特許拒絶査定不服審判
2024-005915
水晶素子及びその製造方法、並びに水晶素子を含む光発振装置
- 審判番号
- 2024-005915
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-160502
- 請求日
- 2024年04月08日
- 審決日
- 2025年07月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】清水 義憲
- 【請求人代理人】酒巻 順一郎
- 【請求人代理人】上村 勇太
- 【請求人代理人】和田 雄二
- 【請求人代理人】阿部 寛
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 波多江 進
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P18 .121-Z (G02F) / P18 .575-Z (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-160502「水晶素子及びその製造方法、並びに水晶素子を含む光発振装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月11日出願公開、特開2021- 39236〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月3日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和 5年 8月 4日付け:拒絶理由通知書
同年10月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月22日付け:拒絶査定
(令和 6年 1月 9日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年4月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月8日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年4月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であって、本件補正前(令和5年10月16日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子であって、
前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面であり、
前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間している、
水晶素子。」
(2) 本件補正後
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1における「に式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」」との記載は、明細書の【0026】の記載から見て、「式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」」の誤記であることが明らかである。本審決では、請求項1でこの誤記を正した以下に示す記載に基づいて検討する。
「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子であって、
前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面であり、
前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間しており、
前記複数の極性反転領域は、式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」(ただし、λは基本波光の波長であり、Nwは入力光の屈折率であり、N2wは波長変換光の屈折率である)にて導出される所定位置に配列される、
水晶素子。」
2 本件補正の適否についての当審の判断
(1) 本件補正の目的について
本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の極性反転領域」を、「前記複数の極性反転領域は、式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」(ただし、λは基本波光の波長であり、Nwは入力光の屈折率であり、N2wは波長変換光の屈折率である)にて導出される所定位置に配列される」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(2) 独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(本件補正発明)は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
a 引用文献1に記載された事項
原査定で引用され、本願の出願前に発行された特開2004-107187号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、他の文献についても同様である。
(a) 従来の技術(【0001】~【0016】)
「【0001】
【従来の技術】
