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特許拒絶査定不服審判

2023-014624

液晶デバイス、及び、液晶デバイスの製造方法

審判番号
2023-014624
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-172971
請求日
2023年08月30日
審決日
2024年09月12日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社JVCケンウッド
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-Z (G02F) / P18 .575-Z (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-172971号「液晶デバイス、及び、液晶デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月1日出願公開、特開2021-51146号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年9月24日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和2年 7月 2日 :手続補正書、上申書の提出 令和5年 2月13日付け:拒絶理由通知書 同年 3月27日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 同年 8月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年8月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年8月30日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和5年8月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものであって、本件補正前(令和5年3月27日にされた手続補正後をいう。)の特許請求の範囲の請求項1及びそれに対応する本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 プレートと、 前記プレート上に、互いに間隔を空けて形成された複数の放熱ゲルと、 前記プレート上に、複数の放熱ゲルを介して配置され、シリコン基板、ガラス基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子と、 を備え、 前記複数の放熱ゲルは、マトリックス状に形成される、 液晶デバイス。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 プレートと、 前記プレート上に、互いに間隔を空けて形成された複数の放熱ゲルと、 前記プレート上に、複数の放熱ゲルを介して配置され、シリコン基板、ガラ基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子と、 を備え、 前記複数の放熱ゲルは、マトリックス状、かつ、円形状に形成される、 液晶デバイス。」 2 本件補正の適否についての当審の判断 (1) 本件補正の目的について 本件補正は、本件補正前の請求項1における「複数の放熱ゲル」について、「円形状」に形成されると限定する事項を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正のうち、請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 (2) 独立特許要件について 本件補正のうち、請求項1についてする補正は、前記(1)のとおり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 ア 本件補正発明 本件補正後の請求項1の「ガラ基板」という記載は、同請求項3の「ガラス基板」との記載や、明細書【0013】の「液晶表示素子11は、例えば、駆動基板であるシリコン基板と、対向基板であるガラス基板と、それらの間に封入された液晶と、によって構成されている。」との記載から見て、「ガラス基板」の誤記であることが明らかであるから、本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項における「ガラ基板」を「ガラス基板」と読み替えた事項により特定されるとおりのものと認める。 イ 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項及び引用発明 a 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2002-296568号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当合議体が付したものである。以下同じ。)。 (a)特許請求の範囲の記載 「【請求項1】シリコンウエハー基板と透明基板と前記両基板間に封止された液晶層からなる反射型液晶表示セルと前記反射型液晶表示セルを冷却及び固定するプレートとからなる反射型液晶表示素子であって、 前記冷却及び固定のためのプレートと前記反射型液晶表示セルとの隙間が、50μm~500μmで、かつ、0.5W/m・k以上の熱伝導率を有するシリコーンゲル剤及び50μm~500μmの厚さの接着剤によってそれぞれ固着されていることを特徴とする反射型液晶表示素子。」 (b)発明の詳細な説明の記載 「【0019】図1は、本実施例に係る反射型液晶表示素子の主要部である反射型液晶表示セルの一実施例の分解斜視図、図2は、図1の構成説明図、図3は、本発明に係る反射型液晶表示素子の説明図、図4は、本発明に係る反射型液晶表示素子の構成部分であるプレートの説明図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図、図5は、本発明に係る反射型液晶表示素子の製造方法を示す工程図である。 【0020】図1に示すように、本実施例になる反射型液晶表示セル10は、透明電極1と反射防止膜8が施された透明基板2と、画素電極3や図示していない駆動用CMOSトランジスター等が半導体プロセスによって施されているシリコンウエハー(IC)基板4とが貼合わされた構造になっている。 【0021】図2は、図1の反射型液晶表示セル10の完成状態を示す構成説明図である。前記した2枚の基板2,4の間には液晶層5が設けられ、この2枚の基板2,4は、液晶層5のセルギャップを決めるスペーサ6を混入したシール接着剤7で固着されている。液晶層5の2枚の基板2,4との接触面には、図示していない配向膜が施されている。この実施例の場合は、透明基板2としてコーニング社製#1737ガラス基板を用い、透明電極1は、ITO(Indium Tin Oxide)膜、配向膜としては、酸化珪素膜を施したものである。 【0022】また液晶層5を構成する液晶としては、n型のネマチック液晶を用いた。シール接着剤7としては、協立化学産業(株)製WRシリーズメインシール剤にヤクシ化成(株)製SW-3.2D1スペーサボールを混入して紫外線照射及び加熱によって固着した。このようにして作製した反射型液晶表示セル10を動作時に冷却する方法として、図3及び図4に示す構造を採用した。 【0023】すなわち、図3及び図4において、冷却フィン11a~11nを有するプレート11上に、シリコーンゲル剤12を塗付し、かつ、前記反射型液晶表示セル10のガラス基板2とプレート11との接触面には、UV接着剤13を塗布する。シリコーンゲル剤12及びUV接着剤13の硬化後の厚さは、50μm~500μmであり、好ましくは50μm~300μmである。 【0024】シリコーンゲル剤12の熱伝導率は、0.5W/m・k以上が好ましく、GE東芝シリコーン(株)製の高熱伝導性シリコーンゲルや東レダウコーニングシリコーン(株)製の放熱用シリコーンゲルSEシリーズが好適である。ここでは、0.6W/m・kの熱伝導率を有するGE東芝シリコーン(株)製の高熱伝導性シリコーンゲルTSEシリーズを用いた。 【0025】UV接着剤13は、製造時に前記シリコーンゲル剤12が硬化するまでの間、前記反射型液晶表示セル10とプレート11との間の位置決めを保持するものであるため、位置決めを保持し、かつ、前記反射型液晶表示セル10に機械的応力を付与しない、比較的弾性を有する材料であれば、UV接着剤13に限定するものではない。ここでは、ケミテック(株)製の紫外線硬化性樹脂ケミシールを用いた。 【0026】プレート11としては、シリコーンゲル剤12を介して前記反射型液晶表示セル10の熱量を放熱するものであることから、シリコーンゲル剤12より高い熱伝導率を有する材料が望ましい。ここでは、アルミニウム材を用いた。アルミニウムの熱伝導率は約238W/m・kであるため、充分な放熱効果が得られるものである。なお、14は、窓材(アパーチャ)である。」 (c)図面 「 [図:0001417292000001.jpg] 」 「 [図:0001417292000002.jpg] 」 「 [図:0001417292000003.jpg] 」 b 引用発明の認定 前記aに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、請求項1に係る反射型液晶表示素子であって、【0026】に記載のプレートがシリコーンゲル剤12を介して前記反射型液晶表示セル10の熱量を放熱するものについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、認定の根拠となる段落を参考までに括弧内に付してある。)。 <引用発明> 「シリコンウエハー基板と透明基板と前記両基板間に封止された液晶層からなる反射型液晶表示セルと前記反射型液晶表示セルを冷却及び固定するプレートとからなる反射型液晶表示素子であって、 前記冷却及び固定のためのプレートと前記反射型液晶表示セルとの隙間が、50μm~500μmで、かつ、0.5W/m・k以上の熱伝導率を有するシリコーンゲル剤及び50μm~500μmの厚さの接着剤によってそれぞれ固着されており、(【請求項1】) 前記プレートは、前記シリコーンゲル剤を介して前記反射型液晶表示セルの熱量を放熱する、(【0026】) 反射型液晶表示素子。」 (イ) 引用文献3、7~9に記載された事項及び周知の技術的手段の認定 a 引用文献3に記載された事項 原査定で引用された特開2004-333904号公報(以下、原査定に倣い「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのように画像を表示する際に、表示パネルが発熱する表示装置に関するものである。」 「【0018】 【課題を解決するための手段】 第1の発明に係る表示装置は、ディスプレイパネルとこのパネルディスプレイが熱伝導部材を介在させて保持される保持板とを備え、熱伝導部材は、接着剤材料により構成し、かつその熱伝導部材は、複数のライン状に構成されるものである。」 「【0020】 また、ライン状に構成するので、塗布された接着剤材料の接着部分での空気をライン間の隙間に追いやることが出来るので、熱伝導部材とディスプレイパネルや保持板の間に気泡が入りにくく塗布面積中での接触面積を容易に増加させることが出来る。すなわち材料の利用効率を大幅に向上することが出来る。」 「【0063】 図5に示すように、本実施の形態と(実施の形態2)の異なる点は、本実施の形態においては、熱伝導部材2が上部と下部でそれぞれライン状に構成され、上下に分けられて塗布されている点である。 【0064】 本実施の形態によれば、(実施の形態2)の構成に比較して、ライン状に塗布された熱伝導部材2の長さが半分になっている。 【0065】 このようにすれば、(実施の形態2)の構成よりも、引っ張ることによって、接合部分が順に離れていく部分の距離を半分に出来るので、より簡単に、引き剥がすことが出来る。」 「【図5】 [図:0001417292000004.jpg] 」 b 引用文献7に記載された事項 原査定で引用された特開2007-171224号公報(以下、原査定に倣い「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、対向する基板間に自発光型の画素が配置された平面型のディスプレイパネルを用いた平面型表示装置に関する。」 「【0002】 自発光型の平面型ディスプレイパネルとしては、例えばプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と省略する)、電子放出素子型ディスプレイパネル、有機ELパネルなどがある。この他にも例えばLED素子を2次元状に配設したLEDディスプレイパネルなどもある。【0003】 これらの自発光型のディスプレイパネルは発熱するため、その熱を効率的に放熱する必要が生じる。特にPDPは発熱が大きいため、PDPを用いた表示装置では、一般に、PDPの背面側に金属性のシャーシ部材(通常金属としてはアルミ)を設け、PDPとシャーシ部材とを接着力(粘着力)を有する結合部材(熱伝導性部材)で結合している。そして、PDPで生じた熱をシャーシ部材に伝導させ、例えばファンなどを用いて装置外に放熱している。【0004】 ところで、上記熱伝導性部材には、通常、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの樹脂組成物をシート状またはテープ状に成形したものを用い、表示パネルであるPDPとシャーシ部材とを貼り合せている。この際、熱伝導性部材とPDPとの間に、あるいは熱伝導性部材とシャーシ部材との間に気泡がいり、熱伝導性部材とPDPまたは熱伝導性部材とシャーシ部材との密着性が低下し、熱伝導性が低下する。そこで、接着の際に気泡が生じないように空気を逃がす複数の溝を備えた熱伝導シートが例えば特許文献1で提案されている。 【0005】 また、上記した気泡の入り込みを低減するとともに、熱伝導性部材の使用量を抑えてコスト低減を図るために、さらに接着面積を抑えてリサイクル性を高めるために、熱伝導性部材を所定の間隔をあけてストライプ状の短冊形状に設けた平面型表示装置が例えば特許文献2に記載されている。」 「【0055】 図7は、実施例2によるPDPの背面側に塗布された熱伝導性部材を熱伝導性部材側から見た図である。 【0056】 同図において、熱伝導性部材8は、PDPの長辺方向(画面水平方向)に所定の間隔Wで、PDPの短辺(画面垂直方向)に平行なストライプ状の矩形状(以下、「短冊形状」と称する)に塗布されている。但し、本実施例では、実施例1とは異なり、短辺方向(画面垂直方向)にも輝度ムラが生じない所定の間隔WV(例えば塗布厚さ0.5mmの場合WV=10mm以下)で離散的に塗布されている。以下、離散的に塗布されたそれぞれを熱伝導部81と称する。 【0057】 本実施例によれば、熱伝導部81が長辺方向のみならず短辺方向にも所定の間隔で塗布されているので、さらに熱伝導性部材の使用量を低減でき、コストダウンを図ることができる。」 「 [図:0001417292000005.jpg] 」 c 引用文献8に記載された事項 本審決において新たに引用する特開2017-218556号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば電子機器をはじめとする様々な物品の製造場面で使用可能な粘着テープに関する。