特許拒絶査定不服審判
2023-006360
液晶表示装置、表示方法
- 審判番号
- 2023-006360
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-511621
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2024年06月17日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソニーグループ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 波多江 進
- 審判官 芝沼 隆太
- 分類
- P18 .575-Z (G02F) / P18 .113-Z (G02F) / P18 .121-Z (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-511621「液晶表示装置、表示方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年10月10日国際公開、WO2019/193838〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)2月12日を国際出願日とする日本語特許出願(優先権主張 平成30年4月2日(以下この日付を「優先日」という。))であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和 4年 9月 1日付け:拒絶理由通知書
同年10月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 1月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月24日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年4月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年4月18日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年4月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であって、本件補正前(令和4年10月31日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「 【請求項1】
垂直配向型による液晶パネルと、
厚み方向に屈折率が小さい媒体を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置において、前記液晶パネルに平行な状態に対し傾斜して配置された第一光学補償部と、
少なくとも面内方向に屈折率異方性を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置に配置された第二光学補償部と、を備え、
前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された
液晶表示装置。」
(2) 本件補正後
「 【請求項1】
垂直配向型による液晶パネルと、
厚み方向に屈折率が小さい媒体を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置において、前記液晶パネルに平行な状態に対し傾斜して配置された第一光学補償部と、
少なくとも面内方向に屈折率異方性を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置に配置された第二光学補償部と、を備え、
前記液晶パネルは、面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ、
前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された
液晶表示装置。」
2 本件補正の適否についての当審の判断
(1) 本件補正の目的について
本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液晶パネル」を、「面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ[る]」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(2) 独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2009-25541号公報(以下、原査定に倣って「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。
a 【0001】~【0008】・【0027】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ及びその光学補償方法、並びに液晶装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面表示を可能とした表示装置として、液晶プロジェクタが実用化されている。このようなプロジェクタにおいては、誘電異方性が負の液晶を基板に垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」によって駆動する液晶装置をライトバルブとして備えた構成が提案されている。この種の液晶プロジェクタのコントラストを向上させる技術として、位相差板を液晶ライトバルブに対して傾斜させて配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006-11298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、確かに位相差板を傾斜させないときよりもコントラストが向上するが、液晶プロジェクタに設けられる偏光板や回折素子の組み合わせによっては、十分なコントラストが得られないおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
まず、偏光板では、保護膜としてTAC(トリアセチルセルロース)のフィルムが用いられているが、この保護膜自体が位相差を有しており、この位相差を上記位相差板では補償することができない。
【0006】
また、マイクロレンズアレイ等の回折素子が設けられている場合には、マイクロレンズを透過する位置に依存して光に位相差が生じ、さらに光の拡散が生じるため、液晶のプレチルトに合わせて傾斜角を設定しても補償されない光が含まれることとなり、コントラストが低下してしまう。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば、高コントラストの表示が得られるプロジェクタ及びその光学補償方法、並びに液晶装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロジェクタは上記課題を解決するために、光を出射する光源と、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記光を変調する液晶パネルと、前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置され(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子とを備える。」
