特許拒絶査定不服審判
2024-000816
身体温冷装置
- 審判番号
- 2024-000816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-141693外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月17日
- 審決日
- 2025年03月12日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社富士通ゼネラル
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-141693「身体温冷装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月22日出願公開、特開2021- 23438〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 元年 7月31日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年12月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 2月10日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 5月 1日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
同年 7月13日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月12日付け:令和 5年 7月13日の手続補正に
ついての補正の却下の決定及び拒絶査定
令和 6年 1月17日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和 6年 1月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 1月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
利用者の頸部に対向するプレートを温度調節するペルチェ素子と、
外部から隔離された流路が形成される水冷ブロックとを備え、
前記水冷ブロックは、前記流路を流れる熱媒体が前記ペルチェ素子に熱的に接触するように、前記ペルチェ素子に固定され、
前記水冷ブロックは、
前記熱媒体と前記ペルチェ素子とが直接接触しないように、前記流路と前記ペルチェ素子との間に配置される導熱板と、
前記導熱板とともに前記流路を形成する水冷ブロック本体とを有し、
前記流路は、分岐しないで屈曲している
身体温冷装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和 5年 2月10日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
利用者の頸部に対向するプレートを温度調節するペルチェ素子と、
外部から隔離された流路が形成される水冷ブロックとを備え、
前記水冷ブロックは、前記流路を流れる熱媒体が前記ペルチェ素子に熱的に接触するように、前記ペルチェ素子に固定され、
前記水冷ブロックは、
前記熱媒体と前記ペルチェ素子とが直接接触しないように、前記流路と前記ペルチェ素子との間に配置される導熱板と、
前記導熱板とともに前記流路を形成する水冷ブロック本体とを有する
身体温冷装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「流路」について「分岐しないで屈曲している」ことを限定する補正を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010- 82427号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
「【0001】
本発明は、ペルチェ素子を用いて身体を冷暖房する身体冷暖房装置に関するものである。特に、本発明の身体冷暖房装置は、身体表面の近い所を通る太い血管の近傍の皮膚(たとえば、首の周り等)に当接面を当てることにより、血液の温度を下げる(上げる)ペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置に関するものである。本発明は、携帯に都合の良い小型の身体冷暖房装置に関するものである。」
「【0072】
図7は本発明の第5実施例であり、熱伝導性金属シートの上にグラファイトシートを介してペルチェ素子と熱交換部を設けた例を説明するための図である。図7において、左半分は組み立て図であり、右半分は組み立てられた後の図である。熱伝導性金属シート61は、厚さ0.3mm程度の薄さの銅またはアルミニウムからなり、首の周囲における少なくとも半周以上の皮膚に当接できる形状からなる。ペルチェ素子64は、前記熱伝導性金属シート61の両端部近傍に一対が設けられており、水冷ジャケット1010の内部に収容されている。
【0073】
前記熱伝導性金属シート61は、ペルチェ素子64による発熱面(冷却面)の熱が全体に伝達するようになっている。前記熱伝導性金属シート61は、熱伝導性接着剤62を介してグラファイトシート63が接着されている。前記グラファイトシート63は、その上にペルチェ素子64が、たとえば、熱伝導性接着剤を介して取り付けられている。また、前記ペルチェ素子64は、上部に熱交換部66が設けられた状態で水冷ジャケット1010内に収容されている。」
「【0080】
