立ては訂正前の請求項1ないし16に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明16」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和5年3月24日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、加熱殺菌した容器詰組成物であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化1】 [図:0001404765000005.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記加熱殺菌した容器詰組成物。 【請求項2】 前記組成物は、加熱殺菌した容器詰調味用組成物である、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記柑橘類は、少なくとも1種のテルペン類を含有する香酸柑橘類である、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項6】 前記香酸柑橘類は、ゆず、すだち、かぼす、ゆこう、レモン、ライム、シークヮーサー、だいだい、シトロン及びブッシュカンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香酸柑橘類である、請求項5に記載の組成物。 【請求項7】 前記組成物は、さらに砂糖、水、しょうゆ、酢及びグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項1、2、5及び6のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項8】 請求項1、2及び5~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを原料として含む、加工飲食品。 【請求項9】 請求項1、2及び5~7のいずれか1項に記載の組成物と食材とを混合することにより、加工飲食品を得る工程を含む、加工飲食品の製造方法。 【請求項10】 柑橘類の果汁及び1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む、加熱殺菌した容器詰加工飲食品であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化2】 [図:0001404765000006.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記加熱殺菌した容器詰加工飲食品。 【請求項11】 柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物とフェネチルアセテートとをフェネチルアセテートの含有量が1ppb~2,000ppbになるように混合することにより、柑橘類の果汁の香味を改善する工程を含む、柑橘類の果汁の香味の改善方法であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化3】 [図:0001404765000007.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記方法。 【請求項12】 柑橘類の果汁に含まれるテルペン類とフェネチルアセテートとをフェネチルアセテートの含有量が1ppb~2,000ppbになるように混合することにより、テルペン類の減少を抑制する工程を含む、テルペン類の減少の抑制方法であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化4】 [図:0001404765000008.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記方法。 【請求項13】 フェネチルアセテートを有効成分として含み、かつ該フェネチルアセテートは柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物において1ppb~2,000ppbになるように使用される、柑橘類の果汁の香味改善用組成物又はテルペン類の減少抑制用組成物であって、 前記フェネチルアセテートは下記式(I) 【化5】 [図:0001404765000009.jpg] (I) で示される構造からなる化合物である、前記組成物。 【請求項14】 前記柑橘類は、少なくとも1種のテルペン類を含有する香酸柑橘類である、請求項11~12のいずれか1項に記載の方法。 【請求項15】 前記香酸柑橘類は、ゆず、すだち、かぼす、ゆこう、レモン、ライム、シークヮーサー、だいだい、シトロン及びブッシュカンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香酸柑橘類である、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記組成物は、さらに砂糖、水、しょうゆ、酢及びグルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む、請求項11、12、14及び15のいずれか1項に記載の方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年9月27日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1-1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由1-3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由1-4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由1-5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由1-6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 申立理由1-7(甲第7号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 8 申立理由1-8(甲第8号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 9 