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特許拒絶査定不服審判

2023-020763

液晶表示装置および携帯型機器

審判番号
2023-020763
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-567282
請求日
2023年12月06日
審決日
2025年03月06日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】京セラ株式会社
  • 【請求人代理人】西教 圭一郎
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 芝沼 隆太
  • 審判官 吉野 三寛
分類
P18 .121-Z (G02F) / P18 .575-Z (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第159条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-567282「液晶表示装置および携帯型機器」拒絶査定不服審判事件〔令和3年7月1日国際公開、WO2021/131867〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)12月14日(優先権主張 2019年(令和元年)12月23日。以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和5年 5月 9日付け:拒絶理由通知書 同年 7月 4日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 9月12日付け:拒絶査定 同年12月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出 第2 令和5年12月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年12月6日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 令和5年12月6日にされた手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。 「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型であり、 液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射層を有する液晶表示パネルと、 前記光反射層の下に位置し、前記光反射層に電気的に接続された薄膜トランジスタと、 前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、 前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある1/2波長板と、を備える、携帯型機器に用いられる液晶表示装置であって、 前記液晶層は、その位相差が前記1/2波長板の位相差の1/2よりも小さいとともに、複屈折率の波長分散が正分散性であり、前記1/2波長板は、その位相差の波長分散が正分散性であるとともに、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差しており、 前記第1の偏光板の吸収軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差し、前記液晶層を構成する液晶は、複屈折率が0.050以上0.080以下であり、 前記液晶の駆動電圧が、前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6Vであることを特徴とする液晶表示装置。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の令和5年7月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。 「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型であり、 液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射部を有する液晶表示パネルと、 前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、 前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある1/2波長板と、を備え、 前記液晶層は、その位相差が前記1/2波長板の位相差の1/2よりも小さいとともに、複屈折率の波長分散が正分散性であり、前記1/2波長板は、その位相差の波長分散が正分散性であるとともに、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差しており、 前記第1の偏光板の吸収軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差し、前記液晶層を構成する液晶の複屈折率が0.050以上0.080以下であることを特徴とする液晶表示装置。」 