特許拒絶査定不服審判
2023-015010
使い捨て吸収性物品
- 審判番号
- 2023-015010
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-570202外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月06日
- 審決日
- 2025年07月25日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】出口 智也
- 【請求人代理人】村田 卓久
- 【請求人代理人】小島 一真
- 分類
- P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-570202「使い捨て吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月10日国際公開、WO2020/247972、令和4年8月3日国内公表、特表2022-534719〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年(令和元年)6月3日、米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、令和4年11月29日付けで拒絶理由が通知され、令和5年2月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月25日付け(送達日同年5月9日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたところ、これに対し、同年9月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年9月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年9月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和5年2月16日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし11を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし11へと補正するものである(下線は補正箇所を示すために付した。)。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
長手方向中心線と、前記長手方向中心線に対して概ね垂直な横方向中心線と、第1の側縁部及び第2の側縁部と、吸収性物品の第1の端部に配置された第1の端縁部及び第2の端部に配置された第2の端縁部と、を有する、使い捨て吸収性物品であって、
トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収システムと、
前記使い捨て吸収性物品の着用者に面する表面から可視である視覚信号と、を更に含み、前記使い捨て吸収性物品の長さと前記視覚信号の長さとの差が、物品長と視覚信号の長さの方法によって決定したときに、35mm未満であり、
前記吸収システムが、第二のトップシート及び吸収性コアを含み、
前記視覚信号が、前記第二のトップシートに設けられ、
前記第二のトップシートが、前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部の少なくとも一方を含み、
前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部が、接着剤と圧着封止との組み合わせによって封止されている、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記視覚信号が、140mm~230mmの長さを有する、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品が、160mm~260mmの全長を有する、請求項1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記視覚信号の長さが、前記吸収性物品の長さの少なくとも84パーセントある、請求項1~3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
一対の長手方向プリーツを更に含み、前記プリーツのうちの少なくとも一方は、前記第1の側縁部に隣接して配設されており、前記一対の長手方向プリーツの他方は、前記第2の側縁部に隣接して配設されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記視覚信号が、220mm~400mmの長さを有する、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品が、230mm~430mmの物品全長を有する、請求項1及び6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記視覚信号が、前記吸収性物品の前記長さの80パーセント~98パーセントである、請求項1及び6~7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が、1~10の性能係数を呈する、請求項1及び6~8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項10】
一対の長手方向カフを更に含み、前記カフのうちの少なくとも一方は、前記第1の側縁部に隣接して配設されており、前記一対の長手方向カフの他方は、前記第2の側縁部に隣接して配設されている、請求項1及び6~9のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項11】