「【0027】
この態様によれば、第1板状光学部材の他の表面は、第1板状光学部材の一辺に対して例えば45度の角度をなす方向に沿って傾斜するように形成されている。よって、液晶パネルの配向方向(言い換えれば、液晶分子がプレチルト角だけ傾斜する方位)が、液晶パネルの一辺に対して例えば45度の角度をなす方向とされている場合には、第1板状光学部材及び液晶パネルを、第1板状光学部材の一の表面の一辺と液晶パネルの一辺とが互いに沿うように配置することで、第1光学異方性層の第1光軸と液晶パネルの明視方向(即ち、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子の長軸に沿った方向或いはダイレクタ方向、言い換えれば、プレチルト方向)とを殆ど或いは完全に一致させることが可能となる。」
b 【0049】~【0057】、【図1】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
本実施形態に係るプロジェクタについて、図1から図7を参照して説明する。
【0050】
先ず、本実施形態に係るプロジェクタの全体構成について、図1を参照して説明する。
【0051】
図1は、第1実施形態に係るプロジェクタの概略構成図である。尚、本実施形態では、3つの液晶ライトバルブが設けられた3板式のプロジェクタについて説明するが、プロジェクタに設けられる液晶ライトバルブの数は3つに限られず、2つや4つ以上であってもよい。
【0052】
図1において、プロジェクタ10は、前方に設けられたスクリーン11に映像を投射する前方投影型のプロジェクタである。プロジェクタ10は、光源12と、ダイクロイックミラー13及び14と、本発明に係る「液晶装置」の一例としての液晶ライトバルブ15、16及び17と、投射光学系18と、クロスダイクロイックプリズム19と、リレー系20とを備えている。
…(中略)…
【0054】
液晶ライトバルブ15は、ダイクロイックミラー13を透過して反射ミラー23で反射した赤色光LRを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ15は、液晶パネル15c、光学補償素子15a、偏光板15b及び15dを備えている。
【0055】
ここで、液晶ライトバルブ15に入射した赤色光LRは、偏光板15bを透過して例えばs偏光に変換される。液晶パネル15cは、入射したs偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する。更に、偏光板15dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ15は、画像信号に応じて赤色光LRを変調し、変調した赤色光LRをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する構成となっている。
【0056】
液晶ライトバルブ16は、ダイクロイックミラー13で反射した後にダイクロイックミラー14で反射した緑色光LGを、画像信号に応じて緑色光LGを変調し、変調した緑色光LGをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ16は、液晶ライトバルブ15と同様に、液晶パネル16c、光学補償素子16a、偏光板16b及び16dを備えている。
【0057】
液晶ライトバルブ17は、ダイクロイックミラー13で反射し、ダイクロイックミラー14を透過した後でリレー系20を経た青色光LBを画像信号に応じて変調し、変調した青色光LBをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ17は、液晶ライトバルブ15及び16と同様に、液晶パネル17c、光学補償素子17a、偏光板17b及び17dを備えている。」
「【図1】
[図:0001413855000001.jpg]
」
c 【0061】~【0063】、【図2】
「【0061】
次に、本実施形態に係るプロジェクタが備える液晶パネルの構成について、図2を参照して説明する。
【0062】
図2(a)は、液晶パネルの全体構成図であり、図2(b)は、図2(a)のH-H'線断面図である。尚、液晶ライトバルブ15、16及び17は、変調する光の波長領域が異なるだけであって、その基本的構成は同一である。従って、以下では、液晶パネル15cとこれを備えた液晶ライトバルブ15とを例示して説明する。
【0063】
図2に示すように、液晶パネル15cは、互いに対向して配置された対向基板31とTFTアレイ基板32とを備え、シール材33を介して両者を貼り合わせた構成である。対向基板31、TFTアレイ基板32及びシール材33に囲まれた領域内に、液晶層34が封入されている。液晶層34は、負の誘電率異方性を有する液晶からなる。液晶パネル15cは、液晶分子が配向膜43及び98の間で所定の傾き(プレチルト角)を有して垂直配向した構成である。」
「【図2】
[図:0001413855000002.jpg]
」
d 【0076】~【0115】、【図3】~【図7】
「【0076】
次に、本実施形態に係るプロジェクタが備える光学補償素子について、図3から図7を参照して説明する。
【0077】
図3は、液晶ライトバルブの構成を示す説明図である。図4は、液晶ライトバルブの各構成部材の光学軸配置を示す図である。図5は、本実施形態に係るプロジェクタの具体的構成例を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る光学補償素子の構成を示す斜視図である。
【0078】
図3に示すように、液晶ライトバルブ15は、図2を参照して上述した液晶パネル15cと、液晶パネル15cの対向基板31の外側に配置された偏光板15bと、TFTアレイ基板32の外側に配置された光学補償素子15aと、光学補償素子15aの外側に配置された偏光板15dとを備えている。
【0079】
尚、本実施形態に係る液晶ライトバルブ15では、偏光板15bが配置された側(図3中、上側)が光入射側であり、偏光板15dが配置された側(図3中、下側)が光射出側である。
【0080】
図3において、液晶パネル15cの液晶層34を挟持して対向する配向膜43及び98は、例えば基板法線方向から50°程度ずれた斜め方向からシリコン酸化物を蒸着して形成されている。膜厚はいずれも40nm程度である。図3の配向膜43及び98に付した矢印により表される配向方向43a及び98aは、形成時の蒸着方向のうち基板面内の方向に一致している。配向膜43における配向方向43aと配向膜98における配向方向98aとは互いに平行である。
【0081】
液晶層34を構成する液晶分子51は、配向膜43及び98の配向規制力によって、基板法線から2°~10°程度傾いた状態で配向すると共に、液晶分子51のダイレクタ(或いは長軸)の方向(即ち、プレチルト方向P)が基板法線方向から見て配向方向43a及び98aに沿った方向となるように配向している。