2 本件補正の適否 本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1における「液晶表示装置」について、「携帯型機器に用いられる」という限定を付加し、「光反射層」について、「前記光反射層の下に位置し、前記光反射層に電気的に接続された薄膜トランジスタ」を限定し、「液晶」について、その駆動電圧を「前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6V」と限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1) 本件補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 (2) 各引用文献に記載された事項 ア 引用文献1の記載及び引用発明の認定 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2019-8230号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当合議体が付した。以下同じ。)。 「【請求項1】 ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型の液晶表示装置であって、 液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射部を有する液晶表示パネルと、 前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、 前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある第1の1/2波長板と、を備え、 前記液晶層は、その位相差が前記第1の1/2波長板の位相差の1/2よりも小さく、 前記第1の1/2波長板は、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差するとともに、その面内での互いに直交する方向の屈折率をそれぞれnx,nyとし、その厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たしている液晶表示装置。」 「【0001】 本発明は、携帯電話機などの各種の電子機器の表示装置として好適に実施することができる液晶表示装置に関する。」 「【0024】 本実施形態の液晶表示装置1は、ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型の反射型液晶表示装置である。この液晶表示装置1は、液晶層2を有するとともに、表示面3側から入射して液晶層2を通過した光を反射する光反射層4を有する液晶表示パネル5と、液晶表示パネル5の表示面3側に配置される第1の偏光板6と、液晶表示パネル5と第1の偏光板6との間に、第1の1/2波長板7を備える。 【0025】 液晶層2は、その位相差が第1の1/2波長板7の位相差の1/2よりも小さく、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸とは交差している。 【0026】 液晶表示パネル5は、第1の基板10、遮光層11、カラーフィルタ層12、共通電極13、第1の配向層14、柱状部15、液晶層2、第2の配向層16、透明電極17、第5の層間絶縁層18、光反射層4、第4の層間絶縁層19、ドレイン電極20、ソース電極21、層間接続部22、第3の層間絶縁層23、第2の層間絶縁層24、第1の層間絶縁層25、第2のゲート絶縁層26、第1のゲート絶縁層27、第2の基板28、チャネル部29、半導体層30およびゲート電極31を備える。 【0027】 前述のドレイン電極20、ソース電極21、層間接続部22、チャネル部29、半導体層30およびゲート電極31は、アクティブ素子としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;略称TFT)を構成する。ドレイン電極20は、画素電極である光反射層4に層間接続部22などによって接続される。ゲート電極31に接続されるゲート信号線は、画素の行ごとに設けられ、ソース電極21に接続されるソース信号線は、画素の列ごとに設けられ、ゲート信号線とソース信号線との各交差部に画素がそれぞれ形成される。 【0028】 第1の基板10および第2の基板28は、ガラス基板によって実現される。遮光層11は、ブラックマトリクスを構成し、図1の上方から見た平面視において画素間に設けられ、各画素を区画している。共通電極13は、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;略称ITO)等から成り、透明電極層を構成している。第1の配向層14および第2の配向層16は、ポリイミド等から成る。第4の層間絶縁層19は、アクリル系樹脂等から成る。第1~第3の層間絶縁層25,24,23ならびに第1および第2のゲート絶縁層26,27は、酸化珪素(SiO)または窒化珪素(SiN)から成る。光反射層4は、モリブデン(Mo),アルミニウム(Al)等から成り、例えば、Mo層上にAl層を積層した構成等である。 【0029】 薄膜トランジスタは、アモルファスシリコン(a-Si)、低温多結晶シリコン(Low-Temperature Poly Silicon;LTPS)などから成る半導体層30を有し、ゲート電極31、ソース電極21、ドレイン電極20の3端子素子であって、ゲート電極31に所定電位の電圧(例えば、3V,6V)を印加することによって、ソース電極21とドレイン電極20との間の半導体層30(チャネル)に電流を流す、スイッチング素子(ゲートトランスファ素子)として機能する。」 「【0040】 図2、図3および図4をも参照して、液晶表示パネル5を表示面3側から見たとき、すなわち液晶分子の電界無印加時の初期配向方向(=ラビング方向)に直交する方向を基準軸(=0°)とし、その基準軸から各軸までの反時計まわりの角度を遅相軸等の角度とすると、例えば第1の偏光板6の吸収軸の角度θp1は171°である。