前記使い捨て吸収性物品が失禁用パッドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
長手方向中心線と、前記長手方向中心線に対して概ね垂直な横方向中心線と、第1の側縁部及び第2の側縁部と、吸収性物品の第1の端部に配置された第1の端縁部及び第2の端部に配置された第2の端縁部と、を有する、使い捨て吸収性物品であって、
トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収システムと、
前記使い捨て吸収性物品の着用者に面する表面から可視である視覚信号と、を更に含み、前記使い捨て吸収性物品の長さと前記視覚信号の長さとの差が、物品長と視覚信号の長さの方法によって決定したときに、35mm未満であり、
前記吸収システムが、第二のトップシート及び吸収性コアを含み、
前記視覚信号が、前記第二のトップシートに設けられ、
前記第二のトップシートが、不織布材料を含み、かつ前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部の少なくとも一方を含み、
前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部が、接着剤と圧着封止との組み合わせによって封止されている、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記視覚信号が、140mm~230mmの長さを有する、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品が、160mm~260mmの全長を有する、請求項1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記視覚信号の長さが、前記吸収性物品の長さの少なくとも84パーセントある、請求項1~3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
一対の長手方向プリーツを更に含み、前記プリーツのうちの少なくとも一方は、前記第1の側縁部に隣接して配設されており、前記一対の長手方向プリーツの他方は、前記第2の側縁部に隣接して配設されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記視覚信号が、220mm~400mmの長さを有する、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品が、230mm~430mmの物品全長を有する、請求項1及び6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記視覚信号が、前記吸収性物品の前記長さの80パーセント~98パーセントである、請求項1及び6~7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が、1~10の性能係数を呈する、請求項1及び6~8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項10】
一対の長手方向カフを更に含み、前記カフのうちの少なくとも一方は、前記第1の側縁部に隣接して配設されており、前記一対の長手方向カフの他方は、前記第2の側縁部に隣接して配設されている、請求項1及び6~9のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項11】
前記使い捨て吸収性物品が失禁用パッドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第二のトップシート」について、その材料を「不織布材料を含」むものに限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付された明細書に、「【0078】 上記の機能性に対応するために、二次トップシートは、様々な繊維タイプを含む不織布材料を含んでもよい。例えば、二次トップシートは、吸収繊維、弾性繊維、及び補強繊維を含み得る。」(スペースは改行を示す。)と記載されていることから導かれる事項であって、本願の願書に最初に添付された明細書に記載した事項の範囲内でされた補正であるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)の請求項1に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された、特表2017-525479号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審において付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
吸収性物品であって、
液体透過性トップシートであって、前記吸収性物品の内側の方に向けられる内側表面と、前記吸収性物品が着用される際に着用者の皮膚の方に向けられる外側表面と、を有する、トップシートと、
前記トップシートに接合されるバックシートであって、前記吸収性物品の内側の方に向けられる内側表面と、前記吸収性物品が着用される際に着用者の衣類に向かって配置される外側表面と、を有する、バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される周辺部を有する吸収性コアであって、前記吸収性物品が着用される際に着用者の皮膚の方に向けられる内側表面と、前記吸収性物品が着用される際に着用者の衣類に向かって配置される外側表面と、を有する、吸収性コアと、を備え、
前記トップシートが4つ以上の図形的要素を含み、
前記コアの周辺部が5%~60%のインク対クリーン部比率を示すように、前記図形的要素が前記吸収性コアの周辺部に重なる、吸収性物品。」
「【技術分野】
【0001】