常誘電体である水晶(SiO2)に、そのα-β相転移温度付近で応力を印加することにより、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた擬似位相整合波長変換光学素子が提案されている(S.Kurimura, R.Batchko, J.Mansell, R.Route, M.Fejer, and R.Byer:1998年春応用物理学会予稿28a-SG-18:非特許文献1)。これは、水晶のドフィーネ双晶を利用し、非線形光学定数d11の符号を周期的に反転させることにより水晶による擬似位相整合結晶を作製し、これを擬似位相整合波長変換光学素子として用いるものである。
【0002】
水晶の場合、吸収端が波長150nm程度であり、波長200nm以下での紫外光吸収は、従来の複屈折位相整合を用いた非線形光学素子(β―BaB2O4やCsLiB6O10等)や強誘電体の擬似位相整合を用いた非線形光学素子(LiNbO3やLiTaO3等)による場合に比べてほとんどない。さらに第二光高調波発生により、ArFエキシマレーザと同等の波長約193nmの光を高効率に発生させる可能性があるという従来の非線形光学素子にはない特徴がある。双晶構造は、その周期を数μm~数十μm程度とすることにより実用的な波長変換デバイスとして用いることができる。この擬似位相整合水晶を用いた半導体露光装置が提案されている(特開平2002-122898号公報:特許文献1)。
【0003】
水晶の周期双晶構造の作製方法としては、リソグラフィ技術と薄膜形成技術により水晶基板上に周期的なCr膜を製膜し、温度を550℃前後まで昇温させることにより、水晶とCrの線熱膨張率の差による面内応力を利用し、温度と応力を印加することが最初に提案された(S.Kurimura, R.Batchko, J.Mansell, R.Route, M.Fejer, and R.Byer:1998年春応用物理学会予稿28a-SG-18:非特許文献1)。この方法においては、Cr膜が製膜された部分のみ結晶軸が反転し、周期双晶構造が生成される。
【0004】
しかしながら、この方法では水晶基板面に平行な応力成分を用いるために、応力が結晶表面付近に局在し、結晶表面から数μm内部までしか結晶軸の反転が形成されなかった。このため、周期双晶構造が内部までできている、つまりアスペクト比の大きい周期双晶構造が得られないので、レーザ光の波長変換に用いるような、バルクの光学素子の実現は不可能であった。
【0005】
このような問題点を解決する方法として、ホットプレス法が提案された(S.Kurimura, I.Shoji, T.Taira, M.Fejer, Y.Uesu, and H.Nakajima:2000年秋応用物理学会予稿3a-Q-1:非特許文献2)。この方法は、水晶基板の片面の表面上に周期的な段差構造を作製し、その水晶基板を上下方向からヒータブロックで挟み込み、水晶基板の温度を昇温して所望の温度に到達した時点で、圧力を印加するものである。このとき、段差構造のうち凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転する。この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができる。すなわち、凸部のみに応力が集中してそこから双晶が発生し、次第に内部へと成長し、アスペクト比の大きい双晶構造が作製される。
【0006】
このような、片面の表面上に段差構造が形成された水晶基板の例を、図4を用いて説明する。水晶基板1の片側の表面には段差構造が形成され、その結果、直方体の形状を有する凸部2が、所定の間隔で形成されている。この凸部2は、図の左右方向に所定の幅を有し、その幅と同じ間隔で複数の凸部2が、図の左右方向に形成されている。凸部2は図の奥行き方向に長い直方体形状を有している。この長手方向に平行な方向をa軸方向とする。当然、a軸は水晶基板1の法線に対して垂直となっている。
・・・(中略)・・・
【0009】
以下、図4に示すような凸部2の作製方法の例を説明する。最初に水晶基板1上にCr膜をスパッター法により厚さが100nm程度となるように成膜する。この膜上にポジ型のレジストを塗布し、i線ステッパーなどの半導体露光装置を用いて、凸部2となる部分以外の部分を露光し現像する。次に、残ったレジストをマスクとしてCr膜を溶解除去する。そして、残ったレジスト膜とCr膜をマスクとして、弗化水素酸にてウエットエッチングを行い数μm程度の深さの段差構造を作製する。これにより、図4に示すような凸部2を有する段差構造が表面に形成された水晶基板1が完成する。なお、Cr膜は、押圧の前にはがしてもはがさなくともどちらでもよい。
・・・(中略)・・・
【0015】
水晶基板52は前述のような構造を有し、数mm~数十mm角程度の大きさである。また、直径数インチ程度のウエハを用いて双晶を一括生成した後により小さい断片に切り分けることもありうる。水晶基板52の厚みは、バルクの光学素子として利用できるように、0.1mm~数mm程度とされている。
【0016】
水晶基板52は両面を精密研磨してあり、平均波面収差が約0.03λ(λ=0.638μm)程度に収まるように基板の両面平行度、各面の面精度を確保してある。これは水晶の場合、約0.045μmの面精度に相当し、前述のような水晶表面に形成された段差に比べて十分小さい。」
「【図4】
[図:0001427527000001.jpg]
」
(b) 発明が解決しようとする課題(【0017】~【0027】)
「【0017】
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・(中略)・・・
【0026】
さらに、従来のホットプレス法で水晶中に相転移型双晶を形成する場合、前述のようにフォトリソグラフィとウエットエッチング法により水晶基板の片面に段差構造を形成するという作業を、各水晶基板毎に行わなければならないという問題点があった。