第1の1/2波長板7の遅相軸の角度θf1は153°(位相差値Δnd=270nm)である。」 「【図1】 [図:0001422031000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001422031000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001422031000003.jpg] 」 「【図4】 [図:0001422031000004.jpg] 」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)によれば、引用文献1には、一実施形態の液晶表示装置(図1~4)について、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 <引用発明> 「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型の液晶表示装置1であって、 液晶層2を有するとともに、表示面3側から入射して前記液晶層2を通過した光を反射する光反射層4を有する液晶表示パネル5と、 前記液晶表示パネル5の前記表示面3側に配置される第1の偏光板6と、 前記液晶表示パネル5と前記第1の偏光板6との間にある第1の1/2波長板7と、を備え、 前記液晶層2は、その位相差が前記第1の1/2波長板7の位相差の1/2よりも小さく、 前記第1の1/2波長板7は、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差するとともに、その面内での互いに直交する方向の屈折率をそれぞれnx,nyとし、その厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たしており、(【請求項1】及び【0024】) 液晶表示装置1は、携帯電話機の表示装置として実施され、(【0001】) 液晶表示パネル5は、第1の基板10、遮光層11、カラーフィルタ層12、共通電極13、第1の配向層14、柱状部15、液晶層2、第2の配向層16、透明電極17、第5の層間絶縁層18、光反射層4、第4の層間絶縁層19、ドレイン電極20、ソース電極21、層間接続部22、第3の層間絶縁層23、第2の層間絶縁層24、第1の層間絶縁層25、第2のゲート絶縁層26、第1のゲート絶縁層27、第2の基板28、チャネル部29、半導体層30およびゲート電極31を備え、(【0026】) ドレイン電極20、ソース電極21、層間接続部22、チャネル部29、半導体層30およびゲート電極31は、アクティブ素子としての薄膜トランジスタを構成し、 ドレイン電極20は、画素電極である光反射層4に層間接続部22などによって接続され、(【0027】) 薄膜トランジスタは、ゲート電極31に所定電位の電圧(3V,6V)を印加することによって、ソース電極21とドレイン電極20との間の半導体層30(チャネル)に電流を流す、スイッチング素子(ゲートトランスファ素子)として機能し、(【0029】) 液晶分子の電界無印加時の初期配向方向(=ラビング方向)に直交する方向を基準軸(=0°)とし、その基準軸から各軸までの反時計まわりの角度を遅相軸等の角度とすると、第1の偏光板6の吸収軸の角度θp1は171°である、(【0040】) 液晶表示装置1。」 イ 引用文献2の記載及び引用文献2技術事項の認定 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2006-171376号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。 「【0019】 <第1実施形態> 図1(1)は第1実施形態の液晶表示装置の断面構成図であり、図1(2)はこの表示装置における要部の光学構成を説明する平面図である。また、図2および図3はこの表示装置における光学構成を示す模式図である。これらの図に示す液晶表示装置1は、1つの画素にそれぞれ透過表示領域Aと反射表示領域Bとを有する半透過半反射型の液晶表示装置1であり、電圧無印加の際には黒表示が行われるノーマリーブラック(NB)モードとして、以下のように構成されている。 【0020】 すなわち液晶表示装置1は、第1基板10と、この第1基板10の素子形成面側に対向配置された第2基板20と、これらの第1基板10と第2基板20との間に狭持された液晶層30とからなる液晶パネルを備えている。ここでは、液晶層30が、ネマチック液晶で構成されていることとする。またこの液晶パネルにおいて、第1基板10および第2基板20の外側面には、偏光板40,50が密着状態で設けられている。これらの偏光板40は、クロスニコル状態で設けられていることとする(図2参照)。また、第1基板10側の偏光板40のさらに外側には、透過表示を行うための光源となるバックライト60が設けられている。 【0021】 このうち第1基板10は、ガラス基板のような透明基板からなり、その液晶層30に向かう面上に、ここでの図示を省略した薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)等の駆動用素子およびこれに接続された電極や配線が設けられ、これらが層間絶縁膜で覆われている。またこの層間絶縁膜上には、反射表示領域Bのみを覆う状態で選択的に反射層11がパターン形成されている。この反射層11が絶縁膜12で覆われている。この絶縁膜12は、後に説明する液晶層30の膜厚(セルギャップga,gb)を調整するための凸パターン12として形成されている。尚、ここでの図示は省略したが、反射層11は、その表面で光散乱させるための凹凸形状に設けられていても良い。 