【0082】
偏光板15b及び15dは、いずれも、染色されたPVA(ポリビニルアルコール)からなる偏光素子151を、TAC(トリアセチルセルロース)からなる2枚の保護膜152で挟み込んだ三層構造を備えている。
【0083】
図4及び図5に示すように、偏光板15bの透過軸151bと、偏光板15dの透過軸151dとは直交して配置されている。透過軸151b及び151dの方向は、液晶パネル15cの配向膜43の配向方向43aに対して平面視で約45°ずれた方向となっている。
【0084】
図3に加えて図6(a)及び図6(b)に示すように、光学補償素子15aは、第1板状光学部材511と、第2板状光学部材512と、第1光学異方性層513と、第2光学異方性層514とを備えている。
【0085】
図6(a)において、第1板状光学部材511は、例えば板状のガラスからなる。第1板状光学部材511の表面511aは、当該表面511aに対向する第1板状光学部材511の表面511bに対して、角度βだけ傾斜している。角度βは、液晶のプレチルト角に応じて設定されており、例えば2°~10°に設定されている。つまり、第1板状光学部材511は、傾斜するように形成された表面511aと、傾斜しない表面511bとを有する楔形状に形成されている。第1板状光学部材511の傾斜しない表面511bにおける辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って表面511bに垂直に切った断面は、台形をなす。言い換えれば、表面511aは、傾斜しない表面511bの辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って傾斜している。
【0086】
尚、辺511b1は、本発明に係る「一の表面の一辺」の一例である。
【0087】
第2板状光学部材512は、第1板状光学部材511と同様に、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材511と同一形状を有している。即ち、第2板状光学部材512の表面512aは、当該表面512aに対向する第2板状光学部材512の表面512bに対して、角度βだけ傾斜している。つまり、第2板状光学部材512は、傾斜するように形成された表面512aと、傾斜しない表面512bとを有する楔形状に形成されている。第2板状光学部材512の傾斜しない表面512bにおける辺512b1と約90°の角度をなす方位に沿って表面512bに垂直に切った断面は、台形をなす。
【0088】
第1板状光学部材511と第2板状光学部材512とは、第1板状光学部材511の傾斜するように形成された表面511aと第2板状光学部材512の傾斜するように形成された表面512aとが互いに対向するように、且つ、厚さが薄くなる方向が互いに反対になるように配置されている。
【0089】
第1光学異方性層513は、例えばフィルム状の有機化合物からなる負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなり、第1板状光学部材511と第2板状光学部材512との間に挟み込まれている。よって、第1光学異方性層513の光軸513pは、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511anに沿っている。第1光学異方性層513は、第1板状光学部材511の表面511aと第2板状光学部材512の表面512aとに例えば接着剤によって貼り付けられている。尚、第1光学異方性層513は、ディスコティック液晶を用いたCプレートであってもよいし、無延伸のセルロースエステルフィルム(例えば、無延伸のトリアセチルセルロース(TAC)、無延伸のセルロースアセテートプロピオネート(CAP)等)、二軸延伸したノルボルネン系樹脂等を用いた光学フィルムであってもよい。
【0090】
図3において、光学補償素子15aの側方に、第1光学異方性層513の平均的な屈折率楕円体255aを模式的に示している。この図において、nx及びnyはそれぞれ第1光学異方性層513の面方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った方向)の主屈折率を示しており、nzは厚さ方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)の主屈折率を示している。本実施形態では、主屈折率nx、ny及びnzは、nx=ny>nzなる関係を満たす構成とされている。即ち、厚さ方向の屈折率nzが他の方向の屈折率より小さく、屈折率楕円体では円盤型となる。この屈折率楕円体は、第1光学異方性層513の主表面(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った表面)に対して平行に配向されており、第1光学異方性層513の光軸513p(屈折率楕円体の短軸方向)は、主表面の法線方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)と平行になっている。
【0091】
図6(a)において、第2光学異方性層514は、例えばフィルム状の有機化合物からなる正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からなり、第1板状光学部材511の表面511bに形成されている。第2光学異方性層514の光軸514dは、第1板状光学部材511の表面511bに沿っており、更に、辺511b1と角度γをなす方向に沿っている。
【0092】
図5に示すように、角度γは、光学補償素子15aがプロジェクタ内に配置された状態において、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bに沿う角度として設定され、本実施形態では約45°である。
【0093】
尚、角度γは、光学補償素子15aがプロジェクタ内に配置された状態において、第2光学異方性層514の光軸514dが第2の偏光板15dの透過軸151dに沿う角度として設定されてもよい。この場合には、角度γは、約135°となる。
【0094】
尚、第2光学異方性層514は、Aプレートに限られるものではなく、二軸プレートからなるようにしてもよい。
【0095】
尚、Aプレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny=nzなる関係を満たす光学フィルムであり、棒状液晶性化合物、1軸延伸ポリマー(例えば、ポリカーボネート等)等を用いて作製することができる。二軸プレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny>nzなる関係を満たす光学フィルムであり、延伸セルロースエステル(例えば、延伸セルロースアセテートプロピオネート(延伸CAP)、トリアセチルセルロース(延伸TAC)等)等を用いて作製することができる。
【0096】