申立理由1-9(甲第9号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第9号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 10 申立理由1-10(甲第10号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、11ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 11 申立理由1-11(甲第11号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし4、7、11ないし12及び16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が下記の甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし4、7、11ないし12及び16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 12 申立理由2(サポート要件) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし16は下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 ・組成物の態様 フェネチルアセテートは水に不溶であり、アルコール・プロピレングリコールに可溶であることが技術常識であることからすると、本件特許発明が油相と水相を含む乳化組成物である場合、フェネチルアセテートが油相に局在することが予想されるため、テルペン類の分解抑制という効果、柑橘類の香味が改善したという効果が同様に奏されるとは解されないから、組成物の態様について何ら限定がなされていない本件特許発明は、サポートされていない。 ・フェネチルアセテートの含有量 発明の詳細な説明の実施例の記載からは、少なくとも100ppb未満のフェネチルアセテートしか含まない試験ぽん酢では課題を解決できているとはいえないから、本件特許発明は、課題を解決できない範囲を含んでいることが明らかである。 13 申立理由3(実施可能要件) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし16は下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 ・組成物の態様 申立理由2と同様の理由で、本件特許発明に包含されている乳化組成物について、発明の詳細な説明には当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 ・フェネチルアセテートの含有量 申立理由2と同様の理由で、本件特許発明に包含されている少なくとも100ppb未満のフェネチルアセテートしか含まない組成物について、発明の詳細な説明には当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 14 証拠方法 甲第1号証 :特開2015-130821号公報 甲第2号証 :バルサミコ酢のポンズ仕立て!万能たれ(coocpad),URL:https://cookpad.com/recipe/3666392,印刷日2022年8月31日 甲第3号証 :ゆず果汁で作る簡単ドレッシング3種!(cookpad),URL:https://cookpad.com/recipe/5324315,印刷日2022年8月31日 甲第4号証 :レモンバルサミコ酢ドリンク(Rakutenレシピ),URL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1550006326/,印刷日2022年8月31日 甲第5号証 :レモンドレッシング(cookpad),URL:https://cookpad.com/recipe/1046962,印刷日2022年8月31日 甲第6号証 :フルーティー☆ワインカクテル♪ハニーオレンジソーダ(Rakutenレシピ),URL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1100002147/,印刷日2022年8月31日 甲第7号証 :白ワインレモン(Rakutenレシピ),URL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1670000677/,印刷日2022年8月31日 甲第8号証 :アメリカンレモネード(Rakutenレシピ),URL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1870004638/,印刷日2022年8月31日 甲第9号証 :赤サングリア(cookpad),URL:https://cookpad.com/recipe/2558049,印刷日2022年8月31日 甲第10号証:おうちde簡単サングリア(赤)(cookpad),URL:https://cookpad.com/recipe/2549437,印刷日2022年8月31日 甲第11号証:Journal of food and drug analysis,21,2013年,pp.301-309 甲第12号証:J. Agric. Food Chem.,2008年,Vol.56,No.17,pp.8086-8095 甲第13号証:J.Brew.Soc.Japan,1979年,Vol.74,No.3,pp.173-178 甲第14号証:みんなの知識 ちょっと便利帳ホームページ,URL:https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/,印刷日2022年2月27日 甲第15号証:Nadiaホームページ,URL:https://oceans-nadia.com/cooking_basics/11,印刷日2022年2月24日 甲第16号証:生活知恵袋ホームページ,URL:https://www.seikatu-cb.com/omosa/banana.html#a04,印刷日2022年8月31日 甲第17号証:生活知恵袋ホームページ,URL:https://www.seikatu-cb.com/omosa/apple.html#a04,印刷日2022年8月31日 甲第18号証:生活知恵袋ホームページ,URL:https://www.seikatu-cb.com/omosa/ichigo.html#a04,印刷日2022年8月31日 甲第19号証:伊藤農園ホームページ,URL:https://www.ito-noen.com/dictionary/mikan/%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB/#:~:text=%E6%9E%9C%E9%87%8D%EF%BC%881%E5%80%8B%E3%81%AE%E9%87%8D%E3%81%95%EF%BC%89%E3%81%AF200%EF%BD%9E250g,印刷日2022年8月31日 甲第20号証:生活知恵袋ホームページ,URL:https://www.seikatu-cb.com/omosa/lemon.html,印刷日2022年8月31日 甲第21号証:安全データシート,2022年3月19日,東京化成工業株式会社 令和5年6月14日提出の意見書に添付して、以下の証拠が提出されている。 