【0022】 また、透過表示領域Aの層間絶縁膜上、および反射表示領域Bにおける凸パターン12上には、上述した電極や配線を介して駆動用素子に接続された画素電極14と共に、コモン電極15が配置されている。 【0023】 画素電極14およびコモン電極15は、透過表示領域Aおよび反射表示領域Bを挟んだ両端において、偏光板40,50の透過軸に対して45°をなす方向に平行に延設配置されていることとする(図2参照)。これにより、画素電極14-コモン電極15間に電圧を印加した場合に、第1基板10および第2基板20の基板面に対して平行で、かつ偏光板40,50の透過軸に対して45°をなす向きの電界(横電界)が、液晶層30に対して印加される構成となっている。そして、この横電界により、液晶層30を構成する液晶分子mが、偏光板40,50の透過軸に対して45°なす向きに配向する構成となっている。尚、上述した反射層11が、アルミニウムのような反射特性と導電性とを兼ね備えている場合、この反射層11は、画素電極14またはコモン電極15の中継用電極として用いられていても良い。ただし、画素電極14とコモン電極15とは絶縁状態に保たれることとする。 【0024】 そして、これらの画素電極14およびコモン電極15の上部には、配向膜17が設けられている。図2中に矢印で透過軸の方向および配向方向を示したように、この配向膜17は、第1基板10側の偏光板40の透過軸に平行で、かつ第2基板20側の偏光板50の透過軸に対して90°となる向きにラビング処理または配向処理されたものであることとする。 【0025】 尚、透過表示領域Aと反射表示領域Bにおける配向膜17の配向方向は、それぞれが偏光板40または偏光板50の透過軸に対して90°であれば良い。ただし各領域A,Bにおける配向状態の長期的な安定性、信頼性を得ることを考慮すると、透過表示領域Aと反射表示領域Bにおける配向膜17の配向方向は同一であることが好ましい。このため、以下の実施形態においては、各領域A,Bにおける配向膜17の配向方向が同一(第1基板10側の偏光板40の透過軸に平行)である場合を説明する。 【0026】 以上により、画素電極14およびコモン電極15に電圧を印加しない電界OFF(黒表示)の状態では、液晶分子mの配向軸は偏光板40の透過軸と平行となる。一方、上記電極14-15間に電圧を印加することによりネマチック液晶からなる液晶層30に横電界を印加した電界ON(白表示)の状態では、液晶分子mの配向軸と偏光板40,50の透過軸とのなす角度θ=45°となる。 【0027】 一方、以上のような第1基板10側の構成に対して、第2基板20は、ガラス基板のような透明基板からなる。この第2基板20の液晶層30に向かう面には、後に詳しく説明する位相差層21がパターン形成され、さらにここでの図示を省略したカラーフィルタが設けられ、これを覆う状態で配向膜22が設けられている。この配向膜22は、第1基板10側に設けられた配向膜17と反平行にラビング処理または配向処理されたものである。 【0028】 これにより、電界OFF(黒表示)の状態では、液晶層30の膜厚方向にわたって、液晶分子mの配向軸は偏光板40の透過軸と平行となる。一方、電界ON(白表示)の状態では、液晶層30の膜厚方向にわたって液晶分子mの配向軸と偏光板40,50の透過軸とのなす角度θ=45°となる。 【0029】 また位相差層21は、反射表示領域Bに対してのみ選択的に設けられ、反射層11に対向する状態で配置されていることとする。そして、この位相差層21と上述した凸パターン12との選択的な配置により、透過表示領域Aのセルギャップgaに対する反射表示領域Bのセルギャップgbが調整されている。 【0030】 ここで、透過表示領域Aのセルギャップgaおよび反射表示領域Bのセルギャップgbは、図4および下記式(1)を参照して次のようにして設定されている。 【数1】 [図:0001422031000005.jpg] 【0031】 まず、上記式(1)から、電界ON(白表示)時に、透過表示領域Aにおける明るい白表示を実現するためには、液晶分子mの配向軸mpと偏光板40,50の透過軸50p,40pとのなす角度θ(θ’)=45°に設定された上記状態で、透過表示領域Aにおける液晶層30の位相差Δndを、およそλ/2とすれば良いことがわかる。このため、透過表示領域Aにおけるセルギャップgaは、透過表示領域Aにおける液晶層30の位相差Δnd(a)=λ/2となるように調整されていることとする。 【0032】 以上のように設定された透過表示領域Aにおけるセルギャップgaに対して、反射表示領域Bにおけるセルギャップgbは、液晶層30の位相差Δnd(b)は、Δnd(b)=Δnd(a)/2=λ/4となるように調整されていることとする。このため、反射表示領域Bにおけるセルギャップgbは、当該反射表示領域Bにおける液晶層30の位相差Δnd(b)=λ/4となるように、すなわちセルギャップga=2gbに調整されていることとする。 【0033】 そして、以上のように設定された反射表示領域Bにおける位相差Δnd(b)=λ/4に基づき、反射表示領域Bにおいて良好なコントラストを得るためには、黒表示時に可視光領域全体にわたる光の反射を抑えることが重要である。そのためには、反射表示領域Bにおいては、位相差層21と液晶層30とをあわせて広帯域λ/4(可視光の波長帯域でλ/4となる)を形成する必要がある。このため、反射表示領域Bに設ける位相差層21の位相差は、λ/2(550nmの光に対して)であることとする。 【0034】 尚、反射表示領域Bにおいて、位相差層21と液晶層30とで良好な広帯域λ/4条件とするためには、位相差層21の波長分散と液晶層30の波長分散とのバランスも重要となる。