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特許異議申立

2023-700022

バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器

審判番号
2023-700022
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-102706
登録番号
7100830
請求日
2023年01月11日
審決日
2024年08月13日
公報発行日
2024年11月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】浅野 真理
  • 【権利者代理人】高田 泰彦
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【権利者代理人】丸島 裕
  • 【権利者代理人】中村 行孝
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 藤井 眞吾
  • 審判官 田口 傑
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.113-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7100830号発明「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7100830号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7100830号の請求項1~3、5~7に係る特許を維持する。 特許第7100830号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7100830号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)9月29日(優先権主張 令和元年9月30日)を国際出願日とする特願2021-508017号の一部を、令和3年6月21日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月14日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和5年 1月11日 :特許異議申立人齊藤恵美子(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和5年 7月11日付け:取消理由通知書 令和5年 9月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年10月16日 :申立人による意見書の提出 令和6年 2月13日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和6年 4月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年 5月14日 :特許権者による訂正請求書を対象とする手続補正書の提出 令和6年 6月21日 :申立人による意見書の提出 なお、令和5年9月4日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 令和6年5月14日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された 「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、ガスバリア性塗布膜であり、 前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.50以上1.60以下であることを特徴とする、バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層」を、 「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、 前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下であることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、5~7も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項2に記載された 「前記珪素原子と炭素原子の比が、0.83以上である、請求項1に記載のバリア性積層体。」を、 「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、 前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下であることを特徴とする、レトルト用バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、5~7も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項5に記載された 「請求項1~4のいずれか一項に記載のバリア性積層体と、シーラント層とを備える、ヒートシール性積層体。」を、 「請求項1~3のいずれか一項に記載のバリア性積層体と、シーラント層とを備える、ヒートシール性積層体。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「ガスバリア性塗布膜」を「金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成される」と限定し、「珪素原子と炭素原子の比(Si/C)」の数値範囲の下限値を「0.90以上」と限定し、また、「バリア性積層体」を「ボイルまたはレトルト用」と用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件特許の明細書の【0056】、【0060】、【0065】、【0072】、【0151】~【0155】、【0176】~【0181】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2について、独立形式に改めるとともに、「ガスバリア性塗布膜」を「金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成される」と限定し、「珪素原子と炭素原子の比(Si/C)」の数値範囲の下限値を「0.90以上」と限定し、また、「バリア性積層体」を「レトルト用」と用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の明細書の【0056】、【0060】、【0065】、【0072】、【0151】~【0155】、【0176】~【0181】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項5について、訂正事項3によって請求項4が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項3によって削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~3、5~7を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、 前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下であることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層 【請求項2】 多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、 前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下であることを特徴とする、レトルト用バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層 【請求項3】 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素または酸化炭化珪素である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。 