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明者は、被着体と粘着剤層との界面から気泡が抜けやすい粘着テープとして、支持体の表面にドット状に粘着部を設けた粘着テープを検討した。 【0009】 しかし、ドット形状の粘着部を備えた粘着テープは、支持体の全面に粘着剤層を有する粘着テープと比較して、接着力が低い場合があった。また、前記接着力を高めるために、支持体の単位面積あたりの前記粘着部の数を増加させようとすると、粘着部同士が接触してしまい、その結果、気泡の抜けやすさの著しい低下を引き起こす場合があった。 【0010】 本発明が解決しようとする課題は、粘着テープと被着体との界面から速やかに気泡が抜けるためその界面に気泡が残存することを防止することができ、かつ、非常に優れた接着力を有する粘着テープを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者等は、支持体の少なくとも一方の面側に2個以上の粘着部を有する粘着テープであって、前記粘着部のうち、任意の1個の粘着部(b1)と前記支持体との接触面積(s1)に対する、前記粘着部(b1)とその表面に貼付される剥離ライナーとの接触面積(s2)の割合[接触面積(s2)/接触面積(s1)]×100が95%超え120%以下であることを特徴とする粘着テープによって前記課題を解決した。 「【発明の効果】 【0012】 本発明の粘着テープは、粘着テープと被着体との界面から速やかに気泡が抜けるためその界面に気泡が残存しにくく、非常に優れた接着力を有することから、例えば携帯電子端末をはじめとする各種電子機器を構成するきょう体同士の固定や、グラファイトシート等の放熱部材と、充電池等の発熱部材との接着に好適に使用することができる。」 【0034】 また、前記粘着テープとしては、2個以上の粘着部を有するものを使用できるが、貼付の際に被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、良好な接着力を保持でき、かつ、グラファイトシート等の被着体がより一層薄型化された場合であっても、粘着部の形状に起因した外観不良を効果的に防止する観点から、粘着テープの所定面積(流れ方向1cm及び幅方向1cmの正方形)の範囲に、120個~2000個の粘着部を有するものを使用することが好ましく、280個~1600個の粘着部を有するものを使用することがより好ましく、520個~1200個の粘着部を有するものを使用することがさらに好ましい。なお、上記粘着部の数は、粘着テープの任意の範囲(流れ方向1cm及び幅方向1cmの正方形)を電子顕微鏡で観察し数えることによって求めることができる。 【0035】 前記粘着部の形状は、本発明の粘着テープを、前記支持体の一方の面側から観察した際に、略円形状、略ひし形状または略六角形状等であることが好ましく、略円形状であることが、貼付の際に被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、良好な接着力を保持でき、かつ、グラファイトシート等の被着体がより一層薄型化された場合であっても、粘着部の形状に起因した外観不良を効果的に防止するうえでより好ましい。 【0036】 ここで、前記略円形状とは、円形状の粘着部の表面に剥離ライナー等が貼付された際、または、粘着テープがロールに巻かれた際に、前記粘着部が押圧され、円形状の一部が伸長等されることによって形成されうるだ円形状や部分的に歪んだ円形状、前記剥離ライナー等を除去した際に円形状の一部が糸引き等されることによって形成されうる形状等を含むことを示す。前記だ円形状としては、例えばその長径と短径の比[長径/短径]が10以下であるものが挙げられる。」 「【図1】 [図:0001417292000006.jpg] 「 [図:0001417292000007.jpg] 」 d 引用文献9に記載された事項 本審決において新たに引用する国際公開第2016/163537号(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明はグラファイト複合フィルム及びその製造方法並びに放熱部品に関する。 [0002] グラファイトフィルムは、優れた放熱特性を有していることから、コンピュータなどの各種電子機器又は電気機器に搭載されている半導体素子、他の発熱部品などに放熱部品として用いられる。 [0003] かかる放熱部品では、グラファイトフィルムの優れた熱伝導性を発揮させるために、グラファイトフィルムをエポキシ樹脂又はアクリル樹脂のような接着剤又は粘着剤を用いて発熱部品の筐体と接合させることが行われている。かかる放熱部品における、グラファイトフィルムと発熱部品との接触部の熱抵抗を小さくし、グラファイトフィルムの放熱効果を向上させることを目的として、グラファイト層の表面に粘着剤を点状に塗布したグラファイト複合フィルムを用いることが開示されている(特許文献1)。 [0004] 日本国公開特許公報「特開2002-319653号公報(2002年10月31日公開)」 [0005] しかしながら、上記特許文献1に記載の技術でも、グラファイトフィルムによる放熱性が未だ十分ではない。その理由としては、粘着剤が点状に塗布されていることにより、グラファイト複合フィルムと被着体(発熱部品)との密着性が悪くなり、それによってグラファイト複合フィルムから被着体への熱移動が悪くなって、放熱性が損なわれていると考えられる。一方、粘着剤が全面に塗布されている一般的なグラファイト複合フィルムは、グラファイト複合フィルムと被着体(発熱部品)との密着性が良いので放熱性に優れるが、発熱部品に接合させたときに、空気を巻き込み被着体とグラファイト複合フィルムとの間に気泡が発生するという問題がある。特に、近年の電子機器の熱問題が深刻化する中、電子機器内で使用されるグラファイト複合フィルムのサイズは大型化しており、このような大サイズのシートの貼り付けにおいて、気泡発生の問題が顕在化してきている。 [0006] 気泡が発生することで、(i)見た目が悪くなる、(ii)気泡による凹凸で他部品への物理的な障害が発生する、(iii)被着体との密着性が悪くなる、(iv)被着体への熱移動がスムーズでなくなるなどの問題が生じる。 [0007] 本発明は、放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせたときの被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生が低減されたグラファイト複合フィルム及びその製造方法並びにそのようなグラファイト複合フィルムを利用した放熱部品を提供することを目的とする。 [0008] 本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有するグラファイト複合フィルムにおいて、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合を35%以上100%以下とし、グラファイトフィルムと接した面と反対側の粘着層の表面に凹凸構造を形成することにより、放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。」 「[0029] <独立した複数の島状突起> 図1に前記凹凸構造の具体例を示す。図1中(a)は、独立した複数の島状突起を上から見た平面図である。図中、ハッチング部分が島状突起である。ここで、島状突起の形状は、図では円形であるが、円形に限定されるものではなくどのような形状であってもよく、例えば、楕円形、多角形、棒状、帯状、不定形等であってもよい。多角形には、三角形、正方形・長方形・ひし形等の四角形、五角形、六角形等が含まれる。 [0030] 図1の(a)に示す島状突起を破線Aで切断した断面図は、図9の(a)のような構成であってもよいし、図9の(b)のような構成であってもよい。すなわち、凹部の底面部分には、粘着剤が存在していても存在していなくてもよい。或いは、前記断面図は、図9の(a)の構成と(b)の構成とが混在したものであってもよい。これらの例では、島状突起が前記凹凸構造の凸部であり、島状突起以外の部分が前記凹凸構造の凹部である。 [0031] 図9の(a)は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、35%以上100%未満である一例である。図9の(a)に示すように、この例では、グラファイトフィルム41が粘着剤42により覆われず露出している部分が存在する。図9の(a)の例では、グラファイトフィルム41が粘着剤42により覆われず露出している部分が凹部の底面39に該当する。かかる構成では、島状突起の高さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みと同じであり、粘着層の凹部に接着剤が存在しないで、グラファイトフィルム41(後述する三層構造を有する粘着層では三層構造の基材)が露出している。この場合、粘着層は、グラファイトフィルム41上に配置された複数の粘着部を含み、粘着層の表面の凹凸構造は、凸部が前記粘着部からなり、凹部には接着剤が存在せずグラファイトフィルム41が露出していると言うこともできる。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるため好ましい。」 「 [図:0001417292000008.jpg] 」 「 [図:0001417292000009.jpg] 」 e 周知の技術的手段の認定 (a)前記aないしdから、発熱部材と放熱部材の間に設けられる熱伝導部材を、空気を逃がすために間隔を空けて離散的に設けることは周知の技術的手段であったといえる。 (b)また、前記(a)のように発熱部材と放熱部材の間に設けられる熱伝導部材を、空気を逃がすために間隔を空けて離散的に設けるに際して、熱伝導部材を行列状に設けることも、前記a(図5)、前記b(図7)に見られるように周知の技術的手段であったといえる。 (c)さらに、前記(a)のように発熱部材と放熱部材の間に設けられる熱伝導部材を、空気を逃がすために間隔を空けて離散的に設けるに際して、熱伝導部材を円形状とすることも、前記c(図1)、前記d(図1)に見られるように周知の技術的手段であったといえる。 