【0027】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、上記のような種々の問題点を解決することができる水晶基板と押圧装置を提供することを課題とする。」
(c) 課題を解決するための手段(【0028】~【0040】)
「【0028】
【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
【0034】
前記課題を解決するための第3の手段は、ホットプレス法により水晶中に相転移型双晶を形成するために用いられる押圧装置であって、加熱ブロックを有し、当該加熱ブロックに、当該加熱ブロックとは別の材料で構成された押圧部材が取り付けられていることを特徴とする押圧装置(請求項3)である。
【0035】
本手段によれば、加熱される加熱ブロックを熱伝導率の良い部材で形成して熱伝達を良くすると共に、実際に水晶基板を押圧する押圧部材を、加熱ブロックとは別の、高温において硬質性を保つことができる部材とすることにより、押圧面が高温のために変形するという問題を低減することができる。
【0036】
また、押圧部材として高精度の面加工が可能な材料を使用することにより、水晶基板に形成された表面段差に比べて小さな誤差で押圧面の加工を行うことができ、水晶基板を均一に押圧することが可能となる。
・・・(中略)・・・
【0039】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第3の手段であって、前記押圧部材のうちの一つの押圧部材の表面のうち、前記水晶の、相転移を起こさせたい部分に当接する部分が、他の部分より凸状となるように加工されていることを特徴とするもの(請求項4)である。
【0040】
本手段においては、押圧部材側に凸部が設けられているので、水晶基板については表面を研磨するだけでよく、段差構造を設けなくても、押圧部材の凸部に当接して加圧される部分が相転移を起こし、相転移型双晶が形成される。よって、従来のように、各水晶基板について、フォトリソグラフィとウエットエッチングにより段差構造を形成する工程が不要となる。
・・・(後略)」
(d) 実施の形態の1例(【0045】~【0056】、【図1】)
「【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例である押圧装置を使用して、本発明の実施の形態の1例である水晶基板を押圧している状態を示す概要図である。この押圧装置の基本的な構成は、図5に示した従来のものとほぼ同様であるので、図1においては、その主要部のみを概略的に図示している。
【0046】
水晶基板11は、上部ブロック12と下部ブロック13の間に挟まれた状態で加熱され、さらに押圧されて応力を加えられる。上部ブロック12は、上部ヒータブロック14と上部押圧プレート15から構成されており、上部ヒータブロック14と上部押圧プレート15は、ねじや高温接着剤や、後述の方法により結合されている。下部ブロック13は、下部ヒータブロック16と下部押圧プレート17から構成されており、下部ヒータブロック16と下部押圧プレート17は、ねじや高温接着剤や、後述の方法により結合されている。
【0047】
上部ヒータブロック14、下部ヒータブロック16はSUS304で構成され、各々に設けられた2つの貫通孔にヒータ18が埋め込まれている。上部押圧プレート15と下部押圧プレート17は、超硬金属やサファイア、セラミックス、石英ガラス、水晶等の、高温で硬度を保ち、十分な平面研磨ができる材料で構成され、その押圧面は研磨により、面精度が60nm程度になるように仕上げられている。
【0048】
下部ブロック13は、下部プレート19に結合されている。上部ブロック12は、軸受ブロック20に接しており、軸受ブロック20は、上部プレート21に結合されている。上部ブロック12は、その上面に、半径R1に凸面加工された凸部22を有し、軸受ブロック20は、その下面に、半径R2(R2>R1)に凹面加工された凹部23を有している。このようにすることにより、首振り機構が構成され、その結果、押圧時には必ず水晶基板11の面に対して上部押圧プレート15の押圧面が倣うようになり、水晶基板11に一様な荷重が印加されるようになる。
【0049】
この機構は、フリーシャンク機構として周知のものであるが、この機構を使用する他、上部ブロック12と軸受ブロック20を球面軸受で結合しても、上部ブロック12を上部プレート21にジンバル機構を介して取り付けるようにしても、ほぼ同じ作用効果が得られる。
【0050】
また、この実施の形態においては、水晶基板11を加熱するためのヒータ18は、上下の各ヒータブロック14、16に各2個づつ設けられている。この2つのヒータ18は、互いに同一の形状と加熱力を有し、押圧面からの距離が等しくなるような位置に、図において各ヒータブロック14、16の中心軸に対して左右対称になるように設けられている。ヒータ18としては、コイルヒータを採用しているが、その他の手段、例えば高周波加熱、電気炉による加熱を使用したヒータとしてもよい。
【0051】
このようにすることにより、上部ブロック12、下部ブロック13の押圧面の中心部分では温度分布の一様性が良好となる。また更に、上部ブロック12、下部ブロック13の押圧面の大きさを水晶基板11よりも大きくすると、上部ブロック12、下部ブロック13の押圧面中心部での温度分布ムラを、より小さくすることができる。
【0052】
このようにして、図1に示した実施の形態においては、圧力と共に温度も水晶基板11上に一様に印加され、水晶の双晶の生成条件の、基板上でのばらつきを小さくすることができる。
【0053】
図1に示される水晶基板11は、フォトリソグラフィ工程とドライエッチングにより、その片面に微細な凸部を周期的に有する段差構造が形成されたものである。