本出願は、経血を吸収するための生理用ナプキンなどの生理用品を含む吸収性物品に関する。より具体的には本発明は1つ以上の図形画像を含む生理用品に関し、前記図形画像は吸収性物品の機能領域の輪郭をはっきりさせる。」
「【0006】
吸収性物品は、液体透過性のトップシートと、トップシートに接合したバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された周辺部を含む吸収性コアと、を含む。トップシートは、吸収性物品の内側又は衣類に面する側面の方に向けられる内側表面、及び吸収性物品が着用される際に着用者の皮膚又は身体に面する側面の方に向けられる外側表面を有する。バックシートは、吸収性物品の内側の方に向けられる内側表面、及び吸収性物品が着用される際に着用者の衣類の方に向けられる外側表面を有する。吸収性コアは、吸収性物品が着用される際に着用者の皮膚の方に向けられる内側表面、及び吸収性物品が着用される際に着用者の衣類の方に向けられる外側表面を有する。トップシートは4つ以上の図形的要素を含む。コアの周辺部が5%~60%のインク対クリーン部の比率を示すように、図形的要素は吸収性コア周辺部に重なる。」
「【0015】
図1は、例えば、トップシート14の外側表面を含む身体接触面12、トップシート14に接合する液体不透過性バックシート16、及び吸収性コア18を有する生理用ナプキン10を示す。生理用ナプキン10は、長手方向軸L、横方向軸Tを有する。長手方向軸及び横方向軸は、生理用ナプキンの中心点で交わる。長手方向軸及び横方向軸は、生理用ナプキンを4つの区分101、102、103、104に分ける。この吸収性コアは周辺部を有する。吸収性コア20の吸収性コア周辺部は八分区分に分割され得る。八分区分は、吸収性コア周辺部の長さを測定すること及び全長を8で割ることにより計算される。図2に示すように各八分区分は、吸収性コア周辺部の等しい長さ201、202、203、204、205、206、207及び208を含む。各四分区分は、吸収性コア周辺部を含む吸収性コアの一部を含む。
【0016】
図形的要素26は、トップシートの身体に面する表面上又は衣類に面する表面上に印刷されることができ、その結果それらは容易に視認できる。追加の図形的要素26は、吸収性物品10の任意の層に印刷されることができる。追加の図形的要素26は、バックシート16の身体に面する側面上、第2のトップシート(図示せず)の身体に面する側面上、吸収性コア18の身体に面する側面上、又は吸収性コア18の身体に面する側面の一部上に印刷されることができる。
・・・
【0019】
印刷された図形の向きは、高速製造中の可撓性を可能にすると共に、物品の吸収性コア又は機能領域を強調する。図形的要素の位置のバランスをとることによって、サイズ制限を図形的要素に置くことによって、及び吸収性コア周辺部に沿って図形的要素を配置して、コア周辺部に沿って5%~60%の可視インク対クリーン領域パーセンテージを有することによって、消費者に容認されると共に、高速製造を可能にする製品の図形の向きを達成することができることを、発明者は見いだした。
【0020】
多くの実施形態において機能領域は、吸収性コアの周辺部の内部に追加の機能標識を有することができる。追加の機能標識は、コア内の1つ以上の追加の図形的要素、開孔、穿孔、スロット又は点であり得る。追加の機能標識は、トップシートの下、吸収性コア内若しくはその上、又はトップシートの身体に面する表面から視認できる任意の他の層に位置することができる。
・・・
【0029】
トップシートは、織布材料及び不織布材料; 孔あき成形熱可塑性フィルム、孔あきプラスチックフィルム及びハイドロフォーミングされた熱可塑性フィルムなどのポリマー材料;多孔質発泡体;網状発泡体、網目状熱可塑性フィルム; 並びに熱可塑性スクリムなどの広範な材料から作製することができる。好適な織布及び不織布材料は、天然繊維(例えば、木質繊維若しくは綿繊維)、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、若しくはポリエチレン繊維などのポリマー繊維)、又は天然繊維と合成繊維との組み合わせを含んでもよい。多くの実施形態において、トップシートを通過した液体から着用者の皮膚を隔離するため、トップシートは疎水性材料から作ることができる。トップシートが疎水性材料から作られている場合、液体がトップシートを更に迅速に貫通するように、トップシートの少なくとも上面を処理して親水性にする。これにより、排泄物がトップシートに引き込まれて吸収性コアに吸収されることなく、トップシートから流れ落ちる可能性が低減する。多くの実施形態において、トップシートを界面活性剤で処理して親水性を付与することができる。トップシートを界面活性剤で処理するための好適な方法としては、トップシート材料に界面活性剤を噴霧すること、及び材料を界面活性剤中に浸漬することが挙げられる。」
「【図1】
[図:0001430414000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001430414000002.jpg]
」
(イ)引用文献1記載事項から認定できる事項
a 図1の「生理用ナプキン」において、その長手方向中心のL軸方向の両端部の領域及び端部の領域の端に端縁部と、L軸に対して垂直のT軸方向が生理用ナプキンの幅方向を示して生理用ナプキンのT軸方向の2つの端部の端縁部が認められるから、引用文献1には、「生理用ナプキンの長手方向中心のL軸方向の一方の端部の端縁部と、その反対方向の端部の端縁部を有し、L軸に対して垂直のT軸方向が生理用ナプキンの幅方向を示して生理用ナプキンのT軸方向の両端の縁部が存在」することが認められる。
b 図4の「生理用ナプキン」において、「図形的要素が、生理用ナプキンの外周の縁まで印刷」されていることが看取できる。
(ウ)引用発明
上記(ア)の引用文献1記載事項及び上記(イ)の引用文献1記載事項から認定できる事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