甲第22号証:現場必携・微生物殺菌実用データ集,株式会社サイエンスフォーラム,発行日2005年8月11日,pp.64-69,84-86 甲第23号証:簡単 旬な梅ジュース (cookpad),URL:https://cookpad.com/recipe/2677475,印刷日2023年6月6日 甲第24号証:醸協,2000年,第95巻,第2号,pp.91-101 なお、証拠の表記はおおむね特許異議申立書及び意見書の記載に従った。また、摘記に際して一部の記号は全スペースで代用した。 以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和5年1月30日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(明確性) 本件特許の請求項3、4及びこれを引用する請求項5ないし9及び請求項13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2-1(甲2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由2-2(甲3に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 取消理由2-3(甲4に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 取消理由2-4(甲5に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 取消理由2-5(甲6に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 取消理由2-6(甲7に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 8 取消理由2-7(甲8に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 9 取消理由2-8(甲9に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲9に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 10 取消理由2-9(甲10に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 11 取消理由2-10(甲11に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3、4、7、10及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲11に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲11に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4、7、10及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(明確性)について (1) 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2) 明確性要件の判断 取消理由の対象である請求項のうち請求項3及び4、並びにこれらを引用する請求項5ないし9は、本件訂正により削除された。 請求項13は、上記第3のとおりであって、それ自体に不明りょうな記載はない。 請求項13に係る発明は「柑橘類の果汁の香味改善用」又は「テルペン類の減少抑制用」と用途が特定される組成物であって、フェネチルアセテートを有効成分として柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物において1ppb~2,000ppbになるように使用するものであり、通常、「~用組成物」と用途を特定する場合は、当該「組成物」を、その組成物以外のものに対して用いるときの用途を限定するものである。 この点についてみるに、発明の詳細な説明には、実施例として、フェネチルアセテート溶液を、ゆず果汁及び醤油といった調味料を含む組成物において1ppb~2,000ppbの範囲内で使用したところ、該組成物におけるゆず果汁の香味を改善し、又はテルペン類の減少を抑制したことが示されており(表2A~2C、表4A~4C、表6A~6B、表8A~8B、表10、図2A~2B等)、このことから、請求項13に係る発明は、当該組成物以外のものに対して用いるときの用途を特定することを目的として、フェネチルアセテート溶液などを、ゆず果汁及び醤油といった調味料を含む他の組成物に対して用いるときの、他の組成物における柑橘類の果汁の香味及びテルペン類の減少抑制という用途を特定したものと理解できる。 よって、本件特許発明13に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3) まとめ したがって、取消理由1には理由がない。 2 取消理由2-1ないし2-10(甲2ないし11に基づく新規性・進歩性) (1) 主な証拠に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項等 (ア) 甲2に記載された事項 甲2は、「バルサミコ酢のポンズ仕立て!万能たれ」(以下、「万能たれ」とも記載する。)のレシピに関するものであり、以下の記載がある。なお、半角数字、記号については、全て全角表記に改めて記載している。以下同じ。 ・「材料(1~2人分) バルサミコ酢 150~200ml(鍋用ぽんず) レモン汁(ない場合は米酢,酢でも可) 約大さじ3~5杯 マスタード(粒)ない場合は和からし 少々」(材料欄) ・「1○(審決注:○の中に数字の1、以下同じ)バルサミコ酢を使います。 