【0054】
このような水晶基板11は、例えば以下のような工程で製造される。最初に水晶基板上にCr膜をスパッター法により厚さが100nm程度となるように成膜する。この膜上にポジ型のレジストを塗布し、i線ステッパーなどの半導体露光装置を用いて、凸部となる部分以外の部分を露光し現像する。そして、残ったレジストをマスクとしてCr膜を除去する。そして、残ったレジスト膜とCr膜をマスクとして、RIEあるいはICPなどのドライエッチングを行い、数μm程度の深さの段差構造を作製する。最後に、レジスト膜とCr膜を除去することにより、図1に示すような凸部を有する段差構造が表面に形成された水晶基板11が完成する。
【0055】
しかしながら、このような方法で水晶基板中に相転移型双晶を形成する場合には、各水晶基板毎に、前記のような工程で段差構造を形成しなければならない。これに対し、図1に示す実施の形態において、例えば上部押圧プレートの表面を平面とせず、この部分に周期的な凸部を有する段差構造を形成して、表面が平面に研磨された水晶基板を加熱、押圧して、それにより水晶基板中に相転移型双晶を形成するようにしてもよい。これにより、各水晶基板毎に段差加工を行う工程を省略することができる。
・・・(後略)」
「【図1】
[図:0001427527000002.jpg]
」
b 引用文献1の記載から当業者が把握できる事項
(a) 【0055】に記載された水晶基板中に相転移型双晶を形成した水晶基板について、引用文献1には、当該水晶基板の具体的な用途は記載されていないが、当業者は、当該水晶基板が、【0001】に記載の従来技術と同様の用途を想定したものであることを把握することができる。してみると、当業者は、【0055】の水晶基板を用いた、水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた擬似位相整合波長変換光学素子(【0001】)を把握することができる。
(b) 当業者は、実施の形態の1例についての記載である【0055】の記載は、【0039】~【0040】の第4の手段に対応していることを把握することができる。そして、【0040】の「押圧部材の凸部に当接して加圧される部分が相転移を起こし、相転移型双晶が形成される」との記載をみれば、「水晶基板の片面の表面上に周期的な段差構造を作製」した従来技術についての記載である【0005】の「凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転する。この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができる。すなわち、凸部のみに応力が集中してそこから双晶が発生し、次第に内部へと成長し、アスペクト比の大きい双晶構造が作製される。」との記載は、【0055】の水晶基板においても妥当する記載であることを把握できる。したがって、当業者は、【0055】の水晶基板は、押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ、すなわち、凸部のみに応力が集中してそこから双晶が発生し、次第に内部へと成長し、アスペクト比の大きい双晶構造が作製されたものである(【0005】・【0040】)ことを把握することができる。
c 引用発明の認定
前記aの引用文献1に記載された事項及び前記bの引用文献1の記載から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献1には、図1に示す実施の形態の1例において、【0055】に記載のように相転移型双晶形成した水晶基板を用いた擬似位相整合波長変換光学素子に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同様。)。
<引用発明>
「水晶基板を用いた、水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた擬似位相整合波長変換光学素子であって、(前記b(a))
ホットプレス法により水晶中に相転移型双晶を形成するために用いられる押圧装置は、加熱ブロックを有し、当該加熱ブロックに、当該加熱ブロックとは別の材料で構成された押圧部材が取り付けられている押圧装置であり、(【0034】)
前記押圧部材のうちの一つの押圧部材の表面のうち、前記水晶の、相転移を起こさせたい部分に当接する部分が、他の部分より凸状となるように加工されており、(【0039】)
押圧部材側に凸部が設けられているので、水晶基板については表面を研磨するだけでよく、段差構造を設けなくても、押圧部材の凸部に当接して加圧される部分が相転移を起こし、相転移型双晶が形成され、よって、各水晶基板について、フォトリソグラフィとウエットエッチングにより段差構造を形成する工程が不要となり、(【0040】)
水晶基板11は、上部ブロック12と下部ブロック13の間に挟まれた状態で加熱され、さらに押圧されて応力を加えられ、上部ブロック12は、上部ヒータブロック14と上部押圧プレート15から構成されており、(【0046】)
上部押圧プレートの表面を平面とせず、この部分に周期的な凸部を有する段差構造を形成して、表面が平面に研磨された水晶基板を加熱、押圧して、それにより水晶基板中に相転移型双晶を形成するようにし、これにより、各水晶基板毎に段差加工を行う工程を省略することができ、(【0055】)
水晶基板は、押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ、すなわち、凸部のみに応力が集中してそこから双晶が発生し、次第に内部へと成長し、アスペクト比の大きい双晶構造が作製されたものである、(前記(b(b))
擬似位相整合波長変換光学素子」