ここで、波長分散係数A=Δn(400nm)/Δn(550nm)とすると、好ましくは0.8<A(液晶層30)/A(位相差層21)<1.3となり、より好ましくは0.9<A(液晶層30)/A(位相差層21)<1.15となるように、各波長分散係数Aを調整しておく。 【0035】 また、このλ/2の位相差層21は、その遅相軸と偏光板40,50の透過軸40p,50pとのなす角度が20°~25°度の範囲になるよう設けられていることとする。この値は、次のようなシミュレーション結果から得た。 【0036】 図5には、上述したように条件設定された液晶表示装置において、位相差層21の遅相軸21pと偏光板40,50の透過軸40p,50pとのなす角度θaを変化させた場合の、透過表示領域におけるコントラストのシミュレーション結果を示す。シミュレーション条件は、光入射角度0°、測定角度0°、偏光板偏光度99.7%、光源D65、波長分散係数A(液晶層30)=1.03、波長分散係数A(位相差層21)=1.02、反射層をミラー面として計算した。尚、光源D65は、光源規格Dにおいて太陽光に近いスペクトルを示す。」 「【0073】 <第4実施形態> 図10は第4実施形態の液晶表示装置の断面構成図であり、図11および図12はこの表示装置における配向状態を示す模式図である。これらの図に示す液晶表示装置1cと、図1~3を用いて説明した第1実施形態の液晶表示装置と異なるところは、反射表示領域Bに縦電界を生じさせるように電極を設けた点にあり、透過表示領域Aを含む他の構成は同様であることとする。尚、図10~12においては、上述した各実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。 【0074】 すなわち、反射表示領域Bにおいては、第1基板10側には、コモン電極を設けず、セルギャップgb調整用の凸パターン12の上部に画素電極14bを設ける。そして、この画素電極14bを覆う状態で、第1実施形態と同様の配向膜17を設ける。また、第2基板20側には、位相差層21の上方に画素電極14bに対向させて対向電極27を設ける。そして、この対向電極27を覆う状態で、第1実施形態と同様の配向膜22を設ける。これにより、画素電極14b-対向電極17間に電圧を印可した場合に、第1基板10および第2基板20の基板面に対して垂直な電界(縦電界)が、液晶層30に対して印加される構成となっている。そして、この縦電界により、液晶層30を構成する液晶分子mが、基板面に対して略垂直な向きに配向する構成となっている。 【0075】 また反射表示領域Bにおけるセルギャップgbは、第1実施形態と同様にセルギャップga=2gbに調整され、電界ON時における反射表示領域Bの液晶層30がλ/4の位相差を有する構成となっている。」 「【図1】(1) [図:0001422031000006.jpg] 」 「【図10】 [図:0001422031000007.jpg] 」 (イ) 引用文献2の記載より把握できる技術事項 前記(ア)の【0034】には、反射表示領域Bにおいて、位相差層と液晶層とで良好な広帯域λ/4条件とするためには、位相差層の波長分散と液晶層の波長分散とのバランスも重要となり、波長分散係数A=Δn(400nm)/Δn(550nm)とする(Δnは、屈折率異方性である(【0030】)。)と、0.8<A(液晶層30)/A(位相差層21)<1.3となるように、各波長分散係数Aを調整することが記載されており、【0036】には、前記の関係を満たす、波長分散係数A(液晶層30)=1.03、波長分散係数A(位相差層21)=1.02との条件でシミュレーションを行っていることが記載されている。そして、広帯域λ/4条件を満たすか否かは、位相差層及び液晶層によって定まるものであるから、これらの層が反射表示領域Bに属するかどうかに影響しないことが明らかである。そうすると、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献2技術事項> 「位相差層と液晶層とで良好な広帯域λ/4条件とするためには、位相差層の波長分散と液晶層の波長分散とのバランスも重要となり、波長分散係数A=Δn(400nm)/Δn(550nm)とする(Δnは、屈折率異方性である。)と、0.8<A(液晶層30)/A(位相差層21)<1.3となるように、各波長分散係数Aを調整するものであり、波長分散係数A(液晶層30)=1.03、波長分散係数A(位相差層21)=1.02との条件が例示されていること。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比、一致点及び相違点の認定 ア 本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。 (ア) 本件補正発明の「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型であり、液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射層を有する液晶表示パネルと、前記光反射層の下に位置し、前記光反射層に電気的に接続された薄膜トランジスタと、前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある1/2波長板と、を備える、携帯型機器に用いられる液晶表示装置であって、」との特定事項について a 引用発明の「液晶表示装置1」は、本件補正発明の「液晶表示装置」に相当する。そして、引用発明の「液晶表示装置1」は、「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型の」ものであるから、本件補正発明でいう「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型」であるものといえる。 