【請求項5】 請求項1~3のいずれか一項に記載のバリア性積層体と、シーラント層とを備える、ヒートシール性積層体。 【請求項6】 前記シーラント層が、ポリプロピレンである、請求項5に記載のヒートシール性積層体。 【請求項7】 請求項5または6に記載のヒートシール性積層体を備える、包装容器。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、下記甲2に記載された発明、下記甲3に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 以下、甲第1~4号証を「甲1」等という。 甲1:特開平10-264292号公報 甲2:特開2009-154449号公報 甲3:特開2017-211082号公報 甲4:特開2005-231039号公報 引用文献1:国際公開第2019/088265号 引用文献2:特開2019-142039号公報 2 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術 (1)引用文献に記載された事項及び引用発明 ア 甲2 甲2には次の記載がある。 「【請求項1】 高分子フィルム基材の表面に金属酸化物蒸着層と有機無機ハイブリッドバリア層が順次設けられたバリア性フィルムであって、該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認されることを特徴とするバリア性フィルム。 ・・・ 【請求項3】 前記金属酸化物蒸着層が、酸化アルミニウムからなる蒸着層であり、該蒸着層には、X線光電子分光分析法によってアルミニウムと酸素とが、1:1.5~1:3.0の割合で含まれていることが確認されることを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア性フィルム。 ・・・ 【請求項5】 高分子フィルム基材の表面にアンカーコート層を設けた事を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。 【請求項6】 前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、及び一般式R’Si(OR)3(R’はアルキル基、ビニル基、グリシドキシプロピル基、アミノ基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれか1種)であらわされる3官能オルガノシランまたはその加水分解物を含む組成物からなることを特徴とする請求項5に記載のバリア性フィルム。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として用いられるガスバリア性フィルムに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明は、可撓性を有するとともに酸素、水蒸気などに対するガスバリア性に優れ、耐熱性、耐湿性、耐水性を有し、かつ製造が容易なガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0021】 本発明によれば、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として使用可能な、高いガスバリア性、耐熱性、耐湿性、耐水性並びに変形に耐えられる可撓性を有する透明ガスバリア性フィルムが、安価なコストで得られる。」 「【0023】 高分子フィルム基材1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、用途に応じて機械的強度や寸法安定性等の特性を考慮して適当な材料が選択される。・・・ 【0024】 高分子フィルム基材1の厚さはとくに制限を受けるものではないが、包装材料としての適性や、他の層を積層する場合の加工性等を考慮すると、実用的には3~200μmの範囲であり、一般的には6~30μmとすることが好ましい。また量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように連続長尺フィルム状とすることが望ましい。 【0025】 次に、金属酸化物蒸着層4について説明する。金属酸化物蒸着層4の材料としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、錫などの酸化物を挙げることができる。好ましくは、酸化アルミニウムや酸化珪素や酸化マグネシウムなどのような透明な金属酸化物を使用することが好ましい。金属の窒化物、弗化物などが混合していてもかまわない。」 「【0029】 次に有機無機ハイブリッドバリア層5は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材1の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される。」 「【0044】 そこで、発明者は、種々のサンプルについてその有機無機ハイブリッドバリア層の表面をXPSによって分析し、炭素、酸素、珪素のアトミックパーセントに着目した結果、炭素、酸素、珪素の割合が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在するときに、最も好ましい結果が得られることを見いだした。 炭素の割合が50%より多い場合、バリア性が温度、湿度の影響を受け易く、15%より少ない場合、バリア性が悪くなり、膜質が脆くなる。酸素の割合が30~65%より多い場合、少ない場合ともに、また、珪素の割合が5~30%より多い場合、少ない場合ともに、Si-O-Siの架橋構造に欠陥が生じ、緻密な膜質でなくなる結果、バリア性フィルムのガスバリア性が悪くなる。」 「【0052】 アンカーコート層2を設ける目的は、高分子フィルム基材1と金属酸化物蒸着層4との接着性を高めることにより、バリア性フィルムの揉みや折り曲げに対する耐性を高め、ガスバリア性を安定的に発揮させることにある。」 「【0055】 アンカーコート層2の膜厚としては、均一な塗膜を形成することができれば特に限定されないが、一般的に0.01~2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は、塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.05~0.2μmの範囲内にあることである。」 「【図2】 [図:0001416433000001.jpg] 」 上記の記載からみて、特に段落【0029】に係る構成を備えた実施例に着目し、【請求項1】を引用する【請求項3】を引用する【請求項5】を引用する【請求項6】の記載に沿って整理すると、甲2には次の「甲2発明」が記載されている。 「高分子フィルム基材の表面に金属酸化物蒸着層と有機無機ハイブリッドバリア層が順次設けられたバリア性フィルムであって、該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認されるバリア性フィルムであって、 前記金属酸化物蒸着層が、酸化アルミニウムからなる蒸着層であり、該蒸着層には、X線光電子分光分析法によってアルミニウムと酸素とが、1:15~1:3.0の割合で含まれていることが確認され、 高分子フィルム基材の表面にアンカーコート層を設け、 前記金属酸化物蒸着層は前記アンカーコート層上に設けられ、 前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、及び一般式R’SiR(OR)3(R’はアルキル基、ビニル基、グリシドキシプロピル基、アミノ基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれか1種)であらわされる3官能オルガノシランまたはその加水分解物を含む組成物からなり、 有機無機ハイブリッドバリア層は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される、食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルム。」 