図10は本発明の第7実施例であり、水冷ジャケットの一例を説明するための図である。図10において、水冷ジャケット1010は、熱伝導性金属シート、グラファイトシート、およびペルチェ素子からなる基板1011と、前記基板1011の上に熱伝導性接着剤を介して取り付けられた複数個の断面コ字状の金属製フィン1012と、中央遮蔽壁1013と、パイプからなる入口1015と、同じく出口1016とから構成されている。
【0081】
前記入口1015から入った冷却水あるいはクーラントは、複数個の金属製フィン1012、前記金属製フィン1012の間の流通路1014、これらの流通路の端部流通路1014′、金属製フィン1012′を通り、出口1016から外部に出る。前記金属製フィン1012、前記金属製フィンの流通路1014′からなる水冷ジャケット1010は、前記ペルチェ素子を冷却(暖房)する。
【0082】
前記金属製フィン1012は、銅またはアルミニウムとして、板金の折り曲げ、または押し出し加工により、簡単に作製することができる。また、前記金属製フィン1012は、熱伝導性接着剤あるいはハンダ付け、または銀ペーストによって固定することもできる。前記水冷ジャケット1010は、樹脂製とし、内部を機械加工によりくり抜いて、冷却水路を設け、軽量化することができる。また、前記水冷ジャケット1010は、ペルチェ素子にゴム系接着剤で接着し、水漏れを同時に防止することができる。」
図7
「
[図:0001422091000001.jpg]
」
図10
「
[図:0001422091000002.jpg]
」
イ 引用発明
上記記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「首の周囲に当接できる熱伝導性金属シート61に発熱面(冷却面)の熱が伝達するペルチェ素子64と、
水冷ジャケット1010とを備え、
冷却水あるいはクーラントは、流通路1014、端部流通路1014′を通り、
前記水冷ジャケット1010は、前記ペルチェ素子64を冷却(暖房)し、ペルチェ素子64に接着し、水漏れを防止する、
身体冷暖房装置。」
ウ 引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-230761号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0033】
図2及び図3に示すように、部分冷却水プローブ7は、本体部分としての基板40を有し、ジョイント20、21を介して前記循環パイプ5、6とプローブ内タンク8とが接続されている。ペルチェ素子9は放熱部9aをタンク側に開放し、その裏面を表面吸熱部9bとして、ここに伝熱シートクッション22を張り、その表面で患部を冷却するようにしている。センサ線19Pとペルチェ電源線23Pは、コネクタ24Cでまとめられ、制御ユニット10のメインコイルと接続されている。各部分冷却用プローブ7には温度調節可能の手元スイッチ24(図1に示す)が設けられている。
【0034】
以上の構成により、医療目的温度T2に対し、冷却水温度T1を定め、これを循環パイプ5を介して部分冷却用プローブ7のプローブ内タンク8に対して供給することができる。例えば、耳の治療において、医師が12℃を指定したとする。すると、冷却水温度をそれより少し高く13℃に設定し、プローブ側ペルチェ素子9に通電することにより、ペルチェ素子9の表面温度を目標温度T2に制御できる。手元スイッチ24により、プローブ7毎に制御温度を変化させることもできる。バルブ操作を含めて片方のみ作動させることもできる。さらにはペルチェ素子9への通電電流方向を反対とすることにより、予めの冷却水温度T1より高い温度にすることも可能である。2重ペルチェ式であるので、ポータブルな構成にし冷却水温度を自由に調整でき、その温度を基準として医療目的温度を正確に維持することができる。放熱部9aに直接水を接触させないために、銅板9cを敷き、その間に感熱グリス又はシートを挟み込むようにしている。」
図3
「
[図:0001422091000003.jpg]
」
上記記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「水とペルチェ素子9の放熱部9aとが直接接触しないように、プローブ内タンク8とペルチェ素子9の放熱部9aとの間に銅板9cを敷くこと。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「首の周囲に当接できる」こと、「発熱面(冷却面)の熱が伝達する」こと、「ペルチェ素子64」は、本件補正発明の「利用者の頸部に対向する」こと、「温度調節する」こと、「ペルチェ素子」にそれぞれ相当する。よって、引用発明の「首の周囲に当接できる熱伝導性金属シート61に発熱面(冷却面)の熱が伝達するペルチェ素子64」と、本件補正発明の「利用者の頸部に対向するプレートを温度調節するペルチェ素子」とは、利用者の頸部に対向する部材を温度調節するペルチェ素子の限りで一致する。
イ 引用発明の「流通路1014」、「端部流通路1014′」は、本件補正発明の「流路」に相当し、図10より、「水冷ジャケット1010」に形成されていると表現できる。また、引用発明の「水冷ジャケット1010」は、水漏れを防止していることから、冷却水あるいはクーラントが通る流通路1014、端部流通路1014′は、外部から隔離されている。よって、引用発明の「水冷ジャケット1010」は、本件補正発明の「外部から隔離された流路が形成される水冷ブロック」に相当する。