2○ 小鉢にバルサミコ酢を適量入れレモン汁を少々(なければ酢,米酢を少々)入れる。 3○ ○2に、つぶつぶマスタード(なければ、和からし)を入れ混ぜる。水炊きにもサラダにも合います。」(作り方欄) ・「バルサミコをポンズにしました。 何でも(ステーキ,サラダ,しゃぶしゃぶなど)使えます。多めに作って保存しときましょう。」(タイトルの右下) (イ) 甲2に記載された発明 甲2には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲2発明A> 「バルサミコ酢150~200ml、レモン汁約大さじ3~5杯、及びマスタード(粒)少々からなる材料が混合されてなる、万能たれ。」 イ 甲3に記載された事項等 (ア) 甲3に記載された事項 甲3は、「ゆず果汁で作る簡単ドレッシング3種!」(以下、「ドレッシング」とも記載する。)のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(2人分(使い切り量)) … ■【バルサミコ】 ゆず果汁 小さじ2 オリーブオイル 小さじ1 バルサミコ酢 小さじ1 はちみつ 小さじ1 醤油 小さじ1/2 ゆず皮 お好みで」(材料欄) ・「1 ゆずを半分に切り絞ります (絞り器がなくても手で十分!) 2 あとは全部混ぜるだけ! すりおろしたゆずの皮を入れると風味がアップ!」(作り方欄) ・「焼き魚、しゃぶしゃぶ、野菜サラダ、何にでも合いますね♪」(つくれぽ欄左から3番目) ・「 [図:0001404765000010.jpg] 沢山作りました(*^_^*)さっぱりでおいしいです!」(つくれぽ欄左から4番目) (イ) 甲3に記載された発明 甲3には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲3発明A> 「ゆず果汁小さじ2、オリーブオイル小さじ1、バルサミコ酢小さじ1、はちみつ小さじ1、及び醤油小さじ1/2からなる材料が混合されてなる、容器詰ドレッシング。」 ウ 甲4に記載された事項等 (ア) 甲4に記載された事項 甲4は、「レモンバルサミコ酢ドリンク」(以下、「ドリンク」とも記載する。)のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(1人分) 水 120cc バルサミコ酢 大1/2 レモン汁 大1/2 はちみつ 小1」(材料欄) ・「1 バルサミコ酢にはちみつを加えレンジで20秒加熱する 2 水、レモン汁を加えよく混ぜる」(作り方欄) (イ) 甲4に記載された発明 甲4には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲4発明> 「水120cc、バルサミコ酢大1/2、レモン汁大1/2、及びはちみつ小1からなる材料が混合されてなる、ドリンク。」 エ 甲5に記載された事項等 (ア) 甲5に記載されている事項 甲5は、「レモンドレッシング」のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(2~3回分) レモン果汁(ポッカレモン) 大2 オリーブオイル 50cc お酢 大1 白ワイン 大1 マジックソルト(S&B) 小1」(材料欄) ・「1 全ての材料をよく混ぜるだけです。」(作り方欄) ・「野菜もりもり食べられる!かんたんおいしい!」(つくれぽ欄) (イ) 甲5に記載された発明 甲5には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲5発明A> 「レモン果汁(ポッカレモン)大2、オリーブオイル50cc、お酢大1、白ワイン大1、及びマジックソルト(S&B)小1からなる材料が混合されてなる、レモンドレッシング。」 <甲5発明B> 「甲5発明Aを使用した野菜サラダ。」 <甲5発明C> 「甲5発明Aを使用した野菜サラダの製造方法。」 オ 甲6に記載された事項等 (ア) 甲6に記載された事項 甲6は、「フルーティー☆ワインカクテル♪ハニーオレンジソーダ」(以下、「ワインカクテル」とも記載する。)のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(1人分) 白ワイン 40cc 炭酸水 40cc オレンジマーマレード 大さじ1 レモン汁 小さじ1 蜂蜜 3g」(材料欄) ・「1 オレンジマーマレード→蜂蜜→レモン汁→白ワイン→炭酸水の順に注いで出来上がり!!!」(作り方欄) (イ) 甲6に記載された発明 甲6には、上記(ア)の記載から、以下の発明が記載されていると認める。 <甲6発明> 「白ワイン40cc、炭酸水40cc、オレンジマーマレード大さじ1、レモン汁小さじ1、及び蜂蜜3gからなる材料が混合されてなる、ワインカクテル。」 カ 甲7に記載された事項等 (ア) 甲7に記載された事項 甲7は、「白ワインレモン」のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(1人分) 白ワイン(やや甘口) 100cc レモン汁 5cc」(材料欄) ・「1 グラスに冷やした白ワインとレモン汁を入れる。」(作り方欄) (イ) 甲7に記載された発明 甲7には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲7発明> 「白ワイン(やや甘口)100cc、及びレモン汁5ccからなる材料が混合されてなる、白ワインレモン。」 キ 甲8に記載された事項等 (ア) 甲8に記載された事項 甲8は、「アメリカンレモネード」(以下、「レモネード」とも記載する。)のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(1人分) レモン汁 小さじ2 砂糖 小さじ1.5 水 100cc ワイン 50cc」(材料欄) ・「1 レモン汁と砂糖、水でレモネードを作る。ちゃんと甘く仕上げること。砂糖が足りなければ遠慮なく足すと良い。 2 あ、グラスはもちろんロングです。写真のはフルートグラス。グラデが綺麗に見えるかと思って。氷を加えてステア。手早く冷やす。 3 中身の動きが静まったら、静かにワインを注ぐ。バースプーンがあると良い。綺麗に分離したら拍手!」(作り方欄) (イ) 甲8に記載された発明 甲8には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲8発明> 「レモン汁小さじ2、砂糖小さじ1.5、水100cc、及びワイン50ccからなる材料が混合されてなる、レモネード。」 