生理用ナプキンであって((ア)【0001】)、
生理用ナプキンの長手方向中心のL軸方向の一方の端部の端縁部と、その反対方向の端部の端縁部を有し、L軸に対して垂直のT軸方向が生理用ナプキンの幅方向を示して生理用ナプキンのT軸方向の両端の縁部が存在し((イ)a)、
トップシートと、
バックシートと、
トップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアとを備え((ア)【請求項1】)、
トップシートは、不織布材料などの広範な材料から作成することができ((ア)【0029】)、
図形的要素26は、トップシートの身体に面する表面上又は衣類に面する表面上に印刷され、追加の図形的要素26は、第2のトップシートの身体に面する側面上に印刷され((ア)【0016】)、
図形的要素が、生理用ナプキンの外周の縁まで印刷されており((イ)b)、
図形画像は吸収性物品の機能領域の輪郭をはっきりさせる((ア)【0001】)、
生理用ナプキン((ア)【0001】)。
イ 引用文献2
(ア)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された、特開2009-50515号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷が施された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、使い捨て紙おむつなどの吸収性物品は、一般に、ポリエチレンシート又はポリエチレンシートラミネート不織布等から成る不透液性裏面シートと、不織布から成る透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させた構造を有する。
この種の吸収性物品では、美的外観を得るためや、吸収した排泄物を隠蔽する又は迷彩効果により目立たなくする等、種々の目的で、表面シートや、表面シートと吸収体との間のシートに図柄を印刷することが提案されている(例えば特許文献1~3参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の印刷対象は不織布であり、表面の繊維が疎らで表面平滑性に乏しい等の理由により精緻な印刷が不可能である、印刷コストが嵩むといった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、低コストで、精緻な印刷を可能にし、より美的外観に優れ、また、吸収した排泄物を隠蔽する又は迷彩効果により目立たなくすることのできる吸収性物品を提供することにある。」
「【0020】
裏面シート2の両側部は、表面シート3の両側縁からはみ出しており、このはみ出し部分から表面シート3の側部上にかけて伸縮帯8が前後方向に伸張した状態で接着剤HM等により張り付けられている。伸縮帯8は、二つ折りに折り畳んだシート間に糸伸縮帯9を前後方向に沿って伸張した状態で固定してなるものであり、その伸縮力により、パッドが図1に示すように船形に変形される。吸収体4の前後両側においては、表面シート3が不透液性裏面シート2に対して直接に又は吸収体4と表面シート3との間に介在するシート(後述する印刷シート若しくは中間シート7)を介して間接的にホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されている。
【0021】
特徴的には、表面シート3と吸収体4との間には、薄葉紙に印刷を施してなる印刷シート6が配置されている。図4は、表面シート3及び伸縮帯8を取り除き、印刷シート6を露出させた状態を示している。印刷シート6に用いる薄葉紙としては、液透過性及び印刷適性の観点から、坪量が8~80g/m2、特に10~30g/m2であり、且つクレープ率が1~35%、特に10~25%であるものが好適である。
薄葉紙は液を吸収すると嵩が減る、透明度が向上する、及び隣接する部材との密着性が向上するため、液吸収の前後で印刷の見栄えが変化し、液吸収の前後でデザイン効果や、隠蔽又は迷彩効果を変化させることができる。このような効果を利用する場合、印刷シート6に用いる薄葉紙としては、吸水前後の不透明度の変化が50%以上であるものが好ましい。
【0022】
印刷シート6は、その印刷の目的に応じて、吸収体4の表裏いずれか一方側又は両側に配置することができる。例えば、排泄物の隠蔽又は迷彩効果を発揮させるためには、図示形態のように、印刷シート6を表面シート3と吸収体4との間に設ける。これに対して、表面シート3が内側となるように二つ折りや三つ折りした状態で製品の外面デザインの一部として印刷を視認可能にする場合には、印刷シート6は吸収体4と裏面シート2との間に設ける。もちろん、これら両方に設けることもできる。また、図示はしないが、印刷シート6は、吸収体4をくるむよう配置することもできる。その際、くるんだ印刷シート6の合わせ目は、表面シート3側又は裏面シート2側のどちら側に配置されていても良い。
印刷シート6の印刷は、印刷シート6の表裏少なくとも一方に設けられていれば良いが、排泄物吸収前の時点で印刷を目立たせたければ、印刷シート6を表面シート3と吸収体4との間に設ける場合には表面シート3側の面、吸収体4と裏面シート2との間に設ける場合には裏面シート2側の面、に印刷が施されていれば良い。また、排泄物吸収前の時点で印刷を目立たせたくなければ、その逆に印刷を施すことが好ましい。
印刷シート6は被覆されているため、被覆部分を介して印刷が透けて見える必要がある。具体的には、印刷シート6の被覆部分側面に印刷が施されている場合には、印刷シート6の被覆部分の不透明度が90%以下、特に75%以下であるのが好ましい。被覆部分は、吸収体4の表面側に印刷シート6を設けた場合には、印刷シート6より表面側の部分(図示形態の場合には表面シート3のみ)となり、吸収体4の裏面側に印刷シート6を設けた場合には、印刷シートよりも裏面側の部分となる。不透明度は、被覆部分の素材が不織布である場合は、繊維の色や、繊維密度により調整でき、ポリエチレン等の遮水性シートの場合は、色や厚みによる調整することができる。