図5に示すように、光学補償素子15aは、表面511aが傾斜する方位511cが配向方向43aに沿うように、且つ、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bに沿うように配置されている。本実施形態では、液晶パネル15cの配向方向43aは、プロジェクタ内における水平方向(即ち、プロジェクタの底面における一の方向)に対して45°の角度をなす方向とされている。このため、光学補償素子15aは、その一辺(より具体的には、図6を参照して上述した表面511bにおける辺511b1に隣接する辺)がプロジェクタにおける水平方向に対して45°の角度をなすように配置されている。
【0097】
図4及び図5において、光学補償素子15aは、光学調整部80によって、回転軸81a及び82aの各々の回りに回転可能に構成されている。尚、光学調整部80は、本発明に係る「第1光学調整手段」及び「第2光学調整手段」の一例である。
【0098】
回転軸81aは、液晶パネル15cの基板面の法線方向から見て、液晶パネル15cにおける配向方向43a(98a)と直交する方向に沿った軸である。光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに回転させることで、液晶パネル15cの基板面に対して第1光学異方性層513(図4或いは図6参照)が傾斜する傾斜角を調整することが可能に構成されている。より具体的には、光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに角度θ1だけ回転させることで、第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させることが可能に構成されている。
【0099】
回転軸82aは、液晶パネル15cの法線方向(言い換えれば、第1板状光学部材511の表面511bの法線方向)に沿った軸である。光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸82aの回りに角度θ2だけ回転させることで、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bとなす角度を角度θ2だけ変更或いは調整することが可能に構成されている。
【0100】
次に、本実施形態に係るプロジェクタの作用効果について、図3から図6を参照して説明する。
【0101】
図3において、液晶パネル15cに封入された液晶層34は、光学的に正の一軸性を示すもので、液晶分子51のダイレクタ方向の屈折率が他の方向の屈折率より大きくなっている。即ち、液晶層34は、図3に平均的な屈折率楕円体250aを示すように、ラグビーボール型の屈折率楕円体を有するものとなっている。ここで、液晶層34の液晶分子51はプレチルト方向Pに沿って斜めに配向しており、黒表示の際に残留位相差を生じ、また斜め方向から観察したときの楕円形状が異なるために視角依存の位相差を有する。この位相差が黒表示における光漏れの原因となり、液晶パネルのコントラスト比を低下させることになる。
【0102】
しかるに、図3から図6において、本実施形態に係るプロジェクタによれば、光学補償素子15aを備えているので、当該プロジェクタの動作時に、光源12から出射された光が、液晶ライトバルブ15における、プレチルト方向Pに沿って斜めに配向した(即ち、液晶パネル15cの基板面の法線方向に対してプレチルト角だけ傾斜した)液晶分子51から構成される液晶層34や偏光板15b及び15d、マイクロレンズ95等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514によって補償することができる。
【0103】
より具体的には、図3において、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513は光学的に負の一軸性を示すものであるから、第1光学異方性層513の光軸513p(即ち、円盤型の屈折率楕円体255aのz方向の光軸)を、液晶層34における屈折率楕円体250aの光軸251aと平行に配置すれば、光学的な正負が逆になって、液晶パネル15cにおける複屈折効果を打ち消すことができる。
【0104】
そこで本実施形態では、図6を参照して上述したように、第1光学異方性層513は、楔形状に形成された第1板状光学部材511の傾斜した表面511aに形成され、第1光学異方性層513の光軸513pが液晶層34を構成する液晶分子51のプレチルト方向Pと略一致するように、第1光学異方性層513が、液晶パネル15cの基板面と平行な位置から、角度βだけ傾斜して配置されている。これにより、液晶パネル15cにおいて生じる位相差を三次元的に補償することが可能になる。つまり、第1光学異方性層513の光軸513pが、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子51のプレチルト方向Pに沿うように、光学補償素子15aが配置されることで、第1光学異方性層513と液晶層34との光学的な正負が互いに逆になり、第1光学異方性層513によって液晶において生じる位相差を打ち消すことができる。
【0105】
更に、第2光学異方性層514の光軸514dが、偏光板15bの透過軸151bに沿うように、光学補償素子15aが配置されることで、第2光学異方性層514によって偏光板15b及び15dに起因して生する光の位相差やマイクロレンズ95の回折の影響による光の位相差を補償することができる。
【0106】
加えて、図4及び図5において、本実施形態では特に、光学調整部80を備えているので、光学調整部80によって、光学補償素子15aを回転軸82aの回りに回転させることで、偏光板15b及び15dに起因する位相差やマイクロレンズ95の回折の影響による位相差をより確実に補償することができる。特に、偏光板の保護膜152は面内で光軸がばらついているため、保護膜152の影響により画像表示領域内で輝度ムラが生じ得るが、第2光学異方性層154によりコントラストだけでなく上述の如き輝度ムラも抑えることができる。
【0107】
尚、光学調整部80によって、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに回転させることで、光学補償素子15aを傾斜させてもよい。この場合には、液晶パネル15cにおける配向方向43aと、第1光学異方性層513の光軸513pとが、液晶パネル15cの基板の法線方向から見て平行に保持されたまま、光軸513pとプレチルト方向Pとを一致させるように調整することができ、極めて容易に最適な表示を得ることができる。
【0108】
更に加えて、本実施形態では特に、図6を参照して上述したように、第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514は、楔形状を有する第1板状光学部材511の表面511a及び511bに夫々形成されることで1つの光学補償素子15aを構成している。よって、仮に第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514を互いに異なる(別個の)ガラス基板に夫々形成することで2つの光学補償素子として構成した場合と比較して、プロジェクタ内に配置するためのスペースが少なくて済む(即ち、省スペース化を図ることができる)。従って、プロジェクタ内に第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514を1つの光学補償素子15aとして容易に配置することができる。