イ 甲3 甲3には次の記載がある。 「【0001】 本開示は、真空断熱材用外包材等に関するものである。」 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0008】 本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供することを主目的とする。」 「【0062】 2.外側無機層付きフィルム(第2フィルム) ・・・ 【0063】 (1)無機層 無機層は、第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、外側無機層付きフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記無機層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。このようなガスバリア性を有する層としては、例えば、金属層、無機化合物を主成分とする層などを用いることができる。上記金属層としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金から構成される金属蒸着膜等を挙げることができる。」 「【0111】 (1)オーバーコート層 本態様におけるオーバーコート層は、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置され、親水基含有樹脂を含むものである。上記親水基含有樹脂の有無は、例えば、赤外線吸収スペクトルなどにより判別することができる。また、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)は、0.1以上、2以下の範囲内であり、中でも0.5以上、1.9以下の範囲内、特には0.8以上、1.6以下の範囲内であることが好ましい。比率が上記範囲に満たないと、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバーコート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、比率が上記範囲を超えると、得られるオーバーコート層のガスバリア性が低下する場合がある。 【0112】 上述したような比率を有するオーバーコート層は、例えば、オーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量を、後述するアルコキシドの合計量100質量部に対して5質量部以上、500質量部以下の範囲内、中でも20質量部以上、200質量部以下の範囲内の配合割合とすることにより得ることができる。上記オーバーコート層形成用組成物の一例としては、A液(ポリビニルアルコール(PVA)、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液)に、予め調製したB液(テトラエトキシシラン(TEOS)、イソプロピルアルコール、塩酸およびイオン交換水からなる加水分解液)を、TEOS100質量部に対してPVAが特定の割合となるように加えて撹拌し、ゾルゲル法により得られる、無色透明のオーバーコート層形成用組成物を挙げることができる。 【0113】 オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率の測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、X線光電子分光法や、外包材断面からのエネルギー分散型X線分光法(EDX)などにより測定することができる。また、上記X線光電子分光法により測定する際はエッチングを行い、オーバーコート層の内部を評価してもよい。 【0114】 上述したA液およびB液を用い、TEOS100質量部に対してPVAが5質量部以上、500質量部以下の範囲内となるように調製されたオーバーコート層形成用組成物を用いて作製されたオーバーコート層における、炭素原子に対する金属原子の比率を下記表1に示す。原子比率の測定は、X線光電子分光法により、測定装置としてESCA5600(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて行った。なお、下記表1においては、炭素原子(C)に対する金属原子としての珪素(Si)の比率を示す。 【0115】 【表1】 [図:0001416433000002.jpg] 【0116】 このような、親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が特定の範囲内のものである層としては、一般式R1nM2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有するゾルゲル化合物を含む層を用いることができ、中でも上記ゾルゲル化合物を主成分とする層であることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基板等の熱による劣化を抑制することができるからである。」 「【0139】 (d)ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層の形成方法 本態様において、上記ゾルゲル化合物を主成分とする上記オーバーコート層は、以下の方法で製造することができる。 まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、親水基含有樹脂、ゾル-ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、原料液を調製する。混合により、原料液は、重縮合反応が開始および進行する。」 「【0142】 なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との混合組成物を用いて得られたオーバーコート層は、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂単独を主成分とするオーバーコート層を設ける場合にはそのオーバーコート層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するオーバーコート層を積層すると、熱水処理後のガスバリア性を向上させることができる。」 「【0144】 (2)無機層 本態様におけるオーバーコート層付きフィルムの無機層は、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではない。このような無機層としては、「(I)第1態様、2.外側無機層付きフィルム、(1)無機層」の項において説明されているものと同様のものを用いることができる。本態様においては、初期のガスバリア性や耐劣化性等の観点から、無機化合物を主成分とする層が好適に用いられ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を主成分とする層を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。」 上記の記載からみると、甲3には次の「甲3記載事項」が記載されている。 「真空断熱材用外包材において、アルミニウム酸化物等の金属酸化物である無機層上に配置されたオーバーコート層が、一般式R1nM2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有するゾルゲル化合物を含む層であり、オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)は0.8以上、1.6以下の範囲内であるもの。」 