【0023】
印刷シート6の寸法及び配置は、印刷目的に応じて適宜定めることができる。例えば、排泄物の隠蔽又は迷彩効果を発揮させるためには、印刷シート6は少なくとも物品の前後方向中央部をカバーしていることが望ましい。このため、印刷シート6を前後方向においては吸収体4の前端から後端まで、あるいは更に物品の前端から後端まで延在させ、幅方向においては吸収体5の一方の側部又はその近傍から他方の側部又はその近傍まで延在させることができる。デザイン効果を発揮させるためには、印刷シート6は物品の多くの部分をカバーしていることが望ましい。このため、印刷シート6を前後方向においては物品の前端から後端まで延在させ、幅方向においては吸収体5の一方の側部又はその近傍から他方の側部又はその近傍まで延在させることができる。また、印刷により物品の前後表示を行う場合には、物品の前後端部にのみ印刷シート6を配置することができる。
印刷内容は特に限定されないが、花柄等の図柄の他、前後表示や使用済み表示等の特定の意味を表す記号(文字含む)、若しくは特定の意味を表さない図柄としての記号(文字含む)、又はこれらのうち複数のものを組み合わせたものとすることができる。特に、花柄等の単位図柄が所定の間隔を空けて散在されていると、デザインの自由度が高く、迷彩効果も高いため好ましい。
・・・
【0025】
インキ付着部分の総面積は適宜定めることができるが、印刷シートに占める割合が1~90%、特に5~75%であるのが好ましい。インキ付着部分の面積割合が大き過ぎると、印刷シートの透液性を損ねる。一方、インキ付着部分が少な過ぎると、デザインが制限される、隠蔽又は迷彩効果が乏しくなる等、印刷シートを設ける意味が無くなる。この傾向は、特に油性インキの場合に顕著である。
印刷手法は、特に限定されず、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷の他、インクジェット印刷も適用できる。
【0026】
<他の実施形態>
(A)吸収体4の包装シート5が薄葉紙である場合、この包装シート5に印刷を施し、本発明の印刷シートとすることができる。これにより、吸収体4の表裏両側に印刷シート6を配置したのと同様の効果が発揮される。また、資材変更のみで組立ラインを変更せずに物品の製造が可能となる。
(B)図5に示すように、印刷シート6と表面シート3との間には、親水性の中間シート7を配置することができる。中間シート7は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。このような中間シート7を配置することによって、吸収体4に一旦吸収された体液が表面シート3側に戻ってしまうことを防止することができる。なお、この場合における被覆部分は表面シート3及び中間シート7の部分となり、これらを重ね合わせた状態での不透明度が90%以下となるように、繊維の種類や密度を定めるのが好ましい。」
「【図4】
[図:0001430414000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001430414000004.jpg]
」
(イ)引用文献2記載事項から認定できる事項
上記(ア)【0026】の「印刷シート6と表面シート3との間には、親水性の中間シート7を配置することができる。」との記載を踏まえると、図4から「印刷シート6が吸収性物品の端縁部まで延在」していること、図5から「表面シート3と吸収体4の間」に中間シート7を配置することが看取できる。
(ウ)上記(ア)引用文献2記載事項及び上記(イ)引用文献2記載事項から認定できる事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項1」及び「引用文献2技術事項2」という。)が記載されている。
[引用文献2技術事項1]
生理用ナプキン、パンティライナーなどの吸収性物品において、種々の目的で、表面シートや、表面シートと吸収体との間のシートに図柄を印刷し、印刷対象が不織布である、従来からある技術((ア)【0002】~【0003】)。
[引用文献2技術事項2]
表面シート3と吸収体4の間、かつ、印刷シート6と表面シート3との間に、親水性の中間シート7を配置することができ、中間シート7は、体液に対して親水性を有するものであればよく、吸収体4に一旦吸収された体液が表面シート3側に戻ってしまうことを防止しており((ア)【0026】、(イ))、
印刷シート6が吸収性物品の端縁部まで延在しており((イ))、
表面シート3が不透液性裏面シート2に対して直接に又は吸収体4と表面シート3との間に介在する印刷シート若しくは中間シート7を介して間接的にホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されており((ア)【0020】)、
印刷が施された吸収性物品((ア)【0001】)。
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された、特開2018-191732号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品、及び上記吸収性物品の製造方法、並びに不織布又は開孔フィルムの、透過性調整部材としての使用に関する。」
「【0041】
具体的には、吸収体9のコアラップ17の液透過性シート3側の面全体に、B(青)の色相に属する第1印刷部(水色)が形成されており、そしてコアラップ17の、複数の非表面エンボス部25のそれぞれの底部21に相当する部分に、B(青)の色相に属する第2印刷部(青色)が形成されている。第2印刷部(青色)は、第1印刷部(水色)よりも濃い色調を有している。第1着色部31は、第1印刷部(水色)から構成され、そして第2着色部33は、第2印刷部(青色)及び第1印刷部(水色)から構成されている。」