【0109】
光学補償素子15aによって上述の如き補償を行うことで、液晶パネル15cを通過した光が出射側の偏光板15dに対し、位相がずれた状態で入射するのを防止することができる。よって、出射側の偏光板15dにおいて、本来通過させないはずの光が漏れる可能性は小さくなり、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
【0110】
図6において、本実施形態では特に、光学補償素子15aは、第1板状光学部材511との間で第1光学異方性層513を挟み込むように配置されると共に、第1板状光学部材511と同様に楔形状を有する第2板状光学部材512を備えている。よって、光学補償素子15aから出射される光が、光学補償素子15aに入射される光に対して傾いてしまうことを防止できる。即ち、第1板状光学部材511に起因して生じる光の屈折と、第2板状光学部材512に起因して生じる光の屈折とを互いに打ち消し合わせることができ、光が光学補償素子15aを通過する際における光の直進性を高めることができる。
【0111】
更に、光学補償素子15aに入射される光は、第2板状光学部材512を通過した後に、第1光学異方性層513に入射されるので、第1光学異方性層513の劣化を抑制することができる、言い換えれば、光学補償素子15aの耐光性を高めることができる。また、本実施形態では、光学補償素子15aに入射される光は、第2板状光学部材512及び第1板状光学部材511を通過した後に、第2光学異方性層514に入射されるので、第2光学異方性層514の劣化を抑制することができる。
【0112】
本実施形態に係るプロジェクタにおける液晶ライトバルブ15の光学調整は、光学調整部80によって光学補償素子15aを回転軸81a回りに回転させることで、液晶パネル15cの基板面に対して第1光学補償層513が傾斜する傾斜角の調整を行う傾斜調整ステップと、光学調整部80によって光学補償素子15aを回転軸82a回りに回転させる回転調整ステップとにより実施することができる。
【0113】
図4及び図5において、傾斜調整ステップでは、回転軸81aを中心とする軸回りに光学補償素子15aを角度θ1だけ回転させて第1光学補償層513が傾斜する傾斜角を調整することで、第1光学異方性層513の光軸513pと、液晶層34のプレチルト方向Pとを略一致させる。尚、第1光学補償層513が傾斜する傾斜角の大きさは、上述した角度(β+θ1)である。これにより、液晶パネル15cの基板面の法線に対してプレチルト角だけ傾斜して配向した液晶分子51から構成された液晶層34の位相差を三次元的に補償できる位置に第1光学異方性層513をより一層確実に配置することができる。
【0114】
回転調整ステップでは、回転軸82aを中心とする軸回りに光学補償素子15aを角度θ2だけ回転させて第2光学補償層514の光軸514dの方位を調整することで、偏光板15b及び15dに起因する光の位相差や、マイクロレンズ95の回折の影響により生じる光の位相差を補償することができる位置に光学補償素子15aを配置する。即ち、角度θ2を変化させることで第2光学異方性層514の光軸514dと、偏光板15b及び15dや液晶パネル15cの光軸との位置関係を変更し、第2光学異方性層514の位置を最適化することができる。
【0115】
尚、上述した回転調整ステップは、実際にコントラスト(又は黒表示の輝度)を測定しつつ実施することが好ましい。一般に、偏光板の保護膜152における面方向の光軸は一定の方向に設定されているわけではなく、更に同一の偏光板でも面内で光軸がばらついていることがある。そのため、光学補償素子15aを回転軸82a回りに回転させる角度θ2を一定角度に設定することは困難であり、実際に最大コントラストが得られる位置、或いは黒レベルが最低になる位置をもって光学補償素子15aの最適位置とすればよい。」
「【図3】
[図:0001413855000003.jpg]
【図4】
[図:0001413855000004.jpg]
【図5】
[図:0001413855000005.jpg]
【図6】
[図:0001413855000006.jpg]
」
e 【0116】~【0123】、【図7】
「【0116】
次に、本発明の作用効果について、図7を参照して更に詳細に説明する。
【0117】
図7は、本発明の作用効果を説明するためのグラフである。
【0118】
図7のグラフは、第1光学異方性層513の傾斜角に対する液晶ライトバルブのコントラスト変化を示すグラフである。尚、第1光学異方性層513の傾斜角とは、第1光学異方性513が液晶パネル15cの基板面に対して傾斜する角度であり、本実施形態では、上述したように、角度(β+θ1)である。
【0119】
図7において、データD1に示すように、液晶分子51(図3参照)のプレチルト角が2°~5°の範囲内である場合(即ち、プレチルト角が小さい場合)には、第1光学異方性層513の傾斜角を6°とすれば、最大のコントラストが得られる。しかしながら、データD2に示すように、液晶分子51のプレチルト角が6°~9°の範囲内である場合(即ち、プレチルト角が大きい場合)には、第1光学異方性層513の傾斜角を10°としなければ、最大のコントラストを得ることができない。よって、仮に、第1光学異方性層513を単に平板状の位相板として形成した場合には、プロジェクタ内に第1光学異方性層513を傾斜させるためのスペースが十分に確保されないために、第1光学異方性層513の傾斜角を10°とすることができず、最大のコントラストを得ることができないおそれがある。
【0120】
しかるに、本実施形態に係る光学補償素子15aによれば、上述したように光学補償素子15aにおける第1光学異方性層513が光学補償素子15aの表面511b(或いは表面512b)に対して角度βだけ傾斜しているので、光学補償素子15aが傾斜する角度θ1が小さくても最大のコントラストを得ることができる。即ち、角度βが例えば6°に設定された光学補償素子15aによれば、データD1に示すようなプレチルト角が2°~5°の範囲内である場合には、角度θ1を0°とすることで最大のコントラストを得ることができ、データD2に示すようなプレチルト角が6°~9°の範囲内である場合には、角度θ1を4°とすることで最大のコントラストを得ることができる。言い換えれば、最大のコントラストを得るための角度θ1を角度β分だけ小さくすることができる。つまり、本実施形態に係る光学補償素子15aによれば、仮に第1光学異方性層513を単に平板状の位相板として形成した場合と比較して、光学補償素子15aが傾斜する角度θ1を小さくし或いは無くしつつ、コントラストを高めることができる。よって、プロジェクタ内に光学補償素子15aを傾斜させるためのスペースを殆ど或いは全く設けなくてもよい。このため、プロジェクタの小型化も可能となる。
【0121】
更に、光学補償素子15aを液晶パネル15cの基板面に対して傾斜させる角度θ1を小さくすることができるので、液晶パネル15cの放熱性を高めることができる。即ち、プロジェクタ10(図1参照)の筺体内に配置された液晶パネル15cを冷却するための冷却空気の流れを、光学補償素子15aが液晶パネル15cの基板面に対して傾斜して配置されることで妨げてしまうことを低減或いは防止できる。
【0122】