ウ 対比 (ア) 対比分析 a 本件補正発明の「プレートと、」「を備え」との発明特定事項について 引用発明の「プレート」は、本件補正発明の「プレート」に相当する。 したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。 b 本件補正発明の「前記プレート上に、互いに間隔を空けて形成された複数の放熱ゲルと、」「を備え」との発明特定事項について 引用発明の「プレート」は、「シリコーンゲル剤を介して反射型液晶表示セルの熱量を放熱する」ものであり、当該「シリコーンゲル剤」も「反射型液晶表示セルの熱量を放熱する」ためのものであるということができるから、引用発明の「シリコーンゲル剤」は、本件補正発明の「放熱ゲル」に相当する。 また、引用発明の「シリコーンゲル剤」は、「前記冷却及び固定のためのプレートと前記反射型液晶表示セルとの隙間」を固着するものであるから、プレート上に形成されたものであるといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記プレート上に、」「形成された」「放熱ゲルと、」「を備え[る]」点で共通する。 c 本件補正発明の「前記プレート上に、複数の放熱ゲルを介して配置され、シリコン基板、ガラス基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子と、を備え」との発明特定事項について (a) 引用発明の「シリコンウエハー基板」、「透明基板」、「前記両基板間に封止された液晶層」及び「反射型液晶表示セル」は、本件補正発明の「シリコン基板」、「ガラス基板」、「それらの間に封入された液晶」及び「液晶表示素子」にそれぞれ相当する。 したがって、引用発明の「シリコンウエハー基板と透明基板と前記両基板間に封止された液晶層からなる反射型液晶表示セル」は、本件補正発明の「シリコン基板、ガラス基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子」に相当する。 (b) 引用発明の「反射型液晶表示素子」は、「プレートと前記反射型液晶表示セルとの隙間」の「シリコーンゲル剤」及び「接着剤によって」「固着されている」から、プレート上にシリコーンゲル剤及び接着剤を介して配置されるものであるといえる。 (c)以上によれば、本件補正発明と引用発明は、「前記プレート上に、」「放熱ゲルを介して配置され、シリコン基板、ガラス基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子と、を備え[る]」点で共通する。 d 本件補正発明の「液晶デバイス」との発明特定事項について 引用発明の「反射型液晶表示素子」は、本件補正発明の「液晶デバイス」に相当する。 したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 一致点 「プレートと、 前記プレート上に、形成された放熱ゲルと、 前記プレート上に、放熱ゲルを介して配置され、シリコン基板、ガラス基板、及び、それらの間に封入された液晶によって構成された液晶表示素子と、 を備える、 液晶デバイス。」 b 相違点 放熱ゲルについて、本件補正発明は、「互いに間隔を空けて形成された複数の放熱ゲル」であって、「前記複数の放熱ゲルは、マトリックス状、かつ、円形状に形成される」のに対して、引用発明は、シリコーンゲル剤が互いに間隔を空けて形成され、マトリックス状、かつ円形状に形成される複数のものではない点。 エ 判断 (ア) 相違点についての判断 前記イ(イ)e(a)で示した周知の技術事項からみて、引用発明におけるシリコーンゲル剤のような熱伝導部材を全面に形成すると、空気が残り気泡が生じ得るという課題が生じることは本願出願当時周知の技術的課題であったといえるところ、発熱部材と放熱部材の間に設けられる熱伝導部材を、空気を逃がすために間隔を空けて離散的に設けることは前記イ(イ)e(a)のとおり周知の技術的手段であったから、引用発明のシリコーンゲル剤を形成するに際して、シリコーンゲル剤を全面に形成して空気が残り気泡が生じることがないよう、空気を逃がすためにシリコーンゲル剤を間隔を空けて離散的に設けることは当業者が容易になし得たことである。 そして、シリコーンゲル剤を間隔を空けて離散的に設ける際に、熱伝導部材を行列状に設けること及び熱伝導部材を円形状とすることは、前記イ(イ)e(b)及び(c)で示したように、いずれも周知の技術的手段にすぎないのであって、本願の明細書の記載を参酌しても、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項のようにマトリックス状、かつ、円形状とすることに格別の技術上の意義は認められないことを勘案すると、引用発明において空気を逃がすためにシリコーンゲル剤を間隔を空けて離散的に設けるに際し、熱伝導部材を行列状に設けること及び熱伝導部材を円形状とするとの周知の技術的手段を併せて採用することは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 