「【図1】
[図:0001430414000005.jpg]
」
「【図2】
[図:0001430414000006.jpg]
」
(イ)引用文献3技術事項
上記(ア)引用文献3記載事項から、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されている。
[引用文献3技術事項]
吸収体9のコアラップ17の液透過性シート3側の面全体に、B(青)の色相に属する第1印刷部(水色)が形成されている、吸収性物品。
エ 引用文献4
(ア)引用文献4記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された、実願昭58-91439号(実開昭60-306号)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「おむつは、不織布である液透過性表面シート1と、プラスチックフィルムである液不透過性裏面シート2と、両シート1,2間に介在させた粉砕パルプを主材とする吸収体3と、股当部の両側に取り付けた伸縮部材4とを含み、吸収体3の縦横方向対向各端部から外方向へ延出して相会する同対向端部5,6を接合してある。
縦方向対向端部5は、当該部位の両シート1,2間の横方向へ連続するように帯状に塗布した疎水性接着剤層7により一体的に接合してある。疎水性接着剤層7の幅は、10~50mmであることが好ましい。疎水性接着剤層7の接着剤は、ホットメルト型のものが好ましく、さらには発泡ホットメルト型のものが縦方向対向端部7の接合部に柔軟性を付与するうえで好ましい。またこのような接着剤は、液透過性表面シート1の組織内に含浸してこれを疎水性化しているのが好ましい。このようにするためには、塗布した接着剤が固化しない間に縦方向対向端部7を圧着すればよいが、液透過性表面シート7としての不織布は、目付が15~35g/m2、密度が0.08から0.35g/cm3であることが好ましい。」(第4頁第2行ないし第5頁第3行)
「第1図
[図:0001430414000007.jpg]
」
「第2図
[図:0001430414000008.jpg]
」
(イ)引用文献4技術事項
上記(ア)引用文献4記載事項から、引用文献4には、次の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されている。
[引用文献4技術事項]
縦方向対向端部5は、当該部位の両シート1,2間の横方向へ連続するように帯状に塗布した疎水性接着剤層7により一体的に接合し、塗布した接着剤が固化しない間に縦方向対向端部7を圧着したおむつ。
オ 周知技術1
引用文献2技術事項2から、「中間シート7」を「表面シート3と吸収体4の間に」配置しており、「中間シート7」は、「体液に対して親水性を有するものであればよく、吸収体4に一旦吸収された体液が表面シート3側に戻ってしまうことを防止」するので一般的な「セカンドシート」、すなわち引用発明の「第2のトップシート」に相当する。また、引用文献2技術事項2の「表面シート3」及び「吸収体4」は、各々引用発明の「トップシート」及びに「吸収性コア」に相当する。
以上から、次の技術が周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
[周知技術1]
トップシートと吸収性コアの間に第2のトップシートを配置した吸収性物品。
カ 周知技術2
引用文献2技術事項2の「印刷シート6が吸収性物品の端縁部まで延在」していること、引用文献3技術事項の「吸収体9のコアラップ17の液透過性シート3側の面全体に」「第1印刷部」が形成されていることから、次の技術が周知の技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。
[周知技術2]
印刷される領域が面の端縁部まで延在している吸収性物品。
キ 周知技術3
引用文献2技術事項1から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術3」という。)であったと認められる。
[周知技術3]
表面シートと吸収体との間の不織布のシートに様々な目的で図柄を印刷した、生理用ナプキン、パンティライナーなどの吸収性物品。
ク 周知技術4
引用文献4技術事項から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術4」という。)であったと認められる。
[周知技術4]
シートの対向端部に塗布した接着剤が固化しない間に圧着したおむつ。
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「トップシート」、「バックシート」及び「吸収性コア」は、各々本件補正発明の「トップシート」、「バックシート」及び「吸収性コア」に相当する。
(イ)a 引用発明の「生理用ナプキン」は、使い捨てされる吸収性物品であることは技術常識である。
b 引用発明の[生理用ナプキン」の「長手方向中心のL軸」及び「L軸に対して垂直のT軸」は、各々本件補正発明の「長手方向中心線」及び「長手方向中心線に対して概ね垂直な横方向中心線」に対応する。
c 上記bを踏まえると、引用発明の「両端の縁部」は、各々本件補正発明の「『第1の側縁部』及び『第2の側縁部』」に相当する。
d 上記bを踏まえると、引用発明の「L軸方向の一方の端部の端縁部」及び「その反対方向の端部の端縁部」は、各々本件補正発明の「第1の端部に配置された第1の端縁部」及び「第2の端部に配置された第2の端縁部」に相当する。
e 上記aないしdから、本件補正発明と引用発明は、「長手方向中心線と、前記長手方向中心線に対して概ね垂直な横方向中心線と、第1の側縁部及び第2の側縁部と、吸収性物品の第1の端部に配置された第1の端縁部及び第2の端部に配置された第2の端縁部と、を有する、使い捨て吸収性物品」である点で一致する。