ク 甲9に記載された事項等 (ア) 甲9に記載された事項 甲9は、「赤サングリア」のレシピに関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料 赤ワイン 1リットル バナナ 1本 りんご 1個 いちご 6個 蜂蜜 大さじ2 レモン果汁 大さじ2」(材料欄) ・「1 材料を全てビンに入れ、一日以上冷蔵庫でねかす★」(作り方欄) (イ) 甲9に記載された発明 甲9には、上記(ア)の記載から以下の発明が記載されていると認める。 <甲9発明> 「赤ワイン1リットル、バナナ1本、りんご1個、いちご6個、蜂蜜大さじ2、及びレモン果汁大さじ2からなる材料が混合されてなる、容器詰赤サングリア。」 ケ 甲10に記載された事項等 (ア) 甲10に記載された事項 甲10は、「おうちde簡単サングリア(赤)」(以下、「サングリア」とも記載する。)のレシヒ゜に関するものであり、以下の記載がある。 ・「材料(ワイン1本分) 赤ワイン 1本(750ml) ネーブルオレンジ 2個 レモン 1個 氷砂糖 70g(ひと握り)」(材料欄) ・「1 材料を用意。オレンジとレモンは皮ごと厚めのスライスにする。 2 1.5L以上入るビンを用意。カットしたオレンジとレモンを交互に入れていく。 3 上から氷砂糖をいれて、赤ワインをそそぐ。一晩おいて、氷砂糖が溶けたらできあがり! 4 漬けていた中のフルーツも一緒に食べられますよ」(作り方欄) (イ) 甲10に記載された発明 甲10には、上記(ア)の記載から、以下の発明が記載されていると認める。 <甲10発明> 「赤ワイン1本(750ml)、ネーブルオレンジ2個、レモン1個、及び氷砂糖70g(ひと握り)からなる材料が混合されてなる、容器詰サングリア。」 コ 甲11に記載された事項等 (ア) 甲11に記載された事項 甲11には、以下の記載がある。なお、甲11は外国語文献であるので、訳文と表のみ摘記する。 ・「2.1サンプル調製 ポンカン果実は、台湾の台中の地方市場で購入した。BCRC21761、BCRC21805、BCRC21823、BCRC22293及びBCRC22332の酵母株は、Food IndustryResearch and DevelopmentInstitute(新竹市、台湾)から購入した。HF-8(市販の酵母)は、Eherfon Biotechnology Company(高雄市、台湾)から購入した。ポンカン果実は、洗って皮を剥いた。その後,皮を剥いたポンカン果実をステンレス鋼破砕機(破砕口800mm×l350mm)で破砕してポンカンパルプを調製し、バレルバスケットスクイーザー(圧搾口270mm×390mm)で圧搾してポンカン果汁を調製した。ワイン発酵用の5Lコニカルガラスフラスコで、ポンカンパルプとポンカン果汁をそれぞれ別々に、24%糖、50ppmピロ亜硫酸カリウム[22,25]、500ppm硫酸アンモニウム、及び5%活性化酵母培養物を含有するように調整した[26]。各フラスコの全容量は3000mLであった。その後、それぞれを25±1℃で30日間発酵させた[10,11]。試料採取は5日ごとに行い、pH、残留糖含量、可溶性固形分含量、アルコール含量、酸度、透明度及び色を測定した。ポンカン果汁を原料としたポンカンワインは以後PJWと略称され、ポンカンパルプを原料としたポンカンワインは以後PPWと略称された。番号61、05、23、93、32及び08は、それぞれワイン発酵に使用された酵母BCRC21761、BCRC21805、BCRC21823、BCRC22293、BCRC22332及び市販酵母HF-08を示す。」(302頁左欄30行目-最終行) ・「3.3.BCRC22332及びHF-08酵母株で発酵させたポンカンワイン中の芳香成分の違い 表4のデータに基づくと、PJW08及びPJW32が最も好ましいポンカンワインであった。そのため、それらの香気成分のさらなる研究のために選抜した。」(305頁右欄28行目-最終行) ・「表5.BCRC22332株及びHF-08株で発酵させたポンカンワイン中の揮発性化合物の含量 [図:0001404765000011.jpg] [図:0001404765000012.jpg] (イ) 甲11に記載された発明 甲11には、上記(ア)の記載から、以下の発明が記載されていると認める。 <甲11発明> 「24%糖、50ppmピロ亜硫酸カリウム、500ppm硫酸アンモニウム、及び5%活性化酵母(HF-8(市販の酵母))培養物を含有するようにポンカン果汁を調整した後、25±1℃で30日間発酵させて得られ、フェネチルアセテート含量が0.03土0.0lppmである、ポンカンワイン。」 (2)取消理由2-1(甲2に基づく新規性・進歩性)について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明Aを対比する。 甲2発明Aの「万能たれ」は、「レモン汁」を含んでおり、本件特許発明1の「柑橘類の果汁を含む」との発明特定事項を有している。 甲2発明Aの「万能たれ」は、複数の成分を含んでおり、「組成物」であることは明らかである。 したがって、本件特許発明1と甲2発明Aは、 「柑橘類の果汁を含む、組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1が、「加熱殺菌した」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点 <相違点2-2> 本件特許発明1が「1ppb~2,000ppbのフェネチルアセテートを含む」と特定するのに対し、甲2発明Aはこの点を特定しない点 <相違点2-3> 本件特許発明1が「容器詰」と特定するのに対し、甲2発明Aはこの点を特定しない点 以下、相違点について検討する。 相違点2-1について見ると、甲2発明Aは、加熱殺菌するとの記載はなく、記載がなくとも当業者が当然に加熱殺菌を行っていると理解するともいえない。すると、相違点2-1は実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明Aであるとはいえない。 製品において容器詰めするものを殺菌することは周知(甲22)であり、また、甲23には、梅ジュースのレシピにおいて、1年間の長期保存に際して加熱殺菌して密閉容器で保存することが記載されている。しかしながら、甲2発明Aは家庭用レシピとしての「万能タレ」であることを考えれば、甲2発明Aにおいて、1年に及ぶ長期保存を念頭に「加熱殺菌した」ものとする動機はなく、そして本件特許発明1の「柑橘類の果汁の好ましい香味を維持又は改善できる」(段落【0015】)、「果汁の加熱による香味の劣化を抑制する」(段落【0066】、【0068】)という効果は、甲2及びその他の証拠の記載からは当業者においても予測し得ない格別なものである。 