(イ) 引用文献2に記載された事項及び技術常識の認定
a 引用文献2に記載された事項
本審決で新たに引用され、本願の出願前に発行された原田 昌樹 他、真空紫外発生をめざす水晶波長変換デバイス、光学、応用物理学会、2007年5月、36巻、5号、253~258頁(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「疑似位相整合(QPM:quasi phase matching)は、周期的な非線形光学定数dの変調構造を要求するものの、透明領域内すべての波長で位相整合が可能で、ウォークオフのない波長変換を実現できる。」(254頁左欄23~26行)
「QPM水晶波長変換デバイスに要求される1次の周期Λ(1)は、入射波波長λF、入射波に対する屈折率nF、第二高調波に対する屈折率nSHを用いてΛ(1)=λF/2(nSH-nF)と表される。」(255頁左欄24~27行)
b 技術常識の認定
前記aの引用文献2に記載された事項によれば、次に示す技術は、本願の出願前の技術常識であると認められる。
<技術常識>
「疑似位相整合水晶波長変換デバイスに要求される1次の周期Λ(1)は、入射波波長λF、入射波に対する屈折率nF、第二高調波に対する屈折率nSHを用いてΛ(1)=λF/2(nSH-nF)と表されること」
ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 本件補正発明の「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子であって、」及び「水晶素子。」との特定事項について
(a) 引用発明の「擬似位相整合波長変換光学素子」は、「水晶基板を用いた、水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込[んだ]」ものであるから、本件補正発明の「水晶素子」に相当する。
(b) 引用発明の「擬似位相整合波長変換光学素子」が用いる「水晶基板11」は、「上部ブロック12と下部ブロック13の間に挟まれた状態で加熱され、さらに押圧されて応力を加えられ[た]」ものであって、「表面が平面に研磨された水晶基板を加熱、押圧して、それにより水晶基板中に相転移型双晶を形成するようにし[た]」ものであるところ、その上部ブロック側の表面が、本件補正発明の「主面」に相当し、その下部ブロック側の表面が、本件補正発明の「裏面」に相当する。
(c) 引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであり、「水晶基板は、押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるところ、引用発明の「結晶軸反転部分」は、「周期的な分極反転構造」をなすものであるから、本件補正発明の「複数の極性反転領域」に相当する。また、当該「周期的な分極反転構造」をなす当該「結晶軸反転部分」の間には、結晶軸非反転部分が存在することが理解でき、当該結晶軸非反転部分は、本件補正発明の「極性非反転領域」に相当する。
(d) 引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであり、「水晶基板は、押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるところ、「上部押圧プレートの表面を平面とせず、この部分に周期的な凸部を有する段差構造を形成し[た]」ものであるから、その上部ブロック側の表面には、「結晶軸反転部分」と結晶軸非反転部分(前記(c)参照。)が存在することが理解できる。したがって、引用発明の上部ブロック側の表面は、本件補正発明でいう「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる」ものであるといえる。
(e) 引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるところ、その結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは明らかではないが、引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであることからみて、その下部ブロック側の表面には、少なくとも結晶軸非反転部分(前記(c)参照。)が存在することが理解できる。したがって、引用発明の下部ブロック側の表面は、本件補正発明でいう「前記極性非反転領域が設けられる」ものであるといえる。
(f) 前記(a)~(e)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子」である点で一致する。
b 本件補正発明の「前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面であり、」との特定事項について
(a) 引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであって、「水晶基板は、押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるから、前記a(c)も踏まえると、引用発明の「結晶軸反転部分」は、本件補正発明でいう「前記極性非反転領域を介して互いに離間[する]」ものであるといえる。
(b) 引用発明は、「押圧部材側に凸部が設けられているので、水晶基板については表面を研磨するだけでよく、段差構造を設けなくても、押圧部材の凸部に当接して加圧される部分が相転移を起こし、相転移型双晶が形成され、よって、各水晶基板について、フォトリソグラフィとウエットエッチングにより段差構造を形成する工程が不要とな[る]」ものであるから、その表面は研磨され、段差構造が設けられていないことが理解できる。したがって、引用発明の上部ブロック側の表面は、本件補正発明でいう「平面であ[る]」といえる。