(ウ)引用発明の「生理用ナプキン」は、「トップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コア」を備える一方で、本件補正発明の「前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収システム」は、「吸収性コア」を含んでいる。すると、本件補正発明の「吸収システム」と引用発明の「吸収性コア」は、「前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コアを含む吸収システム」といえる点で共通する。
(エ)a 引用発明の「トップシート」の「身体に面する表面上」に「図形的要素26」が、「第2のトップシート」の「身体に面する側面上に」「追加の図形的要素」が「印刷されて」おり、この印刷された図形的要素は、身体に面しているので、生理用ナプキンの着用者に面する表面から可視の視覚信号といえる。
b すると、本件補正発明の「使い捨て吸収性物品」と引用発明の「生理用ナプキン」は、「前記使い捨て吸収性物品の着用者に面する表面から可視である視覚信号と、を更に含」んでいる点で一致する。
(オ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明の「前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コア」は、本件補正発明の「前記吸収システムが、吸収性コアを含」んでいることに相当する。
(カ)引用発明の「第2のトップシート」は「追加の図形要素」が印刷されているので、本件補正発明の「第二のトップシート」と引用発明の「第2のトップシート」は、「視覚信号」が設けられている点で一致する。
イ したがって、本件補正発明と引用発明は、
[一致点]
「長手方向中心線と、前記長手方向中心線に対して概ね垂直な横方向中心線と、第1の側縁部及び第2の側縁部と、吸収性物品の第1の端部に配置された第1の端縁部及び第2の端部に配置された第2の端縁部と、を有する、使い捨て吸収性物品であって、
トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収性コアを含む吸収システムと、
前記使い捨て吸収性物品の着用者に面する表面から可視である視覚信号と、を更に含み、
前記吸収システムが、吸収性コアを含み、
前記視覚信号が、第二のトップシートに設けられている、使い捨て吸収性物品。」
の点で一致し、次の点で相違する。
[一応の相違点1]
本件補正発明の「吸収システム」が「第二のトップシート及び吸収性コア」を含むものであるのに対して、引用発明の「生理用ナプキン」は「第2のトップシート」を備えるものの、この「第2のトップシート」が「トップシートとバックシートとの間に配置」されているのか不明な点。
[相違点2]
本件補正発明が「前記使い捨て吸収性物品の長さと前記視覚信号の長さとの差が、物品長と視覚信号の長さの方法によって決定したときに、35mm未満」であるのに対して、引用発明は、前記使い捨て吸収性物品の長さと前記視覚信号の長さとの差が不明な点。
[相違点3]
本件補正発明の「第二のトップシート」は「不織布材料」を含むのに対して、引用発明の「第2のトップシート」は不織布を含むのか不明な点。
[相違点4]
本件補正発明の「第二のトップシート」は、「前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部の少なくとも一方を含み」、「前記第1の端縁部及び前記第2の端縁部が、接着剤と圧着封止との組み合わせによって封止されている」のに対して、引用発明では、封止方法が明らかでない点。
(4)判断
ア 一応の相違点1について
引用文献1に、上記(2)ア(ア)の【0016】「図形的要素26は、トップシートの身体に面する表面上又は衣類に面する表面上に印刷されることができ、その結果それらは容易に視認できる。追加の図形的要素26は、吸収性物品10の任意の層に印刷されることができる。追加の図形的要素26は、バックシート16の身体に面する側面上、第2のトップシート(図示せず)の身体に面する側面上、吸収性コア18の身体に面する側面上、又は吸収性コア18の身体に面する側面の一部上に印刷されることができる。」との記載があり、「トップシート」に加えて「第2のトップシート」の記述があるので、「第2のトップシート」が「トップシート」と「吸収性コア18」の間に存在していることが示唆されている。
また、周知技術1のように、トップシートと吸収性コアの間に第2のトップシートを配置した吸収性物品は周知の技術であったことからすると、周知技術1を考慮すれば、引用発明の「第2のトップシート」を「トップシート」と「吸収性コア」の間に配置して、「吸収システム」を「吸収性コア」及び「第2のトップシート」を含んで、「トップシート」と「バックシート」の間に配置する構成は、実質的に引用発明が備える事項といえるから、相違点1に係る構成は、実質的な相違点ではない。
イ 相違点2について
引用発明は、「図形的要素が、生理用ナプキンの外周の縁まで印刷」された「生理用ナプキン」である。また、周知技術2のように「印刷される領域が面の端縁部まで延在している吸収性物品」は周知の技術であった。
そうすると、引用発明の「図形的要素」を、外周の縁又は面の全面に配置することにより、「生理用ナプキン」の長さと「図形的要素」が配置される領域の長さの差を、0を含む「35mm未満」とし、引用発明において、前記相違点2に係る構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術2に基づいて、当業者が適宜なし得る設計的事項の範疇である。
ウ 相違点3について