そうすると、相違点2-1は、当業者といえども容易になし得たことということはできない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明A並びに甲2及び他の証拠に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件特許発明2、5ないし9について 本件特許発明2、5ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明10について 本件特許発明10と甲2発明Aとを対比すると、上記アと同様に対比・判断されるから、本件特許発明10は、甲2発明Aであるとはいえないし、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲2発明Aとを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違している。 <相違点2-4> 本件特許発明13は、「柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物において1ppb~2,000ppbになるように使用される、柑橘類の果汁の香味改善用組成物又はテルペン類の減少抑制用」と特定するのに対し、甲2発明Aはこのような特定はない点 以下、相違点2-4について検討すると、甲2には、柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物においての香味改善及びテルペン類の減少抑制に関する記載はなく、このような用途を想定し得ないものである。 そうすると、相違点2-4は、実質的な相違点であるから本件特許発明13は、甲2発明Aであるとはいえないし、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 オ 取消理由2-1のまとめ 上記のとおりであるから、取消理由2-1には理由がない。 (3)取消理由2-2ないし2-10(甲3ないし11に基づく新規性・進歩性)について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3ないし11に記載された発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点Aで相違している。 <相違点A> 本件特許発明1が、「加熱殺菌した」と特定するのに対し、甲3ないし11に記載された発明は、この点を特定しない点 以下、相違点Aについて検討すると、上記相違点2-1と同様に判断される。 そうすると、本件特許発明1は、甲3ないし11に記載された発明であるとはいえないし、甲3ないし11に記載された発明並びに他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 本件特許発明2、5ないし9について 本件特許発明2、5ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3ないし11に記載された発明であるとはいえないし、甲3ないし11に記載された発明並びに他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明10について 本件特許発明10と甲3ないし11に記載された発明とを対比すると、上記アと同様に判断されるから、本件特許発明10は、甲3ないし11に記載された発明であるとはいえないし、甲3ないし11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲3ないし11に記載された発明とを対比すると少なくとも以下の点で相違している。 <相違点B> 本件特許発明13は、「柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物において1ppb~2,000ppbになるように使用される、柑橘類の果汁の香味改善用」「又はテルペン類の減少抑制用」と特定するのに対し、甲3ないし11に記載された発明はこのような特定はない点 以下、相違点Bについて検討すると、上記相違点2-4と同様に判断される。 そうすると、本件特許発明13は、甲3ないし11に記載された発明であるとはいえないし、甲3ないし11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 オ 取消理由2-2ないし2-10のまとめ 上記のとおりであるから、取消理由2-2ないし取消理由2-10には理由がない。 第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由について 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由は、申立理由1-1、請求項11、12、14ないし16についての申立理由1-2ないし1-11と、申立理由2(サポート要件)、申立理由3(実施可能要件)であるので、以下、順に検討する。 1 申立理由1-1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された発明 甲1には、請求項1、4の記載からみて、以下の発明が記載されていると認める。 <甲1発明> 「バルサミコ酢と、醤油と、更に、食酢(上記バルサミコ酢を除く)、果汁及び増粘剤から選ばれた少なくとも一種を含有する液状の調味料であって、上記バルサミコ酢の含有量が、上記液状調味料の全体に対して5~40質量%である液状調味料。」 なお、特許異議申立人は、「バルサミコ酢と、醤油と、他の成分(バルサミコ酢を除く食酢、果汁、塩、糖類(少糖類又はオリゴ糖)、旨味調味料、香辛料、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、エキス類)とを含有する液体の調味料であって、上記バルサミコ酢の含有量が、上記液状調味料の全体に対して5~40質量%であり、前記果汁は、レモン等に由来する果汁であってよい、液体調味料。」が認定できる旨主張する。 しかしながら、含有する「果汁」についてみると、甲1の「果汁としては、みかん、りんご、桃、ぶどう、いちご、梨、バナナ、メロン、キウイ、レモン、パイナップル、グレープフルーツ、カシス、アセロラ、ブルーベリー、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果汁が挙げられる。これらのうち、ぶどうの果汁が好ましい。尚、果汁を含む場合、5倍濃縮物としたときのその含有量は、バルサミコ酢の量を1質量部とした場合に、好ましくは0.1~0.5質量部、より好ましくは0.15~0.3質量部である。