b 引用発明の「液晶層2」、「光反射層4」及び「液晶表示パネル5」は、それぞれ本件補正発明の「液晶層」、「光反射層」及び「液晶表示パネル」に相当する。そして、引用発明は、「液晶層2を有するとともに、表示面3側から入射して前記液晶層2を通過した光を反射する光反射層4を有する液晶表示パネル5」「を備え」ているから、本件補正発明でいう「液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射層を有する」ものといえる。 c 引用発明の「薄膜トランジスタ」は、本件補正発明の「薄膜トランジスタ」に相当する。そして、当該「薄膜トランジスタ」を構成する「ドレイン電極20」は、「画素電極である光反射層4に層間接続部22などによって接続され」ているから、当該「薄膜トランジスタ」は、本件補正発明でいう「前記光反射層に電気的に接続された」ものといえる。また、引用発明の「液晶表示パネル5」は、「光反射層4」及び「薄膜トランジスタ」を備えているところ、当該「光反射層4」は、「表示面3側から入射して前記液晶層2を通過した光を反射する」ものであり、当該「薄膜トランジスタ」が光の経路中に存在するとは考えにくいことから、当該「光反射層4」に接続された「薄膜トランジスタ(ドレイン電極20)」は、当該「光反射層4」からみて当該「液晶層2」と反対の側にあるものと理解できる。そうすると、当該「薄膜トランジスタ」は、「液晶表示パネル5」を表示面3側から見たときに、「光反射層4」の裏側にある、言い換えれば、「光反射層4」の下にあるといえる。したがって、引用発明の「薄膜トランジスタ」は、本件補正発明でいう「前記光反射層の下に位置」するものといえる。 d 引用発明は、「前記液晶表示パネル5の前記表示面3側に配置される第1の偏光板6と、前記液晶表示パネル5と前記第1の偏光板6との間にある第1の1/2波長板7と、を備え」ている。したがって、引用発明の「第1の偏光板6」及び「第1の1/2波長板7」は、それぞれ本件補正発明の「第1の偏光板」及び「1/2波長板」に相当し、引用発明は、本件補正発明でいう「前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある1/2波長板と、を備える」ものといえる。 e 引用発明は、「携帯電話機の表示装置として実施され」るものであるから、本件補正発明でいう「携帯型機器に用いられる」ものといえる。 f 以上によれば、引用発明は、本件補正発明の前記特定事項を満たしている。 (イ) 本件補正発明の「前記液晶層は、その位相差が前記1/2波長板の位相差の1/2よりも小さいとともに、複屈折率の波長分散が正分散性であり、」との特定事項について 引用発明の「液晶層2」は、「その位相差が前記第1の1/2波長板7の位相差の1/2よりも小さ[い]」ものである。したがって、本件補正発明の前記特定事項と引用発明とは、「前記液晶層は、その位相差が前記1/2波長板の位相差の1/2よりも小さい」点で共通する。 (ウ) 本件補正発明の「前記1/2波長板は、その位相差の波長分散が正分散性であるとともに、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差しており、」との特定事項について 引用発明の「第1の1/2波長板7」は、「その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差する」ものである。したがって、本件補正発明の前記特定事項と引用発明とは、「前記1/2波長板は、」「その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差して」いる点で共通する。 (エ) 本件補正発明の「前記第1の偏光板の吸収軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差し、前記液晶層を構成する液晶は、複屈折率が0.050以上0.080以下であり、」との特定事項について 引用発明は、「液晶分子の電界無印加時の初期配向方向(=ラビング方向)に直交する方向を基準軸(=0°)とし、その基準軸から各軸までの反時計まわりの角度を遅相軸等の角度とすると、第1の偏光板6の吸収軸の角度θp1は171°」である。したがって、本件補正発明の前記特定事項と引用発明とは、「前記第1の偏光板の吸収軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差」する点で共通する。 (オ) 本件補正発明の「前記液晶の駆動電圧が、前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6Vである」との特定事項について 引用発明の「液晶表示装置1は、携帯電話機の表示装置として実施され」るものであり、「薄膜トランジスタ」は、「ゲート電極31に所定電位の電圧(3V,6V)を印加することによって、ソース電極21とドレイン電極20との間の半導体層30(チャネル)に電流を流す、スイッチング素子(ゲートトランスファ素子)として機能」するものである。 したがって、本件補正発明の前記特定事項と引用発明とは、「前記液晶の駆動電圧」が所定の電圧である点で共通するが、所定の電圧について、本件補正発明は、「前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6Vである」のに対し、引用発明は、ゲート電圧が3V又は6Vであり、液晶表示装置1が、携帯電話機の表示装置として実施されるものである。 イ 前記アより、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、下記のとおりである。 <一致点> 「ノーマリブラックで表示を行う複屈折制御型であり、 液晶層を有するとともに、表示面側から入射して前記液晶層を通過した光を反射する光反射層を有する液晶表示パネルと、 前記光反射層の下に位置し、前記光反射層に電気的に接続された薄膜トランジスタと、 前記液晶表示パネルの前記表示面側に配置される第1の偏光板と、 前記液晶表示パネルと前記第1の偏光板との間にある1/2波長板と、を備える、携帯型機器に用いられる液晶表示装置であって、 前記液晶層は、その位相差が前記1/2波長板の位相差の1/2よりも小さく、前記1/2波長板は、その遅相軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差しており、 前記第1の偏光板の吸収軸が電界無印加時の液晶分子の配向軸と交差し、 前記液晶の駆動電圧が、所定の電圧である、液晶表示装置。」 <相違点> ・相違点1 「液晶層」について、本件補正発明は、「複屈折率の波長分散が正分散性であ[る]」のに対し、引用発明は、その複屈折率の波長分散は不明である点。 ・相違点2 「1/2波長板」について、本件補正発明は、「その位相差の波長分散が正分散性である」に対し、引用発明は、その位相差の波長分散は不明である点。 ・相違点3 「前記液晶層を構成する液晶」について、本件補正発明は、「複屈折率が0.050以上0.080以下」であるのに対し、引用発明は、その複屈折率は不明である点。 ・相違点4 「前記液晶の駆動電圧」である所定の電圧について、本件補正発明は、「前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6Vである」のに対し、引用発明は、ゲート電圧が3V又は6Vであり、液晶表示装置1が、携帯電話機の表示装置として実施されるものである点。 (4) 相違点の検討 ア 相違点1及び2について 相違点1及び2を併せて検討する。 引用発明の「液晶表示装置1」の「液晶層2」及び「第1の1/2波長板7」の分散特性について、引用文献1には明記がないものの、光学材料の波長分散は正分散性であるのが通常であるし、引用文献2技術事項において波長分散係数Aとして正のものが例示されているのも、そのことが念頭に置かれていると解される。 そうすると、引用発明から出発した当業者は、引用文献2技術事項及び上記技術常識に基づいて、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえる。 イ 相違点3及び4について (ア)引用発明から出発した当業者が、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成に至るためには、液晶層2の液晶として、駆動電圧が2.4V~3.6Vとされるもの(以下、液晶の駆動電圧が当該範囲である構成を「本件駆動電圧構成」という。相違点4関係。)であって、複屈折率が0.050以上0.080以下のもの(以下、液晶の複屈折率が当該範囲である構成を「本件複屈折率構成」という。相違点3関係。)を選択し、上記駆動電圧を上記の2.4V~3.6Vの範囲に含まれるものとすれば足りる。この点、相違点4に係る本件補正発明の構成のうち、「前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い」点については、上記のように駆動電圧を2.4V~3.6Vとすれば、必然的に満たされるのであり、このことは、引用発明のゲート電極31に印加される所定電位の電圧(本件補正発明でいう「薄膜トランジスタのゲート電圧」に相当する。)が「3V」又は「6V」であることからみて明らかである。 (イ)検討に先立ち、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成を選択することによる技術的意義について確認する。 a 本件補正後の明細書及び図面(以下「本件補正後明細書等」という。)には、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成に関して、次の記載がある。 「・・・一方、液晶の波長分散は、液晶の物性値の観点からは、ネマティック状態から等方性液体への液晶転移温度Tni、複屈折率Δn及び駆動電圧を決めるΔε(誘電率異方性)の値により変化する。Tniが高く、ΔnやΔεが大きいほど、液晶の波長分散は大きくなる。低電圧駆動による低消費電力化が要求されるモバイル用途においては、Tniは75~105℃、Δnは0.050~0.080、Δεは+8~+18が好ましい。これにより、2.4V~3.6Vの低電圧駆動による低消費電力化が可能となる。」([0024]) 「・・・実施例1の液晶表示装置の液晶層2は、Tni=85℃、Δε=+11.4であり、複屈折率Δnの波長分散(Δn(436nm)/Δn(589nm))は、1.063(Δn(436nm)=0.0727、Δn(589nm)=0.0684)の正分散性であった。・・・比較例1の液晶表示装置の液晶層2は、Tni=95℃、Δε=+7.0であり、複屈折率Δnの波長分散(Δn(436nm)/Δn(589nm))は、1.078(Δn(436nm)=0.0970、Δn(589nm)=0.0900)の正分散性であった。・・・」([0025]) 「さらに、モバイル用途においては、Tniを75℃~105℃、Δnを0.050~0.080、Δεを+8~+18とすることにより、2.4V~3.6Vの低電圧駆動による低消費電力化が可能となる。」([0030]) b 前記aによれば、本件補正後明細書等には、低電圧駆動による低消費電力化が要求されるモバイル用途においては、Tniは75~105℃、Δnは0.050~0.080(本件複屈折率構成)、Δεは+8~+18が好ましく、これにより、2.4V~3.6V(本件駆動電圧構成)の低電圧駆動による低消費電力化が可能となることが記載されている。 