(c) 前記(a)~(b)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面であ[る]」点で一致する。
c 本件補正発明の「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間しており、」との特定事項について
(a) 引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるところ、前記a(e)でも説示したように、その結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは明らかではない。
(b) したがって、前記複数の極性反転領域について、本件補正発明は、「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間して[いる]」のに対して、引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるが、その結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは明らかではない点で相違する。
d 本件補正発明の「前記複数の極性反転領域は、式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」(ただし、λは基本波光の波長であり、Nwは入力光の屈折率であり、N2wは波長変換光の屈折率である)にて導出される所定位置に配列される、」との特定事項について
(a) 引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであるが、双晶構造の具体的な周期は不明である。
(b) したがって、前記複数の極性反転領域について、本件補正発明は、「式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」(ただし、λは基本波光の波長であり、Nwは入力光の屈折率であり、N2wは波長変換光の屈折率である)にて導出される所定位置に配列される」のに対して、引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであるが、双晶構造の具体的な周期は不明である点で相違する。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点1>
「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子であって、
前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面である、
水晶素子」である点。
<相違点1>
前記複数の極性反転領域について、本件補正発明は、「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間して[いる]」のに対して、引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるが、その結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは明らかではない点。
<相違点2>
前記複数の極性反転領域について、本件補正発明は、「式「Λ=(λ/2)/(N2w-Nw)」(ただし、λは基本波光の波長であり、Nwは入力光の屈折率であり、N2wは波長変換光の屈折率である)にて導出される所定位置に配列される」のに対して、引用発明は、「水晶(SiO2)に、周期的な双晶構造を作り込み、周期的な分極反転構造を実現させた」ものであるが、双晶構造の具体的な周期は不明である点。
エ 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播」するものであることから、当業者は、結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかを検討する契機をもつといえる。しかるに、結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは、擬似位相整合波長変換光学素子として機能するのに必要かつ十分な程度、換言すれば、波長変換される光の光路として必要な程度に押圧部材の凸部にあたる部分から結晶の内部まで結晶軸反転部分を形成する必要があり、それで足りることを当業者は当然に認識できる。
そして、引用発明を開示する引用文献1には、従来技術として、「水晶基板52の厚みは、バルクの光学素子として利用できるように、0.1mm~数mm程度とされている」(【0015】)と記載されており、この水晶基板の厚みを考慮すると、数mmといった比較的厚い水晶基板を用いる場合には、結晶軸反転部分が、押圧部材の凸部にあたる部分から、下部ブロック側の表面まで伝播することは要しないことを当業者は理解できる。また、このように水晶基板の結晶軸反転部分がその基端側の面から裏面まで到達することは必ずしも要しないことは、本願の明細書【0003】で従来技術文献として挙げられている特許第4666449号公報にも以下のとおり明記されていることからみて、技術常識であるとも認められる。
「【0023】