3 当審の判断 (1)本件発明1について ア 対比 甲2発明の「金属酸化物蒸着層」は本件発明1の「無機酸化物からな」る「蒸着膜」に相当し、以下同様に、「有機無機ハイブリッドバリア層」は「バリアコート層」に、「バリア性フィルム」は「バリア性積層体」に、「アンカーコート層」は「表面コート層」に相当する。 甲2発明の「高分子フィルム基材」の表面に「アンカーコート層」を設けたものは本件発明1の「多層基材」に相当する。 甲2発明の「高分子フィルム基材」と本件発明1の「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」とは、「樹脂層」である限りで一致する。 甲2発明の「前記アンカーコート層」が、「アクリルポリオール、イソシアネート化合物、及び一般式R’SiR(OR)3(R’はアルキル基、ビニル基、グリシドキシプロピル基、アミノ基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれか1種)であらわされる3官能オルガノシランまたはその加水分解物を含む組成物」からなることは、本件発明1の「表面コート層」が「極性基を有する樹脂材料を含」み、「(但し」、「オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層」「を除く)」ことに相当する。 甲2発明の「有機無機ハイブリッドバリア層は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される」ことと、本件発明1の「バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であ」ることとは、バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子を含む樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、 前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層(但し、下記プライマー層Aを除く。)とを備え、 前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、 前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、 前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子を含む樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、バリア性積層体。 プライマー層A: オキサゾリン基含有水溶性ポリマーと、水性アクリル系樹脂と、水性ウレタン系樹脂および/または水性ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂混合物からなる、プライマー層」 [相違点1] 「樹脂層」に関して、本件発明1のものは「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲2発明のものは「高分子フィルム基材」である点。 [相違点2] バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子を含む樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であることに関して、本件発明1は、「バリアコート層が、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であ」るのに対して、甲2発明は、「有機無機ハイブリッドバリア層は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される」点。 [相違点3] 本件発明1は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下である」のに対して、甲2発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。 [相違点4] 本件発明1は「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲2発明は「食品等の包装材料として使用可能」である点。 イ 判断 事案に鑑み先に相違点3、相違点4について検討する。 (ア)甲2発明における珪素原子と炭素原子の比(Si/C)について 甲2発明における「炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在すること」は、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)という点では、0.1(炭素と酸素と珪素の割合が、それぞれ50%、45%、5%)以上、2(同じく15%、55%、30%)以下となる。 当該珪素原子と炭素原子の比(Si/C)の数値範囲は、本件発明1の数値範囲を包含するが、炭素と酸素と珪素の数値範囲で一体の技術的意義を示している甲2から炭素と珪素だけを抽出する合理的な理由及び技術的な必然性は存在しない。 (イ)甲3記載事項の適用について 甲3記載事項は、本件発明1の用語で表現すれば、蒸着膜上にバリアコート層が設けられており、バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、ガスバリア性塗布膜の表面は、金属原子と炭素原子の比が、0.80以上1.60以下であることといえ、また、甲3の【0115】には、金属原子と炭素原子の比として、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が1.25、1.03のものが例示されている。 しかしながら、甲2発明は、食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルムに関するものであるのに対して、甲3記載事項は、真空断熱材用外包材に用いられるものであり、技術分野が共通するものではなく、積層構造も異なるものである。 また、甲3は、ボイル又はレトルト用を開示又は示唆するものではない。 さらに、バリアコート層の脆性に関して、甲2には、「炭素の割合が・・・15%より少ない場合、バリア性が悪くなり、脆性が脆くなる」(【0044】)と記載され、甲3には、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)の記載に続き「比率が上記範囲(注「0.5」又は「0.8」)に満たないと(注:炭素原子数が大きくなる場合)、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバーコート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。」(【0111】)と記載されており、正反対の記載がある。 そうすると、当業者において、甲2発明の食品包装材料についてボイル又はレトルト用途とすることを想起したとしても、甲3におけるオーバーコート層を構成する原子における金属原子の比率は加熱によってもガスバリア性が維持されるかどうかとは関わりのないものであること、甲3には、炭素原子と金属原子の比率と、膜質の脆性について、甲2と正反対の記載があることに鑑みても、甲2発明とは技術分野も積層構造も異なる真空断熱材用外包材に関する甲3の積層体から、オーバーコート層付きフィルムの中のオーバーコート層及び無機層に関する記載に着目した上、オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)を参酌して、甲2発明に適用する動機付けはない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1において「ボイルまたはレトルト用バリア性積層体」であるものを「レトルト用バリア性積層体」としたものである。 