加えて、液晶分子51が液晶パネル15cの基板面の法線方向となす角度であるプレチルト角を大きくすることが可能となる。よって、液晶分子51の応答速度の向上やリバースチルトドメインの低減も可能となる。
【0123】
尚、本実施形態では、液晶ライトバルブ15の構成として、液晶パネル15cの光射出側に光学補償素子15aが配置された場合について説明したが、光学補償素子15aは、液晶パネル15aの光入射側に配置されてもよい。また、本実施形態では、第2光学異方性層514が第1光学異方性層513に対して光出射側に配置された場合について説明したが、第2光学異方性層514は、第1光学異方性層513に対して光入射側に配置されてもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプロジェクタについて、図8及び図9を参照して説明する。」
「【図7】
[図:0001413855000007.jpg]
」
(イ) 引用文献3の記載事項から当業者が把握できる事項
【0096】の「液晶パネル15cの配向方向43aは、プロジェクタ内における水平方向(即ち、プロジェクタの底面における一の方向)に対して45°の角度をなす方向とされている」との記載を踏まえて図4及び図5を参照すると、液晶パネル15cの配向方向43a(液晶分子がプレチルト角だけ傾斜する方位(【0027】))は、液晶パネル15cの水平方向の辺に対して45°の角度をなす方向とされており、液晶パネル15cの垂直方向の辺に対しても45°の角度をなす方向とされていることが当業者にとって把握できる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献3の記載事項及び前記(イ)の引用文献3の記載事項から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献3には、第1実施形態に係るプロジェクタに関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<引用発明>
「プロジェクタであって、(【0051】)
プロジェクタ10は、液晶ライトバルブ15を備えており、(【0052】)
液晶ライトバルブ15は、液晶パネル15c、光学補償素子15a、偏光板15b及び15dを備えており、(【0054】)
液晶パネル15cは、互いに対向して配置された対向基板31とTFTアレイ基板32とを備え、シール材33を介して両者を貼り合わせた構成であり、対向基板31、TFTアレイ基板32及びシール材33に囲まれた領域内に、液晶層34が封入されており、液晶パネル15cは、液晶分子が配向膜43及び98の間で所定の傾き(プレチルト角)を有して垂直配向した構成であり、(【0063】)
液晶ライトバルブ15は、液晶パネル15cと、液晶パネル15cの対向基板31の外側に配置された偏光板15bと、TFTアレイ基板32の外側に配置された光学補償素子15aと、光学補償素子15aの外側に配置された偏光板15dとを備えており、(【0078】)
液晶ライトバルブ15では、偏光板15bが配置された側が光入射側であり、偏光板15dが配置された側が光射出側であり、(【0079】)
配向膜43における配向方向43aと配向膜98における配向方向98aとは互いに平行であり、(【0080】)
液晶層34を構成する液晶分子51は、配向膜43及び98の配向規制力によって、基板法線から2°~10°程度傾いた状態で配向すると共に、液晶分子51のダイレクタ(或いは長軸)の方向(即ち、プレチルト方向P)が基板法線方向から見て配向方向43a及び98aに沿った方向となるように配向しており、(【0081】)
光学補償素子15aは、第1板状光学部材511と、第2板状光学部材512と、第1光学異方性層513と、第2光学異方性層514とを備えており、(【0084】)
第1板状光学部材511は、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材511の表面511aは、当該表面511aに対向する第1板状光学部材511の表面511bに対して、角度βだけ傾斜しており、角度βは、液晶のプレチルト角に応じて設定されており、例えば2°~10°に設定されており、表面511aは、傾斜しない表面511bの辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って傾斜しており、(【0085】)
第1光学異方性層513は、負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなり、第1光学異方性層513の光軸513pは、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511anに沿っており、第1光学異方性層513は、第1板状光学部材511の表面511aに貼り付けられており、(【0089】)
nx及びnyはそれぞれ第1光学異方性層513の面方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った方向)の主屈折率を示しており、nzは厚さ方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)の主屈折率を示しており、主屈折率nx、ny及びnzは、nx=ny>nzなる関係を満たす構成とされており、厚さ方向の屈折率nzが他の方向の屈折率より小さく、第1光学異方性層513の光軸513pは、主表面の法線方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)と平行になっており、(【0090】)
第2光学異方性層514は、正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からなり、第1板状光学部材511の表面511bに形成されており、(【0091】)
Aプレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny=nzなる関係を満たす光学フィルムであり、(【0095】)
光学補償素子15aは、表面511aが傾斜する方位511cが配向方向43aに沿うように配置されており、液晶パネル15cの配向方向43aは、プロジェクタ内における水平方向(即ち、プロジェクタの底面における一の方向)に対して45°の角度をなす方向とされており、(【0096】)
液晶パネル15cの配向方向43a(液晶分子がプレチルト角だけ傾斜する方位)は、液晶パネル15cの水平方向の辺に対して45°の角度をなす方向とされており、液晶パネル15cの垂直方向の辺に対しても45°の角度をなす方向とされており、(前記(イ))
光学補償素子15aは、光学調整部80によって、回転軸81aの回りに回転可能に構成されており、(【0097】)
回転軸81aは、液晶パネル15cの基板面の法線方向から見て、液晶パネル15cにおける配向方向43a(98a)と直交する方向に沿った軸であり、光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに回転させることで、液晶パネル15cの基板面に対して第1光学異方性層513が傾斜する傾斜角を調整することが可能に構成されており、光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに角度θ1だけ回転させることで、第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させることが可能に構成されており、(【0098】)