果汁の含有量が多すぎると、果汁の甘みが強くなりすぎ、バルサミコ酢の風味が十分に得られない場合がある。」(段落【0014】)との記載、また、甲1の実施例において使用される「果汁」がぶどう5倍濃縮果汁のみ(段落【0020】~【0026】)であることから、甲1においては「ぶどうの果汁が好ましい」ものであり、特に「果汁は、レモン等に由来する果汁であってよい」とまでは認定できない。 (2) 本件特許発明1との対比・判断 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1-A> 果汁に関し、本件特許発明1は、「柑橘類」と特定するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点 <相違点1-B> 本件特許発明1が、「加熱殺菌した」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点 相違点1-Aについて検討する。 甲1には、使用できる果汁についてみかんやレモン等を含めて多種のものが列挙されている(段落【0014】)ものの、それら多種の果実の中で特に「柑橘類」に該当するものを選択する動機となる記載は何ら見当たらず、具体的に示されるものはいずれもぶどうの5倍濃縮果汁(実施例、段落【0020】~【0026】)を用いたもののみである。 そうすると、甲1には果汁として特に「柑橘類」を選択することまでは記載されているとはいえず、相違点1-Aは実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえない。 上述のとおり、甲1には、みかんやレモン等を含めて多種の果汁が列挙されているものの、甲1がぶどうを原料とするバルサミコ酢に由来する芳醇な風味(香味)を与える液状調味料に関するものであること(段落【0006】)、具体的な例はぶどうの5倍濃縮果汁(実施例、段落【0020】~【0026】)を用いたもののみであることを考慮すれば、ぶどうの果汁に替えて、多種類の果汁の中から特にみかんやレモン等の「柑橘類」を選択して用いる動機は見当たらない。 そして、本件特許発明1は、組成物において「柑橘類」の果汁を特定の含有量のフェネチルアセテートと組み合わせることによって、「柑橘類の果汁の好ましい香味を維持又は改善できる」(段落【0015】)、「果汁の加熱による香味の劣化を抑制する」(段落【0066】、【0068】)という、甲1及びその他の証拠の記載からは当業者においても予測し得ない格別な効果を得るものである。 そうしてみると、相違点1-Aは、当業者といえども容易になし得たものということはできない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、並びに甲1及び他の証拠に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3) 本件特許発明2、5ないし9について 本件特許発明2、5ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4) 本件特許発明10について 本件特許発明10と甲1発明とを対比すると、上記(2)と同様に対比・判断されるから、本件特許発明10は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5) 本件特許発明11、12、14~16について 甲1からは、柑橘類の果汁の香味の改善方法及びテルペン類の減少の抑制方法に関する発明を認定できないから、本件特許発明11、12、14~16は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6) 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲1発明とを対比すると少なくとも以下の点で相違している。 <相違点1-C> 本件特許発明13は、「柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物において1ppb~2,000ppbになるように使用される、柑橘類の果汁の香味改善用組成物又はテルペン類の減少抑制用」と特定するのに対し、甲1発明はこのような特定はない点 以下、相違点1-Cについて検討すると、甲1には、柑橘類の果汁又は柑橘類の果汁を含む組成物においての香味改善及びテルペン類の減少抑制に関する記載はなく、このような用途を想定し得ないものである。 そうすると、相違点1-Cは、実質的な相違点であるから本件特許発明13は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (7) 申立理由1-1のまとめ 上記のとおりであるから、申立理由1-1には理由がない。 2 請求項11、12、14ないし16に対する申立理由1-2ないし1-11について 甲2ないし11の記載から、甲2ないし11において、柑橘類の果汁の香味の改善方法及びテルペン類の減少の抑制方法に関する発明を認定できないから、本件特許発明11、12、14~16は、甲2ないし11に記載された発明であるとはいえないし、甲2ないし11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3 申立理由2(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2) サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 そして、本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0007】ないし【0009】の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ゆず果汁を含む種々の果汁を含有し、及び容易かつバリエーションをもって調製することができる、柑橘類の香味が改善した組成物を提供すること」を提供することである。 そして、発明の詳細な説明の【0010】~【0011】には、「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ね、数多くの成分を適宜組み合せて、保存及び加工処理によらずに、柑橘類の香味が改善した調味料及び飲食品などの果汁含有物を得ようと試行錯誤した。そして、数々の検討を重ねた結果、遂に、柑橘類の果汁とともに、所定量のフェネチルアセテートを添加したものは、柑橘類の果汁の香味が改善した果汁含有物になり得ることを見出すに至った。」