他方、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成には、Δεが含まれていないところ、液晶が駆動電圧によって駆動するメカニズムに係る技術常識に照らせば、Δεの値が駆動電圧の値に大きく寄与することは明らかである一方、本件複屈折率構成がこれに寄与するとは考えにくい。そして、本件補正後明細書等には、Δεとは関わりなく、本件複屈折率構成のみで、低電圧駆動を可能にできることを明らかにする実施例及び比較例は記載されていないし、Δεの値とΔnの値に一定の相関があるとの技術常識があるともいえない。 そうすると、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成を選択することによる技術的意義は、モバイル用などにおける低消費電力化にあり、そのためには、本件駆動電圧構成を可能にする液晶、具体的には、Δεが本件駆動電圧構成を可能にする程度のものを選択する必要があるものの、その際に本件複屈折率構成をも満たす液晶を選択することには、特段の技術的意義はないとみるのが相当である。 (ウ)以上を踏まえて、引用発明から出発した当業者が、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成に至るか否かについて検討する。 引用発明は、「液晶表示装置1は、携帯電話機の表示装置として実施され」るものであるから、当業者にとって低消費電力化が求められることは当然であるところ、引用発明のゲート電極31に印加される所定電位の電圧が、3V又は6Vであることに鑑みて、当該電圧より高い電圧を必要としないようにすることが自然といえるから、それを実現するために、本件駆動電圧構成を採用した上で、液晶層2の液晶として本件駆動電圧構成を可能にするもの、具体的には、Δεが本件駆動電圧構成を可能にする程度の液晶を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。そして、Δεが本件駆動電圧構成を可能にする程度の液晶において、本件複屈折率構成をも満たす液晶は、周知(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2010/131614号の[0113](Δn=0.080であり、Δε=8.9である。)参照。)であることにも照らせば、液晶層2の液晶を選択する際に、本件複屈折率構成をも満たすものを採用することは、単なる設計的事項にすぎない。なお、仮に、ΔnとΔεとの間に一定の相関関係があるとしても、その場合には、Δεと駆動電圧との間に関係があることから、2.4V~3.6Vの駆動電圧となるΔεが定まり、そのような液晶を選択した結果、Δnが「0.050以上0.080以下」の範囲を満たす値を取り得ることになるはずであるから、上記のように、本件駆動電圧構成を可能にする液晶を選択した際に、本件複屈折率構成をも満たすものを選択することは、やはり設計的事項にすぎない。 このようにして、引用発明から出発した当業者が、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成に至ることになる。 (5) 本件補正発明の効果について そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (6) 請求人の主張について 請求人は、本件補正発明は、(i)薄膜トランジスタが光反射層の下に位置し、当該光反射層に電気的に接続されていることにより、外光による光リーク電流が発生することを抑えることができる旨、(ii)液晶の駆動電圧が2.4V~3.6Vであり携帯型機器に用いられる液晶表示装置を提供できる旨を主張している。 しかしながら、(i)は、前記(3)ア(ア)cに説示したとおり、引用発明も備えている。(ii)は、前記(4)イで説示したとおりである。 (7) 小括 以上によれば、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、令和5年7月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)において本件補正前の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 本願発明は、その出願の優先日前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2019-8230号公報 引用文献2:特開2006-171376号公報 引用文献3:国際公開第2010/131614号(周知技術を示す文献) 3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2に記載された事項及び引用発明等の認定は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比及び判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「液晶表示装置」について「携帯型機器に用いられる」という限定事項を削除し、「光反射層」について、「前記光反射層の下に位置し、前記光反射層に電気的に接続された薄膜トランジスタ」とを限定を削除し、「液晶」の駆動電圧について、「前記薄膜トランジスタのゲート電圧と略同じであるかまたは前記ゲート電圧よりも低い、2.4V~3.6V」との限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-020763

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