光学補償素子15aを備えているので、当該プロジェクタの動作時に、光源12から出射された光が、液晶ライトバルブ15における、プレチルト方向Pに沿って斜めに配向した(即ち、液晶パネル15cの基板面の法線方向に対してプレチルト角だけ傾斜した)液晶分子51から構成される液晶層34や偏光板15b及び15d、マイクロレンズ95等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514によって補償することができ、(【0102】)
液晶パネル15cの光射出側に光学補償素子15aが配置された、(【0123】)
プロジェクタ10」
ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a(a) 引用発明の「プロジェクタ10」は、プロジェクタが表示装置の一形態であることは技術常識であることと、「液晶ライトバルブ15」を備えていることからみて、本件補正発明の「液晶表示装置」に相当する。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は、「液晶表示装置」である点で一致する。
b(a) 引用発明の「液晶パネル15c」は、本件補正発明の「液晶パネル」に相当する。
(b) 引用発明の「液晶パネル15c」が、「液晶分子が配向膜43及び98の間で所定の傾き(プレチルト角)を有して垂直配向した構成」であることは、本件補正発明の「液晶パネル」が、「垂直配向型による」ものであることに相当する。
(c) 引用発明において、「プロジェクタは液晶ライトバルブ15を備えており」、「液晶ライトバルブ15は、液晶パネル15c」「を備えて」いることは、本件補正発明の「液晶表示装置」が「液晶パネル」を備えることに相当する。
(d) したがって、本件補正発明と引用発明は、「液晶表示装置」が、「垂直配向型による液晶パネル」を備える点で一致する。
c(a) 引用発明は、「液晶層34や偏光板15b及び15d、マイクロレンズ95等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514によって補償することができ[る]」もの、すなわち、第1光学異方性層が光の位相差を補償する機能を有するものであるから、引用発明の「第1光学異方性層513」は、本件補正発明の「第一光学補償部」に相当する。
(b) 引用発明の「第1光学異方性層513」の「厚さ方向の屈折率nzが他の方向の屈折率より小さ[い]」ことは、本件補正発明の「第一光学補償部」が、「厚み方向に屈折率が小さい媒体を有する」ことに相当する。
(c) 引用発明において、「液晶パネル15cの光射出側に光学補償素子15aが配置された」ことは、「光学補償素子15aは、第1板状光学部材511と、第2板状光学部材512と、第1光学異方性層513と、第2光学異方性層514とを備えて[いる]」ことも勘案すれば、本件補正発明の「第一光学補償部」が「前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置において、」「配置された」ものであることに相当する。
(d) 引用発明は、「第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させることが可能に構成されて[いる]」ことから、本件補正発明でいう「第一光学補償部」が、「前記液晶パネルに平行な状態に対し傾斜して配置された」ものとなっているといえる。
(e) 引用発明において、「プロジェクタは液晶ライトバルブ15を備えており」、「液晶ライトバルブ15は、」「光学補償素子15a」「を備えており」、「光学補償素子15aは、」「第1光学異方性層513」「を備えて[いる]」ことは、本件補正発明の「液晶表示装置」が「第一光学補償部」を備えることに相当する。
(f) したがって、本件補正発明と引用発明は、「液晶表示装置」が、「厚み方向に屈折率が小さい媒体を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置において、前記液晶パネルに平行な状態に対し傾斜して配置された第一光学補償部」を備える点で一致する。
d(a) 引用発明は、「液晶層34や偏光板15b及び15d、マイクロレンズ95等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514によって補償することができ[る]」もの、すなわち、第2光学異方性層が光の位相差を補償する機能を有するものであるから、引用発明の「第2光学異方性層514」は、本件補正発明の「第二光学補償部」に相当する。
(b) 引用発明において、「第2光学異方性層514は、正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からな[る]」ことは、「Aプレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny=nzなる関係を満たす光学フィルムであ[る]」ことと、第1光学異方性層についての「nx及びnyはそれぞれ第1光学異方性層513の面方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った方向)の主屈折率を示しており、nzは厚さ方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)の主屈折率を示して[いる]」との定義は、第2光学異方性層についても共通であることは当業者には自明のことであることも勘案すれば、本件補正発明の「第二光学補償部」が、「少なくとも面内方向に屈折率異方性を有[する]」ことに相当する。
(c) 引用発明において、「液晶パネル15cの光射出側に光学補償素子15aが配置された」ことは、「光学補償素子15aは、第1板状光学部材511と、第2板状光学部材512と、第1光学異方性層513と、第2光学異方性層514とを備えて[いる]」ことも勘案すれば、本件補正発明の「第二光学補償部」が「前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置に配置された」ものであることに相当する。
(d) 引用発明において、「プロジェクタは液晶ライトバルブ15を備えており」、「液晶ライトバルブ15は、」「光学補償素子15a」「を備えており」、「光学補償素子15aは、」「第2光学異方性層514」「を備えて[いる]」ことは、本件補正発明の「液晶表示装置」が「第二光学補償部」を備えることに相当する。
(e) したがって、本件補正発明と引用発明は、「液晶表示装置」が、「少なくとも面内方向に屈折率異方性を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置に配置された第二光学補償部」を備える点で一致する。