引用発明の「トップシート」が「不織布材料などの広範な材料から作成」されていることから、「第2のトップシート」も同じく不織布から作成するようにすることは、当業者が容易になし得る事項と認められること、また表面シートと吸収体との間のシートを不織布で構成する吸収性物品が周知技術3の如く周知の技術であったことからすると、引用発明の「第2のトップシート」を「不織布」として、前記相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 相違点4について
上記イで検討したとおり、印刷された領域(印刷されたシート)を端縁部まで延在させることは当業者が容易になし得たことである。そして、おむつ等の吸収性物品において、周知技術4の如く「シートの対向端部に塗布した接着剤が固化しない間に圧着」する技術は周知の技術であるから、引用発明の印刷された「第2のトップシート」とともに「トップシート」及び「バックシート」の端部を、接着剤を用いて圧着して封止することにより、相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
オ そして、本件補正発明が奏する効果も、引用発明及び周知技術1ないし周知技術4から、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
(5)審判請求人の審判請求書における主張について
審判請求人は、令和5年9月6日に提出した審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由(3)本願発明と引用発明との対比」において、概略以下のとおり主張している。
ア 主張1
引用文献1は、図形的要素26はトップシートへのみ印刷されることが開示されていること。
イ 主張2
引用文献2は、視覚信号を有する第二のトップシートを開示しておらず、印刷シートは不織布とは異なること。
ウ 主張3
いずれの引用文献も、視覚信号を有する第二のトップシートが吸収性物品の第1の端縁部及び第2の端縁部の少なくとも一方を含み、第1の端縁部及び第2の端縁部が、接着剤と圧着封止との組み合わせによって封止されていることを開示していないこと。
エ 主張1について
引用発明が、第2のトップシートに印刷されたものであることは、上記(2)ア(ウ)で認定したとおりである。
なお、仮に本件補正発明を第二のトップシートのみに印刷したものと解したとしても、トップシートと吸収体の間に印刷されたシートを配置する技術(トップシートに印刷されていないと解釈できる。)は、周知技術3のとおり周知の技術にすぎない。
オ 主張2について
トップシートと吸収体の間に印刷された不織布のシートを配置する技術は、周知技術3のとおり周知の技術にすぎない。
カ 主張3について
主張3で主張された相違点は、上記(4)イ、エで検討したとおり、引用発明、周知技術2、周知技術4から当業者が容易に想到し得るものにすぎない。
キ したがって、審判請求人の審判請求書における主張はいずれも採用できない。
(6)小括
上記(4)及び(5)の検討のとおり、本件補正発明は、周知技術1ないし周知技術4を考慮すれば、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができた発明ではない。
3 補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年2月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)の請求項1に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年11月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の理由を含む。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2017-525479号公報
引用文献2:特開2009-50515号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2018-191732号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1ないし3、及び、原査定で引用された引用文献4の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「第二のトップシート」が「不織布材料を含」むとの限定事項を削除したものである。そして、本願発明と引用発明を対比すると、上記第2の[理由]2(3)イ[一致点]で一致し、[一応の相違点1]、[相違点2]、[相違点4]で相違する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)において検討したとおり、周知技術1ないし周知技術4を考慮すれば、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、周知技術1、周知技術2、周知技術4を考慮すれば、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
5 審判請求人が令和5年2月16日に提出した意見書における主張について
審判請求人は、令和5年2月16日に提出した意見書の(3)(ii)において、概略次のとおり主張している。
(1)主張
いずれの引用文献も、
「視覚信号が、第二のトップシートに設けられ、第二のトップシートが、第1の端縁部及び第2の端縁部の少なくとも一方を含み、第1の端縁部及び第2の端縁部が、接着剤と圧着封止との組み合わせによって封止されていること」を開示しないこと。
(2)上記(1)の主張について
当該主張は、上記第2[理由]2(5)エ及びカで検討したとおりであって、採用することができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-015010