ウ 引用発明の「冷却水あるいはクーラント」は、本件補正発明の「熱媒体」に相当し、引用発明の「前記ペルチェ素子64を冷却(暖房)」することは、流通路1014、端部流通路1014′を通る冷却水あるいはクーラントが前記ペルチェ素子64に熱的に接触することであるから、本件補正発明の「前記流路を流れる熱媒体が前記ペルチェ素子に熱的に接触する」ことに相当する。また、引用発明の「ペルチェ素子64に接着」することは、本件補正発明の「前記ペルチェ素子に固定され」ることに相当する。よって、引用発明の「前記水冷ジャケット1010は、前記ペルチェ素子64を冷却(暖房)し、ペルチェ素子64に接着」することは、本件補正発明の「前記水冷ブロックは、前記流路を流れる熱媒体が前記ペルチェ素子に熱的に接触するように、前記ペルチェ素子に固定され」ることに相当する。
エ 引用発明の「身体冷暖房装置」は、本件補正発明の「身体温冷装置」に相当する。
したがって、両者は、
「利用者の頸部に対向する部材を温度調節するペルチェ素子と、
外部から隔離された流路が形成される水冷ブロックとを備え、
前記水冷ブロックは、前記流路を流れる熱媒体が前記ペルチェ素子に熱的に接触するように、前記ペルチェ素子に固定される
身体温冷装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
利用者の頸部に対向する部材について、本件補正発明は、「プレート」であるのに対し、引用発明は、「熱伝導性金属シート61」である点。
[相違点2]
本件補正発明は、「前記水冷ブロックは、前記熱媒体と前記ペルチェ素子とが直接接触しないように、前記流路と前記ペルチェ素子との間に配置される導熱板と、前記導熱板とともに前記流路を形成する水冷ブロック本体とを有」するのに対し、引用発明は、水冷ジャケット1010がペルチェ素子64に接着している点。
[相違点3]
本件補正発明は、「前記流路は、分岐しないで屈曲している」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]
プレートとシートは、いずれも薄い板状の部材を意味するから、引用発明の「熱伝導性金属シート61」は、本件補正発明の「プレート」に相当し、実質的な相違点でない。
仮に両者が実質的に相違するとしても、身体冷暖房装置において使用者の体に当接する部材をプレートとすることは、例示するまでもない周知技術(以下「周知技術1」という。)であり、また、シートとプレートは置換可能な技術的事項にすぎず、引用発明において、首の周囲に当接できる部材を「プレート」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点2]
引用文献2記載事項の「銅板9c」は、銅であって熱伝導性を有することが明らかであるから、本件補正発明の「導熱板」に相当する。
そして、放熱する電子部品と冷却水との接触を防ぐことは、周知の技術課題であり、引用発明は、電子部品であるペルチェ素子と冷却水とは直接接触しないよう構成されている。そうすると、引用発明において、ペルチェ素子64と冷却水との接触を防ぐ構成として、引用文献2記載事項を採用し、流通路1014、端部流通路1014′とペルチェ素子64との間に銅板を配置することで、前記冷却水あるいはクーラントと前記ペルチェ素子64とが直接接触しないように、前記流通路1014、前記端部流通路1014′と前記ペルチェ素子64との間に配置される銅板と、前記銅板とともに前記流通路1014、前記端部流通路1014′を形成する水冷ジャケット1010とを有する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点3]
熱交換を行う装置において、熱媒体の流れを蛇行させて熱伝達率を向上させることは、通常行われることであり、ペルチェ素子と熱的に接触する熱媒体が流れる流路を、分岐しないで屈曲している構成とすることは、周知技術(以下「周知技術2」という。例えば、米国特許第5590532号明細書の第5欄第13-40行、図2-4の特に「Peltier device 38」(ペルチェ素子38)と「a unitary tortuous channel or path 80」(単一の曲がりくねった流路又は通路80)を参照。)であるから、引用発明において、「流通路1014」及び「端部流通路1014′」を、分岐しないで屈曲している構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上より、引用発明において相違点1ないし3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、引用文献2記載事項並びに周知技術1及び2から当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の効果についてみても、引用発明、引用文献2記載事項並びに周知技術1及び2から格別なものということはできない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和 5年 2月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
1.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された各引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「流路」について「分岐しないで屈曲している」ことの限定事項を実質的に削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由で、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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