e(a) 引用発明は、「液晶パネル」に「封入されて[いる]」「液晶層34」について、「液晶層34を構成する液晶分子51」は、「液晶分子51のダイレクタ(或いは長軸)の方向(即ち、プレチルト方向P)が基板法線方向から見て配向方向43a及び98aに沿った方向となるように配向して[いる]」ものであるところ、電圧印加時の液晶分子51のチルト方向についてもプレチルト方向Pと同様に、基板法線方向から見て配向方向43a及び98aに沿った方向となるように配向することは本願優先日における技術常識から見て自明である。そして、この電圧印加時の液晶分子51の基板法線方向から見たチルト方向は、本件補正発明の「面内における液晶のチルト方向」に相当する。
(b) 引用発明は「液晶パネル15cの配向方向43a(液晶分子がプレチルト角だけ傾斜する方位)は、液晶パネル15cの水平方向の辺に対して45°の角度をなす方向とされており、液晶パネル15cの垂直方向の辺に対しても45°の角度をなす方向とされて[いる]」もの、すなわち、液晶パネル15cの配向方向43aと、これに沿った方向である電圧印加時の液晶分子51の基板法線方向から見たチルト方向(前記(a))は、液晶パネルの水平方向の辺及び垂直方向の辺のいずれに対しても非平行な方向である。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記液晶パネルは、面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ[る]」点で一致する。
f(a) 引用発明は、「第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させる」ものであることから、本件補正発明でいう「前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から」「傾斜された」ものとなっているといえる。
(b) 引用発明は、「第1光学異方性層513は、第1板状光学部材511の表面511aに貼り付けられて」おり、「第1板状光学部材511の表面511a」は、「当該表面511aに対向する第1板状光学部材511の表面511bに対して、角度βだけ傾斜して」いる。引用発明は、さらに、「光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに角度θ1だけ回転させることで、第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させることが可能に構成されて[いる]」ものである。そうすると、第1板状光学部材511の表面511aが傾斜している角度βと、光学調整部80による回転角度θ1はいずれも、回転軸81aの回りの角度であることが理解できる。
(c) 本件補正発明の「前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された」との発明特定事項における「面内における辺」は、当該発明特定事項に係る記載の主語が「前記第一光学補償部」であることからみて、「前記第一光学補償部」の「面内における辺」と解するのが自然であり、この理解は、明細書の【0115】の「このように一体型光学補償板23を長辺に平行な軸周り方向に回転(傾斜)させた場合」の「長辺」が「一体型光学補償板23」の長辺と解されることにも整合する。
これを引用発明についてみると、引用発明は、「表面511aは、傾斜しない表面511bの辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って傾斜して[いる]」ものであるから、前記(b)も勘案すると、回転軸81aは、表面511aの辺であって、傾斜しない表面511bの辺511b1と平行な辺と平行な直線であることが理解できる。そして、この表面511aの辺であって、傾斜しない表面511bの辺511b1と平行な辺と平行な直線である「回転軸81a」が、本件補正発明の「面内における辺に平行な軸」に相当する。
(d) 前記(a)及び(c)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された」点で一致する。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点は次のとおりであり、両者の間に相違点はない。
一致点
「垂直配向型による液晶パネルと、
厚み方向に屈折率が小さい媒体を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置において、前記液晶パネルに平行な状態に対し傾斜して配置された第一光学補償部と、
少なくとも面内方向に屈折率異方性を有し、前記液晶パネルを透過後又は透過前の光が入射される位置に配置された第二光学補償部と、を備え、
前記液晶パネルは、面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ、
前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された
液晶表示装置。」である点。
エ 請求人の主張について
請求人は、本件補正発明の「前記液晶パネルは、面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ、
前記第一光学補償部が、前記液晶パネルに平行な状態から、面内における辺に平行な軸を中心とする回転方向に傾斜された」との構成は、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない旨を主張している。
しかしながら、請求人の主張する構成が引用文献3に記載されていることは前記ウ(ア)e及びfで検討したとおりであり、請求人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件補正発明と引用発明は相違点がないから、本件補正発明は引用発明である。また、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。
カ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本件補正発明は、同法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ
前記(2)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由1(新規性)及び理由2(進歩性)の概要は、次の理由を含むものである。
理由1(新規性) 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性) 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
3.特開2009-25541号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定
引用文献3に記載された事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明に対して、「面内における液晶のチルト方向が、前記液晶パネルの何れの辺に対しても非平行な方向とされ」との限定を省いたものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-006360