と記載され、【0012】には「本発明者らが検討を進めた結果、フェネチルアセテートは、果汁の種類及び濃度に依らずに、並びに保存及び加工処理の温度、さらには加熱処理の有無に依らずに、果汁含有物に対して柑橘類の果汁の香味を改善し得ることがわかった。さらに本発明者らは、フェネチルアセテートは、柑橘類の果汁における香気成分とされているテルペン類の減少を抑制する作用を有するという、非常に驚くべき知見を得るに至った。」とされ、【0014】には本件特許発明1、2、5ないし16に対応する記載がある。 また、発明の詳細な説明の【0015】には、「本発明によれば、保存及び/又は加熱処理により劣化する、柑橘類の果汁の香味を改善することができる。また、本発明によれば、加熱殺菌して、長期保存しても、含有する柑橘類の果汁の好ましい香味を維持又は改善した調味料及び飲食品を得ることができる。さらに、本発明によれば、加熱処理をしなくとも、柑橘類の果汁の香味を改善することができる。結果として、本発明によれば、製造、流通、陳列、貯蔵などの各段階を通じて、季節、保存条件などの外部環境の影響に依らずに、保存性及び保香性に優れた調味料及び飲食品を得ることが期待される。」と記載されている。 そして、発明の詳細な説明の実施例及び比較例において、フェネチルアセテートの臭いの閾値である3,000ppbより少ない値であっても、ぽん酢に所定量のフェネチルアセテートを含有することで、果汁の加熱による香味の劣化を抑制することを確認し(例1:表1~表2C)、また、ぽん酢に所定量のフェネチルアセテートを添加することで、温度条件に依らずに、好ましい果汁の香味を有するものとして保存することができること(例2:表3~表4C)、ぽん酢に所定量のフェネチルアセテートを添加することで、加熱をしても果汁濃度によらず、好ましい果汁の香味を有すること(例3:表5~表6B)、いろいろな種類の柑橘類の果汁によっても所定量のフェネチルアセテートを添加することで、好ましい果汁の香味を有すること(例4:表7~表8B)、ぽん酢に所定量のフェネチルアセテートを添加することでテルペン類の減少が抑えられること(例6:表9、表10)を確認している(【実施例】、段落【0054】~【0108】)。 そうすると、当業者は、柑橘果汁を有するものに対して所定量のフェネチルアセテートを含有させることで、上記発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1、2、5ないし16は、発明の課題を解決できると認識できる上記「所定量のフェネチルアセテートを含有する」ものをさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1、2、5ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1、2、5ないし16に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3) 特許異議申立人の主張について 上記(2)の判断のとおり、本件特許発明はサポート要件を充足するものであるが、特許異議申立人の各主張について以下で検討する。 ア 上記第4 12の「・組成物の態様」についての主張について 本件特許発明のフェネチルアセテートの数値範囲の1ppb~2000ppbは、1μg/L~2mg/Lであり、甲21で示されているフェネチルアセテートが水に不溶であることを示す溶解度(1g/L以下)よりかなり低い値であるから、特許異議申立人の「油相と水相を含む乳化組成物である場合、フェネチルアセテートが水に溶けず油相に局在する」かどうかは不明であり、当該主張を裏付ける証拠も示されていないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 イ 上記第4 12の「・フェネチルアセテートの含有量」について 特許異議申立人は、本件特許の実施例における加熱前の試料の風味に関するデータと加熱後の試料のデータとを単に比較した結果に基づいて、フェネチルアセテートの含有量が低い場合には香味劣化を抑制する効果がないかのように主張している。しかしながら、当該実施例は、加熱により柑橘類の香味が劣化することを前提として、フェネチルアセテートを含有する場合にはフェネチルアセテートを含有しない場合よりも劣化の程度が抑制されることを示すものであり、単に加熱前後の風味の数値のみを比較することは失当であるから、当該主張は採用できない。 (4) 申立理由2のまとめ 上記のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 4 申立理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明9は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その方法により生産した物を使用することができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明11、12、14ないし16は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2、5ないし16の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び13を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明9を使用し、本件特許発明9により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、また、本件特許発明11、12及び14ないし16を使用することができる程度の記載があるといえる。 したがって、本件特許発明1、2、5ないし16に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人の申立理由3における主張について 上記3(3)で検討したとおりであるし、上記の判断に影響しない。 (4)申立理由3のまとめ 上記のとおりであるから、申立理由3には理由がない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1、2及び5ないし16に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、及び5ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3及び4に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700941

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