そうすると、本件発明2は、実質的に、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定するものであるから、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3、5~7について 本件発明3、5~7は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであるから、いずれも甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。 (1)甲1に基づく新規性・進歩性 請求項1、3~6に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)甲3に基づく進歩性 請求項1~7に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)サポート要件 請求項1、3~7に係る発明は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1、3~7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 請求項1に係る発明は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)」が、「0.50以上1.60以下」であることを特定しているが、本件明細書において、実際に課題を解決できたものとして示されているものは、Si/C比率が0.83以上である場合のみであり、また、本件明細書の発明の詳細な説明には、Si/C比率が0.83未満である場合でもガスバリア性の定価が抑制できるという理論的な説明もなされていないから、Si/C比率が0.50以上0.83未満である場合には、本件明細書の発明の詳細な説明から課題を解決できることを当業者が認識することができないため、請求項1及び請求項1を引用する請求項3~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 上記1(1)の申立理由について 甲1(【0001】、【0051】、【0075】、【0080】~【0083】、【0091】、【0093】、【0094】)には、特に、テスト16(【0091】)に用いられた、「バリア性被覆層のある構成」の実施例4(【0075】)に着目すると、次の「甲1発明」が記載されている。 「厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、アクリルポリオール樹脂とイソシアネート樹脂を(アクリルポリオール樹脂のOH基):(イソシアネート樹脂のNCO基)が1:1になるように混合したプライマーAを0.10μmの厚みでコーティングにより積層したプライマー層上に、真空蒸着を行い、無機化合物からなるガスバリア性の薄膜層として酸化アルミニウムからなる薄膜層を100~300Åの厚さになるように積層し、さらに、ガスバリア性被膜として、テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液であるA液とポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)であるB液とを配合比(wt%)で60/40に混合したコーティング剤を0.3μmの厚さに積層し、最後に、ドライラミネート法により、ウレタン系接着剤層を介して、ヒートシール性の樹脂として厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した、食品等に用いられるパウチを作製するための積層体。」 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3、相違点4と同様の点で相違し、当該相違点についての判断は、上記第4の3(1)イに説示したとおりである。 よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明3、5、6は、甲1発明ではなく、また、本件発明2、3、5~7は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 上記1(2)の申立理由について (1)甲3に記載された発明 甲3(【請求項3】、【0111】~【0115】、【0192】~【0197】)には、特に、実施例6(【0194】)に着目し、【請求項3】の記載沿って整理すると、次の「甲3発明」が記載されている。 「第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、 前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、 前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、 前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、 前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内である真空断熱材用外包材であって、 前記樹脂基板は、PETフィルムであり、 前記無機層は、アルミニウム酸化物の金属酸化物であり、 前記オーバーコート層は、A液(ポリビニルアルコール(PVA)、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液)およびB液(テトラエトキシシラン(TEOS)、イソプロピルアルコール、塩酸およびイオン交換水からなる加水分解液)を用いたオーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量が、アルコキシドの合計量100質量部に対して50質量部となるように調整されたオーバーコート層形成用組成物を用いて製作され、 前記オーバーコート層におけるSi/C比率が、1.03である真空断熱材用外包材。」 (2)対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。 [相違点A] 本件発明1は、「ボイルまたはレトルト用バリア性積層体」であるのに対して、甲3発明は、「真空断熱材用外包材」である点。 (3)判断 相違点Aについて検討する。 甲3は、ボイルまたはレトルト用バリア性積層体を開示又は示唆するものではなく、また、甲3発明のオーバーコート層を構成する原子における金属原子の比率は加熱によってもガスバリア性が維持されるかどうかとは関わりのないものであることから、当業者において、甲3発明を「ボイルまたはレトルト用バリア性積層体」として用いることを想起しない。 (4)小括 よって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明2、3、5~7は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 上記1(3)の申立理由について 申立人の主張は、Si/C比率が0.50以上0.83未満である場合には、本件明細書の発明の詳細な説明から課題を解決できることを当業者が認識することができないというものであるところ、本件訂正により、Si/C比率の下限は「0.90」となったから、上記主張は当たらないものとなった。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項4は、本件訂正により削除されたため、請求項4に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700022

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