なお、図3(c)の図では、Y軸方向に延びるツインが水晶基板30の下面(段差構造31と反対側の面)まで貫通している状態を示したが、図5に示すように、ツインを下面まで貫通させずに、途中まで成長させた状態でも良い。ツインはY軸方向に成長した後にZ方向に成長するため、下面まで貫通させない方がツイン制御をし易くなる。ツインの長さは、T1,T2の温度条件によってコントロールすることができる。ツインの長さを短くする場合は、T2を200℃より低くし、ΔTを175℃より大きくする。ツインを下面まで貫通させずに得たQPM水晶10の使用に当たっては、ツインが形成されている領域に基本波光を通過させれば良い。」
「【図5】
[図:0001427527000003.jpg]
」
したがって、引用発明において、水晶基板の厚さや波長変換される光の径などに応じて、結晶軸反転部分が、押圧部材の凸部にあたる部分から、下部ブロック側の表面まで伝播することがない程度に結晶内部まで伝播させること、すなわち、相違点1に係る本件補正発明でいう「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間して[いる]」構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(イ) 相違点2について
当業者は、引用発明の「擬似位相整合波長変換光学素子」がその機能を適切に発揮できるよう、「周期的な双晶構造」及び「周期的な分極反転構造」の周期を決定する必要があるところ、前記イ(イ)bで認定したとおり、「疑似位相整合水晶波長変換デバイスに要求される1次の周期Λ(1)は、入射波波長λF、入射波に対する屈折率nF、第二高調波に対する屈折率nSHを用いてΛ(1)=λF/2(nSH-nF)と表されること」は技術常識である。
したがって、引用発明において、当業者が「周期的な双晶構造」及び「周期的な分極反転構造」の周期を、前記技術常識に従い「入射波波長λF、入射波に対する屈折率nF、第二高調波に対する屈折率nSHを用いてΛ(1)=λF/2(nSH-nF)と表される」1次の周期Λ(1)とすることにより、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることには、何らの困難性もない。
オ 総合検討
相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明に基づいて当業者にとって予測可能なものであり、格別顕著な効果であるともいえない。
カ 請求人の主張について
請求人は、引用文献1には、複数の極性反転領域の間隔が、入射される光の波長や屈折率に応じて定められる旨については何らの記載も示唆もされておらず、このため、相違点2に係る本件補正発明の構成は記載も示唆もされておらず、引用発明1を知見した当業者が、相違点2を解消する設計変更を実施することは困難である旨を主張している。
しかしながら、前記エ(イ)で説示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
キ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、同法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ
前記(2)で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正で特許請求の範囲についてする補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2(進歩性)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性) 本願発明は、その出願に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2004-107187号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イ(ア)において示したとおりである。
4 対比
前記第2の2(2)ウの本件補正発明と引用発明の対比と同様にして本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点2>
「複数の極性反転領域と、極性非反転領域とが設けられる主面、及び、前記極性非反転領域が設けられる裏面を有する水晶素子であって、
前記複数の極性反転領域は、前記極性非反転領域を介して互いに離間し、前記主面は、平面である、
水晶素子」である点。
である点。
<相違点3>
前記複数の極性反転領域について、本願発明は、「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間している」のに対して、引用発明は、「押圧部材の凸部にあたる部分にのみ応力が作用するので、この部分でのみ結晶軸成分が反転し、この結晶軸反転部分が結晶内部まで成長して結晶内部まで伝播し、深さ方向に大きく入った周期的な双晶の格子を作製することができ[る]」ものであるが、その結晶軸反転部分が押圧部材の凸部にあたる部分から結晶内部のどこまで伝播するのかは明らかではない点。
5 判断
前記相違点3について検討すると、前記第2の2(2)エ(ア)で検討したとおり、引用発明において、水晶基板の厚さや波長変換される光の径などに応じて、結晶軸反転部分が、押圧部材の凸部にあたる部分から、下部ブロック側の表面まで伝播することがない程度に結晶内部まで伝播させること、すなわち、相違点3に係る本願発明でいう「前記複数の極性反転領域の全ては、前記裏面に対して離間して[いる]」構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
6 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び必要に応じて技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005915