したがって、引用発明のシリコーンゲル剤を、間隔を空けて行列状に離散的設け、円形状とすること、すなわち、複数のシリコーンゲル剤を互いに間隔を空けて形成された複数とし、マトリックス状、かつ、円形状に形成されるものとすることで、前記相違点に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ)効果について 本件補正発明の効果としては、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び周知の技術的手段に基づいて当業者が予測し得ないものとはいえず、顕著なものともいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術的手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ) 請求人の主張について a 請求人の主張内容 請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張している。 (a)原査定で引用された引用文献3~4、7では、いずれも各熱伝導部材が特定の方向に延在する矩形状に形成されているが、本件補正発明は、各放熱ゲルがいずれの方向にも延在しない円形状に形成されていることにより、より小さい放熱ゲルを形成できる。 (b)原査定で引用された引用文献3~4、7では、いずれも各熱伝導部材が特定の方向に延在する矩形状に形成されているので、各熱伝導性部材の熱膨張による押圧は長辺方向と短辺方向とで異なるが、本件補正発明は、各放熱ゲルがいずれの方向にも延在しない円形状に形成されているので、各放熱ゲルによる押圧はいずれの方向においても差が発生しないから、液晶表示素子11の主面全体を精度よく均一に押圧することができ、空気だまりの不均一な形成を抑制して液晶106の膨張度合いを均一にし、常温時に湾曲形状であったシリコン基板101を液晶表示素子11の駆動時に所望の平坦な形状に変形させることで、液晶表示素子11の位置ズレが抑制して液晶表示素子11によって表示される画像の品質の劣化を防ぐという課題が解決できる。 b 請求人の主張についての検討 請求人の主張は、いずれも放熱ゲルの形状を円形とすることによる効果に関するものであるが、以下で説示するように、当該効果は明細書に記載されたものではなく、明細書の記載から推論できるものでもないか、又は、請求項の記載に基づくものではないから、これを参酌することはできない。 まず、前記a(a)の円形であればより小さい放熱ゲルを形成できる旨の主張については、明細書に記載がなく、また、放熱ゲルが矩形状であるか円形状であるかと、放熱ゲルの大きさは無関係であり、当該主張は明細書の記載から当業者が推論できるものでもないから、これを参酌することはできない。 また、前記a(b)の常温時に湾曲形状であったシリコン基板101を液晶表示素子11の駆動時に所望の平坦な形状に変形させることができる旨の主張については、本件補正発明ではシリコン基板が常温時に湾曲形状であることは特定されておらず、請求項の記載に基づくものではない。また、円形であれば液晶表示素子の主面全体を精度よく均一に押圧することができとの効果についても明細書に記載されたものではなく、明細書の記載から推論できるものでもないから、これを参酌することはできない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 オ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術的手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ 前記(2)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3~4、7に例示される周知の技術的手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2002-2965698号公報 3.特開2004-333904号公報 4.特開2009-75490号公報 7.特開2007-171224号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 引用文献に記載された事項並びに引用発明及び周知の技術的手段の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、複数の放熱ゲルについて、本件補正発明から「かつ、円形状」との限定を除いたものである。 そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明及び周知の技術的手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明及び周知の技術的手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-014624

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